(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 3/28 20060101AFI20220511BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20220511BHJP
B41J 29/06 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B41J3/28
B41J3/36 Z
B41J29/06
(21)【出願番号】P 2018094608
(22)【出願日】2018-05-16
【審査請求日】2021-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2017118583
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100154612
【氏名又は名称】今井 秀樹
(74)【代理人】
【識別番号】100091867
【氏名又は名称】藤田 アキラ
(72)【発明者】
【氏名】尾ヶ口宗之
(72)【発明者】
【氏名】松本和悦
(72)【発明者】
【氏名】西岡国彦
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-131929(JP,A)
【文献】特開平01-234272(JP,A)
【文献】特開平06-297776(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0223982(US,A1)
【文献】特開平09-240067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/28
B41J 3/36
B41J 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材上を手動走査することで画像を記録する記録装置において、
記録材に画像を記録する記録部と、
前記記録部を収容するハウジングと、
前記ハウジングに格納された格納位置と前記記録部による画像の記録領域を示す標示位置との間で移動可能な標示部材と、
を有し、
走査方向と直交する方向における前記標示部材の大きさが、走査方向と直交する方向における前記記録部の幅と同一であることを特徴とする記録装置ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記標示部材は、前記記録部よりも走査方向上流側または下流側に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記標示部材が透明部材で設けられていることを特徴とする請求項1
又は2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記標示部材が、走査方向における前記ハウジングの両側に設けられていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項5】
装置本体の走査方向への移動を補助する移動補助手段を備えることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記標示部材は、走査方向と直交する方向における前記記録部の中心位置と対応する位置に、前記記録部の前記中心位置を示す中心位置標示部を有することを特徴とする請求項1~
5のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項7】
前記標示部材が前記標示位置にあるときに前記標示部材と記録材との間に所定の隙間を有するように、前記標示部材の位置を規制する規制部を備えることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項8】
前記ハウジングと前記格納位置にある前記標示部材との間に隙間を有することを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項9】
前記標示部材は前記ハウジングに対して回転軸を中心に回動可能に設けられており、
前記ハウジングには、前記格納位置にある状態の前記標示部材に対して前記回転軸の側とは反対側に、切欠きにより形成された隙間が設けられていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の記録装置。
【請求項10】
記録材に画像を記録する記録部と、
前記記録部を収容するハウジングと、
前記ハウジングの走査方向への移動をガイドするローラと、
前記ハウジングに格納された格納位置と前記記録部による画像の記録領域を示す標示位置との間で移動可能な標示部材と、
を有し、
走査方向と直交する方向における前記標示部材の大きさが、走査方向と直交する方向における前記記録部の幅と同一であることを特徴とする記録装置。
