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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】定着装置と画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/14 20060101AFI20220511BHJP
   G03G 15/20 20060101ALI20220511BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G03G21/14
G03G15/20 555
G03G15/00 303
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017049644
(22)【出願日】2017-03-15
(65)【公開番号】P2018151597
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2020-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【弁理士】
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】醒井雅裕
(72)【発明者】
【氏名】小木曽敏夫
(72)【発明者】
【氏名】池田保
(72)【発明者】
【氏名】南野茂夫
【審査官】市川 勝
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-066376(JP,A)
【文献】特開2001-117409(JP,A)
【文献】特開2005-234426(JP,A)
【文献】特開2004-198531(JP,A)
【文献】特開2005-221851(JP,A)
【文献】特開2011-118261(JP,A)
【文献】特開2011-191627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/14
G03G 15/20
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定着回転体と、前記定着回転体とでニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体の長手方向中央部を加熱する第一の熱源と、前記定着回転体の長手方向端部を加熱する第二の熱源と、前記定着回転体の中央部の温度を検知する第一の温度センサと、前記定着回転体の端部の温度を検知する第二の温度センサとを有する定着装置であって、前記第一、第二の熱源の両方を点灯する際に、検知される前記定着回転体の温度に基づいて、前記第一、第二の熱源の点灯開始タイミングを選択的に遅延させる定着装置において、
定着装置への電源投入時又は定着装置のスリープ状態において前記定着回転体の温度が所定温度以下である場合、前記第二の熱源の点灯開始タイミングに対して前記第一の熱源の点灯開始タイミングを遅延させることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着回転体の温度が所定温度より高い場合、前記第二の熱源の点灯開始タイミングを遅延させることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第一、第二の熱源がハロゲンヒータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の定着装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載の定着装置と、前記第一、第二の温度センサによる検知温度に基づいて前記第一、第二の熱源の点灯制御を行う制御部とを有する、画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置と画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、複写機、ファクシミリ等、電子写真方式の画像形成装置では、用紙(記録材)上に転写されたトナー像を加熱して定着する加熱定着方式が広く採用されている。この加熱定着方式の代表的なものでは、熱源を備えた定着ローラと加圧ローラとを所定の圧力で当接させた状態で対峙させ、この当接した箇所にトナー像を有する用紙を搬送することで、加熱・加圧作用により未定着トナー像を用紙に定着している。ところが、画像形成のために搬送される用紙のサイズが一定ではない。例えば、A3サイズ(297×420mm)から官製はがきのサイズ(100×148mm)まで等、各種サイズの用紙が搬送され、定着装置にて定着が実行される。
【0003】
このような各種サイズの用紙に対応するため、定着ローラの長手方向において互いに発熱分布の異なる複数のヒータ部材を設け、小サイズの用紙に対しては中央部分に発熱部を有したヒータ部材(中央ヒータ)のみを通電し(センタ通紙の場合)、大サイズの用紙に対しては、この中央ヒータだけでなく端部分に発熱部を有したヒータ部材(端部ヒータ)も通電することが行われている。
【0004】
ところで、かつて、加熱定着で用いられる電力は大きく、ヒータオン時に商用電源から電力供給を100%で行うと、ピーク電流が大きく、この商用電源ラインに接続されている他の機器に多大な影響を及ぼす問題があったため、ヒータオン時の突入電流を抑制することが行われていた。例えば特許文献1では、ハロゲンヒータと電源との間に単純開閉接点と並列抵抗付きの開閉接点とを直列接続して設け、これらの開閉接点を閉じるオン・タイミングについて両開閉接点間に所望の遅延時間を設定し、前記単純開閉接点を先行させてオンさせて予備加熱を行い前記遅延時間経過後に並列抵抗付きの開閉接点をオンさせて本来の加熱を行わせることが開示されている。こうすることによって、並列抵抗付きの開閉接点の抵抗を通る閉回路が形成され、抵抗の存在によりハロゲンヒータ単独の通常時よりも少ない電流が流れてハロゲンヒータが徐々に予備加熱されることになり、大きな突入電流が生じることがなくなる。
