(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】樹脂製歯車
(51)【国際特許分類】
F16H 55/14 20060101AFI20220511BHJP
F16H 55/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
F16H55/14
F16H55/06
(21)【出願番号】P 2017243067
(22)【出願日】2017-12-19
【審査請求日】2020-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100156395
【氏名又は名称】荒井 寿王
(72)【発明者】
【氏名】森尾 洋一
(72)【発明者】
【氏名】飛石 好輝
(72)【発明者】
【氏名】青柳 達也
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0226304(US,A1)
【文献】特開2002-333059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/14
F16H 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の金属製ブッシュと、
前記金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、
前記金属製ブッシュと前記樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記金属製ブッシュの軸方向の端面に接する第1接触部、及び、前記樹脂部材の軸方向の端面に接する第2接触部の少なくとも何れかを有し、
前記弾性部材は、前記金属製ブッシュの外周面及び前記樹脂部材の内周面に接するように設けられており、
前記金属製ブッシュの外周面及び前記樹脂部材の内周面には、前記弾性部材が入り込む凹部が形成され、
前記金属製ブッシュの外周面に形成された前記凹部は、当該外周面に沿って円環状に連続的に延びる溝であり、当該外周面における軸方向の一端部と他端部との
少なくとも何れかに位置し、
前記樹脂部材の内周面に形成された前記凹部は、当該内周面に沿って円環状に連続的に延びる溝であり、当該内周面おける軸方向の一端部と他端部との
少なくとも何れかに位置
し、
前記金属製ブッシュ及び前記樹脂部材に形成された前記凹部としての前記溝の縁部の角には、丸みが付けられていない、樹脂製歯車。
【請求項2】
前記第1接触部は、前記金属製ブッシュの軸方向の端面において外縁から内縁に至るまで延びる、請求項1に記載の樹脂製歯車。
【請求項3】
前記第2接触部は、前記樹脂部材の軸方向の端面において内縁から外縁に至るまで延びる、請求項1又は2に記載の樹脂製歯車。
【請求項4】
環状の金属製ブッシュと、
前記金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、
前記金属製ブッシュと前記樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記金属製ブッシュの外周面及び前記樹脂部材の内周面に接するように設けられており、
前記金属製ブッシュの外周面及び前記樹脂部材の内周面には、前記弾性部材が入り込む凹部が形成され、
前記金属製ブッシュの外周面に形成された前記凹部は、当該外周面に沿って円環状に連続的に延びる溝であり、当該外周面における軸方向の一端部と他端部との
少なくとも何れかに位置し、
前記樹脂部材の内周面に形成された前記凹部は、当該内周面に沿って円環状に連続的に延びる溝であり、当該内周面おける軸方向の一端部と他端部との
少なくとも何れかに位置
し、
前記金属製ブッシュ及び前記樹脂部材に形成された前記凹部としての前記溝の縁部の角には、丸みが付けられていない、樹脂製歯車。
【請求項5】
前記凹部は、断面V字形状を呈する、請求項1~4の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【請求項6】
前記金属製ブッシュの外周面における軸方向の中央部には、当該外周面に沿って円環状に連続的に延びる溝が形成されておらず、
、前記樹脂部材の内周面における軸方向の中央部には、当該内周面に沿って円環状に連続的に延びる溝が形成されていない、請求項1~5の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【請求項7】
前記弾性部材は、
前記金属製ブッシュにおける外周面と軸方向の端面とで形成された角部分に接し、
