(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】内視鏡システム及びその作動方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/06 20060101AFI20220510BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20220510BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
A61B1/06 612
A61B1/00 513
G02B23/24 B
(21)【出願番号】P 2020500445
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2019004485
(87)【国際公開番号】W WO2019159817
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2018024500
(32)【優先日】2018-02-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】特許業務法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔵本 昌之
【審査官】佐藤 秀樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-037565(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055938(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/035829(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00- 1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1照明光と、前記第1照明光とは発光スペクトルが異なる第2照明光とを発する光源部と、
前記第1照明光と前記第2照明光とを切り替えて発光制御する光源制御部と、
前記第1照明光又は前記第2照明光にて照明された観察対象を撮像するための複数のラインを有し、ライン毎に異なる露光タイミングで露光を行い、ライン毎に異なる読出タイミングで電荷を読み出して画像信号を出力する撮像センサであり、前記画像信号には、前記第1照明光の照明期間に出力する第1画像信号と、前記第2照明光の照明期間に出力する第2画像信号と、前記第1照明光と前記第2照明光との切替を行う切替期間に出力する切替期間の画像信号が含まれるローリングシャッタ方式の撮像センサと、
前記第1画像信号と第1明るさ算出係数とを用いて、前記第1照明光の照明期間における観察対象の明るさを表す第1明るさ情報を算出し、前記第2画像信号と前記第1明るさ算出係数とは異なる第2明るさ算出係数とを用いて、前記第2照明光の照明期間における前記観察対象の明るさを表す第2明るさ情報を算出し、前記切替期間の画像信号と前記第1明るさ算出係数と前記第2明るさ算出係数とを用いて、前記切替期間における前記観察対象の明るさを表す切替期間の明るさ情報を算出する明るさ情報算出部とを備え、
前記光源制御部は、前記第1明るさ情報、前記第2明るさ情報、又は前記切替期間の明るさ情報に基づいて、前記第1照明光又は前記第2照明光の発光量を制御し
、
前記明るさ情報算出部は、前記第1明るさ算出係数と前記第2明るさ算出係数に基づいて算出される切替期間用の明るさ算出係数を、前記切替期間用の画像信号に掛け合わせることによって、前記切替期間用の明るさ情報を算出する内視鏡システム。
【請求項2】
前記明るさ情報算出部は、前記第1明るさ算出係数と前記第2明るさ算出係数とを特定の重み付け係数にて重み付けして加算
した前記切替期間用の明るさ算出係数を用いて、前記切替期間の明るさ情報を算出する請求項1記載の内視鏡システム。
【請求項3】
前記明るさ情報算出部は、前記第1明るさ算出係数と前記第2明るさ算出係数の平均値である
前記切替期間用の明るさ算出係数を用いて、前記切替期間の明るさ情報を算出する請求項2記載の内視鏡システム。
【請求項4】
前記明るさ情報算出部は、
前記撮像センサにおける特定のラインに対応するライン用重み付け係数を、前記第1明るさ算出係数と前記第2明るさ算出係数に対して重み付けして加算
した前記切替期間用の明るさ算出係数を用いて、前記切替期間の明るさ情報を算出する請求項2記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記明るさ情報算出部は、
前記切替期間の画像信号における特定のエリアに対応するエリア用重み付け係数を、前記第1明るさ算出係数と前記第2明るさ算出係数に対して重み付けして加算
した前記切替期間用の明るさ算出係数を用いて、前記切替期間の明るさ情報を算出する請求項2記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記光源制御部は、前記第1照明光と前記第2照明光とを少なくとも2フレーム以上の間隔にて照明する請求項1ないし5いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記切替期間においては、前記撮像センサに対して、前記第1照明光と前記第2照明光が露光される請求項1ないし6いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項8】
前記光源部は、複数波長帯域の光を発光することが可能、且つ、各波長帯域の光の発光比率の変更が可能であり、
前記第1照明光は第1発光比率を有し、前記第2照明光は前記第1発光比率と異なる第2発光比率を有する請求項1ないし7いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項9】
前記第1照明光は紫色光であり、前記第2照明光は緑色光であり、
前記光源制御部は、前記紫色光と前記緑色光とを切り替えて発光する請求項1ないし8いずれか1項記載の内視鏡システム。
【請求項10】
前記第1照明光と前記第2照明光は、それぞれ紫色光、青色光、緑色光、又は赤色光を含み、前記第1照明光における前記紫色光、前記青色光、前記緑色光、又は前記赤色光の光強度比Vs1:Bs1:Gs1:Rs1を示す第1発光比率は、前記第2照明光における前記紫色光、前記青色光、前記緑色光、又は前記赤色光の光強度比Vs2:Bs2:Gs2:Rs2を示す第2発光比率と異なっており、
前記光源制御部は、前記第1発光比率と前記第2発光比率を切り替えることによって、前記第1照明光と前記第2照明光を切り替えて発光する請求項8記載の内視鏡システム。
