(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】光源モジュール、及び光学装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/14 20060101AFI20220511BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20220511BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20220511BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20220511BHJP
【FI】
G03B21/14 A
F21V9/40 200
F21V29/502 100
F21V29/70
(21)【出願番号】P 2018120208
(22)【出願日】2018-06-25
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】真下 淳
【審査官】石本 努
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002269(WO,A1)
【文献】特開2017-072672(JP,A)
【文献】特開2018-022000(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170969(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0233550(US,A1)
【文献】特開2007-212576(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104676492(CN,A)
【文献】特開2001-100309(JP,A)
【文献】特開2003-280099(JP,A)
【文献】特開2010-155870(JP,A)
【文献】特開2007-78859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K9/00-9/90
F21S2/00-45/70
F21V1/00-15/04
23/00-99/00
G02B5/00-5/136
7/00
7/18-7/24
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
H04N5/66-5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された励起光を蛍光体層が設けられた蛍光体ホイールに集光して蛍光を発生させるための光源モジュールであって、
前記蛍光体ホイールの前記蛍光体層が設けられた面側であって発せられた前記蛍光の少なくとも一部を遮光する位置に設置された、前記蛍光体ホイールを回転させるための駆動部と、
前記蛍光体層の前記蛍光が発せられる部分の周囲に設けられ、発せられた前記蛍光の少なくとも一部を遮光する側板と、
前記駆動部を保持する保持部と、
光学系を収容する鏡胴と、を有し、
前記鏡胴は、前記駆動部の回転に伴う振動を吸収する防振部材を介して前記側板、又は前記保持部に固定される光源モジュール。
【請求項2】
前記蛍光体層は励起光が照射されて前記蛍光を発し、
前記励起光は、前記蛍光体ホイールの前記駆動部が配置されている側の面から、前記蛍光体層に照射される、請求項
1に記載の光源モジュール。
【請求項3】
前記蛍光体層の前記蛍光が発せられる部分の周囲に設けられ、発せられた前記蛍光の少 なくとも一部を遮光する遮光部を有し、
前記遮光部は、前記蛍光の反射を防止する反射防止処理された面を少なくとも一部に含む、請求項
1、又は2に記載の光源モジュール。
【請求項4】
前記蛍光体ホイールの前記蛍光体層が設けられた面の反対側に近接して設けられ、前記蛍光が発せられる部分の発熱を放熱する放熱部材を有する請求項1乃至
3の何れか1項に記載の光源モジュール。
【請求項5】
前記駆動部と、前記光学系と、前記遮光部と、を収容する筐体と
一体に形成され、
前記蛍光体ホイールの前記蛍光体層が設けられた面の反対側に近接して設けられ、前記蛍光が発せられる部分の発熱を放熱する放熱部材
を有する請求項
3に記載の光源モジュール。
【請求項6】
前記保持部は、前記保持部より熱伝導率の高い高熱伝導部材を介して前記駆動部を保持する請求項
1乃至
5の何れか1項に記載の光源モジュール。
【請求項7】
請求項1乃至