前記樹脂部材における内周面と軸方向の端面とで形成された角部分に接する、請求項1~6の何れか一項に記載の樹脂製歯車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製歯車に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製歯車は、軽量で且つ静粛性に優れており、例えば車両用又は産業用の歯車として広く用いられている。樹脂製歯車としては、環状の金属製ブッシュと、金属製ブッシュの周囲に設けられ外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、金属製ブッシュと樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備えた樹脂製歯車が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような樹脂製歯車では、他の歯車との噛み合いで衝撃が生じた場合、弾性部材の弾性変形によって当該衝撃が吸収されて減衰される、すなわち、弾性部材の減衰機能が作用する。しかし、オイルにより潤滑されるオイル潤滑下では、弾性部材と金属製ブッシュとの間又は弾性部材と樹脂部材との間にオイルが浸入するオイル浸入(以下、単に「オイル浸入」ともいう)が生じる可能性がある。オイル浸入が進むと、弾性部材が劣化し、ひいては、弾性部材の劣化が減衰機能に悪影響を及ぼすまで進展し、減衰機能を維持することが困難になる。
【0005】
そこで、本発明は、オイル潤滑下においても減衰機能を維持することが可能な樹脂製歯車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車は、環状の金属製ブッシュと、金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、金属製ブッシュと樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備え、弾性部材は、金属製ブッシュの軸方向の端面に接する第1接触部、及び、樹脂部材の軸方向の端面に接する第2接触部の少なくとも何れかを有する。
【0007】
この樹脂製歯車では、弾性部材が第1接触部を有すると、第1接触部が金属製ブッシュに接する分、弾性部材と金属製ブッシュとの間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。弾性部材が第2接触部を有すると、第2接触部が樹脂部材に接する分、弾性部材と樹脂部材との間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。したがって、オイル浸入が進んでも、弾性部材の劣化が減衰機能に悪影響を及ぼすまで進展し難くなり、減衰機能を維持することが可能となる。すなわち、オイル潤滑下においても減衰機能を維持することが可能となる。
【0008】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、第1接触部は、金属製ブッシュの軸方向の端面において外縁から内縁に至るまで延びていてもよい。この構成によれば、第1接触部によるオイル浸入経路の伸長を最大化できる。
【0009】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、第2接触部は、樹脂部材の軸方向の端面において内縁から外縁に至るまで延びていてもよい。この構成によれば、第2接触部によるオイル浸入経路の伸長を最大化できる。
【0010】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、弾性部材は、金属製ブッシュの外周面及び樹脂部材の内周面に接するように設けられており、金属製ブッシュの外周面及び樹脂部材の内周面のうちの少なくとも一方には、弾性部材が入り込む凹部及び弾性部材へ入り込む凸部の少なくとも何れか形成されていてもよい。
【0011】
この構成では、金属製ブッシュの外周面に凹部及び凸部の少なくとも何れかが形成されていると、その凹部及び凸部の少なくとも何れかによって弾性部材と金属製ブッシュとの間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。樹脂部材の内周面に凹部及び凸部の少なくとも何れかが形成されていると、その凹部及び凸部の少なくとも何れかによって弾性部材と樹脂部材との間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。したがって、オイル浸入が進んでも、弾性部材の劣化が減衰機能に悪影響を及ぼすまで進展し難くなり、減衰機能を維持することが可能となる。
