(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】液体供給エラー検知装置、液体供給エラー検知方法、及び液体供給エラー検知プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220511BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20220511BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20220511BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220511BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20220511BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20220511BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20220511BHJP
【FI】
B41J2/01 451
B29C64/393
B41J2/175 121
B33Y30/00
B29C64/112
B29C64/209
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2018034281
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-11-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐倉 青蔵
【審査官】上田 正樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-052737(JP,A)
【文献】特開2018-024216(JP,A)
【文献】特開2017-120571(JP,A)
【文献】特開2017-227593(JP,A)
【文献】特開2008-012804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0113468(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B29C 64/393
B41J 2/175
B33Y 30/00
B29C 64/112
B29C 64/209
B33Y 50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部と連通し、前記吐出部に供給する液体を収容する液体収容部と、
前記吐出部が液体を吐出する動作中に前記液体収容部における空気圧を計測する計測部と、
前記計測部が計測した空気圧に基づいて、前記液体収容部のエラーを判定する判定部と、
を有し、
前記吐出部が前記液体を吐出する動作中に、前記計測部が計測した空気圧が上昇する場合には、
前記判定部が、前記液体収容部における空気のリークのエラーと判定することを特徴とする液体供給エラー検知装置。
【請求項2】
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部と連通し、前記吐出部に供給する液体を収容する液体収容部と、
前記吐出部が液体を吐出する動作中に前記液体収容部における空気圧を計測する計測部と、
前記計測部が計測した空気圧に基づいて、前記液体収容部のエラーを判定する判定部と、
を有し、
前記吐出部が前記液体を吐出する動作中に、前記計測部が計測した空気圧が変化しない場合には、
前記判定部が、前記吐出部が前記液体を吐出していないエラー、及び、前記液体収容部から前記吐出部までの供給流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定することを特徴とする液体供給エラー検知装置。
【請求項3】
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部と連通し、前記吐出部に供給する液体を収容する液体収容部と、
前記吐出部が液体を吐出する動作中に前記液体収容部における空気圧を計測する計測部と、
前記計測部が計測した空気圧に基づいて、前記液体収容部のエラーを判定する判定部と、
前記液体収容部に前記液体を収容するための液体流路と、
前記液体流路に設けられ、前記液体収容部に液体を送る液体ポンプと、
を有し、
前記液体ポンプが前記液体収容部に前記液体を送る動作中に、前記計測部が計測した空気圧が下降する場合には、
前記判定部が、前記液体ポンプが前記液体収容部に液体を送れていないエラー、及び、前記液体流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定することを特徴とする液体供給エラー検知装置。
【請求項4】
液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部と連通し、前記吐出部に供給する液体を収容する液体収容部と、
前記吐出部が液体を吐出する動作中に前記液体収容部における空気圧を計測する計測部と、
前記計測部が計測した空気圧に基づいて、前記液体収容部のエラーを判定する判定部と、
前記液体収容部の空気を大気中に排気するための空気流路と、
前記空気流路に設けられ、前記液体収容部の空気を大気中に排気する空気ポンプと、
を有し、
前記空気ポンプが前記液体収容部の空気を大気中に排気する動作中に、前記計測部が計測した空気圧が上昇する場合には、
前記判定部が、前記空気ポンプが前記液体収容部の空気を大気中に排気できていないエラー、及び、前記空気流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定することを特徴とする液体供給エラー検知装置。
【請求項5】
前記液体が、立体造形物の造形用材料である請求項1から4のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置。
【請求項6】
前記判定部が判定したエラーの内容を報知する報知部を更に有する請求項1から5のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給エラー検知装置、液体供給エラー検知方法、及び液体供給エラー検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタなどの画像形成装置に用いられているインクジェット方式は、プロセスが簡単で、簡易な構造により高解像度の画像が得られることから、パーソナル用途のみならず、オフィス用途、ひいては商用印刷や工業印刷の分野へと広がりつつある。
【0003】
例えば、インクジェット方式は、立体造形物(三次元造形物)を造形する立体造形物の製造装置にも応用されている。具体的には、立体造形物の製造装置として、インクの代わりに立体造形物を造形するための造形用材料を吐出した後に硬化させて層状造形物を造形し、層状造形物を順次積層することにより立体造形物を造形するマテリアルジェット方式の装置が知られている。
【0004】
