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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】石灰石原料供給用シュート
(51)【国際特許分類】
   B65G 11/00 20060101AFI20220511BHJP
   F27D 3/10 20060101ALI20220511BHJP
   B02C 4/02 20060101ALI20220511BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20220511BHJP
   B65G 11/20 20060101ALI20220511BHJP
   C22B 23/00 20060101ALN20220511BHJP
【FI】
B65G11/00 B
F27D3/10
B02C4/02
B01J4/00 105A
B65G11/20 Z
C22B23/00 102
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2017244989
(22)【出願日】2017-12-21
(65)【公開番号】P2019112154
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓二
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-153910(JP,A)
【文献】特開平11-043215(JP,A)
【文献】特開平06-001439(JP,A)
【文献】特開昭61-114921(JP,A)
【文献】米国特許第04812085(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 11/00-11/20
F27D 3/10
B02C 4/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石灰石原料を供給する傾斜した底面とその幅方向両端部に位置する側面とを有するシュートであって、前記底面の幅方向両端部に、該底面に沿って滑落する石灰石原料の滑落方向の下流側に向って圧縮エアーを放出する複数のエアー放出部が配置されており、前記滑落方向の下流側に向う方向が、該底面に平行であって且つ該滑落方向に対して25~45°傾斜していることを特徴とするシュート。
【請求項2】
前記底面の面積2.6m当たり6個以上のエアー放出部が配置されていることを特徴とする、請求項に記載のシュート。
【請求項3】
前記複数のエアー放出部に供給する圧縮エアーの圧力が0.7MPa以上であり、各エアー放出口からの圧縮エアーの放出時間を1回当たり1秒以上3秒以下とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシュート
【請求項4】
石灰石原料を供給する傾斜した底面とその幅方向両端部に位置する側面とを有するシュートの該両端部から、該底面に沿って滑落する石灰石原料の滑落方向の下流側に向う方向に圧縮エアーを放出するシュート上の石灰石原料の堆積防止方法であって、前記滑落方向の下流側に向う方向が、該底面に平行であって且つ該滑落方向に対して25~45°傾斜していることを特徴とするシュート上の石灰石原料の堆積防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石灰石スラリー調製に使用する石灰石原料の供給用シュート、及びシュート上の石灰石原料の堆積防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧酸浸出(High Pressure Acid Leaching、以後HPALと称する)法を用いたニッケル製錬プラントでは、スラリー化した低品位ニッケル鉱石に高圧下で硫酸を添加することによりニッケルやコバルトなどの有価金属を浸出する処理が行われている。この浸出処理で得られた浸出液には鉄等の不純物が含まれているため、第1の中和工程にて浸出液のpH調整が行われた後、固液分離により不純物を除去している。不純物除去後は、浸出液にHSガスを吹き込むことで有価金属としてのニッケル及びコバルトを硫化物として回収している。有価金属の回収後の残液は、第2の中和工程でpH調整が行われた後、テーリングダムへ送液される。
【0003】