【請求項11】
前記標示部材が前記標示位置にあるときに前記標示部材と記録材との間に所定の隙間を有するように、前記標示部材の位置を規制する規制部を備えることを特徴とする請求項
10に記載の記録装置。
【請求項12】
前記標示部材は前記ハウジングに対して回転軸を中心に回動可能に設けられており、
前記ハウジングには、前記格納位置にある状態の前記標示部材に対して前記回転軸の側とは反対側に、切欠きにより形成された隙間が設けられていることを特徴とする請求項10又は11に記載の記録装置。
【請求項13】
記録材に画像を記録する記録部を装着可能な記録装置において、
前記記録部を収容可能なハウジングと、
前記ハウジングの走査方向への移動をガイドするローラと、前記ハウジングに格納された格納位置と前記記録部による画像の記録領域を示す標示位置との間で移動可能な標示部材と、
を有し、
走査方向と直交する方向における前記標示部材の大きさが、走査方向と直交する方向における前記記録部の幅と同一であることを特徴とする記録装置。
【請求項14】
前記標示部材が前記標示位置にあるときに前記標示部材と記録材との間に所定の隙間を有するように、前記標示部材の位置を規制する規制部を備えることを特徴とする請求項
13に記載の記録装置。
【請求項15】
前記標示部材は前記ハウジングに対して回転軸を中心に回動可能に設けられており、
前記ハウジングには、前記格納位置にある状態の前記標示部材に対して前記回転軸の側とは反対側に、切欠きにより形成された隙間が設けられていることを特徴とする請求項13又は14に記載の記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録装置、さらに詳しくは手動走査式の記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンやスマートフォン等の普及に伴い、携帯可能な記録装置が要望されている。
携帯型の記録装置として、人の手で紙面等の記録媒体上を走査しながら画像を記録する記録装置は周知である(例えば特許文献1)。このような、人の手で記録媒体上を走査しながら画像を記録する記録装置は、ハンドヘルド記録装置、ハンディプリンタ、ハンディモバイルプリンタなどと呼ばれている。以下、これらを総称してハンディモバイルプリンタと称する。
【0003】
ハンディモバイルプリンタは、用紙上をフリーハンドで印刷・記録可能なことで、モバイルの利便性と用紙対応力を両立したものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のハンディモバイルプリンタは、用紙上をフリーハンドで走査可能なものであるが、それゆえに印字範囲・記録範囲が分からないという問題があった。
特許文献2には、装置本体を記録方向と直角な方向へ正確に移動させることが出来るようにしたハンディタイプの記録装置が開示されている。
【0005】
しかし、特許文献2に記載の記録装置においても、印字範囲・記録範囲が分からないという問題は解消されていない。
本発明は、手動走査式の記録装置において、印字範囲・記録範囲を明確にし、記録材上の所望の位置に容易に印字をおこなうことを可能にするとともに、大きなスペースを取らずに装置を保管可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため、本発明は、記録材上を手動走査することで画像を記録する記録装置において、記録材に画像を記録する記録部と、前記記録部を収容するハウジングと、前記ハウジングに格納された格納位置と前記記録部による画像の記録領域を示す標示位置との間で移動可能な標示部材と、を有し、走査方向と直交する方向における前記標示部材の大きさが、走査方向と直交する方向における前記記録部の幅と同一であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の記録装置によれば、印字範囲・記録範囲が明確になり、ユーザは記録材上の所望の位置に容易に印字をおこなえるとともに、大きなスペースを取らずに装置を保管できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態にかかるハンディモバイル型インクジェットプリンタ(HMP)の外観斜視図である。
【
図2】
図1の反対側から見たHMPの外観斜視図である。
【
図3】ガイド部材の構造を説明する図で、(a)はガイド部材を解放させた様子、(b)はHMPの下面を模式的に示す図である。
【
図4】プリント時の改行操作について説明する模式図である。
【
図7】ガイド部材をHMP本体の両側に設けた変形例を示す図である。
【
図8】
図7の構成例におけるプリント時の改行操作について説明する模式図である。
【
図9】他の実施形態に係るHMPを斜め上方から示す外観斜視図である。
