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特許7070502測定装置および研磨ヘッドの選定方法ならびにウエーハの研磨方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】測定装置および研磨ヘッドの選定方法ならびにウエーハの研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/30 20120101AFI20220511BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20220511BHJP
   B24B 37/32 20120101ALI20220511BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20220511BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B24B37/30 Z
H01L21/304 622K
B24B37/30 E
B24B37/32 Z
B24B49/10
B24B49/12
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019093166
(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公開番号】P2020185653
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健汰
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-225819(JP,A)
【文献】特開2017-202556(JP,A)
【文献】特開2014-233815(JP,A)
【文献】特開2004-239718(JP,A)
【文献】特開2017-72462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/30
H01L 21/304
B24B 37/32
B24B 49/10
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面研磨装置の研磨ヘッドにおいて、ウエーハを研磨する際にウエーハの裏面を保持するとともに、該ウエーハを保持する側の反対側から空気を用いて加圧されるバックパッドの形状を測定する測定装置であって、
前記バックパッドと、該バックパッドに保持された前記ウエーハの外周を囲うリテーナリングとを有するテンプレートと、
該テンプレートの上に位置するベースリングまたはベースプレートと、
該ベースリングまたはベースプレートが保持されるヘッド本体を有する前記研磨ヘッドが組み上げられた状態で、前記バックパッドの形状を測定するものであり、
前記組み上げられた研磨ヘッドが載置される荷台と、該荷台を支持する支柱と、前記荷台に前記研磨ヘッドを押さえつけるクランプと、前記荷台に載置された前記研磨ヘッドの前記バックパッドに対して加圧可能な空気による加圧手段と、前記バックパッドの形状を測定する変位測定機とを有しており、
該変位測定機は、前記ウエーハを研磨する時と同等の圧力での前記加圧手段による加圧の時と、非加圧の時の各々について、前記バックパッドの形状を測定可能なものであることを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記荷台は、前記バックパッドの前記ウエーハを保持する側が上向きとなるように前記研磨ヘッドの背面が載置されるものであることを特徴とする請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記支柱および前記クランプは、平面視において、前記荷台に載置された前記研磨ヘッドの中心に対して点対称となるように3つ以上配置されているものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
前記変位測定機は、接触式または非接触レーザー式のものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の測定装置。
【請求項5】
