(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-09
(45)【発行日】2022-05-17
(54)【発明の名称】分散装置及びこれを含む脱泡装置
(51)【国際特許分類】
B01D 19/00 20060101AFI20220510BHJP
D01D 1/10 20060101ALI20220510BHJP
【FI】
B01D19/00 E
D01D1/10
B01D19/00 101
(21)【出願番号】P 2020538807
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 KR2019010574
(87)【国際公開番号】W WO2020040524
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-07-13
(31)【優先権主張番号】10-2018-0097495
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0076630
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】チャン、チョン-キ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、チョン-フン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、チュン-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】イム、イェ-フン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ヨン-ス
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/134122(WO,A1)
【文献】特公昭63-52926(JP,B2)
【文献】特開昭54-3968(JP,A)
【文献】特開昭51-50991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
D01D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側に傾いて延長された傾斜面、及び傾斜面の上部に形成されて原料を傾斜面に流入させる原料流入ノズルを具備する分散板;及び
分散板の傾斜面から離隔されて傾斜面との間に隙間を形成することで原料が隙間を通じて流れるように構成されるバンドを含
み、
傾斜面は、半円錐形状で構成され、バンドは、傾斜面の上側に延長されるダム形状及び傾斜面のまわり方向に延長されるリング形状で構成され、
傾斜面からバンドを離隔させ、離隔されたバンドを支持及び固定するために、連結部材や支持部材を用いてバンドを離隔させると同時に、傾斜面に固定して、
原料Fは、傾斜面とバンドとの間の隙間を通過しながら、通過前よりさらに広い面積に広がるようになる、分散装置。
【請求項2】
分散板は、
傾斜面の上端に形成されたホール、ホールを取り囲むように上側に延長された内壁、傾斜面の下部末端から下側に延長された側面を追加で具備し、原料流入ノズルは、内壁に隣接して配置されることを特徴とする、
請求項1に記載の分散装置。
【請求項3】
バンドは、傾斜面に2~5個で配置されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の分散装置。
【請求項4】
傾斜面とバンドとの間の隙間の厚さは、1~5mmであることを特徴とする、
請求項1~3のいずれか一項に記載の分散装置。
【請求項5】
傾斜面の傾斜角度は、水平面を基準で20~40度であることを特徴とする、
請求項1~4のいずれか一項に記載の分散装置。
【請求項6】
原料流入ノズルは、
分散板のまわり方向に沿って60~180度間隔ごとに2~6個で配置されることを特徴とする、
請求項1~5のいずれか一項に記載の分散装置。
【請求項7】
真空ポンプと連結される真空ホール及び脱泡された原料が排出される排出ホールを具備するチャンバ;及び
チャンバの内部に配置される
請求項1~6のいずれか一項に記載の分散装置を含むことを特徴とする、脱泡装置。
【請求項8】
脱泡装置は、原料が分散装置を通じて分散された後にチャンバの内壁に沿って下側に落ちながら流れて流下フィルムを形成する流下フィルム脱泡装置であることを特徴とする、
請求項7に記載の脱泡装置。
【請求項9】
原料は、重合体及び残留モノマーを含むことを特徴とする、
請求項7または8に記載の脱泡装置。