【請求項11】
光源制御部が、第1照明光と、前記第1照明光とは発光スペクトルが異なる第2照明光とを切り替えて発光制御するステップと、
前記第1照明光又は前記第2照明光にて照明された観察対象を撮像するための複数のラインを有し、ライン毎に異なる露光タイミングで露光を行い、ライン毎に異なる読出タイミングで電荷を読み出して画像信号を出力するローリングシャッタ方式の撮像センサが、前記画像信号として、前記第1照明光の照明期間に第1画像信号を出力し、前記第2照明光の照明期間に第2画像信号を出力し、前記第1照明光と前記第2照明光との切替を行う切替期間に切替期間の画像信号を出力するステップと、
明るさ情報算出部が、前記第1画像信号と第1明るさ算出係数とを用いて、前記第1照明光の照明期間における観察対象の明るさを表す第1明るさ情報を算出し、前記第2画像信号と前記第1明るさ算出係数とは異なる第2明るさ算出係数とを用いて、前記第2照明光の照明期間における前記観察対象の明るさを表す第2明るさ情報を算出し、前記切替期間の画像信号と前記第1明るさ算出係数と前記第2明るさ算出係数とを用いて、前記切替期間における前記観察対象の明るさを表す切替期間の明るさ情報を算出するステップとを有し、
前記光源制御部が、前記第1明るさ情報、前記第2明るさ情報、又は前記切替期間の明るさ情報に基づいて、前記第1照明光又は前記第2照明光の発光量を制御するステップを有し
、
前記明るさ情報算出部は、前記第1明るさ算出係数と前記第2明るさ算出係数に基づいて算出される切替期間用の明るさ算出係数を、前記切替期間用の画像信号に掛け合わせることによって、前記切替期間用の明るさ情報を算出する内視鏡システムの作動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の照明光を切り替えて発光する内視鏡システム及びその作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療分野では、光源装置、内視鏡、プロセッサ装置を備える内視鏡システムが広く用いられている。内視鏡システムでは、内視鏡から観察対象に照明光を照射し、その照明光で照明中の観察対象を内視鏡の撮像センサで撮像して得られるRGB画像信号に基づいて、観察対象の画像をモニタ上に表示する。
【0003】
また、内視鏡システムにおいては、診断目的に合わせて、観察対象に照射する照明光を切り替え、また、観察対象の画像に対する画像処理を切り替えることができるように、複数の観察モードが設けられている。また、特許文献1や特許文献2に示すように、複数の照明光を自動で切り替えて発光することによって、各照明光から得られる複数の観察画像を交互に観察できるようにすることも行われている。
【0004】
しかしながら、複数の照明光を切り替えて発光する場合には、照明光の切替時に、切替後の照明光に対応しない観察画像が表示されるおそれがあるため、特許文献1では、照明光の切替時には、切替後の照明光の光量が最小になるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5677378号
【文献】国際公開第2010/055938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、複数の照明光を切り替えて発光する場合においても、観察対象の明るさ状態に応じて、各照明光の発光量の制御を行う必要がある。例えば、特許文献2では、切替前の照明光の発光により得られた画像から観察対象の明るさを算出し、その算出した観察対象の明るさに基づいて、切替後の照明光の発光量の制御を行っている。この場合には、算出した観察対象の明るさは切替後の照明光に基づいていないため、正確に発光量の制御を行うことができない場合がある。また、撮像素子として、ローリングシャッタ方式の撮像センサを用いた場合には、照明光の切替時において、切替前の照明光と切替後の照明光とが混色して露光される場合がある。この場合に得られた画像からは、正確に発光量の制御を行うことができない場合がある。
【0007】
本発明は、複数の照明光を切り替えて発光する場合において、照明光の切替期間においても正確に照明光の発光量の制御を行うことができる内視鏡システム及びその作動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の内視鏡システムは、光源部と、光源制御部と、ローリングシャッタ方式の撮像センサと、明るさ情報算出部とを備える。光源部は、第1照明光と、第1照明光とは発光スペクトルが異なる第2照明光とを発する。光源制御部は、第1照明光と第2照明光とを切り替えて発光制御する。撮像センサは、第1照明光又は第2照明光にて照明された観察対象を撮像するための複数のラインを有する。撮像センサは、ライン毎に異なる露光タイミングで露光を行い、ライン毎に異なる読出タイミングで電荷を読み出して画像信号を出力する。画像信号には、第1照明光の照明期間に出力する第1画像信号と、第2照明光の照明期間に出力する第2画像信号と、第1照明光と第2照明光との切替を行う切替期間に出力する切替期間の画像信号が含まれる。明るさ情報算出部は、第1画像信号と第1明るさ算出係数とを用いて、第1照明光の照明期間における観察対象の明るさを表す第1明るさ情報を算出し、第2画像信号と第1明るさ算出係数とは異なる第2明るさ算出係数とを用いて、第2照明光の照明期間における観察対象の明るさを表す第2明るさ情報を算出し、切替期間の画像信号と第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数とを用いて、切替期間における観察対象の明るさを表す切替期間の明るさ情報を算出する。光源制御部は、第1明るさ情報、第2明るさ情報、又は切替期間の明るさ情報に基づいて、第1照明光又は第2照明光の発光量を制御し、明るさ情報算出部は、第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数に基づいて算出される切替期間用の明るさ算出係数を、切替期間用の画像信号に掛け合わせることによって、切替期間用の明るさ情報を算出する。
【0009】
明るさ情報算出部は、第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数とを特定の重み付け係数にて重み付けして加算した切替期間用の明るさ算出係数を用いて、切替期間の明るさ情報を算出することが好ましい。明るさ情報算出部は、第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数の平均値である切替期間用の明るさ算出係数を用いて、切替期間の明るさ情報を算出することが好ましい。明るさ情報算出部は、撮像センサにおける特定のラインに対応するライン用重み付け係数を、第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数に対して重み付けして加算した切替期間用の明るさ算出係数を用いて、切替期間の明るさ情報を算出することが好ましい。明るさ情報算出部は、切替期間の画像信号における特定のエリアに対応するエリア用重み付け係数を、第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数に対して重み付けして加算した切替期間用の明るさ算出係数を用いて、切替期間の明るさ情報を算出することが好ましい。