6の何れか1項に記載の光源モジュールを有する光学装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源モジュール、及び光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン等に画像を投射して拡大表示する画像投射装置(所謂プロジェクタ)等で用いられる光源モジュールにおいて、回転可能な蛍光体ホイールに敷設された蛍光体層に励起光を照射し、発せられる蛍光を利用する技術が知られている。
【0003】
このような光源モジュールとして、蛍光体ホイールの面に形成された凹部に蛍光体層を設けることで、蛍光体層から発せられる光のうち、迷光となるような拡散光を抑え、蛍光体層で発せられる光を有効利用する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、蛍光層を設けた面と反対側の面に、蛍光体ホイールを回転させるモータを接続するため、モータの大きさだけ光源モジュールが大型化するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、蛍光体層が設けられた蛍光体ホイールを有する光源モジュールを、小型化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一態様に係る光源モジュールは、光源から出射された励起光を蛍光体層が設けられた蛍光体ホイールに集光して蛍光を発生させるための光源モジュールであって、前記蛍光体ホイールの前記蛍光体層が設けられた面側であって発せられた前記蛍光の少なくとも一部を遮光する位置に設置された、前記蛍光体ホイールを回転させるための駆動部と、前記蛍光体層の前記蛍光が発せられる部分の周囲に設けられ、発せられた前記蛍光の少なくとも一部を遮光する側板と、前記駆動部を保持する保持部と、光学系を収容する鏡胴と、を有し、前記鏡胴は、前記駆動部の回転に伴う振動を吸収する防振部材を介して前記側板、又は前記保持部に固定される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、蛍光体層が設けられた蛍光体ホイールを有する光源モジュールを、小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る照明装置の構成の一例について説明する図である。
【
図2】実施形態に係る蛍光体ホイールの一例について説明する拡大平面図である。
【
図3】実施形態に係るカラーホイールの一例について説明する拡大平面図である。
【
図4】実施形態に係る駆動部の配置の一例について説明する図である。
【
図5】実施形態に係る遮光部の構成の一例について説明する図である。
【
図6】蛍光が発光点を中心に半球状に広がる様子を模式的に説明する図である。
【
図7】実施形態に係る鏡胴、側板、及び保持部を一体化した構成の一例について説明する図である。
【
図8】実施形態に係る光源モジュールの製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係るレンズ群とレンズ鏡胴の一例について説明する図である。
【
図10】第2の実施形態に係る光源モジュールの構成の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
実施形態では、光源モジュールを備えた照明装置を例に説明する。尚、照明装置は、プロジェクタ等の画像投射装置において、投射画像を生成するDMD(Digital Micromirror Device)等の画像生成部に光を照明する装置である。このような照明装置は、特許請求の範囲に記載の「光学装置」の一例である。
【0011】
[第1の実施の形態]
図1は、実施形態に係る照明装置の構成の一例を示す図である。
図1に示されているように、照明装置100は、光源101と、フライアイレンズ102と、レンズ103と、レンズ104と、波長選択偏光分離素子105と、1/4波長板106とを有する。また照明装置100は、レンズ群107と、レンズ鏡胴108と、側板109と、保持部110と、蛍光体ホイール111と、駆動部112と、レンズ113と、カラーホイール114と、ライトトンネル115とを有する。
【0012】
図1において、光源モジュールは、蛍光体ホイール111と、駆動部112と、レンズ群107と、遮光部とを有する。遮光部には、側板109と、駆動部112とが含まれる。遮光部の詳細については、別途、
図5~6を用いて説明する。
【0013】
図1では図示を省略するが、光源モジュールは、さらに蛍光体ホイール111と、駆動部112と、レンズ群107と、遮光部とを収容する筐体を有する。このような光源モジュールは、特許請求の範囲に記載の「光源モジュール」の一例である。
【0014】