【
図10】ガイド部材を開いた状態の同HMPを斜め上方から示す外観斜視図である。
【
図11】上部ユニットを下部ユニットに対して開いた状態の同HMPを示す斜視図である。
【
図12】同HMPを記録面側から示す底面図である。
【
図13】同HMPの電気回路の一部を示すブロック図である。
【
図14】同HMPのガイド部材の拡大斜視図である。
【
図15】同HMPのガイド部材付近の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明による記録装置の一実施形態であるハンディモバイル型のインクジェットプリンタ(以下、HMPと略記する)の外観斜視図である。なお、本実施形態の記録装置はインクジェットプリンタとして構成されたものであるが、本発明はインクジェット方式に限定されるものではなく、熱転写方式等適宜な方式の記録装置に適用可能なものである。
【0010】
図1に示すHMP1は、上部ユニット2と下部ユニット3から構成されている。上部ユニット2には、制御ボードが搭載されており、インクの吐出タイミングなどを操作する操作部ボタン5やUSB接続口9がある。下部ユニット3には、インクジェットヘッド(吐出ヘッド)が搭載されている。また本体左右方向の操作の直進性のためのガイドコロ4(走査方向への移動を補助する移動補助手段)が設けられている。
【0011】
なお、ヘッドからインク等の液体・液滴を吐出して記録を行う、いわゆるインクジェット機構は周知であり、ここでは説明を省略する。また、HMP1に搭載可能であれば、適宜な構成のインクジェット機構を採用可能である。本実施形態のHMP1では、インクジェット機構が記録材に画像を記録する記録部に相当し、当該記録部は下部ユニット3のハウジング内に格納されている。
【0012】
図2は、
図1の反対側から見たHMP1の外観斜視図である。
この図に示すように、下部ユニット3の一方側の側面には、記録部による記録領域の幅を示す標示部材としてのガイド部材7が設けられている。ガイド部材7は、プリント時に改行動作を行う際に使用するガイド部材である。ガイド部材の構造については後述する。
【0013】
なお、
図1に示すようにHMP1の本体の左右方向(短手方向)をX方向とし、それに直交する本体長手方向をY方向とする。HMP1を用いたプリント動作では、文字や絵柄等を直線的に印字する場合はX方向にHMP1を移動させる。そして、Y方向にHMP1を移動させることで改行させる。
【0014】
ただし、HMP1を用いたプリント動作は上記に限定されるものではない。文字や絵柄等をデザイン的に配置する場合など、X方向以外の斜め方向や曲線的にHMP1を移動させてプリントを行うことも可能であるし、Y方向以外の方向にHMP1を移動させて改行することも可能である。
【0015】
HMP1の下部ユニット3の下面には、
図3に示すように、下方に開口されたインク吐出部6(画像記録部)が設けられている。図示していないインクジェットヘッドから吐出されたインクは、インク吐出部6の開口より用紙等の記録材上に至り、画像記録が行われる。
【0016】
図3は、ガイド部材7の構造を説明する図で、(a)はガイド部材7を解放させた様子を示す斜視図、(b)はHMP1の下面を模式的に示す図である。
ガイド部材7は、HMP1の本体(下部ユニット3の側面)の下端部の近くにヒンジを介して装着され、HMP1の本体(下部ユニット3の側面)に対して開閉可能に設けられている。ガイド部材7を使用するときは
図3(a)のように開き、使用しないときはしまう(本体側面に格納する)ことができる構造になっている。
【0017】
また、
図3(b)に示すように、ガイド部材7はインク吐出部6の延長線上に位置し、ガイド部材7の幅(Y方向の大きさ):Lは、インク吐出部6と同じ幅の(Y方向の大きさが同じ)構成となっている。ガイド部材7の色は透明になっており、透けてガイド部材7の奥にあるものや、プリント時にガイド部材7の下にある用紙等の記録材を見ることができる構成になっている。
【0018】
図4は、プリント時の改行操作について説明する模式図である。
ここでは、通常のプリンタ(携帯型ではない用紙搬送機構を備えたプリンタ)と同様な複数行の印字を行う場合の改行操作について説明する。
【0019】
手順(1)は、印字領域の中央部を印字している様子を示している。ユーザは、手動にてHMP1を左から右方向(
図1のX方向)に移動させてフリーハンド操作しながら印字している。
【0020】
手順(2)は、印字領域の右端まで印字し終わった時の様子を示している。
手順(2)が終わると、HMP1本体を一旦用紙(記録材)から浮かせて改行動作が必要になる。その際、次の印字範囲がガイド部材7により明確なので(次に印字される領域=記録領域をガイド部材7が示しているので)、手順(3)に示すように、ガイド部材7の上辺を印字された最下部に合わせることで、改行前の印字部と重なったり、隙間が空いたり(隙間が必要以上に大きくなったり)、隙間が狭すぎたりすることなく、適切な改行動作を簡単に行うことができる。
