(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】偏光板および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20220510BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
G02B5/30
G09F9/00 342
G09F9/00 324
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020069752
(22)【出願日】2020-04-08
(62)【分割の表示】P 2017211637の分割
【原出願日】2015-06-24
【審査請求日】2020-04-09
(31)【優先権主張番号】10-2014-0080490
(32)【優先日】2014-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0129209
(32)【優先日】2014-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ビュン・スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】スン・ヒョン・ナム
(72)【発明者】
【氏名】キョン・イル・ラ
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-081482(JP,A)
【文献】特開2004-133242(JP,A)
【文献】特開2010-026112(JP,A)
【文献】特開2014-164085(JP,A)
【文献】特開2016-027394(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101198890(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105339819(CN,A)
【文献】韓国公開特許第2013-025321(KR,A)
【文献】韓国公開特許第2006-0084168(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着され且つホウ酸を用いて架橋されたポリビニルアルコール系偏光子、および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に備えられた保護フィルムを含む偏光板であって、
前記ポリビニルアルコール系偏光子は少なくとも1つの偏光解消領域を有し、
前記偏光解消領域は400nm~800nm波長帯域で80%以上の単体透過度および10%以下の偏光度を有し、
前記偏光解消領域の最大サッギング深さは
6μm以上10μm以下であり、前記偏光解消領域のサッギング深さは、前記偏光板を平面に置いた時の前記保護フィルムの面における前記偏光解消領域と前記偏光解消領域を除いた領域との間の高さ差であり、前記最大サッギング深さが前記サッギング深さの最大値であり、
少なくとも1つの前記偏光解消領域の面積は0.5mm
2以上500mm
2以下であり、
前記偏光解消領域のヘイズが3%以下であり、
前記偏光解消領域がホウ酸を含まない、偏光板。
【請求項2】
前記偏光解消領域の算術平均粗さ(Ra)が200nm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記偏光板の前記偏光解消領域を除いた領域は、40%~45%の単体透過度および99%以上の偏光度を有することを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項4】
前記偏光解消領域でのヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上の含量は0.1重量%~0.5重量%であり、
前記偏光解消領域を除いた領域でのヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上の含量は1重量%~4重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の偏光板。
【請求項5】
表示パネル、および
前記表示パネルの一面または両面に付着している請求項1から4のいずれか一項に記載の偏光板を含む画像表示装置。
【請求項6】
前記偏光板の偏光解消領域に備えられたカメラモジュールをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2014年9月26日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2014-0129209号および2014年6月30日に韓国特許庁に提出された韓国特許出願第10-2014-0080490号に基づいた優先権の利益を主張し、該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本明細書は偏光板の製造方法および偏光板に関する。
【背景技術】
【0003】
液晶表示装置は液晶のスイッチング効果による偏光を可視化するディスプレイであり、腕時計、電子計算機、携帯電話などの中小型ディスプレイだけでなく、大型TVに至るまで様々な範囲にかけて用いられている。
【0004】
最近では、携帯性や移動性が強調される中小型ディスプレイ機器やノートパソコンなどにカメラ、画像通話などの様々な機能が搭載されるのが普遍化しており、前記の機能を行うために最近発売される液晶表示装置は外部にカメラレンズが露出される構造を有している。
【0005】
しかし、液晶表示装置は液晶セルの外部面に偏光子または偏光板を必ず付着しなければならず、この過程で偏光子または偏光板が外部に露出されたカメラレンズを覆ってしまい、50%未満の偏光板固有の透過率によってレンズの視認性が低下するという問題点が発生する。
【0006】
このような問題点を解決するために、偏光板の付着時、カメラレンズを覆う部位の偏光板をパンチングおよび切削などの方法によって孔を開けて除去する物理的な除去方法および/またはレンズを覆う偏光板部分にヨウ素イオンの化学物質を用いて脱離させるか漂白させる化学的な除去方法が用いられているが、レンズの損傷、レンズの汚染、除去領域の正確な制御の難しさなどの短所がある。
【0007】
そこで、外部にカメラレンズが露出される構造を有するディスプレイ機器などに適用するための偏光板の製造方法に対する研究が必要な現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書は偏光板の製造方法および偏光板を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書の一実施状態は、ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着されたポリビニルアルコール系偏光子を提供するステップ、前記偏光子の一面上に保護フィルムおよび離型フィルムを備えるステップ、および前記偏光子の他面に脱色溶液を局所的に接触させて少なくとも1つの偏光解消領域を形成するステップを含み、
前記離型フィルムは前記保護フィルムの前記偏光子に対向する面の反対面上に備えられ、前記偏光解消領域は400nm~800nm波長帯域で80%以上の単体透過度および10%以下の偏光度を有し、前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは10μm以下である偏光板の製造方法を提供する。
【0011】
また、本明細書の一実施状態は、ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着されたポリビニルアルコール系偏光子、および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に備えられた保護フィルムを含む偏光板であって、
前記ポリビニルアルコール系偏光子は少なくとも1つの偏光解消領域を有し、前記偏光解消領域は400nm~800nm波長帯域で80%以上の単体透過度および10%以下の偏光度を有し、前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは10μm以下である偏光板を提供する。
【0012】
また、本明細書の一実施状態は、表示パネル、および前記表示パネルの一面または両面に付着している前記偏光板を含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本明細書の一実施状態による偏光板の製造方法は、脱色過程で偏光子が水分を吸収して膨潤する現象を抑制することにより微細シワを最小化し、偏光解消領域の表面粗さおよびヘイズに優れた偏光板を提供することができる。
【0014】
また、本明細書の一実施状態による偏光板の製造方法は、脱色過程で偏光子が保護フィルム方向にサッギング(sagging)されることを最小化し、外観が改善された偏光板を提供することができる。
【0015】
なお、本明細書の一実施状態による偏光板の製造方法は、脱色過程で偏光子が保護フィルム方向にサッギング(sagging)されることを最小化し、偏光子の表面に接着剤が均一に塗布されて偏光子に保護フィルムの付着時に不良率を減らすことができる。
