(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】スエード研磨パッドの立ち上げ方法、及びウエーハの仕上げ研磨方法
(51)【国際特許分類】
B24B 53/017 20120101AFI20220511BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20220511BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20220511BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20220511BHJP
B24B 37/24 20120101ALI20220511BHJP
【FI】
B24B53/017 Z
H01L21/304 622F
B24B49/12
B24B37/00 H
B24B37/24 B
(21)【出願番号】P 2019119914
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 淳一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 三千登
(72)【発明者】
【氏名】石井 薫
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-207875(JP,A)
【文献】特開2003-229391(JP,A)
【文献】特開2016-143837(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0341204(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/00-51/00,53/017,
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スエード研磨パッドの立ち上げ方法であって、
(1)親水性成分が含まれている研磨パッドを純水でブラッシングする工程、
(2)前記研磨パッドを用いて第一の研磨スラリーでダミーウエーハを研磨して前記研磨パッドの表面の前記親水性成分を低減させる工程、
(3)前記研磨パッドを用いて第二の研磨スラリーで確認用ウエーハの仕上げ研磨を行い、研磨後の前記確認用ウエーハの表面状態を評価することで、前記研磨パッドの立ち上がりを確認する工程、を含み、かつ、
前記工程(1)を5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行うか、前記工程(2)と前記工程(3)の間に(2-2)前記研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程を行うか、もしくはその両方を行うことを特徴とするスエード研磨パッドの立ち上げ方法。
【請求項2】
前記工程(2)から前記工程(3)を一回以上繰り返すことを特徴とする請求項1に記載のスエード研磨パッドの立ち上げ方法。
【請求項3】
前記工程(3)において、研磨後の前記確認用ウエーハの表面状態の評価を、親水性の評価、パーティクル個数の評価、及びヘイズの評価のうちの少なくとも一種類以上によって行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスエード研磨パッドの立ち上げ方法。
【請求項4】
前記第一の研磨スラリー、及び/又は前記第二の研磨スラリーを、コロイダルシリカを含むものとすることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のスエード研磨パッドの立ち上げ方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法によって立ち上げたスエード研磨パッドを用いてウエーハの仕上げ研磨を行うことを特徴とするウエーハの仕上げ研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スエード研磨パッドの立ち上げ方法、及びウエーハの仕上げ研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハの研磨は、研磨布の種類や研磨剤の種類を変えて、多段で行われることが多く、最初に行われる両面研磨を一次研磨、一次研磨後に行われる研磨を二次研磨、最終段で行われる研磨工程を仕上げ研磨やファイナル研磨と呼んでいる。これらの研磨工程において所望の研磨性能を得るため、研磨パッドやドレッシング装置、研磨装置についての研究開発が盛んに行われている(特許文献1、2)。
