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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】搬送装置、印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/22 20060101AFI20220511BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20220511BHJP
   B65H 5/12 20060101ALI20220511BHJP
   B41J 11/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B65H5/22 B
B65H5/06 F
B65H5/12 B
B41J11/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018045716
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019156573
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】前山 雄一郎
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-241272(JP,A)
【文献】特開平10-193718(JP,A)
【文献】特開2001-206585(JP,A)
【文献】登録実用新案第3202703(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送する搬送ドラムと、
前記シート材に対する所定の動作が開始される動作開始位置よりも搬送方向上流側で前記シート材を前記搬送ドラムの周面に押し付ける押し付け手段と、
前記搬送ドラム上に前記シート材を吸引して吸着させる吸着手段と、を備え、
前記搬送ドラムは、複数枚の前記シート材を担持可能であり、
前記吸着手段は、1枚の前記シート材に対応する複数の吸着部を含み、
前記複数の吸着部は、いずれも、前記押し付け手段と前記動作開始位置との間の距離よりも短い長さの吸着領域を有し、
前記吸着部は前記搬送ドラムとともに回転し、
前記吸着手段は、最下流側の前記吸着部が前記押し付け手段を通過した後に前記シート材の吸着を開始する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記吸着手段は、前記吸着部の吸着領域が前記押し付け手段を抜けた後に、当該吸着部で前記シート材を前記搬送ドラム上に吸着させる
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記押し付け手段と前記動作開始位置との間の距離よりも短い吸着領域を有する前記吸着部が搬送方向最下流側に配置されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記吸着手段は、前記シート材の後端が前記吸着部に対向するときには、前記シート材の後端が前記押し付け手段を抜ける前に、当該吸着部で前記シート材を前記搬送ドラム上に吸着させる
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記吸着手段は、前記シート材の吸着長さが前記押し付け手段と前記動作開始位置との間の距離よりも短くなるときには、前記シート材が前記押し付け手段を抜ける前に、前記シート材を前記搬送ドラム上に吸着させる
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記シート材の搬送方向と直交する方向の幅に応じて、前記吸着部の吸着力を付与するタイミングを変更する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
前記幅が最大の前記シート材を搬送するときに前記吸着力を付与するタイミングが最も遅く、前記幅が最小シート材を搬送するときに前記吸着力を付与するタイミングが最も早い
ことを特徴とする請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記シート材の搬送方向と直交する方向の幅に応じて、前記吸着手段の吸引力を変更する
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項9】
前記所定の動作が、前記シート材に対する印刷動作、読取り動作、検出動作の少なくともいずれかである
ことを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項10】
シート材に対して印刷を施す印刷手段と、
請求項1ないし9のいずれかに記載の搬送装置と、を備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送ドラムにシート材を巻き付けて搬送しながらシート材の印刷を施す印刷装置においては、シート材が搬送ドラムに周面に皺などがない状態で担持される必要がある。
【0003】
従来、回転ドラムの外周面に設けられ、記録媒体の搬送方向先端部を保持する保持手段と、保持手段に対して記録媒体の搬送方向上流側であって回転ドラム外周面の幅方向両端部位置に設けられ、記録媒体の幅方向側端部に接触して記録媒体を回転ドラム側に押えつける一対の接触式抑えつけ手段と、回転ドラムの外周面に形成され、搬送される記録媒体の非画像面側を外周面に吸着する多数の吸着孔とを備えるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-020870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、押えつけ手段による押えつけを行う前に吸着手段で吸着しているため、押えつけ手段でシート材を搬送ドラムの周面にならして皺や浮きを抑制する効果が十分に得られなくなるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、搬送ドラムの周面にシート材を吸着保持するときの皺や浮きなどの発生を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る搬送装置は、