【0012】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、金属製ブッシュの外周面に形成された凹部及び凸部の少なくとも何れかは、当該外周面における軸方向の端部に位置していてもよい。この構成によれば、弾性部材と金属製ブッシュとの間のオイル浸入が弾性部材の軸方向の中央部まで進み難くなり、当該中央部が劣化し難くなる。当該中央部は減衰機能に大きく寄与する主要部を構成することから、減衰機能を効果的に維持することが可能となる。
【0013】
本発明の一態様に係る樹脂製歯車では、樹脂部材の内周面に形成された凹部及び凸部の少なくとも何れかは、当該内周面おける軸方向の端部に位置していてもよい。この構成によれば、弾性部材と樹脂部材との間のオイル浸入が弾性部材の軸方向の中央部まで進み難くなり、当該中央部が劣化し難くなる。当該中央部は減衰機能に大きく寄与する主要部を構成することから、減衰機能を効果的に維持することが可能となる。
【0014】
本発明の他の一態様に係る樹脂製歯車は、環状の金属製ブッシュと、金属製ブッシュの周囲に設けられ、外周部に歯形が形成された環状の樹脂部材と、金属製ブッシュと樹脂部材との間に設けられた弾性部材と、を備え、弾性部材は、金属製ブッシュの外周面及び樹脂部材の内周面に接するように設けられており、金属製ブッシュの外周面及び樹脂部材の内周面のうちの少なくとも一方には、弾性部材が入り込む凹部及び弾性部材へ入り込む凸部の少なくとも何れか形成されている。
【0015】
この樹脂製歯車では、金属製ブッシュの外周面に凹部及び凸部の少なくとも何れかが形成されていると、その凹部及び凸部の少なくとも何れかによって弾性部材と金属製ブッシュとの間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。樹脂部材の内周面に凹部及び凸部の少なくとも何れかが形成されていると、その凹部及び凸部の少なくとも何れかによって弾性部材と樹脂部材との間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。したがって、オイル浸入が進んでも、弾性部材の劣化が減衰機能に悪影響を及ぼすまで進展し難くなり、減衰機能を維持することができる。すなわち、オイル潤滑下においても減衰機能を維持することが可能となる。
【0016】
本発明の他の一態様に係る樹脂製歯車では、金属製ブッシュの外周面に形成された凹部及び凸部の少なくとも何れかは、当該外周面における軸方向の端部に位置していてもよい。この構成によれば、上述したように、オイル浸入が弾性部材の軸方向の中央部まで進み難くなって当該中央部が劣化し難くなるため、減衰機能を効果的に維持することが可能となる。
【0017】
本発明の他の一態様に係る樹脂製歯車では、樹脂部材の内周面に形成された凹部及び凸部の少なくとも何れかは、当該内周面おける軸方向の端部に位置していてもよい。この構成によれば、上述したように、オイル浸入が弾性部材の軸方向の中央部まで進み難くなって当該中央部が劣化し難くなるため、減衰機能を効果的に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、オイル潤滑下においても減衰機能を維持することが可能な樹脂製歯車を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る樹脂製歯車の正面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の変形例に係る樹脂製歯車における
図2に対応する断面の一部を拡大して示す図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態に係る樹脂製歯車における
図2に対応する断面の一部を拡大して示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の変形例に係る樹脂製歯車における
図2に対応する断面の一部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
[第2実施形態]
図1及び
図2に示されるように、第1実施形態に係る樹脂製歯車1は、いわゆる高強度樹脂ギヤであって、車両用又は産業用の歯車として用いられる。例えば樹脂製歯車1は、エンジン内のバランスシャフトギヤ及びカムシャフトギヤ等に使用できる。樹脂製歯車1は、金属製ブッシュ3と、弾性部材5と、樹脂部材7と、を備える。樹脂製歯車1は、平歯車である。
【0022】