【0003】
仕上げ研磨工程では、片面研磨が多く用いられており、表面欠陥が少なく、ヘイズと呼ばれるウェーハ表面の粗さが小さくなるように、研磨剤や研磨布が選定され、一般的にはコロイダルシリカ含有研磨剤とスエードタイプの研磨布が用いられる。研磨後のウェーハは、表面が疎水性のため、表面に異物が付着したり、研磨剤中のケミカル成分により表面が不均一にエッチングされ、ヘイズムラが発生したりする。このため、研磨後のウェーハ表面を親水化し、異物の付着や表面のエッチングムラを抑制するため、ヒドロキシエチルセルロースのような水溶性セルロースを研磨剤に添加することが知られている。
【0004】
仕上げ研磨工程では、ウェーハの表面の粗さ(ヘイズ)と表面の微少欠陥が重要な品質項目であり、これらは研磨布の研磨剤保持性能と密接に関係している。研磨剤の保持性能は、研磨布の濡れ性で評価することができる。研磨布の濡れ性が悪いと、スラリー(研磨剤)を必要量、均一に研磨布上に保持することができず、ウェーハ表面を均一に研磨することができない。また、研磨布の濡れ性が良すぎると、研磨剤の有効成分が研磨布の表層に吸収されるため、研磨剤の性能を十分に発揮することができず、研磨後のウェーハ表面の濡れ性不足や、研磨レートが低下する現象が起きる。特許文献3、4には、このような研磨布の濡れ性を評価する方法として、純水を研磨布上に滴下した直後の接触角や、完全に純水を吸収するまでの時間で評価する方法が記載されている。
【0005】
このため、研磨パッド使用前には、研磨パッド表面の親水性や撥水性を最適な状態にする目的で、研磨パッドの立ち上げを行うのが一般的である。研磨パッドの立ち上げは、定盤に研磨パッドを貼り付けた後、高圧ジエット洗浄やナイロンブラシによるブラッシングを実施し、その後研磨パッド立ち上げ用の研磨加工を行う。そして研磨パッドの立ち上がりが確認された後に使用開始となる。しかし、この立ち上げ研磨方法では立ち上がり時間に大きなばらつきがあり、立ち上げ研磨を数回行うことが多いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-196066号公報
【文献】特表2018-527753号公報
【文献】特開2003-145414号公報
【文献】特開2004-335713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、立ち上げ用の研磨加工の回数を減らし、立ち上げに要する時間を短縮できる、安定なスエード研磨パッドの立ち上げ方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、スエード研磨パッドの立ち上げ方法であって、
(1)親水性成分が含まれている研磨パッドを純水でブラッシングする工程、(2)前記研磨パッドを用いて第一の研磨スラリーでダミーウエーハを研磨して前記研磨パッドの表面の前記親水性成分を低減させる工程、(3)前記研磨パッドを用いて第二の研磨スラリーで確認用ウエーハの仕上げ研磨を行い、研磨後の前記確認用ウエーハの表面状態を評価することで、前記研磨パッドの立ち上がりを確認する工程、を含み、かつ、前記工程(1)を5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行うか、前記工程(2)と前記工程(3)の間に(2-2)前記研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程を行うか、もしくはその両方を行うスエード研磨パッドの立ち上げ方法を提供する。
【0009】
このような方法であれば、立ち上げ用の研磨加工の回数を減らし、立ち上げに要する時間を短縮できる、安定な立ち上げ方法となる。
【0010】
また、前記工程(2)から前記工程(3)を一回以上繰り返してもよい。
【0011】
1回の立ち上げ研磨加工のみで研磨パッドの立ち上げが完了しない場合であっても、上記プロセスを繰り返すことで立ち上げを完了することができる。
【0012】
また、前記工程(3)において、研磨後の前記確認用ウエーハの表面状態の評価を、親水性の評価、パーティクル個数の評価、及びヘイズの評価のうちの少なくとも一種類以上によって行うことが好ましい。