【請求項10】
原料に含まれた気泡及び残留モノマーを同時に除去し、残留モノマー除去率は、60%以上であることを特徴とする、
請求項9に記載の脱泡装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散装置及びこれを含む脱泡装置に関し、特に、流下フィルム(falling film)脱泡装置に用いられる分散装置及びこれを含む流下フィルム脱泡装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、従来の脱泡装置を示す概略図であって、従来の脱泡装置10は、チャンバ11、分散部材12、原料供給部20及び真空ホール17を含む。真空ホール17は、真空ポンプと連結される。
【0003】
分散部材12は、リング形状を有するベース部13、ベース部13の内径側に配置される内壁15及びベース部13の外径側に配置される外壁14を含み、分散部材12には、原料が貯蔵される。このとき、分散部材12のベース部13の中央領域には、真空ホール17と連結される貫通ホール16が形成される。
【0004】
原料供給部20から分散部材12に原料が供給されると、ベース部13に原料が収容され、原料のレベルが分散部材12の所定高さに到逹するまで原料が分散部材12に滞留するようになり、外壁14を氾濫して原料がチャンバ11の内側に塗布される。
【0005】
しかし、分散部材12内に原料が停滞されることにより、ファウリング(fouling)が発生する問題を有する。
【0006】
また、従来技術では、均一な壁面塗布のための複雑なデザインの上部分配機(distributor)及びフィルム壁面に均一に塗布させるためのワイパー(wiper)のような機械的装置の設置が必要なので、設置費用が増加して運転と維持補修が難しいという短所が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ファウリングを防止することができ、設置費用を減少することができ、運転と維持補修が容易である分散装置を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、脱泡効率及び残留モノマーの制御率を増加させ得る脱泡装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した目的を達成するために、下側に傾いて延長された傾斜面、及び傾斜面の上部に形成されて原料を傾斜面に流入させる原料流入ノズルを備える分散板;及び分散板の傾斜面から離隔されて傾斜面との間に隙間を形成することで原料が隙間を通じて流れるように構成されるバンドを含む分散装置を提供する。
【0010】
本発明で傾斜面は、半円錐形状で構成され得、バンドは、傾斜面の上側に延長されるダム形状及び傾斜面のまわり方向に延長されるリング形状で構成され得る。
【0011】
本発明で分散板は、中央に形成されたホール、ホールを取り囲むように上側に延長された内壁、傾斜面の下部末端から下側に延長された側面を追加で具備することができ、原料流入ノズルは、内壁に隣接するように配置され得る。
【0012】
本発明でバンドは、傾斜面に2~5個で配置され得る。
【0013】
本発明で傾斜面とバンドとの間の隙間の厚さは、1~5mmであってもよい。
【0014】
本発明で傾斜面の傾斜角度は、水平面を基準で20~40度であってもよい。
【0015】
本発明で原料流入ノズルは、60~180度間隔ごとに2~6個で配置され得る。
【0016】
また、本発明は、真空ポンプと連結される真空ホール及び脱泡された原料が排出される排出ホールを具備するチャンバ;及びチャンバの内部に配置される上述した分散装置を含む脱泡装置を提供する。
【0017】
本発明による脱泡装置は、原料が分散装置を通じて分散された後にチャンバの内壁に沿って下側に落ちながら流れて流下フィルムを形成する流下フィルム脱泡装置であってもよい。
【0018】
本発明で原料は、重合体及び残留モノマーを含む溶液であってもよい。
【0019】
本発明による脱泡装置は、原料に含まれた気泡及び残留モノマーを同時に除去することができ、残留モノマーの除去率は、60%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、分散板にダム(dam)形式のリングバンド(ring band)を設置することで、原料溶液が均一に分布されるようにして脱泡効率及び残留モノマーの除去率が増加する特徴がある。
【0021】
また、本発明による分散装置は、分散板とリングバンドで構成される比較的単純なデザインを有するので、従来技術に比べて設置費用が減少し、かつ運転と維持補修が容易になる長所がある。
