(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】積層体、電子機器、積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20220511BHJP
B32B 15/00 20060101ALI20220511BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20220511BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B15/00
H01L23/36 M
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2019510205
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018013502
(87)【国際公開番号】W WO2018181839
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2017072256
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100215049
【氏名又は名称】石川 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】國信 隆史
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武
(72)【発明者】
【氏名】氏家 研人
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 和宏
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-237228(JP,A)
【文献】特開平08-031985(JP,A)
【文献】特開2002-270740(JP,A)
【文献】特開2014-156545(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031888(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
H01L23/29-23/473
H05K7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のカップリング剤の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラーと;
第3のカップリング剤の一端と結合した金属層と;を備え、
前記第3のカップリング剤の他端は、前記第1のカップリング剤の他端と結合した、
積層体。
【請求項2】
第2のカップリング剤の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラーであって、第2のカップリング剤の他端にさらに2官能以上の重合性化合物が結合した第2の無機フィラーと;
第3のカップリング剤の一端と結合した金属層と;を備え、
前記第3のカップリング剤の他端は、前記重合性化合物が有する官能基の少なくとも一つと結合した、
積層体。
【請求項3】
第1のカップリング剤の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラーと、第2のカップリング剤の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラーであって、第2のカップリング剤の他端にさらに2官能以上の重合性化合物が結合した第2の無機フィラーにおいて、前記第1のカップリング剤の他端が、前記重合性化合物が有する官能基の少なくとも一つと結合したフィラー;をさらに備える、
請求項1
または請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1、第2、第3のカップリング剤は、塩基性を有するシランカップリング剤である、
請求項
3に記載の積層体。
【請求項5】
前記第1、第2、第3のカップリング剤は、アミノ基、オキシラニル基、またはオキセタニル基を有するシランカップリング剤である、
請求項
4に記載の積層体。
【請求項6】
熱伝導性の第4の無機フィラー;をさらに備える、
請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記第1の無機フィラー、前記第2の無機フィラー、
前記第4の無機フィラーは、それぞれ、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化炭素ホウ素、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、コーディエライト、または酸化鉄系材料から選ばれる少なくとも一つである、
請求項
6に記載の積層体。
【請求項8】
前記積層体の各層は厚み方向または水平方向に積層された、
請求項1~請求項
7のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~請求項
8のいずれか1項に記載の積層体と;
発熱部を有する電子デバイスと;を備え、
前記積層体は、前記発熱部に接触するように前記電子デバイスに配置された、
電子機器。
【請求項10】
熱伝導性の第1の無機フィラーを、第1のカップリング剤の一端と結合させる工程と;
金属層を、第3のカップリング剤の一端と結合させる工程と;
前記第3のカップリング剤の他端を、前記第1のカップリング剤の他端と結合させる工程と;を備える、
積層体の製造方法。
【請求項11】
熱伝導性の第2の無機フィラーを、第2のカップリング剤の一端と結合させる工程と;
前記第2のカップリング剤の他端を、2官能以上の重合性化合物と結合させる工程と;
金属層を、第3のカップリング剤の一端と結合させる工程と;
前記第3のカップリング剤の他端を、前記重合性化合物が有する官能基の少なくとも一つと結合させる工程と;を備える、
積層体の製造方法。
【請求項12】
前記積層体は、第1のカップリング剤の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラーと、第2のカップリング剤の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラーであって、第2のカップリング剤の他端にさらに2官能以上の重合性化合物が結合した第2の無機フィラーとにおいて、第1のカップリング剤の他端が、重合性化合物が有する官能基の少なくとも一つと結合したフィラー;を備える、
請求項10または請求項11に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。特に、電子機器内部に生じた熱を効率よく伝導、伝達することにより放熱でき、電子基板等になり得る積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド自動車や電気自動車などの電力制御用の半導体素子や、高速コンピューター用のCPUなどにおいて、内部の半導体の温度が高くなり過ぎないように、パッケージ材料の高熱伝導化が望まれている。すなわち半導体チップから発生した熱を効果的に外部に放出させる能力が重要になっている。また、動作温度の上昇により、パッケージ内に使用されている材料間の熱膨張率の差により熱歪が発生し、配線の剥離、積層基板の層剥離などによる寿命の低下が問題になっている。
【0003】
このような放熱問題を解決する方法としては、発熱部位に高熱伝導性材料(放熱部材)を接触させて熱を外部に導き、放熱する方法が挙げられる。特許文献1には、有機材料と無機材料を複合化させた放熱部材であって、無機材料間をカップリング剤と重合性液晶化合物で繋いだ放熱部材が開示されている(段落0007、
図1、2)。カップリング剤と重合性液晶化合物で繋ぐことにより、無機材料間の熱伝導性を極めて高めることを可能とした。
【0004】
特許文献2には、1600℃から1900℃の焼結で得られた窒化アルミニウムからなるセラミック層に、実質的に酸化アルミニウムからなる中間層を介して、DCBボンディングにより、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる金属層を接合する方法が開示されている(請求項1、段落0018~0021)。当該方法により、接合性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2016/031888号
【文献】特表2015-503500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、パッケージ内で使用される材料等は、熱伝導性や層間の接着性がより高いことが求められる。また、製造方法は、より容易な方法が求められる
そこで本発明は、無機物と金属との積層体であって、熱伝導性および層間接着性に優れた積層体、および、少ない工程でより容易に積層体を製造可能な積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、有機材料と無機材料の複合化において、無機材料同士を有機材料で繋げるような態様、すなわち、無機フィラーにより形成される層と金属層とを、カップリング剤や2官能以上の重合性化合物等を介して結合させることにより、無機フィラー層と金属層を備える積層体を容易に形成できること、および、無機フィラー層と金属層との間に結合を有する当該積層体は、層間の接着性に優れ、熱伝導性の極めて高い積層体となり得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明の第1の態様に係る積層体は、例えば
図2に示すように、第1のカップリング剤11の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラー1と;第3のカップリング剤15の一端と結合した金属層5と;を備え、第3のカップリング剤15の他端は、第1のカップリング剤11の他端と結合した、積層体である。