【0013】
このような評価方法とすれば、確実に、しかも効率よく研磨パッドの立ち上がりを確認することができる。
【0014】
前記第一の研磨スラリー、及び/又は前記第二の研磨スラリーを、コロイダルシリカを含むものとすることが好ましい。
【0015】
本発明では、このような研磨スラリーを用いることができる。
【0016】
また、本発明では、上記の方法によって立ち上げたスエード研磨パッドを用いてウエーハの仕上げ研磨を行うウエーハの仕上げ研磨方法を提供する。
【0017】
上記の方法で立ち上げたスエード研磨パットは、ウエーハの仕上げ研磨に好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明のスエード研磨パッドの立ち上げ方法であれば、立ち上げ用の研磨加工の回数を減らし、立ち上げに要する時間を短縮できる、安定な立ち上げ方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明のスエード研磨パッドの立ち上げ方法の第一の態様の一例のフロー図である。
【
図2】本発明のスエード研磨パッドの立ち上げ方法の第二の態様の一例のフロー図である。
【
図3】従来技術のスエード研磨パッドの立ち上げ方法の一例のフロー図である。
【
図4】スエード研磨パッドの表面特性評価の説明図である。
【
図5】高圧ジェット洗浄のためのユニットの一例を示す概略図である。
【
図6】立ち上がり確認時の確認用ウエーハの表面状態の評価方法の一例を示す説明図である。
【
図7】工程(2-2)のためのユニットの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、立ち上げ用の研磨加工の回数を減らし、立ち上げに要する時間を短縮できる、安定なスエード研磨パッドの立ち上げ方法の開発が求められていた。
【0021】
ここで従来技術におけるスエード研磨パッドの立ち上げ方法の一例について説明する。
図3に、従来技術の立ち上げ方法の一例のフロー図を示す。まず、定盤にスエード研磨パッドを貼り付ける。次に、この研磨パッドに高圧ジェット洗浄やナイロンブラシを用いて純水によるブラッシングを3min~10min実施する。その後、この研磨パッドで立ち上げ用の研磨加工(立ち上げ研磨)を行う。この立ち上げ研磨では、研磨スラリー(シリカ入り溶液)とダミーシリコンウェーハを連続で、例えば1時間から6時間研磨加工を行う。立ち上げ研磨終了後、研磨パッドの立ち上がりを確認する為、この研磨パッドを用いて別に用意した確認用ウェーハの二次研磨及び仕上げ研磨加工を行い、研磨加工終了直後の確認用ウェーハ表面の濡れ性を目視判定し、洗浄後ウェーハをパーティクル測定機でLLSとHazeを確認する。立ち上がりが不十分な場合は立ち上げ研磨と立ち上がり確認を、研磨パッドが立ち上がった状態になるまで繰返す。この現行の立ち上げ方法では、立ち上がり確認の際にNG判定することが27%程度発生することから研磨パッド立ち上げ工程が不安定で、作業時間のロスが大きい。
【0022】
このように、現行の方法では、立ち上げ研磨と確認を2~4回繰り返すことがある。この立ち上がり時間のばらつき原因は、研磨パッド製法で使用されている添加剤等に由来する親水性成分の抜け方が、研磨スラリによる立ち上げ研磨加工でばらついているためと考えられる。
【0023】
未使用のスエード研磨パッドには、通常、パッドを構成する樹脂中に添加剤由来の親水性成分が含まれている。このため、パッドの立ち上げ処理を行わない場合には、パッド表面は親水性となる。一方、立ち上げ処理後のパッドは、親水性成分が除去され、パッド表面は立ち上げ前に比べてより撥水性が高くなる。例えば
図4に示すように、立ち上げ研磨する前後のスエード研磨パッドの各々に対して、純水を滴下して、滴下直後と滴下後30秒経過したときの吸水性を確認することにより、研磨パッド中の親水性添加剤の抜けを確認することができる。
【0024】
そして研磨パッド表面状態が親水性から撥水性に十分に変わっていない場合に、研磨スラリーに含まれる表面保護剤(研磨面保護剤)がパッドに吸着されてしまい、表面保護剤が十分にウェーハ表面に到達していないため、所望の研磨効果を達成することができないと考えられる。
