(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】ウェブ搬送装置及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B65H 23/038 20060101AFI20220511BHJP
B65H 27/00 20060101ALI20220511BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B65H23/038 Z
B65H27/00 B
B41J15/04
(21)【出願番号】P 2018133080
(22)【出願日】2018-07-13
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】大村 裕二
【審査官】飯田 義久
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-063631(JP,A)
【文献】特開2005-206261(JP,A)
【文献】登録実用新案第3022119(JP,U)
【文献】特開2015-048220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 23/00-23/16
B65H 23/24-23/34
B65H 27/00
B41J 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送されるウェブに従動する搬送ローラであって、該搬送ローラのローラ幅方向を少なくとも3つ以上の区間に分割した任意の区間のローラ外径が変更可能である搬送ローラと、
前記搬送ローラにおける前記任意の区間のローラ外径を変える外径変更手段と、
前記搬送ローラにおける前記任意の区間のローラ外径を加減調整する外径調整駆動手段と、
使用するウェブの条件を設定するウェブ条件設定手段と、
ウェブに応じた前記搬送ローラの各区間のローラ外径値を記憶する外径記憶手段と、を有し、
前記ウェブ条件設定手段により設定されたウェブ条件に応じて前記外径調整駆動手段を駆動するウェブ搬送装置。
【請求項2】
前記外径調整駆動手段による前記搬送ローラの各区間のローラ外径の加減調整をウェブ搬送中に実施可能としたことを特徴とする請求項1記載のウェブ搬送装置。
【請求項3】
前記搬送ローラのウェブ搬送方向の下流に設けられ、ウェブの幅を検出する第1のウェブ幅検知手段及びウェブの位置を検出する第1のウェブ位置検知手段の少なくとも一方の第1のウェブ検知手段と、
前記少なくとも一方の第1のウェブ検知手段の検出値に応じて、前記搬送ローラの各区間のローラ外径を決定する第1の外径制御手段と、を有し、
前記第1の外径制御手段により決定された前記搬送ローラの各区間のローラ外径となるように前記外径調整駆動手段を駆動することを特徴とする請求項1又は2記載のウェブ搬送装置。
【請求項4】
前記搬送ローラのウェブ搬送方向の下流に設けられ、ウェブの幅を検出する第1のウェブ幅検知手段及びウェブの位置を検出する第1のウェブ位置検知手段の少なくとも一方の第1のウェブ検知手段と、
前記搬送ローラの前記ウェブ搬送方向の上流に設けられ、ウェブの幅を検出する第2のウェブ幅検知手段及びウェブの位置を検出する第2のウェブ位置検知手段の少なくとも一方の第2のウェブ検知手段と、
前記少なくとも一方の第2のウェブ検知手段と前記少なくとも一方の第1のウェブ検知手段との各検出値の差分に応じて、前記搬送ローラの各区間のローラ外径を決定する第2の外径制御手段と、を有し、
前記第2の外径制御手段により決定された前記搬送ローラの各区間のローラ外径となるように前記外径調整駆動手段を駆動することを特徴とする
請求項1又は2記載のウェブ搬送装置。
【請求項5】
前記少なくとも一方の第1のウェブ検知手段の検出値が、規定の範囲以外の場合にその旨を報知する報知手段を有することを特徴とする請求項3又は4記載のウェブ搬送装置。
【請求項6】
前記搬送ローラのウェブ搬送方向の下流に配置され、ウェブに印刷を行う印刷部を有することを特徴とする請求項1~5の何れか1つに記載のウェブ搬送装置。
【請求項7】
前記印刷部の前記ウェブ搬送方向の下流に配置され、前記搬送ローラとは別の搬送ローラと、
前記別の搬送ローラの前記ウェブ搬送方向の下流に配置された乾燥部と、
を有することを特徴とする請求項6記載のウェブ搬送装置。
【請求項8】
ウェブに液体を吐出する液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備えた液体を吐出する装置において、
前記液体を吐出する装置が、請求項6又は7記載のウェブ搬送装置の前記印刷部に設けられていることを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブ搬送装置及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺状ウェブのシワの防止(シワ拡張)のために、軸方向中央よりも両端部の外径を大きくしたローラ(コンケーブローラ、逆クラウンローラとも呼ばれる)を用いる技術が既に知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、湾曲したローラが回転することにより、ウェブを外側方向に押し出しシワ防止(シワ拡張)を行うローラ(エキスパンダーローラ、ボウローラとも呼ばれる)を用いる技術が既に知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、今までのコンケーブローラでは、一仕様のコンケーブローラ(コンケーブ量)により対応可能なウェブの仕様やシワ拡張量に制約があり、したがって仕様(コンケーブ量)違いのコンケーブローラを複数本準備し、ウェブの仕様やシワ拡張量に応じてコンケーブローラを選択交換する必要があるという問題があった。
【0004】
また、今までのボウローラでは、一仕様のボウローラ(湾曲量)により対応可能なウェブの仕様やシワ拡張量に制約があり、したがってウェブの仕様やシワ拡張量に応じてボウローラの位相を変えウェブへの当接角度を調整したり、仕様(湾曲量)違いのボウローラを複数本準備し、ウェブの仕様やシワ拡張量に応じてボウローラを選択交換したりする必要があるという問題があった。
【0005】
コンケーブローラのコンケーブ量、及びボウローラの湾曲量が小さければ狙いのシワ拡張機能が発揮できないし、コンケーブ量及び湾曲量が大きければウェブが当該ローラの外形に沿えず逆にシワを誘発してしまう。
