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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20220511BHJP
【FI】
G03G15/20 510
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018140896
(22)【出願日】2018-07-27
(65)【公開番号】P2020016806
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】服部 良雄
(72)【発明者】
【氏名】正路 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】石ヶ谷 康功
(72)【発明者】
【氏名】山田 正明
(72)【発明者】
【氏名】高木 啓正
(72)【発明者】
【氏名】後藤 創
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-021143(JP,A)
【文献】特開2004-026388(JP,A)
【文献】特開2014-025965(JP,A)
【文献】特開平06-003900(JP,A)
【文献】特開2004-117641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/00
G03G 15/20
B65H 29/54-29/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に加熱源を有する定着部材と、
前記定着部材に圧接して被記録媒体のトナー像付着面に付着したトナー像を定着する定着ニップを形成する逆クラウン形状の加圧部材と、
前記定着ニップの被記録媒体搬送方向下流側に配設され、前記定着ニップを通過した被記録媒体をさらに下流側へと搬送する搬送ローラ対と、
前記搬送ローラ対の被記録媒体搬送方向下流側に被記録媒体の幅方向に向けて並んで配設され、前記搬送ローラ対によって搬送される被記録媒体を前記トナー像付着面が内側となるように湾曲する態様で偏向して案内する複数のリブとを備え、
前記搬送ローラ対は互いに圧接する第1のローラと第2のローラとからなり、前記第1のローラは前記トナー像付着面側に、前記第2のローラは前記トナー像付着面の裏面側にそれぞれ配置され、
前記各リブの少なくとも一部は、前記第2のローラの外径よりも前記第2のローラの径方向内側にその一部が入り込んで配設され、
前記第2のローラは、軸部と、前記軸部に取り付けられ被記録媒体を搬送する大径部と、前記軸部に取り付けられ前記各リブの配設位置に対応して配置された前記軸部よりも大径で前記大径部よりも小径であり前記各リブが接触しない複数個の小径部とを有する定着装置。
【請求項2】
請求項1記載の定着装置において、
前記大径部と前記小径部とが曲線的に連続形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の定着装置において、
前記大径部と前記小径部とがそれぞれ別の部材によって形成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載の定着装置において、
前記第1のローラはクラウン形状であることを特徴とする定着装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一つに記載の定着装置において、
前記各リブは一体的に変位可能であり、前記各リブを、前記搬送ローラ対によって搬送される被記録媒体に接触して該被記録媒体を前記トナー像付着面が内側となるように湾曲する態様で偏向して案内する第1の位置と、前記搬送ローラ対によって搬送される被記録媒体に接触しない第2の位置とに選択的に変位させるリブ移動手段を有することを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項1ないし4の何れか一つに記載の定着装置において、