このような幅広い分野で用いられるインクジェット方式において、インクを吐出させるまでのインクの供給を確実にするために様々な提案がされている。例えば、液体供給経路における弁周辺のリークを検出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、液体を吐出するまでの液体供給経路におけるエラーを簡易に検知できる液体供給エラー検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の液体供給エラー検知装置は、液体を吐出する吐出部と、吐出部と連通し、吐出部に供給する液体を収容する液体収容部と、液体収容部における空気圧を計測する計測部と、計測部が計測した空気圧に基づいて、液体収容部のエラーを判定する判定部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体を吐出するまでの液体供給経路におけるエラーを簡易に検知できる液体供給エラー検知装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態における液体供給エラー検知装置を備える立体造形物の製造装置の一例を示す説明図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した立体造形物の製造装置による造形動作の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態における液体供給エラー検知装置を一部に備える立体造形物の製造装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態における立体造形物の製造装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態における液体供給エラー検知装置の動作を説明するために示す概略図である。
【
図6A】
図6Aは、第1の実施形態におけるサブタンクの空気圧の正常動作を示す説明図である。
【
図6B】
図6Bは、第1の実施形態においてエラー判定する場合のサブタンクの空気圧を示す説明図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態においてエラー判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8A】
図8Aは、第2の実施形態におけるサブタンクの空気圧の正常動作を示す説明図である。
【
図8B】
図8Bは、第2の実施形態においてエラー判定する場合のサブタンクの空気圧を示す説明図である。
【
図9】
図9は、第2の実施形態においてエラー判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10A】
図10Aは、第3の実施形態におけるサブタンクの空気圧の正常動作を示す説明図である。
【
図10B】
図10Bは、第3の実施形態においてエラー判定する場合のサブタンクの空気圧を示す説明図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態においてエラー判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(液体供給エラー検知装置、液体供給エラー検知方法、及び液体供給エラー検知プログラム)
本発明の液体供給エラー検知装置は、本発明の液体供給エラー検知プログラムを読み出して実行することで、本発明の液体供給エラー検知方法を実行する装置として動作する。即ち、本発明の液体供給エラー検知装置は、本発明の液体供給エラー検知方法と同様の機能をコンピュータに実行させる本発明の液体供給エラー検知プログラムを有する。
つまり、本発明の液体供給エラー検知装置は、本発明の液体供給エラー検知方法を実施することと同義であるので、本発明の液体供給エラー検知装置の説明を通じて本発明の製造方法の詳細についても明らかにする。また、本発明の液体供給エラー検知プログラムは、ハードウェア資源としてのコンピュータ等を用いることにより、本発明の液体供給エラー検知装置として実現させる。このことから、本発明の液体供給エラー検知装置の説明を通じて本発明の液体供給エラー検知プログラムの詳細についても明らかにする。
なお、本発明の液体供給エラー検知プログラムは、本発明の液体供給エラー検知装置によって実行されることに限定されるものではない。例えば、本発明の液体供給エラー検知プログラムは、他のコンピュータ又はサーバによって実行されてもよく、本発明の液体供給エラー検知装置、他のコンピュータ、及びサーバのいずれかが協働して実行されてもよい。
【0010】
本発明の液体供給エラー検知装置は、インクジェット方式などの液体を吐出する機構を用いた装置の一部として機能することが好ましい。液体を吐出する機構を用いた装置としては、例えば、プリンタ等の画像形成装置、いわゆる3Dプリンタ等の立体造形物の製造装置、プリンテッドエレクトロニクス技術で用いられる製造装置などが挙げられる。
【0011】
本発明の液体供給エラー検知装置は、液体を吐出する吐出部と、吐出部と連通し、吐出部に供給する液体を収容する液体収容部と、液体収容部における空気圧を計測する計測部と、計測部が計測した空気圧に基づいて、液体収容部のエラーを判定する判定部とを有し、更に必要に応じてその他の手段を有する。
【0012】
本発明の液体供給エラー検知装置は、従来技術では液体供給経路における弁周辺のリークを検出するために、分解する手間がかかるほか、弁に連通する開口部から注射器で空気を送ったり抜いたりするのに手間がかかるという知見に基づくものである。
さらには、立体造形物の製造においては、立体造形物を造形するための造形用材料が毒性を有する場合があり、吐出ヘッドまでの供給経路で漏れなどが発生しないように、専用の液圧センサや、造形用材料が漏れたときの受け皿に重量センサを設けることがある。それに加えて、造形用材料は、硬化性を有するため粘度が高くなりやすく、吐出ヘッドまでの供給経路で詰まる場合がある。
そこで、本発明の液体供給エラー検知装置では、液体を吐出するまでの液体供給経路におけるエラーを簡易に検知できるようにした。
【0013】
<吐出部>
吐出部としては、液体を吐出できれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
具体的には、本発明の液体供給エラー検知装置が画像形成装置の一部であれば、吐出部としては、画像形成装置のインクを吐出する吐出ヘッドなど挙げられる。また、本発明の液体供給エラー検知装置が立体造形物の製造装置の一部であれば、吐出部としては、造形用材料を吐出する吐出ヘッドなど挙げられる。
吐出部の吐出方式としては、例えば、インクジェット方式などが挙げられる。
【0014】
<<液体>>
液体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、画像形成に用いられるインク、立体造形物の造形に用いられる造形用材料、プリンテッドエレクトロニクス技術で用いられる材料などが挙げられる。これらの中でも、硬化性を有するために粘度が高くなりやすく、エラーが発生する可能性が高い点から、造形用材料が好ましい。