照明装置100において、光源101は、直線偏光成分を有する光を出射する。本実施形態では、一例として、光源101が、P偏光成分を有する(P波である)波長λBの青色レーザ光を出射する複数のレーザダイオード(Laser Diode)が並列に配置されたレーザダイオードアレイ(Laser Diode Array)であるとして以降の説明を行う。波長λBは、例えば、400nm<λB<470nmとすることができる。
【0015】
但し、これには限定されず、光源101として青色光を発する単一のレーザダイオードや発光ダイオード(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)素子を用いてもよいし、これらを複合した光源を用いてもよい。或いは、紫外域の波長領域の光を出射するレーザダイオード、発光ダイオード、有機EL素子等を用いてもよいし、これらを複合した光源を用いてもよい。
【0016】
光源101の出射する青色レーザ光は、蛍光体ホイール111において蛍光を生じさせる励起光として使用される。
【0017】
フライアイレンズ102は、複数のレンズが蝿の目のように縦横マトリクス状に配列された光学素子である。フライアイレンズ102によれば、例えば光源101から出射された光による照射面を均一な照度分布にすることができる。
【0018】
光源101の出射する青色レーザ光は、フライアイレンズ102、レンズ103、及びレンズ104を経由して略平行光束として波長選択偏光分離素子105に入射する。波長選択偏光分離素子105は、所定の分光透過率特性を有する光路切替手段である。
【0019】
波長選択偏光分離素子105は、光源101の波長λBにおいて、P波を反射させ、S波は反射させない(S波を透過させる)特性を有する。尚、大よそ500nm以上の波長の光は、P波であるかS波であるかにかかわらず(偏光特性にかかわらず)、波長選択偏光分離素子105を透過する。波長選択偏光分離素子105としては、例えば、偏光ビームスプリッタを用いることができる。
【0020】
波長選択偏光分離素子105に入射したP波の青色レーザ光は、波長選択偏光分離素子105で反射され、直線偏光と円偏光を相互に変換する偏光変換手段である1/4波長板106に導かれる。1/4波長板106を透過した光はP波(P偏光)から円偏光となり、レンズ群107を経由して蛍光体ホイール111に入射する。
【0021】
尚、偏光変換手段は1/4波長板には限定されず、例えば、レンズ群107を構成する何れかのレンズの入射面にTa2O5(五酸化タンタル)等の斜め蒸着膜を成膜したもの等を用いてもよい。ここで、斜め蒸着膜とは、蒸着物質が飛来する方向(蒸着源の方向)に対して、被蒸着対象物を斜めに設置し、被蒸着対象物の所定面の法線に対して蒸着物質を斜めに堆積形成させたものである。
【0022】
レンズ群107は、例えば両凸レンズや平凸レンズ等を適宜組み合わせて構成できる。略平行光束を蛍光体ホイール111にスポット状に収束させる機能と、収束された光を励起光として、蛍光体ホイール111の蛍光体層で発せられる発散光を平行化して略平行光束に変換する機能とを有する。レンズ群107のNA(Numerical Aperture)を大きくすることで、蛍光体層で発せられ、半球状に広がる発散光のより多くを集光でき、集光効率を上げることができる。レンズ群107は、特許請求の範囲に記載の「光学系」の一例である。
【0023】
レンズ群107は、レンズ鏡胴108に収容され、円環状の板バネ部材により押さえられる。円環状のバネ部材をレンズ鏡胴108にネジ等で固定することで、レンズ群107はレンズ鏡胴108に固定される。円環状のバネ部材を介することで、レンズ群107をキズ付けることなく、確実にレンズ鏡胴108に固定することができる。レンズ鏡胴108は、特許請求の範囲に記載の「鏡胴」の一例である。
【0024】
ここで、
図2は、実施形態で用いる蛍光体ホイールの一例を示す拡大平面図であって、蛍光体ホイールを入射光側から見た図である。
図2に示されているように、蛍光体ホイール111は、円盤状の部材、すなわち回転体が、異なる蛍光を発する複数の扇状の領域(セグメント)に分割された構成である。波長選択偏光分離素子105からの光が照射される領域が順次変化するように、周方向に回転駆動される。
【0025】
具体的には、蛍光体ホイール111は、周方向において、黄色の蛍光を発する黄色(Y)蛍光体が形成された黄色(Y)蛍光体領域1111、緑色の蛍光を発する緑色(G)蛍光体が形成された緑色(G)蛍光体領域1112、入射光を反射させる反射面が形成された反射面領域1113の3つの扇状の領域(セグメント)に分割されている。
【0026】
