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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】記録方法、及び記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20220511BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20220511BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20220511BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20220511BHJP
   B05D 3/04 20060101ALI20220511BHJP
   B05D 1/38 20060101ALI20220511BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20220511BHJP
【FI】
B41J2/01 123
B41J2/01 501
C09D11/30
B41M5/00 100
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B05D7/24 303A
B05D7/24 301M
B05D3/04 Z
B05D1/38
C09D11/54
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018007778
(22)【出願日】2018-01-22
(65)【公開番号】P2019126909
(43)【公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】戸田 直博
(72)【発明者】
【氏名】大原 俊一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 由貴男
(72)【発明者】
【氏名】宮川 聡志
【審査官】大浜 登世子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-513488(JP,A)
【文献】国際公開第2017/212848(WO,A1)
【文献】特開2015-085557(JP,A)
【文献】特開2016-112887(JP,A)
【文献】特開2017-206623(JP,A)
【文献】米国特許第09403383(US,B1)
【文献】特開2010-069673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
C09D 11/30
B41M 5/00
B05D 7/24
B05D 3/04
B05D 1/38
C09D 11/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、及び水を含むインクをインク付与手段から付与する記録方法であって、
多価金属化合物、及び樹脂を含む表面処理層を非浸透性基材に形成する表面処理層形成工程と、
前記インク付与手段、及び前記表面処理層の間を加湿手段により加湿する加湿工程と、
前記加湿工程後に、前記インク付与手段から前記表面処理層に前記インクを付与するインク付与工程と、を有し、
前記加湿工程は、前記インク付与手段、及び前記表面処理層の間における相対湿度を65%RH以上90%RH以下にする工程であり、
前記表面処理層形成工程は、水、前記多価金属化合物、及び前記樹脂を含む表面処理液を前記非浸透性基材に付与してから乾燥させて前記表面処理層を形成する工程であり、
前記インク付与手段は、ライン型のインクジェット吐出手段であり、
前記インクジェット吐出手段は、前記インクを吐出しないノズルにおいて、前記ノズル内の前記インクの界面を振動させ、
前記多価金属化合物は、酢酸カルシウムを含み、
前記樹脂は酢酸ビニル-アクリル樹脂を含み、
前記加湿手段は、前記非浸透性基材の搬送方向に対して、前記インク付与手段の上流側に設けられている記録方法。
【請求項2】
前記非浸透性基材は、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である請求項1に記載の記録方法。
【請求項3】
色材、及び水を含むインクをインク付与手段から付与する記録装置であって、
多価金属化合物、及び樹脂を含む表面処理層を非浸透性基材に形成する表面処理層形成手段と、
前記インク付与手段、及び前記表面処理層の間を加湿する加湿手段と、
前記インク付与手段から前記表面処理層に前記インクを付与するインク付与手段と、を有し、
前記加湿手段は、前記インク付与手段、及び前記表面処理層の間における相対湿度を65%RH以上90%RH以下にする手段であり、
前記表面処理層形成手段は、水、前記多価金属化合物、及び前記樹脂を含む表面処理液を前記非浸透性基材に付与してから乾燥させて前記表面処理層を形成する手段であり、
前記インク付与手段は、ライン型のインクジェット吐出手段であり、
前記インクジェット吐出手段は、前記インクを吐出しないノズルにおいて、前記ノズル内の前記インクの界面を振動させ、
前記多価金属化合物は、酢酸カルシウムを含み、
前記樹脂は酢酸ビニル-アクリル樹脂を含み、
前記加湿手段は、前記非浸透性基材の搬送方向に対して、前記インク付与手段の上流側に設けられている記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法、及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用途の印刷では、フィルムなどの非浸透性基材に対し、水性インクをインクジェット記録方式で吐出して画像を形成する方法が知られている。このような水性インクを用いた記録方式では、非水性インクを用いた記録方式に比べて非浸透性基材上で水性インクが弾かれやすい。そのため、画像を形成することができない課題や、形成された画像に色むらが生じる課題がある。
【0003】