【0005】
しかしながら、このような構成では並列抵抗付き開閉接点を設ける必要があって、構成的に複雑になっており、また予備加熱という本来の加熱とは異なる加熱を入れるため、無駄な電力消費を必要とした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、定着回転体の長手方向において互いに発熱分布の異なる複数の熱源を有する定着装置において、熱源オン時の突入電流を抑制するとともに、定着回転体の温度が作用時に一様になることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、定着回転体と、前記定着回転体とでニップ部を形成する加圧回転体と、前記定着回転体の長手方向中央部を加熱する第一の熱源と、前記定着回転体の長手方向端部を加熱する第二の熱源と、前記定着回転体の中央部の温度を検知する第一の温度センサと、前記定着回転体の端部の温度を検知する第二の温度センサとを有する定着装置であって、前記第一、第二の熱源の両方を点灯する際に、検知される前記定着回転体の温度に基づいて、前記第一、第二の熱源の点灯開始タイミングを選択的に遅延させる定着装置において、定着装置への電源投入時又は定着装置のスリープ状態において前記定着回転体の温度が所定温度以下である場合、前記第二の熱源の点灯開始タイミングに対して前記第一の熱源の点灯開始タイミングを遅延させることによって、解決される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、定着回転体の長手方向において互いに発熱分布の異なる複数の熱源を点灯する際に、検知される前記定着回転体の温度に基づいて、それらの熱源の点灯開始タイミングを選択的に遅延させて、熱源オン時の突入電流を抑制するとともに、定着回転体の温度を作用時に一様にすることを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置であるカラープリンタの構成を示す概略図である。
図2図1のプリンタにおける定着装置を示す概略的な断面構成図である。
図3】定着装置の概略的な平面図である。
図4】第一ヒータと第二ヒータの配熱分布と各ヒータのフィラメントの巻き方を示す概念図である。
図5】立ち上げ時での電源投入から印刷状態までの定着ローラの昇温状態を示すグラフである。
図6】本実施形態に係る点灯タイミングを示すフロー図である。
図7】定着装置の別の実施形態を示す概略的な断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のカラープリンタ(以下、単にプリンタという)の一実施形態について説明する。本プリンタ1は、タンデム型カラープリンタである。
【0011】
プリンタ1の本体筐体上部にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。各作像部4Y、4M、4C、4Kには、それぞれ、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kが配設されている。また、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの周囲には、それぞれ、帯電装置75、現像装置76、クリーニング部77等が配設されている(描写の明瞭化のためブラック用作像部4Kに関してのみ符号を付す)。
【0012】
そして、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われて、各感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に各色の画像が形成されることになる。感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kは、図1中の時計方向に回転駆動される。そして、帯電装置75の位置で、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面が一様に帯電される(帯電工程)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光の照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、現像装置76との対向位置に達して、この位置で静電潜像が現像されて、各色のトナー像が形成される(現像工程)。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び一次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(一次転写工程)。この時、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、クリーニング部77との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上に残存した未転写トナーがクリーニング部77のクリーニングブレードによって機械的に回収される(クリーニング工程)。最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上での一連の作像プロセスが終了する。
【0013】
現像工程を経て各感光体ドラム上に形成された各色のトナー像が中間転写ユニット85の中間転写ベルト78上に順次重ねて転写されることで、中間転写ベルト78上にフルカラー画像が形成されることになる。ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78以外に、4つの一次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、二次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング装置80等で構成されている。