シート材を搬送する搬送ドラムと、
前記シート材に対する所定の動作が開始される動作開始位置よりも搬送方向上流側で前記シート材を前記搬送ドラムの周面に押し付ける押し付け手段と、
前記搬送ドラム上に前記シート材を吸引して吸着させる吸着手段と、を備え、
前記搬送ドラムは、複数枚の前記シート材を担持可能であり、
前記吸着手段は、1枚の前記シート材に対応する複数の吸着部を含み、
前記複数の吸着部は、いずれも、前記押し付け手段と前記動作開始位置との間の距離よりも短い長さの吸着領域を有し、
前記吸着部は前記搬送ドラムとともに回転し、
前記吸着手段は、最下流側の前記吸着部が前記押し付け手段を通過した後に前記シート材の吸着を開始する
構成とした。
【0008】
本発明によれば、搬送ドラムの周面にシート材を吸着保持するときの皺や浮きなどの発生を低減することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
図2】吸着装置の説明に供する搬送ドラム周りの模式的説明図である。
図3】同吸着装置の構成説明図である。
図4】吸着制御手段による吸着タイミングの制御の説明に供する説明図である。
図5】本発明の第2実施形態の説明に供するシート材の幅サイズ、吸着力、時間の関係の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明の第1実施形態について図1を参照して説明する。図1は同実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
【0011】
印刷装置1は、搬入部10と、印刷部20と、乾燥部30と、搬出部40とを備えている。印刷装置1は、搬入部10から搬入されるシート状部材であるシート材Pに対し、印刷部20で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部30でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部40に排出する。
【0012】
搬入部10は、複数のシート材Pが積載される搬入トレイ11と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12と、シート材Pを印刷部20へ送り込むレジストローラ対13とを備えている。
【0013】
給送装置12には、ローラやコロを用いた装置や、エア吸引を利用した装置など、あらゆる給送装置を用いることが可能である。給送装置12により搬入トレイ11から送り出されたシート材Pは、その先端がレジストローラ対13に到達した後、レジストローラ対13が所定のタイミングで駆動することにより、印刷部20へ送り出される。
【0014】
印刷部20は、シート材Pを外周面に担持して搬送する搬送手段である搬送ドラム21と、搬送ドラム21に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部22とを備えている。
【0015】
また、印刷部20は、送り込まれたシート材Pを受け取って搬送ドラム21へ渡す渡し胴24と、搬送ドラム21によって搬送されたシート材Pを乾燥部30へ受け渡す受け渡し胴25を備えている。
【0016】
搬入部10から印刷部20へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴24の表面に設けられたシートグリッパによって先端が把持され、渡し胴24の回転に伴って搬送される。渡し胴24により搬送されたシート材Pは、搬送ドラム21との対向位置で搬送ドラム21へ受け渡される。
【0017】
搬送ドラム21の表面にもシートグリッパが設けられており、シート材Pの先端がシートグリッパによって把持される。搬送ドラム21の表面には、複数の吸引孔が分散して形成されている。吸着手段である吸着装置26によって搬送ドラム21の吸引孔から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0018】
そして、渡し胴24から搬送ドラム21へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸着装置26による吸い込み気流によって搬送ドラム21上に吸着され、搬送ドラム21の回転に伴って搬送される。
【0019】
液体吐出部22は、吐出ユニット23(23A、23B、23C、23D)を備えている。例えば、吐出ユニット23Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット23Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット23Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット23Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。なお、必要に応じて、白色、金色、銀色などの特殊な液体、表面コート液などの処理液を吐出する吐出ユニットを設けることもできる。
【0020】
液体吐出部22の各吐出ユニット23は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。搬送ドラムに担持されたシート材Pが液体吐出部22との対向領域を通過するときに、吐出ユニット23から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0021】
乾燥部30は、印刷部20でシート材P上に付着した液体を乾燥させるための乾燥機構部31と、印刷部20から搬送されてくるシート材Pを吸引した状態で搬送する(吸引搬送する)吸引搬送機構部32とを備えている。
【0022】
印刷部20から搬送されてきたシート材Pは、吸引搬送機構部32に受け取られた後、乾燥機構部31を通過するように搬送され、搬出部40へ受け渡される。
【0023】
乾燥機構部31を通過するとき、シート材P上の液体には乾燥処理が施される。これにより液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0024】