特許文献1には、上記課題に対して、インク低吸収性または非吸収性の記録媒体の記録面の表面改質を行って、記録面のぬれ張力指数を40mN/m以上とする表面改質工程と、表面改質工程の後に、記録面に凝集剤を含有する反応液を付着させる反応液付着工程と、反応液付着工程の後に、色材と、水と、を含有するインクジェット記録用のインク組成物を用いて、記録面に画像を記録する画像記録工程と、を含む、記録方法により画像を形成することが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非浸透性基材に対して連続して大量に印刷を行う場合、従来の記録方法では、インクの記録媒体に対する濡れ広がりが劣り、且つ長時間の印刷中にノズル内におけるインク乾燥が生じるため、濡れ広がり不足、吐出不良による画像中のスジが生じる課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、色材、及び水を含むインクをインク付与手段から付与する記録方法であって、多価金属化合物、及び樹脂を含む表面処理層を非浸透性基材に形成する表面処理層形成工程と、前記インク付与手段、及び前記表面処理層の間を加湿手段により加湿する加湿工程と、前記加湿工程後に、前記インク付与手段から前記表面処理層に前記インクを付与するインク付与工程と、を有し、前記加湿工程は、前記インク付与手段、及び前記表面処理層の間における相対湿度を65%RH以上90%RH以下にする工程であり、前記表面処理層形成工程は、水、前記多価金属化合物、及び前記樹脂を含む表面処理液を前記非浸透性基材に付与してから乾燥させて前記表面処理層を形成する工程であり、前記インク付与手段は、ライン型のインクジェット吐出手段であり、前記インクジェット吐出手段は、前記インクを吐出しないノズルにおいて、前記ノズル内の前記インクの界面を振動させ、前記多価金属化合物は、酢酸カルシウムを含み、前記樹脂は酢酸ビニル-アクリル樹脂を含み、前記加湿手段は、前記非浸透性基材の搬送方向に対して、前記インク付与手段の上流側に設けられている記録方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の記録方法は、長時間印刷した際において、画像中に生じるスジを抑制する効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る記録装置を示す概略側面図である。
図2図2は、実施例7で用いる記録装置を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<<記録装置>>
本願において、記録装置は、多価金属化合物、及び樹脂を含む表面処理層を非浸透性基材に形成する表面処理層形成手段と、インク付与手段、及び表面処理層の間を加湿する加湿手段と、インク付与手段から表面処理層に色材、及び水を含むインクを付与するインク付与手段と、を有する。また、記録装置は、必要に応じて、非浸透性基材の供給、搬送、排出に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置、乾燥装置なども含むことができる。
【0009】
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る記録装置を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る記録装置を示す概略側面図である。図1に示す記録装置100は、フルライン型(以降、「ライン型」とも称することがある)のインクジェット記録装置である。記録装置100は、巻き出し装置101と、非浸透性基材102と、コロナ処理装置103と、表面処理液付与装置104と、表面処理液乾燥装置105と、加湿装置106と、インクジェット吐出ヘッド107と、プラテン108と、インク乾燥装置109と、巻取り装置110と、を有する。
【0010】
<巻出手段>
巻き出し装置101は、回転駆動することにより、ロール状に収納された非浸透性基材102を記録装置100内の搬送経路に供給する。
【0011】
非浸透性基材102は、記録装置の搬送方向に連続するフィルム状の基材であり、巻き出し装置101と巻取り装置110の間の搬送経路に沿って搬送される。また、非浸透性基材102の搬送方向における長さは、少なくとも巻きだし装置101と巻取り装置110との間に設けられた非浸透性基材102の搬送経路の長さより長い。このように記録装置の搬送方向に連続する基材を用いるため、本願の記録装置は連続して長時間の印刷を行う。
【0012】
<コロナ処理手段>
コロナ処理装置103は、非浸透性基材102に対してコロナ放電を行い、非浸透性基材102の表面を改質する。なお、コロナ処理を行う手段としては、各種公知の手段を用いることができる。
【0013】
表面処理液付与装置104は、表面処理液を付着させたローラを非浸透性基材102と接触するように回転駆動させて、非浸透性基材102の表面に表面処理液を付与する。なお、表面処理液を付与する手段は、表面処理液を付着させたローラを非浸透性基材102に接触させる手段に限られず、例えば、スピンコート、スプレーコート、グラビアロールコート、リバースロールコート、バーコート、インクジェット等の各種公知の手段を用いることができる。
【0014】
<表面処理液乾燥手段>
表面処理液乾燥装置105は、非浸透性基材102の表面に付与された表面処理液に温風を吹き付けて乾燥させ、表面処理層を形成させる。なお、表面処理液を乾燥させる手段は、温風を吹き付ける手段に限らず、例えば、非浸透性基材102の裏面を加熱ローラ、フラットヒータ等に接触させて乾燥させる手段等の各種公知の手段を用いることができる。
【0015】
<加湿手段>
加湿装置106は、インクジェット吐出ヘッド107と、非浸透性基材102上に設けられた表面処理層と、の間を加湿する。これにより、インクジェット吐出ヘッド107の近傍、より具体的にはインクジェット吐出ヘッド107に設けられたノズルの近傍、更に具体的にはインクジェット吐出ヘッド107に設けられたノズルの内部が加湿される。また、非浸透性基材102の近傍、より具体的には非浸透性基材102に設けられた表面処理層の近傍が加湿される。なお、加湿装置106が加湿するのは空気である。
加湿装置106は、インクジェット吐出ヘッド107、及び非浸透性基材102から離れた位置に設けられ、加湿された空気をインクジェット吐出ヘッド107と、非浸透性基材102上に設けられた表面処理層と、の間に供給する。言い換えると、加湿装置106は、インクジェット吐出ヘッド107と、非浸透性基材102上に設けられた表面処理層に対して加湿された空気を供給する。なお、加湿装置106の位置は、インクジェット吐出ヘッド107と、非浸透性基材102上に設けられた表面処理層と、の間や、インクジェット吐出ヘッド107と隣接する位置、印刷装置全体を加湿することができる位置等が挙げられるが、特に限定されない。