前記大径部と前記小径部とは互いの外径差が0.5mm以下であることを特徴とする定着装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一つに記載の定着装置を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被記録媒体に対して画像を定着させる技術として、定着ベルトまたは定着ローラ等の定着部材に対し表面層に弾性体を有する加圧部材を押圧させて定着ニップを形成し、この定着ニップに対し静電的に付着したトナー像を有する被記録媒体を進入させ、定着ニップにおいて熱と圧力とによってトナー像を被記録媒体上に定着する技術が知られている。
このような加熱を行う熱定着技術において、被記録媒体が定着ニップを通過する際に定着部材と加圧部材との間に温度差があるため、定着部材に接する被記録媒体の表面側が裏面側に比して伸びが大きくなり、被記録媒体にしわが発生してしまうという問題点があった。そこで、加圧部材として逆クラウン形状のものを用い被記録媒体の伸びを相殺する技術が考えられているが、被記録媒体の幅方向では伸びが相殺されるものの被記録媒体の搬送方向では伸びが相殺されず、被記録媒体が裏面側にカールするいわゆるバックカールという不具合が生じてしまうという問題点がある。
【0003】
このバックカールの発生を防止すべく、定着ニップの被記録媒体搬送方向下流側に補助ニップを形成するローラ対及び補助ニップを抜けた被記録媒体が接触するリブを設け、バックカールする被記録媒体をリブに接触させてバックカールを矯正すると共に、補助ニップを形成するローラ対を構成する一方のローラをクラウン形状に形成する技術が提案されている(例えば「特許文献1」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の技術において、バックカールを矯正するリブは被記録媒体の幅方向に複数個設けられており、各リブは上述したローラ対を構成する他方のローラの近傍にそれぞれ配置されている。ここで、各リブと他方のローラの外周面との間に隙間があるとこの隙間に被記録媒体が入り込んでしまい、被記録媒体が搬送したい方向に進まないことや搬送ジャムが発生してしまうという問題点が生じてしまう。
このような問題点を解消すべく、他方のローラを串刺し団子状となるように被記録媒体の幅方向において複数個に分割形成し、各ローラ間にリブの基部が入り込むように配置することで、上述した問題点の発生を防止する構成が採用されている。
【0005】
しかし、このような構成では、各ローラ間の隙間部において段差部が形成されてしまう。この段差部は、通常の記録紙や薄紙を被記録媒体として搬送する際には問題とはならないが、封筒や包袋といった被記録媒体として2枚以上の部材を重ね合わせたものを用いた場合に、被記録媒体が段差部に接触することによってしわが発生してしまうという問題点がある。これは、2枚以上の部材を重ね合わせた被記録媒体では、加圧部材側の部材では加圧部材の逆クラウン形状の作用によって外側に向かう張力が作用するが定着部材側の部材は逆クラウン形状には影響されず、さらに2枚の部材がそれぞれの外側輪郭を糊付けによって閉じられていることから作用した張力が各部材を歪ませ、段差部においてしわが発生しているのである。
本発明は上述の問題点を解決し、被記録媒体として2枚以上の部材により構成されたものが用いられた場合においてもしわの発生を防止することが可能な定着装置及びこれを備えた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、内部に加熱源を有する定着部材と、前記定着部材に圧接して被記録媒体のトナー像付着面に付着したトナー像を定着する定着ニップを形成する逆クラウン形状の加圧部材と、前記定着ニップの被記録媒体搬送方向下流側に配設され、前記定着ニップを通過した被記録媒体をさらに下流側へと搬送する搬送ローラ対と、前記搬送ローラ対の被記録媒体搬送方向下流側に被記録媒体の幅方向に向けて並んで配設され、前記搬送ローラ対によって搬送される被記録媒体を前記トナー像付着面が内側となるように湾曲する態様で偏向して案内する複数のリブとを備え、前記搬送ローラ対は互いに圧接する第1のローラと第2のローラとからなり、前記第1のローラは前記トナー像付着面側に、前記第2のローラは前記トナー