金属製ブッシュ3は、例えば、回転軸(図示省略)に取り付けられる部材である。金属製ブッシュ3は、環状である。金属製ブッシュ3は、例えば、ステンレス鋼等の金属で形成されている。金属製ブッシュ3には、貫通孔3hが設けられている。貫通孔3hは、金属製ブッシュ3の一端面3aと他端面3bとを貫通している。貫通孔3hには、回転軸が挿入される。金属製ブッシュ3は、内周面4aと、外周面4bと、を有している。内周面4aは、貫通孔3hを画成している。外周面4bは、弾性部材5と対向する面である。
【0023】
弾性部材5は、樹脂製歯車1が他の歯車と噛み合うことで発生する衝撃を減衰する部材である。弾性部材5は、その弾性変形によって当該衝撃を吸収して減衰する。弾性部材5は、環状である。弾性部材5は、金属製ブッシュ3の周囲に設けられている。ここでの弾性部材5は、金属製ブッシュ3の外周面4bに接するように設けられている。なお、金属製ブッシュ3の周囲に設けられることには、金属製ブッシュ3の周りに直接接するように設けられることだけでなく、金属製ブッシュ3の周りに他の部材を介して設けられることを含む。
【0024】
弾性部材5は、金属製ブッシュ3と樹脂部材7との間に設けられている。弾性部材5は、樹脂部材7の内周面に接するように設けられている。弾性部材5は、複数の部材(ゴム層)が積層されることにより構成されていてもよい。弾性部材5の厚みは、適宜設定される。弾性部材5は、ゴムにより形成されている。ゴムは、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム又はシリコーンゴム等である。ゴムは、耐久性及び耐熱性の観点から、フッ素ゴム又はシリコーンゴムであることが好ましい。
【0025】
樹脂部材7は、他の歯車と噛み合う部材である。樹脂部材7は、環状である。樹脂部材7は、樹脂で形成されている。用いる樹脂としては、熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の何れであってもよいが、製造される樹脂製歯車1の強度を向上させる観点から、熱硬化性樹脂であると好ましい。より具体的には、エポキシ樹脂、ポリアミノアミド樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等から選ばれた1以上の樹脂と、選択された樹脂の種類に応じた硬化剤とを組み合わせたものが使用できる。これらの中でも、樹脂硬化物の強度、耐熱性等の点からポリアミノアミド樹脂が好ましく、耐熱性、強度が優れる2,2’-(1,3フェニレン)ビス2-オキサゾリンとアミン硬化剤の混合物100質量部に対し、触媒には硬化促進剤として、例えば、n-オクチルブロマイドが5質量部以下からなる樹脂を使用することが好ましい。
【0026】
樹脂部材7は、金属製ブッシュ3の周囲、ひいては、弾性部材5の周囲に設けられている。ここでの樹脂部材7は、弾性部材5の外周面に接するように設けられている。樹脂部材7の外周部には、歯形7xが形成されている。歯形7xは、樹脂部材7の周方向において、所定の間隔をあけて複数形成されている。なお、弾性部材5の周囲に設けられることには、弾性部材5の周りに直接接するように設けられることだけでなく、弾性部材5の周りに他の部材を介して設けられることを含む。
【0027】
本実施形態の樹脂製歯車1では、
図3に示されるように、弾性部材5における金属製ブッシュ3の軸方向(以下、単に「軸方向」という)の一方側は、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7よりも当該一方側へせり出している。弾性部材5における軸方向の他方側は、金属製ブッシュ3及び樹脂部材7よりも当該他方側へせり出している。このせり出した部分は、径方向内側に拡がって金属製ブッシュ3に接すると共に、径方向外側に拡がって樹脂部材7に接している。具体的には、弾性部材5は、以下のように構成されている。
【0028】
弾性部材5は、軸方向の一方側及び他方側のそれぞれに、フランジ状に設けられた接触部50a及び接触部50bを有する。接触部50aは、金属製ブッシュ3の一端面3aに接する円環状の部位である第1接触部51aと、樹脂部材7の一端面7aに接する円環状の部位である第2接触部52aと、第1接触部51a及び第2接触部52aを互いに接続する接続部53aと、を含む。接触部50bは、金属製ブッシュ3の他端面3bに接する円環状の部位である第1接触部51bと、樹脂部材7の他端面7bに接する円環状の部位である第2接触部52bと、第1接触部51b及び第2接触部52bを互いに接続する接続部53bと、を含む。
【0029】
第1接触部51a,51bのそれぞれは、一端面3a及び他端面3bのそれぞれにおける一部領域(図示する例では、径方向における中央から外側までの領域)に拡がっている。 第2接触部52a,52bのそれぞれは、一端面7a及び他端面7bのそれぞれにおける一部領域(図示する例では、径方向における内側の領域)に拡がっている。