また、加湿手段は、インクジェット吐出ヘッド107に設けられたノズル及び非浸透性基材102を含む空間であって、且つ記録装置を構成する部材により実質的に囲まれている空間の内部を加湿する手段であることが好ましい(以下、インクジェット吐出ヘッド107に設けられたノズル及び非浸透性基材102を含むように部材で囲まれている加湿された空間を「加湿領域」とも称する)。なお、加湿領域を形成する部材には、加湿領域に非浸透性基材102が導入される開口部や、加湿領域から非浸透性基材102が排出される開口部等が設けられていてもよく、そのような場合であっても、加湿領域は記録装置を構成する部材を用いて「実質的に囲まれて」いるものとする。
加湿装置106としては、水をミストとして噴霧する手段や、水蒸気を発生させる手段、ミストや水蒸気を発生させつつノズル近傍に送風する手段などが挙げられ、具体的には、スチーム式・ファン式・超音波式等の各種公知の加湿装置を用いることができる。
【0016】
<インク付与手段>
インクジェット吐出ヘッド107は、複数のノズルが配列された複数のノズル列を有しており、ノズルからのインクの吐出方向が、非浸透性基材102の搬送経路に向くように設けられている。これにより、インクジェット吐出ヘッド107は、非浸透性基材102上の表面処理層に、マゼンタ(M)、シアン(C)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色の液体を順次吐出する。なお、吐出されるインクの色はこれらに限らず、ホワイト、グレー、シルバー、ゴールド、グリーン、ブルー、オレンジ、バイオレットなどの色であってもよい。
また、インクジェット吐出ヘッド107は、ライン型のインクジェット吐出ヘッドであるが、「ライン型のインクジェット吐出ヘッド」とは、非浸透性基材102の搬送方向の全幅にわたってインクを吐出するノズルが配置されたインクジェット吐出ヘッドである。なお、インクジェット吐出ヘッドとしては、ライン型に限らず、シリアル型であってもよい。
また、インクジェット吐出ヘッド107において、インクに刺激を印加してインクを吐出させる手段としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。これらの中でも、特に、インクジェット吐出ヘッド内のインク流路内にある圧力室(液室などとも称する)と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小することで圧力室中のインクが加圧され、インクジェット吐出ヘッドのノズルからインクを液滴として吐出させる手段が好ましい。また、このようなインクを吐出することができる複数のノズルにおいて、形成する画像の形状に起因してインクが吐出されない一部のノズルでは、圧電素子に吐出しない微小電圧を印加し、ノズル内のインクの界面を振動させることが好ましい。なお、ノズル内のインクの界面とは、大気または気体と接するインクの界面である。
【0017】
<搬送手段>
プラテン108は、非浸透性基材102を、搬送経路に沿って搬送されるようにガイドする。
【0018】
<インク乾燥手段>
インク乾燥装置109は、非浸透性基材102上の表面処理層に付与されたインクに温風を吹き付けて乾燥させる。なお、インクを乾燥させる手段は、温風を吹き付ける手段に限らず、例えば、非浸透性基材102の裏面を加熱ローラ、フラットヒータ等に接触させて乾燥させる手段等の各種公知の手段を用いることができる。
【0019】
<巻取手段>
巻取り装置110は、インクを付与することで画像が形成された非浸透性基材102を、回転駆動することにより、巻き取ってロール状に収納する。
【0020】
<<記録方法>>
本願において、記録方法は、多価金属化合物、及び樹脂を含む表面処理層を非浸透性基材に形成する表面処理層形成工程と、インク付与手段、及び表面処理層の間を加湿する加湿工程と、加湿工程後に、インク付与手段から表面処理層に色材、及び水を含むインクを付与するインク付与工程と、を有する。また、記録方法は、必要に応じて、非浸透性基材の供給、搬送、排出に係わる工程、その他、前処理工程、後処理工程、乾燥工程なども含むことができる。
【0021】
図1を用いて、本発明の一実施形態に係る記録方法を説明する。図1に示す記録装置100を用いる記録方法は、コロナ処理工程と、表面処理層形成工程と、加湿工程と、インク付与工程と、インク乾燥工程と、を有する。
【0022】
<コロナ処理工程>
コロナ処理工程は、非浸透性基材102を巻き出す工程を経て搬送されてきた非浸透性基材102に対し、コロナ放電によりコロナ処理を行い、表面改質を行う工程である。次に説明する表面処理層形成工程の前にコロナ処理を行うことにより、非浸透性基材102に対する表面処理層の密着性が向上するため好ましい。また、コロナ処理工程を行う場合の各種条件(放電量等)は特に限定されるものではない。
なお、本願の記録方法は、コロナ処理に変えて、大気圧プラズマ処理、フレーム処理、紫外線照射処理等を行うことができる。また、コロナ処理を設けなくてもよい。
【0023】
<表面処理層形成工程>
表面処理層形成工程は、非浸透性基材102を巻き出す工程を経て搬送されてきた非浸透性基材102に対し、水、多価金属化合物、及び樹脂を含む表面処理液を付与し、乾燥させることで多価金属化合物、及び樹脂を含む表面処理層を形成する工程である。表面処理層形成工程後に、非浸透性基材102上の表面処理層にインクが付与され、表面処理層に含まれる多価金属塩と付与されたインクに含まれる色材とが反応し、表面処理層上で色材を凝集させることができる。これにより、インクで形成される画像の色境界滲み等の発生を抑制することができ、優れた画像が得られる。
また、表面処理液の非浸透性基材102に対する付与量は、特に限定されないが、0.01g/m以上2.0g/m以下であることが好ましく、0.02g/m以上1.6g/m以下であることがより好ましい。0.01g/m以上であることで、色材が一層凝集しやすくなる。また、2.0g/m以下であることで、表面処理液の乾燥時間を短くできるので、記録の高速化を図ることができる。