黄色(Y)蛍光体領域1111は、青色レーザ光を励起光として、青色レーザ光よりも長波長の黄色の蛍光を発生する。緑色(G)蛍光体領域1112は、青色レーザ光を励起光として、青色レーザ光よりも長波長の緑色の蛍光を発生する。反射面領域1113は、入射された青色レーザ光をそのまま青色の光として反射する。
【0027】
蛍光体ホイール111は、レンズ群107からの光の入射位置に配置されるセグメントを、回転により切り替えることで、黄色の蛍光、緑色の蛍光、及び青色レーザ光の反射光を取り出すことができる。但し、上記では、青色の光を取り出すための領域に、反射面領域1113を用いる例を示したが、これには限定されない。例えば透明領域、穴が開いた領域、又は拡散領域等を用いて、青色の光を取り出すようにしてもよい。
【0028】
透明領域は、例えば透明なガラスであり、青色のレーザ光を透過する。穴が開いた領域では、青色のレーザ光がそのまま通過する。レンズ群107からの光の入射方向において、青色のレーザ光が透過、又は通過した先に反射面を設け、透明領域を透過した光、又は穴が開いた領域を通過した光を反射させることで、青色の光を取り出すことができる。拡散領域では、青色のレーザ光を拡散反射する。拡散領域は、例えば、表面に大きさの異なる凹凸構造が多数形成された構造とすることができる。
【0029】
また、蛍光体領域として、黄色と緑色の蛍光体領域を用いる例を示したが、何れか1つであってもよく、他の色の蛍光体領域を、置換、又は追加で設けてもよい。
【0030】
さらに、光源として青色レーザの他に、例えば赤色のレーザダイオード等の光源を別に設けてもよい。
【0031】
図1に戻り、蛍光体ホイール111の軸心には、蛍光体ホイール111を回転させるステッピングモータ等の駆動部112が接続される。保持部110は、駆動部112と、駆動部112に接続された蛍光体ホイール111を保持する。
【0032】
蛍光体ホイール111が駆動部112の駆動により所定のタイミングで回転することで、レンズ群107からの光の入射位置が、黄色(Y)蛍光体領域1111、緑色(G)蛍光体領域1112、及び反射面領域1113の3つの何れかのセグメントに切替わる。
図1の111aは、レンズ群107からの光が蛍光体層に照射され、蛍光体層において蛍光が発せられる部分を示す。蛍光体層で発せられる蛍光は、どの方向から見ても輝度が変わらない均等拡散面で発せられた光であり、所謂ランバーシアン配光の光である。
【0033】
黄色(Y)蛍光体領域1111、又は緑色(G)蛍光体領域1112から発生した黄色、又は緑色の蛍光は、レンズ群107、及び1/4波長板106を往きとは逆向きに通過し、波長選択偏光分離素子105に入射する。尚、このときの黄色、又は緑色の蛍光は、ランダム偏光の状態である。
【0034】
波長選択偏光分離素子105は、上述したように、大よそ500nm以上の波長の光は、偏光特性にかかわらず透過する。そのため、蛍光体ホイール111で発生した黄色、及び緑色の蛍光は、波長選択偏光分離素子105を透過し、レンズ113を通ってカラーホイール114に入射する。
【0035】
一方、蛍光体ホイール111の反射面領域1113で反射された光は、レンズ群107、及び1/4波長板106を往きとは逆向きに通過する。ここで、反射面領域1113に入射する円偏光は、反射後も円偏光が維持されるが、反射により入射光とは逆方向に回転する円偏光になる。例えば入射の時に時計回りの円偏光だった光は、反射後は反時計回りの円偏光になる。そして1/4波長板106を通過することで、往きとは偏光方向が直交する直線偏光になる。そのため、波長選択偏光分離素子105を透過し、レンズ113を通ってカラーホイール114に入射する。
【0036】
図3は、実施形態で用いるカラーホイールの一例を示す拡大平面図であって、カラーホイールを入射光側から見た図である。
図3に示されているように、カラーホイール114は、円盤状の部材、すなわち回転体が、複数の扇状の領域(セグメント)に分割された構成である。具体的には、カラーホイール114は、周方向において、赤色(R)領域1141、緑色(G)領域1142、透明領域1143、及び拡散領域1144の4つの扇状の領域(セグメント)に分割されている。
【0037】
カラーホイール114における赤色(R)領域1141は、赤色光を透過するダイクロイックフィルタが形成された領域であり、大よそ600nm以上の波長範囲の光が透過し、それ以外の波長範囲の光が反射する。緑色(G)領域1142は、緑色光を透過するダイクロイックフィルタが形成された領域であり、大よそ500nm~580nm程度の波長範囲の光が透過し、それ以外の波長範囲の光が反射する。
【0038】
透明領域1143では、全ての波長範囲の光がそのまま透過する。透明領域1143は、透明なガラス等としてもよいし、穴が開いた構成としてもよい。拡散領域1144は、全ての波長範囲の光が拡散して透過する。例えば、表面に大きさの異なる凹凸構造が多数形成された構造とすることができる。