「一端」および「他端」とは、分子の形状の縁または端であればよく、分子の長辺の両端であってもなくてもよい。「金属層」とは、金属上に無機フィラーによる層を積層できる形状のものであればよく、例えば、板状や棒状であってもよい。
このように構成すると、無機フィラーと金属層をカップリング剤/カップリング剤を介して結合させて積層体を形成することができる。そのため、熱伝導の主な要素であるフォノンを無機フィラーと金属層間で直接伝播することができ、積層体は水平方向だけでなく厚み方向にも極めて高い熱伝導性を有することができる。フォノンとは固体内の原子の格子振動である。さらに、積層体の層間は結合により層間接着性にも優れる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る積層体は、例えば
図3に示すように、第2のカップリング剤12の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラー2であって、第2のカップリング剤12の他端にさらに2官能以上の重合性化合物22が結合した第2の無機フィラー2と;第3のカップリング剤15の一端と結合した金属層5と;を備え、第3のカップリング剤15の他端は、重合性化合物22が有する官能基の少なくとも一つと結合した、積層体である。
このように構成すると、無機フィラーと金属層をカップリング剤/重合性化合物/カップリング剤を介して結合させて積層体を形成することができる。そのため、熱伝導の主な要素であるフォノンを無機フィラーと金属層間で直接伝播することができ、積層体は水平方向だけでなく厚み方向にも極めて高い熱伝導性を有することができる。さらに、積層体の層間は結合により層間接着性にも優れる。
【0010】
本発明の第3の態様に係る積層体は、例えば
図4に示すように、表面に官能基を有する熱伝導性の第3の無機フィラー3と;第3のカップリング剤15の一端と結合した金属層5と;を備え、第3のカップリング剤15の他端は、第3の無機フィラー3が有する官能基と結合した、積層体である。
このように構成すると、粒子表面に官能基を有する無機フィラーと金属層をカップリング剤を介して結合させて積層体を形成することができる。そのため、熱伝導の主な要素であるフォノンを無機フィラーと金属層間で直接伝播することができ、積層体は水平方向だけでなく厚み方向にも極めて高い熱伝導性を有することができる。さらに、積層体は結合により層間接着性にも優れる。
【0011】
本発明の第4の態様に係る積層体は、上記本発明の第1の態様~第3の態様のいずれか1の態様に係る積層体において、例えば
図5に示すように、第1のカップリング剤11の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラー1と、第2のカップリング剤12の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラー2であって、第2のカップリング剤12の他端にさらに2官能以上の重合性化合物22が結合した第2の無機フィラー2において、前記第1のカップリング剤1の他端が、前記重合性化合物22が有する官能基の少なくとも一つと結合したフィラー;をさらに備える。
このように構成すると、無機フィラー間はカップリング剤/重合性化合物/カップリング剤を介した結合を有する。そのため、熱伝導の主な要素であるフォノンを無機フィラー間で直接伝播することができ、無機フィラー層は水平方向だけでなく厚み方向にも極めて高い熱伝導性を有することができる。
【0012】
本発明の第5の態様に係る積層体は、上記本発明の第4の態様に係る積層体において、前記第1、第2、第3のカップリング剤が、塩基性を有するシランカップリング剤である。
このように構成すると、カップリング剤が、無機フィラーまたは金属と強固に結合することができる。
【0013】
本発明の第6の態様に係る積層体は、上記本発明の第5の態様に係る積層体において、前記第1、第2、第3のカップリング剤が、アミノ基、オキシラニル基、またはオキセタニル基を有するシランカップリング剤である。
このように構成すると、アミノ基は無機フィラーとの反応性が高く、オキシラニル基やオキセタニル基はアミノ基を有する重合性化合物と強固な結合を形成できる。
【0014】
本発明の第7の態様に係る積層体は、上記本発明の第1の態様~第6の態様のいずれか1の態様に係る積層体において、熱伝導性の第4の無機フィラー;をさらに備える。
このように構成すると、第4の無機フィラーは、第1~第3の無機フィラー間の隙間を埋めたり、板状フィラーの場合には配向性を調整したりすることができ、無機フィラー層の熱伝導性に寄与することができる。
【0015】
本発明の第8の態様に係る積層体は、上記本発明の第7の態様に係る積層体において、前記第1の無機フィラー、前記第2の無機フィラー、前記第3の無機フィラー、前記第4の無機フィラーが、それぞれ、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化炭素ホウ素、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルミナ、窒化アルミニウム、シリカ、窒化珪素、炭化珪素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、コーディエライト、または酸化鉄系材料から選ばれる少なくとも一つである。
このように構成すると、無機フィラーは、熱伝導率が高く、含有する無機材料と有機材料の種類、配合比率、硬化条件等により、熱膨張率を任意に変更することができる。よって、金属層の熱膨張率に近い熱膨張率とすることができ、熱膨張率の差による層剥離を抑制することができる。
【0016】
本発明の第9の態様に係る積層体は、上記本発明の第1の態様~第8の態様のいずれか1の態様に係る積層体において、例えば
図6に示すように、前記積層体の各層が厚み方向または水平方向に積層された積層体である。
このように構成すると、厚み方向だけでなく水平方向においても熱膨張率の違いにより生ずる歪みを緩和することができる。さらに、水平方向に熱伝導率の高い積層体を、垂直方向にならべることで、垂直方向の熱伝導率を更に上げることもできる。
【0017】
本発明の第10の態様に係る電子機器は、上記本発明の第1の態様~第9の態様のいずれか1の態様に係る積層体と;発熱部を有する電子デバイスと;を備え、前記積層体は、前記発熱部に接触するように前記電子デバイスに配置されている。
このように構成すると、高熱伝導性を有する積層体により、電子デバイスに生じた熱を効率よく伝導させることができる。また、面方向の熱膨張率を、積層体に取り付けた銅配線やシリコン、窒化ケイ素などの半導体素子の熱膨張率に近づけておくことにより、ヒートサイクルにより剥がれ難いデバイスが作製できる。
【0018】
本発明の第11の態様に係る積層体の製造方法は、例えば
図2に示すように、熱伝導性の第1の無機フィラー1を、第1のカップリング剤11の一端と結合させる工程と;金属層5を、第3のカップリング剤15の一端と結合させる工程と;第3のカップリング剤15の他端を、第1のカップリング剤11の他端と結合させる工程と;を備える。
このように構成すると、無機フィラーと金属層をカップリング剤/カップリング剤を介して結合させた積層体を形成することができる。
【0019】
本発明の第12の態様に係る積層体の製造方法は、例えば
図3に示すように、熱伝導性の第2の無機フィラー2を、第2のカップリング剤12の一端と結合させる工程と;第2のカップリング剤12の他端を、2官能以上の重合性化合物22と結合させる工程と;金属層5を、第3のカップリング剤15の一端と結合させる工程と;第3のカップリング剤15の他端を、重合性化合物22が有する官能基の少なくとも一つと結合させる工程と;を備える。
このように構成すると、無機フィラーと金属層をカップリング剤/重合性化合物/カップリング剤を介して結合させた積層体を形成することができる。
【0020】
本発明の第13の態様に係る積層体の製造方法は、例えば
図4に示すように、金属層5を、第3のカップリング剤15の一端と結合させる工程と;第3のカップリング剤15の他端を、表面に官能基を有する熱伝導性の第3の無機フィラー3の官能基と結合させる工程と;を備える。
このように構成すると、粒子表面に官能基を有する無機フィラーと金属層をカップリング剤を介して結合させた積層体を形成することができる。
【0021】
本発明の第14の態様に係る積層体の製造方法は、上記本発明の第11の態様~第13の態様のいずれか1の態様に係る積層体の製造方法において、例えば
図5に示すように、前記積層体が、第1のカップリング剤11の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラー1と、第2のカップリング剤12の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラー2であって、第2のカップリング剤12の他端にさらに2官能以上の重合性化合物22が結合した第2の無機フィラー2において、第1のカップリング剤11の他端が、重合性化合物22が有する官能基の少なくとも一つと結合したフィラー;を備える。
このように構成すると、無機フィラー間をカップリング剤/重合性化合物/カップリング剤を介して結合させた積層体を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の積層体は、無機フィラーで形成された層と金属層との積層体であって、極めて高い熱伝導性と優れた層間接着性を有する。さらに、化学的安定性、硬度、および機械的強度などの優れた特性をも有する。当該積層体は、例えば、放熱基板、放熱板(面状ヒートシンク)、放熱シート、放熱塗膜、放熱接着剤や、電極付放熱性絶縁基板、熱伝導性電子基板などに適している。さらに、本発明の積層体の製造方法は、少ない工程でより容易に無機フィラーと金属との積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本願の積層体において、無機フィラーと金属の結合、および無機フィラー同士の結合を板状フィラーである窒化ホウ素を例として示す概念図である。窒化ホウ素は、加圧プレスにより横方向に配列している。