【0030】
以上のように構成された樹脂製歯車1は、公知の種々の手法を用いて製造することができる。金属製ブッシュ3と弾性部材5との間には、接着剤を塗布してもよい。
【0031】
以上、樹脂製歯車1では、弾性部材5が第1接触部51a,51bを有することから、第1接触部51a,51bが金属製ブッシュ3の一端面3a及び他端面3bに接する分、弾性部材5と金属製ブッシュ3との間のオイル浸入経路を伸ばす(延伸する)ことができる。弾性部材5が第2接触部52a,52bを有することから、第2接触部52a,52bが樹脂部材7の一端面7a及び他端面7bに接する分、弾性部材5と樹脂部材7との間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。
【0032】
これにより、オイル浸入が進んでも、弾性部材5の劣化が減衰機能に悪影響を及ぼすまで進展し難くなり、減衰機能を維持することが可能となる。特に、弾性部材5における減衰機能に大きく寄与する主要部(軸方向における中央部)までオイル浸入が進展し難くなり、当該主要部の劣化を抑えることができる。したがって、樹脂製歯車1によれば、オイル潤滑下においても減衰機能を維持することが可能となる。
【0033】
「オイル浸入」とは、対象の部材間にオイルが入り込むことである。「オイル浸入」は、弾性部材5と金属製ブッシュ3との間にオイルが浸入すること、及び、弾性部材5と樹脂部材7との間にオイルが浸入することを含む。「オイル浸入」は、弾性部材5の界面にオイルが浸入することを含む。「オイル浸入経路」は、オイル浸入の道すじである。
【0034】
図4は、第1実施形態の変形例に係る樹脂製歯車101の断面図である。
図4に示されるように、樹脂製歯車101は、弾性部材5に代えて弾性部材105を備えていてもよい。
【0035】
弾性部材105では、第1接触部51a,51bのそれぞれは、一端面3a及び他端面3bのそれぞれにおける全領域に拡がっている。つまり、第1接触部51a,51bのそれぞれは、金属製ブッシュ3の一端面3a及び他端面3bのそれぞれにおいて外縁から内縁に至るまで延びる。これにより、第1接触部51a,51bによるオイル浸入経路の伸長を最大化することができる。弾性部材105では、第2接触部52a,52bのそれぞれは、一端面7a及び他端面7bのそれぞれにおける全領域に拡がっている。つまり、第2接触部52a,52bのそれぞれは、樹脂部材7の一端面7a及び他端面7bのそれぞれにおいて内縁から外縁に至るまで延びる。これにより、第2接触部52a,52bによるオイル浸入経路の伸長を最大化することができる。
【0036】
なお、樹脂製歯車1,101は、第1接触部51a,51b及び第2接触部52a,52bを備えるが、これらの少なくとも何れかを有していればよい。樹脂製歯車101は、第1接触部51aが一端面3aの全領域に拡がる特徴、第1接触部51bが他端面3bの全領域に拡がる特徴、第2接触部52aが一端面7aの全領域に拡がる特徴、及び第2接触部52bが他端面7bの全領域に拡がる特徴を有するが、これらの少なくとも何れかの特徴を有していればよい。
【0037】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。以下、第1実施形態と重複する説明を省略する。
【0038】
図5に示されるように、第2実施形態に係る樹脂製歯車201は、弾性部材205を備える。弾性部材205は、軸方向の一方側及び他方側のそれぞれに設けられた接触部50a及び接触部50b(
図3参照)を有していない。
【0039】
金属製ブッシュ3の外周面4bには、弾性部材205が入り込む凹部31が形成されている。凹部31は、外周面4bに沿って円環状に連続的に延びる溝である。凹部31は、断面V字形状を呈する。凹部31は、外周面4bに一対形成されている。一対の凹部31は、外周面4bおける軸方向の一端部及び他端部にそれぞれ位置する。
【0040】
樹脂部材7の内周面7yには、弾性部材205が入り込む凹部71が形成されている。凹部71は、内周面7yに沿って円環状に連続的に延びる溝である。凹部71は、断面V字形状を呈する。凹部71は、内周面7yに一対形成されている。一対の凹部71は、内周面7yおける軸方向の一端部及び他端部にそれぞれ位置する。
【0041】
以上、樹脂製歯車201では、金属製ブッシュ3の外周面4bに形成された凹部31によって弾性部材205と金属製ブッシュ3との間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。樹脂部材7の内周面7yに形成された凹部71によって弾性部材205と樹脂部材7との間のオイル浸入経路を伸ばすことができる。したがって、オイル浸入が進んでも、弾性部材205の劣化が減衰機能に悪影響を及ぼすまで進展し難くなり、減衰機能を維持することが可能となる。