【0016】
本明細書の一実施状態による偏光板は、偏光解消領域の最大サッギング深さを最小化し、偏光解消領域にカメラモジュールを取り付ける場合に鮮明な画質を実現することができる。
【0017】
また、本明細書の一実施状態による偏光板は、偏光解消領域での屈曲発生現象が小さいので偏光板の外観を害する現象を最小化することができる。
【0018】
本明細書の一実施状態による偏光板は、偏光解消領域の歪み現象を最小化して優れた性能を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】偏光板の製造過程でサッギング(sagging)が生じる原因を示す図である。
【
図2a】実施例1による偏光板において、偏光解消領域の表面を白色光三次元測定機を用いて測定されたサッギング領域の深さを示すものである。
【
図2b】実施例1による偏光板において、偏光解消領域の表面を白色光三次元測定機を用いて撮影した3D写真を示すものである。
【
図3a】比較例1による偏光板において、偏光解消領域の表面を白色光三次元測定機を用いて測定されたサッギング領域の深さを示すものである。
【
図3b】比較例1による偏光板において、偏光解消領域の表面を白色光三次元測定機を用いて撮影した3D写真を示すものである。
【
図4】実施例および比較例による偏光板の最大サッギング深さを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において、ある部材が他の部材「上に」位置しているとする時、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく2つの部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0021】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0022】
以下、本明細書をより詳細に説明する。
【0023】
従来の偏光板の場合、偏光板の全領域にヨウ素および/または二色性染料で染着されているので偏光板が濃厚な黒色を示し、その結果、ディスプレイ装置に様々なカラーを付与し難く、特にカメラのような部品上に偏光板が位置する場合、偏光板において光量の50%以上を吸収してカメラレンズの視認性が低下するなどの問題点が発生した。
【0024】
このような問題点を解決するために、パンチングおよび切削などの方法によって偏光板の一部に孔(穿孔)を開けてカメラレンズを覆う部位の偏光板を物理的に除去する方法が商用化されてきた。
【0025】
しかし、前記のような物理的な方法は、画像表示装置の外観を低下させ、孔を開ける工程の特性上偏光板を損傷させる。一方、偏光板の裂けのような損傷を防ぐためには、偏光板の穿孔部位が角から十分に離れた領域に形成されなければならず、その結果、このような偏光板を適用する場合、画像表示装置のベゼル部が相対的に広くなって最近の画像表示装置の大画面を実現するための狭いベゼル(NARROW BEZEL)デザインの傾向からも外れるという問題点を有している。また、上記のように偏光板の穿孔部位にカメラモジュールを取り付ける場合、カメラレンズが外部に露出されるため、長時間の使用時にカメラレンズの汚染および損傷が発生し易いという問題点もある。
【0026】
前記物理的な方法の問題点を解消するために化学的な方法が提示されたものの、用いられた化学物質の拡散により望む部位の偏光子に正確なヨウ素の脱離が難しくて偏光解消領域の制御が困難であり、保護フィルムが接合された偏光板の状態では適用し難いという問題点が存在する。
【0027】
そこで、本明細書では、物理的に孔を開けず、外観を害せず、単純な工程だけで偏光除去を可能にする化学的な方法を提供しようとする。具体的には、偏光解消領域で発生しうる微細シワおよび表面粗さを抑制してヘイズを減少させ、また、偏光解消領域に屈曲が生じる現象を最小化できる化学的な方法を提供しようとする。
【0028】
本発明者らは、ヨウ素および/または二色性染料が染着されたポリビニルアルコール系偏光子の一部領域に脱色溶液を選択的に接触させて局所的に偏光解消領域を形成する場合、パンチングおよび切削などの物理的な除去方法とは異なって穿孔が生じず、偏光子の一面に保護フィルムおよび離型フィルムを先に積層した後に脱色工程を行うことによって、偏光子の膨潤現象が抑制されることによって偏光解消領域の微細シワを最小化できるということを見出した。
【0029】
一般的に、保護フィルムが積層されていないポリビニルアルコール系偏光子に直接脱色溶液を接触させる場合、水分によって偏光子の膨潤(swelling)現象が発生し、それによって偏光解消領域およびその周辺領域にシワが発生しうる。この場合、偏光解消領域の表面粗さが上昇してヘイズが増加し、その結果、偏光板の外観および偏光解消領域に位置するカメラの視認性を十分に確保し難い。さらに、偏光子の一面に離型フィルムなしで保護フィルムを積層した後に偏光子を局所的に脱色する場合、保護フィルムと偏光子が互いに接着されているので膨潤現象およびシワの発生をある程度は抑制できるが、保護フィルムだけでは偏光子の収縮力によるサッギング現象を抑制することが困難であった。そこで、本発明者らは、保護フィルム上に離型フィルムを備える場合、偏光子の脱色時に偏光子の収縮力によるサッギング現象を大幅に改善できるということを見出した。具体的に、本発明者らは、保護フィルムの一面に離型フィルムを積層した後に脱色工程を行うことによって、偏光子の膨潤により発生するMD収縮によるサッギング(sagging)現象を最小化できることを見出した。
【0030】
前述したように、脱色溶液を接触させる前に保護フィルムを積層させることによってシワの発生を抑制できるが、延伸された偏光子の膨潤によって脱色工程の進行時に偏光子が収縮する力によって保護フィルムと偏光子が保護フィルム側に垂れるサッギング(sagging)が発生する。
図1を参照して説明すれば、脱色溶液が偏光子と接触時、延伸された偏光子は収縮をし、それにより、保護フィルムがその収縮に耐えようとする力が発生し、その結果、偏光子と保護フィルムが保護フィルム方向にふっくらとした形態で垂れるサッギング(sagging)が発生する。そこで、本明細書の一実施状態による偏光板の製造方法のように、脱色剤を接触させる前に保護フィルムの前記偏光子の対向する面の反対面に離型フィルムを積層させ、偏光子の収縮に耐える力を増加させることによってサッギングの発生を抑制することができる。
【0031】
本明細書は、偏光解消領域の外観が改善された偏光子およびその製造方法を提供する。
【0032】
本明細書の一実施状態は、ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着されたポリビニルアルコール系偏光子を提供するステップ、前記偏光子の一面上に保護フィルムおよび離型フィルムを備えるステップ、および前記偏光子の他面に脱色溶液を局所的に接触させて少なくとも1つの偏光解消領域を形成するステップを含み、
前記離型フィルムは前記保護フィルムの前記偏光子に対向する面の反対面上に備えられ、前記偏光解消領域は400nm~800nm波長帯域で80%以上の単体透過度および10%以下の偏光度を有し、前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは10μm以下である偏光板の製造方法を提供する。
【0033】
本明細書において、「備える」ということは「積層」を意味することもできる。
【0034】
本明細書において、「単体透過度」は偏光板の吸収軸の透過度と透過軸の透過度の平均値で示される。また、本明細書の「単体透過度」および「偏光度」はJASCO社製のV-7100モデルを用いて測定された値である。
【0035】
本明細書の一実施状態による製造方法によれば、一定面積以上の偏光解消領域を形成するための脱色工程を行っても偏光解消領域での最大サッギング深さを10μm以下に調節することができる。
【0036】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは8μm以下、7μm以下、または6μm以下であってもよい。
【0037】
以下、本明細書の一実施状態による製造方法の各ステップをより具体的に説明する。
【0038】
前記ポリビニルアルコール系偏光子は、当技術分野で周知のPVA偏光子の製造方法によって製造するか、または市販のポリビニルアルコール系偏光子を購入して用いることができる。
【0039】
前記ポリビニルアルコール系偏光子を提供するステップは、例えば、これに限定されるものではないが、例えば、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol)系ポリマーフィルムをヨウ素および/または二色性染料で染着する染着ステップ、前記ポリビニルアルコール系フィルムと染料を架橋させる架橋ステップ、および前記ポリビニルアルコール系フィルムを延伸する延伸ステップによって行われることができる。
【0040】
先ず、前記染着ステップはヨウ素分子および/または二色性染料をポリビニルアルコール系フィルムに染着させるためのものであり、ヨウ素分子および/または二色性染料分子は偏光子の延伸方向に振動する光は吸収し、垂直方向に振動する光は通過させることによって、特定の振動方向を有する偏光を得ることができるようにする。この時、前記染着は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素溶液および/または二色性染料を含有する溶液が入れられた処理浴に含浸させることによって行われることができる。