したがって、ウェブの仕様やシワ拡張量に応じて適切なコンケーブローラやボウローラに交換する必要があり、マシンダウンタイムが増大するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、マシンダウンタイムを増大させることなく、ロール体であるウェブの仕様やシワ発生状況に応じて適正なシワ拡張機能を発揮できる搬送ローラを用いたウェブ搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、搬送されるウェブに従動する搬送ローラであって、該搬送ローラのローラ幅方向を少なくとも3つ以上の区間に分割した任意の区間のローラ外径が変更可能である搬送ローラと、前記搬送ローラにおける前記任意の区間のローラ外径を変える外径変更手段と、前記搬送ローラにおける前記任意の区間のローラ外径を加減調整する外径調整駆動手段と、使用するウェブの条件を設定するウェブ条件設定手段と、ウェブに応じた前記搬送ローラの各区間のローラ外径値を記憶する外径記憶手段と、を有し、前記ウェブ条件設定手段により設定されたウェブ条件に応じて前記外径調整駆動手段を駆動するウェブ搬送装置にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マシンダウンタイムを増大させることなく、ウェブの仕様やシワ発生状況に応じて適正なシワ拡張機能を発揮できる搬送ローラを用いたウェブ搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係るウェブ搬送装置の構成について説明する図である。
【
図2】第1の実施形態に係るウェブ搬送装置に設けられている搬送ローラの構成について説明する模式的な断面図である。
【
図3】(A)は
図2に示した搬送ローラの構成とは別の構成について説明する模式的な断面図、(B)は
図2や(A)に示した搬送ローラとは別の構成について説明する模式的な断面図である。
【
図4】第2の実施形態に係るウェブ搬送装置の構成について説明する図である。
【
図5】第2の実施形態の変形例に係るウェブ搬送装置の構成について説明する図である。
【
図6】第3の実施形態に係るウェブ搬送装置の構成について説明する図である。
【
図7】第5の実施形態に係る液体吐出ヘッドの主要部の斜視図である。
【
図8】ノズル孔側の側面より液体吐出ヘッドの各構成部品を見た平面図である。
【
図9】圧電素子側より液体吐出ヘッドの各構成部品を見た平面図である。
【
図10】
図7に示した液体吐出ヘッドをノズル配列方向と直交する方向であるA-A線にて断面にした模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図を参照して実施例を含む本発明の実施の形態を詳細に説明する。各実施形態等に亘り、同一の機能及び形状等を有する構成要素(部材や構成部品)等については、混同の虞がない限り一度説明した後では同一符号を付すことによりその説明を省略する。図及び説明の簡明化を図るため、図に表されるべき構成要素であっても、その図において特別に説明する必要がない構成要素は適宜断わりなく省略することがある。公開特許公報等の構成要素を引用して説明する場合は、その符号に括弧を付して示し、各実施形態等のそれと区別するものとする。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態では、発明が解決しようとする課題に記載した目的と共に、マシンダウンタイムを増大させることなくエッジ基準搬送のウェブ搬送装置にも対応できるシワ拡張ローラを用いたウェブ搬送装置を提供することを目的としている。
図1~
図3を参照して、本発明の第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係るウェブ搬送装置の構成について説明する図である。
図2は、第1の実施形態に係るウェブ搬送装置に設けられている搬送ローラの構成について説明する模式的な断面図である。
図3(A)は
図2に示した搬送ローラの構成とは別の構成について説明する模式的な断面図、
図3(B)は
図2や
図3(A)に示した搬送ローラとは別の構成について説明する模式的な断面図である。
【0012】
図1において、ウェブ搬送装置100は、長尺状のウェブWを搬送する装置であり、ウェブ原反がロール状に巻き取られた原反ロール11を巻き出し軸1にセットし、駆動ローラであるフィードローラ4を駆動することでウェブWを図中矢印で示すウェブ搬送方向Xに連続的に搬送し、巻き取り軸2により図中矢印方向(時計回り方向)に回転して巻き取ることで成果物としての巻き取りロール12を形成する。尚、巻き取り軸2には、駆動源としての例えば駆動モータが連結されていて、巻き取り軸2は前記駆動モータによって図中矢印方向(時計回り方向)に回転駆動される。本実施形態では、ウェブWの具体例としては例えばロール紙やコート紙などが用いられる。
【0013】
ウェブ搬送装置100内には、搬送されるウェブWに従動回転するガイドローラ3を複数配置することで搬送パス(ウェブ搬送路)が形成されている。
図1では、搬送パス上に印刷部10、乾燥部6を有したウェブ搬送装置としての印刷装置(画像形成装置)を記載している。印刷部10では、ノズルから液体を吐出・噴射する複数の液体吐出ヘッド5K,5C,5M,5Y,5Wを備えている。液体吐出ヘッド5K,5C,5M,5Y,5Wは、例えばそれぞれブラック、シアン、マゼンダ、イエロー、ホワイトの5色の液体としてインクをウェブ表面に対して吐出して画像を形成するインクジェットヘッドからなり、乾燥部6で該インクを乾燥定着するようになっている。
以下、液体吐出ヘッド5K,5C,5M,5Y,5Wを統括的に示す符号として、液体吐出ヘッド5を用いる。尚、液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置の詳細については、各実施形態の最後にまとめて説明する。
【0014】
搬送中のウェブWにシワが発生すると、成果物となる巻き取りロール12の品質・価値が低下するため、シワ発生を防止する必要がある。そのため、本発明の実施形態では搬送されるウェブWに従動回転してシワを拡張する機能を有する搬送ローラ20を印刷部10の上流に設けている。
【0015】
搬送ローラ20は、例えば
