(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】払拭装置、ヘッドメンテナンス装置、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
B41J2/165 307
B41J2/165 303
B41J2/165 305
B41J2/165 401
(21)【出願番号】P 2018029699
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】浅野 幸博
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 達郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 大介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 謙太
【審査官】四垂 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-193425(JP,A)
【文献】特開2017-140779(JP,A)
【文献】特開2008-137266(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0046724(US,A1)
【文献】特開2016-155279(JP,A)
【文献】特開2003-025596(JP,A)
【文献】特開2016-150552(JP,A)
【文献】国際公開第2016/002896(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
払拭対象を払拭するウェブ状の第1払拭部材と、
前記払拭対象に対する払拭動作を制御する手段と、
前記払拭対象を払拭するブレード状の第2払拭部材と、を備え、
前記制御する手段は、
前記第1払拭部材を第1方向に相対移動させて前記払拭対象を払拭する第1払拭動作と、
前記第1払拭部材を前記払拭対象に対して前記第1方向と異なる第2方向に相対移動させて、前記第1払拭動作の払拭終了側における所定の領域を前記第1払拭部材で払拭する第2払拭動作との制御を行う手段を含
み、
前記第2払拭部材は、前記払拭対象に接触して前記払拭対象を払拭する払拭位置と、前記払拭対象に接触しない退避位置との間で移動可能であり、
前記第1払拭動作では前記第2払拭部材を前記払拭位置に移動させ、
前記第2払拭動作では前記第2払拭部材を前記退避位置に移動させる
ことを特徴とする払拭装置。
【請求項2】
前記第1払拭部材に洗浄液を付与する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の払拭装置。
【請求項3】
前記第1払拭動作を所定回数行ったときに前記第2払拭動作を行う
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の払拭装置。
【請求項4】
払拭対象を払拭するウェブ状の第1払拭部材と、
前記払拭対象に対する払拭動作を制御する手段と、を備え、
前記制御する手段は、
前記第1払拭部材を第1方向に相対移動させて前記払拭対象を払拭する第1払拭動作と、
前記第1払拭部材を前記払拭対象に対して前記第1方向と異なる第2方向に相対移動させて、前記第1払拭動作の払拭終了側における所定の領域を前記第1払拭部材で払拭する第2払拭動作との制御を行う手段を含み、
前記第2払拭動作には、前記第1払拭部材を前記払拭対象に接触させて所定時間停止させる動作を含む
ことを特徴とする払拭装置。
【請求項5】
液体を吐出する液体吐出ヘッドのノズル面を払拭する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の払拭装置。
【請求項6】
前記液体吐出ヘッドには払拭方向の端部にガイド部材が配置され、
前記第2払拭動作では前記ガイド部材を払拭する
ことを特徴とする請求項
5に記載の払拭装置。
【請求項7】
前記第2方向が、前記第1方向と逆方向である
ことを特徴とする請求項
1ないし6のいずれかに記載の払拭装置。
【請求項8】
液体吐出ヘッドのメンテナンスを行うヘッドメンテナンス装置であって、
請求項7に記載の払拭装置を備えている
ことを特徴とする
ヘッドメンテナンス装置。
【請求項9】
液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
請求項1ないし7のいずれかに記載の払拭装置、又は請求項8に記載のメンテナンス装置と、を備えている
ことを特徴とする
液体を吐出する装置。
【請求項10】
液体を吐出する
複数のノズルを配列したノズル列が設けられた液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドを払拭するウェブ状の第1払拭部材と、