像付着面の裏面側にそれぞれ配置され、前記各リブの少なくとも一部は、前記第2のローラの外径よりも前記第2のローラの径方向内側にその一部が入り込んで配設され、前記第2のローラは、軸部と、前記軸部に取り付けられ被記録媒体を搬送する大径部と、前記軸部に取り付けられ前記各リブの配設位置に対応して配置された前記軸部よりも大径で前記大径部よりも小径であり前記各リブが接触しない複数個の小径部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、第2ローラとして軸部よりも大径かつ大径部よりも小径である小径部を備えたことにより、搬送ローラ対によって搬送される被記録媒体が各大径部間において小径部に接触可能であるため、被記録媒体が各大径部間に急激に落ち込むことが防止され、被記録媒体に生じる歪みが分散されてしわの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
図2】(a)本発明の一実施形態に用いられる定着装置の概略図(b)本発明の一実施形態に用いられる加圧ローラの平面図である。
図3】従来の第2ローラを説明する概略図である。
図4】本発明の一実施形態に用いられる被記録媒体を説明する概略図である。
図5】従来の第2ローラによる問題点を説明する概略図である。
図6】従来の第2ローラを用いた際に被記録媒体に生じる問題点を説明する概略図である。
図7】本発明の第1の実施形態に用いられる第2ローラの概略図である。
図8】本発明の第2の実施形態に用いられる第2ローラの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、本発明の一実施形態を適用可能な画像形成装置としてのカラープリンタを示している。同図においてプリンタ1は、装置本体1aの内部に4個の画像形成部2Y,2C,2M,2K、一次転写ユニット3、二次転写ローラ4、光書き込み装置5、給紙装置6、定着装置7、排紙ローラ対8、切替板9、反転搬送部10、排紙トレイ11等を有している。
【0010】
装置本体1aのほぼ中央に配置された画像形成部2Y,2C,2M,2Kはそれぞれ黄色画像、青色画像、赤色画像、黒色画像に対応しており、それぞれ像担持体である感光体ドラム12Y,12C,12M,12K、帯電ローラ13Y,13C,13M,13K、現像装置14Y,14C,14M,14K、感光体クリーニング装置15Y,15C,15M,15K等を有している。各感光体ドラム12Y,12C,12M,12Kの表面には光書き込み装置5から露光が行われ、形成される画像に対応した静電潜像がそれぞれ形成される。形成された静電潜像は、各トナーボトル16Y,16C,16M,16Kから対応する各現像装置14Y,14C,14M,14Kに供給された各色トナーによってそれぞれ可視像化される。
【0011】
各画像形成部2Y,2C,2M,2Kの上方には一次転写ユニット3が配設されている。一次転写ユニット3は、入口ローラ17及び駆動ローラ18及びクリーニング対向ローラ19及びバックアップローラ20及び支持ローラ21に掛け渡された中間転写ベルト22、中間転写ベルト22を介して各感光体ドラム12Y,12C,12M,12Kと対向する位置に配置された一次転写ローラ23Y,23C,23M,23K等を有している。中間転写ベルト22の表面には、各感光体ドラム12Y,12C,12M,12Kから各色に対応したトナー像が重畳転写される。
【0012】
中間転写ベルト22を介して駆動ローラ18と対向する位置には、二次転写ローラ4が配設されている。駆動ローラ18と共に二次転写ニップ部を形成する二次転写ローラ4は、図示しないバイアス印加手段によりバイアスを印加されることにより、給紙装置6から給送された用紙Pに対して転写ベルト22の表面に重畳転写されたトナー像を一括転写する。
各画像形成部2Y,2C,2M,2Kの下方には光書き込み装置5が配設されている。光書き込み装置5は、図示しない光源、ポリゴンミラー、各種ミラー及びレンズ等を有する周知の構成であり、外部入力された画像に対応した静電潜像を各感光体ドラム12Y,12C,12M,12Kの表面にそれぞれ形成する。
【0013】