【
図2】放熱部材用組成物と金属層との圧縮成形により、金属層5に結合した第3のカップリング剤15の他端が、第1の無機フィラー1の第1のカップリング剤11と結合することを示す概念図である。
【
図3】放熱部材用組成物と金属層との圧縮成形により、金属層5に結合した第3のカップリング剤15の他端が、第2の無機フィラー2の重合性化合物22と結合することを示す概念図である。
【
図4】放熱部材用組成物と金属層との圧縮成形により、金属層5に結合した第3のカップリング剤15の他端が、第3の無機フィラー3と結合することを示す概念図である。
【
図5】放熱部材用組成物の圧縮成形により、第1の無機フィラー1に結合した第1のカップリング剤11の他端が、第2の無機フィラー2の重合性化合物22と結合することを示す概念図である。
【
図6】熱膨張率が正(31)負(32)正負正負・・・となるように厚み方向に積層した積層体30aから水平方向に積層した積層体30bを形成する場合の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この出願は、日本国で2017年3月31日に出願された特願2017-072256号に基づいており、その内容は本出願の内容として、その一部を形成する。本発明は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本発明のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本発明の精神と範囲内で当業者にとって明らかであるからである。出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一または相当する部分には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。また、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0026】
本明細書における用語の使い方は以下のとおりである。
「液晶化合物」「液晶性化合物」は、ネマチック相やスメクチック相などの液晶相を発現する化合物である。
【0027】
「アルキルにおける任意の-CH2-は、-O-などで置き換えられてもよい」あるいは「任意の-CH2CH2-は-CH=CH-などで置き換えられてもよい」等の句の意味を下記の一例で示す。例えば、C4H9-における任意の-CH2-が、-O-または-CH=CH-で置き換えられた基としては、C3H7O-、CH3-O-(CH2)2-、CH3-O-CH2-O-などである。同様にC5H11-における任意の-CH2CH2-が、-CH=CH-で置き換えられた基としては、H2C=CH-(CH2)3-、CH3-CH=CH-(CH2)2-など、さらに任意の-CH2-が-O-で置き換えられた基としては、CH3-CH=CH-CH2-O-などである。このように「任意の」という語は、「区別なく選択された少なくとも1つの」を意味する。なお、化合物の安定性を考慮して、酸素と酸素とが隣接したCH3-O-O-CH2-よりも、酸素と酸素とが隣接しないCH3-O-CH2-O-の方が好ましい。
【0028】
また、環Aに関して「任意の水素は、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル、または炭素数1~10のハロゲン化アルキルで置き換えられてもよい」の句は、例えば1,4-フェニレンの2,3,5,6位の水素の少なくとも1つがフッ素やメチル等の置換基で置き換えられた場合の態様を意味し、また置換基が「炭素数1~10のハロゲン化アルキル」である場合の態様としては、2-フルオロエチルや3-フルオロ-5-クロロヘキシルのような例を包含する。
【0029】
「化合物(1-1)」は、後述する下記式(1-1)で表される液晶化合物を意味し、また、下記式(1-1)で表される化合物の少なくとも1種を意味することもある。「放熱部材用組成物」は、前記化合物(1-1)または他の重合性化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有する組成物を意味する。1つの化合物(1-1)が複数のAを有するとき、任意の2つのAは同一でも異なっていてもよい。複数の化合物(1-1)がAを有するとき、任意の2つのAは同一でも異なっていてもよい。この規則は、RaやZなど他の記号、基などにも適用される。
【0030】
[積層体]
本発明の第1の実施の形態に係る積層体は、無機フィラー1、2、3のいずれかを含む層と金属層5を備える。無機フィラー間はカップリング剤や重合性化合物を介した結合を有し、無機フィラーと金属層間も同様にカップリング剤や重合性化合物を介した結合を有する。この積層体は、無機フィラーを含む放熱部材用組成物と、カップリング剤で処理した金属層とを圧縮成形することにより得ることができる。例えば
図1に示すとおり、第1の無機フィラー1は、第1のカップリング剤11/重合性化合物22/第2のカップリング剤12を介して第2の無機フィラーと結合し(
図5参照)、無機フィラー層を形成する。第2の無機フィラーは、第2のカップリング剤12/重合性化合物22/第3のカップリング剤15を介して金属層5と結合する(
図3参照)。
【0031】
図2を用いて無機フィラーと金属層との結合について説明する。放熱部材用組成物は、少なくとも第1のカップリング剤11の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラー1を含む。放熱部材用組成物と、第3のカップリング剤15で処理した金属層5とを圧縮成形すると、金属層5と結合した第3のカップリング剤15の他端が、第1のカップリング剤11の他端と結合し、無機フィラーと金属層間に結合が形成される。このように、無機フィラー1の層と金属層5による積層体が形成される。
【0032】
他の態様として、
図3を用いて無機フィラーと金属層との結合について説明する。放熱部材用組成物は、少なくとも第2のカップリング剤12の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラー2であって、第2のカップリング剤12の他端にさらに2官能以上の重合性化合物22が結合した第2の無機フィラー2を含む。放熱部材用組成物と、第3のカップリング剤15で処理した金属層5とを圧縮成形すると、金属層5と結合した第3のカップリング剤15の他端が、重合性化合物22が有する官能基の少なくとも一つと結合し、無機フィラーと金属層間に結合が形成される。このように、無機フィラー2の層と金属層5による積層体が形成される。
【0033】
他の態様として、
図4を用いて無機フィラーと金属層との結合について説明する。放熱部材用組成物は、少なくとも表面に官能基を有する熱伝導性の第3の無機フィラー3を含む。放熱部材用組成物と、第3のカップリング剤15で処理した金属層5とを圧縮成形すると、金属層5と結合した第3のカップリング剤15の他端が、第3の無機フィラー3が有する官能基と結合し、無機フィラーと金属層間に結合が形成される。このように、無機フィラー3の層と金属層5による積層体が形成される。
【0034】
図5を用いて、無機フィラー間の結合について説明する。放熱部材用組成物が、第1のカップリング剤11の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラー1と、第2のカップリング剤12の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラー2であって、第2のカップリング剤12の他端にさらに2官能以上の重合性化合物22が結合した、第2の無機フィラー2とを含む場合に、放熱部材用組成物を圧縮成形すると、第1のカップリング剤11の他端が、重合性化合物22が有する官能基の少なくとも一つと結合し、無機フィラー間に結合が形成される。
【0035】
以上のとおり、本発明の積層体は、放熱部材用組成物が含む無機フィラーのフィラー層とカップリング剤で処理した金属層との積層体である。
一の態様として、放熱部材用組成物は、第1のカップリング剤11の一端と結合した熱伝導性の第1の無機フィラー1を含むことができる。
または、放熱部材用組成物は、第2のカップリング剤12の一端と結合した熱伝導性の第2の無機フィラー2であって、第2のカップリング剤12の他端にさらに2官能以上の重合性化合物22が結合した、第2の無機フィラー2を含むことができる。
または、放熱部材用組成物は、粒子表面に官能基を有する熱伝導性の第3の無機フィラーを含むことができる。
または、放熱部材用組成物は、上記第1と第2の無機フィラーを含むことができる。
または、放熱部材用組成物は、上記第1と第3の無機フィラーを含むことができる。
または、放熱部材用組成物は、上記第2と第3の無機フィラーを含むことができる。
または、放熱部材用組成物は、上記第1、第2、第3の無機フィラーを含むことができる。
または、放熱部材用組成物は、上記第1、第2、第3の無機フィラーと形状や熱伝導率などの特性が異なる第4の無機フィラーをさらに含むことができる。
【0036】
例えば、本発明の積層体は、複数の第1のカップリング剤11が結合した第1の無機フィラー1と、複数の2官能以上の重合性化合物22と第2のカップリング剤12とが結合した第2の無機フィラー2とを含む放熱部材用組成物を、複数の第3のカップリング剤15が結合した金属層5上に塗布後圧縮成形することにより形成される。または、本発明の積層体は、第1のカップリング剤11が結合した第1の無機フィラー1を放熱部材用組成物中に含まず、2官能以上の重合性化合物22と第2のカップリング剤12とが複数結合した第2の無機フィラー2を含む放熱部材用組成物を、複数の第3のカップリング剤15が結合した金属層5上に塗布後圧縮成形してもよい。
【0037】
[放熱部材用組成物]
放熱部材用組成物は、上記第1の無機フィラー、第2の無機フィラー、第3の無機フィラーの少なくとも1つを含む。上記第1の無機フィラー、第2の無機フィラー、第3の無機フィラーのいずれかを含む放熱部材用組成物は、カップリング処理された金属層と結合を形成でき好ましい。