【0039】
カラーホイール114は、レンズ113からの光の入射位置に配置されるセグメントを、回転により切り替えることで、赤色、緑色、黄色及び青色の光を取り出すことができる。
【0040】
尚、波長を変えずに光を取り出す領域として、反射面領域を用いてもよい。また赤色と緑色の光を透過するダイクロイックフィルタが形成された領域の例を示したが、これに限定されない。何れか1つのダイクロイックフィルタを形成してもよいし、他の色のダイクロイックフィルタを、置換、又は追加で形成してもよい。さらに、光源として青色レーザの他に、例えば赤色のレーザダイオード等の光源を別に設けてもよい。
【0041】
図1に戻り、カラーホイール114の軸心には、図示を省略するが、カラーホイール114を回転させるステッピングモータ等の駆動部が設けられている。カラーホイール114が駆動部の駆動により所定のタイミングで回転することで、レンズ113からの光の入射位置が、赤色(R)領域1141、緑色(G)領域1142、透明領域1143、及び拡散領域1144の4つの何れかのセグメントに切替わる。すなわち、青色レーザ光及び蛍光の光路上に、何れかのセグメントが時間的に交互に配置される。
【0042】
青色の光は、レンズ113からの光の入射位置に、拡散領域1144が配置されたタイミングで、カラーホイール114に入射する。拡散領域1144を通過することで、青色の光は拡散される。これにより青色の光、すなわちレーザ光のコヒーレンス性が失われ、スクリーン等に現れるムラやスペックルが低減される。拡散領域1144を通過した光は、青色の照射光となる。
【0043】
黄色の蛍光は、レンズ113からの光の入射位置に、透明領域1143、又は赤色(R)領域1141が配置されたタイミングで、カラーホイール114に入射する。透明領域1143が配置されたタイミングでは、最大限の明るさで黄色の光が得られる。通過した光は黄色の照明光となる。また赤色(R)領域1141が配置されたタイミングでは、赤色の光が得られる。通過した光は赤色の照射光となる。
【0044】
緑色の蛍光は、レンズ113からの光の入射位置に、緑色(G)領域1142が配置されたタイミングで、カラーホイール114に入射する。これにより緑色の純度が調整され、緑色の照射光となる。
【0045】
カラーホイール114の各領域を通過した光は、ライトトンネル115に入射する。
【0046】
ライトトンネル115は、内部を中空とする筒状の部材である。ライトトンネル115へ入射する各照射光は、ライトトンネル115の内部で反射を繰り返すことにより、ライトトンネル115の出口では照度分布が均一となる。すなわち、ライトトンネル115は、各照明光の光量むらを低減する照度均一化手段としての機能を有する。尚、ライトトンネル115に代えて、フライアイレンズ等の他の照度均一化手段を採用してもよい。
【0047】
ライトトンネル115を経て照度分布が均一化された光は、DMD等の画像生成部に照射される。
【0048】
照明装置100は、このようにして画像生成部に光を照射できる。画像生成部は照射された光を用いて投射画像を生成することができる。
【0049】
ここで、本実施形態の光源モジュールにおける駆動部の配置について、
図4を参照して説明する。
【0050】
図4(a)は、実施形態の光源モジュール200における駆動部112の配置の一例を説明する図である。
図4(a)において、駆動部112は、蛍光体ホイール111の蛍光体層111b(ハッチング部分)が設けられている面側に配置される。駆動部112がこのように配置された光源モジュール200を筐体201の内部に収容すると、筐体201の蛍光体ホイール111に対向する面から蛍光体ホイール111までの距離は、
図4(a)に矢印202aで示されている長さとなる。
【0051】
一方、
図4(b)は、本実施形態の比較例としての光源モジュール300における駆動部112の配置を説明する図である。
図4(b)では、本実施形態の光源モジュール200と同様の機能を有する部品には、同じ部品番号が付されている。
【0052】
図4(b)において、駆動部112は、蛍光体ホイール111の蛍光体層111b(ハッチング部分)が設けられている面と反対側に配置される。駆動部112が、このように配置された光源モジュール300を筐体201の内部に収容すると、筐体201の蛍光体ホイール111に対向する面から蛍光体ホイール111までの距離は、
図4(b)に矢印202bで示されている長さとなる。図から明らかなように、矢印202aの長さは、矢印202bより短い。
【0053】