装置本体1aの下部に配設された給紙装置6は、被記録媒体としての用紙Pを積載する給紙トレイ24、給紙トレイ24より用紙Pを送り出す呼び出しローラ25及び給紙ローラ26、給紙ローラ26と協働して用紙Pを分離給送するフリクションパッド27、用紙搬送ローラ対28、レジストローラ対29、手差しトレイ30、手差しトレイ30より用紙Pを送り出す第2給紙ローラ31、第2給紙ローラ31と協働して用紙Pを分離給送する第2フリクションパッド32、用紙搬送ローラ対33等を有している。
【0014】
装置本体1aの最下部に配置された給紙トレイ24は、装置本体1aに開閉自在に支持されたカバー部材1bが開放された際に図において右方への引き出しが可能に構成されており、その上面には多数の用紙Pが積載される。給紙トレイ24の上方には、積載された最上位の用紙Pに接触する態様で呼び出しローラ25及び給紙ローラ26が配置されている。各ローラ25,26は、それぞれ図示しない駆動手段によって同方向に同期して回転駆動される。ゴム等の高摩擦抵抗部材からなるフリクションパッド27は、ばね27aの付勢力によって給紙ローラ26の周面に圧接配置されている。
【0015】
用紙搬送ローラ対28は、共に装置本体1aに回転自在に支持された駆動ローラ及び従動ローラを有しており、図示しない駆動手段によって駆動ローラが回転駆動することによりこれに圧接した従動ローラが回転して用紙Pを搬送する。用紙搬送ローラ対28の用紙搬送方向下流側に配設されたレジストローラ対29も共に装置本体1aに回転自在に支持された駆動ローラ及び従動ローラを有しており、図示しない駆動手段によって駆動ローラが回転することにより用紙Pを所定のタイミングで下流側へと搬送する。
【0016】
手差しトレイ30はカバー部材1bに開閉自在に支持されており、開放された状態においてその上面に用紙Pを積載する。第2給紙ローラ31もカバー部材1bに回転自在に支持されており、カバー部材1bに支持されその周面に圧接する第2フリクションパッド32と協働して手差しトレイ30上の用紙Pを分離給送する。用紙搬送ローラ対33は、共にカバー部材1bに回転自在に支持された駆動ローラ及び従動ローラを有しており、図示しない駆動手段によって駆動ローラが回転駆動することによりこれに圧接した従動ローラが回転して用紙Pを搬送する。なお、カバー部材1bには上述した二次転写ローラ4及び後述する加圧ローラ35がそれぞれ回転自在に支持されており、カバー部材1bの開放時において用紙Pの搬送路が開放されるように構成されている。
【0017】
2次転写ローラ4の用紙搬送方向下流側に7は、本発明の特徴部である定着装置7が配設されている。この定着装置7については後述する。
【0018】
定着装置7の用紙搬送方向下流側に配設された排紙ローラ対8は、共に装置本体1aに回転自在に支持された駆動ローラ及び従動ローラを有しており、図示しない駆動手段によって駆動ローラが回転することによりこれに圧接した従動ローラが回転して用紙Pを装置本体1aの外部へと排出する。排紙ローラ対8によって排出された用紙Pは、装置本体1aの上面に一体形成された排紙トレイ11に積載される。
【0019】
排紙ローラ対8の用紙搬送方向直上流位置には切替板9が配設されている。切替板9は、ソレノイド等の図示しない切替手段によって図1に実線で示す第1の位置と二点鎖線で示す第2の位置とを選択的に占める。切替板9が第1の位置を占めたとき用紙Pは排紙ローラ対8へと案内され、切替板9が第2の位置を占めたとき用紙Pは反転搬送部10へと案内される。
【0020】
カバー部材1bの内部であって二次転写ローラ4及び定着装置7の右方に位置する部位には反転搬送部10が配設されている。反転搬送部10は、逆転ローラ対36、用紙搬送ローラ対37,38等を有している。切替板9の用紙搬送方向下流側に配置された逆転ローラ対36は、駆動ローラ36aと従動ローラ36bとを有している。駆動ローラ36aは装置本体1aに回転自在に支持されており、図示しない駆動手段によって正逆方向に回転駆動される。駆動ローラ36aが正転するとき用紙Pは装置本体1aの外部側へと送られ、駆動ローラ36aが逆転するとき用紙Pは装置本体1aの内部側へと送られる。従動ローラ36bはカバー部材1bに回転自在に支持されており、図示しない付勢手段の付勢力によってその周面を駆動ローラ36aの周面に圧接されている。用紙搬送ローラ対37,38は、共にカバー部材1bに回転自在に支持された駆動ローラ及び従動ローラをそれぞれ有しており、図示しない駆動手段によって駆動ローラが回転駆動することによりこれに圧接した従動ローラが回転して用紙Pを下方へ向けて搬送する。