図2に示すように、搬送ローラ20の両端面から突出したローラ軸20aがウェブ搬送装置本体に回転可能に支持されていることにより、搬送されるウェブWに従動して回転するようになっている。搬送ローラ20は、ウェブ搬送方向であるウェブ搬送方向Xと直交するローラ幅方向Yに少なくとも3つ以上の区間(本実施形態では6つの区間(1)~(6))に区分(分割)された外径可変体である区分ローラ20-1~20-6で構成されていて、任意の区間の区分ローラのローラ外径が変更可能に構成されている。ちなみに、区間(1)には区分ローラ20-1が、区間(2)には区分ローラ20-2が、区間(3)には区分ローラ20-3が、区間(4)には区分ローラ20-4が、区間(5)には区分ローラ20-5が、区間(6)には区分ローラ20-6が配置されている。尚、搬送ローラ20のローラ幅方向Yは、搬送ローラ20の長手方向、軸方向とも呼ぶ。
また、本発明の実施形態では、搬送ローラ20における各区間(1)~(6)の区分ローラ20-1~20-6のローラ外径を任意に変える外径変更手段を有している。更に、各区間(1)~(6)の区分ローラ20-1~20-6のローラ外径は、外径調整駆動手段30により加減調整できるように構成されている。
【0016】
本発明では、上記外径変更手段は限定しない。即ち、上記外径変更手段としては、上記特許文献2に開示されている内部圧力の調整による方法や、上記特許文献1に開示されているピエゾ素子を駆動源としたもの、バルーンを駆動源としたもの、或いは形状記憶合金を駆動源としたもの、その他のメカ構成によるものであってもよい。
【0017】
図2に示す実施形態例では、ローラ幅方向Y(ウェブ幅方向でもある)を6区間に区分して、搬送ローラ20の区間(1)~(6)にまたがる幅のウェブをウェブ幅方向の中央基準で搬送する場合を示している。本発明の実施形態は、これに限らず、好ましくは少なくとも4つの区間以上に区分することで、更には少なくとも3つの区間以上の区間に区分することで、本発明の搬送ローラに係るシワ拡張機能を発揮する効果を得られる(以下、シワ拡張効果を発揮するともいう)。尚、複数(極限すれば2つ)の区間に区分した場合、シワ拡張効果ではなく幅方向の位置が調整可能となる。
搬送ローラ20の外郭には、可撓性の外郭部材20Aを有し、各区間(1)~(6)の区分ローラ20-1~20-6のローラ外径形状にほぼ倣って搬送ローラ20表面の形状プロファイルを形成している。
【0018】
例えば一般的にシワ拡張機能を有するためには、ローラ幅方向Yの中央部よりも両端部のローラ外径を大きくする。搬送ローラ20の各区間(1)~(6)にまたがる幅のウェブを使用しシワ拡張効果を得たい場合は、区分ローラのローラ外径を区間(3)=(4)<(2)=(5)<(1)=(6)という関係とすれば、
図2の二点鎖線で示すように中央部より両端部のローラ外径を大とした搬送ローラ20の形状プロファイルにすることが可能であり、シワ拡張効果を発揮できる。
【0019】
ここでウェブの仕様や期待するシワ拡張量に応じて搬送ローラ20の形状プロファイルを適正に設定する必要がある。即ち、仕様が異なるウェブAとウェブBを比較してウェブAの方がよりシワが発生しやすくウェブ拡張効果を大きくしたい場合は、区間(1)((6))と区間(3)((4))の区分ローラの外径の差分を大きくする。一方、区間(1)((6))と区間(3)((4))の区分ローラの外径の差分が大き過ぎる場合、ウェブが搬送ローラ20の形状プロファイル(以下、外形プロファイルともいう)に沿うことができず本来期待するシワ拡張効果が得られないばかりか逆にシワを誘発する可能性もある。また区間(2)((5))の区分ローラの外径についても同様に適正に設定する必要がある。
【0020】
本発明の実施形態では、ユーザが使用するウェブの条件を設定(入力)するウェブ条件設定手段としてのウェブ条件入力手段50と、搬送ローラ20の複数の区分ローラの各外周面の外径について、使用するウェブに応じたローラ外径の適正値(以下、ローラ外径値という)を記憶しておく外径記憶手段40とを有している。
ウェブ条件入力手段50の具体例としては、例えばユーザがウェブ条件を入力するための専用キーやテンキー、或いは液晶表示装置等で構成されたタッチパネル式の入力部と、液晶表示部を備えた操作表示部を挙げられる。
【0021】
ウェブAを初めて使用する場合には、オペレータ(ユーザを含む)はウェブの材質、厚み、幅などをウェブ条件入力手段50に入力登録しておく。そして初回のテスト搬送にて期待するシワ拡張効果を発揮できるよう搬送ローラ20の区間(1)~(6)の各区分ローラの外径を決定し、外径記憶手段40に入力登録する。次回では、ウェブAを使用するとき、これをウェブ条件入力手段50で選択することにより搬送ローラ20の適正な外形プロファイルを外径記憶手段40から呼び出すことができ、外径調整駆動手段30を駆動することができる。このように、ウェブ仕様ごとに同様の処理をすることで、搬送ローラ20の適正な外形プロファイルを探索評価し調整するために必要なマシンダウンタイムを低減可能である。
【0022】
ここでウェブ条件入力手段50にて入力登録する情報として、ウェブの材質、厚み、幅としたのは一例であり、例えばウェブのヤング率、摩擦係数などのより細かい情報を入力するようにしてもよい。またウェブを搬送する際に設定する張力や、
図1のように乾燥部6を有しているウェブ搬送装置100の場合は乾燥設定温度などの乾燥条件もあわせて入力登録するようにしてもよい。
【0023】
更に入力登録した使用ウェブについての情報と、搬送ローラ20の適正な外径を記憶する外径記憶手段40の情報を蓄積し分析活用することにより、更に搬送ローラ20の適正な外形プロファイルを探索評価し調整するために必要なマシンダウンタイムを低減可能である。即ち、初めて使用するウェブCの入力条件が既知のウェブAの入力条件と近しければ、初回評価時の搬送ローラ20の外形プロファイルについてはウェブAを使用する際の外形プロファイルを外径記憶手段40から読み出し、外径調整駆動手段30を駆動してそれと同様にする。初めて使用するウェブCの入力条件が既知のウェブAの入力条件とウェブBの入力条件の間の値であれば、初回評価時の搬送ローラ20の外形プロファイルについてはウェブAを使用する際の外形プロファイルとウェブBを使用する際の外形プロファイルを外径記憶手段40から読み出し演算して、外径調整駆動手段30を駆動してそれらの間の外形プロファイルにする。このようにすることで、搬送ローラ20の適正な外形プロファイルに設定するためには微調整で済むため、マシンダウンタイムを低減可能となる。
尚、上記演算を自動的に行えるように、例えばCPU等を備えた演算手段(コンピュータ)を外径調整駆動手段30に付設してもよい。
【0024】
ウェブの仕様や期待するシワ拡張効果に対する(1)~(6)の各区間の適正な区分ローラの外径は実験、評価等により決定し外径記憶手段40に予め記憶しておく。これに限らず、随時、修正した適正な区分ローラの外径を外径記憶手段40に記憶するようなことも可能である。そのために、前者の外径記憶手段40としては例えばROMを用い、後者の外径記憶手段40としては例えばEEPROMなどを含む不揮発性メモリを用いる。