【0021】
図5は、ガイド部材の変形例を示す図である。
この図に示すガイド部材7Bは、基部の幅(Y方向の大きさ)はインク吐出部6の幅よりも大きいが、先端部7Baの幅(Y方向の大きさ):Laは、インク吐出部6と同じ幅の(Y方向の大きさが同じ)構成となっている。この変形例のように、ガイド部材は、少なくとも一部がインク吐出部6と同じ幅(走査方向と直交する方向における大きさが略同一)であれば、次の印字範囲を容易に把握することができる。
【0022】
図6は、ガイド部材の別の変形例を示す図である。
この図に示すガイド部材7Cは、幅(Y方向の大きさ)がインク吐出部6の幅よりも大きいが、ガイド部材7Cの上面に、インク吐出部6のY方向両端部と同列に位置する目印形状8が設けられている。なお、ガイド部材7Cが透明部材の場合には、目印形状8をガイド部材7Cの下面に設けることもできる。本例では2本の直線として設けられた目印形状8の幅(Y方向の間隔)は、インク吐出部6と同じ幅になっている。このような目印形状8をガイド部材に設けることによって、ガイド部材の幅(Y方向の大きさ)がインク吐出部6の幅よりも大きい場合でも、次の印字範囲を容易に把握することができる。
【0023】
図7は、ガイド部材をHMP本体の両側に設けた変形例を示す図である。
図7の構成においては、HMP1の本体の両側(X方向の両側)にガイド部材7,7をそれぞれ設けている。この構成の場合、HMP1をX方向のどちらに移動させても印字が可能となる。その印字動作について
図8を参照して説明する。
図8では、説明の都合上、右側のガイド部材を7R、左側のガイド部材を7Lとして説明する。
【0024】
図8において、手順(1)は、印字領域の中央部を印字している様子を示している。ユーザは、手動にてHMP1を左から右方向に移動させてフリーハンド操作しながら印字している。
手順(2)は、印字領域の右端まで印字し終わった時の様子を示している。
【0025】
手順(2)が終了したとき、X方向(
図8の左右方向)の位置はそのままで、HMP1を図の下方に移動させて改行を行う。その際、手順(3)の図に示すように、左側のガイド部材7Lの上辺を印字された最下部に合わせることで、改行前の印字部と重なったり、隙間が空いたり(隙間が必要以上に大きくなったり)、隙間が狭すぎたりすることなく、適切な改行動作を簡単に行うことができる。
手順(4)では、手順(1)とは逆方向、すなわち右から左方向に移動させて印字を行う様子を示している。
【0026】
本構成では、
図4の場合のように、改行時にHMP1を印字領域の右端(X方向の一方側の端部)から左端(X方向の反対側の端部)まで移動させる必要が無く、ジグザグに移動させて印字を行うことができるので、移動の手間を省き、より簡単な操作で改行を伴うプリント動作を行うことができる。
【0027】
なお、
図7の構成では
図3のガイド部材7をHMP本体の両側に設けた構成で説明したが、
図5のガイド部材7BをHMP本体の両側に設けた構成、あるいは
図6のガイド部材7CをHMP本体の両側に設けた構成でもよい。さらに、ガイド部材7,7B,7Cを組み合わせた構成でもよい。
【0028】
次に、本発明を携帯型画像形成装置であるハンディモバイル型インクジェットプリンタ(以下、HMPという)に適用した他の実施形態について説明する。まず、他の実施形態に係るHMPの基本的な構成について説明する。
【0029】
図9は、他の実施形態に係るHMP11を斜め上方から示す外観斜視図である。同図に示されるHMP11は略直方体形状を有しており、その走査方向(=印字方向:図中矢印X方向)の幅は、ユーザが掌で掴める程度である。
【0030】
HMP11の下部ユニット13のハウジング80は、インクジェットヘッドの記録部を有する記録面30(装置の下面)、これの反対面である上面31、HMP1の走査方向と直交する方向である走査直交方向(図中矢印Y方向)に延在する左側面32などを有している。また、走査直交方向(図中矢印Y方向)に延在する右側面33、走査方向(図中矢印X方向)に延在する背面34、走査方向に延在する正面35なども有している。
【0031】
同図に示されるHMP11は、記録面30を鉛直方向下方に向けつつ、記録反対面である上面31を鉛直方向上方に向ける姿勢になっている。上面31の外縁内(枠内)には、プリントボタン14と、電源ボタン15とが設けられている。また、上部ユニット12の左側面32には、USB接続口19が設けられている。
【0032】
USB接続口19はUSBケーブルを接続するためのものである。HMP11の中に装着された充電式のバッテリー(
図13の51)に対し、USB接続口19に接続したUSBケーブルを介して外部の電源から電力を供給することで、バッテリーを充電することができる。