【0010】
光源制御部は、第1照明光と第2照明光とを少なくとも2フレーム以上の間隔にて照明することが好ましい。切替期間においては、撮像センサに対して、第1照明光と第2照明光が露光されることが好ましい。光源部は、複数波長帯域の光を発光することが可能、且つ、各波長帯域の光の発光比率の変更が可能であり、第1照明光は第1発光比率を有し、第2照明光は前記第1発光比率と異なる第2発光比率を有することが好ましい。第1照明光は紫色光であり、第2照明光は緑色光であり、光源制御部は、紫色光と緑色光とを切り替えて発光することが好ましい。第1照明光と第2照明光は、それぞれ紫色光、青色光、緑色光、又は赤色光を含み、第1照明光における紫色光、青色光、緑色光、又は赤色光の光強度比Vs1:Bs1:Gs1:Rs1を示す第1発光比率は、第2照明光における紫色光、青色光、緑色光、又は赤色光の光強度比Vs2:Bs2:Gs2:Rs2を示す第2発光比率と異なっており、光源制御部は、第1発光比率と第2発光比率を切り替えることによって、第1照明光と第2照明光を切り替えて発光することが好ましい。
【0011】
本発明の内視鏡システムの作動方法は、発光制御ステップと、撮像ステップと、明るさ情報算出ステップとを有する。発光制御ステップでは、光源制御部が、第1照明光と、第1照明光とは発光スペクトルが異なる第2照明光とを切り替えて発光制御する。撮像ステップでは、第1照明光又は第2照明光にて照明された観察対象を撮像するための複数のラインを有し、ライン毎に異なる露光タイミングで露光を行い、ライン毎に異なる読出タイミングで電荷を読み出して画像信号を出力するローリングシャッタ方式の撮像センサが、画像信号として、第1照明光の照明期間に第1画像信号を出力し、第2照明光の照明期間に第2画像信号を出力し、第1照明光と第2照明光との切替を行う切替期間に切替期間の画像信号を出力する。明るさ情報算出ステップでは、明るさ情報算出部が、第1画像信号と第1明るさ算出係数とを用いて、第1照明光の照明期間における観察対象の明るさを表す第1明るさ情報を算出し、第2画像信号と第1明るさ算出係数とは異なる第2明るさ算出係数とを用いて、第2照明光の照明期間における観察対象の明るさを表す第2明るさ情報を算出し、切替期間の画像信号と第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数とを用いて、切替期間における観察対象の明るさを表す切替期間の明るさ情報を算出する。発光制御ステップでは、光源制御部が、第1明るさ情報、第2明るさ情報、又は切替期間の明るさ情報に基づいて、第1照明光又は第2照明光の発光量を制御する。明るさ情報算出部は、第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数に基づいて算出される切替期間用の明るさ算出係数を、切替期間用の画像信号に掛け合わせることによって、切替期間用の明るさ情報を算出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の照明光を切り替えて発光する場合において、照明光の切替期間においても正確に照明光の発光量の制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態の内視鏡システムの外観図である。
【
図2】第1実施形態の内視鏡システムの機能を示すブロック図である。
【
図3】紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光Rの発光スペクトルを示すグラフである。
【
図4】紫色光Vの発光スペクトルを示すグラフである。
【
図5】緑色光Gの発光スペクトルを示すグラフである。
【
図6】ローリングシャッタ方式の撮像センサの動作を示す説明図である。
【
図7】切替期間用の明るさ算出係数(第1明るさ算出係数αと第2明るさ算出係数の平均値)を用いて切替期間の明るさ情報を算出する方法を示す説明図である。
【
図8】切替期間用の明るさ算出係数(ライン用重み付け係数により第1明るさ算出係数αと第2明るさ算出係数を重み付けして加算した係数)を用いて切替期間の明るさ情報を算出する方法を示す説明図である。
【
図9】切替期間用の明るさ算出係数(エリア用重み付け係数により第1明るさ算出係数αと第2明るさ算出係数を重み付けして加算した係数)を用いて切替期間の明るさ情報を算出する方法を示す説明図である。
【
図10】マルチ観察モードの一連の流れを示すフローチャートである。
【
図11】第1発光比率を有する第1照明光の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図12】第2発光比率を有する第2照明光の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図13】第2実施形態の内視鏡システムの機能を示すブロック図である。
【
図14】通常光の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図15】第1照明光の発光スペクトルを示すグラフである。
【
図16】第2照明億の発光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16と、モニタ18と、ユーザーインターフェース19とを有する。内視鏡12は光源装置14と光学的に接続され、且つ、プロセッサ装置16と電気的に接続される。内視鏡12は、被検体内に挿入される挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けられた操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けられる湾曲部12c及び先端部12dを有している。操作部12bのアングルノブ12eを操作することにより、湾曲部12cは湾曲動作する。この湾曲動作に伴って、先端部12dが所望の方向に向けられる。なお、ユーザーインターフェース19は図示したキーボードの他、マウスなどが含まれる。
【0015】