【0041】
この時、前記染着ステップの溶液に用いられる溶媒は水が一般的に用いられるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適当量添加されていてもよい。一方、ヨウ素および/または二色性染料は、溶媒100重量部に対し、0.06重量部~0.25重量部で用いられることができる。前記ヨウ素などの二色性物質が前記範囲内である場合、延伸後に製造された偏光子の透過度が40.0%~47.0%の範囲を満たすことができる。
【0042】
一方、二色性物質としてヨウ素を用いる場合は、染着効率の改善のためにヨウ化化合物などの補助剤をさらに含有することが好ましく、前記補助剤は溶媒100重量部に対して0.3重量部~2.5重量部の比率で用いられることができる。この時、前記ヨウ化化合物などの補助剤を添加する理由は、ヨウ素の場合、水に対する溶解度が低いので水に対するヨウ素の溶解度を高めるためである。一方、前記ヨウ素とヨウ化化合物の配合比率は重量基準に1:5~1:10が好ましい。
【0043】
前記追加されるヨウ化化合物の具体的な例としてはヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、ヨウ化チタンまたはこれらの混合物などが挙げられるが、それらに限定されるものではない。
【0044】
一方、処理浴の温度は25℃~40℃程度に維持されることが好ましい。処理浴の温度が25℃未満の場合は染着効率が落ち、40℃超過の場合はヨウ素の昇華が多く発生してヨウ素の使用量が増加する。
【0045】
この時、ポリビニルアルコール系フィルムを処理浴に浸漬する時間は30秒~120秒程度であることが好ましい。浸漬時間が30秒未満の場合はポリビニルアルコール系フィルムに染着が均一に形成されることができず、120秒超過の場合は染着が飽和(saturation)し、これ以上浸漬する必要がないためである。
【0046】
一方、架橋ステップはヨウ素および/または二色性染料がポリビニルアルコール高分子マトリックスに吸着されるようにするためのものであり、ポリビニルアルコール系フィルムをホウ酸水溶液などが入れられた架橋浴に沈積させて行う沈積法が一般的に用いられるが、それに限定されず、ポリビニルアルコール系フィルムに架橋剤を含む溶液を塗布したり噴射したりする塗布法またはスプレー法によって行われることもできる。
【0047】
この時、前記架橋浴の溶液に用いられる溶媒は水が一般的に用いられるが、水と相溶性を有する有機溶媒が適当量添加されていてもよく、前記架橋剤は溶媒100重量部に対して0.5重量部~5.0重量部で添加されることができる。この時、前記架橋剤が0.5重量部未満で含まれる場合は、ポリビニルアルコール系フィルム内で架橋が不足して、水中でポリビニルアルコール系フィルムの強度が落ち、5.0重量部を超過する場合は、過度な架橋が形成されてポリビニルアルコール系フィルムの延伸性を低下させる。前記架橋剤の具体的な例としてはホウ酸、ホウ砂などのホウ素化合物、グリオキサル、グルタルアルデヒドなどが挙げられ、これらを単独でまたは組み合わせて用いることができる。但し、それらに限定されるものではない。
【0048】
一方、前記架橋浴の温度は架橋剤の量と延伸比に応じて異なり、これに限定されるものではないが、一般的に45℃~60℃であることが好ましい。一般的に架橋剤の量が増加すれば、ポリビニルアルコール系フィルム鎖の流動性(mobility)を向上させるために高い温度条件に架橋浴の温度を調節し、架橋剤の量が少なければ、相対的に低い温度条件に架橋浴の温度を調節する。しかし、本明細書の一実施状態による偏光板の製造方法は5倍以上の延伸が行われる過程であるため、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸性の向上のために架橋浴の温度を45℃以上に維持しなければならない。一方、架橋浴にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬させる時間は30秒~120秒程度であることが好ましい。浸漬時間が30秒未満の場合は、ポリビニルアルコール系フィルムに架橋が均一に形成されず、120秒超過の場合は、架橋が飽和(saturation)し、これ以上浸漬する必要がないためである。
【0049】
一方、延伸ステップにおいて、延伸とはポリビニルアルコール系フィルムの高分子鎖を一定方向に配向させるためのものであり、延伸方法は湿式延伸法と乾式延伸法に区分することができ、乾式延伸法は再びロール間(inter-roll)延伸方法、加熱ロール(heating roll)延伸方法、圧縮延伸方法、テンター(tenter)延伸方法などに、湿式延伸方法はテンター延伸方法、ロール間延伸方法などに区分される。
【0050】
この時、延伸ステップは、前記ポリビニルアルコール系フィルムを4倍~10倍の延伸比で延伸することが好ましい。これは、ポリビニルアルコール系フィルムに偏光性能を付与するためにはポリビニルアルコール系フィルムの高分子鎖を配向させなければならず、4倍未満の延伸比では鎖の配向が十分に形成されず、10倍超過の延伸比ではポリビニルアルコール系フィルム鎖が切断されるためである。
【0051】
この時、前記延伸は45℃~60℃の延伸温度で延伸することが好ましい。前記延伸温度は架橋剤の含量に応じて異なるが、45℃未満の温度ではポリビニルアルコール系フィルム鎖の流動性が低下して延伸効率が減少し、60℃超過の場合はポリビニルアルコール系フィルムが軟化して強度が弱くなるためである。一方、前記延伸ステップは、前記染着ステップまたは架橋ステップと同時にまたは別途に行われることもできる。
【0052】
一方、前記延伸はポリビニルアルコール系フィルム単独で行われてもよく、ポリビニルアルコール系フィルムに基材フィルムを積層した後、ポリビニルアルコール系フィルムと基材フィルムを共に延伸する方法によって行われてもよい。後者は厚さの薄いポリビニルアルコール系フィルム(例えば、60μm以下のPVAフィルム)を延伸する場合に延伸過程でポリビニルアルコール系フィルムが破断することを防止するために用いられるものであり、10μm以下の薄型PVA偏光子を製造するために用いられることができる。
【0053】
この時、前記基材フィルムとしては、20℃~85℃の温度条件下で最大延伸倍率が5倍以上の高分子フィルムが用いられることができ、例えば、高密度ポリエチレンフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、エステル系フィルム、低密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンおよび低密度ポリエチレンの共押出フィルム、高密度ポリエチレンにエチレンビニルアセテートが含まれた共重合体樹脂フィルム、アクリルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、セルロース系フィルムなどが用いられることができる。一方、前記最大延伸倍率は破断が発生する直前の延伸倍率を意味する。
【0054】
また、前記基材フィルムとポリビニルアルコール系フィルムの積層方法は特に限定されない。例えば、基材フィルムとポリビニルアルコール系フィルムを接着剤または粘着剤を介して積層してもよく、別途の媒介物を用いることなく基材フィルム上にポリビニルアルコール系フィルムを載せておく方式によって積層してもよい。また、基材フィルムを形成する樹脂とポリビニルアルコール系フィルムを形成する樹脂を共押出する方法によって行われるか、または基材フィルム上にポリビニルアルコール系樹脂をコーティングする方法によって行われることもできる。
【0055】
一方、前記基材フィルムは延伸が完了した後に偏光子から離脱させて除去することもできるが、除去せずに次のステップに進むこともできる。この場合、前記基材フィルムは後述する偏光子保護フィルムなどとして用いられることができる。
【0056】
次に、前記方法によってポリビニルアルコール系偏光子が準備されれば、前記ポリビニルアルコール系偏光子の一面に保護フィルムおよび離型フィルムを備えるステップを行う。
【0057】
前記保護フィルムおよび離型フィルムを備えるステップは、保護フィルムの一面に離型フィルムを備えた後、保護フィルムの離型フィルムが備えられていない面を前記偏光子に備える方法、または前記偏光子の一面に保護フィルムを備えた後、保護フィルムの前記偏光子に対向する面の反対面に離型フィルムを備える方法によって行われることができる。
【0058】
前記離型フィルムは、前記保護フィルムの前記偏光子に向かう面の反対面上に備えられることができる。具体的に、前記保護フィルムおよび離型フィルムを備えるステップによって、偏光子/保護フィルム/離型フィルムの積層構造をなすことができる。
【0059】
前記保護フィルムおよび離型フィルムは偏光解消領域を形成するステップにおいて偏光子の収縮のような外形の変形を防止する役割をするため、前記保護フィルムおよび離型フィルムを備えるステップは偏光解消領域を形成するステップ前に行われることができる。
【0060】
