(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】シート材搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B65H 9/00 20060101AFI20220511BHJP
B65H 7/14 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B65H9/00 A
B65H7/14
(21)【出願番号】P 2018084912
(22)【出願日】2018-04-26
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】大石 真也
(72)【発明者】
【氏名】戸坂 彰彦
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-323212(JP,A)
【文献】特開2004-299803(JP,A)
【文献】特開2017-137140(JP,A)
【文献】特開2014-065579(JP,A)
【文献】特開2013-091563(JP,A)
【文献】特開2009-051595(JP,A)
【文献】特開2007-007884(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 9/00
B65H 7/00
B65H 43/00
G03G 15/00
B41J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されることにより、シート材を挟持して搬送するローラ対と、
前記ローラ対を支持し、前記シート材が搬送される方向に直交する直交方向に移動可能な支持手段と、
前記直交方向における前記シート材の位置を検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の検出結果に基づいて、駆動源から供給される駆動力を前記支持手段へ伝達して、前記支持手段を移動させるシート材搬送装置であって、
前記位置検出手段で検出された前記直交方向における前記シート材の位置と、前記直交方向における前記シート材の所定の目標位置とに基づいて、前記直交方向における前記シート材の位置を補正する補正方向及び補正量を決定する決定手段と、
前記決定手段が決定した前記補正方向が、前記支持手段が前回移動した方向と異なる場合、前記駆動源は、
該駆動源から供給される駆動力を前記支持手段へ伝達する伝達経路におけるバックラッシ量に対応する所定量を前記補正量
に加算した量を駆動量として、駆動力を供給することを特徴とするシート材搬送装置。
【請求項2】
前記補正方向が、前記支持手段が前回移動した方向と同じ場合、前記駆動源は、前記補正量を駆動量として、駆動力を供給することを特徴とする請求項1記載のシート材搬送装置。
【請求項3】
前記位置検出手段は、前記シート材が搬送される方向における少なくとも一対の前記ローラ対の下流側に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記シート材が前記ローラ対に到達する前に、前記支持手段を前記直交方向に移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記所定量は変更可能であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載のシート材搬送装置。
【請求項6】
前記所定量を記憶する記憶手段を更に備え、
前記所定量は前記記憶手段の書き換え可能な記憶領域に記憶されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか記載のシート材搬送装置。
【請求項7】
駆動源から供給される駆動力を前記支持手段へ伝達する伝達経路におけるバックラッシ量を測定する測定手段を有し、前記測定手段が測定したバックラッシ量に基づき、前記所定量を変更することを特徴とする請求項5又は6記載のシート材搬送装置。
【請求項8】
前記測定手段は、動作回数が所定回数に達する毎に、前記バックラッシ量を測定することを特徴とする請求項7記載のシート材搬送装置。
【請求項9】
前記決定手段が決定した前記補正方向が、前記支持手段が前回移動した方向と異なる場合、前記駆動源は、前記補正量に
前記所定量を加算した量を駆動量として、駆動力を供給するとともに、
前記駆動力により前記支持手段を移動させた後、前記位置検出手段により前記直交方向における前記シート材の位置を検出し、この検出結果と前記目標位置に基づき、前記所定量を変更することを特徴とする請求項5乃至8のいずれか記載のシート材搬送装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかのシート材搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材搬送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート材が搬送される方向に直交する直交方向におけるシート材の位置ズレを補正するシート材搬送装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、ローラ対に挾持されるシート材の位置ずれを検知する検知手段と、ローラ対を移動させる移動手段とを有するものが記載されている。この装置では、ローラ対がシート材を挟持する前にローラ対を移動させ、その後、シート材を挾持したローラ対を移動させることにより、シート材を所定の目標位置に精度良く移動させることができるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、シート材が搬送される方向に直交する直交方向に、シート材を精度良く移動させつつ、生産性の高いシート搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、回転駆動されることにより、シート材を挟持して搬送するローラ対と、前記ローラ対を支持し、前記シート材が搬送される方向に直交する直交方向に移動可能な支持手段と、前記直交方向における前記シート材の位置を検出する位置検出手段と、前記位置検出手段の検出結果に基づいて、駆動源から供給される駆動力を前記支持手段へ伝達して、前記支持手段を移動させるシート材搬送装置であって、前記位置検出手段で検出された前記直交方向における前記シート材の位置と、前記直交方向における前記シート材の所定の目標位置とに基づいて、前記直交方向における前記シート材の位置を補正する補正方向及び補正量を決定する決定手段と、前記決定手段が決定した前記補正方向が、前記支持手段が前回移動した方向と異なる場合、前記駆動源は、該駆動源から供給される駆動力を前記支持手段へ伝達する伝達経路におけるバックラッシ量に対応する所定量を前記補正量に加算した量を駆動量として、駆動力を供給することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、シート材が搬送される方向に直交する直交方向に、シート材を精度良く移動させつつ、生産性の高いシート搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシート位置補正制御装置を備えたプリンタ本体の断面の一例を示す概略構成図。
