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特許7069894駆動装置、駆動システム、ロボット、画像形成装置、および搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】駆動装置、駆動システム、ロボット、画像形成装置、および搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20220511BHJP
   G03G 21/14 20060101ALI20220511BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20220511BHJP
   B41J 11/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
H02P5/46 H
G03G21/14
B65H5/06 J
B41J11/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018050044
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019162007
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小池 孝尚
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-322292(JP,A)
【文献】特開2003-033084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
G03G 21/14
B65H 5/06
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された電圧指令値に基づいて、同一の駆動軸に動力を伝達する第1のモータおよび第2のモータを駆動する駆動装置であって、
前記電圧指令値に基づいて、前記第1のモータに対する第1の駆動指令値と、前記第2のモータに対する第2の駆動指令値を出力する制御部と、
前記電圧指令値が所定の閾値を超えた場合、前記制御部が用いる制御パターンを、一の制御パターンから他の制御パターンに切り替える切替部と
を備え、
前記制御部は、
前記電圧指令値が前記所定の閾値未満の場合、前記一の制御パターンに基づいて、一方のモータから伝達されるトルクの方向が、前記駆動軸の駆動方向と異なる方向になるように、前記第1の駆動指令値および前記第2の駆動指令値を出力し、
前記切替部による切り替え後、前記他の制御パターンに基づいて、前記電圧指令値が前記所定の閾値以上の場合には、前記一方のモータから伝達されるトルクの方向が、前記駆動軸の駆動方向と同じ方向となり、且つ、前記電圧指令値が所定の閾値未満の場合であっても、前記一方のモータから伝達されるトルクの方向が、前記駆動軸の駆動方向と異なる方向にならないように、前記第1の駆動指令値および前記第2の駆動指令値を出力する
駆動装置。
【請求項2】
前記切替部は、
前記制御部が用いる制御パターンを、前記他の制御パターンに切り替えた後、前記電圧指令値が0になったとき、前記制御部が用いる制御パターンを、前記他の制御パターンから前記一の制御パターンに切り替える
請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記切替部による切り替え後、前記電圧指令値が所定の閾値未満の場合、前記他の制御パターンに基づいて、前記一方のモータから伝達されるトルクがゼロまたはゼロ近傍の同じ向きとなるように、前記第1の駆動指令値および前記第2の駆動指令値を出力する
請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
入力された電圧指令値に基づいて、同一の駆動軸に動力を伝達する第1のモータおよび第2のモータを駆動する駆動装置であって、
前記電圧指令値に基づいて前記第1のモータに対する第1の駆動指令値と、前記第2のモータに対する第2の駆動指令値を出力する制御部であって、前記電圧指令値が所定の閾値未満の場合、所定の制御パターンに基づいて、一方のモータから伝達されるトルクの方向が、前記駆動軸の駆動方向と異なる方向になるように、前記電圧指令値を制御し、前記電圧指令値が前記所定の閾値以上の場合、前記所定の制御パターンに基づいて、前記一方のモータから伝達されるトルクの方向が、前記駆動軸の駆動方向と同じ方向になるように、前記第1の駆動指令値および前記第2の駆動指令値を出力する制御部と、
前記電圧指令値に関する所定の条件を満たした場合、前記電圧指令値が所定の閾値未満の場合であっても、前記一方のモータから伝達されるトルクの方向が、前記駆動軸の駆動方向と異なる方向にならないように、前記所定の制御パターンを補正する補正部と
を備える駆動装置。
【請求項5】
所定の測定期間内における前記電圧指令値の範囲を測定する測定部をさらに備え、
前記補正部は、前記測定部によって測定された前記電圧指令値の範囲内に前記所定の閾値が含まれている場合、前記所定の閾値が、前記電圧指令値の範囲外に変更されるように、前記所定の制御パターンを補正する
請求項4に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第1のモータと、
前記第2のモータと、
請求項1から5のいずれか一項に記載の駆動装置と
を備える駆動システム。
【請求項7】
請求項6に記載の駆動システムと、
前記第1のモータおよび前記第2のモータの双方の動力が伝達される駆動軸と
を備えるロボット。
【請求項8】
請求項6に記載の駆動システムと、
前記第1のモータおよび前記第2のモータの双方の動力が伝達される駆動軸と
を備える画像形成装置。
【請求項9】
請求項6に記載の駆動システムと、
前記第1のモータおよび前記第2のモータの双方の動力が伝達される駆動軸と
を備える搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置、駆動システム、画像形成装置、および搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのモータによって同一の駆動軸を駆動することにより、駆動軸の駆動トルクを向上させたり、2つのモータと駆動軸との間のバックラッシュを解消したりすることができるようにした技術が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1には、同一の負荷軸を駆動する第1モータおよび第2モータの制御値を補正することにより、第1モータおよび第2モータの高効率なトルク制御を行うことができるようにした技術が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献1には、速度指令が示す角速度Vが0である場合には、第1モータと第2モータとによって、互いに反対方向のプリトルクを負荷軸に加えることにより、第1モータおよび第2モータと負荷軸との間に、バックラッシュが生じないようにした技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献1には、速度指令が示す角速度Vが所定の閾値以上である場合には、第1モータと第2モータとによって、互いに同一方向のトルクを負荷軸に加えることにより、第1モータと第2モータとの合成トルクによって、負荷軸を回転させるようにした技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