【0033】
下部ユニット13の正面35側の端部は、下部ユニット13の前記端部以外の部分よりも幅の広い把持部36になっている。ユーザは、画像形成のためにHMP11を記録材の表面上で走査方向(図中矢印X方向)に移動させるときには、把持部36を持ってHMP11を移動操作する。走査直交方向において、把持部36が他の部分に比べて幅広になっているのは、手で持ち易くするための他、把持部36が後述するバッテリー収容部になっているからである。また、左側面32にはくぼみ39が形成されている。ユーザは指をくぼみ39に置くことで、HMP11を安定して把持することができる。
【0034】
ユーザは電源ボタン15を長押しすることによってHMP11の電源の入切(ON/OFF)を切り替えることができる。電源を入れた状態では、スマートフォンなどとのBluetooth(登録商標)通信により、HMP11の上部ユニット12内に設けられた制御基板に対して画像情報を取得させることができる。その後、記録面30を記録材の表面に対面させる姿勢でHMP11を記録材の表面上に置いた後、プリントボタン14を一度押してから、HMP11を走査方向に沿って移動させることで、記録材の表面に画像を形成することができる。なお、このHMP11は、ユーザの移動操作によって走査方向(図中矢印X方向)に沿って往移動せしめられるときと、復移動せしめられるときとのそれぞれで、記録材の表面に画像を形成することができる。インクジェットヘッド40からのインクの吐出は、ユーザがプリントボタン14を一度押して離した後に連続しておこなってもよいし、ユーザがプリントボタン14を押している間だけおこなってもよい。
記録材は、用紙などの紙類に限定されるものではなく、OHP、布、段ボール、包装容器、ガラス、基板などが含まれる。
【0035】
ハウジング80の左側面32には記録部による記録領域の幅を示す標示部材としてのガイド部材17が回動可能に取りつけられている。
図9に示す状態ではガイド部材17は閉じており、ハウジング80の左側面32に収容されている。
【0036】
図10は、ガイド部材17を開いた状態のHMP11を斜め上方から示す外観斜視図である。ユーザは、ハウジング80に収容されたガイド部材17の上部を持って矢印Rで示すように回動させることにより、ガイド部材17を開くことができる。
図9に示すように、ハウジング80と格納されたガイド部材17との間には隙間Sを有する。すなわち、ハウジング80には、収容されたガイド部材17の上縁部よりも上方の位置に切欠き80cが形成されている。切欠き80cの隙間Sは、ユーザが指を入れることのできる程度の長さを有する。これによりユーザはハウジング80に収容されたガイド部材17を容易に回動させることができる。ガイド部材17は、第1実施形態のガイド部材7と同様に透明な樹脂により形成されている。ユーザは、ガイド部材17と記録材の表面との位置を見比べながらHMP11を操作することで、記録材表面の所望の位置に容易に印字をおこなうことができる。ガイド部材17の走査直交方向(図中矢印Y方向)における幅Lは、インクジェットヘッド40の記録部の幅(記録領域の幅。後述する複数の吐出孔41aの幅である)と同一である。なお幅Lは、記録部の幅と異なっていてもよいが、インクジェットヘッド40の記録部の幅以上であることが好ましい。ガイド部材17の幅Lをインクジェットヘッド40の記録部の幅以上とすることで、たとえばユーザが隣接して文字を2行分印字する際に、文字同士が重なることを回避できる。ガイド部材17の幅Lは、印字位置を正確に把握するためには記録部の幅の+10%以内とすることが好ましく、+5%以内とすることがより好ましい。
【0037】
標示部材としてのガイド部材17は、記録部よりも走査方向上流又は下流で記録材の表面に対向する対向位置(
図10)と、対向位置よりも退避した退避位置(
図9)と、の間で移動可能である。また、ガイド部材17は、HMP11のハウジング80に格納される格納位置(
図9)と、格納位置よりも走査方向上流又は下流へ向かってHMP11のハウジング80から突き出す突出位置(
図10)と、の間で移動可能である。また、ガイド部材17は、HMP11のハウジング80に格納された格納位置(
図9)と、記録部の記録領域を示す標示位置(
図10)との間で移動可能である。これにより、印字範囲・記録範囲が明確になり、ユーザは記録部の記録領域の位置を容易に把握して記録材上の所望の位置に印字をおこなえる。かつ、HMP11を使用しない保管時などにガイド部材が邪魔にならず、大きなスペースを取らずに保管ができる。
【0038】
ガイド部材17をハウジング80に対して回動可能に構成することにかえて、ガイド部材17をハウジング80から走査方向Xに進退可能に構成してもよい。また、ガイド部材17をハウジング80に対して走査直交方向Yと平行な回転軸を中心に回動可能に構成することにかえて、ガイド部材17をHMPの高さ方向(すなわち記録材の表面と垂直な方向)と平行な回転軸を中心に回動可能に構成してもよい。