【0015】
造形用材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マテリアルジェット方式で用いられるモデル材やサポート材などが挙げられる。
【0016】
モデル材は、モデル部を形成する材料である。モデル部とは、立体造形物を造形する本体を形成する部を意味する。
モデル材としては、光や熱等のエネルギーを付与することにより硬化する液体であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
モデル材は、単官能モノマー、多官能モノマー等の重合性モノマー、オリゴマー、光重合開始剤を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含む。モデル材は、インクジェット用プリンタ等に用いられる造形用材料吐出ヘッドで吐出できる粘度や表面張力等の液物性を有することが好ましい。
【0017】
サポート材は、サポート部を形成する材料である。サポート部とは、立体造形物を造形する本体を形成する部を意味する。
サポート材としては、光や熱等のエネルギーを付与することにより硬化する液体であり、その硬化物が溶解性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
サポート材は、水素結合能を有するモノマー(A)と、水素結合能を有する溶媒(B)と、重合開始剤(C)と、を含み、水素結合能を有する溶媒(B)が、炭素数3以上6以下のジオール、カルボン酸化合物、アミン化合物、エステル化合物、ケトン化合物、及びウレア化合物から選択される少なくとも1種であり、更に必要に応じてその他の成分を含む。サポート材は、水崩壊性を有することが好ましい。なお、水崩壊性とは、水に浸漬したときに、硬化物が細かく分解され、当初有していた形状や性質を維持できなくなることを意味する。
【0018】
<液体収容部>
液体収容部は、吐出部と連通し、吐出部に供給する液体を収容する。
例えば、本発明の液体供給エラー検知装置が画像形成装置の一部であれば、液体収容部は、画像形成装置のインクを吐出する吐出部に連通するサブタンクとして用いられる。また、本発明の液体供給エラー検知装置が立体造形物の製造装置の一部であれば、液体収容部は、立体造形物の製造装置の造形用材料を吐出する吐出部に連通するサブタンクとして用いられる。
【0019】
<計測部>
計測部としては、液体収容部における空気圧を計測することができれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧力センサなどが挙げられる。
圧力センサとしては、例えば、抵抗線式、拡散式、成膜式、静電容量式、機械式等の圧力センサなどが挙げられる。
計測部が計測した空気圧の計測値は、電気信号として出力されて記憶部に記憶される。
また、液体収容部における空気圧は、吐出部が液体を吐出していない場合には、連通する吐出部から液体が意図せず漏れないようにするため、大気圧よりも低く設定されている。
【0020】
記憶部は、液体収容部における正常動作時の空気圧の計測値を正常動作プロファイルとして記憶するようにしてもよい。記憶部は、正常動作プロファイルを記憶するデータベースを有してもよい。なお、以下では、データベースを「DB」と称することもある。
【0021】
正常動作プロファイルとは、吐出部が正常に吐出できる状態の、液体収容部における空気圧の時間変化の条件を示したものを意味する。
正常動作プロファイルは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、所定のタイミングあるいは一定期間毎に作成されるようにユーザが指示してもよい。
正常動作プロファイルの作成方法としては、例えば、正常に吐出部が吐出したときの液体収容部における空気圧の計測値を時系列で蓄積し、蓄積した空気圧の計測値の標準偏差を時系列で算出して作成する方法などが挙げられる。
正常動作プロファイルは、例えば、吐出する液体の種類、装置における部品の動作の有無、動作環境温度、画像印字率、断面画像印字率などにより分類して作成されてもよい。
【0022】
画像印字率とは、記録媒体における吐出可能領域全体の面積に対する、インクを吐出する領域の面積の割合を意味し、例えば、記録媒体に全く印字されないのであれば0%であり、記録媒体に印字されるのがベタ画像であれば100%となる割合である。この画像印字率は、画像データから算出することができる。
断面画像印字率とは、立体造形物をスライスした層状造形物を含む範囲全体の面積に対する、造形用材料を吐出する層状造形物の面積の割合を意味する。この断面画像印字率は、造形する立体造形物の3Dデータから算出することができる。
画像印字率や断面画像印字率が高い場合には、液体を吐出部から大量に吐出することになり、吐出部と連通する液体収容部では空気圧が急峻に下がりやすくなることから、正常動作プロファイルは、画像印字率や断面画像印字率などに応じて変更してもよい。
【0023】
<判定部>
判定部は、計測部が計測した空気圧に基づいて、液体収容部のエラーを判定する。
具体的には、判定部は、吐出部が液体を吐出する動作中に、計測部が計測した空気圧が上昇する場合には、液体収容部における空気のリークのエラーと判定する。また、判定部は、吐出部が液体を吐出する動作中に、計測した空気圧が変化しない場合には、吐出部が液体を吐出していないエラー、及び、液体収容部から吐出部までの供給流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する。
また、記憶部が液体収容部における空気圧の正常動作プロファイルを記憶している場合には、判定部は、計測部が計測した空気圧が正常動作プロファイルから逸脱したか否かにより液体収容部のエラーを判定するようにしてもよい。
このように、本発明の液体供給エラー検知装置は、吐出部に供給する液体を収容する液体収容部における空気圧に基づいて、液体収容部のエラーを判定することにより、液体を吐出するまでの液体供給経路におけるエラーを簡易に検知できる。
【0024】
<その他の手段>
その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、報知部が好ましい。
【0025】
<<報知部>>
報知部は、判定部が判定したエラーの内容を報知する。
報知部としては、例えば、操作パネル、ディスプレイ、スピーカー、警報ランプなどが挙げられる。
【0026】
液体供給エラー検知装置は、その他の手段として、液体収容部に液体を収容するための液体流路と、液体流路に設けられ、液体収容部に液体を送る液体ポンプと、を有することにより、判定部は、液体流路及び液体ポンプのエラーも判定することができる。
具体的には、判定部は、液体ポンプが液体収容部に液体を送る動作中に、空気圧が下降する場合には、液体ポンプが液体収容部に液体を送れていないエラー及び液体流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定できる。
【0027】