【0022】
また、従来技術の貯蔵所(reservoir)には、塗布液が停滞してファウリングが発生する恐れがあるが、本発明の分散装置では停滞領域がなくてファウリングを効果的に防止することができる。
【0023】
また、従来技術の場合、流入ノズル(inlet nozzle)をたくさん設置すると均一塗布が可能であるが、本発明の分散装置には、流入ノズルを相対的に少なく設置しても均一塗布が可能である。
【0024】
また、本発明の脱泡装置を用いる場合、従来技術と同等以上の脱泡効果及び残留モノマーの除去率を得ることができ、設置費用及び運営費用を減少させることができるので、事業的価値が高い。
【0025】
また、本発明の脱泡装置を用いる場合、単純な構造で複雑な機械的装置なしに脱泡及び残留モノマーの除去が可能なので、技術的価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、従来の脱泡装置の概略的な構成図である。
【
図2】
図2は、本発明による脱泡装置の概略的な構成図である。
【
図3】
図3は、本発明による分散板とリングバンドを具備する分散装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0028】
図2は、本発明による脱泡装置の概略的な構成図であり、
図3は、本発明による分散板とリングバンドを具備する分散装置の構成図であって、本発明による脱泡装置は、チャンバ110、分散板120、原料供給部130、リングバンド140、141などで構成され得る。
【0029】
本発明による脱泡装置は、原料から気泡及び残留モノマーを除去する脱泡工程に用いられ得、例えば、重合された溶液からファイバー(Fiber)を製造する放射工程内の脱泡工程に用いられ得る。ファイバーの製造工程で、溶液から気泡及び残留モノマーを除去することで、ファイバーが切れる工程の不安定などを解消することができる。
【0030】
図2を参照すると、チャンバ110は、円筒状で構成され得、下部は直径が減少するテーパー構造を有することができる。チャンバ110の上部には、真空ポンプと連結される真空ホール112が形成され、チャンバ110の下部には、脱泡されて残留モノマーが除去された原料が排出される排出ホール113が形成され得る。真空ホール112は、図面に例示されたように、チャンバ110の内壁111側に配置され得、またチャンバ110の中心軸Cと同軸で配置され得る。類似に、排出ホール113も中心軸Cと同軸で配置されるか内壁111側に配置され得る。
【0031】
図2で分散板120は、簡略化のために四角形に例示されているが、分散板120の具体的な構造は、
図3と同一であり、分散板120に対しては詳細に後述する。
【0032】
分散板120は、チャンバ110の上部側に配置され得、原料供給部130は、分散板120の上部側に配置され得るが、分散板120と原料供給部130の位置はこれに制限されない。原料供給部130は、チューブやパイプ形態などで構成され得、分散板120の原料流入ノズルと連結され得る。
【0033】
原料供給部130から分散板120にポンプや重力などによって溶液形態の原料Fが供給されると、原料Fは、分散板120の表面に沿って流れてから、チャンバ110の内壁111に沿って下方へ落ちながら流れて所定厚さの均一な流下フィルムを形成する。このとき、真空ホール112と連結された真空ポンプ(図示せず)によりチャンバ110内には陰圧が形成され、チャンバ110の内壁111に形成された流下フィルムから気泡が除去され得る。すなわち、原料を薄いフィルムに形成するために別途の装備などを用いて外力を加えなくても分散板120を通じて原料Fをチャンバ110の内壁面に均一に塗布することで、原料Fがチャンバ110の内面に沿って重力方向に流れながら均一な厚さのフィルムが形成され得る。
図2で矢印で表示された内壁111領域を脱泡領域と見られる。
【0034】
図3の上部図面は、分散板120及びリングバンド140、141の部分側面図であり、
図3の下部図面は、分散板120及びリングバンド140、141を上側から見た斜視図である。
図3を参照すると、分散板120は、通過ホール121、内壁122、原料流入ノズル123、傾斜面124、側面125などで構成され得る。分散板120は、上から見たとき円盤形態で構成され、側面から見たときには、上部が切られた
半円錐形態で構成され得る。分散板120は、濡れ(wetting)特性に優れた材質、例えば、SUS材質のような金属材質又はプラスチック材質で形成され得る。
【0035】