この時、前記保護フィルムは厚さの非常に薄い偏光子を保護するためのフィルムであって、偏光子の一面に付着する透明フィルムをいい、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れたフィルムを用いることができる。例えば、トリアセチルセルロース(TAC)のようなアセテート系、ポリエステル系、ポリエーテルスルホン系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリオレフィン系、シクロオレフィン系、ポリウレタン系およびアクリル系樹脂フィルムなどを用いることができるが、それらに限定されるものではない。
【0061】
また、前記保護フィルムは等方性フィルムであってもよく、位相差のような補償機能が与えられた異方性フィルムであってもよく、1枚で構成されてもよく、または2枚以上が接合して構成されてもよい。また、前記保護フィルムは未延伸、1軸または2軸延伸されたフィルムであってもよく、保護フィルムの厚さは一般的に1μm~500μm、好ましくは1μm~300μmであってもよい。
【0062】
この時、前記保護フィルムはポリアルコール系偏光子に対する接着力が1N/2cm以上であることが好ましく、より好ましくは2N/2cm以上であってもよい。具体的に、前記接着力は、保護フィルムをヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着されたポリビニルアルコール系偏光子に付着した後、テクスチャアナライザ(Texture analyser)を用いて90度の剥離力で測定した接着力を意味する。接着力が前記範囲を満たす場合、保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子との膨潤が抑制され、製造過程中のカールの発生および欠点(defect)の発生を最小化することができる。
【0063】
一方、前記ポリビニルアルコール系偏光子の一面に保護フィルムを積層するステップは偏光子に保護フィルムを接合するものであり、接着剤を用いて接合することができる。この時、当技術分野で周知のフィルムの貼り合わせ方法によって行われることができ、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤のような水系接着剤、ウレタン系接着剤などのような熱硬化性接着剤、エポキシ系接着剤などのような光陽イオン硬化型接着剤、アクリル系接着剤などのような光ラジカル硬化型接着剤のように当技術分野で周知の接着剤を用いて行われることができる。
【0064】
前記保護フィルムの偏光子に対向する面の反対面に離型フィルムを備えるステップは保護フィルムに離型フィルムを粘着するものであり、粘着剤を用いて接合することができる。前記粘着剤は減圧粘着剤(PSA、pressure sensitive adhesive)であってもよい。また、本明細書の一実施状態によれば、前記離型フィルムは離型フィルム自体が粘着力を有したものであってもよい。すなわち、保護フィルムと離型フィルムがあたかも1つのフィルムであるように偏光子の一面に備えられる。すなわち、離型フィルムの適用は前述したように偏光子の収縮に耐える力を増加させるためのものであり、結果的にサッギングの発生を抑制させることができる。
【0065】
本明細書の一実施状態によれば、前記離型フィルムは6000N以上の引張強度を有することができる。また、本明細書の一実施状態によれば、前記離型フィルムは6500N以上の引張強度を有することができる。また、本明細書の一実施状態によれば、前記離型フィルムは7000N以上、または7200N以上の引張強度を有することができる。
【0066】
前記離型フィルムが6000N以上の引張強度を有する場合、偏光解消領域を形成するステップでの偏光子が前記保護フィルム方向にサッギングすることを効果的に抑制することができる。具体的に、前記離型フィルムが6000N以上の引張強度を有する場合、前記偏光子の収縮時に前記保護フィルムが共に収縮することを効果的に防止することができる。
【0067】
前記離型フィルムが6000N以上の引張強度を有する場合、前記偏光解消領域での最大サッギング深さを10μm以下に調節することができる。
【0068】
前記引張強度は下記の式1によって求めた値を意味する。
【0069】
[式1]
引張強度(N)=モジュラス(N/mm2)×離型フィルムの厚さ(mm)×離型フィルムの幅(mm)
【0070】
本明細書において、前記モジュラス(Young’s Modulus)は、JIS-K6251-1規格に従って準備したサンプルの両末端を固定させた後、離型フィルムの厚さ方向に垂直した方向に力を加えて引張率(Strain)に応じた単位面積当たりの応力(Stress)を測定して得られた値をいい、この時、測定機器としては、例えば、引張強度計(Zwick/Roell Z010 UTM)などを用いることができる。
【0071】
前記離型フィルムの引張強度は離型フィルムの厚さに変化を与えて調節することができる。離型フィルムの厚さに応じた引張強度の変化程度は離型フィルムの材料に応じて異なる。但し、離型フィルムの引張強度の調節方法がそれに限定されるものではない。
【0072】
前記離型フィルムは保護フィルムに対する粘着力が0.1N/2cm~10N/2cmであることが好ましく、より好ましくは0.5N/2cm~5N/2cmであってもよい。離型フィルムの粘着力が0.1N/2cm以上であれば、保護フィルムが変化しようとする力が離型フィルムに効果的に伝えられ、サッギング発生の抑制効果があり、10N/2cm以下であれば、最終製品から離型フィルムを効果的に剥離できるという長所がある。
【0073】
前記保護フィルムおよび前記離型フィルムは同種であってもよく、異種であってもよい。
【0074】
前記離型フィルムは、粘着剤および粘着力に関する説明を除いては、前述した保護フィルムに関する説明が適用されることができる。
【0075】
次に、上記のように保護フィルムおよび離型フィルムが備えられた偏光子の他面に脱色溶液を局所的に接触させて少なくとも1つの偏光解消領域を形成するステップを行う。
【0076】
前記偏光解消領域を形成するステップを通じて、前記偏光解消領域は400nm~800nm波長帯域で80%以上の単体透過度および10%以下の偏光度を有する。
【0077】
前記偏光解消領域は、偏光効果が必要でない偏光子の一領域に連続して形成されたものであってもよい。具体的に、前記偏光解消領域は偏光子のカメラモジュールが位置する領域であってもよい。
【0078】
本明細書の一実施状態によれば、少なくとも1つの前記偏光解消領域の面積は0.5mm2以上500mm2以下であってもよい。
【0079】
前記脱色溶液を偏光子に接触させて偏光解消領域を形成する場合、偏光子の外観の歪みによる最大サッギング深さは偏光解消領域の面積が広くなるほど増加する。しかし、本明細書の一実施状態による製造方法は、前記離型フィルムを備えて、偏光解消領域の面積が0.5mm2以上500mm2以下であっても最大サッギング深さを10μm以下に抑制することができる。
【0080】
この時、前記偏光子の他面とは、保護フィルムおよび離型フィルムが備えられていない反対面をいう。すなわち、脱色溶液は、保護フィルムおよび離型フィルムでない、ポリビニルアルコール系偏光子に直接接触させなければならず、前記偏光子の他面に本ステップを行わなければならない。
【0081】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域は全体偏光板に対比して0.005%~40%の比率で形成されることができる。
【0082】
一方、前記脱色溶液は必須にヨウ素および/または二色性染料を脱色できる脱色剤および溶媒を含む。前記脱色剤は、偏光子に染着されたヨウ素および/または二色性染料を脱色できるものであれば特に制限されない。本明細書の一実施状態によれば、前記脱色溶液は、水酸化ナトリウム(NaOH)、硫化水素ナトリウム(NaSH)、アジ化ナトリウム(NaN3)、水酸化カリウム(KOH)、硫化水素カリウム(KSH)およびチオ硫酸カリウム(KS2O3)からなる群から選択された1種以上の脱色剤を含むことができる。
【0083】
前記脱色溶液は脱色剤を1重量%~30重量%で含むことができる。
【0084】
前記溶媒としては蒸留水などのような水を用いることが好ましい。また、前記溶媒はアルコール類溶媒をさらに混合して用いることができる。これらに限定されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、イソプロピルアルコールなどを混合して用いることもできる。
【0085】
一方、前記脱色溶液内の脱色剤の含量は脱色過程での接触時間に応じて異なるが、好ましくは全体脱色溶液の重量に対して1重量%~30重量%程度、より好ましくは5重量%~15重量%程度で含むことが好ましい。脱色剤の含量が1重量%未満の場合は、脱色が行われないか、数十分以上の時間がかかって脱色が行われて実質的に適用が困難であり、30重量%超過の場合は、脱色溶液が偏光子への拡散が容易に行われなくて脱色効率の増加量が微小で、経済性が落ちる。
【0086】