また、図1に示す表面処理層形成工程では、非浸透性基材102に付与された表面処理液を、表面処理液乾燥装置105を用いて乾燥させて表面処理層を形成するが、特別な乾燥手段を用いず、自然乾燥させることで表面処理層を形成してもよい。また、表面処理液を十分に乾燥させてから、以降で説明するインク付与工程を行うことにより、インクを表面処理層に付与した際におけるインクの液滴の形状が均一化し、インクの滲みが抑制される。
【0024】
<加湿工程>
加湿工程は、インクジェット吐出ヘッド107と、非浸透性基材102上に設けられた表面処理層と、の間を加湿する工程である。言い換えると、加湿工程は、インクジェット吐出ヘッド107と、非浸透性基材102上に設けられた表面処理層に対して加湿された空気を、送風や形成された流路等により供給する工程である。これにより、インクジェット吐出ヘッド107の近傍、より具体的にはインクジェット吐出ヘッド107に設けられたノズルの近傍、更に具体的にはインクジェット吐出ヘッド107に設けられたノズルの内部が加湿される。インクジェット吐出ヘッド107の近傍が加湿されることで、ノズル内におけるインクからの水分蒸発に伴うインク乾燥が抑制され、吐出不良により画像中に生じるスジを抑制することができる。また、同様に、インクジェット吐出ヘッド107と、非浸透性基材102上に設けられた表面処理層と、の間が加湿されることで表面処理層の近傍が加湿される。表面処理層は、親水性を有する多価金属塩、及び樹脂を含むため、表面処理層の近傍が加湿されることで表面処理層に水分が吸着され、加湿工程後に表面処理層に付与されるインクが濡れ広がりやすくなる。インクが濡れ広がることで、画像中のスジの発生を抑制することができる。なお、スジとは、ノズルの詰まり又は不良吐出に起因して発生し、用紙搬送方向に沿って伸びるスジ状の画像欠陥をいう。なお、表面処理層を効率的に加湿するために、加湿装置106は、非浸透性基材102の搬送方向に対してインクジェット吐出ヘッド107の上流側に設けられていることが好ましい。また、加湿工程は、上記の加湿領域を加湿する工程であることが好ましい。
また、加湿工程は、インク付与手段、及び表面処理層の間における相対湿度を65%RH以上90%RH以下にする工程であることが好ましく、70%RH以上85%RH以下にする工程であることがより好ましい。相対湿度がこの範囲であることにより、より良好に画像中のスジの発生を抑制することができる。なお、「インク付与手段、及び表面処理層の間における相対湿度」は、インク付与手段におけるインクを付与するための開口部(ノズル)と表面処理層との距離が最短となる直線上の中間点で測定するが、記録装置に上記の加湿領域が設けられている場合は、加湿領域における任意の場所で測定することができる。
【0025】
<インク付与工程>
インク付与工程は、上述した表面処理層形成工程と加湿工程を経た非浸透性基材102上の表面処理層に、色材と水を含有するインクを付与する工程である。これにより、インクが濡れ広がりながら表面処理層中の多価金属化合物と反応し、インク中の色材が凝集するため、画像中のスジの発生を抑制するとともに画像の色境界滲み等の発生を抑制することができ、優れた画像が得られる。
また、図1に示す表面処理層形成工程では、ライン型のインクジェット吐出ヘッドであるインクジェット吐出ヘッド107を用いる。産業用途の印刷では、大量の印刷を高速で行う必要があるため、図1に示す記録方法のように、ライン型のインクジェット吐出ヘッドを用いたインクジェット記録方式の印刷方法が好ましい。しかし、産業用途の印刷は、長時間連続して印刷が行われるため、ライン型のヘッドを用いた場合、長時間インクの吐出が行われない一部のノズルにおいてインクが乾燥し吐出不良が生じることがある。そのため、ライン型のインクジェット吐出ヘッドを用いる場合、シリアル型のインクジェット吐出ヘッドを用いる場合に比べて、ノズル内におけるインク乾燥を抑制することができる加湿工程を実行することが好ましい。なお、シリアル型のインクジェット吐出ヘッドを用いた場合であっても長時間インクの吐出が行われないノズルが存在する場合があるため、本願におけるインク付与工程は、シリアル型のインクジェット吐出ヘッドを用いる場合を排除しない。
また、インク付与工程では、インクを吐出しないノズルにおいて、ノズル内のインクの界面を振動させることが好ましい。ノズル内のインクの界面を振動させることにより、ノズル内のインクと、ノズルに連通する圧力室などのインクジェット吐出ヘッドにおけるインク流路内のインクと、を均一な状態にすることができ、ノズル内におけるインクの乾燥を抑制することができる。これにより、ノズル詰まりによる画像中のスジの発生をより抑制することができる。
【0026】
<インク乾燥工程>
インク乾燥工程は、インク付与工程の後に、付与されたインクを乾燥させる工程である。乾燥は、記録媒体にベタつきが感じられない程度に行うことが好ましい。なお、図1に示す乾燥工程では、付与されたインクをインク乾燥装置109により乾燥させるが、特別な乾燥手段を用いず、自然乾燥させてもよい。
【0027】
<<非浸透性基材>>
非浸透性基材とは、水透過性、吸収性及び/又は吸着性が低い表面を有する基材を指し、内部に多数の空洞があっても外部に開口していない基材も含まれる。より定量的には、ブリストー(Bristow)法において、接触開始から30msec1/2までの水吸収量が10mL/m以下である基材を指す。
非浸透性基材の中でも、ポリプロピレンフィルムフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ナイロンフィルムは、インクが良好に密着するため好ましい。また、これらの中でもポリプロピレンフィルムフィルム、及びポリエチレンテレフタレートフィルムは、加湿に対する特性変化が少なく、特に望ましい。
ポリプロピレンフィルムとしては、例えば、東洋紡社製P-2002、P-2161、P-4166、SUNTOX社製PA-20、PA-30、PA-20W、フタムラ化学社製FOA、FOS、FORなどが挙げられる。
ポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、例えば、東洋紡社製E-5100、E-5102、東レ社製P60、P375、帝人デュポンフィルム社製G2、G2P2、K、SLなどが挙げられる。