なお、放熱部材用組成物は、無機フィラー間の結合を形成可能な無機フィラーの組合せを含んでもよい。例えば、第1のカップリング剤が結合した第1の無機フィラーと、2官能以上の重合性化合物と第2のカップリング剤とが結合した第2の無機フィラーを含む場合に、放熱部材用組成物を硬化させると、無機フィラー同士をカップリング剤および重合性化合物を介して結合させることができる。
図1は無機フィラーとして窒化ホウ素を用いた場合の例である。窒化ホウ素(h-BN)をカップリング剤で処理すると、窒化ホウ素は粒子の平面に反応基が少ないため、側面の周囲に比較的多くのカップリング剤が結合する。カップリング剤で処理された窒化ホウ素は、重合性化合物との結合を形成できる。したがって、
図5に示すとおり、カップリング処理された窒化ホウ素1のカップリング剤11の他端と、カップリング処理されさらに重合性化合物で修飾された窒化ホウ素2の重合性化合物22の他端とを結合させることにより、窒化ホウ素同士を互いに結合させることができる。
このように、無機フィラー同士をカップリング剤および重合性化合物を介して結合させることにより、直接的にフォノンを伝播することができるので、硬化物は極めて高い熱伝導性を有し、無機成分の熱膨張率を直接反映させた有機無機複合材料の作製が可能になる。
【0038】
このような無機フィラー間の結合を実現することが本発明では重要であり、あらかじめカップリング剤12と重合性化合物22を有機合成技術を用いて結合させ、その後カップリング剤12を第2の無機フィラーに結合させてもよい。
【0039】
[2官能以上の重合性化合物]
第2のカップリング剤に結合させる2官能以上の重合性化合物としては、2官能以上の重合性液晶化合物(以下、単に「重合性液晶化合物」ということがある)を用いることが好ましい。
重合性液晶化合物としては、下記式(1-1)で表される液晶化合物が好ましく、液晶骨格と重合性基を有し、高い重合反応性、広い液晶相温度範囲、良好な混和性などを有する。この化合物(1-1)は他の液晶性の化合物や重合性の化合物などと混合するとき、均一になりやすい。
Ra-Z-(A-Z)m-Ra (1-1)
mは1~6の整数、好ましくは2~6の整数、さらに好ましくは2~4の整数である。
【0040】
上記化合物(1-1)の末端基Ra、環構造Aおよび結合基Zを適宜選択することによって、液晶相発現領域などの物性を任意に調整することができる。末端基Ra、環構造Aおよび結合基Zの種類が、化合物(1-1)の物性に与える効果、ならびに、これらの好ましい例を以下に説明する。
【0041】
・末端基R
a
末端基R
aは、それぞれ独立して、第1のカップリング剤と第2のカップリング剤の他端の官能基と結合可能な官能基であればよい。
例えば、下記式(2-1)~(2-2)で表される重合性基、シクロヘキセンオキシド、無水フタル酸、または無水コハク酸を挙げることができるが、これらに限られない。
【化1】
式(2-1)~(2-2)中、R
bが、水素、ハロゲン、-CF
3、または炭素数1~5のアルキルであり、qは0または1である。
【0042】
さらに、末端基Raとカップリング剤との結合を形成する官能基の組合せとしては、例えば、オキシラニルとアミノ、オキセタニルとアミノ、ビニル同士、メタクリロキシ同士、カルボキシまたはカルボン酸無水物残基とアミン、イミダゾールとオキシラニル、イミダゾールとオキセタニル等の組合せを挙げることができるが、これらに限られない。耐熱性の高い組合せがより好ましい。
【0043】
・環構造A
上記化合物(1-1)の環構造Aにおける少なくとも1つの環が1,4-フェニレンの場合、配向秩序パラメーター(orientationalorder parameter)および磁化異方性が大きい。また、少なくとも2つの環が1,4-フェニレンの場合、液晶相の温度範囲が広く、さらに透明点が高い。1,4-フェニレン環上の少なくとも1つの水素がシアノ、ハロゲン、-CF3または-OCF3に置換された場合、誘電率異方性が高い。また、少なくとも2つの環が1,4-シクロヘキシレンである場合、透明点が高く、かつ粘度が小さい。
【0044】
好ましいAとしては、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、2,2-ジフルオロ-1,4-シクロへキシレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,3,5-トリフルオロ-1,4-フェニレン、ピリジン-2,5-ジイル、3-フルオロピリジン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、ピリダジン-3,6-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイル、フルオレン-2,7-ジイル、9-メチルフルオレン-2,7-ジイル、9,9-ジメチルフルオレン-2,7-ジイル、9-エチルフルオレン-2,7-ジイル、9-フルオロフルオレン-2,7-ジイル、9,9-ジフルオロフルオレン-2,7-ジイルなどが挙げられる。
【0045】
1,4-シクロヘキシレンおよび1,3-ジオキサン-2,5-ジイルの立体配置は、シスよりもトランスが好ましい。2-フルオロ-1,4-フェニレンおよび3-フルオロ-1,4-フェニレンは構造的に同一であるので、後者は例示していない。この規則は、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンと3,6-ジフルオロ-1,4-フェニレンとの関係などにも適用される。
【0046】
さらに好ましいAとしては、1,4-シクロへキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレンなどである。特に好ましいAは、1,4-シクロへキシレンおよび1,4-フェニレンである。
【0047】
・結合基Z
上記化合物(1-1)の結合基Zが、単結合、-(CH2)2-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF=CF-または-(CH2)4-である場合、特に、単結合、-(CH2)2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-または-(CH2)4-である場合、粘度が小さくなる。また、結合基Zが、-CH=CH-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-または-CF=CF-である場合、液晶相の温度範囲が広い。また、結合基Zが、炭素数4~10程度のアルキルの場合、融点が低下する。
【0048】
好ましいZとしては、単結合、-(CH2)2-、-(CF2)2-、-COO-、-OCO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-(CH2)4-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-(CH2)2COO-、-OCO(CH2)2-、-CH=CH-COO-、-OCO-CH=CH-などが挙げられる。
【0049】
さらに好ましいZとしては、単結合、-(CH2)2-、-COO-、-OCO-、-CH2O-、-OCH2-、-CF2O-、-OCF2-、-CH=CH-、-C≡C-などが挙げられる。特に好ましいZとしては、単結合、-(CH2)2-、-COO-または-OCO-である。
【0050】
上記化合物(1-1)が多くの環を持つほどより高温で軟化しにくくなるので放熱材料として好ましいが、軟化温度が重合温度よりも高くなると成形が難しくなるので、目的にそって両者のバランスをとることが好ましい。なお、本明細書においては、基本的に6員環および6員環を含む縮合環等を環とみなし、例えば3員環や4員環、5員環単独のものは環とみなさない。また、ナフタレン環やフルオレン環などの縮合環は1つの環とみなす。
【0051】
上記化合物(1-1)は、光学活性であってもよいし、光学的に不活性でもよい。化合物(1-1)が光学活性である場合、該化合物(1-1)は不斉炭素を有する場合と軸不斉を有する場合がある。不斉炭素の立体配置はRでもSでもよい。不斉炭素はRaまたはAのいずれに位置していてもよく、不斉炭素を有すると、化合物(1-1)の相溶性がよい。化合物(1-1)が軸不斉を有する場合、ねじれ誘起力が大きい。また、施光性はいずれでも構わない。
以上のように、末端基Ra、環構造Aおよび結合基Zの種類、環の数を適宜選択することにより、目的の物性を有する化合物を得ることができる。
【0052】
・化合物(1-1)
化合物(1-1)は、下記式(1-a)または(1-b)のように表すこともできる。
P-Y-(A-Z)m-Ra (1-a)
P-Y-(A-Z)m-Y-P (1-b)
【0053】
上記式(1-a)および(1-b)中、A、Z、R
aは上記式(1-1)で定義したA、Z、R
aと同義であり、Pは下記式(2-1)~(2-2)で表される重合性基、シクロヘキセンオキシド、無水フタル酸、または無水コハク酸を示し、Yは単結合または炭素数1~20のアルキレン、好ましくは炭素数1~10のアルキレンを示し、該アルキレンにおいて、任意の-CH
2-は、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-または-CH=CH-で置き換えられてもよい。特に好ましいYとしては、炭素数1~10のアルキレンの片末端もしくは両末端の-CH
2-が-O-で置き換えられたアルキレンである。mは1~6の整数、好ましくは2~6の整数、さらに好ましくは2~4の整数である。
【化2】
式(2-1)~(2-2)中、R
bが、水素、ハロゲン、-CF
3、または炭素数1~5のアルキルであり、qは0または1である。
【0054】
好ましい化合物(1-1)の例としては、以下に示す化合物(a-1)~(a-10)、(b-1)~(b-16)、(c-1)~(c-16)、(d-1)~(d-15)、(e-1)~(e-15)、(f-1)~(f-14)、(g-1)~(g-20)が挙げられる。なお、式中の*は不斉炭素を示す。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