【
図2】本実施形態に係るシート材位置補正装置を上方からみた斜視図。
【
図3】本実施形態に係るシート材位置補正装置を下方からみた斜視図。
【
図4】本実施形態に係るシート材位置補正装置の側面図。
【
図5】本実施形態に係るシート材位置補正装置におけるシフトブロックの近傍を示す拡大斜視図。
【
図6】本実施形態に係るシート材位置補正装置におけるサイドエッジ位置検知センサ部の動作例を示す説明図。
【
図7】本実施形態に係るシート材位置補正装置のシート材の位置補正時における搬送ローラ対及びエッジ位置センサの動作例を示す説明図。
【
図8】
図7に続く搬送ローラ対及びサイドエッジ位置検知センサの動作例を示す説明図。
【
図9】(A)~(C)は本実施形態に係るシート材位置補正装置の従動ローラの位置補正時における搬送ローラ対の動作例を示す説明図。
【
図10】(A)~(C)は
図9に続く搬送ローラ対の動作例を示す説明図。
【
図11】本実施形態に係るシート材位置補正装置における制御系の要部構成の一例を示すブロック図。
【
図12】本実施形態に係るシート材位置補正装置におけるシート材の幅方向における位置補正の一例を示す説明図。
【
図13】本実施形態に係るシート材位置補正装置の変形例を示す説明図。
【
図14】比較例であるシート材位置補正装置30の制御フロー図。
【
図15】本実施形態に係るシート材位置補正装置の制御フロー図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係るシート材搬送装置としてのシート材位置補正装置30を備えたプリンタ本体1の断面の一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、画像形成装置としてのプリンタ本体1は中間転写ベルト16が設けられている。この中間転写ベルト16は複数のローラに張架されて走行可能であり、図中の上側には、イエローY、シアンC、マゼンタM、ブラックKの各感光体12が設けられている。各感光体12の周囲にはそれぞれ、レーザ走査ユニット10、帯電器11、現像機13、中間転写ベルト16を挟んで1次転写ローラ14等が配設されている。
【0010】
上記中間転写ベルト16の下部には2次転写ローラ15が設けられており、中間転写ベルト16上に1次転写されたトナー像を用紙20に2次転写する。2次転写ローラ15が設けられた2次転写部の用紙搬送方向下流側には定着装置17が設けられている。これら2次転写部及び定着装置17の下側のプリンタ本体1のほぼ中央であって、用紙20が搬送される搬送路19の途中に、シート材位置補正装置30が設けられている。このシート材位置補正装置30については、後述する。また、プリンタ本体1の上側には操作パネル3が設けられ、左側面には排紙トレイ4が設けられている。さらに、シート材位置補正装置30の下側であってプリンタ本体1の下部に、用紙20を積載する第1~第3の3つの給紙トレイ5が備えられている。第1~第3の給紙トレイ5にはそれぞれ、転写紙又は樹脂フィルムなどから成る用紙20が格納されており、ユーザは操作パネル3やPC等の入力端末により、給紙に使用する第1~第3の給紙トレイ5を選択することができる。また、プリンタ本体1やシート材位置補正装置30を制御するCPU、ROM、RAMなどで構成される制御手段としての制御装置が設けられている。
【0011】
上記構成のプリンタ本体1でプリントが開始されると、まず各感光体12が図における反時計回り方向に回転駆動され、このとき帯電器11によって感光体12の表面が所定の極性に帯電される。次いで、各感光体12の帯電面に、各色のレーザ走査ユニット10から画像情報に基づくレーザ光が照射され、これによって感光体12に静電潜像が形成される。そして、感光体12の表面に形成された静電潜像は、現像機13によってトナー像として可視像化され、そのトナー像は1次転写ローラ14によって中間転写ベルト16に転写される。なお、トナー像転写後の感光体12の表面に付着する転写残トナーは感光体クリーナーによって除去される。
【0012】
カラー画像形成時は、上述した画像形成動作が全ての感光体12で行われ、これによって各感光体12にそれぞれ形成されたイエロートナー像、シアントナー像、マゼンタトナー像及び黒トナー像が中間転写ベル16上に順次重ねて転写される。
【0013】
一方、プリンタ本体1の下部に備えられた第1~第3の給紙トレイ5のうち、ユーザが操作パネル3又はPC等の入力端末を操作して選択された給紙トレイ5に格納された転写紙又は樹脂フィルムなどから成る用紙20が給紙される。給紙された用紙20は、レジストローラ18に向けて送り出され、その先端が停止しているレジストローラ18に突き当てられる。これによって用紙20が整合された後、レジストローラ18は2次転写ローラ15が設けられた上記中間転写ベルト16の2次転写部に向けて用紙20を上記トナー像と合致するタイミングで送り出す。そして、2次転写ローラ15によって中間転写ベルト16上のトナー像が用紙20に転写される。トナー像が転写された用紙20は、定着部17に送られ、未定着のトナー像が定着された後、排紙トレイ4に排出される。なお、トナー像の転写後に中間転写ベルト16の表面に付着する転写残トナーは、中間転写ベルト用のクリーナーによって除去される。
【0014】
ユーザが操作パネル3又はPC等の入力端末を操作して、用紙20の両面印刷を選択した場合、第一面に画像が形成された用紙20は、分岐爪23により搬送経路を切り替えることで両面経路へと搬送され、反転ローラ21に送り出される。分岐爪23により反転ローラ21へ送り出された用紙20は、反転ローラ21の正逆転により、シート材位置補正装置30の両面ローラ35(後述の
図2参照)へ搬送される。この際、用紙20の搬送方向に対する表裏は第一面画像形成時と反転する。そして、中継ローラ22からレジストローラ18まで用紙20が搬送された後は、上述したのと同様のプロセスで第二面にも画像形成を施した後、排紙トレイ4に排出される。
【0015】
上記構成のプリンタ本体1に対して、ユーザはオプションにより、大量の用紙を給紙可能な給紙バンクを接続したり、排紙トレイ4の代わりに、スティプル綴じや折りを施すことの出来るフィニッシャーを接続したりすることも可能である。
【0016】