また、本明細書の一実施状態によれば、前記脱色溶液のpHは11~14であってもよい。好ましくは、pH13~14であってもよい。前記脱色剤は強塩基化合物であり、ポリビニルアルコールの間に架橋結合を形成しているホウ酸を破壊する程度の強塩基性を帯びなければならず、pHが前記範囲を満たす場合に脱色がよく行われる。例えば、ヨウ素を分解(脱色)して透明に作る(ioding clock reaction)溶液としてチオ硫酸ナトリウム(pH7)は、一般的なヨウ素化合物水溶液では脱色を生じさせるが、実際の偏光子(PVA)では長時間接触しても(10時間)脱色が生じない。すなわち、これはヨウ素を分解する前に強塩基でホウ酸の架橋結合を破壊しなければならないということを示す。
【0087】
一方、前記偏光解消領域を形成するステップは、10℃~70℃の脱色溶液内で1秒~60秒間行われることが好ましい。脱色溶液の温度と浸漬時間が前記数値範囲を外れる場合、脱色溶液によって偏光子の膨潤および離水が発生して偏光子に屈曲が発生したり、所望しない領域まで脱色が発生したりするなどの問題点が発生する。
【0088】
一方、本明細書において、前記脱色溶液を接触させて偏光解消領域を形成するステップは、印刷装置などを用いて行われることができる。本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域を形成するステップは、ディスペンサー、インクジェットまたはグラビア印刷方法によって行われることができる。ディスペンサーまたはインクジェット方法は所望の局所的な部位あるいは所望の模様のパターンで脱色剤を塗布する非接触式印刷法であり、グラビア印刷方法は接触式印刷法である。
【0089】
より具体的に、連続工程の遂行容易性を考慮する時、インクジェットマーキング法またはグラビア印刷法などによって印刷を行う装置であることが好ましい。この時、前記インクジェットマーキング法は、インクジェットノズルを介して被印刷対象物(PVA偏光子)にインク液滴を滴下させる方式によって行われる印刷法をいい、グラビア印刷法は、印刷しようとする形状が陰刻された印刷ロールにインクを充填し、ドクターブレードなどを介して前記陰刻部以外の領域のインクを除去することによって陰刻部にのみインクを残した後、前記陰刻部に充填されたインクを転写ロールを用いて被印刷対象物(PVA偏光子)に転写する方式によって行われる印刷法をいう。
【0090】
また、本明細書において、前記脱色溶液を接触させて偏光解消領域を形成するステップは、浸漬方法を用いて行われることができる。具体的に、前記浸漬方法は、偏光子の一面にマスク層を形成した後、前記保護フィルムおよび離型フィルムが備えられた偏光子を脱色溶液に浸漬させるものであってもよい。
【0091】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域を形成するステップ前に前記偏光子の他面に少なくとも1つ以上の穿孔部を含むマスク層を形成するステップをさらに含むことができる。この時、前記マスク層はマスクフィルムまたはコーティング層からなることができる。
【0092】
本明細書の一実施状態によれば、前記マスク層を形成するステップは、前記保護フィルムおよび離型フィルムを備えるステップ前に行われることもできる。
【0093】
偏光解消領域を形成するステップ前にマスク層を形成するステップを行う場合、偏光解消を所望しない部分、すなわち、脱色を所望しない部位がマスク層で覆われているのでロール・ツー・ロールの工程時(roll-to-roll process)に不良発生率を減らすことができ、ポリビニルアルコール系偏光子とマスク層が積層されているので工程速度の制限を受けないという長所がある。
【0094】
穿孔部を含むマスク層が形成された偏光子を脱色溶液に浸漬させれば、穿孔部を介してポリビニルアルコール系偏光子に脱色溶液が接触し、その結果、穿孔部領域に対応する部分にのみ部分的に脱色が行われる。
【0095】
また1つの実施状態によれば、前記マスク層としてマスクフィルムを用いる場合、前記マスク層を形成するステップは、マスクフィルムに穿孔部を形成するステップ、および前記マスクフィルムを前記偏光子の他面に付着するステップを含むことができる。
【0096】
具体的に、前記マスク層を形成するステップは、マスクフィルムの少なくとも一領域に穿孔部を形成し、前記偏光子の他面に付着するものであってもよい。また、前記マスク層を形成するステップは、前記偏光子の他面上にコーティング層を形成し、前記コーティング層の少なくとも一領域を選択的に除去して穿孔部を形成するものであってもよい。
【0097】
この時、前記マスクフィルムとしてはポリエチレン(PolyEthylene、PE)、ポリプロピレン(PolyPropylene、PP)、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthyleneTerephtalate、PET)などのようなオレフィン系フィルム;またはエチレンビニルアセテート(Ethylene Vinyl Acetate、EVA)、ポリビニルアセテート(PolyVinyl Acetate)などのようなビニルアセテート系フィルムが用いられることができるが、それらに限定されるものではない。また、前記マスクフィルムの厚さは、これに限定されるものではないが、10μm~100μm程度、好ましくは10μm~70μm程度であってもよい。
【0098】
前記マスクフィルムに穿孔部を形成するステップは、特に制限されず、当技術分野で周知のフィルム穿孔方法、例えば、金型加工、ナイフ加工またはレーザ加工などによって行われることができる。
【0099】
本明細書の一実施状態によれば、前記穿孔部を形成するステップはレーザ加工によって行われることができる。前記レーザ加工は当技術分野で一般的に知られているレーザ加工装置を用いて行われることができ、特に制限されない。レーザ装置の種類、出力、レーザパルス繰り返し率などのようなレーザ加工条件はフィルムの材質や厚さ、穿孔部の形状などに応じて異なり、当技術分野の当業者であれば、前記のような点を考慮してレーザ加工条件を適切に選択することができる。例えば、マスクフィルムとして厚さが30μm~100μmのポリオレフィンフィルムを用いる場合は、中心波長が9μm~11μm程度の二酸化炭素(CO2)レーザ装置または中心波長が300nm~400nm程度の紫外線(UV)装置などを用いて穿孔部を形成することができ、この時、前記レーザ装置の最大平均出力は0.1W~30W程度であってもよく、パルス繰り返し率は0kHz~50kHz程度であってもよいが、それに限定されるものではない。
【0100】
前記穿孔部を形成するステップは、前記偏光子の他面に付着するステップ前または後に行われることができる。換言すれば、マスクフィルムに穿孔部を予め形成した後、穿孔部が形成されたマスクフィルムを偏光子に付着してもよく、マスクフィルムを偏光子に付着した後に穿孔部を形成してもよい。
【0101】
前記偏光子の他面にマスクフィルムを付着するステップは、当技術分野で周知のフィルムの貼り合わせ方法、例えば、マスクフィルムと偏光部材を粘着層を介して付着する方法によって行われることができ、この時、前記粘着層はアクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ゴム系粘着剤などのような粘着剤をマスクフィルムまたは偏光部材上に塗布して形成されることができるが、それに限定されるものではない。例えば、マスクフィルムとして自己粘着力のあるフィルム(例えば、EVAフィルム、PVACフィルム、PPフィルムなど)を用いる場合は、粘着層を形成することなくマスクフィルムを偏光子の他面に直ちに付着することもできる。
【0102】
本明細書の一実施状態によれば、前記マスク層がコーティング層で形成される場合、前記マスク層を形成するステップは、前記偏光子の他面にコーティング層を形成するステップ、および前記コーティング層の一部領域を選択的に除去して穿孔部を形成するステップを含む。
【0103】
前記コーティング層を形成するステップは、偏光子の他面にコーティング層形成用組成物を塗布した後に乾燥させるか、熱または紫外線、電子線などのような活性エネルギー線を照射してコーティング層を硬化させる方法によって行われることができる。
【0104】
前記コーティング層形成用組成物としては、レーザによってエッチングすることができ、アルカリ溶液に溶解されないものであれば、その種類は特に限定されない。例えば、前記コーティング層形成用組成物としては、水分散性ポリウレタン、水分散性ポリエステル、水分散性アクリル共重合体などのような水分散性高分子樹脂を含む組成物または感光性樹脂組成物が用いられることができる。一方、前記感光性樹脂組成物としては市販の感光性樹脂組成物、例えば、ポジティブタイプのフォトレジストまたはネガティブタイプのフォトレジストなどが用いられることができ、特に制限されない。
【0105】
本明細書の一実施状態によれば、前記コーティング層は、高分子樹脂組成物または感光性樹脂組成物を用いて形成されることができる。
【0106】
前記コーティング層形成用組成物の塗布方法は特に限定されず、当技術分野で一般的に用いられる塗布方法、例えば、バーコーティング、スピンコーティング、ロールコーティング、ナイフコーティング、スプレーコーティングなどによって行われることができ、前記硬化は塗布された樹脂組成物に熱を加えるか、紫外線、電子線などのような活性エネルギー線を照射する方法によって行われることができる。
【0107】