前記液体吐出ヘッドに対する払拭動作を制御する手段と、を備え、
前記制御する手段は、
前記第1払拭部材を第1方向に相対移動させて前記液体吐出ヘッドを払拭する第1払拭動作と、
前記第1払拭部材を前記液体吐出ヘッドに対して前記第1方向と異なる第2方向に相対移動させて、前記液体吐出ヘッドの前記ノズル列に達するまでの領域のみを前記第1払拭部材で払拭する第2払拭動作との制御を行う手段を含む
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は払拭装置、ヘッドメンテナンス装置、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドを使用する場合、ノズルの状態を維持回復するため、ノズル面をキャッピングするキャップ、ノズル面を払拭清掃する払拭装置などを含む維持回復機構(メンテナンス装置)を備える。
【0003】
従来、ノズル面を払拭するブレード状のワイパ部材を備え、ヘッドをワイパ部材に対して第1方向に相対移動させてノズル面払拭した後、ヘッドを第2方向に移動させてヘッドの払拭方向後端の側面をワイパ部材に接触させた後、再度、ヘッドを第1方向に移動…sてワイパ部材から離間させる装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、払拭部材としてウェブなどの帯状の払拭部材を使用して払拭を行った場合、払拭終了側の部分などに廃液が堆積するという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、払拭対象の付着物を確実に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る払拭装置は、
払拭対象を払拭するウェブ状の第1払拭部材と、
前記払拭対象に対する払拭動作を制御する手段と、
前記払拭対象を払拭するブレード状の第2払拭部材と、を備え、
前記制御する手段は、
前記第1払拭部材を第1方向に相対移動させて前記払拭対象を払拭する第1払拭動作と、
前記第1払拭部材を前記払拭対象に対して前記第1方向と異なる第2方向に相対移動させて、前記第1払拭動作の払拭終了側における所定の領域を前記第1払拭部材で払拭する第2払拭動作との制御を行う手段を含み、
前記第2払拭部材は、前記払拭対象に接触して前記払拭対象を払拭する払拭位置と、前記払拭対象に接触しない退避位置との間で移動可能であり、
前記第1払拭動作では前記第2払拭部材を前記払拭位置に移動させ、
前記第2払拭動作では前記第2払拭部材を前記退避位置に移動させる
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、払拭対象の付着物を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る払拭装置の側面説明図である。
【
図3】同払拭装置で払拭する液体吐出ヘッドの側面説明図である。
【
図4】同液体吐出ヘッドのノズル面側から見た平面説明図である。
【
図5】同払拭装置における払拭動作の制御に係る部分のブロック説明図である。
【
図6】払拭制御部による第1払拭動作の制御の説明に供する側面説明図である。
【
図9】払拭制御部によるワイパ清浄化動作の制御の説明に供する側面説明図である。
【
図10】払拭制御部による第2払拭動作の制御の説明に供する側面説明図である。
【
図12】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の機構部の平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同実施形態に係る払拭装置の側面説明図、
図2は同払拭装置の平面説明図、
図3は同払拭装置で払拭する液体吐出ヘッドの側面説明図、
図4は同液体吐出ヘッドのノズル面側から見た平面説明図である。
【0011】
本実施形態では、払拭装置1によって払拭する払拭対象を、液体を吐出する装置の液体吐出ヘッド(以下、「ヘッド」ともいう。)111としている。
【0012】
ヘッド111は、
図3及び
図4に示すように、液体を吐出する複数のノズル111nを配列した複数のノズル列Na~Ndが設けられたノズル面111aを有している。そして、ヘッド111は、ノズル配列方向の両側部にはガイド部材111b、111bを備えている。ガイド部材111bは、ノズル面111aと同じ面、又は、ノズル面111aと微小な段差を有するなど、ノズル面111aから突き出ない状態で配置している。これらのノズル面111a及びガイド部材111bの表面が払拭対象となる。
【0013】
払拭装置1は、液体を吐出する装置の装置本体に調整支持されるメインフレーム上に払拭方向に往復移動可能に保持される払拭ユニット30を備えている。
【0014】