すなわち、特許文献1の技術は、所定の閾値を境界にして、第2のモータによって負荷軸に加えるトルクの方向を切り替える手法を採用している。しかしながら、特許文献1の技術は、速度指令が示す角速度Vが所定の閾値近辺で維持される場合には、第2のモータによって負荷軸に加えるトルクの方向が、頻繁に切り替わってしまう虞がある。その結果、負荷軸に設けられたギヤに対する、第2のモータに設けられたギヤの噛み合う方向が頻繁に切り替わることとなるため、負荷軸と第2のモータとの間において振動が生じてしまう。
【0007】
本発明は、上述した従来技術の課題を解決するため、2つのモータによって同一の駆動軸を駆動するように構成された駆動装置において、振動の発生を抑制しつつ、2つのモータと駆動軸との間のバックラッシュを解消できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の駆動装置は、入力された電圧指令値に基づいて、同一の駆動軸に動力を伝達する第1のモータおよび第2のモータを駆動する駆動装置であって、電圧指令値に基づいて、第1のモータに対する第1の駆動指令値と、第2のモータに対する第2の駆動指令値を出力する制御部と、電圧指令値が所定の閾値を超えた場合、制御部が用いる制御パターンを、一の制御パターンから他の制御パターンに切り替える切替部とを備え、制御部は、電圧指令値が所定の閾値未満の場合、一の制御パターンに基づいて、一方のモータから伝達されるトルクの方向が、駆動軸の駆動方向と異なる方向になるように、第1の駆動指令値および第2の駆動指令値を出力し、切替部による切り替え後、他の制御パターンに基づいて、電圧指令値が所定の閾値以上の場合には、一方のモータから伝達されるトルクの方向が、駆動軸の駆動方向と同じ方向となり、且つ、電圧指令値が所定の閾値未満の場合であっても、一方のモータから伝達されるトルクの方向が、駆動軸の駆動方向と異なる方向にならないように、第1の駆動指令値および第2の駆動指令値を出力する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2つのモータによって同一の駆動軸を駆動するように構成された駆動装置において、振動の発生を抑制しつつ、2つのモータと駆動軸との間のバックラッシュを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る第1のモータおよび第2のモータを用いた駆動機構の一例を示す図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る駆動システムの構成を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るオフセット制御部の状態遷移図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るオフセット制御部によるオフセット制御に用いられる第1の制御パターンを表すグラフである。
図5】本発明の第1実施形態に係るオフセット制御部によるオフセット制御に用いられる第2の制御パターンを表すグラフである。
図6】本発明の第1実施形態に係るオフセット制御部によるオフセット制御に用いられる第3の制御パターンを表すグラフである。
図7】本発明の第2実施形態に係る駆動システムの構成を示す図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るオフセット制御部によるオフセット制御に用いられる制御パターン(補正部による補正前の制御パターン)を表すグラフである。
図9】本発明の第2実施形態に係るオフセット制御部によるオフセット制御に用いられる制御パターン(補正部による補正後の制御パターン)を表すグラフである。
図10】本発明の第1実施例に係るロボットの一部概略構成を示す図である。
図11】本発明の第2実施例に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
図12】本発明の第3実施例に係る搬送装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。
【0012】
(第1のモータ101および第2のモータ102を用いた駆動機構の一例)
図1は、本発明の第1実施形態に係る第1のモータ101および第2のモータ102を用いた駆動機構の一例を示す図である。図1に示す駆動機構10は、第1のモータ101、第2のモータ102、および駆動軸11を備えて構成されている。
【0013】
第1のモータ101および第2のモータ102は、いわゆるDCブラシレスモータである。第1のモータ101および第2のモータ102は、ドライバから駆動電圧が印加されることにより、その出力軸の回転が制御される。駆動機構10では、第1のモータ101および第2のモータ102は、同一の駆動軸11を駆動させる。駆動軸11としては、例えば、画像形成装置であれば、記録紙を搬送するための各種ローラ(例えば、給紙ローラ、搬送ローラ、2次転写ローラ、定着ローラ等)の駆動軸等が挙げられる。
【0014】
図1に示すように、第1のモータ101および第2のモータ102は、いずれも出力軸に歯車が設けられており、これらの歯車が駆動軸11の歯車と噛み合いつつ、出力軸とともに回転することによって、駆動軸11を回転駆動できるように構成されている。
【0015】
第1のモータ101および第2のモータ102は、ドライバから印加される駆動電圧が制御されることにより、いずれも出力軸の回転方向、回転位置、および回転速度を制御することが可能である。例えば、第1のモータ101の出力軸の回転方向と、第2のモータ102の出力軸の回転方向とを互いに異ならせることにより、駆動軸11に対して互いに異なる方向のトルクを加えることができ、よって、駆動軸11のバックラッシュを解消することができる。
【0016】
一方、第1のモータ101の出力軸の回転方向と、第2のモータ102の出力軸の回転方向とを互いに一致させることにより、駆動軸11に対して互いに同一の方向のトルクを加えることができ、よって、駆動軸11を高トルク(第1のモータ101の出力トルクと第2のモータ102の出力トルクとの合成トルク)で回転駆動することができる。
【0017】
(駆動システム100の構成)
図2は、本発明の第1実施形態に係る駆動システム100の構成を示す図である。図2に示すように、駆動システム100は、図1で説明した第1のモータ101および第2のモータ102に加え、駆動装置110、ドライバ103、ドライバ104、エンコーダ105、およびエンコーダ106をさらに備えている。
【0018】
駆動装置110は、位置・速度制御部111、位置・速度制御部111、オフセット制御部112、PWM生成部113、PWM生成部114、および切替部115を備えている。駆動装置110は全ての機能を回路で実行する他、それらの機能の一部をソフトウェア(CPU)によって実行するものであっても良い。また、駆動装置110は複数の回路又は複数のソフトウェアによって実行されるものであっても良い。
【0019】
位置・速度制御部111は、上位コントローラから、位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtが入力される。また、位置・速度制御部111は、エンコーダ105から、第1のモータ101のエンコード信号enc1が入力される。また、位置・速度制御部111は、エンコーダ106から、第2のモータ102のエンコード信号enc2が入力される。
【0020】