尚、外径記憶手段40及び外径調整駆動手段30の一部の具体例としては、CPU、RAM、ROM、タイマ等を備えたマイクロコンピュータで構成してもよい(後述の実施形態等でも同じ)。
【0025】
ここで、従来のウェブ搬送装置におけるウェブ幅方向の中央基準搬送及びエッジ基準搬送について補説する。今までのコンケーブローラ及びボウローラは、ウェブ幅方向の中央基準搬送の搬送装置が前提であり、エッジ基準搬送の搬送装置には使用できない。つまりコンケーブや湾曲がウェブ幅の中央対称であるため、幅が狭いウェブをエッジ基準で搬送した場合には狙いのシワ拡張効果が発揮できなかったり、コンケーブや湾曲によりウェブの搬送位置が変化したりしてしまうという問題があった。
エッジ基準搬送に対し中央基準搬送の場合は、ウェブの両端エッジの位置を決めるエッジガイドや両端エッジの位置を検出するエッジセンサを両端とも可動とする必要があり、部品構成が複雑になり信頼性低下やコスト増加が発生したり、幅狭ウェブを使用する場合はウェブの走行位置がオペレータから離れるため操作性が低下したりするデメリットがあるので、エッジ基準搬送のウェブ搬送装置にも対応可能なシワ拡張ローラが望まれる。
【0026】
そこで、
図3を参照して、マシンダウンタイムを増大させることなくエッジ基準搬送のウェブ搬送装置にも対応できるシワ拡張機能を有する搬送ローラを用いたウェブ搬送装置(以下、単に「搬送装置」ともいう)について説明する。
図3において(A)、(B)に示す各搬送ローラ20は、ウェブWの幅が6区間に区分したローラ幅方向に対して4区間をまたぐ幅のウェブWを使用して搬送する場合を示している。
搬送装置の中でウェブWが通過する幅方向の位置は、幅方向の中央を基準として搬送する中央基準搬送と、ウェブWの一側端であるエッジを基準として搬送するエッジ基準搬送とに大きく二分される。搬送装置の仕様に応じてどちらの方式を選択するか決定される。ここで
図2に示したような搬送ローラ20の外形プロファイルにて
図3(A)に示されるような幅のウェブWを
図3(A)に示すエッジ基準搬送をした場合、シワ拡張効果が発揮できなかったり、コンケーブによりウェブの搬送位置が変化したりしてしまう問題がある。
【0027】
そのため、
図3(A)ではウェブWが通過する区間(1)~(4)の区分ローラ20-1~20-4の外径について、区間(2)=(3)<(1)=(4)とし、
図3(A)に二点鎖線に示すような外形プロファイルにすることで、ウェブWの搬送位置の変化を抑制しつつシワ拡張効果を得ることができる。このとき、区間(5)、(6)はウェブWが通過しないためその区分ローラ20-5~20-6の外径は任意である。
図3(A)に示す搬送ローラ20では同図左側のエッジ基準搬送の場合を示しているが、同図右側のエッジ基準搬送の場合は
図3(B)に示す搬送ローラ20のようにすることで同様の効果を得ることができる。
【0028】
搬送装置として
図3(A)のような左エッジ基準だけで使用する場合と、
図3(B)のような右エッジ基準だけで使用する場合があるが、更にどちらのエッジ基準でも搬送できたり、エッジ位置を任意に設定できたりする搬送装置が既に知られている。エッジ位置が一定の場合、ウェブのエッジによりローラ表面が経時的に磨耗し不具合が発生する。例えばウェブの表面に接して液をコーティングするコーティングローラを有する搬送装置の場合、幅の狭いウェブを使用して前記コーティングローラのウェブエッジが接する部分が磨耗した状態で幅の広いウェブを使用すると、該磨耗の影響でコーティング液の厚みムラが発生する。
そこで、ウェブ搬送基準位置を変更することによりウェブのエッジが接する部分が変わり、ローラの磨耗を抑制し前記不具合の発生を抑制したり、当該ローラ交換のためのマシンダウンタイムを低減したりできる。このような搬送装置においても搬送ローラ20をローラ幅方向に沿って少なくとも4つ以上の区間或いは少なくとも3つ以上の区間に分割しウェブ条件入力手段50にウェブの幅とともにウェブ搬送基準位置の項目を入力登録し、その際の搬送ローラ20の適正な外形プロファイルを外径記憶手段40に記憶しておくことで、適正な外形プロファイルを探索評価し調整するために必要なマシンダウンタイムを低減可能である。
【0029】
ウェブ搬送中に周期的にウェブ搬送基準位置を変更することで前記磨耗による不具合の発生を抑制している搬送装置であっても、該周期やそれぞれの搬送状態(ウェブの搬送基準のパターン)における搬送ローラ20の適正な外形プロファイルを外径記憶手段40に記憶しておき、外径調整駆動手段30をウェブの搬送中に駆動可能な構成としておくことでシワ拡張効果を得ることができる。
【0030】
更に、本実施形態では、入力されたウェブ条件に応じた外径調整駆動手段30による搬送ローラ20の各区間の区分ローラの外径の加減調整をウェブ搬送中に実施可能とする。
具体的には、ウェブの原反ロールの巻き出しが終了し無くなった後に、該ウェブの終端に別の仕様のウェブの始端を接続して搬送する場合も、前後のウェブの仕様に応じた搬送ローラ20の適正な外形プロファイルを外径記憶手段40に記憶しておき、当該搬送ローラ部を前記ウェブ接続部が通過した時点で外径調整駆動手段30を駆動し搬送ローラ20の外形プロファイルを切り換えれば、ウェブの搬送を停止せずに連続して装置を稼動し続けられる。そのためマシンダウンタイムの増加を抑制しつつシワ拡張効果を得ることができる。搬送ローラ20の外形プロファイルを切り換えるタイミングはオペレータが搬送状態を見ながら手動で切り換えてもよいし、搬送装置内にウェブ接続部を検出するウェブ接続部検知手段を設け、該検知手段の検出信号と連動させる構成でもよい。
ウェブの仕様や期待するシワ拡張効果に対する各区間(1)~(6)の区分ローラの適正な外径は実験、評価等により決定し外径記憶手段40に記憶することなどは上述した通りである。
【0031】
以上説明した通り、第1の実施形態によれば、マシンダウンタイムを増大させることなく、ウェブの仕様やシワ発生状況に応じて適正なシワ拡張機能を発揮できる搬送ローラを用いたウェブ搬送装置を提供できる、という効果を奏する。
また、ウェブの巻き出し原反ロールが終端に達した際に自動で次の原反ロールの始端を継ぐことができるウェブ搬送装置において、ウェブの搬送を停止せずに前後のウェブに対して搬送ローラのシワ拡張機能を適正に設定できるため、マシンダウンタイムの増大を抑制し、シワ発生を抑制することができる、という効果を奏する。
【0032】
(第2の実施形態)