ナイロンフィルムとしては、例えば、東洋紡社製ハーデンフィルムN-1100、N-1102、N-1200、ユニチカ社製ON、NX、MS、NKなどが挙げられる。
なお、非浸透性基材の代わりに浸透性の基材を用いた場合、表面処理液は浸透性基材内部に不均一に浸透する。そのため、表面処理液が基材表面に均一に付与されることで形成される均一な表面処理層を形成することができないため、浸透性の基材を用いた場合では画像中に生じるスジを抑制することが困難となる。
【0028】
<<表面処理液>>
非浸透性基材に付与されることで表面処理層を形成する表面処理液は、多価金属化合物、樹脂、及び水を含み、必要に応じて有機溶剤、界面活性剤、他の成分を含む。
【0029】
<多価金属化合物>
多価金属化合物は、加湿工程において表面処理層の吸水性を向上させることができ、これにより画像中に生じるスジを抑制する。また、多価金属化合物は、インク中に含まれる色材を凝集させる。
多価金属化合物としては、例えば、チタン化合物、クロム化合物、銅化合物、コバルト化合物、ストロンチウム化合物、バリウム化合物、鉄化合物、アルミニウム化合物、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、及びニッケル化合物、並びにこれらの塩(多価金属塩)が挙げられる。
これらの中でも、カルシウム化合物、マグネシウム化合物、及びニッケル化合物、並びにこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種が好ましい。特に、多価金属化合物がカルシウム化合物の塩(カルシウム塩)である場合、表面処理液に含まれる樹脂の凝集を抑制することができるので、表面処理液の安定性がより良好となる。
多価金属化合物の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、酢酸カルシウムが好ましい。
多価金属化合物の表面処理液全量に対する濃度は、0.05モル/kg以上0.5モル/kg以下であることが好ましい。濃度がこの範囲内であることにより、表面処理液に含まれる樹脂の凝集を抑制することができるので、優れた貯蔵安定性を得ることができ、加湿工程において吸水性が向上し画像中に生じるスジを抑制することができる。
なお、多価金属化合物と同様に、インク中に含まれる色材を凝集させる機能を有する材料としてカチオンポリマーが知られている。しかし、カチオンポリマーと樹脂を含む液体は、多価金属化合物と樹脂を含む本願の表面処理液に比べて加湿工程における吸湿性に劣る。そのため、多価金属化合物を使用することが好ましい。
【0030】
<樹脂>
樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、及びこれらの樹脂の共重合体から選ばれる少なくとも1つであるとき、表面処理層が様々な非浸透性基材に対して強固な密着性を得られるため好ましい。また、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合樹脂、オレフィン変性ウレタン樹脂であることが更に好ましい。また、樹脂は、水に分散可能な樹脂粒子の形態であることが好ましい。
樹脂の添加量は、表面処理液の全量に対して固形分として0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。0.5質量%以上であると、樹脂が十分に非浸透性基材を被覆することができるため、表面処理層の非浸透性基材に対する密着性が向上し、インク滴の滲みを抑制することができる。また、20質量%以下であると表面処理層の膜厚が厚くなりすぎないため密着性の低下が抑制される。
【0031】
<水>
表面処理液における水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%以上90質量%以下が好ましく、50質量%以上90質量%以下がより好ましく、60質量%以上90質量%以下が特に好ましい。
【0032】
<有機溶剤>
表面処理液に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
多価アルコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等が挙げられる。
多価アルコールアルキルエーテル類としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、が挙げられる。
多価アルコールアリールエーテル類としては、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物としては、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
アミド類としては、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等が挙げられる。
アミン類としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。
含硫黄化合物類としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
その他の有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0033】
有機溶剤の表面処理液中における含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、5質量%以上60質量%以下が好ましく、5質量%以上50質量%以下がより好ましい。
【0034】
<界面活性剤>
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましい。シリコーン系界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)等が挙げられる。
両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩、などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
このような界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、ビックケミー株式会社、信越化学工業株式会社、東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社、日本エマルジョン株式会社、共栄社化学などから入手できる。