上記のHPAL製錬プラントでは、各中和工程のプロセス液のpH調整のために石灰石が使用されている。この石灰石は、反応効率や搬送の容易さなどの観点から細かく粉砕された石灰石原料と水とからなる石灰石スラリーの形態で該プロセス液に添加されている。この石灰石スラリーの調製には、石灰石原料を保管場所から搬送するコンベアと、該コンベアの先端部から落下した石灰石原料を受け入れて所定の位置にガイドするシュートと、該シュートから投入された石灰石原料を破砕する破砕機と、該破砕された石灰石原料を所定のスラリー濃度となるように添加された水と共に石灰石スラリーの形態で貯蔵する貯蔵タンクと、該貯蔵タンクから抜き出された石灰石スラリーを移送のため昇圧する送液ポンプとから主に構成される設備が一般的に用いられている。
【0004】
上記の石灰石原料を破砕機に向けてガイドするシュートは、傾斜した底面に沿って石灰石原料を滑落させながらガイドするものであるため、雨季などで石灰石原料が湿った状態になると、粒径の特に細かな石灰石原料が該底面に付着して塊を形成し、そこを起点として石灰石原料が堆積してシュート内で詰まりが生じることがあった。堆積した石灰石原料の塊は、ある程度大きくなって滑落方向の力がシュートの底面との摩擦抵抗を超えると、大きな塊のまま破砕機内に落下し、その結果、破砕機に瞬時に過負荷がかかってモーターがトリップし、設備停止するトラブルが頻発することがあった。
【0005】
上記のようなシュート内での石灰石原料の詰り防止のため、様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、密閉構造のシュートの内部から外部に乾燥空気を流す技術が提案されている。この方法により、湿気を帯びた外部空気がシュート内部に流れ込むことを防止できるとともに、シュート内部の湿気を帯びた石灰石を乾燥させることができるので、石灰石がシュート内部に付着するのを防止できると記載されている。
【0006】
また、特許文献2にはロータリーキルンに粉体原料を投入するための固定式シュートにおいて、その粉体原料受入側に該シュートから独立した鋼板製のライナーを内挿し、該ライナーに市販のバイブレーターを取り付けて連続的に振動させるとともに、該ライナーに一般的な昇降装置を連結して昇降させることによって、粉体がシュート内部に付着するのを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-290045号公報
【文献】特開平10-311682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術を用いて石灰石原料をシュート内部で乾燥させるためには、大量の乾燥空気を供給するための設備が必要になるため、コスト面から実用的ではなかった。また、特許文献2の技術は粉体付着防止のためにライナーの振動装置及び昇降装置が必要になるため設備が全体的に大型化し、既設の石灰石スラリー調製設備に導入する場合は大掛かりな改造工事が必要になるため、この場合もコスト面から実用的ではなかった。
【0009】
他方、シュート内での石灰石原料の堆積を抑えるため、シュートの傾斜角を大きくすることが考えられるが、シュートの傾斜角を変えるには既設の破砕機やベルトコンベアの位置も変える必要があり、その改造工事にかかるコストが莫大になる可能性がある。更に、シュートの傾斜角が変わると破砕機への石灰石原料の供給量が変わる可能性があり、かえって頻繁に設備停止を引き起こすリスクもある。
【0010】
本発明は、上記したような実情に鑑みて提案されたものであり、石灰石スラリー調製設備において、含水率の高い石灰石原料を取り扱う場合であっても、シュート内において石灰石原料が詰まりにくく、よって供給先の破砕機において過負荷による停止が生じにくく、設備の稼働率を向上させることが可能なシュートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記のシュート内の石灰石原料の詰りの問題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、シュートの底面の幅方向両端部に圧縮エアーを放出する放出部を複数個設置することで、堆積した石灰石原料を瞬時に吹き飛ばして破砕機への定量供給を維持できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明に係るシュートは、石灰石原料を供給する傾斜した底面とその幅方向両端部に位置する側面とを有するシュートであって、前記底面の幅方向両端部に、該底面に沿って滑落する石灰石原料の滑落方向の下流側に向って圧縮エアーを放出する複数のエアー放出部が配置されており、前記滑落方向の下流側に向う方向が、該底面に平行であって且つ該滑落方向に対して25~45°傾斜していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