上記用紙20の両面に画像形成する場合、第一面画像と第二面画像との表裏位置を合わせるために、両面搬送の搬送位置でシート材位置補正装置30を備えている。
【0017】
以下、
図2~
図10を用いて、本実施形態に係るシート材位置補正装置30の構成例及び動作例について詳しく説明する。
【0018】
図2は、本実施形態に係るシート材位置補正装置を上方からみた斜視図であり、
図3は同シート材位置補正装置を下方からみた斜視図である。
図4は同シート材位置補正装置の側面図である。
図5は同シート材位置補正装置におけるシフトブロックの近傍を示す拡大斜視図である。また、
図6は本実施形態に係るシート材位置補正装置におけるサイドエッジ位置検知センサ部の動作例を示す説明図である。
【0019】
シート材位置補正装置30は、複数の回転駆動可能な搬送ローラ対31~34が設置され、シート材Pを挟持して搬送する搬送手段の機能に加えて、シート材Pを幅方向に移動してシート材Pの幅方向の位置を補正する移動手段の機能も有している。ここで、幅方向とは、シート材Pが搬送される方向に直交する直交方向である。
【0020】
図2~4に示すように、シート材位置補正装置30は、4つの搬送ローラ対31~34、上ガイド板35、下ガイド板36、位置検出手段としてのエッジ位置検知センサ部60、2つのシフトブロック41、2つの移動モータ45等で構成されている。4つの搬送ローラ対31~34は、それぞれ、駆動ローラ31A~34Aと従動ローラ31B~34Bとからなり、シート材Pを挟持搬送する搬送手段としての機能を有している。
【0021】
また、
図2に示すように、4つの駆動ローラ31A~34Aはそれぞれ、軸部上に間隔をあけて2つのローラ部が形成されたものである。例えば
図2では、軸部34A1とローラ部34A2とを参照できる。駆動ローラ31A~34Aは、幅方向(軸方向、主走査方向)の両端部が上ガイド板35上の支持部にそれぞれ回転可能に支持されていて、駆動モータ(例えばDCモータ)等からなる駆動手段(駆動機構)によって時計回り方向に回転駆動される。更に、駆動ローラ31A~34Aは、シート材Pの幅方向の位置補正時(主走査方向のレジスト補正時)や従動ローラの位置補正時に、後述する移動手段41、42、45~50によって幅方向に移動可能に構成されている。上ガイド板35は、シート材Pの搬送をガイドするとともに、駆動ローラ31A~34Aのローラ部が従動ローラ31B~34Bのローラ部に当接するように露呈させる開口部35aが形成されている。
【0022】
また、
図3に示すように、4つの従動ローラ31B~34Bはそれぞれ、軸部上に間隔をあけて2つのローラ部が形成されたものである。例えば
図3では、軸部34B1とローラ部34B2とを参照できる。従動ローラ31B~34Bは、幅方向の両端部が軸受80(加圧スプリングで駆動ローラ側に加圧されている。)を介して下ガイド板36上にそれぞれ回転可能に支持されている。下ガイド板36は、シート材Pの搬送をガイドするとともに、従動ローラ31B~34Bのローラ部が駆動ローラ31A~34Aのローラ部に当接するように露呈させる開口部36aが形成されている。
【0023】
このような構成により、従動ローラ31B~34Bのローラ部と、駆動ローラ31A~34Aのローラ部とが圧接して、その間にシート材Pが挟持されることになる。また、従動ローラ31B~34Bは、駆動手段に直接的に接続されていないが、駆動ローラ31A~34Aとの摩擦抵抗によって、駆動手段による駆動ローラ31A~34Aの回転駆動にともない反時計回り方向に従動回転することになる。さらに、従動ローラ31B~34Bは、移動手段41、42、45~50に直接的に接続されていないが、駆動ローラ31A~34Aに加圧して当接している。これにより、従動ローラ31B~34Bは、駆動ローラ31A~34Aとの摩擦抵抗によって、移動手段41、42、45~50による駆動ローラ31A~34Aの幅方向の移動にともない幅方向に従動可能に構成されている。
【0024】
また、
図2、
図5等に示すように、2つの駆動ローラ31A、32A(又は、33A、34A)を支持する支持手段としての2つのシフトブロック41(可動板)はそれぞれ、上ガイド板35の軸部42に沿って幅方向に移動可能に取り付けられている。また、1つのシフトブロック41の両端の保持部41aに、2つの駆動ローラ31A、32A(又は、33A、34A)の軸部にそれぞれ固定されているブッシュ71が保持されている。このような構成により、シフトブロック41が幅方向に移動すると、保持部41aがブッシュ71の端面を押圧して、2つの駆動ローラ31A、32A(又は、33A、34A)もシフトブロック41とともに幅方向に移動することになる。
【0025】
また、
図3に示すように、シフトブロック41には、それぞれラック50が形成されていて、上ガイド板35に回動可能に配置されたプーリギヤ48のギア部48aと噛み合っている。移動モータ45(
図2参照)は、例えばステッピングモータで構成され、上ガイド板35に配置されている。そして、プーリギヤ48のプーリ部48bと、移動モータ45に固定されているモータプーリ49と、にタイミングベルト47が巻装されている。
【0026】
このような構成のベルト駆動部46において、駆動源としての移動モータ45が駆動すると、モータプーリ49、タイミングベルト47、プーリギヤ48、ラック50へと駆動力が伝達される。ラック50に伝達された動力により、支持手段としてのシフトブロック41が幅方向に移動して、それに連動して駆動ローラ31A~34Aも幅方向に移動することになる。すなわち、上述した複数の構成部材41、42、45~50が、駆動ローラ31A~34Aを幅方向に移動する移動手段として機能することになる。
【0027】
また、
図5に示すように、上ガイド板35上には、シフトブロック41(駆動ローラ31A、32A)の幅方向の位置を検知する位置検知センサ75が配置されている。詳しくは、位置検知センサ75は、発光素子と受光素子とからなるフォトセンサであって、シフトブロック41に形成された突起部41bの有無を光学的に検知することにより、シフトブロック41(駆動ローラ31A、32A)の幅方向の位置を検知する。そして、シフトブロック41(駆動ローラ31A、32A)を所定の幅方向位置に位置させることが可能となる。
【0028】
なお、本実施形態では、4つの駆動ローラ31A~34Aを幅方向に移動可能としているが、これは、搬送方向の長さの異なる種々のサイズのシート材Pに対応するためである。具体的に、最長のシート材Pが通紙される場合には、4つの搬送ローラ対31~34でシート材Pを挟持した状態で、シート材Pの幅方向の移動が実施され、主走査方向のレジスト補正が実施される。これに対して、最短のシート材Pが通紙される場合には、用紙Pの搬送方向下流側の2つの搬送ローラ対33、34でシート材Pを挟持した状態で、シート材Pの幅方向の移動が実施され、主走査方向のレジスト補正が実施される。