また、位置・速度制御部111は、エンコード信号enc1に基づいて、第1のモータ101の位置実測値xdet1および速度実測値vdet1を算出する。また、位置・速度制御部111は、エンコード信号enc2に基づいて、第2のモータ102の位置実測値xdet2および速度実測値vdet2を算出する。
【0021】
そして、位置・速度制御部111は、位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtと、位置実測値xdet1および速度実測値vdet1に基づいて、第1のモータ101のPID(Proportional Integral Differential)制御を行う。これにより、位置・速度制御部111は、第1のモータ101の位置および速度を、位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtに一致させるための、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を出力する。
【0022】
また、位置・速度制御部111は、上位コントローラから入力される位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtと、位置実測値xdet2および速度実測値vdet2とに基づいて、第2のモータ102のPID制御を行う。これにより、位置・速度制御部111は、第2のモータ102の位置および速度を、位置目標値xtgtおよび速度目標値vtgtに一致させるための、第2のモータ102の駆動指令値drvout2を出力する。
【0023】
オフセット制御部112は、「制御部」の一例である。オフセット制御部112は、位置・速度制御部111から出力された、電圧指令値drvinに対するオフセット制御(補正)を行って、駆動指令値drvout1,drvout2を出力する。これにより、オフセット制御部112は、2つのモータ101,102と駆動軸11との間のバックラッシュを解消しつつ、これら2つのモータ101,102によって駆動軸11を回転駆動させることができる。特に、オフセット制御部112は、振動の発生を抑制しつつ、バックラッシュを解消することができるように、2つのモータ101,102の各々の電圧指令値を、オフセット制御することができる。
【0024】
本実施形態のオフセット制御部112は、第1~第3の制御パターンに基づいて、電圧指令値drvinに対するオフセット制御を行う。
【0025】
例えば、オフセット制御部112は、電圧指令値drvinが0~drvlimit/2(所定の閾値)の範囲内である場合、第1の制御パターン(図4参照)に基づいて、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と異なる方向になるように、駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0026】
電圧指令値drvinがdrvlimit/2(所定の閾値)を超えた場合、オフセット制御部112が用いる制御パターンは、切替部115によって、第1の制御パターンから第2の制御パターン(図5参照)に切り替えられる。
【0027】
この場合、オフセット制御部112は、第2の制御パターンに基づいて、電圧指令値drvinがdrvlimit/2以上の場合には、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と同じ方向となるように、駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0028】
また、オフセット制御部112は、第2の制御パターンに基づいて、電圧指令値drvinがdrvlimit/2未満の場合には、第1のモータ101の出力トルクが0となるようにすることで、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と異なる方向にならないように、駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0029】
反対に、オフセット制御部112は、電圧指令値drvinが-drvlimit/2~0の範囲内である場合、第1の制御パターン(図4参照)に基づいて、第2のモータ102から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と異なる方向になるように、駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0030】
電圧指令値drvinが-drvlimit/2を下回った場合、オフセット制御部112が用いる制御パターンは、切替部115によって、第1の制御パターンから第3の制御パターン(図6参照)に切り替えられる。
【0031】
この場合、オフセット制御部112は、第3の制御パターンに基づいて、電圧指令値drvinが-drvlimit/2未満の場合には、第2のモータ102から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と同じ方向となるように、駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0032】
また、オフセット制御部112は、第3の制御パターンに基づいて、電圧指令値drvinが-drvlimit/2以上の場合には、第2のモータ102の出力トルクが0となるようにすることで、第2のモータ102から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と異なる方向にならないように、駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0033】
PWM生成部113は、オフセット制御部112から出力された第1のモータ101用の駆動指令値drvout1に応じたデューティ比のPWM信号を生成し、このPWM信号をドライバ103に供給する。
【0034】
PWM生成部114は、オフセット制御部112から出力された第2のモータ102用の駆動指令値drvout2に応じたデューティ比のPWM信号を生成し、このPWM信号をドライバ104に供給する。
【0035】
切替部115は、オフセット制御部112が用いる制御パターンを切り替える。例えば、切替部115は、電圧指令値drvinがdrvlimit/2(所定の閾値)を超えた場合、オフセット制御部112を「モード0」から「モード1」に切り替える。これにより、切替部115は、オフセット制御部112が用いる制御パターンを、第1の制御パターン(図4参照)から第2の制御パターン(図5参照)に切り替える。その後、切替部115は、電圧指令値drvinが0になったとき、オフセット制御部112を「モード1」から「モード0」に切り替える。これにより、切替部115は、オフセット制御部112が用いる制御パターンを、第2の制御パターンから第1の制御パターンに切り替える。
【0036】
また、例えば、切替部115は、電圧指令値drvinが-drvlimit/2(所定の閾値)を下回った場合、オフセット制御部112を「モード0」から「モード2」に切り替える。これにより、切替部115は、オフセット制御部112が用いる制御パターンを、第1の制御パターンから第3の制御パターン(図6参照)に切り替える。その後、切替部115は、電圧指令値drvinが0になったとき、オフセット制御部112を「モード2」から「モード0」に切り替える。これにより、切替部115は、オフセット制御部112が用いる制御パターンを、第3の制御パターンから第1の制御パターンに切り替える。