また、操作部12bには、アングルノブ12eの他、モード切替SW13aが設けられている。モード切替SW13aは、通常観察モードと、第1特殊観察モードと、第2特殊観察モードと、マルチ観察モードとの切替操作に用いられる。通常観察モードは、通常画像をモニタ18上に表示するモードである。第1特殊観察モードは、紫色光V(第1照明光)を観察対象に照明することにより、表層血管などを強調した第1特殊画像をモニタ18上に表示するモードである。第2特殊観察モードは、緑色光G(第1照明光とは発光スペクトルが異なる第2照明光)を観察対象に照明することにより、深層血管を強調した第2特殊画像をモニタ18上に表示するモードである。マルチ観察モードは、紫色光Vと緑色光Gを特定の発光フレーム数の間隔で交互に切り替えて観察対象に照明し、それら光の照明により得られた第1特殊画像と第2特殊画像を特定の表示フレーム数の間隔で交互に切り替えてモニタ18に表示する。なお、本実施形態において、フレームとは、観察対象を撮像する撮像センサ48(
図2参照)を制御するための単位である。照明光の照明期間についてはフレーム数(発光フレーム数(
図6~
図9参照(単に「フレーム」と表記)))で表し、画像の表示期間についてもフレーム数(表示フレーム数)で表す。
【0016】
なお、モードを切り替えるためのモード切替部としては、モード切替SW13aの他に、フットスイッチを用いてもよい。また、操作部12bには、静止画を取得するためのフリーズボタン(図示しない)が設けられている。ユーザーが診断に有効と思われる部位を検出した場合には、モード切替SW13aとフリーズボタンが交互に操作されることがある。
【0017】
プロセッサ装置16は、モニタ18及びユーザーインターフェース19と電気的に接続される。モニタ18は、画像情報等を出力表示する。ユーザーインターフェース19は、機能設定等の入力操作を受け付ける。なお、プロセッサ装置16には、画像情報等を記録する外付けの記録部(図示省略)を接続してもよい。
【0018】
図2に示すように、光源装置14は、光源部20と、光源制御部21と、光路結合部23とを有している。光源部20は、複数波長帯域の光を発光可能で、且つ、各波長帯域の光の発光比率の変更が可能となっている。光源部20は、複数波長帯域の光を発するために、V-LED(Violet Light Emitting Diode)20a、B-LED(Blue Light Emitting Diode)20b、G-LED(Green Light Emitting Diode)20c、R-LED(Red Light Emitting Diode)20dを有している。なお、LEDの代わりに、LD(Laser Diode)を用いてもよい。
【0019】
光源制御部21は、LED20a~20dの駆動を制御する。光路結合部23は、4色のLED20a~20dから発せられる4色の光の光路を結合する。光路結合部23で結合された光は、挿入部12a内に挿通されたライトガイド41及び照明レンズ45を介して、被検体内に照射される。
【0020】
図3に示すように、V-LED20aは、中心波長405±10nm、波長範囲380~420nmの紫色光Vを発生する。B-LED20bは、中心波長460±10nm、波長範囲420~500nmの青色光Bを発生する。G-LED20cは、波長範囲が480~600nmに及ぶ緑色光Gを発生する。R-LED20dは、中心波長620~630nmで、波長範囲が600~650nmに及ぶ赤色光Rを発生する。
【0021】
光源制御部21は、いずれの観察モードにおいても、V-LED20a、B-LED20b、G-LED20c、及びR-LED20dを点灯する制御を行う。また、光源制御部21は、通常観察モード時には、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の発光比率がVc:Bc:Gc:Rcとなる通常光を発光するように、各LED20a~20dを制御する。なお、本明細書において、発光比率とは、各半導体光源の光強度比をいい、光強度比は0(ゼロ)の場合を含む。したがって、各半導体光源のいずれか1つまたは2つ以上が点灯しない場合を含む。例えば、紫色光V、青色光B、緑色光G、及び赤色光R間の光強度比が1:0:0:0の場合のように、半導体光源の1つのみを点灯し、他の3つは点灯しない場合も、発光比率を有するものとする。
【0022】
また、光源制御部21は、第1特殊観察モード時には、
図4に示すように、紫色光Vのみを発光するように、各LED20a~20dを制御する。また、光源制御部21は、第2特殊観察モード時には、
図5に示すように、緑色光Gのみを発光するように、各LED20a~20dを制御する。また、光源制御部21は、マルチ観察モード時には、紫色光Vと緑色光Gを特定の発光フレーム数の間隔で交互に発光するように、各LED20a~20dを制御する。なお、特定の発光フレーム数は少なくとも2フレーム以上であることが好ましい。発光フレーム数が1フレームの場合には、紫色光Vと緑色光Gが混色した混色画像しか得られないためである。また、光源装置14とプロセッサ装置16とで同期をとるためには、光源装置14での照明光に切替に合わせて、プロセッサ装置16で使用するパラメータの切替も行う必要があり、このパラメータの切替に要する時間に少なくとも2フレーム以上必要だからである。加えて、照明光が切り替わることによって点滅が生ずる場合があるため、2フレーム以上の期間にすることによって、点滅による術者への負担を軽減する。
【0023】
また、光源制御部21は、プロセッサ装置16の明るさ情報算出部54から送られる明るさ情報に基づいて、各LED20a~20dから発せられる照明光の発光量を制御する。具体的には、通常観察モード時には、通常観察モードの明るさ情報Ycに基づいて、通常光の発光量を制御する。第1特殊観察モード時には、第1明るさ情報Y1に基づいて、紫色光Vの発光量を制御する。第2特殊観察モード時には、第2明るさ情報Y2に基づいて、緑色光Gの発光量を制御する。マルチ観察モード時には、紫色光Vの照明時に、第1明るさ情報Y1に基づいて、紫色光Vの発光量を制御し、緑色光Gの照明時に、第2明るさ情報Y2に基づいて、緑色光Gの発光量を制御する。紫色光Vと緑色光Gの切替を行う切替期間においては、切替期間の明るさ情報Yxに基づいて、切替後の照明光(例えば、紫色光Vから緑色光Gに切り替える場合には緑色光Gの発光量)の発光量を制御する。
【0024】
図2に示すように、ライトガイド41は、内視鏡12及びユニバーサルコード(内視鏡12と光源装置14及びプロセッサ装置16とを接続するコード)内に内蔵されており、光路結合部23で結合された光を内視鏡12の先端部12dまで伝搬する。なお、ライトガイド41としては、マルチモードファイバを使用することができる。一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3~0.5mmの細径なファイバケーブルを使用することができる。