上記化学式(a-1)~(g-20)において、Ra、PおよびYは上記式(1-a)および(1-b)で定義したとおりである。
Z1は、それぞれ独立して単結合、-(CH2)2-、-(CF2)2-、-(CH2)4-、-CH2O-、-OCH2-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-(CH2)2COO-、-OCO(CH2)2-、-C≡C-、-C≡C-COO-、-OCO-C≡C-、-C≡C-CH=CH-、-CH=CH-C≡C-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-OCF2-または-CF2O-である。なお、複数のZ1は同一でも異なっていてもよい。
【0070】
Z2は、それぞれ独立して-(CH2)2-、-(CF2)2-、-(CH2)4-、-CH2O-、-OCH2-、-(CH2)3O-、-O(CH2)3-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CF=CF-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-(CH2)2COO-、-OCO(CH2)2-、-C≡C-、-C≡C-COO-、-OCO-C≡C-、-C≡C-CH=CH-、-CH=CH-C≡C-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-OCF2-または-CF2O-である。
【0071】
Z3は、それぞれ独立して単結合、炭素数1~10のアルキル、-(CH2)a-、-O(CH2)aO-、-CH2O-、-OCH2-、-O(CH2)3-、-(CH2)3O-、-COO-、-OCO-、-CH=CH-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-(CH2)2COO-、-OCO(CH2)2-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-OCF2-または-CF2O-であり、複数のZ3は同一でも異なっていてもよい。aは1~20の整数である。
【0072】
Xは、任意の水素がハロゲン、アルキル、フッ化アルキルで置き換えられてもよい1,4-フェニレンおよびフルオレン-2,7-ジイルの置換基であり、ハロゲン、アルキルまたはフッ化アルキルを示す。
【0073】
上記化合物(1-1)のより好ましい態様について説明する。より好ましい化合物(1-1)は、下記式(1-c)または(1-d)で表すことができる。
P
1-Y-(A-Z)
m-R
a (1-c)
P
1-Y-(A-Z)
m-Y-P
1 (1-d)
上記式中、A、Y、Z、R
aおよびmはすでに定義したとおりであり、P
1は下記式(2-1)~(2-2)で表される重合性基を示す。上記式(1-d)の場合、2つのP
1は同一の重合性基(2-1)~(2-2)を示し、2つのYは同一の基を示し、2つのYは対称となるように結合する。
【化17】
【0074】
上記化合物(1-1)のより好ましい具体例を以下に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
・化合物(1-1)の合成方法
上記化合物(1-1)は、有機合成化学における公知の手法を組合せることにより合成できる。出発物質に目的の末端基、環構造および結合基を導入する方法は、例えば、ホーベン-ワイル(Houben-Wyle,Methods of Organic Chemistry, Georg Thieme Verlag, Stuttgart)、オーガニック・シンセシーズ(OrganicSyntheses, John Wily & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(OrganicReactions, John Wily & Sons Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, PergamonPress)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載されている。また、特開2006-265527号公報を参照してもよい。
【0079】
重合性化合物が多環であると耐熱性が高くなり、直線性が高いと無機フィラー間の熱による伸びや揺らぎが少なく、さらに熱のフォノン伝導を効率よく伝えることができるため好ましい。多環で直線性が高いと結果として液晶性を発現することが多いので、液晶性であれば熱伝導がよくなるといえる。
しかし、2官能以上の重合性化合物は、上記式(1-1)で示す重合性液晶化合物以外に液晶性を示さない重合性化合物であってもよい。例えば、ポリエーテルのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビフェノールのジグリシジルエーテル、または式(1-1)の化合物の中でも直線性が足りず液晶性を発現しなかった化合物などが挙げられる。
上記重合性化合物は、有機合成化学における公知の手法を組合せることにより合成できる。
【0080】
本発明に用いる重合性化合物は、カップリング剤との結合を形成するため2官能以上の官能基を有することが好ましく、3官能以上、または4官能以上である場合を含む。さらに、重合性化合物の長辺の両端に官能基を有する化合物が直線的な結合を形成できるため好ましい。
なお、重合性化合物等による表面修飾は少なすぎるとフィラー間を結合する分子が少なすぎるため強度が低くなり、多すぎるとガラス転移温度が発現するなど樹脂の性質が強く出る。したがって、求められる特性によって、表面修飾量は適宜調整することが望ましい。
【0081】
[無機フィラー]
第1の無機フィラー、第2の無機フィラー、第3の無機フィラーとしては、それぞれ、窒化物、炭化物、炭素材料、金属酸化物、ケイ酸塩鉱物等を挙げることができる。第1の無機フィラー、第2の無機フィラー、第3の無機フィラーは、同一であってもよく異なったものでもよい。
具体的には、第1の無機フィラー、第2の無機フィラー、第3の無機フィラーには、高熱伝導性である無機フィラーとして、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化炭素ホウ素、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブを挙げることができる。または、アルミナ、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化鉄、フェライト、ムライト、コーディエライト、窒化珪素、および炭化珪素を挙げることができる。
第1、第2、第3の無機フィラーは混在させてもよい。
なお、第3の無機フィラーは、カップリング剤が有する有機官能基と結合可能な官能基を粒子表面に有するものが好ましい。
【0082】
無機フィラーは、好ましくは、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、黒鉛、炭素繊維、カーボンナノチューブである。特に六方晶系の窒化ホウ素(h-BN)や黒鉛が好ましい。窒化ホウ素、黒鉛は平面方向の熱伝導率が非常に高く、窒化ホウ素は誘電率も低く、絶縁性も高いため好ましい。例えば、板状結晶の窒化ホウ素を用いると、成型および硬化時に、原料のフローや圧力によって、板状構造が金型に沿って配向され易いため好ましい。
【0083】
重合性化合物の構造はこれら無機フィラーの間を効率よく直接結合できる形状及び長さを持っていることが望ましい。無機フィラーの種類、形状、大きさ、添加量などは、目的に応じて適宜選択できる。放熱部材用組成物の硬化物が絶縁性を必要とする場合、所望の絶縁性が保たれれば導電性を有する無機フィラーであっても構わない。無機フィラーの形状としては、板状、球状、無定形、繊維状、棒状、筒状などが挙げられる。
【0084】
無機フィラーの平均粒径は、0.1~600μmであることが好ましい。より好ましくは、1~200μmである。0.1μm以上であると熱伝導率がよく、200μm以下であると充填率を上げることができる。
なお、本明細書において平均粒径とは、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定に基づく。すなわち、フランホーファー回折理論およびミーの散乱理論による解析を利用して、湿式法により、粉体をある粒子径から2つに分けたとき、大きい側と小さい側が等量(体積基準)となる径をメジアン径とした。
無機フィラーとカップリング剤および重合性化合物の割合は、使用する無機フィラーと結合させるカップリング剤の量に依存する。第1、第2の無機フィラーとして用いられる化合物(例えば窒化ホウ素)は、反応基にできるだけ多くのカップリング剤を結合させ、その反応基の数と同数か少し多い有機化合物を結合させることが好ましい。無機フィラーへのカップリング剤の反応量は、主に無機フィラーの大きさや使用するカップリング剤の反応性により変化する。例えば、無機フィラーが大きくなるほど、無機フィラーの側面の面積比が減少するので修飾量は少ない。できるだけ多くのカップリング剤を反応させたいが、粒子を小さくすると生成物の熱伝導率が低くなるので、バランスを取ることが好ましい。
【0085】
放熱部材用組成物は、さらに、熱伝導率が高い、第1、第2、第3の無機フィラーと金属結合を形成する、または、第1、第2、第3の無機フィラーよりもサイズが小さい等の第4の無機フィラーを含んでもよい。第1の無機フィラーと第2の無機フィラーが異なる熱膨張率を持つ場合、それらを複合化させると、複合化した放熱部材用組成物の熱膨張率は、各々のフィラーのみで複合化した場合の中間的な値になる。しかし、そのままではフィラーの隙間が多い場合は、熱伝導率が高くならないばかりか、隙間への水分の侵入により電気絶縁性が低下する。そこで、熱伝導率が高く、第1、第2の無機フィラーに比べ粒子径の小さな第4のフィラーを加えることにより、第1、第2の無機フィラーの隙間を埋め、材料の安定性を高くする。さらに、第1、第2の無機フィラーのみを使用した場合に比べ、熱伝導率がより高い第4の無機フィラーを加えることにより、積層体の熱伝導率を高くすることが可能になる。第4の無機フィラーに使用する無機フィラーに制約はないが、高絶縁性が必要な場合には窒化ホウ素や窒化アルミニウム、炭化珪素素、窒化珪素素、高絶縁性が必要でない場合はダイヤモンド、カーボンナノチューブ、グラフェン、金属粉などの熱伝導率が高い物であることが望ましい。