【0039】
図11は、上部ユニット12を下部ユニット13に対して開いた状態のHMP11を示す斜視図である。図示のように、上部ユニット12は下部ユニット13に対して開閉するように下部ユニット13に保持されている。下部ユニット13の把持部36の内部空間には、HMP11の各機器に電源供給するためのバッテリー51が装着されている。
【0040】
下部ユニット13のハウジング80のうち、把持部36とは異なる部分の中には、インクタンク一体型のインクジェットヘッド40(インクカートリッジ)が着脱可能に収容される。
図11に示されるように、インクジェットヘッド40すなわちインクカートリッジは、記録部とインクタンクとを一体で備えるとともに、HMP11の下部ユニット13のハウジング80に対して着脱可能である。このとき、インクの液滴を吐出する記録部が鉛直方向下方に向けられる。このインクジェットヘッド40は、記録部からインクの液滴を吐出して記録材に画像を記録する。ハウジング80は、インクジェットヘッド40の記録部を着脱可能に収容する。
上部ユニット12の内面には、下部ユニット13内に装着されたインクジェットヘッド40を押さえて係止するためのヘッド押さえ板バネ37が固定されている。
【0041】
このHMP11では、下部ユニット13内において、バッテリー51をインクジェットヘッド40の側方に位置させているため、上方に位置させる構成に比べてHMP11の高さを低くしている。これにより、HMP11の重心位置を低くすることで、移動操作時におけるHMP11の転倒を防止できる。
【0042】
HMP11の走査方向の大きさ(装置幅)は、インクジェットヘッド40よりも僅かに幅広になっている程度である。装置幅をできるだけ小さくすることで、記録材の表面上においてHMP11を走査方向に移動操作できる範囲を広くし、記録材の表面上における記録可能範囲をできるだけ広くすることができる。
【0043】
図12は、HMP11を記録面側から示す底面図である。同図において、HMP11の記録面としての記録面30には、下部ユニット13(
図11)内に装着されたインクジェットヘッド40の記録部41を外部に露出させるための開口30aが設けられている。記録部41は、複数の吐出孔41aを有しており、圧電素子の駆動によってそれぞれの吐出孔41aからインクの液滴を個別に吐出することが可能である。記録部41の画像の記録領域の幅は、複数の吐出孔41aの幅に相当する。
インクジェットヘッド40は、インクを吐出するための駆動源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子又は薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を具備する、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを用いるものである。
【0044】
記録部41の吐出孔41aから吐出される「液体」は、吐出孔41aから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下になるものであることが好ましい。具体的には、「液体」は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、乳濁液等である。これらは例えばインクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0045】
記録面30の外縁内には、記録材上におけるHMP11の位置を検知する検知手段としての位置検知センサー18、回転可能な左側第一ローラ部37a、左側第二ローラ部37b、右側第一ローラ部38a、右側第二ローラ部38bなどが設けられている。
ユーザによってHMP11が走査方向に移動操作されると、記録材の表面上に接触している四つのローラ部がタイヤのように回転する。ローラ部が設けられていることで、ユーザはインクジェットヘッド40の記録部41と記録材の表面との距離を一定に保ちながら、HMP11を走査方向に沿って直進させることができる。すなわち、四つのローラ部は、HMP1のハウジング80の走査方向への移動をガイドする。
【0046】
位置検知センサー18は、記録材の表面までの距離や表面状態(例えば凹凸)を検知したり、HMP11の移動距離を検知したりするセンサーであり、例えばパソコンの光学式マウス(ポインティングデバイス)などで使用されているのと同類のものである。位置検知センサー18は、置かれている場所(記録材)に光を照射し、その部分の状態を「模様」として読み取る。そして、位置検知センサー18の動きに対してその「模様」がどのように移動するのかを連続して捉えることで、移動量を算出する。