図4を参照して、第2の実施形態を説明する。
図4は、第2の実施形態に係るウェブ搬送装置100Aの構成について説明する図である。
図4に示すウェブ搬送装置100Aは、
図1に示したウェブ搬送装置100と比較して、搬送ローラ20のウェブ搬送方向Xの下流に設けられ、ウェブWの幅を検出するウェブ幅検知手段60と、ウェブの位置(ウェブ幅方向の位置を含む)を検出するウェブ位置検知手段61とを新設した点が相違する。加えて、ウェブ幅検知手段60及びウェブ位置検知手段61の各検出値に応じて、搬送ローラ20の各区間のローラ外径を決定する外径制御手段70を新設した点、及び外径制御手段70により決定された搬送ローラ20の各区間のローラ外径となるように外径調整駆動手段30を駆動する点が相違する。
【0033】
ここで、搬送ローラ20の下流(搬送ローラ20と印刷部10との間のウェブ搬送パス)に配設されたウェブ幅検知手段60は、ウェブの幅を検出する第1のウェブ幅検知手段として機能する。搬送ローラ20の下流(搬送ローラ20と印刷部10との間のウェブ搬送パス)に配設されたウェブ位置検知手段61は、ウェブの位置を検出する第1のウェブ位置検知手段として機能する。外径制御手段70は、第1のウェブ幅検知手段及び第1のウェブ位置検知手段の各検出値に応じて、搬送ローラ20の各区間のローラ外径を決定する第1の外径制御手段として機能する。
【0034】
ウェブ幅検知手段60及びウェブ位置検知手段61の具体例としては、光反射型のフォトセンサなどの公知の部材が挙げられる。
外径制御手段70の具体例としては、CPU、RAM、ROM、タイマ等を備えたマイクロコンピュータで構成してもよい(後述の外径制御手段でも同じ)。
【0035】
ウェブ搬送装置100Aでは、上記構成を有することにより、同じ原反ロールの中でウェブの仕様(例えば厚みやヤング率)にバラツキがあり、例えば原反ロールの前半と後半でシワ発生状況が変化した場合でも、その変化に応じて搬送ローラ20の外形プロファイルを変化させ適正なシワ拡張効果を得ることができる。即ち、ウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の検出値と、予め設定しておいたそれらの目標値とを比較し、前記検出値が目標値に近づくように外径制御手段70により外形プロファイルを決定し、外径制御手段70により決定された外形プロファイルとなるように外径調整駆動手段30を駆動する。
換言すれば、上記した第1の実施形態では、外径記憶手段40に記憶されているウェブの仕様(ウェブ条件入力手段50によって入力されたウェブの仕様)に応じた搬送ローラ20の適正な外形プロファイルが決定される。これに対して、第2の実施形態では、ウェブ幅検知手段60及びウェブ位置検知手段61で検出されたウェブ幅及びウェブ位置に応じて外径制御手段70によって更に適正に補正された外形プロファイルが決定される。
【0036】
例えば大きなシワが発生していればウェブ幅検知手段60で検知する見かけ上のウェブ幅は小さくなる。この場合は搬送ローラ20のシワ拡張効果を増大させる必要があるため、ローラ幅方向端部の区分ローラの外径を相対的に大きく調整する。逆にウェブ幅検知手段60の検知する値が目標値よりも大きい場合は、搬送ローラ20によりウェブの幅を必要以上に拡張してしまっているため、ローラ幅方向端部の区分ローラの外径を相対的に小さく調整する。また、ウェブはローラ外径が大きい方に寄って搬送されるため、ウェブ位置検知手段61の検知するウェブ幅方向の位置が目標値よりも右側にずれていた場合は、搬送ローラ20の左側端部の区分ローラの外径を相対的に大きく調整する。ウェブの同じ原反ロールの中のウェブ仕様のバラツキ以外にも環境(周囲温度や湿度)の変化によってもシワ発生状況は変化するが、この場合でも同様に対応可能である。
【0037】
原反ロールの巻き出し始端の搬送開始時は外径記憶手段40に記憶された搬送ローラ20の外形プロファイルで搬送する(上記した第1の実施形態の搬送動作)ことにより、搬送開始直後のウェブのシワを最低限に抑制することができ、ウェブ搬送開始後に外径制御手段70による外形プロファイル制御に切り換える(第2の実施形態の搬送動作)。搬送ローラ20の外形プロファイルを急激に変化させた場合、ウェブのシワを誘発したりウェブ搬送位置が不安定になるなどの不具合が発生する可能性があるため、それらを許容できる外形プロファイルの切り換え速度とすることが考えられる。ウェブの仕様や期待するシワ拡張効果に対する各区間(1)~(6)の区分ローラ20-1~20-6の適正なローラ外径、及び前記適正な外形プロファイル切り換え速度は実験、評価等により決定する。
【0038】
図4に示した第2の実施形態例では、ウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61を区分して記載したが、それらの検出機能の両方兼ね備える一つの検知手段を用いてもよい。
また、
図4に示した第2の実施形態例では、搬送ローラ20の下流に配置されたウェブ幅検知手段60及びウェブ位置検知手段61の両方を設けたが、これに限らず、第1のウェブ幅検知手段及び第1のウェブ位置検知手段の少なくとも一方の第1のウェブ検知手段を設けてもよい。そして、第1の外径制御手段は、少なくとも一方の第1のウェブ検知手段の検出値に応じて、搬送ローラ20の各区間のローラ外径を決定するものであってもよい。
【0039】
以上説明した通り、第2の実施形態によれば、搬送するウェブ幅方向の位置が可変であるウェブ搬送装置において、適正なシワ拡張機能を得られる、という効果を奏する。また、経時的にシワ発生状況が変化する場合でも、適正なシワ拡張機能を得られる、という効果を奏する。
【0040】
(第2の実施形態の変形例)
図5を参照して、第2の実施形態の変形例を説明する。
図5は、第2の実施形態の変形例に係るウェブ搬送装置100Bの構成について説明する図である。
図5に示すウェブ搬送装置100Bは、
図4に示したウェブ搬送装置100Aと比較して、乾燥部6のウェブ搬送方向Xの下流にガイドローラ3に代えてシワ拡張機能を有する搬送ローラ20を設けた点、この搬送ローラ20のウェブ搬送方向Xの下流に、ウェブWの幅を検出するウェブ幅検知手段60と、ウェブの位置(ウエブ幅方向の位置を含む)を検出するウェブ位置検知手段61とを新設した点が相違する。また、乾燥部6の下流に配置したウェブ幅検知手段60及びウェブ位置検知手段61の各検出値に応じて、乾燥部6の下流に配置した搬送ローラ20の各区間のローラ外径を決定する外径制御手段70Aを新設した点、外径制御手段70Aにより決定された乾燥部6の下流に配置した搬送ローラ20の各区間のローラ外径となるように外径調整駆動手段30を駆動する点が相違する。