また、液体供給エラー検知装置は、その他の手段として、液体収容部の空気を大気中に排気するための空気流路と、空気流路に設けられ、液体収容部の空気を大気中に排気する空気ポンプとを有することで、判定部は、空気流路及び空気ポンプのエラーも判定できる。
具体的には、空気ポンプが液体収容部の空気を排気する動作中に、空気圧が上昇する場合、空気ポンプが液体収容部の空気を大気中に排気できていないエラー及び空気流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定できる。
【0028】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるものではない。
【0029】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、本発明の液体供給エラー検知装置は、立体造形物の製造装置に備えられ、立体造形物の製造装置の一部として機能する例を説明する。このため、まず、立体造形物の製造装置について説明する。
【0030】
図1は、第1の実施形態における液体供給エラー検知装置を備える立体造形物の製造装置の一例を示す説明図である。
図1に示すように、立体造形物の製造装置10(「立体造形装置10」と称することもある)は、造形層30が積層されて立体造形物が造形される造形ステージ19と、造形ステージ19上に造形層30を順次積層しながら造形する造形ユニット20とを有する。
【0031】
造形ユニット20は、モデル材を吐出する第1の吐出ヘッド11と、サポート材を吐出する第2の吐出ヘッド12と、活性エネルギー線としての紫外線を照射するUV照射ユニット13と、造形層30を平坦化する平坦化手段である平坦化ローラ14とを有する。
【0032】
造形ユニット20は、X方向において、第1の吐出ヘッド11を挟んで2つの第2の吐出ヘッド12が配置され、2つの第2の吐出ヘッド12の外側にそれぞれUV照射ユニット13が配置され、更に、UV照射ユニット13の外側にそれぞれ平坦化ローラ14が配置されている。
【0033】
造形ユニット20は、X方向に往復移動が可能であり、造形ステージ19に対して
図1中矢印Yで示す方向にも相対的に移動可能である。
造形ステージ19は、昇降機構16によってZ方向に昇降される。
【0034】
図2は、
図1に示した立体造形物の製造装置による造形動作の一例を示す説明図である。
図2においては、便宜上、液滴形状を矩形状で示している。
立体造形装置10は、造形ユニット20をX方向に移動させながら、立体造形物を造形する領域(造形領域)に第1の吐出ヘッド11からモデル材301を吐出させ、第2の吐出ヘッド12からサポート材302を造形領域以外の造形後除去する領域(サポート領域)に吐出させる。
【0035】
そして、立体造形装置10は、UV照射ユニット13により、モデル材301及びサポート材302上に紫外線を照射して硬化させ、モデル部301a及びサポート部302aを含む1層分の造形層30を形成する。
【0036】
立体造形装置10は、この造形層30を繰り返し造形して順次積層し、モデル材301をサポート材302で支持しながらモデル材301からなる目的とする立体造形物を造形する。
【0037】
例えば、
図1の例では、造形層30A~30Eの5層を積層した状態を示している。また、
図2の例では、造形層30A~30Cの3層を積層した状態を示している。
【0038】
ここで、造形層30を複数層(固定値である必要はない。)積層する毎に、例えば10層積層する毎に、平坦化ローラ14を最表面の造形層30に押し付けて平坦化することで、造形層30の厚み精度や平坦性を確保することができる。なお、平坦化ローラ14による平坦化は、複数層積層する毎に行うとしたが各層を積層する毎に行ってもよい。
【0039】
なお、平坦化手段として、平坦化ローラ14のようなローラ形状の部材を使用する場合、X方向における移動方向に対して、平坦化ローラ14を逆転させる方向で回転させることで、平坦化(平滑化)の効果がより有効に発揮される。
【0040】
また、造形ユニット20と最表面の造形層30とのギャップを一定に保つために、ここでは、1層の造形層30を形成する毎に造形ステージ19を昇降機構16によって下降させている。なお、造形ユニット20を上昇させる構成でもよい。
【0041】
また、立体造形装置10としては、モデル材301やサポート材302の回収、リサイクル機構などを備えることもできる。また、第1の吐出ヘッド11、第2の吐出ヘッド12のノズル面を清浄化する清浄化手段や不吐出ノズルを検知する吐出状態検出手段を備えることができる。また、造形時の装置内の環境温度を制御することも好ましい。
【0042】
図3は、第1の実施形態における液体供給エラー検知装置を一部に備える立体造形物の製造装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すように、第1の実施形態における立体造形物の製造装置10は、CPU101と、ROM102と、RAM103と、NVRAM104と、ASIC105と、外部I/F106と、HDD107と、I/O108とを有する。
【0043】
CPU101は、プロセッサの一種であり、種々の制御や演算を行う処理装置である。CPU101は、ROM102などが記憶するOS(Operating System)やプログラムを実行することにより、種々の機能を実現する。すなわち、CPU101は、本実施形態では、液体供給エラー検知プログラムを実行することにより、後述する制御部160として機能する。
また、CPU101は、立体造形物の製造装置10全体の動作を制御するために用いられる。なお、本実施形態では、立体造形物の製造装置10全体の動作を制御する装置をCPU101としたが、これに限ることなく、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)などとしてもよい。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ROM102は、CPU101により立体造形動作の制御を実行させるためのプログラム、本発明の液体供給エラー検知プログラム、その他のBIOS(Basic Input/Output System)等の各種プログラムなどの固定データを格納する。
なお、液体供給エラー検知プログラムは、必ずしも最初から液体供給エラー検知装置100内に記憶されていなくともよい。液体供給エラー検知プログラムは、例えば、インターネットなどを介して液体供給エラー検知装置100に通信可能に接続されている他の情報処理装置などに格納させて実行してもよい。また、液体供給エラー検知プログラムは、例えば、コンピュータ読取り可能な記録媒体に格納され、液体供給エラー検知装置100がこの記録媒体から液体供給エラー検知プログラムを取得して実行してもよい。記録媒体としては、例えば、可搬型記録媒体、半導体メモリ、ハードディスクなどが挙げられる。可搬型記録媒体としては、例えば、CD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、USB(Universal Serial Bus)メモリなどが挙げられる。半導体メモリとしては、例えば、フラッシュメモリなどが挙げられる。
【0045】