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、一般式(S-1)式で表わされる、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入したものなどが挙げられる。
【化1】
(但し、一般式(S-1)式中、m、n、a、及びbは、それぞれ独立に、整数を表わし、Rは、アルキレン基を表し、R’は、アルキル基を表す。)
上記のポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、市販品を用いることができ、例えば、KF-618、KF-642、KF-643(信越化学工業株式会社)、EMALEX-SS-5602、SS-1906EX(日本エマルジョン株式会社)、FZ-2105、FZ-2118、FZ-2154、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社)、BYK-33、BYK-387(ビックケミー株式会社)、TSF4440、TSF4452、TSF4453(東芝シリコン株式会社)などが挙げられる。
【0036】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2~16の化合物が好ましく、フッ素置換した炭素数が4~16である化合物がより好ましい。
フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。 これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少ないため好ましく、特に一般式(F-1)及び一般式(F-2)で表わされるフッ素系界面活性剤が好ましい。
【化2】
上記一般式(F-1)で表される化合物において、水溶性を付与するためにmは0~10の整数が好ましく、nは0~40の整数が好ましい。
【化3】
上記一般式(F-2)で表される化合物において、YはH、又はCmF2m+1でmは1~6の整数、又はCHCH(OH)CH-CmF2m+1でmは4~6の整数、又はCpH2p+1でpは1~19の整数である。nは1~6の整数である。aは4~14の整数である。
上記のフッ素系界面活性剤としては市販品を使用してもよい。この市販品としては、例えば、サーフロンS-111、S-112、S-113、S-121、S-131、S-132、S-141、S-145(いずれも、旭硝子株式会社製);フルラードFC-93、FC-95、FC-98、FC-129、FC-135、FC-170C、FC-430、FC-431(いずれも、住友スリーエム株式会社製);メガファックF-470、F-1405、F-474(いずれも、大日本インキ化学工業株式会社製);ゾニール(Zonyl)TBS、FSP、FSA、FSN-100、FSN、FSO-100、FSO、FS-300、UR、キャプストーンFS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、FS-35(いずれも、Chemours社製);FT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW(いずれも、株式会社ネオス社製)、ポリフォックスPF-136A,PF-156A、PF-151N、PF-154、PF-159(オムノバ社製)、ユニダインDSN-403N(ダイキン工業株式会社製)などが挙げられ、これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、Chemours社製のFS-3100、FS-34、FS-300、株式会社ネオス製のFT-110、FT-250、FT-251、FT-400S、FT-150、FT-400SW、オムノバ社製のポリフォックスPF-151N及びダイキン工業株式会社製のユニダインDSN-403Nが特に好ましい。
【0037】
表面処理液中における界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0038】
<<インク>>
インクは、色材、及び水を含み、必要に応じて樹脂粒子、有機溶剤、界面活性剤、その他成分を含む。なお、インクに用いる有機溶剤、及び界面活性剤については、表面処理液で用いる有機溶剤、及び界面活性剤と同様なので説明を省略する。
【0039】
<色材>
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、顔料として、混晶を使用しても良い。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
無機顔料として、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
また、有機顔料としては、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36、等がある。
染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0040】
インク中の色材の含有量は、画像濃度の向上、良好な定着性や吐出安定性の点から、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
【0041】
顔料を分散してインクを得る方法としては、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法、などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
分散剤として、竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
分散剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
<顔料分散体>
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いると良い。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はないが、顔料の分散安定性が良好となり、吐出安定性、画像濃度などの画像品質も高くなる点から、最大個数換算で最大頻度が20nm以上500nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