【0042】
樹脂製歯車201では、金属製ブッシュ3の外周面4bに形成された凹部31は、当該外周面4bにおける軸方向の端部に位置している。この構成によれば、弾性部材205と金属製ブッシュ3との間のオイル浸入が弾性部材205の軸方向の中央部まで進み難くなり、当該中央部が劣化し難くなる。当該中央部は減衰機能に大きく寄与する主要部を構成することから、減衰機能を効果的に維持することが可能となる。
【0043】
樹脂製歯車201では、樹脂部材7の内周面7yに形成された凹部71は、当該内周面7yおける軸方向の端部に位置している。この構成によれば、弾性部材205と樹脂部材7との間のオイル浸入が弾性部材205の軸方向の中央部まで進み難くなり、当該中央部が劣化し難くなる。上述したように当該中央部は減衰機能に大きく寄与する主要部を構成することから、減衰機能を効果的に維持することが可能となる。
【0044】
図6は、第2実施形態の変形例に係る樹脂製歯車301の断面図である。
図6に示されるように、樹脂製歯車101は、弾性部材205に代えて弾性部材305を備えていてもよい。
【0045】
弾性部材305では、軸方向の一方側及び他方側のそれぞれに、フランジ状に設けられた接触部350a及び接触部350bを有する。接触部350aは、金属製ブッシュ3の一端面3aに接する円環状の部位である第1接触部351aと、樹脂部材7の一端面7aに接する円環状の部位である第2接触部352aと、第1接触部351a及び第2接触部352aを互いに接続する接続部353aと、を含む。接触部350bは、金属製ブッシュ3の他端面3bに接する円環状の部位である第1接触部351bと、樹脂部材7の他端面7bに接する円環状の部位である第2接触部352bと、第1接触部351b及び第2接触部352bを互いに接続する接続部353bと、を含む。第1接触部51a,51bのそれぞれは、一端面3a及び他端面3bのそれぞれにおける一部領域に拡がっている。第2接触部52a,52bのそれぞれは、一端面7a及び他端面7bのそれぞれにおける一部領域に拡がっている。
【0046】
このような樹脂製歯車301によれば、第1接触部351a,351bが金属製ブッシュ3の一端面3a及び他端面3bに接する分、弾性部材305と金属製ブッシュ3との間のオイル浸入経路をさらに伸ばすことができる。第2接触部352a,352bが樹脂部材7の一端面7a及び他端面7bに接する分、弾性部材305と樹脂部材7との間のオイル浸入経路をさらに伸ばすことができる。これにより、オイル浸入が進んでも、弾性部材305の劣化が減衰機能に悪影響を及ぼすまで一層進展し難くなり、減衰機能を維持することが可能となる。オイル潤滑下においても減衰機能を一層維持することが可能となる。
【0047】
なお、樹脂製歯車201,301では、金属製ブッシュ3の外周面4bに一対の凹部31が形成されているが、1つ又は3つ以上の凹部31が形成されていてもよい。樹脂部材7の内周面7yに一対の凹部71が形成されているが、1つ又は3つ以上の凹部71が形成されていてもよい。凹部31,71の形状は特に限定されず、円環状に連続的に延びる溝ではなく、1又は複数の孔であってもよい。凹部31,71のうちの何れか一方のみが形成されていてもよい。凹部31に代えてもしくは加えて、弾性部材205へ入り込む凸部が外周面4bに形成されていてもよい。凹部71に代えてもしくは加えて、弾性部材205へ入り込む凸部が内周面7yに形成されていてもよい。弾性部材205へ入り込む凸部の形状は特に限定さらず、様々な形状であってもよい。樹脂製歯車201は、第1接触部351a,351b及び第2接触部352a,352bを備えるが、これらのうちの少なくとも何れかを有していればよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0049】
上記実施形態では、樹脂製歯車1,101,201,301が平歯車である形態を一例に説明したが、樹脂製歯車1,101,201,301は、はすば歯車等であってもよい。本発明では、上記実施形態及び上記変形例の各構成を適宜組み合わせてもよい。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1,101,201,301…樹脂製歯車、3…金属製ブッシュ、3a…一端面(端面)、3b…他端面(端面)、4b…外周面、5,105,205,305…弾性部材、7…樹脂部材、7a…一端面(端面),7b…他端面(端面),7x…歯形、7y…内周面、31,71…凹部、51a,51b,351a,351b…第1接触部、52a,52b,352a,352b…第2接触部。