【0025】
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系30aと撮像光学系30bが設けられている。照明光学系30aは照明レンズ45を有しており、この照明レンズ45を介して、ライトガイド41からの光が観察対象に照射される。撮像光学系30bは、対物レンズ46及び撮像センサ48を有している。観察対象からの反射光は、対物レンズ46を介して、撮像センサ48に入射する。これにより、撮像センサ48に観察対象の反射像が結像される。
【0026】
撮像センサ48はカラーの撮像センサであり、被検体の反射像を撮像して画像信号を出力する。この撮像センサ48は、CMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)撮像センサ等であることが好ましい。したがって、撮像センサ48は、
図6に示すように、複数のラインLine 0~Line nを有し、ラインごとに異なる露光タイミングで露光を行い、ラインごとに異なる読出タイミングで電荷を読み出して画像信号を出力する。例えば、紫色光Vを1フレーム間隔で発光を行う場合には、Line 0では、紫色光V1の発光開始タイミングにて露光タイミングを開始して露光を行い、紫色光V1の発光終了タイミングにて露光タイミングを終了する。この露光タイミングの終了に合わせて、読出タイミングを開始して、Line 0において電荷を読み出して画像信号を出力する。
【0027】
次のLine 1では、紫色光V1の発光開始からLine1用時間後に露光タイミングを開始して露光を行い、紫色光V2の発光開始からLine1用時間後に露光タイミングを終了する。この露光タイミングの終了に合わせて、読出タイミングを開始して、Line 1において電荷を読み出して画像信号を出力する。Line 2~Line nについても、ライン毎に異なる露光タイミング及び読出タイミングとなるように、露光及び読出しを行う。Line nの画像信号の出力の完了により、Line 0~Line nの画像信号を有する第1特殊画像が得られる。
【0028】
また、撮像センサ48は、R(赤)、G(緑)及びB(青)の3色のRGB画像信号を得るためのカラーの撮像センサ、即ち、Rフィルタが設けられたR画素、Gフィルタが設けられたG画素、Bフィルタが設けられたB画素を備えた、いわゆるRGB撮像センサである。したがって、通常観察モード時には、通常光で照明された観察対象を撮像センサ48により撮像することにより、B画素からBc画像信号を、G画素からGc画像信号を、R画素からRc画像信号を出力する。
【0029】
また、第1特殊観察モード時には、紫色光Vで照明された観察対象を撮像センサ48により撮像することにより、B画素からBs1画像信号を、G画素からGs1画像信号を、R画素からRs1画像信号を出力する。また、第2特殊観察モード時には、緑色光Gで照明された観察対象を撮像センサ48により撮像することにより、B画素からBs2画像信号を、G画素からGs2画像信号を、R画素からRs2画像信号を出力する。また、マルチ観察モード時には、紫色光Vの照明時に、B画素、G画素、R画素からBs1画像信号、Gs1画像信号、Rs1画像信号を出力し、緑色光Gの照明時に、B画素、G画素、R画素からBs2画像信号、Gs2画像信号、Rs2画像信号を出力する。また、紫色光Vと緑色光Gの切替を行う切替期間においては、B画素、G画素、R画素からBsx画像信号、Gsx画像信号、Rsx画像信号を出力する。
【0030】
なお、撮像センサ48としては、RGBのカラーの撮像センサの代わりに、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)及びG(緑)の補色フィルタを備えた、いわゆる補色撮像センサであっても良い。補色撮像センサを用いる場合には、CMYGの4色の画像信号が出力されるため、補色-原色色変換によって、CMYGの4色の画像信号をRGBの3色の画像信号に変換する必要がある。また、撮像センサ48はカラーフィルタを設けていないモノクロ撮像センサであっても良い。この場合、光源制御部21は青色光B、緑色光G、及び赤色光Rを時分割で点灯させて、撮像信号の処理では同時化処理を加える必要がある。
【0031】
撮像センサ48から出力される画像信号は、CDS・AGC回路50に送信される。CDS・AGC回路50は、アナログ信号である画像信号に相関二重サンプリング(CDS(Correlated Double Sampling))や自動利得制御(AGC(Auto Gain Control))を行う。CDS・AGC回路50を経た画像信号は、A/D変換器(A/D(Analog /Digital)コンバータ)52により、デジタル画像信号に変換される。A/D変換されたデジタル画像信号は、プロセッサ装置16に入力される。
【0032】
プロセッサ装置16は、画像取得部53と、明るさ情報算出部54と、DSP(Digital Signal Processor)56と、ノイズ除去部58と、画像処理部60と、パラメータ切替部62と、映像信号生成部66とを備えている。画像取得部53には、内視鏡12からのデジタルのカラー画像信号が入力される。カラー画像信号は、撮像センサ48のR画素から出力されるR画像信号と、撮像センサ48のG画素から出力されるG画像信号と、撮像センサ48のB画素から出力されるB画像信号とから構成されるRGB画像信号である。
【0033】
明るさ情報算出部54は、画像取得部53から入力されるRGB画像信号に基づいて、観察対象の明るさを示す明るさ情報を算出する。算出した明るさ情報は光源制御部21に送られ、照明光の発光量の制御に用いられる。通常観察モードでは、Bc画像信号、Gc画像信号、Rc画像信号に基づき、通常用算出係数αc、βc、γcを用いて、下記(式1)により、通常光の発光期間における観察対象の明るさを示す通常観察モードの明るさ情報Ycを算出する。
(式1)Yc=αc×Bc画像信号+βc×Gc画像信号+γc×Rc画像信号
【0034】
また、第1特殊観察モードでは、Bs1画像信号、Gs1画像信号、Rs1画像信号(第1画像信号)に基づき、第1明るさ算出係数α1、β1、γ1を用いて、下記式2)により、紫色光Vの照明期間における観察対象の明るさを示す第1明るさ情報を算出する。
(式2)Y1=α1×Bc1画像信号+β1×Gc1画像信号+γ1×Rc1画像信号
【0035】
また、第2特殊観察モードでは、Bs2画像信号、Gs2画像信号、Rs2画像信号(第2画像信号)に基づき、第2明るさ算出係数α2、β2、γ2を用いて、下記式3)により、緑色光Gの照明期間における観察対象の明るさを示す第2明るさ情報を算出する。
(式3)Y2=α2×Bc2画像信号+β2×Gc2画像信号+γ2×Rc2画像信号
【0036】