払拭ユニット30の側板3,3には、帯状の第1払拭部材としてのウェブ4を巻き回した繰り出し側ロール4Aの軸心部材となる繰り出しローラ5と、繰り出し側ロール4Aから繰り出されたウェブ4を巻き取った巻取り側ロール4Bの軸心部材となる巻取りローラ6とを保持している。なお、ウェブ4の送り方向は矢印A方向である。
【0015】
また、側板3には、案内ローラ7、8が回転可能に保持されている。これらの案内ローラ7、8の間には、ウェブ4を払拭対象であるノズル面111a又はガイド部材111bの表面に押し付ける押し付け部材9が配置されている。押し付け部材9は、払拭動作を行うときには、スプリング10によってノズル面111a又はガイド部材111bの表面に所定の押し付け力で押し付けられる。
【0016】
ウェブ4としては、吸収性を有し、少なくとも使用する液体に対して耐液性を有するとともに、毛羽立ちや発塵を生じないシート状の材料からなることが好ましく、例えば、不織布、布、フィルム、紙などが挙げられる。
【0017】
巻取りローラ6には、駆動モータ11の駆動力がギヤ列からなる伝達機構12を介して伝達される。
【0018】
案内ローラ7にはコードホイール13を取り付け、このコードホイール13に形成したパターンを検出する透過型フォトセンサからなるエンコーダセンサ14を設けている。これらのコードホイール13とエンコーダセンサ14によってウェブ4の移動距離(送り量)を検出するエンコーダ15を構成している。
【0019】
また、ウェブ4に対して第1払拭方向(矢印Y1方向)の上流側に、ブレード状の第2払拭部材であるワイパ24が配置されている。ワイパ24はワイパホルダ23に保持され、ワイパホルダ23は軸25によって側板3に回転可能に保持されている。
【0020】
ワイパホルダ23が回動されることで、ワイパ24は、実線図示の第1位置(ホーム位置)と、破線図示の第2位置と、仮想線図示の第3位置との間で回動される。
【0021】
ここで、第1位置は、ワイパ24によってノズル面111aを払拭する位置である。第2位置は、ワイパ24がウェブ4に接触して、ウェブ4によってワイパ24が清浄化される位置である。第3位置は、ノズル面111a及びウェブ4に接触しない退避位置である。
【0022】
これらの側板3、3に保持されるウェブ4、繰り出しローラ5、巻取りローラ6、案内ローラ7、8、押し付け部材9、ワイパ24などは払拭ユニット(カートリッジ)30としてユニット化し、装置本体側に着脱可能に搭載できるようにしている。
【0023】
払拭ユニット30はヘッド111のノズル配列方向である矢印Y方向に往復移動可能に配置されている。この払拭ユニット30の往復移動は、例えば、ラック31及びピニオン32と、ピニオン32を回転させる移動モータ33を含む移動機構、或いは、タイミングベルトとプーリを含む移動機構などで行うことができる。
【0024】
また、払拭ユニット30は、ウェブ4がノズル面111aに対して進退する矢印Z方向、ここでは上下方向に移動可能(昇降可能)に配置されている。払拭ユニット30の昇降は、例えば、カム35と、カム35を回転させる昇降モータ36を含む昇降機構、或いは、ラック・ピニオンを含む昇降機構などで行うことができる。このとき、払拭ユニット30の往復移動機構は上下動に同動する。
【0025】
次に、この払拭装置1における払拭動作の制御に係る部分について
図5のブロック説明図を参照して説明する。
【0026】
払拭制御部501は、払拭装置1の制御を司る手段であり、例えば、この払拭装置1を搭載する液体を吐出する装置の制御部の一部として構成することができる。
【0027】
払拭制御部501は、モータ駆動部502を介して、巻取りローラ6を回転駆動する巻取りモータ61を駆動制御する。この場合、払拭制御部501は、エンコーダ15の出力パルスをカウントして、ウェブ4の巻取り量、巻戻し量を検出して、巻取りモータ61を駆動制御する。
【0028】
払拭制御部501は、モータ駆動部503を介してワイパ用モータ51を駆動制御し、ワイパホルダ23を回転させて、ワイパ24の第1位置、第2位置、第3位置への回動を行う。ワイパ用モータ51としてはステッピングモータを使用して、パルス数でワイパ24の回動量を制御している。
【0029】
払拭制御部501は、モータ駆動部505を介して、移動モータ33、昇降モータ36を駆動制御し、払拭ユニット30の払拭位置への上昇、ノズル面111aに対する払拭方向への相対移動を制御する。
【0030】
払拭制御部501は、払拭ユニット30のホーム位置を検知するユニットホーム位置センサ37、ワイパ24のホーム位置を検知するワイパホーム位置センサ52の各検知結果を入力する。
【0031】
次に、払拭制御部による払拭動作の制御について
図6ないし
図11を参照して説明する。
図6ないし
図11は同払拭動作の制御の説明に供する側面説明図である。
【0032】