【0029】
また、本実施形態では、4つの駆動ローラ31A~34Aのうち、上流側の2つの駆動ローラ31A、32Aが一方のシフトブロック41によって幅方向に移動されるように構成している。一方、4つの駆動ローラ31A~34Aのうち、下流側の2つの駆動ローラ33A、34Aが他方のシフトブロック41によって幅方向に移動されるように構成している。これは、1つの駆動源(移動手段)によって4つの駆動ローラ31A~34Aを同時に幅方向へ移動させるように構成してしまうと、次のような問題が発生するためである。すなわち、短いシート材Pを下流側の2つの駆動ローラ33A、34Aで移動させるときに、上流側の駆動ローラ31A、32Aの位置に達している次のシート材Pまで、幅方向に移動させてしまうという問題が発生するためである。
【0030】
また、
図2、
図4、
図6等に示すように、上ガイド板35上であって下流側の2つの駆動ローラ33A、34Aの間の位置には、シート材Pの幅方向端部の位置を検知する検知手段としてのエッジ位置検知センサ部60が設けられている。詳しくは、エッジ位置検知センサ部60(検知手段)は、ケース61、ブラケット62、エッジ位置検知センサ63、プーリ64、タイミングベルト65、等で構成されている。エッジ位置検知センサ63は、ブラケット62に固定されている。また、ブラケット62は、ケース61の軸部61aに沿って幅方向に移動可能に、ケース61に取り付けられている。また、ブラケット62にはタイミングベルト65が固定されており、ケース61に回動可能に配置されたプーリ64と、センサ用モータ68(上ガイド板35上に固設されている。)のモータプーリ66と、にはタイミングベルト65が巻装されている。
【0031】
このような構成により、センサ用モータ68が稼働すると、モータプーリ66、タイミングベルト65に動力が伝達されて、ブラケット62に固定されたエッジ位置検知センサ63が幅方向に移動することになる。また、ケース61には、センサ位置検知センサ67が配置されており、センサ位置検知センサ67がブラケット62に形成された突起部62aを検知することにより、ブラケット62に固定されたエッジ位置検知センサ63の幅方向位置を検知する。そして、エッジ位置検知センサ63を任意の幅方向位置に移動させることが可能となる。
【0032】
次に、
図7、
図8を用いて、シート材Pのエッジ(側端)の位置を検知して主走査方向のレジスト補正(幅方向位置補正)を行う動作例について説明する。
【0033】
図7は本実施形態に係るシート材位置補正装置のシート材の位置補正時における搬送ローラ対及びエッジ位置センサの動作例を示す説明図である。また、
図8は、
図7に続く搬送ローラ対及びサイドエッジ位置検知センサの動作例を示す説明図である。なお、ここでは、搬送方向の長さが短いシート材Pが通紙された場合についてのみ説明して、搬送方向の長さが長いシート材Pが通紙された場合についての説明は省略する。
【0034】
図7に示すように、シート材位置補正装置30の位置に達したシート材Pは、回転する搬送ローラ対31、34に挟持されて搬送されながら、上ガイド板35と下ガイド板36との間を移動する(白矢印方向の移動である。)。そして、シート材Pの先端が第3の搬送ローラ対33の位置を通過してエッジ位置検知センサ部60の位置に到達すると、幅方向一端側の所定位置(ホームポジション)に待機していたエッジ位置検知センサ63が、シート材Pに近づく方向に移動を開始する。エッジ位置検知センサ63は、シート材Pのエッジを検知する位置まで移動する(ハッチング矢印方向の移動である。)。
【0035】
そして、センサ用モータ68(ステッピングモータ)によってエッジ位置検知センサ63をホームポジションからシート材Pのエッジ位置まで動作させたときのパルス数から、その移動距離を算出する。そして、算出した移動距離と、ホームポジションからシート材Pのエッジまでの狙いの距離とを比較して、その距離の差をシート材Pの補正量(主走査方向のレジスト補正量)とする。
【0036】
次に、
図8に示すように、シート材Pの先端(搬送方向先端)が第4の搬送ローラ対34の位置に達すると、下流側の2つの搬送ローラ対33、34でシート材Pを挟持した状態で、移動モータ45を稼働して駆動ローラ33A、34Aの幅方向の移動を開始する。そして、算出されたシート材Pの補正量(主走査方向のレジスト補正量)だけ駆動ローラ33A、34Aを幅方向に移動させる(
図8の黒矢印方向の移動である。)。これにより、シート材Pを狙いの幅方向位置に移動させ、主走査方向のレジスト補正を行うことができる。
【0037】
ここで、搬送ローラ対33、34によってシート材Pを挟持した状態で駆動ローラ33A、34Aを幅方向に移動させたときに、駆動ローラ33A、34Aに向けて圧接している従動ローラ33B、34Bも幅方向に移動可能である。このため、従動ローラ33B、34Bは、駆動ローラ33A、34Aとともに同等に移動する。
【0038】
しなしながら、シート材Pと従動ローラ33B、34Bとの間ですべりが発生して、駆動ローラ33A、34Aやシート材Pが移動した量よりも従動ローラ33B、34Bが少ない量で移動することがある。すなわち、主走査方向のレジスト補正時において、シート材Pと従動ローラ33B、34Bとの間ですべりが発生すると、駆動ローラ33A、34Aに対する従動ローラ33B、34Bの幅方向の位置にズレが生じてしまう。そして、このような状態が繰り返されるうちに、駆動ローラ33A、34Aに対する従動ローラ33B、34Bの幅方向の位置が大きくズレて、駆動ローラ33A、34Aのローラ部と従動ローラ33B、34Bのローラ部とが当接しなくなってしまう。すると、駆動ローラ33A、34Aと従動ローラ33B、34Bとによってシート材Pを挟持・搬送できなくなってしまう。
【0039】
本実施形態では、このような不具合を防止するために、所定のタイミングで駆動ローラ33A、34Aと従動ローラ33B、34Bとの幅方向の相対位置の補正動作を行っている。この補正動作について、
図9及び
図10を用いて詳細に説明する。
【0040】
図9(A)~(C)は本実施形態に係るシート材位置補正装置の従動ローラ33B、34Bの位置補正時における搬送ローラ対33、34の動作例を示す説明図である。また、
図10(A)~(C)は、
図9に続く搬送ローラ対33、34の動作例を示す説明図である。
【0041】
本実施形態に係るシート材位置補正装置30には、従動ローラ31B~34Bに当接可能に形成されて、従動ローラ31B~34Bの幅方向の移動範囲を制限するストッパ部が設けられている。具体的に、このストッパ部として、下ガイド板36の開口部36aの縁部である両端部36a1、36a2(
図9、
図10等を参照)が用いられている。すなわち、開口部36aの両端部36a1、36a2(ストッパ部)が幅方向に移動する従動ローラ31B~34Bのローラ部の幅方向両端部に当接することで、従動ローラ31B~34Bの幅方向の移動範囲が制限される。