分散板120は、好ましくは、全体的に板形態で構成され得る。すなわち、半円錐形状の分散板120の下部は開放され、内部は空の状態であってもよい。しかし、これとは異なり、下部が密閉されるか、内部が満たされていてもよい。分散板120が板形態である場合、原料流入ノズル123を除いて内壁122、傾斜面124及び側面125は、全て板形態で構成され得、この場合、傾斜面124は傾斜板で構成され、側面125は側板で構成され得る。溶液形態の原料は、分散板120の外面である傾斜面124及び側面125に沿って流れるようになる。
【0036】
通過ホール121は、チャンバ110の真空ホール112側にガス(空気、気泡、揮発された残留モノマーなど)を通過させる役目をする。すなわち、通過ホール121は、分散板120を貫通するように形成されて真空ホール112とチャンバ110の下部領域に流体が移動するように連結する。通過ホール121は、分散板120の中央に形成され得、またチャンバ110の中心軸Cと同軸で配置され得る。通過ホール121は、円形で構成され得、その直径は、例えば、分散板120の全体直径に対して10~40%であってもよい。通過ホール121の直径が過度に小さいと、圧力降下が大きく発生して真空圧力が十分に伝達されないことがある。
【0037】
内壁122は、原料Fが通過ホール121側に流れないように阻む役目をし、またガス流れをガイドする役目もすることができる。内壁122は、リング形態で通過ホール121を取り囲むように上側垂直方向(仮想水平面基準)に延長されて形成され得る。内壁122の高さは、例えば、分散板120の全体高さに対して10~40%であってもよい。
【0038】
原料流入ノズル123は、分散板120の上面(外面)である傾斜面124に原料を供給する役目をする。原料流入ノズル123は、原料供給部130とチューブやパイプなどで連結され得る。原料流入ノズル123は、内壁122に隣接して又は内壁122と接触して形成され得る。原料流入ノズル123は、傾斜面124から上側垂直方向(仮想水平面基準)に突出形成され得、その上部が開放され得る。原料流入ノズル123は、傾斜面124に置かれるので、その高さが一定である場合、
図3のように、側面から見たとき台形で構成され得、これによって、原料流入ノズル123の上端部も下向きに傾けられる。
【0039】
原料は、例えば、原料流入ノズル123の下部から供給されて満ちてから、原料流入ノズル123の開放された上部を通じて低い位置にある下側上端部からあふれることで、傾斜面124に流入され得る。しかし、これと異なり、原料は、原料流入ノズル123の側面に形成されたホール、又は原料流入ノズル123と傾斜面124の間に形成された隙間を通じて傾斜面124に流入されてもよい。
【0040】
原料流入ノズル123は、均一塗布及び費用などを考慮して分散板120又は内壁122のまわり方向に沿って60~180度、好ましくは、72~120度間隔ごとに、2~6個、好ましくは、3~5個で設置され得る。
図3には、90度間隔で4個の原料流入ノズル123が設置されている。原料流入ノズル123の間隔は、一定な等間隔であることが好ましい。原料流入ノズル123の数が過度に少ないと、均一塗布が難しく、過度に多いと、構造が複雑になり、費用が増加する。原料流入ノズル123の直径は特に制限されず、例えば、分散板120の全体直径に対して1~10%であってもよい。従来技術では、原料流入ノズルをたくさん設置すると均一塗布が可能であるが、本発明では、分散板120の傾斜構造とダム形式のリングバンド140、141などにより原料流入ノズル123を相対的に少なく設置しても均一塗布が可能である。
【0041】
傾斜面124は、原料Fが停滞されないで均一に流れるようにする役目をする。傾斜面124は、内壁122からチャンバ内壁111と隣接した部位である側面125まで下側に傾いて延長されて形成され得る。傾斜面124は、分散板120の大部分の面積を占め、例えば、通過ホール121を含んだ分散板120の全体面積のうち65~95%を占めることができる。
図3で赤色で表示した原料Fにより遮られているが、原料Fが塗布された領域も傾斜面124領域である。傾斜面124は、分散板120の大部分を占めるので、分散板120のように
半円錐形状で構成され得る。
【0042】
傾斜面124の傾斜角度Aは、原料溶液粘度、原料流入ノズル123の個数などを考慮して適切に設定され得るが、例えば、仮想の水平面を基準で20~40度、好ましくは、25~35度又は28~32度であってもよい。傾斜角度Aが過度に小さいと、原料Fが停滞されるか流れ速度が遅くなり、過度に大きいと、流れ速度が速くて均一塗布が難しくなる。従来技術では貯蔵所に塗布液が停滞してファウリングが発生する恐れがあるが、本発明では傾斜面構造により停滞領域がなくてファウリングを効果的に防止することができる。