【0014】
中間転写ベルト78は、3つのローラ82~84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ(二次転写バックアップローラ82)の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動させられる。4つの一次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kは、それぞれ、中間転写ベルト78を感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kとの間に挟み込んで一次転写ニップを形成している。一次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kに、トナーの極性とは逆の転写バイアスが印加される。中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各一次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの一次転写ニップを順次通過することで、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて一次転写され、フルカラー画像が形成されるのである。そして、フルカラー画像を担持した中間転写ベルト78は、二次転写ローラ89との対向位置に達する。この位置では、二次転写バックアップローラ82が、二次転写ローラ89との間に中間転写ベルト78を挟み込んで二次転写ニップを形成している。中間転写ベルト78上に各色トナー像を重畳して形成されたフルカラー画像は、この二次転写ニップの位置に搬送された記録材たる用紙P上に転写される。この時、中間転写ベルト78には、用紙Pに転写されなかった未転写トナーが残存する。その後、中間転写ベルト78の表面は、中間転写クリーニング装置80の位置に達して、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。こうして、中間転写ベルト78上での一連の転写プロセスが終了する。
【0015】
ここで、二次転写ニップの位置に搬送された用紙Pは、プリンタ1の本体筐体の下部に配設された給紙部12から、給紙ローラ97やレジストローラ対98等を経由して搬送されたものである。詳しくは、給紙部12には、用紙Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の用紙Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。レジストローラ対98に搬送された用紙Pは、回転駆動を停止したレジストローラ対98のローラニップに突き当てられ一旦停止する。そして、中間転写ベルト78上のカラー画像にタイミングを合わせて、レジストローラ対98が回転駆動されて、用紙Pが二次転写ニップに向けて搬送される。こうして、用紙P上に、所望のカラー画像が転写される。
【0016】
その後、カラー画像が転写された用紙Pは、定着装置20の位置に搬送され、この位置で、定着回転体である定着ローラ21及び加圧回転体である加圧ローラ31による熱と圧力の作用により、表面に転写されたカラー画像が用紙P上に定着される。定着後、用紙Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された用紙Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
【0017】
図2において定着装置20について説明する。定着装置20は、内部に熱源41を有する定着ローラ21と該定着ローラ21に圧接する加圧ローラ31とを備える。定着ローラ21は基材21bと表層21aから成り,基材21bは鉄、アルミ等の金属であり、表層21aはシリコーンゴム等の薄い弾性部材の上にPFA等の離型層が設けられ構成されている。なお、定着ローラ21の表層21aは基材21bの上に直接PFAの離型層を被覆した構成であってもよい。加圧ローラ31も基材31bと弾性層31aから成り、材料は基材31bが鉄等の金属、弾性層31aがシリコーンゴムやスポンジで構成されており、表層には定着ローラ同様にPFA等の離型層が備えられている。
【0018】
定着ローラ21と加圧ローラ31との間にニップ部Nが形成されており、該ニップ部Nにトナー像が形成された用紙を通過させることにより用紙上に付着しているトナーを熱により溶融させ、加圧により用紙に付着させるようになっている。
【0019】
定着ローラ21の内部には、熱源41としてハロゲンヒータが複数本(本実施形態の場合、図3に示すように、2本)配置されている。センタ通紙を実施する本実施形態の場合、一つは通紙領域の中央部(定着ローラの長手方向中央部)を主に加熱するヒータ(第一ヒータ41a)で、もう一つは通紙領域の端部(定着ローラの長手方向端部)を主に加熱するヒータ(第二ヒータ41b)である。第一ヒータ41aによる定着ローラ21の加熱状態は第一温度センサ51aにより検知され、第二ヒータ41bによる定着ローラ21の加熱状態は第二温度センサ51bにより検知され、それぞれの検知結果は制御部52に送られ、PID制御等により定着ローラ21が一定温度になるようコントロールする。ローラ表面の温度検知には、接触式のサーミスタが一般にはよく使用されるが、素子部にトナーや紙粉が固着し、応答性を悪化させる原因となるため、通紙領域に配される第一温度センサ51aには、非接触式の温度センサ(例えばサーモパイル)が望ましい。また、ジャム等で用紙が定着ローラ21に巻き付いても確実に温度検知できるように最大通紙幅の外側(通紙領域外)に配される第二温度センサ51bには、接触式のサーミスタを用いて、昇温が速い定着装置(例えば20℃/sec以上)での検知遅れによるオーバーシュートや通紙中の温度リップルを抑制する。
【0020】