【0042】
そして、駆動ローラ31A~34Aと従動ローラ31B~34Bとの間にシート材Pが挟持されていないとき(例えば、通紙ジョブ直後である。)に、従動ローラ31B~34Bの軸方向の補正動作を行う。具体的には、駆動ローラ31A~34Aに対して幅方向の位置がズレた状態の従動ローラ31B~34Bがストッパ部36a1、36a2に当接するまで移動手段41、42、45~50によって駆動ローラ31A~34Aを幅方向一端側に向けて移動させる。その後も従動ローラ31B~34Bがストッパ部36a1、36a2に当接した状態で移動手段41、42、45~50によって駆動ローラ31A~34Aを幅方向一端側に向けて所定位置までさらに移動させる。これにより、駆動ローラ31A~34Aに対する従動ローラ31B~34Bの幅方向の位置を補正する。
【0043】
ここで、このような駆動ローラ31A~34Aに対する従動ローラ31B~34Bの幅方向の位置を補正する制御は、移動手段41、42、45~50によって駆動ローラ31A~34Aを幅方向の一方に向けて所定位置まで移動させる。その後に駆動ローラ31A~34Aを幅方向の他方に向けて所定位置まで移動させるものである。すなわち、従動ローラ31B~34Bの位置補正時に、駆動ローラ31A~34Aは、幅方向一端側(開口部36aの一方の端部36a1の側である。)の所定位置まで移動される。その後に、幅方向他端側(開口部36aの他方の端部36a2の側である。)の所定位置まで移動されることになる。
【0044】
なお、上述した「所定位置」は、ストッパ部36a1、36a2に当接した状態の従動ローラ31B~34Bに対して駆動ローラ31A~34Aの幅方向における、双方のローラ部の幅方向中心がほぼ一致する正規の位置になるように設定された位置である。
【0045】
以下、
図9及び
図10を用いて、上述した従動ローラ31B~34Bの位置補正時の動作について詳述する。なお、ここでは、シート材Pの搬送方向下流側の2つの従動ローラ33B、34Bの位置補正について説明する。より具体的には、第3の従動ローラ33Bが幅方向の一方(
図9及び
図10の上方)に位置ズレしていて、第4の従動ローラ34Bが幅方向の他方(
図9及び
図10の下方)に位置ズレしている場合(
図9(A)参照)を、例として説明する。
【0046】
図9(A)~(C)は図中の上方向に位置ずれしている第3の従動ローラ33Bの位置補正を説明するための動作例を示している。また、
図10(A)~(C)は図中の下方向に位置ずれしている第4の従動ローラ34Bの位置補正を説明するための動作例を示している。
【0047】
従動ローラ33B、34Bの位置補正は、シート材Pが搬送ローラ対33、34の位置を通過して、搬送ローラ対33、34がシート材Pを挟持していない状態で行う。まず、
図9(A)及び
図9(B)に示すように、移動手段41、42、45~50を稼働して駆動ローラ33A、34Aを幅方向の一方(図中の上方)に向けて移動させる。すると、
図9(A)に示す状態から
図9(B)に示す状態へ駆動ローラ33A、34Aが移動する。このとき、従動ローラ33B、34Bは、駆動ローラ33A、34Aとの位置がズレた状態のまま、駆動ローラ33A、34Aとともに同等に移動する。
【0048】
そして、
図9(B)に示すように、移動した側に位置ズレが生じていた第3の従動ローラ33Bのローラ部が、開口部36aの一方の端部36a1(ストッパ部)に当接する。さらに、
図9(C)に示すように、移動手段41、42、45~50の稼働が続けられて駆動ローラ33A、34Aが幅方向の一方に向けてさらに移動する。このとき第3の従動ローラ33Bはストッパ部36a1に当接して移動が制限されることになるため、駆動ローラ33Aとの摩擦抵抗に抗するように、その位置に留まることになる。
【0049】
そして、
図9(C)に示す状態において、駆動ローラ33A、34Aが幅方向の一方の所定位置に停止したとき、第3の駆動ローラ33Aに対する第3の従動ローラ33Bの位置補正がされることになる。なお、
図9(A)~
図9(C)の過程は、幅方向一方に位置ズレが生じている第3の従動ローラ33Bの位置補正を行うものであって、幅方向他方に位置ズレが生じている第4の従動ローラ34Bの位置補正は行われない。
【0050】
次に、第3の従動ローラ33Bの位置補正が終了した後に、
図9(C)及び
図10(A)に示すように、移動手段41、42、45~50を稼働して駆動ローラ33A、34Aを幅方向の他方(図中の下方)に向けて移動させる。すると、
図9(C)に示す状態から
図10(A)に示す状態へ駆動ローラ33A、34Aが移動する。このとき、2つの従動ローラ33B、34Bは、対応する駆動ローラ33A、34Aとの相対的な位置を維持した状態のまま、駆動ローラ33A、34Aとともに同等に移動する。
【0051】
そして、
図10(A)に示すように、移動した側に位置ズレが生じていた第4の従動ローラ34Bのローラ部が、開口部36aの他方の端部36a2(ストッパ部)に当接する。さらに、
図10(B)に示すように、移動手段41、42、45~50の稼働が続けられて駆動ローラ33A、34Aが幅方向の他方に向けてさらに移動する。このとき第4の従動ローラ34Bはストッパ部36a2に当接して移動が制限されることになるため、駆動ローラ34Aとの摩擦抵抗に抗するように、その位置に留まることになる。
【0052】
そして、
図10(B)に示す状態において、駆動ローラ33A、34Aが幅方向の他方の所定位置に停止したとき、第4の駆動ローラ34Aに対する第4の従動ローラ34Bの位置補正がされることになる。なお、
図10(A)~
図10(B)の過程は、幅方向他方(図中の下方)に位置ズレが生じている第4の従動ローラ34Bの位置補正を行うものであって、既に位置補正がされた状態の第3の従動ローラ33Bのさらなる位置補正は行われない。
【0053】
このように、駆動ローラ33A、34Aを幅方向の双方向にそれぞれ移動させることで、従動ローラ33B、34Bが幅方向のどちらに位置ズレしていても、その位置補正を確実に行うことができる。そして、最後に、
図10(C)に示すように、双方の従動ローラ33B、34Bの位置補正が終了した後に、移動手段41、42、45~50を稼働して駆動ローラ33A、34Aを幅方向の一方(図中の上方)に向けて移動させる。その後、移動手段41、42、45~50の稼働を停止して、駆動ローラ33A、34Aのローラ部と従動ローラ33B、34Bのローラ部とをそれぞれ開口部36aの幅方向中央に位置させる。そして、次の通紙ジョブに備えることになる。
【0054】
図11は、本実施形態に係るシート材位置補正装置30における制御系の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0055】