【0037】
ドライバ103は、PWM生成部113から供給されたPWM信号に従って動作することにより、第1のモータ101のU,V,Wの各相へ駆動電圧を印加する。これにより、第1のモータ101が回転することとなる。ドライバ103は、第1のモータ101の内部に設けられてもよく、第1のモータ101の外部に設けられてもよい。
【0038】
ドライバ104は、PWM生成部114から供給されたPWM信号に従って動作することにより、第2のモータ102のU,V,Wの各相へ駆動電圧を印加する。これにより、第2のモータ102が回転することとなる。ドライバ104は、第2のモータ102の内部に設けられてもよく、第2のモータ102の外部に設けられてもよい。
【0039】
エンコーダ105は、第1のモータ101の出力軸に設けられており、第1のモータ101の出力軸の回転に応じたパルス信号である、エンコーダ信号enc1を出力する。エンコーダ信号enc1は、駆動装置110の位置・速度制御部111に供給され、位置・速度制御部111によって第1のモータ101の位置および速度のPID制御に用いられる。
【0040】
エンコーダ106は、第2のモータ102の出力軸に設けられており、第2のモータ102の出力軸の回転に応じたパルス信号である、エンコーダ信号enc2を出力する。エンコーダ信号enc2は、駆動装置110の位置・速度制御部111に供給され、位置・速度制御部111によって第2のモータ102の位置および速度のPID制御に用いられる。
【0041】
(オフセット制御部112によるオフセット制御)
続いて、図3図6を参照して、オフセット制御部112によるオフセット制御について説明する。このオフセット制御は、第1のモータ101および第2のモータ102を駆動する際に、これら2つのモータ101,102の電圧指令値を補正することにより、これら2つのモータ101,102と駆動軸11との間のバックラッシュを解消させるためのものであり、駆動装置110が備えるオフセット制御部112(図2参照)によって行われる。
【0042】
(オフセット制御部112の状態遷移)
図3は、本発明の第1実施形態に係るオフセット制御部112の状態遷移図である。図3に示すように、オフセット制御部112は、動作モードとして、「モード0」、「モード1」、および「モード2」を有する。
【0043】
初めに、オフセット制御部112は、「モード0」で動作する。「モード0」は、第1の制御パターン(図4参照)を用いたオフセット制御を行うモードである。そして、オフセット制御部112は、電圧指令値drvinが、-drvlimit/2~drvlimit/2の範囲内である間、「モード0」で動作する。
【0044】
その後、オフセット制御部112は、電圧指令値drvinが、drvlimit/2を超えた場合、切替部115によって「モード1」に切り替えられる。「モード1」は、第2の制御パターン(図5参照)を用いたオフセット制御を行うモードである。その後、オフセット制御部112は、電圧指令値drvin≧0である間、「モード1」で動作する。そして、オフセット制御部112は、電圧指令値drvinが0を下回った場合(または、0となった場合)、切替部115によって「モード0」に切り替えられる。
【0045】
一方、オフセット制御部112は、電圧指令値drvinが、-drvlimit/2を下回った場合、切替部115によって「モード2」に切り替えられる。「モード2」は、第3の制御パターン(図6参照)を用いたオフセット制御を行うモードである。そして、オフセット制御部112は、電圧指令値drvin≦0である間、「モード2」で動作する。また、オフセット制御部112は、電圧指令値drvinが0を上回った場合(または、0となった場合)、切替部115によって「モード0」に切り替えられる。
【0046】
なお、特許請求の範囲に記載の「一の制御パターン」は、本実施形態の第1の制御パターンに相当する。また、特許請求の範囲に記載の「他の制御パターン」は、電圧指令値drvin>0の場合は、本実施形態の第2の制御パターンに相当し、電圧指令値drvin<0の場合は、本実施形態の第3の制御パターンに相当する。
【0047】
(第1の制御パターン)
図4は、本発明の第1実施形態に係るオフセット制御部112によるオフセット制御に用いられる第1の制御パターンを表すグラフである。図4に示すように、第1の制御パターンは、電圧指令値drvinが、-drvlimit/2~drvlimit/2の範囲内である場合に、オフセット制御部112(モード0)によるオフセット制御に用いられるものである。
【0048】
なお、図4図6のグラフにおいて、横軸は、オフセット制御による補正前の電圧指令値drvinを表しており、縦軸は、オフセット制御による補正後の駆動指令値drvoutを表している。また、図4図6のグラフにおいて、実線は、電圧指令値drvinと第1のモータ101の駆動指令値drvout1との関係を表しており、破線は、電圧指令値drvinと第2のモータ102の駆動指令値drvout2との関係を表している。また、図4図6のグラフにおいて、点線は、仮に、オフセット制御を行わなかった場合の、電圧指令値drvinと駆動指令値drvoutとの関係を表すものであり、電圧指令値drvin=駆動指令値drvoutである。
【0049】
(電圧指令値drvin=0の場合)
第1の制御パターンによれば、電圧指令値drvin=0の場合、オフセット制御部112は、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向とは反対方向となるように、第1のモータ101に対して、電圧値を-offsetとする駆動指令値drvout1を出力する。同時に、オフセット制御部112は、第2のモータ102から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と同じ方向となるように、第2のモータ102に対して、電圧値をoffsetとする駆動指令値drvout2を出力する。これにより、駆動軸11に対し、2つのモータ101,102の双方から互いに逆方向の駆動力が加えられるため、駆動軸11と2つのモータ101,102との間のバックラッシュが解消されることとなる。なお、オフセット電圧-offset,offsetは、歯車間の隙間を解消するためのものであり、外部負荷がかからないため、駆動電圧の5%程度で十分である。
【0050】
(電圧指令値drvin>0の場合)
また、第1の制御パターンによれば、電圧指令値drvin>0の場合、オフセット制御部112は、図中Aに示すように、第1のモータ101の駆動電圧を、-offsetに一定にしつつ、第2のモータ102の駆動電圧が、オフセット電圧offsetから徐々に増加するように、第2のモータ102の駆動指令値drvout2を制御する。これにより、バックラッシュが解消された状態を維持したまま、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0051】
次に、オフセット制御部112は、図中Bに示すように、第2のモータ102の駆動電圧がdrvlimitに達し、第2のモータ102の出力が限界値に達すると、第2のモータ102の駆動電圧をdrvlimitに一定にするように、第2のモータ102の駆動指令値drvout2を制御する。
【0052】
その状態で、オフセット制御部112は、第1のモータ101の駆動電圧がオフセット電圧-offsetから徐々に上昇するように、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を制御する。これにより、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0053】