つまり、
図5に示すウェブ搬送装置100Bでは、第2の実施形態の外径制御手段70の他に、外径制御手段70Aを有している。
【0041】
ウェブ搬送装置100Bでは、
図5に示すように、ウェブ搬送方向Xの最上流に位置する搬送ローラ20の下流に設けられたウェブ幅検知手段60、ウェブ位置検知手段61に加えて、更に乾燥部6のウェブ搬送方向Xの下流にも搬送ローラ20を設けると共に、ウェブ幅検知手段60、ウェブ位置検知手段61を設けている。乾燥部6でウェブを加熱することによりシワが発生し易くなるが、印刷部10で形成される印刷パターンによってもシワ発生状況が変化する。乾燥方式によっても差異があるが、例えば印刷部10でウェブ表面に吐出されるインクが多い(印刷密度が高い)方が、乾燥部6で供給される熱量が前記インクに多く残るためウェブのシワが発生し易い。またウェブ幅方向又はウェブ搬送方向で印刷密度に偏差がある場合も、インクに残る熱量に偏差が出るためその境界でウェブのシワが発生し易くなる。
【0042】
このような場合でも
図5のように構成することで適正なシワ拡張効果を得ることができる。即ち、乾燥部6の下流に位置するウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の各検出値と、予め設定しておいたそれらの目標値を比較し、前記各検出値が目標値に近づくように外径制御手段70Aにより乾燥部6の下流に位置する搬送ローラ20の外径プロファイルを決定し、外径調整駆動手段30を駆動する。
ここで予め設定しておく印刷部10の上流におけるウェブ幅とウェブ位置の目標値と、乾燥部6の下流に位置するウェブ幅とウェブ位置の目標値は同じでもよいし、それぞれの箇所における許容値を鑑みて異なる値としてもよい。それぞれの位置におけるウェブの仕様や期待するシワ拡張効果に対する各区間(1)~(6)の適正なローラ外径、及び適正な外径プロファイル切り換え速度は実験、評価等により決定する。これら搬送ローラ20、ウェブ幅検知手段60、ウェブ位置検知手段61は、
図5では印刷部10の上流と乾燥部6の下流とに配置された計2セットで記載しているが、搬送装置の仕様に応じて必要な箇所に3セット以上配置することも可能であり、同様にシワ拡張効果を得ることができる。また、
図5では印刷部10の上流と乾燥部6の下流とに配置されたウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61を区分して記載したが、それらの検出機能の両方兼ね備える一つの検知手段を用いてもよい。
【0043】
以上説明した通り、第2の実施形態の変形例によれば、搬送するウェブ幅方向の位置が可変であるウェブ搬送装置において、適正なシワ拡張機能を得られる、という効果を奏する。また、経時的にシワ発生状況が変化する場合でも、適正なシワ拡張機能を得られる、という効果を奏する。
【0044】
(第3の実施形態)
図6を参照して、第3の実施形態を説明する。
図6は、第3の実施形態に係るウェブ搬送装置100Cの構成について説明する図である。
図6に示すウェブ搬送装置100Cは、
図5に示したウェブ搬送装置100Bと比較して、印刷部10の上流に配置された搬送ローラ20(以下、最上流の搬送ローラ20ともいう)のウェブ搬送方向Xの上流にもウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61とを新設した点、外径制御手段70に代えて外径制御手段70Bを有する点が相違する。また、外径制御手段70Bにより決定された最上流の搬送ローラ20の各区間のローラ外径となるように外径調整駆動手段30を駆動する点が相違する。
つまり、ウェブ搬送装置100Cは、第2の実施形態の外径制御手段70に代えた外径制御手段70Bを有する他に、第2の実施形態の変形例の外径制御手段70Aを有している。
【0045】
外径制御手段70Bは、最上流の搬送ローラ20の上流に配置したウェブ幅検知手段60と搬送ローラ20の下流に配置したウェブ幅検知手段60との各検出値の差分と、最上流の搬送ローラ20の上流に配置したウェブ位置検知手段61と搬送ローラ20の下流に配置したウェブ位置検知手段61との各検出値の差分に応じて、印刷部10の上流に配置された搬送ローラ20の各区間のローラ外径を決定する。
【0046】
ここで、最上流の搬送ローラ20の上流に配置されたウェブ幅検知手段60は、ウェブの幅を検出する第2のウェブ幅検知手段として機能する。最上流の搬送ローラ20の上流に配置されたウェブ位置検知手段61は、ウェブの位置を検出する第2のウェブ位置検知手段として機能する。外径制御手段70Bは、第2のウェブ幅検知手段と第1のウェブ幅検知手段との各検出値の差分と、第2のウェブ位置検知手段と第1のウェブ位置検知手段との各検出値の差分に応じて、印刷部10の上流に配置された搬送ローラ20の各区間のローラ外径を決定する第2の外径制御手段として機能する。
【0047】
同一仕様のウェブを使用していても、環境の変化や材料のロットのバラツキ、原反ロールを製作する前工程のバラツキにより、ウェブ搬送装置100Cで巻き出したウェブの幅やウェブの厚みに差異がありシワ発生状況は異なる。このような場合でも
図6のように構成することで適正なシワ拡張効果を得ることができる。即ち、最上流のウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の検出値を、次の搬送ローラ20の下流(印刷部10の上流)のウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の目標値として設定する。又は、最上流のウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の検出値に対し、次の搬送ローラ20下流(印刷部10の上流)の箇所における許容値を鑑みて当該箇所のウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の目標値として設定してもよい。
【0048】
つまり、印刷部10の上流に配置された最上流の搬送ローラ20の上流及び下流の計2セットのウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の各検出値を比較し、その差分に応じて外径制御手段70Bにより印刷部10の上流に位置する最上流の搬送ローラ20の外径プロファイルを決定し外径調整駆動手段30を駆動する。この場合ウェブに影響する因子ができるだけ少ない搬送装置の最上流付近に、目標値設定の元となるウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61を配置することが望ましい。また