シート材位置補正装置30は、例えばマイクロコンピュータ等のコンピュータ装置で構成された制御手段としての制御部500を備えている。制御部500には、I/Oインターフェース部505を介して、シート材Pの幅方向の位置を検出するエッジ位置検知センサ部60、搬送ローラ対31~34を支持するシフトブロック41をシート材Pの幅方向に移動させる移動モータ45が接続されている。ここで、エッジ位置検知センサ部60は、センサで検出した情報を制御部500に送り出す。また、制御部500には、I/Oインターフェース部505を介して、搬送ローラ対31~34を駆動してシート材Pを搬送方向に搬送する搬送ローラ対駆動モータ70が接続されている。
【0056】
制御部500は、CPU(Central Processing Unit)501を備える。また、CPU501にバスライン502を介して接続された記憶手段としてのROM(Read Only Memory)503及びRAM(Random Access Memory)504と、I/Oインターフェース部505とを備えている。CPU501は、予め組み込まれているコンピュータプログラムである制御プログラムを実行することにより、各種演算や各部の駆動制御を実行する。ROM503は、コンピュータプログラムや制御用のデータ等の固定的データを予め記憶する。RAM504は、各種データを書き換え自在に記憶するワークエリア等として機能する。なお、制御部500は、マイクロコンピュータ等のコンピュータ装置ではなく、例えばシート材位置補正装置30における制御用に作製された半導体回路素子としてのICなどを用いて構成してもよい。
【0057】
上記移動モータ45として、例えば、ステッピングモータを用いることができる。移動モータ45としてステッピングモータを用いる場合、制御部500はモータドライバを有し、このモータドライバを介して移動モータ45をオープンループ制御してもよい。つまり、制御部500からの制御命令に基づいてモータドライバは移動モータ45に対して所定のパルス数を出力し、このパルス数だけ移動モータ45を回転駆動して停止させることができる。これにより、搬送ローラ対31~34を支持するシフトブロック41をシート材Pの幅方向に移動させて、所定の目標位置に停止させることができる。ここで、ギア部48aの歯面間の遊びやタイミングベルト47のたるみ等によるバックラッシの影響を受ける場合がある。この場合には、シート材Pの幅方向の位置補正量に応じた所定のパルス数で移動モータ45を回転駆動しても、シフトブロック41の実際の移動量が不足してしまうおそれがある。すると、シート材Pの幅方向の位置を目標位置に補正することができなくなってしまう。この問題は、移動モータ45を回転駆動しながらシート材Pの幅方向の位置をフィードバックするクローズドループ制御によって解決することも考えられるが、オープンループ制御に比べて装置構成が複雑となりコストアップしてしまう。
【0058】
次に、シート材Pの搬送方向と直交する幅方向の位置補正について説明する。
【0059】
図12は、本実施形態に係るシート材位置補正装置30におけるシート材Pの幅方向における位置補正の一例を示す説明図である。
図12の矢印(a)は、
図9及び
図10を用いて説明した位置補正において、駆動ローラ33A、34Aのローラ部と従動ローラ33B、34Bのローラ部とをそれぞれ開口部36aの幅方向中央に位置させる戻し制御を実施した際の最後の移動方向である。この状態において、次の通紙ジョブに対する主走査方向のシート材補正を実施することとなる。
【0060】
図12において、プリンタ本体1の記憶手段内に記憶されたシート材Pの幅方向の理想位置Ltgt0が所定の目標位置としての補正目標となるが、シート材Pはシート材位置補正装置30に至るまでに、多くのユニットやローラ対を通過してくることになる。その際、シート材Pはある程度のバラツキ(最大外側位置Lfmax-最大内側位置Lrmax)をもってシート材位置補正装置30に至る。シート材Pが、シート材Pの搬送方向の左端部が理想位置Ltgt0~最大外側位置Lfmaxの間で搬送されてくれば、矢印(c)の方向へ補正する制御が入る。一方、シート材Pが、シート材Pの搬送方向の左端部が理想位置Ltgt0~最大内側位置Lfmaxの間で搬送されてくれば、矢印(b)の方向へ補正する制御が入る。
【0061】
ここで、シート材Pを矢印(b)の方向へ補正する場合、上述した搬送ローラ対33、34の戻し制御で最後に動いた方向と補正方向とが同じ方向である。このため、シート材Pを幅方向に移動させるシフト動作の駆動列としての移動手段41、42、45~50におけるギア部48aの歯面間の遊びやタイミングベルト47のたるみ等によるバックラッシの影響はない。これに対して、シート材Pを矢印(c)の方向へ補正する場合、移動手段41、42、45~50におけるギア部48aの歯面間の遊びやタイミングベルト47のたるみ等によるバックラッシの影響が発生する。この結果として、シート材Pの位置補正量が不足し、理想位置Ltgt0から最大外側位置Lfmax側に寄った位置にシート材Pは補正されることになる。搬送ローラ対33、34及び搬送ローラ対31、32で各々のメカ構成によってギア部48aの歯面間の遊びやタイミングベルト47のたるみ等によるバックラッシの大きさは異なる。このため、シート材Pは主走査方向のレジスト位置にズレが生じるだけでなく、シート材Pが傾くスキューの状態を作りだすことにも繋がってしまう。
【0062】
図13は、本実施形態に係るシート材位置補正装置の変形例を示す説明図である。シート材搬送装置としてのシート材位置補正装置30は、駆動源としての移動モータ45から供給される駆動力を支持手段としてのシフトブロック41へ伝達する伝達経路において、モータ側ギア451とローラ側ギア411を備える。
【0063】
モータ側ギア451は、移動モータ45に連動して回転するように設けられる。ローラ側ギア411は、モータ側ギア451と噛み合うように設けられ、回転することにより、搬送ローラ対31~34を支持するシフトブロック41をシート材Pの幅方向に移動させるように設けられる。
【0064】
モータ側ギア451が矢印b1の方向に回転すると、ローラ側ギア411は矢印b2の方向に回転する。これにより、搬送ローラ対33,34は、
図12における矢印(b)の方向に移動する。
【0065】
モータ側ギア451が矢印c1の方向に回転すると、ローラ側ギア411は矢印c2の方向に回転する。これにより、搬送ローラ対33,34は、
図12における矢印(c)の方向に移動する。
【0066】
図12の説明で述べた搬送ローラ対33、34の戻し制御では、搬送ローラ対33,34は
図12における矢印(a)及び(b)の方向に移動するため、シート材Pを幅方向に移動させるシフト動作の前には、モータ側ギア451は、矢印b1の方向に沿って、ローラ側ギア411に噛み合っている。