本明細書の一実施状態によれば、前記コーティング層の厚さは100nm~500nmであってもよい。コーティング層の厚さが前記数値範囲を満たす場合、穿孔部の加工時にポリビニルアルコール系偏光子が損傷することを防止することができ、脱色工程後にコーティング層を除去する工程をさらに行わなくてもよいという長所がある。
【0108】
前記コーティング層の一部領域を選択的に除去して穿孔部を形成するステップは、コーティング層の一部領域にエネルギー線を照射して蒸発させる方法またはフォトリソグラフィ法などによって行われることができる。
【0109】
前記コーティング層の一部を蒸発させる方法は、当技術分野で一般的に知られている装置、例えば、中心波長が300nm~400nm程度の紫外線レーザ装置、中心波長が1000nm~1100nm程度の赤外線レーザ装置、または中心波長が500nm~550nm程度のグリーンレーザ装置などを用いて行われることができる。一方、用いられるレーザ装置の種類、レーザ出力およびパルス繰り返し率などのようなレーザ加工条件はコーティング層の種類、厚さ、形成しようとする穿孔部の形状などに応じて異なり、当技術分野の当業者であれば、前記のような点を考慮してレーザ加工条件を適切に選択することができる。
【0110】
本明細書の一実施状態によれば、前記コーティング層の一部領域を選択的に除去して穿孔部を形成するステップはレーザ加工によって行われることができる。
【0111】
一方、前記コーティング層が感光性樹脂組成物からなる場合は、フォトリソグラフィ工程によって穿孔部を形成することができ、例えば、偏光板の他面に感光性樹脂組成物を塗布した後、穿孔部に該当する領域のエネルギー線を選択的に露光した後、現像液を用いて現像する方法によって穿孔部を形成することができる。
【0112】
この時、前記露光は紫外線などのような光源を用いて行われてもよく、レーザなどのようなエネルギー線を用いて行われてもよい。レーザを用いて露光を実施する場合、露光のために別途のマスクを用いなくてもよく、穿孔部の形状を比較的に自由に形成できるという長所がある。
【0113】
より具体的には、本明細書の一実施状態において、感光性樹脂物を用いて200nm厚さでコーティング層を形成した場合、最大平均出力0.1W~10W程度の中心と300nm~400nmの紫外線レーザを用いて露光を行うことができ、この時、レーザの動作パルス繰り返し率は30kHz~100kHz程度であってもよい。
【0114】
一方、前記現像は用いられた感光性樹脂の種類に応じて適切な現像液を選択して用いることができ、場合に応じて、前述した脱色溶液を現像液として用いることができる。この場合、別途の現像ステップは行われなくてもよい。
【0115】
一方、前記穿孔部は脱色しようとする領域の形状に対応するように形成されればよく、その形態や形成位置などは特に限定されない。例えば、前記穿孔部はカメラのような部品が取り付けられる位置に前記部品の形状に対応するように形成されてもよく、製品ロゴが印刷される領域に製品ロゴの形状で形成されてもよく、偏光子の縁部にカラーを付与しようとする場合は偏光子の縁部に額縁の形態で形成されてもよい。
【0116】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域を形成するステップ後に、必要に応じて、マスク層を除去するステップをさらに含むことができる。前記マスク層の除去ステップは、偏光子からマスク層を剥離させる方法によって行われることができる。マスク層としてマスクフィルムを用いた場合に本ステップを実施することが好ましいが、マスク層としてコーティング層を用いた場合は本ステップを実施しなくてもよい。より具体的には、前記マスク層の除去ステップは、剥離ロールなどを用いて偏光子からマスク層を剥離させる方法によって行われることができる。
【0117】
本明細書の一実施状態によれば、前記脱色溶液の粘度は1cP~2000cPであってもよい。より具体的に、本明細書の一実施状態によれば、前記脱色溶液の粘度は5cP~2000cPであってもよい。脱色溶液の粘度が前記数値範囲を満たす場合に、印刷工程が円滑に行われることができ、連続工程ラインにおいて偏光部材の移動に応じて印刷された脱色溶液に拡散されるか流れることを防止することができ、それにより、所望の領域に所望の模様で脱色領域を形成することができるためである。一方、前記脱色溶液の粘度は、用いられる印刷装置、偏光子の表面特性などに応じて適切に変更されることができる。例えば、グラビア印刷法を用いる場合、脱色溶液の粘度は1cP~2000cP程度、好ましくは5cP~200cP程度であってもよく、インクジェット印刷法を用いる場合、脱色溶液の粘度は1cP~55cP程度、好ましくは5cP~20cP程度であってもよい。
【0118】
本明細書の一実施状態によれば、前記脱色溶液は増粘剤をさらに含むことができる。前記脱色溶液の粘度が前記範囲を満たすために、増粘剤をさらに添加する方法を利用することが好ましい。よって、前記増粘剤は、脱色溶液の粘度を向上させ、溶液の拡散を抑制し、所望の大きさおよび位置に偏光解消領域を形成できるようにする。速く移動する偏光子に粘度の高い溶液を塗布すれば、塗布時に生じる液体と偏光子の相対速度の差が減って所望しない部位に溶液が広がることを防止し、塗布後洗浄前まで脱色が行われる時間の間塗布された溶液の流動が減り、所望の位置または大きさの偏光解消領域を形成することができる。
【0119】
前記増粘剤は、反応性が低く、溶液の粘度を高めるものであれば、特に制限されない。本明細書の一実施状態によれば、前記増粘剤は、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルアセトアセテート系樹脂、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール系樹脂、ブテンジオールビニルアルコール系、ポリエチレングリコール系樹脂およびポリアクリルアミド系樹脂からなる群から選択された1種以上を含む。
【0120】
また1つの実施状態によれば、前記増粘剤は、前記脱色溶液の全体重量に対して0.5重量%~30重量%で含まれることができる。具体的に、本明細書の一実施状態によれば、前記増粘剤は、前記脱色溶液の全体重量に対して2.5重量%~15重量%で含まれることができる。増粘剤の含量が前記範囲を超過する場合は、粘度が高すぎて洗浄が効果的に行われず、増粘剤の含量が低すぎる場合は、粘度が低くて液体の拡散および流動によって所望の模様、大きさの脱色領域を実現し難い。
【0121】
本明細書の一実施状態によれば、前記脱色溶液は、全体重量に対し、脱色剤1重量%~30重量%、増粘剤0.5重量%~30重量%、および水40重量%~70重量%を含むことができる。
【0122】
また、前記偏光解消領域は様々な形状を有してもよく、それに限定されるものではなく、それのみならず、偏光解消領域は全体偏光板上のいかなる位置に形成されてもよい。
【0123】
一方、本明細書の前記偏光解消ステップを介して偏光が解消されるメカニズムを具体的に説明すれば、下記の通りである。ヨウ素および/または二色性染料が染着されたポリビニルアルコールの複合体は、波長帯が400nm~800nmのような可視光線範囲の光を吸収できるものとして知られている。この時、脱色溶液を前記偏光子に接触させれば、前記偏光子に存在する可視光線波長帯の光を吸収するヨウ素および/または二色性染料が分解され、偏光子を脱色させて透過度を高め、偏光度を下げる。
【0124】
例えば、ヨウ素が染着されたポリビニルアルコール系偏光子の一部領域に脱色剤の水酸化カリウム(KOH)を含む水溶液を接触させる場合、下記化学式1および化学式2のように一連の過程でヨウ素が分解される。一方、ヨウ素が染着されたポリビニルアルコール系偏光子の製造時にホウ酸の架橋過程を経た場合、下記化学式3に記載されたように水酸化カリウムはホウ酸を直接分解して、ポリビニルアルコールとホウ酸の水素結合を介した架橋効果を除去する。
【0125】
[化学式1]
12KOH+6I2→2KIO3+10KI+6H2O
[化学式2]
I5
-+IO3
-+6H+→3I2+3H2O
I3
-→I-+I2
[化学式3]
B(OH)3+3KOH→K3BO3+3H2O
【0126】
すなわち、可視光線領域の光を吸収してI5
-(620nm)、I3
-(340nm)、I2
-(460nm)のようなヨウ素および/またはヨウ素イオン錯体を分解して、I-(300nm以下)または塩を生成し、可視光線領域の光を大部分透過する。それによって偏光子の可視光線領域である400nm~800nm程度の領域で偏光機能が解消されることによって、全般的に透過度が高くなり、偏光子は透明となる。言い換えれば、偏光子において偏光を作るために、可視光線を吸収する配列されたヨウ素複合体を可視光線を吸収しない単分子形態に分解して偏光機能を解消することができる。
【0127】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域を形成するステップ後にアルコールまたは酸溶液を用いて洗浄するステップをさらに含むことができる。前記偏光解消領域を形成するステップで残留する脱色溶液が適切に洗浄されない場合、偏光子上で溶液が拡散または残留して、所望しない大きさおよび模様で偏光解消領域が形成されうるし、微細な大きさの偏光解消領域を形成し難い。
【0128】