【0025】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、立ち上げ研磨の前の純水によるブラッシングの方法を改良するか、または立ち上げ研磨後に純水に漬けて親水性成分を取り除く工程を追加することによって、確実に研磨パッドに含まれる親水性成分を除去し、立ち上げ研磨方法をより安定したプロセスにできることを見出し、本発明を完成させた。
【0026】
即ち、本発明は、スエード研磨パッドの立ち上げ方法であって、(1)親水性成分が含まれている研磨パッドを純水でブラッシングする工程、(2)前記研磨パッドを用いて第一の研磨スラリーでダミーウエーハを研磨して前記研磨パッドの表面の前記親水性成分を低減させる工程、(3)前記研磨パッドを用いて第二の研磨スラリーで確認用ウエーハの仕上げ研磨を行い、研磨後の前記確認用ウエーハの表面状態を評価することで、前記研磨パッドの立ち上がりを確認する工程、を含み、かつ、前記工程(1)を5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行うか、前記工程(2)と前記工程(3)の間に(2-2)前記研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程を行うか、もしくはその両方を行うスエード研磨パッドの立ち上げ方法である。
【0027】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
[本発明のスエード研磨パッドの立ち上げ方法]
本発明のスエード研磨パッドの立ち上げ方法は、立ち上げ研磨前の純水によるブラッシングを5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行う方法(第一の態様)、立ち上げ研磨終了後、確認工程を行う前に、研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程を行う方法(第二の態様)、及び立ち上げ研磨前の純水によるブラッシングを5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行い、かつ立ち上げ研磨終了後、確認工程を行う前に、研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程を行う方法(第三の態様)のうちのいずれかである。以下、本発明の具体的な態様について、さらに詳細に説明する。
【0029】
<第一の態様>
図1に本発明の第一の態様のフロー図を示す。本態様は、工程(1)を5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行うスエード研磨パッドの立ち上げ方法である。以下、本態様について説明する。
【0030】
<工程(1)>
工程(1)は、親水性成分が含まれている研磨パッドを純水でブラッシングする工程であり、5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行う。高圧ジェットを用いて15分以上ブラッシングすることで、研磨パッド中の親水性添加剤が早く抜けて研磨パッドが撥水になる。
【0031】
工程(1)は、例えば
図5に示すようなユニットを用いて行うことができるが、これに限定されない。このユニットでは、ブラシユニットアーム3の先端の高圧ジェットノズル2から純水を噴射して、定盤+研磨パッド1のブラッシングを行う。ブラッシングの詳細な条件も特に限定されないが、例えば、定盤回転数は20~40rpm、流量は400~600ml/s、ノズル噴射角度は40~70°とすることができる。
【0032】
高圧ジェット洗浄における圧力としては、5Mpa以下であれば特に限定はされないが、研磨パッド面の洗浄効率から、1Mpa以上が好ましく、3Mpa以上がより好ましい。しかし、圧力が5Mpaを超えると、研磨パッドが破壊されるおそれがある。
【0033】
また、高圧ジェット洗浄を行う時間は15分以上であれば特に限定はされないが、研磨パッドの表層構造の破壊により、80分以内とすることが好ましく、40分以内とすることがより好ましい。15分より短ければ、現行の立ち上げ方法と同等の親水性成分の除去効果しか得られない。
【0034】
<工程(2)>
工程(2)は、工程(1)でブラッシングした研磨パッドを用いて第一の研磨スラリーでダミーウエーハ(シリコンウエーハ)を研磨して研磨パッドの表面の親水性成分を低減させる工程(立ち上げ研磨工程)である。本工程は、従来法と同様にして行うことができ、例えば、研磨スラリ(シリカ入り溶液)とダミーウェーハを連続で1時間から6時間研磨加工を行うことができる。