図6における印刷部10の上流のウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の検出値と、乾燥部6の下流のウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の検出値との差分に応じて、乾燥部6の下流に位置する搬送ローラ20の外径プロファイルを決定するなど、当該の搬送ローラ20に対して上流と下流に位置する計2セットのウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の検出値の差分に応じて該搬送ローラ20の外径プロファイルを決定することで同様の効果を得ることができる。
【0049】
図6に示した第3の実施形態例では、ウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61を区分して記載したが、それらの検出機能の両方兼ね備える一つの検知手段を用いてもよい。
また、
図6に示した第3の実施形態例では、最上流の搬送ローラ20の上流に配置されたウェブ幅検知手段60及びウェブ位置検知手段61の両方を設けたが、これに限らず、第2のウェブ幅検知手段及び第2のウェブ位置検知手段の少なくとも一方の第2のウェブ検知手段を設けてもよい。そして、第2の外径制御手段は、少なくとも一方の第2のウェブ検知手段と少なくとも一方の第1のウェブ検知手段の各検出値の差分に応じて、最上流の搬送ローラ20の各区間のローラ外径を決定するものであってもよい。
【0050】
以上説明した通り、第3の実施形態によれば、同一仕様のウェブを使用した場合にウェブ材料及び原反ロールの品質バラツキにより発生するシワ発生状況の差異を抑制し、適正なシワ拡張機能を得られる、という効果を奏する。
【0051】
(第4の実施形態)
図4~
図6に示したウェブ搬送装置100A、100B、100Cにおいて、印刷部10の上流に位置する最上流の搬送ローラ20の下流のウェブ幅検知手段60とウェブ位置検知手段61の検出値が、一定時間経過後も規定の目標値(目標範囲)とならない場合、警告等を報知する報知手段及びウェブの搬送を停止させる停止手段の少なくとも一方の手段を有するものであってもよい。上記規定の目標値(目標範囲)とならない場合とは、予め規定された規定の範囲以外の場合を意味する。
【0052】
上記報知手段としては、オペレータやユーザに対し警告としてアラーム音や警告音声の発生で聴覚的に知らせるものや、アラーム表示などで視覚的に知らせるものが挙げられる。
停止手段としては、エラーとしてウェブの搬送を停止させるべく、ウェブ搬送装置100A、100B、100Cにおけるフィードローラ4の駆動モータ等を停止させる例が挙げられる。
【0053】
第4の実施形態では、搬送ローラ20の外径プロファイルを上限又は下限まで調整しても期待のシワ拡張効果を得られないため、品質・価値が低下した成果物(巻き取りロール12)が意図せず増加することを未然に防止することができる。アラームやエラーを発生するまでの時間や規定の目標値(目標範囲)は当該の搬送装置の製品仕様に応じて決定する。それ故に、第4の実施形態によれば、品質・価値の低下した成果物が意図せず増加することを未然に抑制することができる、という効果を奏する。
【0054】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る液体吐出ヘッド及び液体を吐出する装置について説明する。
上記した通り、液体吐出ヘッドとは、ノズルから液体を吐出・噴射する機能部品である。吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
液体を吐出するエネルギー発生源として、上記したように圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)を使用する、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0055】
液体吐出ユニットとは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、液体吐出ユニットは、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0056】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0057】
本願において、液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。
この液体を吐出する装置は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、液体を吐出する装置として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置(印刷装置)がある。
【0058】
また、液体を吐出する装置は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するものも含まれる。
【0059】
上記液体が付着可能なものとは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、シート、例えば、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、その他、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
上記液体が付着可能なものの材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0060】
また、液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0061】
また、液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置(
図1等に示した印刷部10)などが含まれる。
【0062】
また、液体を吐出する装置としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置などがある。
【0063】
図7~
図10を参照して、第5の実施形態に係る圧電アクチュエータを有する液体吐出ヘッドの一例を説明する。
図7は、
図1、
図4~
図6の印刷部10に用いられる圧電アクチュエータを有する液体吐出ヘッドの主要部における斜視図を示している。