本実施形態では、蛍光体ホイール111の蛍光体層111bが設けられた面側に、駆動部112を配置することで、筐体201の蛍光体ホイール111に対向する面から蛍光体ホイール111までの距離を短縮する。これにより光源モジュールのZ方向の長さを短縮でき、光源モジュールを小型化することができる。
【0054】
次に、実施形態の光源モジュールにおける遮光部について、
図5を参照して説明する。
【0055】
図5は、
図1の照明装置100の側面図である。
図5(a)は、
図1の照明装置100を正のX方向から視た側面図であり、
図5(b)は、
図1の照明装置100を負のX方向から視た側面図である。
【0056】
図5(a)、及び(b)に示されているように、レンズ群107はレンズ鏡胴108に収容され、固定される。側板109は、蛍光体ホイール111の蛍光体層において、レンズ群107から光が照射されて蛍光が発せられる部分を、正のX方向から塞ぐようにして配置される。尚、112aは駆動部112に接続する電気配線である。
【0057】
ここで、蛍光体ホイール111の蛍光体層で発せられた蛍光は、励起光の入射方向とは逆向きに、発光点を中心に半球状に広がる発散光となる。このような発散光のうち、レンズ群107のNAをこえる方向に伝搬する光は、レンズ群107で集光しきれないため、発せられた蛍光の一部は、レンズ群107の有効口径から外れて迷光となり、投射画像にフレア等のノイズを生じさせる場合がある。
【0058】
図6は、蛍光が発光点を中心に半球状に広がる様子を模式的に説明する図である。
図6において、蛍光体ホイール111の蛍光体層111bには、レンズ群107から図の矢印方向に励起光が照射される。励起光が入射する蛍光体層111bの部分111aからは、蛍光が発せられ、発散光111cが半球状に広がって伝搬する。発散光111cのうち、レンズ群107のNAに含まれる光107aは、レンズ群107により集光され、照射光として用いられる。一方、レンズ群107のNAをこえる方向に伝搬する光(発散光111cのうち、ハッチングで示されている光)は、上述のように、レンズ群107の有効口径から外れて迷光となる。
【0059】
図5に戻り、本実施形態では、蛍光が発せられる部分を正のX方向から塞ぐように、側板109を配置することで、発せられる蛍光のうち、正のX方向に伝搬して迷光となる光を遮光し、投射画像にフレア等のノイズが生じることを防止する。
【0060】
側板109の表面は、表面に入射した蛍光が反射して迷光となることを防止するために、反射防止処理が施されている。反射防止処理とは、例えば、側板109の表面を艶消しの黒色に黒染めしたり、表面への入射光を散乱させるように面を荒らしたりする処理である。側板109の反射防止処理は、側板109に含まれる表面のうち、少なくとも蛍光が照射される領域に対して施されていればよい。
【0061】
一方、駆動部112は、蛍光体ホイール111の蛍光体層において、レンズ群107から光が照射されて蛍光が発せられる部分を、負のX方向から塞ぐようにして配置される。これにより、発せられる蛍光のうち、負のX方向に伝搬して迷光となる光を遮光し、投射画像にフレア等のノイズが生じることを防止する。
【0062】
駆動部112の表面は、表面に入射した蛍光が反射して迷光となることを防止するために、反射防止処理が施されている。駆動部112の反射防止処理とは、例えば、駆動部112の表面を艶消しの黒色に黒染めしたり、表面への入射光を散乱させるように面を荒らしたりする処理である。反射防止処理は、駆動部112に含まれる表面のうち、少なくとも蛍光が照射される部分に対して施されていればよい。
【0063】
このように本実施形態では、側板109と、駆動部112とが遮光部の機能を有し、蛍光による迷光を防止する。
【0064】
尚、側板109と、駆動部112とを備える構成は、特許請求の範囲に記載の「蛍光を発する部分の周囲に設けられ、発せられた蛍光の少なくとも一部を遮光する遮光部」の一例である。
【0065】
次に、実施形態のレンズ鏡胴、側板、及び保持部を一体化した構成について、
図7を参照して説明する。
図7(a)は、
図1における蛍光体ホイール111を正のZ方向で、かつ正のX方向から視た斜視図である。
図7(b)は、同様に
図1における蛍光体ホイール111を正のZ方向で、かつ負のX方向から視た斜視図である。
【0066】
上述したように、蛍光が発せられる部分を正のX方向から塞ぐように、側板109が配置される。側板109は、一例として、図示されているような円筒の一部を成す形状をしている。側板109を配置することで、発せられる蛍光のうち、正のX方向に伝搬して迷光となる光が遮光される。また蛍光が発せられる部分を負のX方向から塞ぐように、駆動部112を配置することで、発せられる蛍光のうち、負のX方向に伝搬して迷光となる光が遮光される。