そして、電圧指令値drvinがdrvlimit/2に達したとき(すなわち、第1のモータ101の駆動電圧が-から+に切り替わるとき)、オフセット制御部112は、切替部115によって「モード1」に切り替えられる。以降、オフセット制御部112は、図5に示す第2の制御パターンに基づいて、オフセット制御を行う。
【0054】
(電圧指令値drvin<0の場合)
また、第1の制御パターンによれば、電圧指令値drvin<0の場合、オフセット制御部112は、図中A'に示すように、第2のモータ102の駆動電圧を、offsetに一定にしつつ、第1のモータ101の駆動電圧が、オフセット電圧-offsetから駆動電圧が徐々に減少するように、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を制御する。これにより、バックラッシュが解消された状態を維持したまま、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0055】
次に、オフセット制御部112は、図中B'に示すように、第1のモータ101の駆動電圧が-drvlimitに達し、第1のモータ101の出力が限界値に達すると、第1のモータ101の駆動電圧を-drvlimitに一定にするように、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を制御する。
【0056】
その状態で、オフセット制御部112は、図中B'に示すように、第2のモータ102の駆動電圧がオフセット電圧offsetから徐々に下降するように、第2のモータ102の駆動指令値drvout2を制御する。これにより、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0057】
そして、電圧指令値drvinが-drvlimit/2に達したとき(すなわち、第2のモータ102の駆動電圧が+から-に切り替わるとき)、オフセット制御部112は、切替部115によって「モード2」に切り替えられる。以降、オフセット制御部112は、図6に示す第3の制御パターンに基づいて、オフセット制御を行う。
【0058】
(第2の制御パターン)
図5は、本発明の第1実施形態に係るオフセット制御部112によるオフセット制御に用いられる第2の制御パターンを表すグラフである。図5に示す第2の制御パターンは、電圧指令値drvinが、drvlimit/2に達した以降、オフセット制御部112(モード1)によるオフセット制御に用いられるものである。
【0059】
(電圧指令値drvin>drvlimit/2の場合)
第2の制御パターンによれば、電圧指令値drvin>drvlimit/2の場合、オフセット制御部112は、図中Cに示すように、第2のモータ102の駆動電圧をdrvlimitに一定にしつつ、第1のモータ101の駆動電圧が、0から徐々に上昇するように、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を制御する。これにより、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0060】
そして、オフセット制御部112は、2つのモータ101,102の双方の駆動電圧がdrvlimitに達し、2つのモータ101,102の双方の出力が限界値に達すると、2つのモータ101,102の双方の駆動電圧をdrvlimitに一定にするように、2つのモータ101,102の駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0061】
(電圧指令値drvin<drvlimit/2の場合)
第2の制御パターンは、第1の制御パターンと比較して、電圧指令値drvin<drvlimit/2の場合、図中Dに示すように、第1のモータ101の負方向へのオフセットトルクが解消されたものとなっている。ここで、第1のモータ101の第2の制御パターンは、電圧指令値drvinがdrvlimit/2を下回った場合であっても、第1のモータ101の出力が0で一定であり、すなわち、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と反対方向に切り替わらないようになっている。これにより、2つのモータ101,102と駆動軸11との間において、バックラッシュを解消しつつ、振動を抑制することができるようになっている。
【0062】
なお、第2の制御パターンは、電圧指令値drvin<drvlimit/2の場合、第1のモータ101の負方向へのオフセットトルクが解消されたことに伴い、図中Dに示すように、第2のモータの正方向へのオフセットトルクも解消されたものとなっている。これにより、第2の制御パターンは、電圧指令値drvinが0になったときに、第1のモータ101および第2のモータ102の双方の出力を、0にすることが可能となっている。
【0063】
また、第2の制御パターンが用いられているときに、電圧指令値drvinが0を下回った場合、切替部115によって「モード1」から「モード0」に切り替えられる。これにより、オフセット制御部112が用いる制御パターンは、図4に示す第1の制御パターンに切り替えられる。このタイミングで、第1のモータ101,第2のモータ102には、駆動電圧が印加されていない状態から、オフセット電圧-offset,offsetが印加される。このとき、一度にオフセット電圧-offset,offsetを印加するのではなく、オフセット電圧-offset,offsetに至るまで徐々に電圧を印加することで、2つのモータ101,102の急激な駆動力の変化を抑制することができる。
【0064】
(第3の制御パターン)
図6は、本発明の第1実施形態に係るオフセット制御部112によるオフセット制御に用いられる第3の制御パターンを表すグラフである。図6に示す第3の制御パターンは、電圧指令値drvinが、-drvlimit/2に達した以降、オフセット制御部112(モード2)によるオフセット制御に用いられるものである。
【0065】
(電圧指令値drvin<-drvlimit/2の場合)
第3の制御パターンによれば、電圧指令値drvin<-drvlimit/2の場合、オフセット制御部112は、図中Eに示すように、第1のモータ101の駆動電圧を-drvlimitに一定にしつつ、第2のモータ102の駆動電圧が、0から徐々に下降するように、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を制御する。これにより、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0066】
そして、オフセット制御部112は、2つのモータ101,102の双方の駆動電圧が-drvlimitに達し、2つのモータ101,102の双方の出力が限界値に達すると、2つのモータ101,102の双方の駆動電圧を-drvlimitに一定にするように、2つのモータ101,102の駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0067】
(電圧指令値drvin>-drvlimit/2の場合)