る石灰石原料の堆積防止方法は、石灰石原料を供給する傾斜した底面とその幅方向両端部に位置する側面とを有するシュートの該両端部から、該底面に沿って滑落する石灰石原料の滑落方向の下流側に向う方向に圧縮エアーを放出する堆積防止方法であって、前記滑落方向の下流側に向う方向が、該底面に平行であって且つ該滑落方向に対して25~45°傾斜していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、含水率の高い石灰石原料を取り扱う場合であっても、シュート内で該石灰石原料が詰まるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のシュートが好適に適用される石灰石スラリー調製設備の模式的な側面図である。
図2】本発明の実施形態のシュートの斜視図である。
図3図2のシュートをその底面に垂直な方向から見た断面図である。
図4図2のシュートの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のシュートの実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。この本発明の実施形態のシュートは、ニッケルHPAL製錬プラントの石灰石スラリー調製設備を構成する破砕機に石灰石原料を供給するために使用されるものである。すなわち、図1に示すように、ベルトコンベア1によってストックヤードから運ばれてきた石灰石原料Rは、その先端部から落下すると下方に設けられているシュート2の上端開口部から受け入れられる。該上端開口部から受け入れられた石灰石原料Rは、該シュート2の傾斜する底面に沿ってガイドされた後、シュート2の下端開口部から排出され、その下方に位置する破砕機3へ投入される。
【0017】
このように、石灰石原料をガイドする役割を担う本発明の実施形態のシュート2は、例えば図2に示すように、細長の略逆台形形状を有する傾斜した底面10と、この底面10の幅方向両端部に位置する略矩形形状の1対の側面11、12と、該底面10に対向するようにこれら1対の側面11、12の上縁部に架け渡された細長の略逆台形形状の蓋部13とからなり、上端開口部及び下端開口部がそれぞれ石灰石原料の投入口及び排出口となる。
【0018】
本発明の実施形態のシュート2は、この底面10の幅方向両端部に、該底面10に沿って滑落する石灰石原料の滑落方向Aの下流側に向って圧縮空気を放出する複数のエアー放出部14が配されている。このように複数のエアー放出部14から圧縮エアーを吹き出すことにより、底面10と側面11、12との隅部に特に堆積する傾向にある石灰石原料を吹き飛ばすことができ、よって石灰石原料の定量供給を継続することが可能になる。
【0019】
上記のように、複数のエアー放出部14をシュート2の幅方向両端部に配置する理由は、シュート2の底面のみならずシュート2の側面11、12においても石灰石原料が付着するので、これら底面10と側面11、12とが直交する隅部でより多量に石灰石原料が堆積するからである。上記の複数のエアー放出部14は、シュート2の底面10の幅方向両端部から石灰石原料の堆積が生じやすい部位に向けて圧縮エアーが吹き付けられるのであれば設置位置については特に限定はないが、図3に示すように、底面10の幅方向両端部に同数のエアー放出部14(図3では3個ずつ)を滑落方向Aに均等な間隔をあけて配置するのが好ましい。なお、図3では滑落方向Aに平行な底面10の中心線に関して左右対称に配置されているが、これに代えて左右で互い違いとなるように千鳥足状に配置してもよい。
【0020】
上記の各エアー放出部14が滑落方向Aの下流側に向う方向としては、具体的には図3に示すように滑落方向Aに対して25~45°傾斜させるのが好ましい。この傾斜角度θが45°を超えると、石灰石原料の滑落方向Aに対してより直角に近い角度で圧縮エアーを吹き付けることになるため、石灰石原料による詰りを効果的に防止することができなくなるおそれがある。逆に、上記の傾斜角度が25°未満の場合は、底面10の幅方向両側部に位置する隅部の詰りは効果的に防止することができるものの、シュート2の幅方向中央部分に堆積した石灰石原料を吹き飛ばしにくくなり、ここを起点として詰りが発生するおそれがある。
【0021】
図2~3に示す具体例では、シュート2に6個のエアー放出部14が設置されているが、これに限定されるものではなく、エアー放出部14の個数はこれより多くてもよいし少なくてもよい。但し、シュート2の底面10の面積2.6m当たりエアー放出部14を6個以上配置することが好ましい。これにより、より確実に石灰石原料の詰りを防止することができる。エアー放出部14の個数の上限についてはコスト面と底面10の面積を広く確保する観点からできるだけ少ない方が好ましい。