【0035】
第一の研磨スラリーとしては特に限定はされず、種々の研磨スラリーを用いることができるが、コロイダルシリカを含有するものとすることが好ましい。
【0036】
<工程(3)>
工程(3)は、工程(2)で立ち上げ研磨した研磨パッドを用いて第二の研磨スラリーで確認用ウエーハの仕上げ研磨を行い、研磨後の確認用ウエーハの表面状態を評価することで、研磨パッドの立ち上がりを確認する工程である。
【0037】
工程(3)も、従来法と同様にして行うことができる。例えば、研磨パッド立ち上がりを確認する為、確認用ウェーハを二次研磨し、さらに仕上げ研磨加工を行い、加工終了直後の確認用ウェーハ表面の評価を行い、研磨パッドの立ち上がり具合を判断する。
【0038】
第二の研磨スラリーとしては特に限定はされず、種々の研磨スラリーを用いることができるが、コロイダルシリカを含有するものとすることが好ましい。また、第一の研磨スラリーと第二の研磨スラリーは、同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
また、工程(3)において、研磨後の確認用ウエーハの表面状態の評価を、親水性の評価、パーティクル個数の評価、及びヘイズの評価のうちの少なくとも一種類以上によって行うことが好ましい。さらに、親水性の評価、パーティクル個数の評価、及びヘイズの評価の3種類全てを行うことが特に好ましい。
【0040】
親水性の評価方法としては、特に限定はされないが、例えば、ウエーハ表面の濡れ性を目視観察する方法が挙げられる。
図6に示されるように、研磨パッドの立ち上がりが完了している場合(OK判定の場合)には、研磨後の確認用ウエーハ上で水が全面に均一に広がるようになる。立ち上がりが完了していない場合(NG判定の場合)には、ウエーハ表面の濡れ性が部分的に悪くなり、全面濡れた状態にならない。
【0041】
パーティクル個数の評価方法としては、特に限定はされない。例えば、パーティクル個数は、パーティクル測定機(例えばKLAテンコール社製のSurfscan SP3等)によってLLS(Laser Light Scattering)で検出されるカウント数(LLS個数)として評価することができる。
図6に示すように、研磨パッドの立ち上がりが完了している場合には、パーティクルの個数は完了していない場合と比べて少なくなる(完了していない場合には、完了している場合と比べてLLS個数が3倍以上となる)。
【0042】
ヘイズの評価としては、特に限定はされないが、例えば、シリコンウェーハのヘイズは、レーザー散乱方式のウェーハ表面検査装置(例えばKLAテンコール社製のSurfscan SP3)等のパーティクル測定機にて測定し、面内のヘイズレベルをマップとして出力されたもの(ヘイズマップ)を評価することができる。
図6に示されるように、研磨パッドの立ち上げが完了していない場合には、ウエーハ外周部にムラが発生したような状態となっている。
【0043】
また、上記(3)工程で、研磨パッドの立ち上がりが完了していないと判断された場合には、上記(2)工程と(3)工程を繰り返すことができる。繰り返しの回数としては特に制限はない。従来の立ち上げ方法においては、工程(2)と工程(3)を3回以上行う場合も少なくないが、本態様の立ち上げ方法では、1回で完了できる確率が高く、2回でほぼ完了することができる。
【0044】
<第二の態様>
図2に本発明の第二の態様のフロー図を示す。本態様は、工程(2)と工程(3)の間に(2-2)研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程を行うスエード研磨パッドの立ち上げ方法である。以下、本態様について説明する。
【0045】
<工程(1)>
工程(1)は、親水性成分が含まれている研磨パッドを純水でブラッシングする工程であり、従来法と同様に行うことができる。例えば、ナイロンブラシや高圧ジェット洗浄によるブラッシングを3~10分とすることができる。
【0046】
<工程(2)>
工程(2)は、第一の態様で示した方法と同様の方法により行うことができる。
【0047】
<工程(2-2)>