特に、前記アルコールの場合、乾燥が容易であるので容易に除去が可能であり、偏光解消領域以外の偏光子には透過度や偏光度に影響を及ぼさないので好適に用いられることができる。例えば、これらに限定されるものではないが、前記アルコールは、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコールまたはこれらの混合物であることが好ましい。また、前記酸溶液の場合、主に塩基性を帯びる残留された脱色剤が酸溶液と中和反応して除去され、酸溶液としては、例えば、酢酸水溶液、アジピン酸水溶液、ホウ酸水溶液、リン酸水溶液、乳酸水溶液、硫酸水溶液、硝酸水溶液またはこれらの混合溶液が用いられることができるが、それらに限定されるものではない。
【0129】
前記洗浄するステップは、偏光子を1秒~180秒間、より好ましくは3秒~30秒間アルコールに浸漬させるか、脱色溶液と接触して脱色された局所的な部位にディスペンサーまたはインクジェットなどを用いてアルコールまたは酸溶液を塗布させる方法を利用することができる。
【0130】
本明細書の一実施状態による偏光解消領域を含む偏光板の製造方法は、脱色剤を用いた後、アルコールまたは酸溶液で洗浄することによって、前記で説明したように脱色剤によって形成されたヨウ素化合物および塩などが洗い落とされ、偏光解消領域のヨウ素およびヨウ素イオン錯体の含量が最小化される。よって、偏光解消領域の残留ヨウ素およびヨウ素イオン錯体の光の吸収が減ってより透明になる効果をもたらす。
【0131】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域を形成するステップ後に前記偏光子の少なくとも一面に光学層を形成するステップをさらに含むことができる。この時、前記光学層は保護フィルムまたは位相差フィルムのような高分子フィルム層であってもよく、輝度向上フィルムのような機能性フィルム層であってもよく、ハードコーティング層、反射防止層、粘着層のような機能性層であってもよい。
【0132】
より具体的に、本明細書の一実施状態によれば、前記光学層は前記偏光子の他面に形成される。換言すれば、前記光学層は、前記偏光子の保護フィルムおよび離型フィルムが備えられていない面に形成される。
【0133】
一方、前記光学層はポリビニルアルコール系偏光子面に直接付着または形成されてもよく、ポリビニルアルコール系偏光子の一面に付着された保護フィルムやその他のコーティング層上に付着されてもよい。
【0134】
前記光学層の形成方法は、形成しようとする光学層の種類に応じて互いに異なる方法によって形成されることができ、例えば、当技術分野で周知の光学層の形成方法を利用して形成されることができ、その方法が特に制限されるものではない。
【0135】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域を形成するステップ後に離型フィルムを除去するステップをさらに含むことができる。前記離型フィルムの除去ステップは、保護フィルムから離型フィルムを剥離させる方法によって行われることができる。より具体的には、前記離型フィルムの除去ステップは、剥離ロールなどを用いて保護フィルムから離型フィルムを剥離させる方法によって行われることができる。
【0136】
離型フィルムは偏光解消領域の形成ステップでサッギングが発生すること(保護フィルム方向に伸びる)を抑制する役割を果たすものであるため、偏光解消領域を形成した後には除去されることが好ましい。
【0137】
本明細書の一実施状態は、前記偏光板の製造方法によって製造された偏光板を提供する。
【0138】
本明細書の一実施状態は、ヨウ素および二色性染料のうち少なくとも1つ以上で染着されたポリビニルアルコール系偏光子、および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に備えられた保護フィルムを含む偏光板であって、
前記ポリビニルアルコール系偏光子は少なくとも1つの偏光解消領域を有し、前記偏光解消領域は400nm~800nm波長帯域で80%以上の単体透過度および10%以下の偏光度を有し、前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは10μm以下である偏光板を提供する。
【0139】
本明細書の一実施状態によれば、少なくとも1つの前記偏光解消領域の面積は0.5mm2以上500mm2以下であってもよい。
【0140】
本明細書において、前記サッギング(sagging)とは、ポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が脱色溶液と接触時に発生する保護フィルム方向への垂れ現象を意味する。
【0141】
具体的に、サッギングの深さが浅いほど垂れ現象の程度が小さいことを意味し、偏光板の外観の歪み(distortion)を最小化できるため、他の一面に保護フィルムなどを積層する時に接着剤が均一に塗布されるという長所がある。結果的に、偏光子の両面に保護フィルムがある構造の偏光板の製造時に不良発生を減らすことができる。
【0142】
また、サッギングの深さが浅いほど外観が改善された偏光板を提供できるという長所がある。
【0143】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域の最大サッギング(sagging)深さは8μm以下、7μm以下、または6μm以下であってもよい。
【0144】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域のサッギング深さは0.1μm以上10μm以下であるか、好ましくは0.1μm以上8μm以下であってもよい。
【0145】
前記サッギングの深さは白色光三次元測定機(optical profiler)またはレーザ顕微鏡(CLSM、confocal laser scanning microscope)を用いて測定することができる。
【0146】
前記サッギングの深さは、前記偏光子の前記保護フィルムの対向する面と前記保護フィルムの対向する面の反対面間の間隔の最大値から最小値を引いた値を意味する。また、前記サッギングの深さは、偏光板を平面に置いた時、保護フィルム面において脱色領域と脱色が行われていない領域の高さ差を意味する。
【0147】
本明細書の一実施状態による偏光板は、可視光線領域に含まれる400nm~800nm波長帯域での単体透過度が80%以上であり、算術平均粗さ(Ra)が200nm以下であり、偏光度が10%以下である偏光解消領域を有する。前記偏光解消領域は、前述したように、ヨウ素および/または二色性染料が染着されたポリビニルアルコール系偏光子の一部領域に脱色溶液を選択的に接触させる過程を経て形成された領域をいう。
【0148】
前記偏光解消領域は、可視光線領域である400nm~800nm、より好ましくは450nm~750nmの波長帯域での単体透過度が80%以上であり、90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。また、前記偏光解消領域は偏光度が10%以下であり、5%以下であることがより好ましい。前記偏光解消領域の単体透過度が高く偏光度が低いほど、視認性が向上し、前記領域に位置するカメラレンズの性能および画質をより向上させることができる。
【0149】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光板の偏光解消領域を除いた領域は単体透過度が40%~47%であることが好ましく、42%~47%であることがより好ましい。さらに、前記偏光板の偏光解消領域を除いた領域は偏光度が99%以上であることが好ましい。これは、偏光解消領域を除いた残りの領域は、本来の偏光板の機能をすることによって、前記範囲のような優れた光学物性を示さなければならないためである。
【0150】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域の算術平均粗さ(Ra)は200nm以下であってもよく、具体的には100nm以下または80nm以下、より具体的には50nm以下であってもよい。
【0151】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域の二乗平均平方根粗さ(Rq)は200nm以下であってもよく、具体的には100nm以下または80nm以下、より具体的には50nm以下であってもよい。
【0152】
前記算術平均粗さ(Ra)はJIS B0601-1994に規定された値であり、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜粋し、該抜粋部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計して平均した値を示すものであり、前記二乗平均平方根粗さ(Rq)はJIS B0601-2001に規定される。前記算術平均粗さ(Ra)および前記二乗平均平方根粗さ(Rq)は光学プロファイラ(Optical profiler)(Nanoview E1000、ナノシステム社)によって測定される。
【0153】
一般的に、偏光子表面の粗さが増加すれば光の屈折および反射によってヘイズが増加する。偏光解消領域の粗さが前記範囲を満たす場合、ヘイズが十分に低く、鮮明な視認性を有することができる。