顔料分散体に対し、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0043】
<水>
インクにおける水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクの乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%以上60質量%以下がより好ましい。
【0044】
<樹脂粒子>
インク中に含有する樹脂粒子の樹脂の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン樹脂、ブタジエン樹脂、スチレン‐ブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、アクリルシリコーン樹脂などが挙げられ、単独でも併用して用いることも可能である。また、これらの中でも、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0045】
樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。市販の樹脂粒子としては、例えば、マイクロジェルE-1002、E-5002(スチレン-アクリル系樹脂粒子、日本ペイント株式会社製)、ボンコート4001(アクリル系樹脂粒子、大日本インキ化学工業株式会社製)、ボンコート5454(スチレン-アクリル系樹脂粒子、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE-1014(スチレン-アクリル系樹脂粒子、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK-200(アクリル系樹脂粒子、サイデン化学株式会社製)、プライマルAC-22、AC-61(アクリル系樹脂粒子、ローム・アンド・ハース製)、ナノクリルSBCX-2821、3689(アクリルシリコーン系樹脂粒子、東洋インキ製造株式会社製)、#3070(メタクリル酸メチル重合体樹脂粒子、御国色素株式会社製)などが挙げられる。
【0046】
樹脂粒子の含有量としては、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0047】
樹脂粒子のガラス転移温度としては、-50℃以上100℃以下が好ましい。
【0048】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【実施例
【0049】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以降の説明において「部」は「質量部」を意味する。
【0050】
<表面処理液の作製例>
(表面処理液P-1の作製例)
以下の処方混合物を5μmのフィルター(商品名:ミニザルト、ザルトリウス社製)で濾過し、表面処理液P-1を得た。
・1,2-プロパンジオール 10部
・エマルゲンLS-106(界面活性剤、花王社製) 1部
・酢酸カルシウム1水和物 1.76部
・酢酸ビニル-アクリル樹脂粒子(商品名:ビニブラン1225、日信化学社製) 10部(固形分濃度45%)
・プロキセルLV(防腐剤、アビシア社製) 0.1部
・イオン交換水 77.14部
【0051】
(表面処理液P-2の作製例)
以下の処方混合物を5μmのフィルター(商品名:ミニザルト、ザルトリウス社製)で濾過し、表面処理液P-2を得た。
・1,2-プロパンジオール 10部
・エマルゲンLS-106(界面活性剤、花王社製) 1部
・塩化カルシウム6水和物 1.76部
・酢酸ビニル-アクリル樹脂粒子(商品名:ビニブラン1225、日信化学社製) 10部(固形分濃度45%)
・プロキセルLV(防腐剤、アビシア社製) 0.1部
・イオン交換水 77.14部
【0052】
(表面処理液P-3の作製例)
以下の処方混合物を5μmのフィルター(商品名:ミニザルト、ザルトリウス社製)で濾過し、表面処理液P-3を得た。
・1,2-プロパンジオール 10部
・エマルゲンLS-106(界面活性剤、花王社製) 1部
・硫酸マグネシウム(無水) 1.76部
・酢酸ビニル-アクリル樹脂粒子(商品名:ビニブラン1225、日信化学社製) 10部(固形分濃度45%)
・プロキセルLV(防腐剤、アビシア社製) 0.1部
・イオン交換水 77.14部
【0053】
(表面処理液P-4の作製例)
以下の処方混合物を5μmのフィルター(商品名:ミニザルト、ザルトリウス社製)で濾過し、表面処理液P-4を得た。
・1,2-プロパンジオール 10部
・エマルゲンLS-106(界面活性剤、花王社製) 1部
・酢酸ビニル-アクリル樹脂粒子(商品名:ビニブラン1225、日信化学社製) 10部(固形分濃度45%)
・プロキセルLV(防腐剤、アビシア社製) 0.1部
・イオン交換水 78.9部
【0054】
(表面処理液P-5の作製例)
以下の処方混合物を5μmのフィルター(商品名:ミニザルト、ザルトリウス社製)で濾過し、表面処理液P-5を得た。
・1,2-プロパンジオール 10部
・エマルゲンLS-106(界面活性剤、花王社製) 1部
・酢酸カルシウム1水和物 1.76部
・プロキセルLV(防腐剤、アビシア社製) 0.1部
・イオン交換水 87.14部
【0055】
<顔料分散体の作製例>
(ブラック顔料分散体の作製例)
Cabot Corporation社製のカーボンブラック:Black Pearls(登録商標)1000 100gを、2.5N(規定)の次亜塩素酸ナトリウム溶液3000mLに添加し、温度60℃、速度300rpmで攪拌し、10時間反応させて酸化処理を行い、カーボンブラックの表面にカルボン酸基が付与された顔料を含む反応液を得た。得られた反応液を濾過し、濾別したカーボンブラックを水酸化ナトリウム溶液で中和し、限外濾過して分散体を得た。次いで、分散体とイオン交換水とを用いて透析膜による限外濾過を行い、更に、超音波分散を行って、顔料固形分濃度が15質量%である濃縮したブラック顔料分散体を得た。
【0056】
(シアン顔料分散体の作製例)