ヘッド111のノズル面111aにはメンテナンス動作などによって液体(廃液)300が付着している状態にあるものとする。
【0033】
図6に示すように、払拭ユニット30を上昇させて、ウェブ4及びワイパ24がノズル面111aを払拭可能な位置にする。そして、払拭ユニット30を第1方向である払拭方向Y1に水平移動させる。
【0034】
これにより、
図7に示すように、ウェブ4によってノズル面111aを払拭し、後続するワイパ24によってもノズル面111aを払拭することで、ノズル面111aの全域を払拭する第1払拭動作を行う。
【0035】
この第1払拭動作によるノズル面111aの全域の払拭を行うときの払拭完了位置は、
図8に示すように、ワイパ24がノズル面111aの払拭方向Y1の端部に達する位置である。この払拭完了位置では、ウェブ4は完全にノズル面111aから離れた位置となる。
【0036】
このとき、ワイパ24にはノズル面111aから除去した廃液300が付着した状態となっているので、
図9に示すように、ワイパ24を第2位置に回動させてウェブ4に接触させ、ウェブ4によってワイパ24を清浄化する。
【0037】
また、ワイパ24が第2位置に回動するときにワイパ24に転移していた廃液300、ワイパ24で拭き切るときにノズル面111aから払拭方向Y1に食み出す廃液300など、払拭対象の払拭終了側となる部分であるヘッド111の払拭方向下流側のガイド部材111bには微少の廃液300が付着することがある。
【0038】
このヘッド111の払拭方向下流側のガイド部材111bに付着した廃液300を除去するため、
図10に示すように、払拭ユニット30を第1方向である払拭方向Y1と反対の第2方向Y2に移動させて、ウェブ4をガイド部材111bに接触させる。
【0039】
そして、
図11に示すように、払拭ユニット30を更に第2方向Y2に移動させて、ノズル列Na~Ndに達する手前まで、ノズル面111aをウェブ4によって払拭する第2払拭動作を行う。つまり、第2払拭動作では、第1払拭動作の払拭終了側における所定の領域(ここでは、ガイド部材111bからノズレ列の手前までの領域)をウェブ4で払拭する。
【0040】
これにより、ガイド部材111bの表面に付着している廃液300を除去することができる。
【0041】
ウェブ4による廃液の除去は、ウェブ4に液体が吸収されやすいため、ノズル面111aにウェブ4が接触するだけで廃液を除去することができる。したがって、必要最小限の領域だけ(吐出領域外のみ)の払拭で十分である。
【0042】
なお、このとき、ワイパ24は第2位置又は第3位置にすることで、ノズル面111aに接触することはなく、払拭への影響を与えない。また、逆方向(Y2方向)への移動量を必要最小限にすることで払拭時間を短くすることができる。
【0043】
上記実施形態において、第1動作でウェブ4によるノズル面111aの払拭を開始する前に、ウェブ4に洗浄液を付与することができる。洗浄液の付与は、例えば押し付け部材9上に洗浄液を滴下するなどして行うことができる。これにより、廃液300の吸収除去をより確実に行うことができる。
【0044】
また、第2動作において、ウェブ4をガイド部材111bに接触させたとき、逆方向(Y2方向)に移動を開始するまで、予め定めた所定時間、ウェブ4の移動を停止させることもできる。さらに、ウェブ4を複数回当接させるスタンピング動作(上下移動)を行うようにすることもできる。
【0045】
また、第2動作において、ウェブ4の逆方向への払拭移動量も任意に設定することができる。
【0046】
また、ガイド部材111bに付着する廃液量は微量であることから、第1動作を行う毎に第2動作を実施する必要もなく、予め定めた所定回数第1動作を行ったときに、第2動作を実施する構成とすることもできる。これにより、通常の払拭動作の時間が長くなることを抑制できる。
【0047】
なお、上記実施形態では、第2払拭部材を備える例で説明しているが、第1払拭部材のみを備える構成とすることもできる。また、上記実施形態では払拭方向の両側にガイド部材111bを備える例で説明しているが、ガイド部材111bを備えない構成とすることのできる。
【0048】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図12及び
図13を参照して説明する。
図12は同装置の機構部の平面説明図、
図13は同じく要部側面説明図である。
【0049】
この液体を吐出する装置100は、シリアル型装置である。左右の側板101A、101Bに架け渡した主ガイド部材102及び従ガイド板103などのガイド機構でキャリッジ105を主走査方向に移動可能に保持している。
【0050】
キャリッジ105には、3つの液体吐出ユニット110(110a~110c)を搭載している。液体吐出ユニット110は、液体吐出手段としての液体吐出ヘッド(ヘッド)111と、ヘッド111に液体を供給するサブタンク112とを一体化して構成している。