【0067】
図7(a)、及び(b)に示されているように、レンズ鏡胴108と、側板109と、駆動部112の保持部110は、一体に形成された1つの部材である。このような部材は、例えばアルミニウムや鉄等の金属材料を切削加工する等で形成される。また金型を用いてプラスチックを成形加工することで形成してもよい。プラスチックの成形加工であれば、大量生産の場合に低コスト化や加工時間の短縮が図れる。但し、励起光の照射で蛍光体ホイール111の発熱が高温になりすぎると、部材が溶ける場合があるため、耐熱性のプラスチックを用いることが望ましい。金属材料により、レンズ鏡胴108と、側板109と、保持部110を一体化した部材を形成すると、蛍光体ホイール111が発熱しても溶ける心配はなく、熱に強い部材になる。
【0068】
上述したように、レンズ群107のNAを大きくするほど、レンズ群107による蛍光の集光効率は上がる。しかしその反面で、レンズ群107の設置誤差等でレンズ群107と蛍光体ホイール111との距離が変動すると、集光効率が大きく低下する場合がある。集光効率の低下は、画像投射装置等における投射画像の明るさの低下を招来させる。一方で、このような距離変動による集光効率の低下を抑制しようとすると、高精度の組立調整が必要となり、組立時間、及び組立コストが増大する。
【0069】
本実施形態によれば、レンズ鏡胴108と、側板109と、保持部110を、一体に形成した部材とすることで、レンズ群107と蛍光体ホイール111との距離を、部材の加工精度により制御することができる。これにより組立時間、及び組立コストを増大させることなく、レンズ群107と蛍光体ホイール111との距離変動に伴う蛍光の集光効率の低下を抑制することができる。また、レンズ群107と蛍光体ホイール111との間の距離変動を抑制できるため、蛍光体ホイール111により近付ける高NAのレンズ群107を設計し、採用することができ、蛍光の集光効率を上げ、明るい照明装置を実現することができる。
【0070】
次に
図8は、実施形態の光源モジュールの製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8の製造方法では、
図9に示されているように、第1レンズ91と、第2レンズ94とからなる2枚構成のレンズ群を、レンズ鏡胴108に収容し、固定することを想定する。またレンズ鏡胴108と、側板109と、保持部110は、一体化された1つの部材であり、
図8では、このような部材の中の一部であるレンズ鏡胴108が示され、他の部分は省略されているものとする。
【0071】
図8において、先ず、第1レンズ91をレンズ鏡胴108の内部の所定の箇所に配置する(ステップS801)。
【0072】
次に、第1レンズ91を板バネ部材92で負のZ方向に押さえ、板バネ部材92をネジ93でレンズ鏡胴108に固定することで、第1レンズ91をレンズ鏡胴108に固定する(ステップS803)。
【0073】
次に、第2レンズ94をレンズ鏡胴108の内部の所定の箇所に配置する(ステップS805)。
【0074】
次に、第2レンズ94を板バネ部材95で負のZ方向に押さえ、板バネ部材95をネジ96でレンズ鏡胴108に固定することで、第2レンズ94をレンズ鏡胴108に固定する(ステップS807)。
【0075】
次に、保持部110に駆動部112を固定する(ステップS809)。
【0076】
次に、レンズ鏡胴108と、側板109と、保持部110を一体化した部材を、筐体201に固定する(ステップS811)。この固定は、接着剤で固定してもよいし、嵌合やネジ止めによる固定であってもよい。
【0077】
このようにして、本実施形態の光源モジュール200を製造することができる。
【0078】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、蛍光体ホイールの蛍光体層が設けられた面側に蛍光体ホイールを回転させる駆動部を設け、駆動部が遮光部の少なくとも一部を形成する。これにより、励起光の入射方向における光源モジュールの長さを短縮し、光源モジュールを小型化することができる。また遮光部を設けることで、蛍光体層で発せられる蛍光のうち迷光となる光を遮光し、投射画像におけるフレア等のノイズを防止することができる。
【0079】
本実施形態によれば、駆動部、又は側板の表面の少なくとも一部に反射防止処理を施すことで、駆動部、又は側板の表面での反射光による迷光を抑制し、投射画像におけるフレア等のノイズを防止することができる。
【0080】