【0086】
第4の無機フィラーとしては、アルミナ、シリカ、窒化ホウ素、炭化ホウ素、炭化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、黒鉛、グラフェン、珪素、ベリリア、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化珪素、酸化銅、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化錫、酸化ホルミニウム、酸化ビスマス、酸化コバルト、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、金、銀、銅、白金、鉄、錫、鉛、ニッケル、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、モリブデン、ステンレスなどの無機充填材および金属充填材を挙げることができる。
【0087】
[カップリング剤]
第1、第2のカップリング剤、および金属層を修飾する第3のカップリング剤は、カップリング剤同士が結合可能な官能基を持つ、2官能以上の重合性化合物が有する官能基と結合可能な官能基を持つ、または、第3の無機フィラーが有する官能基と結合可能な官能基を持つものがこのましい。相手側の官能基がオキシラニルや酸無水物残基等である場合は、それらの官能基と反応することが好ましいので、アミン系反応基を末端にもつものが好ましい。例えば、JNC(株)製では、サイラエース(登録商標)S310、S320、S330、S360、信越化学工業(株)製では、KBM-903、KBE-903などが挙げられる。相手側の末端がアミンであった場合には、オキシラニル等を末端に持つカップリング剤が好ましい。例えば、JNC(株)製では、サイラエース(登録商標)S510、S530などが挙げられる。
カップリング剤と相手側との結合を形成する官能基の組合せとしては、例えば、オキシラニルとアミノ、ビニル同士、メタクリロキシ同士、カルボキシまたはカルボン酸無水物残基とアミン、イミダゾールとオキシラニル等の組合せを挙げることができるが、これらに限られない。カップリング剤と相手側との結合が形成可能な官能基の組合せであればよい。耐熱性の高い組合せがより好ましい。
なお、第1のカップリング剤、第2のカップリング剤、第3のカップリング剤は、同一のものでもよく異なるものでもよい。
【0088】
[その他の構成要素]
放熱部材用組成物は、さらに第1の無機フィラーおよび第2の無機フィラーに結合していない、すなわち結合に寄与していない有機化合物(例えば重合性化合物または高分子化合物)を含んでいてもよく、重合開始剤や溶媒等を含んでいてもよい。
放熱部材用組成物の硬化物において、熱伝導率を向上させるためにフィラーの粒径を大きくするにつれて、それにあいまって空隙率が高くなる場合には、その空隙を結合していない化合物で満たすことができ、熱伝導率や水蒸気遮断性能などを向上させることができる。
【0089】
[結合していない重合性化合物]
放熱部材用組成物は、無機フィラーに結合していない重合性化合物(この場合、必ずしも2官能以上でなくてもよい)を構成要素としてもよい。このような重合性化合物としては、無機フィラーの熱硬化を妨げず、加熱により蒸発やブリードアウトがない化合物が好ましい。この重合性化合物は、液晶性を有しない化合物と液晶性を有する化合物とに分類される。液晶性を有しない重合性化合物としては、ビニル誘導体、スチレン誘導体、(メタ)アクリル酸誘導体、ソルビン酸誘導体、フマル酸誘導体、イタコン酸誘導体、などが挙げられる。含有量は、まず結合していない重合性化合物を含まない、放熱部材用組成物を作製し、その空隙率を測定して、その空隙を埋められる量の重合性化合物を添加することが望ましい。
【0090】
[結合していない高分子化合物]
放熱部材用組成物は、無機フィラーに結合していない高分子化合物を構成要素としてもよい。このような高分子化合物としては、膜形成性および機械的強度を低下させない化合物が好ましい。この高分子化合物は、無機フィラー、カップリング剤、および重合性化合物と反応しない高分子化合物であればよく、例えば、重合性化合物がオキシラニルでシランカップリング剤がアミノを持つ場合は、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニル系樹脂、シリコーン樹脂、ワックスなどが挙げられる。含有量は、まず結合していない高分子化合物を含まない放熱部材用組成物を作製し、その空隙率を測定して、その空隙を埋められる量の高分子化合物を添加することが望ましい。
【0091】
[非重合性の液晶性化合物]
放熱部材用組成物は、重合性基を有しない液晶性化合物を構成要素としてもよい。このような非重合性の液晶性化合物の例は、液晶性化合物のデータベースであるリクリスト(LiqCryst, LCIPublisher GmbH, Hamburg, Germany)などに記載されている。非重合性の液晶性化合物を含有する該組成物を重合させることによって、例えば、化合物(1-1)の重合体と液晶性化合物との複合材(composite materials)を得ることができる。このような複合材では、高分子分散型液晶のような高分子網目中に非重合性の液晶性化合物が存在している。よって、使用する温度領域で流動性が無いような特性を持つ液晶性化合物が望ましい。無機フィラーを硬化させた後で、等方相を示す温度領域でその空隙に注入するような手法で複合化させてもよく、無機フィラーに予め空隙を埋めるように計算した分量の液晶性化合物を混合しておき、無機フィラー同士を重合させてもよい。
【0092】
[重合開始剤]
放熱部材用組成物は重合開始剤を構成要素としてもよい。重合開始剤は、該組成物の構成要素および重合方法に応じて、例えば光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤などを用いればよい。特に無機フィラーが紫外線を吸収してしまうので、熱ラジカル重合開始剤が好ましい。
熱ラジカル重合用の好ましい開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジ-t-ブチルパーオキシド(DTBPO)、t-ブチルパーオキシジイソブチレート、過酸化ラウロイル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル(MAIB)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル(ACN)などが挙げられる。
【0093】
[溶媒]
放熱部材用組成物は溶媒を含有してもよい。重合させる必要がある構成要素を該組成物中に含む場合、重合は溶媒中で行っても、無溶媒で行ってもよい。溶媒を含有する該組成物を基板上に、例えばスピンコート法などにより塗布した後、溶媒を除去してから光重合させてもよい。または、光硬化後適当な温度に加温して熱硬化により後処理を行ってもよい。
好ましい溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、テトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、N-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、PGMEAなどが挙げられる。上記溶媒は1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
なお、重合時の溶媒の使用割合を限定することにはあまり意味がなく、重合効率、溶媒コスト、エネルギーコストなどを考慮して、個々のケースごとに決定すればよい。
【0094】
[その他]
放熱部材用組成物には、取扱いを容易にするために、安定剤を添加してもよい。前記安定剤としては、本発明の効果を損なわない限り特に制限されず、酸化防止剤、硬化剤、銅害防止剤、金属不活性化剤、粘着性付与剤、老化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、耐候剤などが挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、4-エトキシフェノールおよび3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)が挙げられる。
例えば、接着層を形成する樹脂が金属との接触により劣化する場合には、特開平5-48265号公報に挙げられるような銅害防止剤または金属不活性化剤の添加が好ましい。
前記銅害防止剤(商品名)としては、(株)ADEKA製、Mark ZS-27、Mark CDA-16;三光化学工業(株)製、SANKO-EPOCLEAN;BASF社製、Irganox MD1024;などが好ましい。
前記銅害防止剤の添加量は、接着層の金属と接触する部分の樹脂の劣化を防止できるなどの点から、接着層に含まれる樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは0.1~3重量部である。
さらに、放熱部材用組成物の粘度や色を調整するために添加剤(酸化物等)を添加してもよい。例えば、白色にするための酸化チタン、黒色にするためのカーボンブラック、粘度を調整するためのシリカの微粉末を挙げることができる。また、機械的強度をさらに増すために添加剤を添加してもよい。例えば、ガラスファイバー、カーボンファイバー、カーボンナノチューブなどの無機繊維やクロス、または高分子添加剤として、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミドなどの繊維または長分子を挙げることができる。