第3の制御パターンは、第1の制御パターンと比較して、電圧指令値drvin>-drvlimit/2の場合、図中Fに示すように、第2のモータ102の正方向へのオフセットトルクが解消されたものとなっている。すなわち、第3の制御パターンは、電圧指令値drvinが-drvlimit/2を上回った場合であっても、第2のモータ102の出力が0で一定であり、すなわち、第2のモータ102から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と反対方向に切り替わらないようになっている。これにより、2つのモータ101,102と駆動軸11との間において、バックラッシュを解消しつつ、振動を抑制することができるようになっている。
【0068】
なお、第3の制御パターンは、電圧指令値drvin>-drvlimit/2の場合、第2のモータ102の正方向へのオフセットトルクが解消されたことに伴い、図中Fに示すように、第1のモータ101の負方向へのオフセットトルクも解消されたものとなっている。これにより、第3の制御パターンは、電圧指令値drvinが0になったときに、第1のモータ101および第2のモータ102の双方の出力を0にすることが可能となっている。
【0069】
また、第3の制御パターンが用いられているときに、電圧指令値drvinが0を上回った、切替部115によって「モード2」から「モード0」に切り替えられる。これにより、オフセット制御部112が用いる制御パターンは、図4に示す第1の制御パターンに切り替えられる。このタイミングで、第1のモータ101,第2のモータ102には、駆動電圧が印加されていない状態から、オフセット電圧-offset,offsetが印加される。このとき、一度にオフセット電圧-offset,offsetを印加するのではなく、オフセット電圧-offset,offsetに至るまで徐々に電圧を印加することで、2つのモータ101,102の急激な駆動力の変化を抑制することができる。
【0070】
以上説明したように、第1実施形態の駆動システム100によれば、電圧指令値drvinが、drvlimit/2を超えた場合、オフセット制御部112が用いる制御パターンを、第1の制御パターンから第2の制御パターンに切り替える。これにより、それ以降、電圧指令値drvinがdrvlimit/2を下回ったとしても、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と異なる方向にならないようにすることができる。このため、第1実施形態の駆動システム100によれば、2つのモータ101,102と駆動軸11との間において、バックラッシュを解消しつつ、振動を抑制することができる。
【0071】
また、第1実施形態の駆動システム100によれば、電圧指令値drvinが、-drvlimit/2を下回った場合、オフセット制御部112が用いる制御パターンを、第1の制御パターンから第3の制御パターンに切り替える。これにより、それ以降、電圧指令値drvinが-drvlimit/2を上回ったとしても、第2のモータ102から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と異なる方向にならないようにすることができる。このため、第1実施形態の駆動システム100によれば、2つのモータ101,102と駆動軸11との間において、バックラッシュを解消しつつ、振動を抑制することができる。
【0072】
〔第2実施形態〕
次に、図7図9を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。
【0073】
(駆動システム100'の構成)
図7は、本発明の第2実施形態に係る駆動システム100'の構成を示す図である。図7に示す第2実施形態の駆動システム100'は、駆動装置110の代わりに駆動装置110'を備えている。駆動装置110'は、切替部115を有していない点で、駆動装置110と異なる。駆動システム100'は、切替部115の代わりに、上位コントローラ120に、測定部121および補正部122を備えている。
【0074】
測定部121は、所定の測定期間内における電圧指令値drvinの範囲Rを測定する。例えば、測定部121は、電圧指令値drvinが、所定の閾値th付近で保持されている間、所定の測定期間内における電圧指令値drvinの範囲Rを測定する。所定の測定期間は、繰り返し実行されるシーケンスの開始時から終了時までの期間であり、測定タイミングの一例としては、繰り返し実行されるシーケンスの開始時に電圧指令値drvinの範囲Rを測定する。
【0075】
補正部122は、所定の条件を満たした場合、オフセット制御部112が用いる制御パターンを補正する。本実施形態では、補正部122は、測定部121によって電圧指令値の範囲Rが測定された場合、所定の閾値thが、当該範囲Rの範囲外に変更されるように、オフセット制御部112が用いる制御パターンを補正する。
【0076】
(補正部122による補正前の制御パターン)
図8は、本発明の第2実施形態に係るオフセット制御部112によるオフセット制御に用いられる制御パターン(補正部122による補正前の制御パターン)を表すグラフである。
【0077】
(電圧指令値drvin=0の場合)
図8に示す制御パターンによれば、電圧指令値drvin=0の場合、オフセット制御部112は、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向とは反対方向となるように、第1のモータ101に対して、電圧値を-offsetとする駆動指令値drvout1を出力する。同時に、オフセット制御部112は、第2のモータ102から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と同じ方向となるように、第2のモータ102に対して、電圧値をoffsetとする駆動指令値drvout2を出力する。これにより、駆動軸11に対し、2つのモータ101,102の双方から互いに逆方向の駆動力が加えられるため、駆動軸11と2つのモータ101,102との間のバックラッシュが解消されることとなる。
【0078】
(電圧指令値drvin>0の場合)
また、図8に示す制御パターンによれば、電圧指令値drvin>0の場合、オフセット制御部112は、図中Aに示すように、第1のモータ101の駆動電圧を、-offsetに一定にしつつ、第2のモータ102の駆動電圧が、オフセット電圧offsetから徐々に増加するように、第2のモータ102の駆動指令値drvout2を制御する。これにより、バックラッシュが解消された状態を維持したまま、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0079】
次に、オフセット制御部112は、図中Bに示すように、第2のモータ102の駆動電圧がdrvlimitに達し、第2のモータ102の出力が限界値に達すると、第2のモータ102の駆動電圧をdrvlimitに一定にするように、第2のモータ102の駆動指令値drvout2を制御する。
【0080】
その状態で、オフセット制御部112は、図中Bに示すように、第1のモータ101の駆動電圧がオフセット電圧-offsetから徐々に上昇するように、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を制御する。これにより、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0081】
そして、電圧指令値drvinがdrvlimit/2に達したとき、第1のモータ101の駆動電圧が-から+に切り替わる。すなわち、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と同じ方向に切り替わる。
【0082】