RAM103は、各種プログラムがCPU101により実行される際に展開される作業範囲などとして機能する。RAMとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。RAMとしては、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)などが挙げられる。
【0046】
NVRAM104は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリである。
【0047】
ASIC105は、画像データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0048】
外部I/F106は、造形データ作成装置600と通信可能に接続されており、造形データ作成装置600から造形データを受信する。
なお、造形データ作成装置600は、最終形態の造形物(立体造形物)を造形層毎にスライスしたスライスデータである造形データ(断面データ)を作成する装置であり、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。造形データは、目的とする立体造形物の形状をスライスしたスライスデータとしての各造形層30の内のモデル材301aを形成するデータ(造形領域のデータ)である。
【0049】
HDD107は、制御部160の指示により、I/O108が受信したセンサからの各種データなどを蓄積して保存される。また、HDD107には、後述する各種正常動作プロファイルが保存される。なお、HDD107には、本発明の液体供給エラー検知プログラムを格納するようにしてもよい。
【0050】
I/O108は、温湿度センサ18、空気圧センサ115、及び液面センサ116の出力信号を受信する。
温湿度センサ18は、装置の環境条件としての温度及び湿度を計測する。
空気圧センサ115は、サブタンク126の空気圧を計測する。
液面センサ116は、サブタンク126の造形用材料の液面の高さを計測する。
【0051】
立体造形物の製造装置10には、必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル500が接続されている。
【0052】
また、立体造形物の製造装置10は、第1の吐出ヘッド11と、第2の吐出ヘッド12と、UV照射ユニット13と、平坦化ローラ14と、走査機構15と、昇降機構16と、メンテナンス機構17とを有する。
【0053】
第1の吐出ヘッド11は、制御部160の指示によりモデル材を造形領域に吐出する。
第2の吐出ヘッド12は、制御部160の指示によりサポート材をサポート領域に吐出する。なお、サポート領域のデータは、制御部160により作成される。
UV照射ユニット13は、制御部160の指示により紫外線を照射する。
平坦化ローラ14は、制御部160の指示によりモータを駆動させ、回転駆動する。
走査機構15は、制御部160の指示によりモータを駆動させ、造形ユニット20をX方向(主走査方向)及びY方向(副走査方向)の少なくともいずれかに移動させる。
昇降機構16は、制御部160の指示によりモータを駆動させて造形ステージ19をZ方向に昇降させる。なお、Z方向への昇降は造形ユニット20を昇降させることもできる。
メンテナンス機構17は、第1の吐出ヘッド11及び第2の吐出ヘッド12をメンテナンスする。
【0054】
さらに、立体造形物の製造装置10は、方向切換弁111と、液体ポンプ112と、空気ポンプ113と、空気開閉弁114と、空気圧センサ115と、液面センサ116とを有する。これらの動作については、液体供給エラー検知装置100の動作として、
図5、
図6A、及び
図6Bを参照しながら後述する。
なお、液体供給エラー検知装置100としては、
図3の一点鎖線で示すように、立体造形物の製造装置10のUV照射ユニット13、平坦化ローラ14、走査機構15、昇降機構16、及びメンテナンス機構17を除いたもので構築することができる。また、方向切換弁111、液体ポンプ112、空気ポンプ113、空気開閉弁114、空気圧センサ115、及び液面センサ116は、改めて設けるものではなく、予め立体造形物の製造装置10に設けられているものを用いてもよい。
【0055】
図4は、第1の実施形態における立体造形物の製造装置の機能構成を示すブロック図である。
図4に示すように、立体造形物の製造装置10は、通信部130と、記憶部140と、入出力部150と、制御部160とを有する。
【0056】
通信部130は、制御部160の指示に基づき、
図3に示した外部I/F106を用いて造形データ作成装置600から造形データを受信することができる。
【0057】
記憶部140は、制御部160の指示に基づき、
図3に示したHDD107に正常動作プロファイルのデータを予め保存する。
【0058】
入出力部150は、制御部160の指示に基づき、
図3に示した操作パネル500により立体造形物の製造装置10に対する各種指示を受け付けるとともにエラーの内容を表示する。
【0059】
<制御部>
制御部160は、各種プログラムを実行し、立体造形物の製造装置10全体の動作を制御する。制御部160は、計測部161と、判定部162と、報知部163とを有する。
【0060】
計測部161は、空気圧センサ115にサブタンク126の空気圧を計測させる。
判定部162は、空気圧センサ115により計測された空気圧が正常動作プロファイルを逸脱したか否かによりエラー判定を行う。判定部162が行うエラー判定については、
図5、
図6A、及び
図6Bを参照しながら後述する。
報知部163は、判定部162が判定したエラーの内容を報知する。
【0061】
図5は、第1の実施形態における液体供給エラー検知装置の動作を説明するために示す概略図である。
図5では、第1の吐出ヘッド11に造形用材料を供給して吐出する動作について説明する。
図5に示すように、液体供給エラー検知装置100は、メインタンク121からサブタンク126へ液体流路122及び123を介して液体ポンプ112により造形用材料を供給する。液体供給エラー検知装置100は、サブタンク126に貯留した造形用材料が第1の吐出ヘッド11の吐出動作により液体流路124を介して第1の吐出ヘッド11に供給される。サブタンク126には、空気流路127が連結されており、空気圧センサ115によるサブタンク126の空気圧の計測と空気ポンプ113と空気開閉弁114の駆動により、サブタンク126の液圧を制御する。これにより、第1の吐出ヘッド11のノズル面のメニスカスを適正吐出範囲に保つとともに、ノズル面からの意図しない液体漏れを抑制する。
【0062】
サブタンク126には、1つ又は複数の液面センサ116が設けられており、サブタンク126内の造形用材料の液体量を計測して液体ポンプ112を駆動させて造形用材料を供給する。また、メインタンク121と液体ポンプ112の間には、方向切換弁111が設けられており、第1の吐出ヘッド11からの液体流路125が連結されている。これにより、造形用材料の送液経路として、液体流路122から液体流路123への送液経路と、液体流路125から液体流路123への送液経路とを選択することができる。すなわち、メインタンク121からサブタンク126への造形用材料の供給と、第1の吐出ヘッド11からサブタンク126への造形用材料の循環を一つの液体ポンプ112で実現可能としている。