【0067】
図13の状態において、搬送ローラ対33,34を
図12における矢印(b)の方向に移動させるために、モータ側ギア451が矢印b1の方向に回転する場合、モータ側ギア451は、バックラッシ無しでローラ側ギア411に噛み合う。一方、搬送ローラ対33,34を
図12における矢印(c)の方向に移動させるために、モータ側ギア451が矢印c1の方向に回転する場合、モータ側ギア451はバックラッシ量d分だけ回転した後でローラ側ギア411に噛み合う。したがって、制御部500は、バックラッシ量dを加算して、モータ側ギア451を回転制御する必要がある。
【0068】
図14は、比較例であるシート材位置補正装置30の制御フロー図である。シート材位置補正装置30における制御部500は、ジョブ開始すると、移動モータ45を駆動してシフトブロック41を移動させ、搬送ローラ対31~34をホームポジションに移動させる(S102)。
【0069】
制御部500は、エッジ位置検出センサ部60による読取り動作を行い(S103)、シート材Pが搬送される方向に直交する直交方向におけるシート材Pの位置として、シート材Pの幅方向の位置を検出する(S104)。エッジ位置検出センサ部60は、シート材Pの搬送方向において、搬送ローラ対31~34の上流側に設けられる。
【0070】
制御部500は、検出されたシート材Pの幅方向の位置と、幅方向の目標位置としての理想位置Ltgt0との差分から、理想位置Ltgt0にシート材Pを補正するには、
図12における矢印(b)の方向又は矢印(c)の方向のどちらの向きにどの程度補正するかを決定する。すなわち、制御部500は、シート材が搬送される方向に直交する直交方向におけるシート材Pの位置を補正する補正方向及び補正量としての差分を決定する(S105)。
【0071】
制御部500は、ステップS105で決定した補正方向が、複数の構成部材41、42、45~50を含む移動手段にバックラッシが生じる方向であるか判断する(S106)。具体的には、制御部500は、補正方向が、シフトブロック41が前回移動した方向と異なる場合は、補正方向はバックラッシが生じる方向であると判断する。一方、制御部500は、補正方向が、シフトブロック41が前回移動した方向と同じ場合は、補正方向はバックラッシが生じる方向ではないと判断する。ここで、シフトブロック41が前回移動した方向とは、ステップS102又は後述するステップS112において、シフトブロック41を移動させた方向である。
【0072】
制御部500は、ステップS106でバックラッシが生じる方向であると判断した場合は、バックラッシを解消させる動作を行う(S107)。具体的には、制御部500は、バックラッシを解消させる動作として、ステップS105で決定した補正方向とは逆の方向にシフトブロック41を移動させ、その後、補正方向にシフトブロック41を移動させる。これにより、補正方向は直前にシフトブロック41が移動した方向と同じになるため、バックラッシが解消される。
【0073】
制御部500は、ステップS107でバックラッシを解消させる動作を行った後、シート材Pが搬送ローラ対31~34に到達し(S108)、シート材Pが搬送方向におけるシフト位置に到達すると(S109)、シフト動作を行う(S110)。
【0074】
制御部500は、ステップS106でバックラッシが生じる方向でないと判断した場合は、ステップS107でのバックラッシを解消させる動作を行うことなく、ステップS108~S110に進む。
【0075】
制御部500は、ステップS110でのシフト動作として、ステップS105で決定された補正方向にシフトブロック41が移動するように、ステップS105で決定された補正量を駆動量として、移動モータ45を駆動制御する。移動モータ45が供給する駆動力は、モータプーリ49、タイミングベルト47、プーリギヤ48、ラック50へと伝達されて、シフトブロック41を移動させる。
【0076】
制御部500は、シート材Pの後端が搬送方向における搬送方向におけるシフト位置を抜けると(S111)、戻し制御としてシフトブロック41を移動させ、駆動ローラ33A、34Aのローラ部と従動ローラ33B、34Bのローラ部とをそれぞれ開口部36aの幅方向中央に位置させる制御を行う(S112)。
【0077】
制御部500は、ジョブの終了を確認し(S113)、ジョブが終了していなければ、ステップS103に戻って処理を継続し、ジョブが終了していれば処理を終了する。
【0078】
図15は、本実施形態に係るシート材位置補正装置30の制御フロー図である。シート材位置補正装置30における制御部500は、ジョブ開始すると、移動モータ45を駆動してシフトブロック41を移動させ、搬送ローラ対31~34をホームポジションに位置させる(S202)。
【0079】
制御部500は、シート材Pが搬送ローラ対31~34に到達すると(S203)、位置検出手段としてのエッジ位置検出センサ部60による読取り動作を行い(S204)、シート材Pの幅方向位置を検出する(S205)。エッジ位置検出センサ部60は、シート材Pの搬送方向において、搬送ローラ対31~34のうち少なくとも一対の搬送ローラ対の下流側に設けられる。
【0080】
制御部500は、検出されたシート材Pの幅方向位置と理想位置Ltgt0との差分から、理想位置Ltgt0にシート材Pを補正するには、
図12における矢印(b)の方向又は矢印(c)の方向のどちらの向きにどの程度補正するかを決定する。すなわち、シート材Pの幅方向位置を補正する補正方向及び補正量としての差分αを決定する(S206)。
【0081】
制御部500は、ステップS206で決定した補正方向が、複数の構成部材41、42、45~50を含む移動手段にバックラッシが生じる方向であるか判断する(S207)。具体的には、制御部500は、補正方向が、シフトブロック41が前回移動した方向と異なる場合は、補正方向はバックラッシが生じる方向であると判断する。一方、制御部500は、補正方向が、シフトブロック41が前回移動した方向と同じ場合は、補正方向はバックラッシが生じる方向ではないと判断する。ここで、シフトブロック41が前回移動した方向とは、ステップS202又は後述するステップS213において、シフトブロック41を移動させた方向である。
【0082】
制御部500は、ステップS207でバックラッシが生じる方向であると判断した場合は、S206で決定された補正量としての差分αに、移動手段のバックラッシに対応する所定量βを加算した量を補正量として更新する(S208)。所定量βは、
図13に示されるバックラッシ量dに対応して設定されてもよく、タイミングベルト47のたるみ量に対応して設定されてもよい。また、所定量βは変更可能であり、画像形成装置としてのプリンタ本体1の記憶手段の書き換え可能な記憶領域に記憶されている。
【0083】