ウエーハを研磨する際にウエーハの裏面を保持するとともに、該ウエーハを保持する側の反対側から空気を用いて加圧されるバックパッドと、該バックパッドに保持された前記ウエーハの外周を囲うリテーナリングとを有するテンプレートと、
該テンプレートの上に位置するベースリングまたはベースプレートと、
該ベースリングまたはベースプレートが保持されるヘッド本体を有する研磨ヘッドを選定する方法であって、
前記テンプレートと、前記ベースリングまたはベースプレートと、前記ヘッド本体を組み上げて前記研磨ヘッドを準備し、
該準備した研磨ヘッドの前記バックパッドに対して前記ウエーハを研磨する時と同等の圧力で加圧した時と、非加圧の時の各々について、前記バックパッドの形状を、変位測定機を用いて測定し、
該測定した加圧時と非加圧時のバックパッドの形状の差分を算出し、
該算出したバックパッドの形状の差分に基づいて、前記研磨ヘッドを選定することを特徴とする研磨ヘッドの選定方法。
【請求項6】
前記バックパッドの形状を測定するとき、
前記バックパッドの前記ウエーハを保持する側が上向きとなるように前記研磨ヘッドの背面を支持した状態で測定を行うことを特徴とする請求項5に記載の研磨ヘッドの選定方法。
【請求項7】
前記バックパッドの形状を測定するときに用いる前記変位測定機を、接触式または非接触レーザー式のものとすることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の研磨ヘッドの選定方法。
【請求項8】
前記研磨ヘッドを選定するとき、
予め、前記研磨ヘッドにおける前記バックパッドの形状の差分と、該研磨ヘッドを用いて行った研磨により得られる研磨ウエーハの形状データとの相関関係を求めておき、
該相関関係から前記研磨ヘッドを選定するための管理値を設定しておき、
該設定した管理値に基づいて選定を行うことを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の研磨ヘッドの選定方法。
【請求項9】
ウエーハの表面を定盤上に貼り付けた研磨布に摺接させて研磨するウエーハの研磨方法であって、
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の研磨ヘッドの選定方法により選定した研磨ヘッドにおける前記バックパッドによって、前記ウエーハの裏面を保持して研磨することを特徴とするウエーハの研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面研磨装置の研磨ヘッドにおけるバックパッドの形状を測定する測定装置および研磨ヘッドの選定方法ならびにウエーハの研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
片面研磨装置を用いた研磨では、主にヘッド本体(金属など)、ベースプレートまたはベースリング(金属やセラミックなど)、ウェーハ保持用のテンプレートから構成される研磨ヘッドを用いる。このテンプレートは、バックパッドとその外周部にあるリテーナリング(主にガラスエポキシ製)からなる。バックパッドとリテーナリングで囲われた保持孔にウエーハが保持される。ウェーハ保持面はバックパッド(PETなどの基材からなる)であり、研磨時にはこの面を加圧することで、ウェーハを定盤に貼り付けられた研磨パッド(研磨布)へ摺接させて研磨を行っている。
【0003】
研磨ヘッドを構成する部材そのものの精度やそれらを組み付けた時の精度により、同じ装置の同じ回転軸を用いた場合でも研磨したウェーハのフラットネスがばらついてしまうため、これまでに研磨ヘッドを構成する部材の測定・選定・管理方法がいくつか発明されてきた。
【0004】
たとえば、ウェーハ保持用テンプレートをベースリングに貼り付けただけの状態のリテーナリング面を基準にしたバックパッドからの高さ、すなわちポケット深さと、リテーナリング面の平面度をもとに研磨ヘッドの選定を行っている(特許文献1)。この方法は複数のテンプレートの中から互いのポケット深さとリテーナリング平面度の差が5μmに収まるものを選定するものである。
また、バックパッドの形状を測定した例では、実際の研磨時の圧力や回転を加えた状態でバックパッドの厚さばらつきを測定した方法がある(特許文献2)。
これらの方法によって、リテーナリングからのウェーハの突出量のばらつきによる、ウェーハ品質のばらつきを管理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-202556号公報