【0063】
図6Aは、第1の実施形態におけるサブタンクの空気圧の正常動作を示す説明図である。
図6Aに示すように、第1の吐出ヘッド11が造形用材料の吐出を開始すると、サブタンク126内の造形用材料が第1の吐出ヘッド11に流入するためサブタンク126内の空気圧が低下する。制御部160は、このような空気圧の時系列の変化を示すデータを記憶部140に蓄積して正常動作プロファイルを作成する。判定部162は、空気圧センサ115による空気圧の計測値が正常動作プロファイルの範囲内である場合には、正常動作と判定する。
【0064】
図6Bは、第1の実施形態においてエラー判定する場合のサブタンクの空気圧を示す説明図である。
図6Bに示すように、判定部162は、HDD107に予め記憶されている正常動作プロファイルから空気圧の計測値が逸脱したか否かの判定を所定の時間間隔で行うことにより、液体供給において何らかのエラーが発生したことを判定することができる。具体的には、判定部162は、第1の吐出ヘッド11が造形用材料を吐出する動作中に、
図6B中E1のように、空気圧が上昇して正常動作プロファイルから逸脱する場合には、サブタンク126に意図せず空気が流入するリークのエラーと判定する。また、判定部162は、
図6B中E2のように、空気圧が変化せずに正常動作プロファイルから逸脱する場合には、第1の吐出ヘッド11が造形用材料を吐出していないエラー、及び、液体流路124が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する。
【0065】
図7は、第1の実施形態においてエラー判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、吐出ヘッドと液体ポンプのエラー判定を行う処理の流れを
図7に示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって説明する。
なお、制御部160は、造形データ作成装置600から受信した造形データをあらかじめ読み込んだ状態で開始する。
【0066】
ステップS101では、制御部160は、記憶部140から正常動作プロファイルを読み込むと、処理をS102に移行する。
【0067】
ステップS102では、制御部160は、造形データに基づく造形動作を開始する。このとき、計測部161は、空気圧センサ115にサブタンク126の空気圧の計測を開始させると、処理をS103に移行する。
【0068】
ステップS103では、制御部160は、第1の吐出ヘッド11に造形用材料の吐出を開始させると、処理をS104に移行する。
【0069】
ステップS104では、判定部162は、空気圧の計測値がプロファイルから逸脱したと判定すると、処理をS106に移行する。また、判定部162は、空気圧の計測値がプロファイルから逸脱していないと判定すると、処理をS105に移行する。
【0070】
ステップS105では、制御部160は、造形データに基づく造形動作が終了していないと判定すると、処理をS103に戻す。また、制御部160は、造形データに基づく造形動作が終了したと判定すると、本処理を終了する。
【0071】
ステップS106では、空気圧の計測値がプロファイルから逸脱したと判定した判定部162は、空気圧の計測値が上昇していないと判定すると、処理をS107に移行する。また、判定部162は、空気圧の計測値が上昇していると判定すると、処理をS108に移行する。
【0072】
ステップS107では、空気圧の計測値が上昇していないと判定した判定部162は、第1の吐出ヘッド11の異常、あるいはサブタンク126から液体流路124の閉塞のエラーと判定すると、処理をS109に移行する。
【0073】
ステップS108では、空気圧の計測値が上昇していると判定した判定部162は、サブタンク126内に空気が流入したエラーと判定すると、処理をS109に移行する。
【0074】
ステップS109では、制御部160は、造形データに基づく造形動作を中断すると、処理をS110に移行する。
【0075】
ステップS110では、報知部163は、入出力部150に対し、操作パネル500にエラー内容を表示するように指示すると、本処理を終了する。
【0076】
なお、報知部163が操作パネル500にエラー内容を表示するとともに、再起動を促す表示をしてもよい。また、立体造形物の製造装置10は、再起動後に再度エラー判定した場合には立体造形物の造形を中止し、報知部163が修理依頼を促す表示をしてもよい。
【0077】
このように、第1の実施形態の液体供給エラー検知装置100は、第1の吐出ヘッド11に供給する液体を収容するサブタンク126における空気圧の計測値に基づき、サブタンク126のエラーを判定することで、液体を吐出するまでの液体供給経路におけるエラーを簡易に検知できる。
また、第1の実施形態の液体供給エラー検知装置100は、空気圧の計測値が正常動作プロファイルから逸脱した場合に、空気圧の計測値が上昇した判定すると、サブタンク126内に空気が流入したエラーと判定できる。
さらに、第1の実施形態の液体供給エラー検知装置100は、空気圧の計測値が正常動作プロファイルから逸脱した場合に、空気圧の計測値が上昇していない判定すると、第1の吐出ヘッド11の異常、あるいは液体流路124の閉塞のエラーと判定できる。
【0078】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、造形用材料をサブタンク126に供給する液体ポンプ112、あるいは液体ポンプ112に接続されている液体流路122及び123のエラー判定を行う処理について説明する。
以下では、第1の実施形態と異なる点である、造形用材料をサブタンク126に供給する液体ポンプ112及びその周辺のエラー判定を行う処理について説明する。
【0079】
図8Aは、第2の実施形態におけるサブタンクの空気圧の正常動作を示す説明図である。
図8Aに示すように、立体造形物の造形時に第1の吐出ヘッド11が造形用材料を吐出した際に、造形用材料の吐出とともにサブタンク126から第1の吐出ヘッド11に造形用材料を供給すると、サブタンク126内の空気圧が下降する。第2の実施形態では、その後、液体ポンプ112を駆動させメインタンク121からサブタンク126に造形用材料を供給しながら、空気圧を正常吐出可能圧力範囲内に維持し、第1の吐出ヘッド11が造形用材料の吐出を続ける場合でのエラー判定を行う。第1の実施形態と同様に、判定部162は、正常動作プロファイルの範囲内である場合は正常動作と判定する。
【0080】
図8Bは、第2の実施形態においてエラー判定する場合のサブタンクの空気圧を示す説明図である。
図8Bに示すように、空気圧センサ115の空気圧の計測値が正常動作プロファイルから逸脱した場合には、
図8B中E3のように、空気圧の計測値が下降していれば、サブタンク126に造形用材料が供給されていないとすることができる。このため、判定部162は、液体ポンプ112の異常、及び液体流路122、123の閉塞の少なくともいずれかと判定する。