さらに、オフセット制御部112は、2つのモータ101,102の双方の駆動電圧がdrvlimitに達し、2つのモータ101,102の双方の出力が限界値に達すると、2つのモータ101,102の双方の駆動電圧をdrvlimitに一定にするように、2つのモータ101,102の駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0083】
(電圧指令値drvin<0の場合)
また、図8に示す制御パターンによれば、電圧指令値drvin<0の場合、オフセット制御部112は、図中A'に示すように、第2のモータ102の駆動電圧を、offsetに一定にしつつ、第1のモータ101の駆動電圧が、オフセット電圧-offsetから駆動電圧が徐々に減少するように、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を制御する。これにより、バックラッシュが解消された状態を維持したまま、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0084】
次に、オフセット制御部112は、図中B'に示すように、第1のモータ101の駆動電圧が-drvlimitに達し、第1のモータ101の出力が限界値に達すると、第1のモータ101の駆動電圧を-drvlimitに一定にするように、第1のモータ101の駆動指令値drvout1を制御する。
【0085】
その状態で、オフセット制御部112は、図中B'に示すように、第2のモータ102の駆動電圧がオフセット電圧offsetから徐々に下降するように、第2のモータ102の駆動指令値drvout2を制御する。これにより、駆動軸11に対して、その駆動方向と同じ方向へ加えるトルク(第2のモータ102の出力トルクと第1のモータ101の出力トルクとの合成トルク)を、徐々に高めることができる。
【0086】
そして、電圧指令値drvinが-drvlimit/2に達したとき、第2のモータ102の駆動電圧が+から-に切り替わる。すなわち、第2のモータ102から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と同じ方向に切り替わる。
【0087】
さらに、オフセット制御部112は、2つのモータ101,102の双方の駆動電圧が-drvlimitに達し、2つのモータ101,102の双方の出力が限界値に達すると、2つのモータ101,102の双方の駆動電圧を-drvlimitに一定にするように、2つのモータ101,102の駆動指令値drvout1,drvout2を制御する。
【0088】
(補正部122による補正後の制御パターン)
図9は、本発明の第2実施形態に係るオフセット制御部112によるオフセット制御に用いられる制御パターン(補正部122による補正後の制御パターン)を表すグラフである。
【0089】
図8および図9では、所定の測定期間内における電圧指令値drvinの範囲Rが示されている。この範囲Rは、例えば、電圧指令値drvinが、所定の閾値th付近で保持されている間、測定部121によって測定される。補正部122は、測定部121によって範囲Rが測定された場合、所定の閾値thが、当該範囲Rの範囲外に変更されるように、オフセット制御部112が用いる制御パターンを補正する。
【0090】
例えば、図8に示す補正前の制御パターンでは、電圧指令値drvinが所定の閾値thを下回った場合、第1のモータ101の駆動電圧が、+から-へ切り替わるようになっている。すなわち、電圧指令値drvinが所定の閾値thを下回った場合、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と反対方向に切り替わるようになっている。
【0091】
一方、図9に示す補正後の制御パターンでは、所定の閾値thが、範囲Rの範囲外(範囲Rの下限値よりも小さい値)に変更され、所定の閾値th'となっている。これにより、図9に示す補正後の制御パターンでは、電圧指令値drvinが元の所定の閾値thを下回った場合であっても、第1のモータ101の駆動電圧が、+から-へ切り替わらないようになっている。すなわち、電圧指令値drvinが元の所定の閾値thを下回った場合であっても、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、駆動軸11の駆動方向と反対方向に切り替わらないようになっている。
【0092】
このように、第2実施形態の駆動システム100'によれば、測定部121によって測定された電圧指令値drvinの範囲Rの範囲外に、所定の閾値th'が設定されるように、補正部122によって制御パターンを補正する。これにより、電圧指令値drvinが所定の閾値th付近で保持されている間、第1のモータ101から伝達されるトルクの方向が、頻繁に切り替わることを防止することができる。したがって、第2実施形態の駆動システム100'によれば、2つのモータ101,102と駆動軸11との間において、バックラッシュを解消しつつ、振動を抑制することができる。
【0093】
なお、上記第2実施形態において、補正部122が補正を行うトリガとなる所定の条件は、測定部121によって電圧指令値drvinの範囲Rが測定された場合に限らない。例えば、電圧指令値drvinが所定の閾値thを超えた場合を、補正部122が補正を行うトリガとなる所定の条件としてもよい。
【0094】
また、上記第2実施形態において、電圧指令値drvinの範囲Rは、予め定められていてもよい。この場合、例えば、電圧指令値drvinが範囲Rの範囲内にある状態が所定時間以上継続した場合、補正部122による補正を行うようにしてもよい。
【0095】
また、上記第2実施形態において、範囲Rを繰り返し測定し、範囲Rが測定される毎に、補正部122による補正を行うようにしてもよい。
【0096】
〔第1実施例〕
図10は、本発明の第1実施例に係るロボット700の一部概略構成を示す図である。図10にその一部(ロボットアームの関節部分)を示すロボット700は、産業用ロボット、家庭用ロボット等、ロボットアームを備える様々な用途のロボットが対象となり得る。図10に示すように、ロボット700は、支持体710、駆動装置720、およびアーム本体730を備えている。
【0097】
アーム本体730は、駆動装置720による駆動対象であり、その末端部分に有する回転軸710Aにおいて、支持体710によって回転自在に軸支されている。アーム本体730は、駆動装置720から出力される回転力によって、回転軸710Aを中心として回転可能である。
【0098】
駆動装置720は、第1のモータ101および第2のモータ102の回転を、複数段のギヤが組み合わせてなる減速機構によって出力フランジ721に伝達し、出力フランジ721を回転させる装置である。図10に示すように、駆動装置720は、出力フランジ721の回転軸が、アーム本体730の回転軸710Aと一致するように、支持体710の内部に配置され、複数の固定ネジ711によって、支持体710の内側に固定される。
【0099】
出力フランジ721は、複数の固定ネジ712によって、アーム本体730に固定される。これにより、出力フランジ721が回転すると、当該出力フランジ721に固定されたアーム本体730が回転することとなる。アーム本体730の回転方向および回転量(回転角度)の制御は、上位コントローラから第1のモータ101および第2のモータ102の回転方向および回転量(回転角度)を制御することによって、実現される。
【0100】