【文献】特開2004-239718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、研磨ウエーハのフラットネス要求がタイト化してきており、品質向上の要因調査に適切な測定装置や、適切な研磨ヘッドの選定方法がさらに求められている。
本発明は上記の課題に鑑みてなされたもので、研磨特性(研磨ウエーハの品質)との関連性がより高いデータを測定可能な測定装置や、研磨の際に使用する研磨ヘッド間でのウエーハのフラットネスのばらつきを調整することができる研磨ヘッドの選定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、片面研磨装置の研磨ヘッドにおいて、ウエーハを研磨する際にウエーハの裏面を保持するとともに、該ウエーハを保持する側の反対側から空気を用いて加圧されるバックパッドの形状を測定する測定装置であって、
前記バックパッドと、該バックパッドに保持された前記ウエーハの外周を囲うリテーナリングとを有するテンプレートと、
該テンプレートの上に位置するベースリングまたはベースプレートと、
該ベースリングまたはベースプレートが保持されるヘッド本体を有する前記研磨ヘッドが組み上げられた状態で、前記バックパッドの形状を測定するものであり、
前記組み上げられた研磨ヘッドが載置される荷台と、該荷台を支持する支柱と、前記荷台に前記研磨ヘッドを押さえつけるクランプと、前記荷台に載置された前記研磨ヘッドの前記バックパッドに対して加圧可能な空気による加圧手段と、前記バックパッドの形状を測定する変位測定機とを有しており、
該変位測定機は、前記ウエーハを研磨する時と同等の圧力での前記加圧手段による加圧の時と、非加圧の時の各々について、前記バックパッドの形状を測定可能なものであることを特徴とする測定装置を提供する。
【0008】
本発明者らは、研磨ヘッド間でのウエーハのフラットネスのばらつきといった研磨特性には、研磨ヘッドの組み上げ精度や、空気での加圧によるバックパッドのたわみ(バックパットの形状)が関係すると考えた。そこで、本発明の測定装置では、それらを考慮し、上記のように組み上げた研磨ヘッドにおける、非加圧時のみならず加圧時のバックパッドの形状が測定可能な装置である。このようなものであれば、研磨特性との関連性がより高いバックパッドの形状データを得ることができる。したがって、得られたそのデータに基づいて研磨ヘッドの選定、さらには該選定した研磨ヘッドを用いたウエーハの研磨をより適切に行うことができ、研磨特性(研磨ヘッド間の研磨ウエーハのフラットネスばらつき等)を適宜調整(特には抑制)することができる。
【0009】
また、前記荷台は、前記バックパッドの前記ウエーハを保持する側が上向きとなるように前記研磨ヘッドの背面が載置されるものとすることができる。
【0010】
このように、研磨ヘッドの向きが上下逆さまの状態で測定可能なものであれば、容易で正確な測定を短時間で行うことができる。
【0011】
また、前記支柱および前記クランプは、平面視において、前記荷台に載置された前記研磨ヘッドの中心に対して点対称となるように3つ以上配置されているものとすることができる。
【0012】
このようなものであれば、研磨ヘッドをより安定して支持しやすく、より一層適切な測定を行うことができる。
【0013】
また、前記変位測定機は、接触式または非接触レーザー式のものとすることができる。
【0014】
このようなものであれば、簡便にバックパッドの形状を測定可能なものである。
【0015】
また、本発明は、ウエーハを研磨する際にウエーハの裏面を保持するとともに、該ウエーハを保持する側の反対側から空気を用いて加圧されるバックパッドと、該バックパッドに保持された前記ウエーハの外周を囲うリテーナリングとを有するテンプレートと、
該テンプレートの上に位置するベースリングまたはベースプレートと、
該ベースリングまたはベースプレートが保持されるヘッド本体を有する研磨ヘッドを選定する方法であって、
前記テンプレートと、前記ベースリングまたはベースプレートと、前記ヘッド本体を組み上げて前記研磨ヘッドを準備し、
該準備した研磨ヘッドの前記バックパッドに対して前記ウエーハを研磨する時と同等の圧力で加圧した時と、非加圧の時の各々について、前記バックパッドの形状を、変位測定機を用いて測定し、
該測定した加圧時と非加圧時のバックパッドの形状の差分を算出し、
該算出したバックパッドの形状の差分に基づいて、前記研磨ヘッドを選定することを特徴とする研磨ヘッドの選定方法を提供する。