なお、液体ポンプ112にエンコーダ等を備えることにより、判定部162は、液体ポンプ112が駆動しているかが判定することができる。これにより、判定部162は、液体ポンプ112が駆動していなければ、液体流路122及び液体流路123の少なくともいずれかの閉塞であると判定することができる。また、液体ポンプ112が駆動していない場合、判定部162は、
図6Bで示したように空気圧センサ115の空気圧の計測値が上昇するときには、第1の実施形態と同様にサブタンク126内に空気が流入したエラーと判定する。
【0081】
また、判定部162は、サブタンク126の空気圧を正常吐出可能圧力範囲内に維持するには、液体ポンプ112を空気開閉弁114に置き換えることもできる。具体的には、
図8Bの「液体ポンプの動作」から「空気開閉弁の動作」に置き換え、液体ポンプ112のONを空気開閉弁114の閉に、液体ポンプ112のOFFを空気開閉弁114の開に置き換える。そして、空気圧の計測値が下降する場合には、判定部162は、空気開閉弁114の異常、あるいは空気流路127の閉塞のエラーと判定できる。
【0082】
図9は、第2の実施形態においてエラー判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、吐出ヘッドと液体ポンプのエラー判定を行う処理の流れを
図9に示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって説明する。
なお、ステップS201~S203、S205、S206、S208及びS209は、第1の実施形態におけるステップS101~S103、S104、S105、S109及びS110と同様の処理であるため説明を省略する。
また、制御部160は、造形データ作成装置600から受信した造形データをあらかじめ読み込んだ状態で開始する。
【0083】
ステップS204では、S203で第1の吐出ヘッド11に造形用材料の吐出を開始した制御部160は、吐出中に所定のタイミングで液体ポンプ112をONにしてメインタンク121からサブタンク126に送液を開始すると、処理をS205に移行する。
【0084】
ステップS207では、空気圧の計測値がプロファイルから逸脱したと判定した判定部162は、液体ポンプ112の異常、あるいはメインタンク121からサブタンク126までの液体流路122、123の閉塞のエラーと判定すると、処理をS208に移行する。
【0085】
このように、第2の実施形態の液体供給エラー検知装置100は、造形用材料をサブタンク126に供給する液体ポンプ112、あるいは液体ポンプ112に接続されている液体流路122、123のエラー判定を行うことができる。
【0086】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、空気ポンプ113及び空気流路127のエラー判定を行う処理について説明する。
【0087】
図10Aは、第3の実施形態におけるサブタンクの空気圧の正常動作を示す説明図である。
図10Aに示すように、立体造形物の造形時に第1の吐出ヘッド11により造形用材料を吐出した際に、造形用材料の吐出とともにサブタンク126から第1の吐出ヘッド11に造形用材料を供給すると、サブタンク126内の空気圧が下降する。その後、液体ポンプ112を駆動させメインタンク121からサブタンク126に造形用材料を供給しながら、サブタンク126内の空気圧を上昇させる。第3の実施形態では、サブタンク126内の空気圧が正常吐出範囲上限に接近したタイミングで、更に空気ポンプ113を駆動することにより正常吐出可能圧力を維持し続けるようにする。第1及び第2の実施形態と同様に、判定部162は、正常動作プロファイルの範囲内である場合は正常動作と判定する。
【0088】
図10Bは、第3の実施形態においてエラー判定する場合のサブタンクの空気圧を示す説明図である。
図10Bに示すように、判定部162は、
図10B中E4のように、空気ポンプ113が空気を排気する動作中に空気圧が上昇して正常動作プロファイルから逸脱する場合、空気ポンプ113の排気エラー及び空気流路127の閉塞エラーの少なくともいずれかと判定する。
【0089】
図11は、第3の実施形態においてエラー判定を行う処理の流れを示すフローチャートである。ここでは、吐出ヘッド及び空気ポンプは正常に動作するとして、吐出ヘッドと液体ポンプのエラー判定を行う処理の流れを
図11に示すフローチャートの図中Sで表すステップにしたがって説明する。
なお、ステップS301~S303、S306、S307、S309及びS310は、第1の実施形態におけるステップS101~S103、S104、S105、S109及びS110と同様の処理であるため説明を省略する。また、ステップS304は、第2の実施形態におけるステップS204と同様の処理であるため説明を省略する。
また、制御部160は、造形データ作成装置600から受信した造形データをあらかじめ読み込んだ状態で開始する。
【0090】
ステップS305では、S304で造形用材料の吐出中に液体ポンプ112をONにしてサブタンク126に送液を開始した制御部160は、所定のタイミングで空気ポンプ113をONにしてサブタンク126からの排気を開始すると、処理をS306に移行する。
【0091】
ステップS308では、S306で空気圧の計測値がプロファイルから逸脱したと判定した判定部162は、空気ポンプ113の異常、空気開閉弁114の異常、及び空気流路127の閉塞の少なくともいずれかのエラーと判定すると、処理をS309に移行する。
【0092】
このように、第3の実施形態の液体供給エラー検知装置10は、空気ポンプ113の異常、空気開閉弁114の異常、及び空気流路127の閉塞の少なくともいずれかのエラー判定を行うことができる。
【0093】
以上説明したように、本発明の液体供給エラー検知装置は、吐出部に供給する液体を収容する液体収容部における空気圧の計測値に基づきエラー判定することで、液体を吐出するまでの液体供給経路におけるエラーを簡易に検知できる。
【0094】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 液体を吐出する吐出部と、
前記吐出部と連通し、前記吐出部に供給する液体を収容する液体収容部と、
前記液体収容部における空気圧を計測する計測部と、
前記計測部が計測した空気圧に基づいて、前記液体収容部のエラーを判定する判定部と、
を有することを特徴とする液体供給エラー検知装置である。
<2> 前記液体が、立体造形物の造形用材料である前記<1>に記載の液体供給エラー検知装置である。
<3> 前記吐出部が前記液体を吐出する動作中に、前記計測部が計測した空気圧が上昇する場合には、
前記判定部が、前記液体収容部における空気のリークのエラーと判定する前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置である。
<4> 前記吐出部が前記液体を吐出する動作中に、前記計測部が計測した空気圧が変化しない場合には、
前記判定部が、前記吐出部が前記液体を吐出していないエラー、及び、前記液体収容部から前記吐出部までの供給流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置である。