【0154】
また1つの実施状態によれば、前記保護フィルムの偏光子に対向する面の反対面に離型フィルムがさらに備えられることができる。
【0155】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域のヘイズは3%以下であり、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下である。
【0156】
本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域はヨウ素および/または二色性染料の含量が0.1重量%~0.5重量%であり、好ましくは0.1重量%~0.35重量%である。これは、前記で説明したように、脱色剤とヨウ素間の反応によって偏光子上に複合体の形態で存在していたヨウ素が洗い落とされ、ヨウ素および/または二色性染料の含量が大幅に減るためであり、それによって透過度が大幅に向上する。それに対し、本明細書の一実施状態によれば、前記偏光解消領域を除いた領域はヨウ素および/または二色性染料の含量が1重量%~4重量%であり、好ましくは2重量%~4重量%である。
【0157】
この時、前記ヨウ素および/または二色性染料の含量は光X線分析装置(理学電気工業(株)製造、商品名「ZSX PrimusII」)を用いて測定した。本明細書では、大きさが40mm×40mmで、厚さが12μmである偏光子シート形態の試料を用いて、19.2mm3体積当たりの平均重量%を測定した。
【0158】
また1つの実施状態によれば、前記偏光解消領域は、全体偏光板に対比して0.005%~40%であってもよい。
【0159】
また、本明細書の一実施状態は、表示パネル、および前記表示パネルの一面または両面に付着している前述した実施状態による偏光板を含む画像表示装置を提供する。
【0160】
前記表示パネルは液晶パネル、プラズマパネルおよび有機発光パネルであってもよく、それにより、前記画像表示装置は液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)および有機電界発光表示装置(OLED)であってもよい。
【0161】
より具体的に、前記画像表示装置は液晶パネルおよび該液晶パネルの両面に各々備えられた偏光板を含む液晶表示装置であってもよく、この時、前記偏光板のうち少なくとも1つが前述した本明細書の一実施状態による偏光子を含む偏光板であってもよい。すなわち、前記偏光板は、ヨウ素および/または二色性染料が染着されたポリビニルアルコール系偏光子および前記ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一面に備えられた保護フィルムを含む偏光板において、局所的に400nm~800nm波長帯域での単体透過度が80%以上の偏光解消領域を有し、前記偏光解消領域の算術平均粗さ(Ra)が200nm以下であり、偏光度が10%以下であり、サッギング(sagging)が10μm以下であることを特徴とする。
【0162】
この時、前記液晶表示装置に含まれる液晶パネルの種類は特に限定されない。例えば、その種類に制限されず、TN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型またはPD(polymer dispersed)型のようなパッシブ・マトリックス方式のパネル、二端子型(two terminal)または三端子型(three terminal)のようなアクティブ・マトリックス方式のパネル、横電界型(IPS;In Plane Switching)パネルおよび垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルが全て適用されることができる。また、液晶表示装置を構成するその他の構成、例えば、上部および下部基板(例えば、カラーフィルタ基板またはアレイ基板)などの種類も特に制限されず、本分野で公知の構成が制限されることなく採用されることができる。
【0163】
本明細書の一実施状態によれば、前記画像表示装置は、前記偏光板の偏光解消領域に備えられたカメラモジュールをさらに含むことを特徴とする画像表示装置であってもよい。可視光性領域の透過度が向上し、偏光度が解消された偏光解消領域にカメラモジュールを位置させることによって、カメラレンズ部の視認性を増大させる効果をもたらし、偏光解消領域のサッギング現象を抑制させた偏光板を含ませることによって、外観改善の効果ももたらすことができる。
【0164】
以下、実施例を通じて本明細書をより詳細に説明する。但し、以下の実施例は本明細書を例示するためのものであって、それらによって本明細書の範囲が限定されるものではない。
【0165】
<実施例1>
ポリビニルアルコール系フィルム(日本合成社製のM3000 grade 30μm)を25℃の純水溶液で膨潤工程を15秒間経た後、0.2wt%濃度および25℃のヨウ素溶液で60秒間染着工程を行った。その後、ホウ酸1wt%、45℃の溶液で30秒間洗浄工程を経た後、ホウ酸2.5wt%、52℃の溶液で6倍延伸工程を行った。延伸後、5wt%のヨウ化カリウム(KI)溶液で補色工程を経た後、60℃のオーブンで5分間乾燥させて12μmのポリビニルアルコール系偏光子を製造した。
【0166】
その次、アクリル系保護フィルムを前記ポリビニルアルコール系偏光子の一面に積層し、偏光子の他の一面に直径約4mmの孔(hole)が加工されたマスキングフィルムを積層した後、アクリル系保護フィルム上に粘着剤を用いて7500N程度の引張強度を有するポリエチレンテレフタレート(PET)離型フィルムを付着した。
【0167】
マスキングフィルムと離型フィルムが積層された前記ポリビニルアルコール系偏光子を60℃のKOH 10wt%水溶液に3秒間浸漬して脱色した後、ホウ酸4wt%水溶液に5秒間浸漬して中和した後、60℃のオーブンで30秒間乾燥した後、マスキングフィルムを除去した後、アクリル系保護フィルムを積層した。その次、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを除去してアクリル系保護フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/アクリル系保護フィルム構造の偏光板を製造した。
【0168】
図2aは、実施例1による偏光板において、偏光解消領域の表面を白色光三次元測定機を用いて測定されたサッギング領域の深さを示すものである。また、
図2bは、実施例1による偏光板において、偏光解消領域の表面を白色光三次元測定機を用いて撮影した3D写真を示すものである。具体的に、
図2bは偏光解消領域の表面でサッギング現象が現れた様子を見ることができ、最大サッギング深さは約6μmであった。
【0169】
<比較例1>
引張強度が約1500Nのポリエチレンテレフタレート(PET)離型フィルムを付着したことを除いては、実施例1と同様の製造方法によりアクリル系保護フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/アクリル系保護フィルム構造の偏光板を製造した。
【0170】
図3aは、比較例1による偏光板において、偏光解消領域の表面を白色光三次元測定機を用いて測定されたサッギング領域の深さを示すものである。また、
図3bは、比較例1による偏光板において、偏光解消領域の表面を白色光三次元測定機を用いて撮影した3D写真を示すものである。具体的に、
図3bは偏光解消領域の表面でサッギング現象が現れた様子を見ることができ、最大サッギング深さは約30μmであった。
【0171】
<比較例2>
引張強度が約2000Nのポリエチレンテレフタレート(PET)離型フィルムを付着したことを除いては、実施例1と同様の製造方法によりアクリル系保護フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/アクリル系保護フィルム構造の偏光板を製造した。
【0172】
比較例2による偏光板の偏光解消領域での最大サッギング深さは約20μmであった。
【0173】
<比較例3>
引張強度が約3000Nのポリエチレンテレフタレート(PET)離型フィルムを付着したことを除いては、実施例1と同様の製造方法によりアクリル系保護フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/アクリル系保護フィルム構造の偏光板を製造した。
【0174】
比較例3による偏光板の偏光解消領域での最大サッギング深さは約25μmであった。
【0175】
<比較例4>
引張強度が約5000Nのポリエチレンテレフタレート(PET)離型フィルムを付着したことを除いては、実施例1と同様の製造方法によりアクリル系保護フィルム/ポリビニルアルコール系偏光子/アクリル系保護フィルム構造の偏光板を製造した。
【0176】
比較例4による偏光板の偏光解消領域での最大サッギング深さは約15μmであった。
【0177】
図4は、実施例および比較例による偏光板の最大サッギング深さを示すものである。
図4でのx軸は離型フィルムの引張強度を意味し、y軸は最大サッギング深さを意味する。
【0178】
前記実施例および比較例の結果によれば、本明細書の一実施状態による製造方法によって製造された偏光板は、偏光解消領域でのサッギング現象を顕著に抑制できることが分かる。