【0043】
側面125は、原料Fをチャンバ110の内壁111側に供給する役目をする。側面125は、傾斜面124のチャンバ側の末端から下側垂直方向にリング形態で延長されて形成され得る。側面125の高さは、例えば、分散板120の全体高さに対して10~40%であってもよい。
【0044】
図3を参照すると、リングバンド140、141は、原料Fを均一分布させて脱泡効率を増加させ、原料又はフィルムの厚さを薄くする役目をする。リングバンド140、141は、一種の障壁又は拡散作用をして原料Fが均一に広がるようにすることができる。
図3から確認できるように、赤色で表示された原料Fは、原料流入ノズル123から出た後に傾斜面124に沿って放射形で流れてから、第1リングバンド140を通過しながらさらに広い面積に広がるようになり、第2リングバンド141を通過しながらさらに広い面積に広がるようになることで、終局には傾斜面124の末端部の全体領域にわたって薄い厚さで均一塗布が可能になる。
【0045】
リングバンド140、141は、分散板120の傾斜面124との間に隙間Gが形成されて原料Fが隙間Gを通じて流れるように分散板120の傾斜面124から離隔され得る。傾斜面124からリングバンド140、141を離隔させ、離隔されたリングバンド140、141を支持及び固定するために、連結部材や支持部材などを用いてリングバンド140、141を離隔させると同時に、傾斜面124又は他のものに固定することができる。連結部材や支持部材は、リングバンド140、141と傾斜面124を直接連結することが好ましいが、リングバンド140、141を傾斜面124ではない他のもの(例えば、内壁122、チャンバ110など)に連結してもよい。連結部材や支持部材は、独立的な部材であるか、リングバンド140、141又は傾斜面124と一体化されたものであってもよい。固定方法は、適切に設定され得、例えば、接着、溶接、螺合、嵌め込みなどであってもよい。連結部材や支持部材の形状、個数、サイズ、間隔などは、原料の流れなどを考慮して適切に設定され得る。
【0046】
リングバンド140、141は、上側垂直方向(仮想水平面を基準)に延長されながら環状で構成され得る。具体的に、リングバンド140、141は、傾斜面124の上側に延長されるダム形状及び傾斜面124のまわり方向に延長されるリング形状で構成され得る。すなわち、上から見たときには、円形であってもよく、側面から見たときには、板形態であってもよい。リングバンド140、141は、まわり方向に切られることなしに全体的に連結されていることが好ましい。
【0047】
リングバンド140、141の個数は、原料溶液粘度、原料流入ノズル123の個数、傾斜面124の傾斜角度Aなどを考慮して適切に設定され得、例えば、分散板120の傾斜面124に2~5個、好ましくは、2~4個、2~3個又は3~4個で配置され得る。リングバンド140、141の数が過度に少ないと、均一塗布効果が不十分であり、過度に多いと、原料の流れが低下されるか費用が上昇する。
【0048】
分散板120の傾斜面124とリングバンド140、141との間に形成された隙間Gの厚さは、原料溶液粘度、原料流入ノズル123の個数、傾斜面124の傾斜角度A、リングバンド140、141の個数などを考慮して適切に設定され得、例えば、0.1~10mm、好ましくは、0.3~9mm、0.5~8mm、0.7~7mm、0.9~6mm、1~5mm、より好ましくは、1~4mm、1~3mm、1~2mm、2~4mm、2~3mm又は3~4mmであってもよい。隙間Gの厚さが過度に小さいと、原料の流れが低下され、過度に大きいと、均一塗布効果が不十分である。
【0049】
第1リングバンド140の直径は、例えば、分散板120の全体直径に対して40~80%であってもよい。第2リングバンド141の直径は、例えば、分散板120の全体直径に対して50~95%であってもよい。リングバンド140、141の厚さは、例えば、分散板120の全体直径に対して0.001~3%であってもよい。リングバンド140、141の高さは、例えば、分散板120の全体高さに対して10~40%であってもよい。第1リングバンド140と内壁122の間隔、第1リングバンド140と第2リングバンド141の間隔は、例えば、分散板120の全体直径に対して10~40%であってもよい。
【0050】