ブラック顔料分散体の作製において、カーボンブラックの代わりにピグメントブルー15:4(商品名:SMART Cyan 3154BA、SENSIENT社製)を用いた以外は、ブラック顔料分散体の作製と同様にして顔料固形分濃度が15質量%であるシアン顔料分散体を得た。
【0057】
(マゼンタ顔料分散体の作製例)
ブラック顔料分散体の作製において、カーボンブラックの代わりにピグメントレッド122(商品名:Pigment Red 122、サンケミカル株式会社製)を用いた以外は、ブラック顔料分散体の作製と同様にして顔料固形分濃度が15質量%であるマゼンタ顔料分散体を得た。
【0058】
(イエロー顔料分散体の作製例)
ブラック顔料分散体の作製において、カーボンブラックの代わりにピグメントイエロー74(商品名:SMART Yellow 3074BA、SENSIENT社製)を用いた以外は、ブラック顔料分散体の作製と同様にして顔料固形分濃度が15質量%であるイエロー顔料分散体を得た。
【0059】
<インクの作製例>
(ブラックインクの作製例)
以下の原料を順次分散、攪拌し、メンブランフィルターでろ過を行い、ブラックインクを作製した。
・ブラック顔料分散体 20部
・樹脂エマルジョン(商品名:ビニプランADH‐893D、日信化学社製) 5部
・界面活性剤(商品名:ソフタノールEP-5035、日本触媒社製) 2部
・防腐剤(プロキセルLV、アビシア社製) 0.1部
・1,2-プロパンジオール 30部
・3-メチル-1,3-ブタンジオール 5部
・イオン交換水 37.9部
【0060】
(シアンインクの作製例)
ブラックインクの作製において、ブラック顔料分散体の代わりにシアン顔料分散体を用いた以外は、ブラックインクの作製と同様にしてシアンインクを作製した。
【0061】
(マゼンタインクの作製例)
ブラックインクの作製において、ブラック顔料分散体の代わりにマゼンタ顔料分散体を用いた以外は、ブラックインクの作製と同様にしてマゼンタインクを作製した。
【0062】
(イエローインクの作製例)
ブラックインクの作製において、ブラック顔料分散体の代わりにイエロー顔料分散体を用いた以外は、ブラックインクの作製と同様にしてイエローインクを作製した。
【0063】
<実施例1>
作製したブラック、シアン、マゼンタ、イエローのインクを、それぞれインクジェット記録装置(商品名:VC-60000、株式会社リコー製)の改造機のインク収容容器に充填し印刷を行った。インクジェット記録装置の改造機は、図1と同様の各構成を有し、図1と同様の位置に、コロナ処理装置、加湿装置が設けられた。このインクジェット記録装置の改造機を用い、以下の印刷条件で連続印刷を行った。
(印刷条件)
・印刷長さ:2000m
・印刷速度:50(m/分)
・解像度:1200×1200dpi
・印刷画像:所定の色のベタ画像が他の色のベタ画像と隣接して色境界を形成するように、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローのベタ画像をそれぞれ形成した
・非浸透性基材:OPP 20umフィルム(商品名:パイレンP2161、東洋紡社製)
・コロナ処理装置:稼働させた
・付与する表面処理液:表面処理液P-1
・非浸透性基材上への表面処理液付与手段:ロールコーター
・表面処理液の乾燥手段:熱風及び加熱ローラ(共に80℃)
・加湿装置:稼働させる(加湿領域を設け、インクジェットヘッドと表面処理層の間に水蒸気を供給した)
・加湿装置の設置位置:搬送経路におけるインクジェットヘッド(IJヘッド)の位置より上流側
・インクジェットヘッドと表面処理層の間における相対湿度:77%RHになるように加湿装置を設定
・使用するインクジェットヘッド:ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インクに対応するインクジェットヘッド
・非吐出のノズルにおける微駆動条件(ノズル内におけるインク界面の振動条件):2kHz(吐出時のピエゾ電圧に対し20%の出力)
・インクの乾燥手段:熱風及び加熱ローラ(共に80℃)
【0064】
<実施例2~10、比較例1~5>
実施例1において、印刷条件を下記表1に示すように変更し、実施例2~10、比較例1~5の印刷を行った。
なお、実施例7は、図2に示す印刷装置で印刷を行った。図2は、実施例7で用いる記録装置を示す概略側面図である。実施例7で用いる記録装置は、加湿装置の設置位置を除き、実施例1で用いる記録装置と同様である。図2で示す通り、実施例7の加湿装置106-1は、搬送経路におけるインクジェットヘッドの位置と同位置に設けられている。
なお、比較例5の浸透性基材は、Lumi Art Gloss 90gsm(Stora Enso社製)である。
【0065】
【表1】
【0066】
次に、上記実施例1~10、比較例1~5の印刷を行った後、印刷開始時の印刷画像、及び2000m分の印刷終了時の印刷画像の特性を、下記の方法及び評価基準に従って評価した。結果を表2に示す。
【0067】
[スジ抑制の評価]
印刷開始時の印刷画像、及び2000m分の印刷終了時の印刷画像を目視で観察し、スジの発生具合を以下の基準で評価した。評価がB以上である場合を実用可能であると判断した。
-評価基準-
A:スジが観察されない
B:目視ではスジを観察できないが、ルーペであればスジを観察できる
C:目視で画像の一部にスジを観察できる
D:目視で画像の全体にスジを観察できる
【0068】
[色境界における滲みの評価]
異なる色のベタ画像間における色境界を目視で観察し、滲みの発生具合を以下の基準で評価した。評価がB以上である場合を好ましいものと判断した。
-評価基準-
A:色境界における滲みが観察されない
B:目視では色境界における滲みを観察できないが、ルーペであれば観察できる
C:目視で色境界の一部に滲みを観察できる
D:目視で色境界の全体に滲みを観察できる
【0069】
【表2】
【符号の説明】
【0070】
100 記録装置
101 巻き出し装置
102 非浸透性基材
103 コロナ処理装置
104 表面処理液付与装置
105 表面処理液乾燥装置
106 加湿装置
106-1 加湿装置
107 インクジェット吐出ヘッド
108 プラテン
109 インク乾燥装置
110 巻取り装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0071】
【文献】特開2015-143003号公報
図1
図2