中央ヒータである第一ヒータ41aと端部ヒータである第二ヒータ41bの配熱分布と各ヒータのフィラメントの巻き方を図4に示す。第一ヒータ41aは、最大用紙幅に対して、中央部が配熱のピークになるように構成されている。このピークの幅は、例えばA5サイズの用紙幅に対応し、フィラメントの巻きが調整されている。第二ヒータ41bは、最大用紙幅に対して、両端部が配熱のピークになるように構成されている。なお、その中央部は、定格の20%程度の電力が付与されるようフィラメントの巻きが調整されている。
【0021】
図5は、本実施形態における例えば朝一番での立ち上げ時での電源投入から印刷状態までの定着ローラ21の昇温状態を示している。通常、電源投入時の定着ローラ21の昇温は、端部での外部放熱のため、中央部が速く、端部が遅くなる。特に朝一番での電源投入の際にはプリンタ1の本体筐体が冷えており、定着ローラ端部からの放熱が大きい。ことにマシンサイズを小型・コンパクトにしたプリンタでは、用紙幅方向のサイズを小さくして、設置面積を小さくするため、定着ローラやハロゲンヒータの長さを最大通紙幅に近づけて極力短くしており、朝一番での立ち上げ時の中央部温度と端部温度との差は大きくなり易く、通紙領域をカバーする端部領域での温度が中央部温度と大きな差となる問題は画像品質に強く影響する。
【0022】
中央ヒータ(第一ヒータ41a)と端部ヒータ(第二ヒータ41b)を同時に点灯すると、電圧変動によるフリッカ問題が発生し易いため、本実施形態では、第一ヒータ41aのカバー域を超えるサイズの用紙を通紙する際に、2本のヒータのどちらかを遅延させる制御を行う。
【0023】
電源投入時は端部の昇温が遅いので、電源投入時やスリープ状態から通電を開始する場合には、端部ヒータである第二ヒータ41bを先に通電して定着ローラ端部の加熱が遅延し難いよう制御する。一方、一旦、定着ローラ21が温まった後は、温度センサの応答が速い側の中央ヒータ(第一ヒータ41a)を先に点灯することで、より高精度な温度制御が可能になり、定着ローラ温度が安定し易い。因みに、第一ヒータ41aを構成するサーモパイルは時定数が100msec程度、第二ヒータ41bを構成する接触式サーミスタは1~2msec程度である。
【0024】
以上の点灯タイミングをフローにまとめると図6のようになる。第一ヒータ41aのカバー域を超えるサイズの用紙を通紙して定着する場合、温度センサで検知される温度が所定温度以下か否かが判断される(S1)。第一温度センサ51a、第二温度センサ51bの夫々で検知されるいずれかの温度が所定温度以下であれば、このステップで「イエス」が該当する。所定温度以下であれば、電源投入時やスリープ状態が或る程度継続している場合等、定着ローラ21が冷えている状態であると判定して、定着ローラ21の端部側から加熱を開始すべく、まず第二ヒータ41bを点灯して(S2)、時間t1が経過したか否かが判断される(S3)。時間t1が経過したら、第一ヒータ41aを点灯する(S4)。一方、ステップ1で、所定温度を越えていると判断されたならば、定着ローラ21が温かい待機状態であると判定して、定着ローラ21の長手方向の中央部から加熱を開始すべく、第一ヒータ41aを点灯して(S5)、時間t2が経過したか否かが判断される(S6)。時間t2が経過したら、第二ヒータ41bを点灯する(S7)。しかる後は、印刷時の通常制御を行うが、この場合も、本実施形態に係る点灯タイミングを実質的に適用して、両ヒータの同時点灯を行わず、第二ヒータ41bの点灯を若干遅らせ(t3)、電圧変動によるフリッカ問題を回避する。つまり、定着ローラの表面温度に応じて、第一ヒータ41a、第二ヒータ41bの点灯開始タイミングを選択的に遅延させるのである。
【0025】
上記の点灯タイミングを適用する別の実施形態に係る定着装置としてベルト構成の定着装置を図7に示す。この定着装置20は、薄肉で可撓性を有する筒状の定着回転体である無端状の定着ベルト22と、この定着ベルト22の外周側から当接する加圧回転体である加圧ローラ31とを有している。定着ベルト22は、その内部(ループ内)に配された複数の熱源としてのハロゲンヒータ(以下、第一ヒータ41a、第二ヒータ41bともいう)の輻射熱によって加熱される。
【0026】
更に定着ベルト22の内部には、定着ベルト22を介して加圧ローラ31とでニップ部Nを形成するニップ形成部材24と、ニップ形成部材24を支持するステー部材25(支持部材)とが配されている。定着ベルト22の幅方向に渡って配されたニップ形成部材24が、ステー部材25によって固定支持されることで、加圧ローラ31からの圧力によってニップ形成部材24に撓みが生じることを防止し、加圧ローラ31の長手方向(軸方向)に渡って均一なニップ幅が得られるようになっている。
【0027】
また定着ベルトの幅方向(長手方向)における温度勾配を緩和する均熱部材とも称される熱移動補助部材27が、ニップ形成部材24のベルト内周面に対向する面を覆うように配されており、小サイズ紙通紙時に定着ベルト22の端部領域に熱が留まることを防止して、積極的に定着ベルト22の幅方向、即ち、熱移動補助部材27の長手方向に熱を移動させて、長手方向の温度不均一を解消させる。そのため、熱移動補助部材27は短時間で熱移動が可能となる熱伝導率の高い材料、例えば銅やアルミニウムなどで形成されている。
【0028】
定着ベルト22の外周側の適切な位置に、ベルト中央部の温度を検知する第一温度センサ51a、ベルト端部の温度を検知する第二温度センサ51bが配置されており、第一温度センサ51aは非接触式のサーモパイル、第二温度センサ51bは接触式のサーミスタで構成されている。
【符号の説明】
【0029】
20 定着装置
21 定着ローラ
22 定着ベルト
23 加圧ローラ
41 ヒータ
51 温度センサ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【文献】特開平7-36234号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7