【0095】
[金属層]
金属層は、
図2~4に示すとおり、第1の無機フィラー、第2の無機フィラー、第3の無機フィラーとカップリング剤等を介して結合を形成し、積層体を構成する。
金属層には、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金、または合金等を挙げることができる。なお、無機フィラーと金属層との結合は、金属層の最表面に位置する金属と無機フィラーの間に形成される。よって、メッキ等の薄膜を有する材料では、メッキ材料と無機フィラーの間に、カップリング剤や重合性化合物を介した結合が形成される。このように、金属層は、メッキ材料となり得る金属であってもよい。
金属層の厚みに特に制限はなく、用途に応じた厚みを用いることができる。より厚いものは、放熱性に優れるため好ましい。
【0096】
金属層は、放熱部材用組成物を塗布でき、放熱部材用組成物が含む無機フィラーで形成された層と積層体を形成可能な形状であればよく、例えば、板状、棒状等を挙げることができる。
金属層は、放熱材料としてだけでなく、金属電極として用いることもできる。よって、金属層は、一枚の金属電極であってもよく、一枚の金属電極が複数に分割された状態の金属電極であってもよい。すなわち、金属層は、複数の金属電極から構成された層であってもよい。このように、本願の積層体は、熱伝導性、放熱性、絶縁性を有する電子基板(プリント基板)として用いることもできる。
【0097】
[製造方法]
以下、放熱部材用組成物を製造する方法、および該組成物と金属層から積層体を製造する方法を、第1の無機フィラーおよび第2の無機フィラーを含む放熱部材用組成物を例に具体的に説明する。
(1)カップリング処理を施す
第1の無機フィラーにカップリング処理を施し、カップリング剤の一端と第1の無機フィラーを結合させる。カップリング処理は、公知の方法を用いることができる。
一例として、まず無機フィラーとカップリング剤を溶媒に加える。スターラー等を用いて撹拌したのち、乾燥する。溶媒乾燥後に、真空乾燥機等を用いて、真空条件下で加熱処理をする。この無機フィラーに溶媒を加えて、超音波処理により粉砕する。遠心分離機を用いてこの溶液を分離精製する。上澄みを捨てたのち、溶媒を加えて同様の操作を数回行う。オーブンを用いて精製後のカップリング処理を施した無機フィラーを乾燥させる。
(2)重合性化合物で修飾する
第2の無機フィラーにカップリング処理を施し(またはカップリング処理を施した上記第1の無機フィラーを第2の無機フィラーとして用いてもよい)、カップリング剤の他端にさらに2官能以上の重合性化合物を結合させる。
一例として、カップリング処理された無機フィラーと2官能以上の重合性化合物を、メノウ乳鉢等を用いて混合したのち、2本ロール等を用いて混練する。その後、超音波処理および遠心分離によって分離精製する。
(3)混合する
第1の無機フィラーと第2の無機フィラーを、例えば無機フィラーのみの重量が1:1になるように量り取り、メノウ乳鉢等で混合する。その後2本ロール等を用いて混合し、放熱部材用組成物を得る。
第1の無機フィラーと第2の無機フィラーの混合割合は、第1の無機フィラーと第2の無機フィラー間の結合を形成する結合基がそれぞれアミン:エポキシの場合、無機フィラーのみの重量は例えば、重量比で1:0.1~1:30であることが好ましく、より好ましくは1:3~1:20である。更に好ましくは、1:4~1:10である。混合割合は、第1の無機フィラーと第2の無機フィラー間の結合を形成する末端の結合基の数により決定し、例えば1級アミンであれば2個のオキシラニルと反応できるため、オキシラニル側に比べて少量でよく、オキシラニル側は開環してしまっている可能性もありエポキシ当量から計算される量を多めに使用することが好ましい。
なお、第1の無機フィラーと第2の無機フィラーを混合せず、第2の無機フィラーのみを含む放熱部材用組成物としてもよい。
(4)積層体を製造する
一例として、放熱部材用組成物を用いて、金属層との積層体を製造する方法を説明する。第3のカップリング剤と純水の混合物を金属層上に塗り、加熱して金属層表面を第3のカップリング剤で修飾する。
第3のカップリング剤が結合した金属層のカップリング剤側に放熱部材用組成物を配置(例えば塗布)し、圧縮成形機を用いて、加熱板中にはさみ圧縮成形により放熱部材用組成物を配向・硬化成形する。さらに、オーブン等を用いて後硬化を行い、積層体を得る。このように、無機フィラー層の形成と、無機フィラー層と金属層の接合を1回の加熱圧着で行うことができる。
【0098】
圧縮成形時の温度は、室温~350℃、好ましくは室温~250℃、より好ましくは50℃~200℃の範囲であり、時間は、5秒~10時間、好ましくは1分~5時間、より好ましくは5分~1時間の範囲である。硬化後は、応力ひずみなど抑制するために徐冷することが好ましい。また、再加熱処理を行い、ひずみなどを緩和させてもよい。このように、無機フィラー層の形成と、無機フィラー層と金属層の接合を、比較的低い温度の加熱圧着で行うことができる。
無機フィラー層の膜厚は、垂直方向の熱伝導率を良くするためには、薄いほうが好ましい。好ましくは、30μm~2000μm、より好ましくは、30μm~1000μmである。さらに好ましくは、30μm~から500μmである。無機フィラー層および金属層の膜厚は、用途に応じて適宜変更すればよい。
【0099】
以上、本発明の第1の実施の形態に係る積層体は、放熱部材用組成物を硬化させた硬化物と金属層を有する積層体である。放熱部材用組成物の硬化物は、高熱伝導性を有するとともに、使用する有機材料と無機材料の種類、配合比率、硬化条件等により、熱膨張率が負から正の値をとり、化学的安定性、硬度および機械的強度などに優れている。なお、前記機械的強度とは、ヤング率、引っ張り強度、引き裂き強度、曲げ強度、曲げ弾性率、衝撃強度などである。
本発明の積層体は、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などに有用である。さらに、熱伝導性、放熱性、絶縁性を有する電子基板(プリント基板)として用いることもできる。
【0100】
さらに、本発明の積層体は、無機フィラーで形成された層の熱膨張率が、含有する無機材料と有機材料の種類、配合比率、硬化条件等により異なる。すなわち、無機フィラーの組成比が異なる層は異なる熱膨張率を有する。よって、本発明の積層体は、各層が有する熱膨張率が連続的となるように積層してもよく、不連続となるように積層してもよい。例えば
図6に示すように、各層の熱膨張率が正(31)負(32)正負正負・・・となるように厚み方向に積層した積層体30aを形成してもよい。さらに、積層体30aを矢印の方向でカットし、各層を厚み方向ではなく水平方向に積層した積層体30bを形成してもよい。正と負の熱膨張率を有する層同士を隣接させると、正と負を打ち消しあうように熱膨張率を制御することができる。
【0101】
[電子機器]
本発明の第2の実施の形態に係る電子機器は、上記第1の実施の形態に係る積層体と、発熱部を有する電子デバイスとを備える。積層体は、前記発熱部に接触するように電子デバイスに配置される。積層体の態様は、放熱電子基板、放熱板、放熱シート、放熱フィルム、放熱接着材、放熱成形品などのいずれであってもよい。
例えば、電子デバイスとして、半導体素子を挙げることができる。本願の積層体は、高熱伝導性に加えて、高耐熱性、高絶縁性を有する。そのため、半導体素子の中でも高電力のため、より効率的な放熱機構を必要とするシリコン、炭化ケイ素、窒化ガリウム、酸化ガリウム、ダイヤモンドなどのパワー半導体に特に有効である。これらのパワー半導体を備えた電子機器には、大電力インバータの主変換素子、無停電電源装置、交流電動機の可変電圧可変周波数制御装置、鉄道車両の制御装置、ハイブリッドカー、エレクトリックカーなどの電動輸送機器、IH調理器などを挙げることができる。
【実施例】
【0102】
以下に、本発明を実施例を用いて詳細に説明する。しかし本発明は、以下の実施例に記載された内容に限定されるものではない。
【0103】
本発明の実施例に用いた成分材料は次のとおりである。
<無機フィラー>
・窒化ホウ素:h-BN粒子、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製、(商品名)PolarTherm PTX-25
<シランカップリング剤>
・3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製、(商品名)KBM-903
【化21】
・N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、JNC(株)製、(商品名)S320
【化22】
・3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、JNC(株)製、(商品名)S510
【化23】
・2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、JNC(株)製、(商品名)S530
【化24】
<重合性化合物>
・重合性オキシラニル化合物、JNC(株)製、下記式(1-11)
【化25】
・重合性オキシラニル化合物、三菱化学(株)製、(商品名)jER807
<アミン系硬化剤>
・4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルメタン、和光純薬工業(株)製
<金属箔>
・銅箔、古河電気工業(株)製、(商品名)FS-WS
・アルミ箔、(株)UACJ製箔製、型番1N30-O
・ニッケル箔、(株)ニラコ製、純度99+%
【0104】
<実施例1>
・フィラーA作製工程
窒化ホウ素粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(合)製PolarTherm PTX-25)10gと、シランカップリング剤(JNC(株)製S320)1gをトルエン100mLに加え、スターラーを用いて500rpmで1時間攪拌し、得られた混合物を40℃で4時間乾燥した。さらに、溶媒乾燥後に120℃に設定した真空乾燥機を用いて、真空条件下で5時間加熱処理をした。得られた粒子をフィラーAとする。フィラーAは、無機フィラーをシランカップリング剤で修飾した状態の粒子である。