【0016】
このように本発明では、組み上げた研磨ヘッドにおける、加圧時および非加圧時のバックパッドの形状の差分というパラメータに基づいて研磨ヘッドを選定する。そして、このような選定方法により選定した所望の研磨ヘッドを用いてウエーハ研磨をすれば、研磨ヘッド間の研磨ウエーハのフラットネスばらつきを適宜調整(特には抑制)することができる。
【0017】
また、前記バックパッドの形状を測定するとき、
前記バックパッドの前記ウエーハを保持する側が上向きとなるように前記研磨ヘッドの背面を支持した状態で測定を行うことが好ましい。
【0018】
このように、研磨ヘッドの向きが上下逆さまの状態で測定する方が容易で正確な選定を短時間で行うことができる。
【0019】
また、前記バックパッドの形状を測定するときに用いる前記変位測定機を、接触式または非接触レーザー式のものとすることができる。
【0020】
このように接触式または非接触レーザー式の測定機を用いて、簡便にバックパッドの形状を測定可能である。
【0021】
また、前記研磨ヘッドを選定するとき、
予め、前記研磨ヘッドにおける前記バックパッドの形状の差分と、該研磨ヘッドを用いて行った研磨により得られる研磨ウエーハの形状データとの相関関係を求めておき、
該相関関係から前記研磨ヘッドを選定するための管理値を設定しておき、
該設定した管理値に基づいて選定を行うことができる。
【0022】
このような予備試験を行い、上記相関関係を求めたり、上記管理値を設定しておくことで、より簡便かつ確実に、所望の研磨ヘッドの選定を行うことができ、研磨ヘッド間のウエーハのフラットネスのばらつきを調整可能である。
【0023】
また、本発明は、ウエーハの表面を定盤上に貼り付けた研磨布に摺接させて研磨するウエーハの研磨方法であって、
上記本発明の研磨ヘッドの選定方法により選定した研磨ヘッドにおける前記バックパッドによって、前記ウエーハの裏面を保持して研磨することを特徴とするウエーハの研磨方法を提供する。
【0024】
このようなウエーハの研磨方法であれば、研磨ヘッドの選定により、例えばその研磨ヘッド間のばらつきが抑制されるように調整することができるので、研磨ヘッド間の研磨ウエーハのフラットネスばらつきを適宜調整することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明によれば、研磨特性との関連性が高いバックパッドの形状データを得ることができる。また、研磨の際に使用する研磨ヘッドを適切に選定できるので、研磨ヘッド間でのウエーハのフラットネスのばらつきを適宜調整することができ、特にそのばらつきの発生を抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の研磨ヘッドの選定方法およびウエーハの研磨方法の工程の一例を示すフロー図である。
図2】本発明のウエーハ研磨方法において使用することができる片面研磨装置の一例を示す概略図である。
図3】本発明の研磨ヘッドの選定方法で使用することができるバックパッドの形状を測定するための本発明の測定装置の一例を示す側面図である。
図4】測定治具の一例を示す上面図である。
図5】測定時における研磨ヘッドの状態を示す概略図である。
図6】測定箇所の一例を示す説明図である。
図7】同一走査線上でのバックパッドの形状測定結果を示すグラフである。
図8】実施例におけるバックパッド形状変化量とESFQD変化量との関係を示すグラフである。
図9】比較例における周方向のリテーナリングの平面度(傾き補正後)の一例を示すグラフである。
図10】比較例におけるリテーナリングの平面度(最小二乗面からの最大値-最小値)とESFQD変化量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明者らは、前述したように、近年の研磨ウエーハのフラットネス要求のタイト化に伴い、さらなる測定装置や研磨ヘッドの選定方法が求められていることから、該測定装置、選定に関して鋭意研究を行った。
上記タイト化への対応のためには、研磨ヘッド組み上げ精度を含んだ上で、ウェーハの摺接に直接かかわるバックパッド面の加圧時のたわみ形状に関する測定や、またそのような形状を考慮した上での選定が必要であると本発明者らは考えた。
【0028】