搬出部40は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ41を備えている。乾燥部30から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ41上に順次積み重ねられて保持される。
【0025】
なお、印刷装置1には、例えば、シート材Pに対して前処理を行う前処理部を印刷部20の上流側に配置したり、液体が付着したシート材Pに対して後処理を行う後処理部を乾燥部30と搬出部40との間に配置したりすることもできる。
【0026】
前処理部としては、例えば、液体と反応して滲みを抑制するための処理液をシート材Pに塗布する先塗り処理を行うものが挙げられる。また、後処理部としては、例えば、印刷部20で印刷されたシートを反転させて再び印刷部20へ送ってシート材Pの両面に印刷するためのシート反転搬送処理や、複数枚のシートを綴じる処理などを行うものが挙げられる。
【0027】
次に、吸着装置について図2及び図3を参照して説明する。図2は搬送ドラム周りの模式的説明図、図3は同吸着装置の構成説明図である。
【0028】
まず、図2を参照して、搬送ドラム21の周囲には、吐出ユニット23(23A)よりも搬送方向上流側で、渡し胴24よりも搬送方向下流側に、シート材Pを搬送ドラム21の周面に押し付ける押し付け手段であるならしローラ28が配置されている。
【0029】
すなわち、本実施形態では、所定の動作はシート材Pに対する印刷部20による印刷動作であり、所定の動作である印刷動作が開始される動作開始位置(以下、「印刷動作開始位置」という。)は、最も上流側の吐出ユニット23Aによる液体吐出位置となる。
【0030】
搬送ドラム21のグリップでシート材Pの先端を把持し、ならしローラ28でシート材Pの後端を押さえることで、シート材Pにテンションが付与され、シート材Pの皺や浮きが矯正され、シート材Pは搬送ドラム21の周面に倣って担持される。
【0031】
そして、搬送ドラム21の内部には、吸着装置26を構成する吸着部(吸引部)201(201A、201B、201C)が配置されている。吸着部201は、搬送ドラム21の回転に同動して回転する。
【0032】
吸着部201A、201B、201Cは、ならしローラ28から最上流の吐出ユニット23Aによる印刷動作開始位置までの距離L0よりも短い長さL1、L2、L3(L1<L0、L2<L0、L3<L0)の吸着領域(吸引領域)を有している。
【0033】
本実施形態では、搬送ドラム21は、複数枚のシート材Pを同時に担持することができ、1枚のシート材Pの長さに対応して三分割された吸着部201A、201B、201Cを配置しているが、これに限るものではない。
【0034】
この場合、複数の吸着部201の吸着領域の長さは同じである必要はない。例えば、シート材Pのサイズ対応を考慮する場合、吸着領域の長さは最小サイズに合わせることになるので、搬送方向下流側の吸着部201が一番長い吸着領域になる。それ以降の後端寄りの吸着領域はサイズ分割によって長さを決めることになるので、吸着領域の長さは短めになる。
【0035】
ただし、搬送方向下流側の吸着部201の吸着領域の長さは、ならしローラ28(押し付け手段)から最上流の吐出ユニット23Aによる印刷動作開始位置までの距離よりも短い長さである。
【0036】
次に、図3も参照して、吸着装置26の吸着部201は、個別吸引経路202及び共通吸引経路203を介して吸引手段として吸引ポンプ204に接続され、個別吸引経路202には経路を開閉する開閉手段としての電磁弁205(205A、205B、205C)が配置されている。
【0037】
これらの吸引ポンプ204の駆動制御、電磁弁205の開閉制御は、吸着制御手段501によって行われる。
【0038】
吸着制御手段501は、搬送ドラム21の回転に応じて出力されるホームセンサ502からのホーム位置信号と、ドラムエンコーダ503からの出力パルスのカウント値から、ならしローラ28に対する各吸着部201の位置を検出し、これらに基づいて電磁弁205を開閉閉制御して、吸着部201によるシート材Pの吸着を制御する。
【0039】
次に、吸着制御手段による吸着制御について図4も参照して説明する。図4は吸着制御タイミングの説明に供する説明図である。
【0040】
まず、搬送ドラム21上に渡し胴24によってシート材Pが渡され、シート材Pは、搬送ドラム21のグリップでシート材Pの先端が把持され、搬送ドラム21の回転によって搬送される。そして、シート材Pがならしローラ28を通過することで、シート材Pにテンションが付与され、シート材Pの皺や浮きが矯正される。
【0041】
ここで、例えば、図4に示す時点t0で吸着部201Aの先端がならしローラ28を通過したものとすると、この時点t0から吸着部201Aによるシート材Pの吸着は開始しない状態を継続する。
【0042】
そして、吸着部201Aの後端がならしローラ28を通過した後の時点t1で、例えば、電磁弁205Aを開いて、吸着部201Aによる吸着を開始する。この場合、時点t0から時点t1までの距離は、吸着部201Aの吸着領域の長さL1にマージン量αを加算した距離としている。
【0043】
なお、ここでは、電磁弁205の動作と実際の吸着力の発生との間のタイムラグがないものとして説明するが、タイムラグが生じるときには、当該タイムラグ分早く電磁弁205を開状態にすればよい。
【0044】
したがって、シート材Pはならしローラ28を通過した後、先端のグリップとならしローラ28との間でのテンションを受けるときに、搬送ドラム21上に吸着されていない状態にあり、テンションによって皺や浮きが矯正される。
【0045】
これに対して、シート材Pはならしローラ28を通過した段階で搬送ドラム21上に吸着されていると、シート材Pと搬送ドラム21との間の摩擦力が大きくなる。そのため、吸着された段階でシート材Pの皺や浮きが固定され、ならしローラ28でテンションを付与してもならすことができなくなる。
【0046】
次いで、吸着部201Bの後端がならしローラ28を通過した後の時点t2で、例えば、電磁弁205Bを開いて、吸着部201Bによる吸着も開始する。この場合、時点t1から時点t2までの距離は、吸着部201A、201Bの吸着領域の長さL1、L2にマージン量αを加算した距離としている。
【0047】