【0047】
図13は、HMP11の電気回路の一部を示すブロック図である。
制御基板57は、各種の演算処理やプログラム実行を行うCPU55、Bt(Bluetooth)基板52、データを一時記憶するRAM53、ROM54、記録制御部56などを有している。この制御基板57は、上部ユニット12(
図9)の中空内において、USB接続口19(
図9)の裏側の位置に固定されている。
【0048】
Bt基板52は、スマートフォンやタブレット端末などの外部機器とのBluetooth通信によってデータ交信を行うものである。また、ROM54は、HMP11のハードウェア制御を行うファームウェアや、インクジェットヘッド40の駆動波形データ等を格納するものである。また、記録制御部56は、インクジェットヘッド40を駆動させるためのデータ処理を実行したり、駆動波形を生成したりするものである。
【0049】
制御基板57には、ジャイロセンサー58、位置検知センサー18、LEDランプ59、インクジェットヘッド40、プリントボタン14、電源ボタン15、バッテリー51などが電気接続されている。
【0050】
ジャイロセンサー58は、周知の技術により、HMP11の傾きや回転角度を検知して、その結果を制御基板57に送信するものである。LEDランプ59は、プリントボタン14における光透過性の材料からなる外装カバーの内部に設けられ、プリントボタン14を発光させるものである。
【0051】
電源ボタン15を押してHMP11の電源を入れると、各モジュールに電力が供給され、CPU55はROM54に格納されているプログラムに基づいて起動動作を開始し、プログラムや各データをRAM53に展開する。形成対象の画像データを外部機器からBluetooth通信によって受信すると。記録制御部56は、画像データに応じた駆動波形を生成する。そして、位置検知センサー18によって検知された記録材の表面上の位置に応じた画像を形成するようにインクジェットヘッド40のからのインクの吐出を制御する。
【0052】
図14はHMP11のガイド部材17の拡大斜視図である。ガイド部材17は、一対のアーム17fと、一対のアーム17fに支持されたベース部17cと、ベース部17cから走査方向へと延びる先端部17aとを有する。先端部17aは、走査直交方向における記録部の中心位置と対応する位置に中心位置標示部としての切欠き17bが形成されている。この切欠き17bが形成されていることにより、ユーザは走査直交方向における記録領域幅の中心位置を容易に把握することができ、所望の位置に正確に印字をおこなうことができる。ハウジング80の左側面には一対の爪80bが設けられている。一対の爪80bは、ガイド部材17の両端と係合することにより、ガイド部材17を左側面32内の収納位置で保持する(
図9参照)。
【0053】
図15は、HMP11のガイド部材17付近の拡大断面図である。ガイド部材17は、そのアーム17f上に設けられた支点17eの位置でハウジング80に支持される。ガイド部材17のアーム部17fとベース部17cと先端部17aとは、支点17eを中心としてハウジング80に対して回動可能である。ベース部17cの表面には、ハウジング80表面の被当接部80aと当接可能な当接部17dを有する。ユーザは、一対の爪80bとガイド部材17との係合を解除することにより、ガイド部材17を矢印Rで示す方向へ回動させることができる。ガイド部材17を
図15に示す位置まで回動すると、当接部17cと被当接部80aとが当接することにより、ガイド部材17の回動が規制される。規制部としての当接部17cと被当接部80aとは、ガイド部材17の下面と記録材(用紙P)との間に所定の隙間Dを有するように、ガイド部材17の位置を規制する。この状態では、HMP11のうちの左側第二ローラ部37bを含む4つのローラ部のみが記録材の表面と当接しており、ガイド部材17は記録材から離間したままである。当接部17cと被当接部80aとによりガイド部材を記録材から離間した状態に保つことにより、ユーザがHMP11を移動操作して記録材に画像を記録する際にガイド部材17が記録材上の画像と接触することを防止できる。これにより記録された画像を乱すことを防止できる。
【0054】
なお、本実施形態では、HMP11の走査方向Xの下流側(左側面32の側)に設けられたガイド部材17について説明したが、これに替えて、または加えて、HMP11の走査方向Xの上流側(右側面33の側)に、同一の構成を有するガイド部材17が設けられていてもよい。
【0055】
ハウジング80の左右両側にガイド部材17を有する場合、ユーザは、左右一対のガイド部材17と記録材の表面との位置を見比べながらHMP11を操作することで、HMP11をより容易に直進させることができる。また、左右一対のガイド部材17を記録材から離間した状態に保つことにより、ガイド部材17が記録材に接触してその表面を傷つけることを防止できる。