複数の研磨ヘッド間でウェーハのフラットネスのばらつきを特には抑えるためには、バックパッドに加えた圧力がウェーハへ均一かつロスなく伝わり、その伝わり方が研磨ヘッド間でばらつきが小さいことが必要であり、バックパッドを加圧してどのような形状となるか、その指標としてのたわみ量は重要なファクターであると考えた。また、ヘッド本体(例えば金属製)、ベースプレートまたはベースリング、テンプレートを組み上げる時の精度にもばらつきが含まれると考えられるため、研磨ヘッドを組み上げた状態でバックパッドを加圧し測定する必要があることを見出し、本発明を完成させた。
【0029】
以下、本発明について、実施形態を図を参照しながら更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図2に、本発明のウエーハの研磨方法において使用することができる片面研磨装置の一例を示す。片面研磨装置1は、研磨布2が貼付された回転可能な定盤3と、研磨対象であるウエーハWを保持する研磨ヘッド4と、研磨布2上に研磨剤を供給するための研磨剤供給機構5を有している。研磨ヘッド4の数は1つ以上であればよく、複数個とすることもできる。
【0030】
研磨ヘッド4は、ウエーハWの裏面を保持するバックパッド6と、ウエーハWの外周を囲うリテーナリング7とからなるテンプレート8を有している。さらに、研磨ヘッド4は、そのテンプレート8の上に位置するベースリング9と、該ベースリング9が保持されるヘッド本体10を有している。ベースリング9内の空間には空気を送り込むことができ、バックパッド6をウエーハWを保持する側の反対側から空気を用いて加圧することが可能になっている。
なお、ベースリング9の代わりに、例えば凹部を有するベースプレートとすることも可能である。いずれにしても、バックパッド6を加圧するための空気を送り込む空間を形成できるものとすることができる。
【0031】
研磨の際には、研磨剤供給機構5で研磨剤を供給しつつ、研磨ヘッド4および定盤3を回転させながら、研磨ヘッド4で保持したウエーハWを研磨布2に摺接させて研磨することができる。
【0032】
図3に、本発明の研磨ヘッドの選定方法で使用することができるバックパッドの形状を測定するための本発明の測定装置20(測定治具、変位測定機、加圧手段を含む)の一例を示す。図3は側面図である。
また、図4に測定治具の上面図の一例を示す。
測定治具11は、土台12、該土台12からの支柱13、支柱13上に位置し、測定対象の研磨ヘッド4を載置する荷台14、研磨ヘッド4を荷台14に押さえつけるためのクランプ15からなっている。なおここでは、測定時において研磨ヘッド4を上下逆さまにし、バックパッド6が上向きになる状態で研磨ヘッド4の背面を支持している例を示す。研磨ヘッド4については破線で示している。このように逆さまな状態で測定するものであれば、より容易に正確な測定を短時間で行うことができる。
ただしこれに限定されず、研磨ヘッド4をバックパッド6が下向きになる状態で支持し、測定するための測定治具、変位測定機等を用いることも可能である。
【0033】
クランプ15は、研磨ヘッド4のリテーナリング7に対し、研磨時と同等の圧力がかかるような力で押さえつけることができるものとすることができる。支柱13およびクランプ15の数は特に限定されないが、例えば図4に示すように3つ以上とし、平面視で、測定治具11の中心(測定対象の研磨ヘッド4を配置したときの研磨ヘッド4の中心、すなわちバックパッド6の中心)に対し、点対称になるように等間隔に配置することができる。なお、支柱13の位置はクランプ15の位置と重なっている。このような配置とすることで、安定して研磨ヘッド4を支持して測定を行うことができる。また、クランプ15で押さえつけるにあたっては、メタルリング等を間に介することもできる。
【0034】
図5に測定時における研磨ヘッドの状態を示す。
上記のような測定治具11で支持された研磨ヘッド4には、加圧手段16(加圧用ホース接続治具16a、加圧用エアポンプ16b)が設けられている。測定時、加圧用ホース接続治具16aがヘッド本体10に取り付けられている。この加圧用ホース接続治具16aを通して、バックパッド6を、ウエーハWを保持する側(ウエーハ保持側)の反対側(裏側)から加圧するための空気を加圧用エアポンプ16bから送り込むことができるようになっている。研磨時と同等の圧力で加圧できるものである。これにより、測定時に研磨時の状態を再現できる。また、当然、非加圧の状態にもすることができる。