【0021】
上述の構成より、用紙Pの片面への画像形成時においては、給紙トレイ24より分離給送された用紙Pが用紙搬送ローラ対28及びレジストローラ対29によって搬送され、2次転写ローラ4によってその一方の面(図1において左側の面)に表面画像に対応したトナー像が転写される。トナー像が転写された用紙Pは定着装置7を通過する際にトナー像を定着された後、第1の位置を占めている切替板9によって排紙ローラ対8へと案内され、排紙トレイ11上に排出される。
【0022】
用紙Pの両面への画像形成時においては、二次転写ローラ4によってその一方の面にトナー像が転写された用紙Pは定着装置7を通過する際にトナー像を定着された後、第2の位置を占めている切替板9によって逆転ローラ対36へと案内される。このとき逆転ローラ対36は正転しており、用紙Pは装置本体1aの外部へと送られる。そして、逆転ローラ対36に用紙Pの後端が達すると逆転ローラ対36が逆転され、用紙Pはその後端側から装置本体1aの内部側へと送られ、用紙搬送ローラ対37,38,33を介してレジストローラ対29へと送られる。このとき用紙Pの他方の面が転写ベルト22と対向する位置関係となっており、二次転写ローラ4によって用紙Pの他方の面に裏面画像に対応したトナー像が転写される。トナー像が転写された用紙Pは定着装置7を通過する際にトナー像を定着された後、第1の位置を占めている切替板9によって排紙ローラ対8へと案内され、排紙トレイ11上に排出される。
【0023】
装置本体1aの下方には、装置本体1aの底面にその上面を接する態様で装置本体1aに対して取り付けられるバンク給紙装置39が配設されている。バンク給紙装置39は給紙装置6と同様に、用紙Pを積載するバンク給紙トレイ40、バンク給紙トレイ40より用紙Pを送り出すバンク呼び出しローラ41及びバンク給紙ローラ42、バンク給紙ローラ42と協働して用紙Pを分離給送するバンクフリクションパッド43、バンク搬送ローラ対44等を有している。バンク給紙装置39は、装置本体1aと一体的に構成されることによりカラープリンタ1を構成している。
【0024】
ここで、図2を用いて本発明の特徴部である定着装置7を説明する。
二次転写ローラ4の用紙搬送方向下流側に配設された定着装置7は、加熱ローラ34及び加圧ローラ35からなる定着ローラ対45を有していて装置本体1aの上部に配置されている。内部に図示しない熱源を有する定着部材としての加熱ローラ34は装置本体1aに回転自在に支持されており、図示しない駆動手段によって回転駆動される。
カバー部材1bに回転自在に支持された加圧部材としての加圧ローラ35は、図示しない付勢手段の付勢力によってその周面を加熱ローラ34の周面に圧接させており、加熱ローラ34と共に回転する。加圧ローラ35は図2(b)に示すように、中央部から両端部に向かうに連れて外径が徐々に増加するように形成された逆クラウン形状を呈している。加圧ローラ35が逆クラウン形状を呈していることにより、加熱ローラ34から熱を付与された用紙Pが幅方向に沿って伸びようとする際に、加圧ローラ35によって伸びが阻害することが防止され、用紙Pにしわが発生することを防止している。各ローラ34,35間を通る用紙Pは、その熱と圧力とによって上面に形成されたトナー像を定着される。
【0025】
定着ローラ対45の用紙搬送方向下流側には、定着ローラ対45によって画像が定着された用紙Pをさらに下流側へと搬送する搬送ローラ対46が配設されている。搬送ローラ対46は、用紙Pのトナー像付着面側、すなわち用紙Pの搬送経路を中心として加熱ローラ34と同じ側に配置された第1ローラ47と、用紙Pのトナー像付着面の裏面側、すなわち用紙Pの搬送経路を中心として加圧ローラ35と同じ側に配置された第2ローラ48とを有している。第1ローラ47及び第2ローラ48の構成については後述する。
【0026】