本実施形態では、レンズ鏡胴108と、側板109と、保持部110とを一体化した部材を用いる例を示したが、これには限定されない。例えばレンズ鏡胴108を、側板109、及び保持部110と分離した構成にしてもよい。この場合において、レンズ鏡胴108を、側板109、又は保持部110に固定する際に、防振ゴムや防振ゲル等の防振部材を介して固定してもよい。駆動部112の回転に伴う振動を防振部材が吸収することで、レンズ鏡胴108に収容したレンズ群107が振動で位置ずれすることを防止でき、レンズ群107の位置ずれに起因する蛍光の集光効率の低下を防止することができる。
【0081】
本実施形態の保持部110は、保持部110より熱伝導率の高い高熱伝導部材を介して、駆動部112を保持するようにしてもよい。具体的には、シリコーン樹脂やセラミック等を材料とする熱伝導シートを、保持部110と駆動部112との間に介在させて、駆動部112を保持部110に固定する。或いは、高熱伝導部材として熱伝導率の高いグリースを用い、保持部110と駆動部112との間に熱伝導率の高いグリースを介在させるようにしてもよい。
【0082】
駆動部112は回転により発熱する場合があり、駆動部112の発熱で、蛍光体ホイール111の蛍光体層111bの温度が上昇し、蛍光の発光効率が低下する場合がある。駆動部112の発熱を、熱伝導シートにより保持部110側に伝達させることで、蛍光体ホイール111への伝熱を抑制し、駆動部112の発熱に起因した蛍光体層111bの蛍光の発光効率の低下を抑制することができる。
【0083】
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態の光源モジュールについて説明する。尚、第1の実施形態において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0084】
蛍光体ホイールの蛍光体層に励起光を照射すると、蛍光体層における励起光の照射部分が発熱する。発熱により蛍光体層が高温の状態になると、蛍光体層での蛍光の発光効率が低下する場合がある。本実施形態では、光源モジュールが放熱部材を備える構成とする。蛍光体層と放熱部材とで熱交換させ、放熱部材に放熱させることで、蛍光体層を冷却可能にしている。
【0085】
図10は、本実施形態の光源モジュールの構成の一例を示す図である。光源モジュール200aは、ヒートシンク210を有する。筐体201の蛍光体ホイール111と対向する面には、貫通孔が設けられている。ヒートシンク210は、貫通孔を通して蛍光体ホイール111の蛍光体層111bが設けられている面とは反対側の面に、近接して配置され、筐体201に固定される。ヒートシンク210は、特許請求の範囲に記載の「放熱部材」の一例である。
【0086】
ヒートシンク210は蛍光体ホイール111に非接触に配置されているため、蛍光体ホイール111の回転がヒートシンク210により阻害されることはない。ヒートシンク210が蛍光体ホイール111に近付くほど冷却効率が上がるため、できるだけ近付けることが望ましい。
【0087】
本実施形態では、放熱部材の一例としてヒートシンクを示したが、ヒートパイプを用い、気体、又は液体を媒体に熱交換させるようにしてもよい。
【0088】
また本実施形態では、ヒートシンク210と筐体201が別々の構成である例を示したが、一体化してもよい。つまり、筐体201の蛍光体ホイール111に近接する部分に、フィン等の表面積が広くなる構造を設け、このフィン等を放熱部材として機能させてもよい。この場合、筐体201は、アルミニウム等の熱伝導率の高い材料で形成されることが望ましい。
【0089】
尚、上記以外の効果は、第1の実施形態で説明したものと同様である。
【0090】
以上、本発明の実施形態の例について記述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0091】
例えば、実施形態では、蛍光体層に励起光を照射し、励起光の入射方向と反対方向に発せされる蛍光を用いる光源モジュールについて説明したが、これには限定されない。例えば、蛍光体層に励起光を照射し、励起光の入射方向と同じ方向に発せされる蛍光を用いる光源モジュールに適用してもよい。
【符号の説明】
【0092】
100 照明装置
101 光源
102 フライアイレンズ
103、104、113 レンズ
105 波長選択偏光分離素子
106 1/4波長板
107 レンズ群(光学系の一例)
108 レンズ鏡胴(鏡胴の一例)
109 側板
110 保持部
111 蛍光体ホイール
112 駆動部
114 カラーホイール
115 ライトトンネル
200、200a 光源モジュール
201 筐体
210 ヒートシンク(放熱部材の一例)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0093】