工程(2-2)は、研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程である。パッド立ち上げ研磨終了後、純水をかけ流すことによって、研磨パッド全面に純水が満たされている状態を保つことによって行われる。この工程を追加することによって、研磨パッド表面に残っている親水性成分を除去することができる。
【0048】
工程(2-2)は、例えば
図7に示すようなユニットを用いて行うことができるが、これに限定されない。このユニットでは、スラリノズル4を通じて、純水5を定盤+研磨パッド1に供給する。純水かけ流しの詳細な条件も特に限定されないが、例えば、純水の供給量を0.1L/min以上5.0L/min以下とすれば純水使用量を削減できるとともに親水性成分の除去効果が十分に得られ、0.5L/minとすることが好ましい。
【0049】
純水のかけ流し時間は、2時間以上であれば特に限定はされないが、装置の稼働率の観点から5時間以内であれば好ましく、3時間以内であればより好ましい。2時間より短いと、現行の立ち上げ方法と同等の親水性成分の除去効果しか得られない。
<工程(3)>
工程(3)は、第一の態様で示した方法と同様の方法により行うことができる。
【0050】
また、上記(3)工程で、研磨パッドの立ち上がりが完了していないと判断された場合には、上記(2)工程、(2-2)工程、及び(3)工程を繰り返すことができる。繰り返しの回数としては特に制限はない。従来の立ち上げ方法においては、工程(2)と工程(3)を3回以上行う場合も少なくないが、本態様の立ち上げ方法では、1回で完了できる確率が極めて高い。
【0051】
<第三の態様>
第三の態様は、本発明のスエード研磨パッドの立ち上げ方法であって、工程(1)を5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行い、かつ、工程(2)と工程(3)の間に(2-2)研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程を行う方法である。具体的には、第一の態様に、第二の態様で説明した工程(2-2)を加えればよい。
【0052】
[ウエーハの仕上げ研磨方法]
また、本発明では、上記の方法によって立ち上げたスエード研磨パッドを用いてウエーハの仕上げ研磨を行うウエーハの仕上げ研磨方法を提供する。
【0053】
上記の方法で立ち上げたスエード研磨パットは、ウエーハの仕上げ研磨に好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
[実施例1、比較例1]
立ち上げ研磨後に研磨パッドに残留する親水性成分を除去する為に、立ち上げ研磨前に行うブラッシングを高圧ジエット洗浄で通常より長く掛けることで確認用ウェーハの研磨後の表面濡れ性に違いが有るか確認をした。
【0056】
親水性成分を含むスエード研磨パッドに対し、高圧ジェットの圧力3,5,8,10MPaの4水準と噴出時間5,10,15,20,30,40minの6水準を組み合わせた各々の条件でブラッシングを行い、その後、ダミーウエーハを用いて立ち上げ研磨を一定時間実施した。また、ナイロンブラシでも5,10,15,20,30,40minの6水準でブラッシングを行い、その後立ち上げ研磨を上記と同じ時間実施した。上記の各工程は、以下の条件で実施した。
【0057】
ナイロンブラシによるブラッシング条件
装置 :片面研磨機
ナイロンブラシ :線径 0.2mmφ
供給液 :純水
【0058】
高圧ジェットによるブラッシング条件
装置 :片面研磨機
定盤回転 :40rpm
アームストローク :10回
流量 :600mL/s
【0059】
立ち上げ用研磨条件
装置 :片面研磨機
ダミーウェーハ :300mmφ P-品
研磨スラリ :コロイダルシリカ入り溶液
【0060】
次に、立ち上がり確認をする為に、立ち上げ研磨を行った研磨パッドを用いて、以下の条件で確認用ウエーハに研磨(通常の研磨加工)を行い、目視によりウェーハ表面の濡れ性を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
確認用ウエーハの研磨(立ち上げ確認研磨)条件
装置 :片面研磨機
二次研磨+仕上げ研磨
ウェーハ :300mmφ P-品
研磨パッド :二次研磨⇒不織布orスエード
仕上げ研磨⇒スエード
研磨スラリ :二次研磨⇒コロイダルシリカ入り溶液
仕上げ研磨⇒コロイダルシリカ入り溶液
【0062】
【0063】