【0051】
装置本体側には、各色の液体を収容した複数のメインタンク(液体カートリッジ)120が交換可能に装着されるカートリッジホルダ121が配置されている。このカートリッジホルダ121に装着されたメインタンク120から送液ポンプなどによって各色の供給チューブで構成した液体経路123を介して各液体吐出ユニット110のヘッド111に各色の液体が供給される。
【0052】
一方、シート材130を搬送方向に搬送するために、シート材130を吸着してヘッド111に対向して搬送する搬送手段140を備えている。
【0053】
搬送手段140は、搬送ローラ141と、搬送ローラ141に加圧されて接触する加圧ローラ142と、ヘッド111に対向するプラテン部材143と、プラテン部材143の吸引孔143aを介してシート材130を吸着する吸引機構部134などで構成される。なお、図では吸引孔143aは部分的に図示しているが、プラテン部材143の全体に配置される。
【0054】
また、キャリッジ105の主走査方向の一方側にはヘッド111の維持回復(メンテナンス)を行う維持回復機構150が配置されている。
【0055】
維持回復機構150は、本発明に係るヘッドメンテナンス装置であり、例えばヘッド111のノズル面111aをキャッピングするキャップ151と、ノズル面111aを払拭する本発明に係る払拭装置1の払拭ユニット30を備えている。払拭ユニット30はメインフレーム2上に配置されている。
【0056】
この装置100においては、シート材130を搬送ローラ141及び加圧ローラ142によってプラテン部材143上を吸着しながら搬送方向に搬送する。
【0057】
そこで、キャリッジ105を主走査方向に移動させながら印刷信号に応じてヘッド111を駆動することにより、停止しているシート材130に所要の色の液体を吐出して1行分を印刷し、シート材130を所定量搬送後、次の行の印刷を行うことを繰り返して印刷し、シート材130を排出する。
【0058】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0059】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0060】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0061】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0062】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0063】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0064】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0065】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0066】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0067】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0068】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0069】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0070】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0071】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0072】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0073】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0074】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0075】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0076】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0077】
1 払拭装置
4 ウェブ(第1払拭部材)
4A 繰り出し側ロール
4B 巻取り側ロール
5 繰り出しローラ
6 巻取りローラ
9 押し付け部材
13 ワイパホルダ
14 ワイパ(第2払拭部材)
20 洗浄液
30 払拭ユニット
111 液体吐出ヘッド
150 維持回復機構(ヘッドメンテナンス装置)