なお、研磨時においても同様の治具を装着することにより、バックパッド6を裏側から加圧することができる。
【0035】
また変位測定機17は、研磨時と同等の圧力で加圧された時と、非加圧の時の各々について、バックパッド6の形状を測定できるものであればよく、特に限定されない。例えば、先端に球状の短針を有する接触式の測定機を用いることができる。あるいは、非接触レーザー式のものとすることもできる。このようなものであれば、簡便にバックパッドの形状を測定可能である。
図6の測定箇所の一例のように、バックパッド6の直径方向に線形走査できるものであると良い。図6では3点(3本)走査の例を示しているが、8点(8本)以上走査できるとより良い。リテーナリングの面の高さ位置を基準にして、バックパッド6を上記のように線形走査し、その測定ラインに沿ったバックパッド6の形状を取得できるものであれば良い。
【0036】
このような測定装置20であれば、研磨ヘッド組み上げ精度を含んだ、研磨特性との関連性がより高いバックパッドの形状というデータを得ることができる。そして、該形状データの利用により、より適切な研磨ヘッドの選定およびウエーハの研磨が可能になり、研磨ヘッド間の研磨ウエーハのフラットネスばらつきなどの研磨特性を調整(特には抑制)することができる。
【0037】
次に、本発明の研磨ヘッドの選定方法およびウエーハの研磨方法について説明する。なお、ここでは本発明の測定装置を用いた例について説明するが、研磨ヘッドの選定のためのバックパッドの形状測定に用いる装置はこれに限定されない。
図1に本発明のこれらの方法における工程フローの一例を示す。
まず、図5に示すように、テンプレート8(バックパッド6およびリテーナリング7)と、ベースリング9と、研磨ヘッド本体10を組み上げて研磨ヘッド4を準備する(工程1)。
後に行うバックパッドの形状測定を行うにあたってこのように研磨ヘッド自体をわざわざ組み上げておくのは、前述したように、この組み上げの精度にもばらつきが生じてしまい、そのばらつきが、研磨ヘッド間での研磨ウエーハのフラットネスばらつきに影響を与えてしまうからである。予め組み上げた状態で測定することにより、その研磨ヘッド固有のバックパッドの形状の状態を正確に把握することができるようになる。
【0038】
さらに、図5に示すように、組み上げた状態の研磨ヘッド4のヘッド本体10に加圧用ホース接続治具16aを取り付けて、加圧用エアポンプ16bにホースで接続する(工程2)。
このような治具を装着することで、バックパッドの形状測定時に、空気を送り込んでバックパッドの裏側から加圧されることも可能になり、非加圧時のみならず加圧時のバックパッドの形状も測定可能になる。
【0039】
次に、図3に示すように、バックパッド6を上向きにしてヘッド本体10が荷台14によって支持されるような形態(すなわち研磨ヘッド4の背面を支持するかたち)で測定治具11に載せる(工程3)。載置後、リテーナリング7上に同じ寸法のメタルリングを載せ、リテーナリング7に研磨時と同等の圧力がかかるような力で3か所のクランプ15で押さえつける(工程4)。
【0040】
そして、ウエーハを研磨する時と同等の圧力で空気により加圧した時と、非加圧の時の各々について、バックパッド6の直径方向に変位測定機17を走査して、バックパッド6の形状を測定する(工程5)。
より具体的には、形状の測定は、変位測定機の探針をバックパッドに対して垂直に下ろし、図6のような直径方向に、特には8点(8本)以上走査するのが好ましい。走査範囲としては、バックパッドの直径全域とすることもできるし、あるいは、中心付近の限られた一定範囲とすることもできる。この一定範囲としては例えば50mm以上とすることができる。このようにある程度の長さ範囲において測定を行うことによって、研磨ウエーハの形状との相関性をより良好なものとすることができる。
リテーナリング面を高さ0mmの基準として、上記のように加圧状態と非加圧状態の形状を求める。
【0041】
図7に、同一走査線上でのバックパッドの形状測定結果を示す。非加圧時に比べ、加圧時は全体的に上方へ膨らんでいるのが見て取れる。この例では、中心からの距離0mmの位置での変化量(差分)は1.12mmであった。なお、測定はおよそ1mm刻みで求めた。
【0042】
そして、各位置での加圧時と非加圧時の差分を算出し、全域で平均を取ってその走査線の変化量として算出する(工程6)。これを少なくとも3回は繰り返し、それらの平均を最終的なバックパッド形状変化量として用いる。すなわち、全走査角度での平均値を求めている(工程7)。