制御部500は、ステップS207でバックラッシが生じる方向でないと判断した場合は、S206で決定された補正量としての差分αを、そのまま補正量として更新する(S209)。
【0084】
制御部500は、シート材Pが搬送方向におけるシフト位置に到達すると(S210)、シフト動作として、ステップS206で決定された補正方向にシフトブロック41が移動するように、ステップS208又はステップS209で更新された補正量を駆動量として、移動モータ45を駆動制御する。移動モータ45が供給する駆動力は、モータプーリ49、タイミングベルト47、プーリギヤ48、ラック50へと伝達されて、シフトブロック41を移動させる。(S211)。
【0085】
制御部500は、シート材Pの後端が搬送方向における搬送方向におけるシフト位置を抜けると(S212)、戻し制御としてシフトブロック41を移動させ、駆動ローラ33A、34Aのローラ部と従動ローラ33B、34Bのローラ部とをそれぞれ開口部36aの幅方向中央に位置させる制御を行う(S213)。
【0086】
制御部500は、ジョブの終了を確認し(S214)、ジョブが終了していなければ、ステップS203に戻って処理を継続し、ジョブが終了していれば処理を終了する。
【0087】
図15に示される実施形態において、シート材位置補正装置30における制御部500は、エッジ位置検出センサ部60で検出されたシート材Pの幅方向位置と理想位置とに基づいて、シート材Pの幅方向位置を補正する補正方向及び補正量としての差分αを決定する。
【0088】
制御部500は、補正方向が、シフトブロック41が前回移動した方向と異なる場合、補正量αにバックラッシに対応する所定量βを加算した量を駆動量として、移動モータ45を駆動制御する。移動モータ45が供給する駆動力は、モータプーリ49等の移動手段を介してシフトブロック41へ伝達されて、シフトブロック41を移動させる。シフトブロック41が前回移動した方向とは、ステップS202又はステップS213において、シフトブロック41を移動させた方向である。
【0089】
これにより、シート材位置補正装置30は、移動手段にバックラッシが生じる方向であっても、シート材Pが搬送される方向に直交する直交方向に、シート材Pを精度良く移動させることができる。
【0090】
そして、シート材位置補正装置30は、
図14に示される比較例のステップS107のように、バックラッシを解消させる動作を行う必要が無いため、バックラッシを解消させる動作の分だけシート材Pの間隔を詰めることが可能になり、生産性を高くすることができる。
【0091】
また、シート材位置補正装置30における制御部500は、補正方向が、シフトブロック41が前回移動した方向と同じ場合、補正量αを駆動量として、移動モータ45を駆動制御する。移動モータ45が供給する駆動力は、モータプーリ49等を介してシフトブロック41へ伝達されて、シフトブロック41を移動させる。
【0092】
これにより、シート材位置補正装置30は、移動手段にバックラッシが生じない方向にも、シート材Pが搬送される方向に直交する直交方向に、シート材Pを精度良く移動させるとともに、生産性を高くすることができる。
【0093】
次に、シート材位置補正装置30は、シート材Pの搬送方向において、搬送ローラ対31~34のうち少なくとも一対の搬送ローラ対の下流側にエッジ位置検出センサ部60を設けている。
【0094】
これにより、
図14に示される比較例のように、エッジ位置検出センサ部60がシート材Pの幅方向位置を検出してから、シート材Pが搬送ローラ対31~34に到達するまでの間に、搬送面やローラから抵抗を受けることに起因して、シート材Pが幅方向に位置ずれすることが防止される。
【0095】
また、シート材位置補正装置30では、所定量βは変更可能であり、画像形成装置としてのプリンタ本体1の記憶手段の書き換え可能な記憶領域に記憶されている。
【0096】
これにより、シート材位置補正装置30は、ギア摩耗等によって
図13に示されるバックラッシ量dに変化があっても、シート材Pを精度良く移動させることができる。
【0097】
さらに、シート材位置補正装置30は、移動モータ45から供給される駆動力をシフトブロック41へ伝達する伝達経路におけるバックラッシ量dを測定する測定手段を有し、動作回数が所定回数に到達する毎にバックラッシ量dを測定することにより、摩耗量をフィードバックして所定量βを更新してもよい。
【0098】
図16は、
図15に示した実施形態の変形例を示す説明図である。この変形例において、シート材位置補正装置30は、移動モータ45から供給される駆動力をシフトブロック41へ伝達する伝達経路におけるバックラッシ量dの変化量を測定する。
【0099】
図16(a)は、
図15の制御フロー図におけるステップS205に対応する状態であり、制御部500は、エッジ位置検出センサ部60に設けられたエッジ位置検出センサ63により、シート材Pの幅方向位置LtgtNを検出する。
【0100】
図16(b)は、
図15の制御フロー図におけるステップS207でバックラッシが生じる方向であると判断した場合の、ステップS211に対応する状態である。制御部500は、シフト動作として、ステップS206で決定された補正方向にシフトブロック41が移動するように、ステップS208で更新された補正量を駆動量として、移動モータ45を駆動制御し、シフトブロック41を移動させる。
【0101】
ここで、ギアの摩耗等に起因してバックラッシ量dが変化していると、シフト動作後のシート材Pの幅方向位置は、理想位置であるLtgt0よりも内側のLtgt0’となる。
【0102】
図16(c)は、
図15の制御フロー図におけるステップS211の後に追加されるステップに対応する状態である。制御部500は、エッジ位置検出センサ63により、もう一度シート材Pの幅方向位置Ltgt0’を検出する。理想位置Ltgt0と実際の位置Ltgt0’の差分は、ギアの摩耗等によって生じた差であり、制御部500は、この差分をパルス換算して、プリンタ本体1の記憶手段の書き換え可能な記憶領域に記憶されている所定量βを変更する。
【0103】
これにより、シート材位置補正装置30は、ギア摩耗等によってバックラッシ量dが変化しても、シート材Pを精度良く移動させることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 プリンタ本体
3 操作パネル
4 排紙トレイ
5 給紙トレイ
30 シート材位置補正装置
31~34 搬送ローラ対
31A~34A 駆動ローラ
31B~34B 従動ローラ
35 上ガイド板
36 下ガイド板
41 シフトブロック
45 移動モータ
47 タイミングベルト
60 エッジ位置検知センサ部(位置検出手段)
411 ローラ側ギア
451 モータ側ギア
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】