【0056】
なお、記録材に画像を記録する記録部を含むインクジェットヘッド40(インクカートリッジ)を装着可能なHMP11において、インクジェットヘッド40(インクカートリッジ)と記録部とを収容可能なハウジング80と、ハウジング80の走査方向への移動をガイドするローラ部37a、37b、38a、38bと、ハウジング80に格納された格納位置と記録部による画像の記録領域を示す標示位置との間で移動可能なガイド部材17と、を備えるようにHMP11を構成してもよい。この場合も、記録部を装着した状態のHMP11によれば、印字範囲・記録範囲を明確にし、記録材上の所望の位置に容易に印字をおこなうことを可能にするとともに、大きなスペースを取らずに装置を保管可能とすることができる。
【0057】
ここまで説明したように、本発明の記録装置においては、ハウジングに格納された格納位置と記録部による画像の記録領域を示す標示位置との間で移動可能な標示部材を備えることにより、印字範囲・記録範囲を明確にし、記録材上の所望の位置に容易に印字をおこなえるとともに、大きなスペースを取らずに装置を保管することができる。
【0058】
また、標示部材が記録部よりも走査方向上流側または下流側に設けられていることで、記録領域・記録範囲を容易に把握することができる。
また、走査方向と直交する方向における標示部材の大きさが、走査方向と直交する方向における記録部の大きさと略同一であることで、簡単な構成で次の印字範囲・記録範囲を示すことが可能となる。
【0059】
また、標示部材の少なくとも一部の走査方向と直交する方向の大きさが、走査方向と直交する方向における記録手段の画像記録部の大きさと略同一であることで、簡単な構成で次の印字範囲・記録範囲を示すことが可能となる。
【0060】
また、標示部材の一部に、走査方向と直交する方向における記録部の両端部と同列に位置する目印形状が設けられていることで、簡単な構成で次の印字範囲・記録範囲を示すことが可能となる。
【0061】
また、標示部材が透明部材で設けられていることで、標示部材の奥にあるものや、標示部材の下にある用紙等を見ることができる。
【0062】
また、標示部材が走査方向におけるハウジングの両側に設けられていることで、改行時の移動量を最小限にすることが可能となる。
また、装置本体の走査方向への移動を補助する移動補助手段を備えることで、改行前の記録と改行後の記録の整合性を高めることができ、画像品質を向上させることができる。
【0063】
また、標示部材は、走査方向と直交する方向における記録部の中心位置と対応する位置に、記録部の前記中心位置を示す中心位置標示部を有することで、走査直交方向における記録領域幅の中心位置を容易に把握することができ、所望の位置に正確に印字をおこなうことができる。
【0064】
また、標示部材が標示位置にあるときに、標示部材と記録材との間に所定の隙間を有するように、標示部材の位置を規制する規制部を備えることで、HMPを移動操作して記録材に画像を記録する際に標示部材が記録材上の画像と接触することを防止でき、これにより記録された画像を乱すことを防止できる。
【0065】
また、ハウジングと格納位置にある標示部材との間に隙間を有することで、ハウジングに収容された標示部材を容易に回動させることができる。
【0066】
以上、本発明を図示例に基づき説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、記録方式は本発明を適用可能なものであれば任意な方式を採用可能である。また、標示部材の形状や大きさなども適宜変更可能である。
【0067】
記録部の位置や大きさなども一例であって、適宜な構成を採用可能である。走査方向も任意に設定可能である。
また、本発明の記録装置はプリンタとしてだけではなく、スマートフォンやタブレット端末等からデータを受け取って出力する装置としても使用可能である。データの受信方法は、Bluetooth接続(無線接続)に限らず、USB接続を含む有線・無線の任意な通信方式を採用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1、11 ハンディモバイル型プリンタ:HMP(記録装置)
2、12 上部ユニット
3、13 下部ユニット
4 ガイドコロ(移動補助手段)
5 操作部ボタン
6 インク吐出部(画像記録部)
7、17 ガイド部材(標示部材)
8 目印形状
9、19 USB接続口
18 位置検知センサー
37,38 ローラ部(移動補助手段)
40 インクジェットヘッド
41 記録部
57 制御基板
80 ハウジング
P 用紙(記録材)
X 走査方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【文献】特開2016-112700号公報
【文献】特開平5-116380号公報