【0043】
なお、この測定手順はこれに限定されるものではなく、加圧時、非加圧時の各々の形状について測定してそれらの差分を算出できれば良い。そして、その差分自体そのものを、後述の選定工程において選定に利用することもできるし、あるいは、上記のようにして平均値として求めたバックパッド形状変化量を選定に利用することも可能である。少なくとも、上記形状の差分に基づくもので選定に利用可能なパラメータを算出しておく。
【0044】
複数(例えば3個以上)の研磨ヘッド4に対して同様に測定を行い、上記のような形状差分に基づくバックパッド形状変化量を各々求める(工程8)。
【0045】
さらに、その測定を行った研磨ヘッド4を用いて、図2に示すような片面研磨装置1により、バックパッド6に裏側から加圧しつつ、ウエーハWの研磨を行う。
ウエーハWは予め研磨前に形状データを測定しておき、また、研磨により得られる研磨ウエーハについても再度形状データを測定し、その形状データの変化量を算出する。形状データの種類は特に限定されないが、ここではESFQD(Edge Site Front least sQuares Deviation)とすることができる。
このようにして得られた研磨前後のESFQD変化量(差分ESFQDとも言う)と、工程8で求めた各々のバックパッド形状変化量とを対応させて、それらの相関関係を求める。
そして、例えばESFQD変化量が比較的大きく変化するような、バックパッド形状変化量の閾値を求める。さらにその閾値を考慮して、研磨ヘッドの選定に利用する管理値を設定する(工程9)。
【0046】
この管理値は特に限定されないが、例えば、研磨前後でフラットネスの変動が小さい、すなわちESFQD変化量が比較的抑えられるような、バックパッド形状変化量の臨界値を管理値として設定することができる。この場合、後の選定工程で、管理値以下の研磨ヘッドを選定することで、その研磨ヘッドを用いてウエーハ研磨を行ったときに、ESFQD変化量が小さい研磨ウエーハを得ることができる。
このような予備試験を行って管理値を求めておくことで、より簡便かつ確実に、所望の研磨ヘッドの選定を行うことができる。
【0047】
そして、設定した管理値に基づいて研磨ヘッドの選定を行い、選定した研磨ヘッド4を用い、裏側から加圧されたバックパッド6によりウエーハWの裏面を保持しつつ、ウエーハWの研磨を行う(工程10)。
なお、予備試験で求めた研磨ヘッドのみから選定を行うこともできるし、あるいは、新たな他の研磨ヘッドについて上記と同様にしてバックパッドの形状の測定、差分の算出、さらにはバックパッド形状変化量の算出を行い、それら新たな研磨ヘッドも加えて全ての研磨ヘッドから、各々のバックパッド形状変化量を予備試験で設定した管理値と比較し、選定を行うことも可能である。
【0048】
これにより、従来生じていた研磨ヘッド間の研磨ウエーハのフラットネス(ESFQD等)のばらつきを所望のように調整することができる。研磨ヘッドの組み上げ精度や、バックパッドの加圧時や非加圧時のたわみなどを考慮した本発明の研磨ヘッドの選定方法やウエーハの研磨方法によって、研磨ヘッド間において(研磨ウエーハ間において)、例えば、フラットネスのばらつきを著しく抑制することが可能である。これにより、研磨ウエーハの品質を均一化することができ、近年のタイト化したフラットネス要求にも応えることが可能である。
【実施例
【0049】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例)
7つの研磨ヘッド(ケース1-7)について、図3のような本発明の測定装置を用い、図1に示す本発明の研磨ヘッドの選定方法およびウエーハの研磨方法を実施した。
外径365mm、保持孔径302mmの、直径300mmウェーハ用のテンプレート(バックパッドおよびリテーナリング)をベースリングに同心で貼り合わせ、ヘッド本体に取り付けた研磨ヘッドを7つ準備した。バックパッドを上向きにして測定治具に載せ、クランプ等で固定した後、接触式変位測定機を用いて、研磨時と同等の加圧時(10kPa)と、非加圧時のバックパッドの形状を測定した。
接触式変位測定機としては、直径1.0mmの球状ルビー探針のものを用い、垂直に接触させて形状を測定した。その後、加圧時、非加圧時の差分をとり、各研磨ヘッドについて、バックパッド形状変化量を求めた。
【0050】