【0022】
各エアー放出部14の具体的な構造としては、図2~4に示すように、先端開口部が上記の滑落方向Aの下流側を臨むように配置された呼び径1/4~1インチ程度の配管で構成することができるが、これに限定されるものではなく、例えば底面10の幅方向両端部に沿ってそれぞれ2本の配管を設け、これら配管に一定の間隔をあけて該滑落方向Aの下流側を臨む方向に開口する開口部を穿孔してもよいし、これら配管に一定の間隔をあけて該滑落方向Aの下流側に圧縮エアーが吹き出されるように市販のエアーノズルを取り付けてもよい。
【0023】
上記の複数のエアー放出部14の各々の上流側には、電磁弁などの開閉手段を設け、これらを例えば一定の時間ごとに開閉させることで圧縮エアーを間欠的にシュート2内に吹き込むように制御するのが好ましい。圧縮エアーの間欠的な吹き込みのタイミングについては特に限定はなく、例えば全てのエアー放出部14から圧縮エアーが同時に放出するようにしてもよいし、所定の順序で1個ずつ又は数個ずつ放出するようにしてもよい。上記の間欠的な吹き込みの制御では、単位時間当たりの吹き込みの頻度や各吹き込み時の放出時間が容易に変更できるのが好ましい。また、各エアー放出部14の上流側にはグローブ弁等の流量調整弁が設けられているのが好ましい。これにより、石灰石原料の含水率や粒径などの性状が変動しても上記吹き込み時の圧縮エアーの供給量や放出時間を適宜変更することができるので、局所的な石灰石原料の堆積をより効率よく防止することができる。
【0024】
各エアー放出部14に供給する圧縮エアーの圧力はゲージ圧基準で0.7MPa以上が好ましい。この圧縮エアーの圧力が0.7MPa未満では、エアー放出部14から放出されるエアーの風力が弱くなり過ぎ、石灰石原料の詰りを効果的に防止するのが困難になる。上記のように各エアー放出部14から間欠的に放出される圧縮エアーの1回当たりの放出時間は、1秒以上3秒以下であるのが好ましい。この放出時間が1秒未満では、圧縮エアーを放出する効果がほとんど得られなくなる。逆に、放出時間が3秒を超えると、間欠的に放出することによる効果が得られにくくなる。次に、本発明のシュートの具体的な実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0025】
図1に示すようなベルトコンベア1、シュート2、及び破砕機3からなる設備を用いて粒径100mm以下の石灰石原料を80~140t/Hrでベルトコンベア1に供給しながら破砕した。このシュート2は底面10の面積が2.6mであり、その幅方向両端部に図3に示すように合計6個の呼び径3/4インチの配管からなるエアー放出部14を取り付け、各々、先端開口部が滑落方向Aに対して45°傾斜した方向を臨むように調整した。
【0026】
更に、各エアー放出部14に電磁弁を介してゲージ圧0.7MPaの圧縮エアー供給配管を接続し、図3の紙面左側の3個のエアー放出部14の電磁弁を上から2秒ずつ続けて開放させた後に引き続き同紙面右側の3個のエアー放出部14の電磁弁を上から2秒ずつ続けて開放させることで構成される12秒周期のエアー放出パターンを繰り返すことによって、シュート2内に常時いずれかのエアー放出部14から圧縮エアーが吹き込まれるようにした。このようにして石灰石原料の粉砕処理を行った。
【0027】
比較のため、シュートに圧縮エアーを供給しない以外は上記と同様にして石灰石原料を粉砕処理した。これら圧縮エアーをシュートに吹き込んだ場合と吹き込まない場合の結果を下記表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
上記表1の結果から分かるように、月間降雨量が500mm/月程度の月で比較した場合、圧縮エアーをシュートに吹き込まない場合では15回発生していた詰りが、圧縮エアーを吹き込むことにより2回に減少した。すなわち、石灰石スラリー調製設備に適用される石灰石原料用のシュートにおいて、その底面の幅方向両端部の複数個所にエアー放出部を設けて間欠的に圧縮エアーを吹き出すことによって、石灰石原料の含水率の性状が変動しても破砕機への定量供給をほぼ維持でき、よって従来の粉体付着防止装置に比べて小型且つ安価に破砕機の過負荷による設備停止を抑制することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 ベルトコンベア
2 シュート
3 破砕機
10 底面
11、12 側面
13 蓋部
14 エアー放出部
A 滑落方向
R 石灰石原料
図1
図2
図3
図4