分散板120の直径は、チャンバ110の内径より小さく、チャンバ110の内径に対する分散板120の最大直径の割合は、98%以上(100%未満)であってもよい。このような直径差により、チャンバ110と分散板120の間に間隔が形成される。上記割合が98%未満であると、原料Fがそのまま下に落ちてチャンバ110の内壁111に沿って流れなくて流下フィルムの形成が不可能である。
【0051】
分散板120の側面125及びチャンバ110の内壁111の間の間隔によって流下フィルムの厚さが決定され得る。すなわち、チャンバ110の内径に対する分散板120の最大直径の割合によって流下フィルムの厚さを調節することができ、本発明では、薄い厚さの流下フィルムを形成するために、分散板120の側面125及びチャンバ110の内壁111の間の間隔を5mm~10mm又は7mm~8mmで調節することができる。分散板120の側面125及びチャンバ110の内壁111の間の間隔が上述した範囲を満足する場合、薄い厚さの流下フィルムを形成することができる。分散板120の側面125及びチャンバ110の内壁111の間の間隔が上述した範囲を超過すると、脱泡効果及び残留モノマーの除去効率が低下され得る。分散板120の側面125及びチャンバ110の内壁111の間の間隔が上述した範囲未満であると、内壁111に流れる流下フィルムが切れる。流下フィルムの厚さは、例えば、3~10mmであってもよい。
【0052】
原料は、重合体及び残留モノマーを含む溶液であってもよい。通常的に重合体を製造するとき、不可避に最終生成物で未反応モノマーが残留するようになり、このような残留モノマーは除去しなければならない。モノマーは、通常的に揮発性を有するので、本発明による脱泡装置を用いて除去することができる。すなわち、本発明では原料に含まれた気泡だけではなく、残留モノマーも同時に除去することができる。重合体の種類は特に制限されず、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)及びブタジエンゴム系列重合体などであってもよい。
【0053】
本発明の流下フィルム脱泡装置の残留モノマー除去率は、60%以上、好ましくは、65%以上、70%以上、75%以上又は80%以上であってもよい。本発明の効果側面で流下フィルム脱泡装置の残留モノマー除去率が高いほど有利であるので、上限は特に制限されず、例えば、99%以下、95%以下又は90%以下であってもよい。残留モノマー除去率が上述した範囲を満足することで、流下フィルム脱泡装置の設置費用及び運営費用を減少させることができる。このとき、残留モノマーは、液体クロマトグラフィー(LC)などを用いて測定され得る。
【0054】
また、本発明は、上述した流下フィルム脱泡装置を用いて流下フィルム脱泡方法を提供する。本発明による脱泡方法は、分散板120の原料流入ノズル123を通じて原料を傾斜面124に供給する段階;供給された原料が傾斜面124とリングバンド140、141の間に形成された隙間Gを通過しながら通過前より広い面積に分散されるようにする段階;分散された原料がチャンバ110の内壁111に沿って下側に落ちながら流れて流下フィルムを形成する段階;チャンバ110内に陰圧を形成して流下フィルムから気泡及び残留モノマーを除去する段階を含むことができる。
【0055】
分散板120での原料の流れ及びチャンバ110での流下フィルムの形成は、上述した通りである。チャンバ110の陰圧は、真空ポンプを通じて形成することができる。陰圧は、例えば、10~15mbar、12~15mbar、13~15mbar又は14~15mbarであってもよい。上述した範囲の陰圧下で、原料から気泡及び残留モノマーの除去効率に優れる。チャンバ110の運転温度は、例えば、50~100℃、54~94℃、58~88℃、62~82℃又は66~76℃であってもよい。チャンバ110の運転時間は、例えば、5~10分、5~9分、5~8分又は5~7分であってもよい。上述した条件で気泡及び残留モノマーの除去效率が優れる。
【0056】
本発明の流下フィルム脱泡方法によると、脱泡効率及び残留モノマー除去効率が増加し、設置費用、運転及び維持費用が減少し、ファウリングを効果的に防止することができる。
【符号の説明】
【0057】
10:脱泡装置
11:チャンバ
12:分散部材、
13:ベース部
14:外壁
15:内壁
16:貫通ホール
17、112:真空ホール
20:原料供給部
110:チャンバ
111:チャンバ内壁
112:真空ホール
113:排出ホール
120:分散板
121:通過ホール
122:内壁
123:原料流入ノズル
124:傾斜面
125:側面
130:原料供給部
140、141:リングバンド
A:傾斜角度
C:中心軸
F:原料
G:隙間