また、マルチ観察モードでは、紫色光Vの照明期間においては、第1特殊観察モードの場合と同様にして、紫色光Vの照明期間における観察対象の明るさを示す第1明るさ情報を算出し、緑色光Gの照明期間においては、第2特殊観察モードの場合と同様にして、緑色光Gの照明期間における観察対象の明るさを示す第2明るさ情報を算出する。
図7~
図9に示すように、紫色光Vの照明期間においては、第1明るさ情報を表す第1明るさ画像は、第1明るさ情報に対応する明るさを持つ画像となっている。一方、紫色光の照明期間においては、第2明るさ情報を表す第2明るさ画像は、画素値がほぼ「0」の黒色画像となっている。反対に、緑色光Gの照明期間においては、第2明るさ情報を表す第2明るさ画像は、第2明るさ情報に対応する明るさを持つ画像となっている。一方、緑色光Gの照明期間においては、第1明るさ情報を表す第1明るさ画像は、画素値がほぼ「0」の黒色画像となっている。
【0037】
また、ローリングシャッタ方式の撮像センサ48にて観察対象の撮像を行った場合には、切替期間においては、撮像センサ48に対して、紫色光Vと緑色光Gとがミックスされて露光されるため、それら2色の照明光が混色した混色画像がモニタ18に表示される。また、第1明るさ算出係数又は第2明るさ算出係数のいずれか一方の明るさ算出係数により、切替期間における観察対象の明るさを示す切替期間の明るさ情報を算出した場合には、ローリングシャッタ方式の撮像センサ48にて観察対象の撮像が行われることで、切替期間の明るさ情報を表す切替期間の明るさ画像は、空間的に明るさが異なるグラデーション画像となっている。このようなグラデーション画像の場合には、明るさ情報算出部54では、切替期間の明るさ情報を正確に算出できない。なお、第1明るさ算出係数α1、β1、γ1に基づくグラデーション画像は、上から下にかけて徐々に暗くなっていくのに対して、第2明るさ算出係数α2、β2、γ2に基づくグラデーション画像は、上から下にかけて徐々に明るくなっていく。なお、切替期間は、照明光の切替前に、切替前の照明光に基づいて、撮像センサ48の最初のライン(Line 0)について露光及び読出を開始してから、切替後の照明光に基づいて、最後のライン(Line n)について露光及び読出が完了するまでの期間であることが好ましい。例えば、切替期間は少なくとも2フレーム以上であることが好ましい。
【0038】
そこで、切替期間において、撮像センサ48に対して、紫色光Vと緑色光Gとがミックスして露光されている場合であっても、切替期間における観察対象の明るさを正確に算出することができるように、第1明るさ算出係数α1、β1、γ1と第2明るさ算出係数α2、β2、γ2に基づいて、切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxを算出する。この切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxは、予めプロセッサ装置16内で記憶されている第1明るさ算出係数と第2明るさ算出係数とを用いて算出されるため、切替期間専用の係数を記憶しておく必要性がない。そのため、プロセッサ装置16におけるメモリ容量を抑えることができる。そして、Bsx画像信号、Gsx画像信号、Rsx画像信号(切替期間の画像信号)に基づき、切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxを用いて、下記(式4)により、切替期間における観察対象の明るさを示す切替期間の明るさ情報Yxを算出する。切替期間の明るさ情報Yxに基づく特定画像は、上記のようなグラデーション画像と比較して、明るさの空間的なバラツキが抑えられた画像となっている。
(式4)Yx=αx×Bsx画像信号+βx×Gsx画像信号+γx×Rsx画像信号
【0039】
ここで、明るさ情報算出部54は、第1明るさ算出係数Y1と第2明るさ算出係数Y2とを特定の重み付け係数にて重み付けして加算することにより、切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxを算出する。例えば、明るさ情報算出部54は、
図7に示すように、下記(式5)により、第1明るさ算出係数α1、β1、γ1と第2明るさ算出係数α2、β2、γ2の平均値を、切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxとして算出してもよい。
(式5)αx=(α1+α2)/2、
βx=(β1+β2)/2、
γx=(γ1+γ2)/2
【0040】
また、明るさ情報算出部54は、
図8に示すように、下記(式6)により、撮像センサ48における特定のラインi(「0」~「n」のいずれか)に対応するライン用重み付け係数を、第1明るさ算出係数α1、β1、γ1と第2明るさ算出係数α2、β2、γ2に対して重み付けして加算することにより、切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxとして算出してもよい。なお、iが「0」の場合は、αxはα1、βxはβ1、γxはγ1となる。また、iが「n」の場合は、αxはα2、βxはβ2、γxはγ2となる。
(式6)αx=α1×(n-i)/n+α2×i/n
βx=β1×(n-i)/n+β2×i/n
γx=γ1×(n-i)/n+β2×i/n
【0041】
また、明るさ情報算出部54は、
図9に示すように、Bsx画像信号、Gsx画像信号、Rsx画像信号における特定のエリアに対応するエリア用重み付け係数を、第1明るさ算出係数α1、β1、γ1と第2明るさ算出係数α2、β2、γ2に対して重み付けして加算することにより、切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxとして算出してもよい。例えば、Bsx画像信号において、特定のエリアとして、中央部分のエリアP1とそのエリアP1の周辺のエリアP2の2つのエリアがある場合に、エリアP1に対しては第1明るさ算出係数α1、β1、γ1を用い、エリアP2に対しては第2明るさ算出係数α2、β2、γ2を用いる。この場合には、総画素数mのBsx画像信号のうち、エリアP1において第1明るさ算出係数α1、β1、γ1を用いて算出する画素数がpであり、エリアP2において第2明るさ算出係数α2、β2、γ2を用いて算出する画素数がqである場合、下記(式7)により、切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxを算出する。
(式7)αx=p/m×α1+q/m×α2
βx=p/m×β1+q/m×β2
γx=p/m×γ1+q/m×γ2
なお、(式7)のうち「p/m」、「q/m」が、それぞれエリア用重み付け係数に対応する。
【0042】