搬送ローラ対46の用紙搬送方向下流側には、搬送ローラ対46によって搬送される用紙Pに接触して用紙Pに対して所定の湾曲力を付与するリブ49が、用紙Pの幅方向に向けて複数個並んで配設されている。
図3は、従来の構成における各リブ49と第2ローラ50との関係を示している。図2に示すように、ほぼ四角形状を呈する各リブ49はその一角部を支軸49aにそれぞれ固定されており、それぞれ適当な間隔をおいて配置されている。支軸49aにはリブ移動手段としてのモータ51が接続されており、モータ51の作動により各リブ49は、図2に実線で示す搬送ローラ対46によって搬送される用紙Pに接触する第1の位置としての接触位置と、図2に二点鎖線で示す同用紙Pに接触しない第2の位置としての退避位置とを選択的に占める。なお、リブ移動手段としてはモータには限定されず、ソレノイドや他のアクチュエータを用いてもよい。
【0027】
各リブ49と対向配置された第2ローラ50は、軸部50aに対して細切れ状のローラ部50bがそれぞれ適当な間隔をおいて一体的に取り付けられて構成されている。各リブ49は、各ローラ部50b間にその一部が入り込む、すなわちローラ部50bの径方向内側にその一部が入り込む第1群49bと、その先端がローラ部50に近接する第2群49cとから構成されている。
このように構成された従来の第2ローラ50における問題点を以下に説明する。
【0028】
図4に示すように、用紙Pに代えて被記録媒体として封筒や包袋等の部材を2枚以上重ねて構成された被記録媒体52が使用される場合、定着ローラ対45を通過する際に被記録媒体52は、その一方の面52aを加熱ローラ34に他方の面52bを加圧ローラ35にそれぞれ接触させる態様となる。ここで、加圧ローラ35が逆クラウン形状であることから他方の面52bには被記録媒体52の外側に向かう複数の力Fが作用するが、一方の面52aにはこのような力Fは作用しない。
【0029】
上述した状態の被記録媒体52が搬送ローラ対46に進入すると、他方の面52bでは力Fの作用によって被記録媒体52が外側に向けて引っ張られるが、被記録媒体52は外側が綴じられている包袋形状であるため、図5に示すように他方の面52bに複数の歪み52cが生じる。そしてこの歪み52cが第2ローラ50の各ローラ部50b間に形成された段差部50cに落ち込むと、図6に示すような被記録媒体52の搬送方向に沿ったしわ53が発生する。
このようなしわ53が生じると、画像品質が大幅に低下してしまうため好ましくない。
以下に、しわ53の発生を防止することが可能な本発明における搬送ローラ対46の構成について説明する。
【0030】
図7は、本発明の第1の実施形態に用いられる第2ローラ48を示している。第2ローラ48は、軸部50aと同様の軸部48aと、軸部48aに細切れ状に固定されローラ部50bと同様に構成された複数の大径部48bと、軸部48aよりも大径かつ大径部48bよりも小径であって各大径部48b間を接続すべく各第1群49bと対応する位置に各第1群49bの先端が接触しないように配設された複数の小径部48cとを備えている。
各小径部48cはその外周面が円弧状となるように形成されており、軸部48a及び各大径部48bに対して固定されている。
【0031】
上述した構成の第2ローラ48を用いることにより、軸部48aよりも大径かつ大径部48bよりも小径である小径部48cを備えたことにより、搬送ローラ対46によって搬送される被記録媒体52が各大径部48b間において小径部48cに接触可能であるため、被記録媒体52が各大径部48b間に急激に落ち込むことが防止され、被記録媒体52に生じる歪み52cが分散されてしわ53の発生を防止することができる。
第1の実施形態では、各小径部48cの外周面を円弧状としたが、各小径部48cの外周面を、大径部48bの外周面と連続的に形成された複数の曲線を連続させた形状としても同様の作用効果を得ることができる。
【0032】
図8は、本発明の第2の実施形態に用いられる第2ローラ54を示している。第2ローラ54は、軸部48aと同様の軸部54aと、大径部48bと同様に構成された複数の大径部54bと、軸部54aよりも大径かつ大径部54bよりも小径であって各大径部54b間を接続すべく各第1群49bと対応する位置に各第1群49bの先端が接触しないように配設された複数の小径部54cとを備えている。