出力フランジ721の先端且つ中心には、インロー721Bが取り付けられており、当該インロー721Bがアーム本体730の凹み部に嵌め込まれることにより、出力フランジ721の中心が位置決めされる。また、出力フランジ721の表面から突出したピン721Aを、アーム本体730の他の凹み部にはめ込むことで、出力フランジ721の回転方向の位置決めおよび滑り止めがなされる。
【0101】
このように構成された本実施例のロボット700は、上記実施形態の駆動システム100(または、駆動システム100')を駆動装置720に適用して、出力フランジ721の駆動軸を、2つのモータ101,102によって駆動するように構成する。そして、上記実施形態で説明したとおり、2つのモータ101,102の駆動指令値drvout1,drvout2を、駆動装置110(または、駆動装置110')によって制御する。これにより、ロボット700において、2つのモータ101,102の合成トルクにより、出力フランジ721を駆動することができる。この際、2つのモータ101,102と出力フランジ721の駆動軸との間のバックラッシュを解消しつつ、振動の発生を抑制することができる。
【0102】
〔第2実施例〕
図11は、本発明の第2実施例に係る画像形成装置900の概略構成を示す図である。図11に示す画像形成装置900は、プリントサーバ910および本体920を備えている。プリントサーバ910には、印刷データが記憶されている。プリントサーバ910に記憶されている印刷データは、ユーザからの指示により、本体920へと送信される。
【0103】
本体920は、光学装置921、感光体ドラム922、現像ローラ923、転写ローラ924、転写ベルト925、転写ローラ926、定着装置927、搬送装置931、用紙トレイ932、搬送路933、排紙トレイ934、および記録紙935を備えている。
【0104】
本体920は、印刷データに色補正、濃度変換、小値化等の処理を行う。そして、本体920は、最終的に2値となった印刷データを、光学装置921に送る。
【0105】
光学装置921は、レーザダイオード等をレーザ光源として用いている。光学装置921は、一様に帯電した状態の感光体ドラム922に対して、印刷データに応じたレーザ光の照射を行う。
【0106】
感光体ドラム922は、一様に帯電した状態で、印刷データに応じたレーザ光が表面に照射されることにより、レーザ光が照射された部分だけ電荷が消失する。これにより、感光体ドラム922の表面には、印刷データに応じた潜像が形成される。ここで形成された潜像は、感光体ドラム922の回転に伴って、対応する現像ローラ923の方向へと移動する。
【0107】
現像ローラ923は、回転しながら、トナーカートリッジから供給されたトナーを、その表面に付着させる。そして、現像ローラ923は、その表面に付着されたトナーを、感光体ドラム922の表面に形成された潜像に付着させる。これにより、現像ローラ923は、感光体ドラム922の表面に形成された潜像を顕像化して、感光体ドラム922の表面にトナー像を形成する。
【0108】
感光体ドラム922の表面に形成されたトナー像は、感光体ドラム922と転写ローラ924との間において、転写ベルト925上に転写される。これにより、転写ベルト925上に、トナー画像が形成される。
【0109】
図11に示す例では、光学装置921、感光体ドラム922、現像ローラ923、および転写ローラ924は、4つの印刷色(Y,C,M,K)の各々に対して設けられている。これにより、転写ベルト925上には、各印刷色のトナー画像が形成される。
【0110】
搬送装置931は、用紙トレイ932から搬送路933へ、記録紙935を送出する。搬送路933に送出された記録紙935は、転写ベルト925と転写ローラ926との間に搬送される。これにより、転写ベルト925と転写ローラ926との間において、転写ベルト925上に形成された各印刷色のトナー画像が、記録紙935に転写される。その後、記録紙935は、定着装置927によって熱および圧力が加えられることにより、トナー画像が定着される。そして、記録紙935は、排紙トレイ934に搬送される。
【0111】
例えば、このように構成された画像形成装置900において、上記実施形態の駆動システム100(または、駆動システム100')を適用して、各種ローラ(例えば、給紙ローラ、搬送ローラ、2次転写ローラ、定着ローラ等)の駆動軸を、2つのモータ101,102によって駆動するように構成する。そして、上記実施形態で説明したとおり、2つのモータ101,102の駆動指令値drvout1,drvout2を、駆動装置110(または、駆動装置110')によって制御する。これにより、画像形成装置900において、2つのモータ101,102の合成トルクにより、各種ローラを駆動することができる。この際、2つのモータ101,102と各種ローラの駆動軸との間のバックラッシュを解消しつつ、振動の発生を抑制することができる。
【0112】
〔第3実施例〕
図12は、本発明の第3実施例に係る搬送装置1000の概略構成を示す図である。図12に示す搬送装置1000は、用紙Pを搬送するための装置である。図12に示すように、搬送装置1000は、搬送ローラ1001および搬送ローラ1002を備えている。搬送ローラ1001は、搬送ローラ1002との間に用紙Pを挟み込んで回転することにより、用紙Pを所定の搬送方向へ搬送する。
【0113】
例えば、このように構成された搬送装置1000において、図12に示すように、上記実施形態の駆動システム100(または、駆動システム100')を適用して、搬送ローラ1001の駆動軸を、2つのモータ101,102によって駆動するように構成する。そして、上記実施形態で説明したとおり、2つのモータ101,102の駆動指令値drvout1,drvout2を、駆動装置110(または、駆動装置110')によって制御する。これにより、搬送装置1000において、2つのモータ101,102の合成トルクにより、搬送ローラ1001を駆動することができる。この際、2つのモータ101,102と搬送ローラ1001の駆動軸との間のバックラッシュを解消しつつ、振動の発生を抑制することができる。
【0114】
以上、本発明の好ましい実施形態および実施例について詳述したが、本発明はこれらの実施形態および実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0115】
例えば、上記第1,第2,第3実施例では、本発明をロボット,画像形成装置,搬送装置に適用する例を説明したが、本発明は、2つのモータによって同一の駆動軸を駆動する構成を採用しているものであれば、如何なる装置にも適用することが可能である。
【0116】
一例として、本発明は、シート状のプリプレグや、紙幣等を搬送する搬送装置において、搬送ローラを駆動する構成に適用することができる。その他、本発明は、例えば自動車やロボットやアミューズメント機器等において、2つのモータによって駆動される駆動軸の回転運動により、動力を得ることを目的とする構成に適用することができる。
【符号の説明】
【0117】
11 駆動軸
100 駆動システム
101 第1のモータ
102 第2のモータ
103,104 ドライバ
105,106 エンコーダ
110 駆動装置
111 位置・速度制御部
112 オフセット制御部
113,114 PWM生成部
115 切替部
700 ロボット
900 画像形成装置
1000 搬送装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【文献】特開2013-009532号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12