DSP56は、受信した画像信号に対して、欠陥補正処理、オフセット処理、ゲイン処理、色調整処理、ガンマ変換処理、又はデモザイク処理等の各種信号処理を施す。欠陥補正処理では、撮像センサ48の欠陥画素の信号が補正される。オフセット処理では、欠陥補正処理が施されたRGB画像信号から暗電流成分が除かれ、正確な零レベルが設定される。
【0043】
ゲイン処理では、オフセット処理後のRGB画像信号にゲインパラメータを乗じることにより信号レベルが整えられる。その後、ガンマ変換処理によって明るさや彩度が整えられる。リニアマトリクス処理後のRGB画像信号には、デモザイク処理(等方化処理、同時化処理とも言う)が施され、各画素で不足した色の信号が補間によって生成される。このデモザイク処理によって、全画素がRGB各色の信号を有するようになる。
【0044】
ノイズ除去部58は、DSP56でガンマ補正等が施されたRGB画像信号に対してノイズ除去処理(例えば移動平均法やメディアンフィルタ法等)を施すことによって、RGB画像信号からノイズを除去する。ノイズが除去されたRGB画像信号は、画像処理部60に送信される。
【0045】
画像処理部60は、RGB画像信号に対して、各種の画像処理を施す。各種の画像処理には、観察モードに関わらず同じ条件で行われる画像処理の他、観察モード毎に異なる条件で行われる画像処理がある。観察モード毎に異なる条件で行われる画像処理には、色再現性を高めるための色調整処理、及び、血管や凹凸などの各種構造を強調するための構造強調処理が含まれる。色調整処理及び構造強調処理は、2次元LUT(Look Up Table)、3次元LUT(Look Up Table)、又はマトリックスなどを用いる処理である。画像処理部60では、色強調処理及び構造強調処理を行う場合には、観察モード毎に設定された色強調処理パラメータと、構造強調処理パラメータが用いられる。これら色強調処理パラメータ又は構造強調処理パラメータの切替は、モード切替SW13aが操作されたことに従って、パラメータ切替部62により行われる。また、パラメータ切替部62は、マルチ観察モードにおいては、紫色光Vの発光時には紫色光Vに対応するパラメータ(第1特殊観察モードと同様)に切り替え、緑色光Gの発光時には緑色光Gに対応するパラメータ(第2特殊観察モードと同様)に切り替える。
【0046】
映像信号生成部66は、画像処理部60から入力された通常画像、第1特殊画像、又は第2特殊画像を、モニタ18で表示可能な画像として表示するための映像信号に変換する。この映像信号に基づいて、モニタ18は、各観察モードに対応する観察画像を表示する。通常観察モードの場合は、通常画像をモニタ18に表示する。第1特殊観察モードの場合は、第1特殊画像をモニタ18に表示する。第2特殊観察モードの場合は、第2特殊画像をモニタ18に表示する。マルチ観察モードの場合は、紫色を帯びた第1特殊画像と緑色を帯びた第2特殊画像とを、特定の表示フレーム数の間隔で切り替えてモニタ18に表示する(
図7~
図9参照)。
【0047】
次に、マルチ観察モードにおける光源制御について、
図10のフローチャートに沿って説明を行う。マルチ観察モードに設定されると、紫色光Vが観察対象に対して照明される。紫色光Vは特定の発光フレーム数の間隔で発光される。紫色光Vにより照明された観察対象をローリングシャッタ方式の撮像センサ48により撮像することにより、Bs1画像信号、Gs1画像信号、Rs1画像信号が得られる。これらBs1画像信号、Gs1画像信号、Rs1画像信号に対して、それぞれ第1明るさ算出係数α1、β1、γ1を掛け合わせることにより、紫色光の照明期間における観察対象の明るさを示す第1明るさ情報が得られる。光源制御部21は、第1明るさ情報に基づいて、紫色光Vの発光量の制御を行う。
【0048】
特定の発光フレーム数分の紫色光Vの発光が完了したら、緑色光Gへの発光に切り替える。紫色光Vと緑色光Gの切替を行う切替期間において、撮像センサ48により観察対象の撮像を行うことにより、Bsx画像信号、Gsx画像信号、Rsx画像信号が得られる。これらBsx画像信号、Gsx画像信号、Rsx画像信号に対して、それぞれ切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxを掛け合わせることにより、切替期間における観察対象の明るさを示す切替期間の明るさ情報を算出する。切替期間用の明るさ算出係数αx、βx、γxは、紫色光Vの照明時に用いる第1明るさ算出係数α1、β1、γ1と、切替期間以外の緑色光の照明時に用いる第2明るさ算出係数α2、β2、γ2とに基づいて得られる。これにより、切替期間において、撮像センサ48に対して、紫色光Vと緑色光Gとがミックスして露光されている場合であっても、正確に明るさ情報を算出することができる。そのため、緑色光G(又は紫色光V)の発光量の制御を正確に行うことができる。
【0049】
切替期間後は、緑色光Gが特定の発光フレーム数の間隔で発光される。緑色光Gにより照明された観察対象を撮像センサ48により撮像することにより、Bs2画像信号、Gs2画像信号、Rs2画像信号が得られる。これらBs2画像信号、Gs2画像信号、Rs2画像信号に対して、それぞれ第2明るさ算出係数α2、β2、γ2を掛け合わせることにより、緑色光Gの照明期間における観察対象の明るさを示す第2明るさ情報が得られる。光源制御部21は、第2明るさ情報に基づいて、緑色光Gの発光量の制御を行う。以上の一連の流れは、マルチ観察モードが継続する限り、繰り返し行われる。
【0050】
なお、上記実施形態では、マルチ観察モードにおいて、紫色光Vと緑色光Gと切り替えて発光しているが、第1発光比率を有する第1照明光と、第1発光比率と異なる第2発光比率を有する第2照明光とを切り替えて発光するようにしてもよい。例えば、第1照明光は、表層血管を強調するために、400nm以上440nm以下にピークを有することが好ましい。そのため、第1照明光は、
図11に示すように、紫色光Vの光強度が、その他の青色光B、緑色光G、及び赤色光Rの光強度よりも大きくなるように、第1発光比率Vs1:Bs1:Gs1:Rs1が設定されている(Vs1>Bs1、Gs1、Rs1)。また、第1照明光は、赤色光Rのような赤色帯域を有しているため、粘膜の色を正確に再現することができる。さらに、第1照明光は、紫色光V、青色光B、緑色光Gのように青色帯域及び緑色帯域を有しているため、上記のような表層血管の他、腺管構造や凹凸など各種構造も強調することができる。
【0051】
また、第2照明光は、深層血管を強調するために、540nm、600nm、又は630nmのうち少なくともいずれかの強度比を大きくすることが好ましい。そのために、第2照明光は、