図8はノズル孔側の側面より液体吐出ヘッドの各構成部品を見た平面図を、
図9は圧電素子側より液体吐出ヘッドの各構成部品を見た平面図をそれぞれ示している。
【0064】
図において符号102は、ノズル孔101、後述する各圧力室103に対向した複数の加熱対流手段としてのヒータ105を列状に形成したノズル板である。ノズル孔101の開口形状の加工精度は、液体吐出ヘッドのインク吐出特性に大きな影響を及ぼす。複数のノズル孔101において、ノズル孔精度のばらつきを低く抑えるために半導体製造プロセスを用い、シリコンの異方性エッチング加工でノズル孔101が作成される。ノズル板102は、シリコン基板上にウエハプロセスによって個別電極と共通電極と発熱体(熱エネルギ作用部)とを形成することによりヒータ(発熱体部)105が構成されている。一方、シリコン基板上には、インク等の液体を噴射させるためのノズル孔101が、同様にウエハプロセスによって形成される。
【0065】
図10に示すように、ノズル板102と上側流路板106と下側流路板108と振動板114とを接合することにより圧力室103が形成される。圧力室103の底面部にはヒータ105が配設され、圧力室103の端部にはノズル孔101が形成される。上側流路板106には下側流体抵抗流路104が設けられ、下側流路板108には圧力室103、インク供給連通路107、及び振動板114の可動領域であるダンパ室123が設けられる。下側流体抵抗流路104は圧力室103への液体(インク)流入量を制御し、インク供給連通路107は後述する共通液室としての共通インク室116と圧力室103、下側流体抵抗流路104とを連結する。圧力室103,103’と下側流体抵抗流路104の開口形状の加工精度は、液体吐出ヘッドの液体(インク)吐出特性に大きな影響を及ぼすため、上側流路板106及び下側流路板108は精密プレス法で形成される。上側流路板106及び下側流路板108の、2層の液室板で構成することにより、下側流路板108に形成するダンパ室123を貫通孔として形成することができ、またプレス加工のみで圧力室103、流体抵抗流路104、ダンパ室123を形成することができる。
【0066】
振動板114は、圧電アクチュエータ121の変位を効率よく圧力室103に伝えるためのダイアフラム部111、共通インク室116から下側流体抵抗流路104に流入するインク供給口112、共通インク室116内の圧力変動を吸収するダンパダイアフラム部113を有している。ダイアフラム部111、インク供給口112も圧力室103に対向するように配置されている。インク液滴を吐出させる圧力は、ノズル孔101からインク液滴を吐出する圧力として伝播する成分と共通インク室116に戻る圧力成分とがあり、共通インク室116に伝播した圧力成分は共通インク室116内で反響して圧力室103に再び伝播する。このため、後続して吐出するインクに圧力として干渉し、後続のインク吐出速度が大きく変動して着弾位置に悪影響を及ぼす。特に、駆動周波数を高くして駆動ノズル数が大きくなると共通インク室116に残った圧力波は大きくなり、減衰しないために与える影響が大きくなる。いわゆる、流体的要因のクロストークである。このような流体的要因のクロストークを抑えるために、共通インク室116には圧力変動を吸収するダンパダイアフラム部113が設けられる。ダンパダイアフラム部113が変形することにより、共通インク室116に伝播した圧力を吸収する。
【0067】
フレーム118は、共通インク室116及びアクチュエータ挿入開口部115、インクタンクからインクを共通インク室116まで導くインク導入通路117を有している。フレーム118は、ステンレス材の切削加工や樹脂のモールド成形等によって形成される。圧電アクチュエータ121は、圧電素子119、固定部材120を有しており、固定部材120はステンレス材やセラミック材等の剛性の高い部材によって構成される。圧電アクチュエータ121の個別電極パターン及び共通電極パターンには、
図10に示すFPC122を介して電気信号が入力され、圧電素子119に変位を生じさせる。このようにして圧電素子119に生じた変位を、振動板114を介して圧力室103の内部の圧力を変化させることにより、インク液滴を吐出させて画像を形成する。
【0068】
図10は、
図7に示した液体吐出ヘッドをノズル配列方向と直交する方向であるA-A線にて断面にした模式図であり、一つの個別流路チャンネルにおける流路構造を示している。この構成では、ダイアフラム部111に固着された圧電素子119が駆動されて変形することにより、圧力室103,103’に変形を与えて液滴を吐出する。
【0069】
以上本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定していない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば、上記実施形態や実施例等に記載した技術事項を適宜組み合わせたものであってもよい。
【0070】
図1等では一例としてウェブに印刷(画像形成を含む)を行う印刷装置を記載したが、本発明はこれに限定されない。本発明に係るウェブ搬送装置としては、印刷装置(画像形成装置を含む)を始めとして、コーティング装置、検品装置、スリッターなど長尺状のウェブを搬送する搬送装置であってもよい。尚、ウェブの上位概念用語としてロール体を挙げることができ、ウェブは長尺状の被搬送媒体等の被搬送物を表すロール体に含まれる。ウェブとしては、前述した具体例の他にフィルムなどが挙げられる。
【0071】
本発明の実施の形態に適宜記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0072】
1 巻き出し軸
2 巻き取り軸
3 ガイドローラ
4 フィードローラ
5 液体吐出ヘッド
6 乾燥部
10 印刷部
11 原反ロール
12 巻き取りロール
20 搬送ローラ
30 外径調整駆動手段
40 外径記憶手段
50 ウェブ条件入力手段(ウェブ条件設定手段の一例)
60 ウェブ幅検知手段(第1、第2のウェブ検知手段の一例)
61 ウェブ位置検知手段(第1、第2のウェブ検知手段の一例)
70 外径制御手段(第1の外径制御手段の一例)
70A 外径制御手段
70B 外径制御手段(第2の外径制御手段の一例)
100、100A、100B、100C ウェブ搬送装置
W ウェブ
X ウェブ搬送方向
Y ウェブ幅方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0073】
【文献】特開2010-047372号公報
【文献】特開2013-006655号公報