【0105】
・フィラーB作製工程
フィラーA粒子2gと、JNC(株)製化合物(1-11)を3.2g測り取り、これらを2本ロール((株)井元製作所製IMC-AE00型)を用いて120℃で10分間混合した。この重量比はフィラーA粒子が有するアミノ基が十分に反応するオキシラニル環の個数並びに2本ロール上で双方が十分に練り合わせられる量である。得られた混合物をテトラヒドロフラン45mLに加え、十分攪拌した後、遠心分離機(日立工機(株)製高速冷却遠心機CR22N形、4,000回転×10分×25℃)で不溶分を沈降させ、デカンテーションで未反応のオキシラニル化合物が溶解した分を含む溶液を取り除いた。続いて、アセトン45mLを加え、前述と同様の操作を行った。さらに、テトラヒドロフラン、アセトンの順に同様の操作を繰り返した。不溶分を乾燥して得られた粒子をフィラーBとする。フィラーBは、無機フィラーをシランカップリング剤と重合性オキシラニル化合物で修飾した状態の粒子である。
【0106】
・金属無機材料積層体作製工程
アミノ系シランカップリング剤(信越化学工業(株)製KBM-903)と純水を99:1(重量比)で混合して、この混合物を銅箔(古河電気工業(株)製FS-WS、厚さ18μm)の上にハケで塗ったのち、銅箔を150℃のホットプレートで60分加熱した。
フィラーA0.14gとフィラーB0.56gを測り取り、混合した。その後、ステンレス製板の上にシランカップリング剤処理面が上になるように(フィラーと接するように)銅箔をおき、その上に混合したフィラーをいれて、ステンレスで挟み、150℃に設定した圧縮成形機((株)井元製作所製IMC-19EC)を用いて30MPaまで加圧し、15分間加熱状態を続けることで、配向処理と前硬化を行った。すなわちステンレス板の間を混合物が広がる際に、BN粒子は板状粒子であるため、粒子とステンレス板が平行になるように配向する。また、積層体の厚みが約500μmになるように、混合物の量を調整した。
【0107】
<評価>
以下のとおり、密着性を確認した。
・ステンレス板からの取り外し
上記金属無機材料積層体をステンレス板から取り外す際に、銅箔とフィラーが剥がれないかを確認した。
銅箔がフィラーから完全に剥がれたものは×、一部剥がれたものは△、全く剥がれなかったものは◎として、△と◎は、さらに、オーブンを用いて、150℃で12時間の後硬化を行い、金属無機材料積層体を作成した。
・日栄化工(株)製のアクリル粘着剤付きのPETフィルムNeoFix10、NeoFix30、NeoFix50、NeoFix100(それぞれ、ステンレス板に対しての粘着性が、5.0N/20mm、13.4N/20mm、16.0N/20mm、27.9N/20mm)を金属無機材料積層体の銅箔の上に手で十分に密着させ、室温で20分放置した。その後、手で、PETフィルムを剥がし、金属無機材料積層体から金属片が剥がれたかどうかで密着性を評価した。銅箔と無機材料が完全に剥がれたものを×、一部剥がれたものを△、全く剥がれなかったものを◎とした。
【0108】
<実施例2>
シランカップリング剤KBM-903の代わりにアミノ系シランカップリング剤(JNC(株)製S320)を使用した。これ以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
<実施例3>
シランカップリング剤KBM-903の代わりにオキシラニル系シランカップリング剤(JNC(株)製S510)を使用した。これ以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
<実施例4>
シランカップリング剤KBM-903の代わりにオキシラニル系シランカップリング剤(JNC(株)製S530)を使用した。これ以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
<実施例5>
銅箔の代わりに、アルミ箔((株)UACJ製箔製アルミ箔、厚さ20μm)を使用した。これ以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
<実施例6>
銅箔の代わりに、アルミ箔((株)UACJ製箔製アルミ箔、厚さ20μm)を使用した。これ以外は実施例2と同様に作製、評価を行った。
<実施例7>
銅箔の代わりに、アルミ箔((株)UACJ製箔製アルミ箔、厚さ20μm)を使用した。これ以外は実施例3と同様に作製、評価を行った。
<実施例8>
銅箔の代わりに、アルミ箔((株)UACJ製箔製アルミ箔、厚さ20μm)を使用した。これ以外は実施例4と同様に作製、評価を行った。
<実施例9>
銅箔の代わりに、ニッケル箔((株)ニラコ製ニッケル箔、厚さ50μm)を使用した。これ以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
<実施例10>
銅箔の代わりに、ニッケル箔((株)ニラコ製ニッケル箔、厚さ50μm)を使用した。これ以外は実施例2と同様に作製、評価を行った。
<実施例11>
銅箔の代わりに、ニッケル箔((株)ニラコ製ニッケル箔、厚さ50μm)を使用した。これ以外は実施例3と同様に作製、評価を行った。
<実施例12>
銅箔の代わりに、ニッケル箔((株)ニラコ製ニッケル箔、厚さ50μm)を使用した。これ以外は実施例4と同様に作製、評価を行った。
【0109】
<比較例1>
銅箔の表面にシランカップリング剤を使用せず、無処理の銅箔とフィラーを挟んで加圧、加熱をした。これ以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
<比較例2>
シランカップリング剤KBM-903の代わりに、重合性オキシラニル化合物:jER807(三菱化学(株)製)とアミン系硬化剤(DDM):4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルメタン(和光純薬工業(株)製)を0.7g:0.2gの比率でフッ素樹脂製ヘラで5分間混合した後、銅箔の表面にハケで塗った。これ以外は実施例1と同様に作製、評価を行った。
<比較例3>
銅箔の代わりにアルミ箔を用いた。これ以外は比較例1と同様に作製、評価を行った。
<比較例4>
銅箔の代わりにアルミ箔を用いた。これ以外は比較例2と同様に作製、評価を行った。
<比較例5>
銅箔の代わりにニッケル箔を用いた。これ以外は比較例1と同様に作製、評価を行った。
<比較例6>
銅箔の代わりにニッケル箔を用いた。これ以外は比較例2と同様に作製、評価を行った。
【0110】
【0111】
上記表1のとおり、銅箔、アルミ箔、ニッケル箔の表面にシランカップリング剤処理をしたものが、密着性が高かった。特にアミノ基を持つシランカップリング剤を用いたときの密着性が良かった。次いで、オキシラニル系シランカップリング剤を用いたときの密着性が良かった。
これに比べて重合性オキシラニル化合物:jER807(三菱化学(株)製)とアミン系硬化剤(DDM):4,4’-ジアミノ-1,2-ジフェニルメタン(和光純薬工業(株)製)の混合物を塗布したものは、オキシラニル系かつアミン系の混合接着剤であるが、密着性は5.0N/20mmに及ばず、シランカップリング剤処理の方が密着性に優れていた。
【0112】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願および特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込む、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ程度で、参照してここに組み込む。
【0113】
本発明の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞および同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数および複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」および「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「~を含むが限定しない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例または例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である、請求項に記載されていない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0114】
本明細書中では、本発明を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本発明の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読んだ上で、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを予期しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本発明が実施されることを予定している。従って本発明は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の変更および均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本発明に包含される。
【符号の説明】
【0115】
1 第1の無機フィラー
2 第2の無機フィラー
3 第3の無機フィラー
5 金属層
11 第1のカップリング剤
12 第2のカップリング剤
15 第3のカップリング剤
22 重合性化合物
30a 積層体
30b 積層体
31 熱膨張率が正の無機フィラーで形成された層
32 熱膨張率が負の無機フィラーで形成された層