従来の条件である高圧ジェット5MPa以下での10min以内のブラッシングでは、研磨パッドの立ち上げ研磨を所定時間を行っても、研磨後の確認用ウエーハは部分撥水となり研磨パッドを立ち上げることができなかった。しかし、ブラッシングを高圧ジエットの5MPa以下で15min以上行うことで、立ち上げ研磨前に研磨パッド中の親水化成分を十分に溶出させることができ、同じ時間の立ち上げ研磨で研磨パッドが立ち上がることを確認できた。また、ナイロンブラシで40分間ブラッシングしても、ブラッシングを高圧ジエットの5MPa以下で15min以上行った場合と同等の効果を得ることはできなかった。以上により、本発明は研磨パッド中の親水性成分の除去について、従来技術に比べて優位な効果を示すことが確認された。
【0064】
[実施例2、比較例2]
立ち上げ研磨後に研磨パッドに残留する親水性成分を除去する為に、純水掛け流し状態で研磨パッド表面を維持する工程を追加し、どの程度純水漬けをすることでウェーハ研磨後の表面濡れ性に違いが出るかを確認をした。
【0065】
定盤に、親水性成分を含むスエード研磨パッドを貼り付け、これに10分間純水でナイロンブラシによるブラッシングを行い、上記と同様の条件で研磨パッド立ち上げ研磨を所定時間実施した。次に、立ち上げ研磨に用いたスエード研磨パッドに、下記条件にて純水かけ流しを1,1.5,2,2.5,3,5時間の6水準で行った。その後、上記と同様の条件で立ち上がり確認研磨(通常の研磨加工)を行い、目視によるウェーハ表面濡れ性とパーティクル測定機(SP3)によるDW-Hazeマップと24nmUP_LLS個数を評価した。結果を表2に示す。
【0066】
純水かけ流し条件
装置 :片面研磨機
供給液 :純水
供給方法 :掛け流し方式
供給量 :0.5l/min
【0067】
【0068】
純水に研磨パッドを晒している時間が2時間以上で有れば、ウェーハ表面は全面親水面になっていた。本発明では、立ち上げ研磨加工後に2時間以上純水に晒すことで、純水に晒す前に立ち上がっていなかった研磨パッドが立ち上がることを確認できた。
【0069】
[実施例3]
本発明の第一の態様(工程(1)を5Mpa以下の高圧ジェット洗浄を用いて15分以上行う方法)にて、研磨パッドの立ち上げを複数回行い、立ち上げ研磨が何回必要であったか(即ち、工程(2)~工程(3)を何回繰り返したか)調べた結果を表3に示す。
【0070】
[実施例4]
本発明の第二の態様(工程(2)と工程(3)の間に(2-2)研磨パッドの表面に純水を2時間以上かけ流す工程を行う方法)にて、研磨パッドの立ち上げを複数回行い、立ち上げ研磨が何回必要であったか調べた結果を表4に示す。
【0071】
[比較例3]
従来の立ち上げ方法にて、研磨パッドの立ち上げを複数回行い、立ち上げ研磨が何回必要であったか調べ、その結果を表3及び表4にあわせて示す。
【0072】
【0073】
【0074】
これまでの方法(比較例3)では、ナイロンブラシによるブラッシングを10min行い、パッド立ち上げ研磨を行うと、ウェーハの濡れ性やHaze,LLSのレベル変動で立ち上がっていないと判断される研磨パッドは27%程度発生していた。しかし、本発明(実施例3)では、立ち上げ方法を変更して立ち上げ研磨前に3MPa 15minの高圧ジエット洗浄を行うことにより、立ち上げ作業1回で完了する割合は93%に向上することができ、悪くとも立ち上げ研磨作業を2回行うことで全ての研磨パッドの立ち上げができた。これにより、研磨パッド立ち上げに要する時間を最大で現行の方法の1/3程度に短縮することができ、安定な立ち上げ方法であることが確認できた。
【0075】
また、本発明(実施例4)では、立ち上げ研磨後に2時間以上研磨パッドを純水で晒すことにより、立ち上げ作業を1回で完了する割合をほぼ100%にすることができた。これにより、研磨パッド立ち上げに要する時間を最大で現行の方法の2/3程度にまで短縮することができ、さらに、ほぼ工程を繰り返す必要のない極めて安定な立ち上げ研磨工程となることが確認できた。
【0076】
以上の結果から、本発明のスエード研磨パッドの立ち上げ方法であれば、研磨パッド立ち上げ用の研磨加工の回数を減らし、立ち上げに要する時間を短縮できることが明らかになった。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0078】
1…定盤+研磨パッド、 2…高圧ジェットノズル、 3…ブラシユニットアーム、
4…スラリノズル、 5…純水。