各小径部54cは各大径部54bと同様の円柱形状となるように形成されており、軸部54a及び各大径部54bに対して固定されている。
【0033】
この第2の実施形態によっても、搬送ローラ対46によって搬送される被記録媒体52が各大径部54b間において小径部54cに接触可能であるため、被記録媒体52が各大径部54b間に急激に落ち込むことが防止され、被記録媒体52に生じる歪み52cが分散されてしわ53の発生を防止することができる。
上述した第2ローラ48,54では、各大径部48b,54bと各小径部48c,54cとをそれぞれ別部材とする構成を示したが、各大径部と各小径部とを一体的に形成する構成としてもよい。一体形成の場合には組立工数を低減でき、別部材の場合にはコスト低減を図ることができる。
【0034】
次に本発明の第3の実施形態を説明する。この第3の実施形態は、上述した第1及び第2の各実施形態と比較すると、第1ローラ47の形状をクラウン形状とする点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
第1ローラ47の形状を、その中央部から両端部に向かうに連れて径が徐々に小さくなる太鼓形状であるクラウン形状とすることにより、被記録媒体として用紙Pが用いられる場合には図4に矢印F1で示す力が作用し、力Fを打ち消してしわ53の発生を効果的に防止することができる。
【0035】
上述した第1ないし第3の各実施形態では、リブ49としてモータ51によって被記録媒体のトナー付着面の裏面に対して接触可能である接触位置と接触しない退避位置とに選択的に移動可能である構成を示した。この構成により、例えば両面画像形成時での第2面画像形成時には被記録媒体に湾曲が生じないので、リブ49を退避位置に位置させることにより被記録媒体に対してストレスを与えることが防止でき、被記録媒体に画像こすれや光沢スジ等の不具合が発生することを防止することができる。
しかし、このような作用効果を望まないのであれば、リブ49を接触位置に固定してモータ51を用いない構成とすることもできる。この場合には、構成を簡略化できコストダウンを図ることができる。
【0036】
上述した第1ないし第3の各実施形態において、大径部48bと小径部48cとの外径差及び大径部54bと小径部54cとの外径差をそれぞれ異ならせて、被記録媒体52を搬送する実験を行った。この結果、各大径部48b,54bと各小径部48c,54cとの外径差が0.5mm以下であった場合に、しわ53の発生を効果的に防止できることが確認された。これより、各大径部48b,54bと各小径部48c,54cとを互いの外径差が0.5mm以下となるように構成することにより、被記録媒体52に対するしわ53の発生を効果的に防止することができる。
【0037】
上記実施形態及び各変形例では、液体吐出装置としてカラープリンタを用いた例を示したが、液体吐出装置としてはこれに限られず、プリンタ、ファクシミリ、複合機等にも本発明は適用可能である。また本実施形態及び変形例では、画像が形成される被記録媒体として被記録媒体52を用いる構成を示したが、この被記録媒体52とは封筒や包袋には限定されず、厚紙、ハガキ、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、OHPフィルム、樹脂フィルム等も含まれ、シート状を呈し画像形成可能な物質であればどのようなものを用いてもよい。
【0038】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0039】
1 画像形成装置
7 定着装置
34 定着部材(加熱ローラ)
35 加圧部材(加圧ローラ)
46 搬送ローラ対
47 第1ローラ
48,54 第2ローラ
48a,54a 軸部
48b,54b 大径部
48c,54c 小径部
49 リブ
51 リブ移動手段(モータ)
52 被記録媒体
【先行技術文献】
【特許文献】
【0040】
【文献】特開2017-021143号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8