図12に示すように、第1照明光における青色光B、緑色光G、及び赤色光Rの光強度と比較して、緑色光G又は赤色光Rの光強度が大きくなるように、第2発光比率Vs2:Bs2:Gs2:Rs2が設定されている。また、第2照明光は、赤色光Rのような赤色帯域を有しているため、粘膜の色を正確に再現することができる。さらに、第2照明光は、紫色光V、青色光B、緑色光Gのように青色帯域及び緑色帯域を有しているため、上記のような深層血管の他、凹凸など各種構造も強調することができる。
【0052】
[第2実施形態]
第2実施形態では、第1実施形態で示した4色のLED20a~20dの代わりに、レーザ光源と蛍光体を用いて観察対象の照明を行う。それ以外については、第1実施形態と同様である。
【0053】
図13に示すように、第2実施形態の内視鏡システム100では、光源装置14において、4色のLED20a~20dの代わりに、中心波長445±10nmの青色レーザ光を発する青色レーザ光源(
図13では「445LD」と表記)104と、中心波長405±10nmの青紫色レーザ光を発する青紫色レーザ光源(
図13では「405LD」と表記)106とが設けられている。これら各光源104及び106の半導体発光素子からの発光は、光源制御部108により個別に制御されており、青色レーザ光源104の出射光と、青紫色レーザ光源106の出射光の光量比は変更自在になっている。
【0054】
光源制御部108は、通常観察モードの場合には、青色レーザ光源104を駆動させる。第1特殊観察モードの場合には、青色レーザ光源104と青紫色レーザ光源106の両方を駆動させ、且つ、青紫色レーザ光の発光比率Lv1を青色レーザ光Lb1の発光比率よりも大きくなるように制御する。第2特殊観察モードの場合には、青色レーザ光源104と青紫色レーザ光源106の両方を駆動させ、且つ、青色レーザ光の発光比率Lb2を青紫色レーザ光の発光比率Lv2よりも大きくなるように制御する。マルチ観察モードの場合には、青色レーザ光源104と青紫色レーザ光源106の両方を駆動させ、且つ、青紫色レーザ光の発光比率Lv1を青色レーザ光Lb1の発光比率よりも大きくする制御と、青色レーザ光の発光比率Lb2を青紫色レーザ光の発光比率Lv2よりも大きくする制御とを、特定の発光フレーム数の間隔で切り替える制御を行う。
【0055】
なお、青色レーザ光又は青紫色レーザ光の半値幅は±10nm程度にすることが好ましい。また、青色レーザ光源104及び青紫色レーザ光源106は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としてもよい。
【0056】
照明光学系30aには、照明レンズ45の他に、ライトガイド41からの青色レーザ光又は青紫色レーザ光が入射する蛍光体110が設けられている。蛍光体110に、青色レーザ光が照射されることで、蛍光体110から蛍光が発せられる。また、一部の青色レーザ光は、そのまま蛍光体110を透過する。青紫色レーザ光は、蛍光体110を励起させることなく透過する。蛍光体110を出射した光は、照明レンズ45を介して、検体内に照射される。
【0057】
ここで、通常観察モードにおいては、主として青色レーザ光が蛍光体110に入射するため、
図15に示すような、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体110から励起発光する蛍光を合波した通常光が、観察対象に照射される。第1特殊観察モードにおいては、青紫色レーザ光と青色レーザ光の両方が蛍光体110に入射するため、
図16に示すような、青紫色レーザ光、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体110から励起発光する蛍光を合波した第1照明光が、検体内に照射される。この第1特殊光においては、青紫色レーザ光の光強度は青色レーザ光の光強度よりも大きくなっている。
【0058】
第2特殊観察モードにおいても、青紫色レーザ光と青色レーザ光の両方が蛍光体110に入射するため、
図17に示すような、青紫色レーザ光、青色レーザ光、及び青色レーザ光により蛍光体110から励起発光する蛍光を合波した第2照明光が、検体内に照射される。この第2特殊光においては、青色レーザ光の光強度は青紫色レーザ光の光強度よりも大きくなっている。また、マルチ観察モードにおいては、青紫色レーザ光と青色レーザ光の両方が蛍光体110に入射する一方、青紫色レーザ光と青色レーザ光の光強度の大小関係が切り替わるため、
図16に示す第1照明光と
図17に示す第2照明光とが、特定の発光フレーム数の間隔で切り替えて発光される。
【0059】
なお、蛍光体110は、青色レーザ光の一部を吸収して、緑色~黄色に励起発光する複数種の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、或いはBAM(BaMgAl10O17)等の蛍光体)を含んで構成されるものを使用することが好ましい。本構成例のように、半導体発光素子を蛍光体110の励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の白色光が得られ、白色光の強度を容易に調整できる上に、白色光の色温度及び色度の変化を小さく抑えることができる。
【0060】
上記実施形態において、画像取得部53、明るさ情報算出部54、DSP56、ノイズ除去部58、画像処理部60、パラメータ切替部62など、プロセッサ装置16に含まれる処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0061】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0062】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。
【符号の説明】
【0063】
10 内視鏡システム
12 内視鏡
12a 挿入部
12b 操作部
12c 湾曲部
12d 先端部
12e アングルノブ
14 光源装置
16 プロセッサ装置
18 モニタ
19 ユーザーインターフェース
20 光源部
20a V-LED(Violet Light Emitting Diode)
20b B-LED(Blue Light Emitting Diode)
20c G-LED(Green Light Emitting Diode)
20d R-LED(Red Light Emitting Diode)
21 光源制御部
23 光路結合部
30a 照明光学系
30b 撮像光学系
41 ライトガイド
45 照明レンズ
46 対物レンズ
48 撮像センサ
50 CDS/AGC回路
53 画像取得部
54 明るさ情報算出部
56 DSP(Digital Signal Processor)
58 ノイズ除去部
60 画像処理部
62 パラメータ切替部
66 映像信号生成部
100 内視鏡システム
104 青色レーザ光源
106 青紫色レーザ光源
108 光源制御部
110 蛍光体