さらに、吸着部201Cの後端がならしローラ28を通過した後の時点t3で、例えば、電磁弁205Cを開いて、吸着部201Cによる吸着も開始する。この場合、時点t1から時点t3までの距離は、吸着部201A、201B、201Cの吸着領域の長さL1、L2、L3からマージン量βを減算した距離としている。
【0048】
ここで、マージン量βは、シート材Pの後端がならしローラ28を抜ける前に吸着部201Cによる吸着を行うために差し引く距離である。
【0049】
つまり、シート材Pの後端が吸着部201の途中に対向しているときには、当該吸着部201がならしローラ28を通過する前に、シート材Pの後端が吸着される前にならしローラ28を抜けてしまうことになる。シート材Pの後端が吸着されないまま、ならしローラ28を抜けると浮きなどが生じる。
【0050】
そこで、シート材Pの後端が吸着部201に対向しているときには、当該吸着部201がならしローラ28を通過する前であっても、シート材Pの後端がならしローラ28を抜ける前に、当該吸着部201による吸着を行う。
【0051】
このように、吸着装置26は、シート材Pの後端が吸着部201に対向するときには、シート材Pの後端がならしローラ28(押し付け手段)を抜ける前に、当該吸着部201でシート材Pを搬送ドラム21上に吸着させる。
【0052】
これにより、シート材Pの後端部の浮きを防止して、安定した搬送を行うことができる。
【0053】
また、例えば、シート材Pの後端が吸着部201B、あるいは、吸着部201Aに対向するようなサイズのシート材Pであるときにも、いずれも、シート材Pの後端がならしローラ28を抜ける前に吸着を行うようにすることが好ましい。
【0054】
言い換えれば、吸着装置26は、シート材Pの吸着長さがならしローラ28(押し付け手段)と印刷動作開始位置との間の距離L0よりも短くなるときには、シート材Pがならしローラ28を抜ける前に、シート材Pを搬送ドラム21上に吸着させる。
【0055】
これにより、シート材Pの浮きを防止して、安定した搬送を行うことができる。
【0056】
次に、本発明の第2実施形態について図5も参照して説明する。図5は同実施形態の説明に供するシート材の幅サイズ、吸着力、時間の関係の一例の説明図である。
【0057】
本実施形態では、吸着装置26は、シート材Pの搬送方向と直交する方向の幅に応じて、吸着部201の吸着力を付与するタイミングを変更している。
【0058】
つまり、シート材Pの搬送方向と直交する方向の幅が広いときには、搬送ドラム21の吸引孔のうちのシート材Pで塞がれない吸引孔の数が少なくなるのに対し、幅が狭いときには、シート材Pで塞がれない吸引孔の数が多くなる。
【0059】
したがって、シート材Pで塞がれない吸引孔の数によって、所定の吸着力に達するまでの時間が異なることになる。例えば、図5に示すように、吸着部201の吸引開始から目標吸着力に達するまでの時間は、シート材Pで塞がれない吸引孔の数が少ない幅狭の場合の方が、シート材Pで塞がれない吸引孔の数が多い幅広の場合よりも長くなる。
【0060】
そこで、シート材Pの幅が相対的に広いときには吸着力を付与するタイミング(吸引力を発生させるタイミング)を遅くし、シート材Pの幅が相対的に狭いときには吸着力を付与するタイミング(吸引力を発生させるタイミング)を早くする。この場合、幅が最大のシート材を搬送するときに吸着力を付与するタイミングが最も遅く、幅が最小のシート材を搬送するときに吸着力を付与するタイミングが最も早くなる。
【0061】
これにより、安定した吸着を行うことができる。
【0062】
例えば、図4の例において、電磁弁205Aを開いて吸着部201Aによる吸着を時点t1で行うとき、幅が狭いシート材Pの場合には幅が広いシート材Pよりも電磁弁205Aを開くタイミングを早くする。これにより、時点t1において、所要の吸着力を吸着部201Aで発生できるようになる。
【0063】
なお、本実施形態では、吸着力を付与するタイミングを制御しているが、シート材Pの幅に応じて吸着部201の吸引力を変更するようにすることもできる。
【0064】
吸引力の変更は、吸引手段としての吸引ポンプ204の吸引力をシート材Pの幅に応じて変更することで実現できる。これによれば、図5の目標吸着力までの時間をシート材Pの幅にかかわらず、ほぼ同じにすることもできる。
【0065】
なお、上記各実施形態においては、所定の動作が印刷動作である例で説明しているが、所定の動作は印刷動作に限るものではなく、例えばシート材上の画像を読取り動作、シート材の位置検出マークや先端などを検出する検出動作などが含まれる。
【0066】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0067】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0068】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッドを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0069】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0070】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0071】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0072】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0073】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0074】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0075】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0076】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0077】
1 印刷装置
10 搬入部
20 印刷部
21 搬送ドラム
22 液体吐出部
26 吸着装置(吸着手段)
28 ならしローラ(押し付け部材)
201(201A~201C) 吸着部
501 吸着制御手段
図1
図2
図3
図4
図5