そして、各研磨ヘッドを用いてウエーハの研磨を行った。
研磨加工には、セラミック定盤に研磨パッドを貼付け、シリカ系砥粒を含むKOHベースのアルカリ性水溶液の研磨スラリーを定盤に供給しながら、研磨ヘッドと定盤を回転させてウェーハを摺接させることで行った。なお、研磨時は、測定時と同様に10kPaでバックパッドに対して裏側から加圧した。
【0051】
このようにして7つの研磨ヘッドのバックパッド形状変化量を求め、それらの研磨ヘッドを用いて研磨したウェーハの研磨前からのESFQDの変化量との相関関係を表1および図8に示した。
【0052】
【表1】
【0053】
これらの相関関係からわかるように、同一の圧力でもバックパッドの形状変化量は研磨ヘッド毎で0.50~1.01mmの範囲をとった。そして、実施例の測定結果では、バックパッド形状変化量が0.85mmを超えたところでESFQD変化量が悪化していることが分かる。このように、ESFQD変化量とバックパッド形状変化量との間での傾向性を明らかにすることができた。このように、研磨ヘッドを組み上げ、ウエーハに圧力を伝達する部分であるバックパッドの、圧力による形状変化を測定することは、研磨ヘッドの評価および品質バラつき抑制に有効であると考えられる。この相関関係を利用した研磨ヘッドの選定例について以下に具体的に詳述する。
【0054】
ウエーハの形状変化量(ESFQD変化量)を見ると、ケース3とケース5を比較すると、ケース3はケース5の22%もの小ささであった。また、バックパッドの形状変化量が0.91mm以上の場合(ケース5-7)と、0.85mm以下の場合(ケース1-4)で、ウエーハの形状変化量(ESFQD変化量)に平均で2.7倍ほどの開きがあった。すなわち、ESFQD変化量に大きな差が生じる境界値、すなわち、バックパッド形状変化量の閾値は0.85mm付近と捉えることができた。そこで管理値を0.85mmに設定した。
そして、ESFQD変化量が小さくなるような研磨ヘッドを求めるため、管理値以下の研磨ヘッドを選定した。
【0055】
この選定方法で、バックパッドの形状変化量が0.85mm以下の研磨ヘッド(ケース1-4)を選定して用いた研磨を行った場合では、所望の通り、研磨によるESFQD変化量が小さく、また、研磨ヘッド間での研磨ウエーハのフラットネスばらつきが安定した。
【0056】
一方、このような本発明の選定・研磨方法を行わずに、例えば、無作為にケース1-3とケース5の研磨ヘッドを用いて研磨を行ってしまうと、特にケース5の研磨ヘッドを用いたときの研磨ウエーハがケース1-3の研磨ヘッドを用いたときの研磨ウエーハに比較してフラットネスに大きな差が生じてしまい、ばらつきが発生してしまう。
【0057】
(比較例)
実施例と同様の7つの研磨ヘッド(ケース1-7)に関し、テンプレート(バックパッドおよびリテーナリング)+ベースリングのみの状態のリテーナリングの平面度の測定を、本発明における測定装置を用いずに接触式形状測定機で行った。
テンプレートのリテーナリングの内周端から1mmの位置を周方向に5°おきにプロービングし、最小二乗線から傾き補正をしたもの(基準面(最小二乗線)からの高さ(mm))の一例(ケース3)を図9のグラフに示す。この時の(最大値-最小値)をリテーナリングの平面度として求めた(図9の例においては7.81μm)。
また、実施例と同様にして、各研磨ヘッドを用いてウエーハの研磨を行い、ESFQD変化量を求めた。そして、上記リテーナリングの平面度(最小二乗面からの最大値-最小値)とESFQD変化量との相関関係を表1および図10に示す。
【0058】
研磨ヘッド毎でのリテーナリングの平面度は7.81~28.86μmの範囲をとり、それらとESFQD変化量との相関を調べたが、傾向性は見られなかった。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0060】
1…片面研磨装置、 2…研磨布、 3…定盤、 4…研磨ヘッド、
5…研磨剤供給機構、 6…バックパッド、 7…リテーナリング、
8…テンプレート、 9…ベースリング、 10…ヘッド本体、
11…測定治具、 12…土台、 13…支柱、 14…荷台、
15…クランプ、 16…加圧手段、 16a…加圧用ホース接続治具、
16b…加圧用エアポンプ、 17…変位測定機、
20…本発明の測定装置、
W…ウエーハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10