<5> 前記液体収容部に前記液体を収容するための液体流路と、
前記液体流路に設けられ、前記液体収容部に前記液体を送る液体ポンプと、
を更に有し、
前記液体ポンプが前記液体収容部に液体を送る動作中に、前記計測部が計測した空気圧が下降する場合には、
前記判定部が、前記液体ポンプが前記液体収容部に液体を送れていないエラー、及び、前記液体流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置である。
<6> 前記液体収容部の空気を大気中に排気するための空気流路と、
前記空気流路に設けられ、前記液体収容部の空気を大気中に排気する空気ポンプと、
を更に有し、
前記空気ポンプが前記液体収容部の空気を大気中に排気する動作中に、前記計測部が計測した空気圧が上昇する場合には、
前記判定部が、前記空気ポンプが前記液体収容部の空気を大気中に排気できていないエラー、及び、前記空気流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置である。
<7> 前記判定部が判定したエラーの発生を報知する報知部を更に有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置である。
<8> 前記液体収容部における空気圧の正常動作プロファイルを記憶する記憶部を更に有し、
前記判定部が、前記計測部が計測した空気圧が前記正常動作プロファイルから逸脱したか否かにより前記液体収容部のエラーを判定する前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置である。
<9> 吐出部により液体を吐出する吐出工程と、
前記吐出部と連通する液体収容部に、前記吐出部に供給する液体を収容する液体収容工程と、
前記液体収容部における空気圧を計測する計測工程と、
前記計測工程で計測した空気圧に基づいて、前記液体収容部のエラーを判定する判定工程と、
を含むことを特徴とする液体供給エラー検知方法である。
<10> 前記液体が、立体造形物の造形用材料である前記<9>に記載の液体供給エラー検知方法である。
<11> 前記吐出部が前記液体を吐出する動作中に、前記計測工程で計測した空気圧が上昇する場合には、
前記判定工程で、前記液体収容部における空気のリークのエラーと判定する前記<9>から<10>のいずれかに記載の液体供給エラー検知方法である。
<12> 前記吐出部が前記液体を吐出する動作中に、前記計測工程で計測した空気圧が変化しない場合には、
前記判定工程で、前記吐出部が前記液体を吐出していないエラー、及び、前記液体収容部から前記吐出部までの供給流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<9>から<11>のいずれかに記載の液体供給エラー検知方法である。
<13> 前記液体収容部に前記液体を収容するための液体流路と、
前記液体流路に設けられ、前記液体収容部に前記液体を送る液体ポンプと、
を更に有し、
前記液体ポンプが前記液体収容部に液体を送る動作中に、前記計測工程で計測した空気圧が下降する場合には、
前記判定工程で、前記液体ポンプが前記液体収容部に液体を送れていないエラー、及び、前記液体流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<9>から<12>のいずれかに記載の液体供給エラー検知方法である。
<14> 前記液体収容部の空気を大気中に排気するための空気流路と、
前記空気流路に設けられ、前記液体収容部の空気を大気中に排気する空気ポンプと、
を更に有し、
前記空気ポンプが前記液体収容部の空気を大気中に排気する動作中に、前記計測工程で計測した空気圧が上昇する場合には、
前記判定工程で、前記空気ポンプが前記液体収容部の空気を大気中に排気できていないエラー、及び、前記空気流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<9>から<13>のいずれかに記載の液体供給エラー検知方法である。
<15> 吐出部により液体を吐出し、
前記吐出部と連通する液体収容部に、前記吐出部に供給する液体を収容し、
前記液体収容部における空気圧を計測し、
計測した空気圧に基づいて、前記液体収容部のエラーを判定する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする液体供給エラー検知プログラム。
<16> 前記液体が、立体造形物の造形用材料である前記<15>に記載の液体供給エラー検知プログラムである。
<17> 前記吐出部が前記液体を吐出する動作中に、計測した空気圧が上昇する場合には、
前記液体収容部における空気のリークのエラーと判定する前記<15>から<16>のいずれかに記載の液体供給エラー検知プログラムである。
<18> 前記吐出部が前記液体を吐出する動作中に、計測した空気圧が変化しない場合には、
前記吐出部が液体を吐出していないエラー、及び、前記液体収容部から前記吐出部までの供給流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<15>から<17>のいずれかに記載の液体供給エラー検知プログラムである。
<19> 前記液体収容部に液体を収容するための液体流路と、
前記液体流路に設けられ、前記液体収容部に液体を送る液体ポンプと、
を更に有し、
前記液体ポンプが前記液体収容部に前記液体を送る動作中に、計測した空気圧が下降する場合には、
前記液体ポンプが前記液体収容部に液体を送れていないエラー、及び、前記液体流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<15>から<18>のいずれかに記載の液体供給エラー検知プログラムである。
<20> 前記液体収容部の空気を大気中に排気するための空気流路と、
前記空気流路に設けられ、前記液体収容部の空気を大気中に排気する空気ポンプと、
を更に有し、
前記空気ポンプが前記液体収容部の空気を大気中に排気する動作中に、計測した空気圧が上昇する場合には、
前記空気ポンプが前記液体収容部の空気を大気中に排気できていないエラー、及び、前記空気流路が閉塞するエラーの少なくともいずれかと判定する前記<15>から<19>のいずれかに記載の液体供給エラー検知プログラムである。
【0095】
前記<1>から<8>のいずれかに記載の液体供給エラー検知装置、前記<9>から<14>のいずれかに記載の液体供給エラー検知方法、前記<15>から<20>のいずれかに記載の液体供給エラー検知プログラムによると、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0096】
【符号の説明】
【0097】
10 立体造形物の製造装置
11 第1の吐出ヘッド
12 第2の吐出ヘッド
100 液体供給エラー検知装置
101 CPU
111 方向切換弁
112 液体ポンプ
113 空気ポンプ
114 空気開閉弁
115 空気圧センサ
140 記憶部
150 入出力部
160 制御部
161 計測部
162 判定部
163 報知部
500 操作パネル