(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】化合物、液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/54 20060101AFI20220511BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20220511BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20220511BHJP
C09K 19/14 20060101ALI20220511BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20220511BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20220511BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20220511BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20220511BHJP
C07D 249/20 20060101ALI20220511BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20220511BHJP
G02F 1/1337 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
C09K19/54 C
C09K19/30
C09K19/12
C09K19/14
C09K19/20
C09K19/34
C09K19/32
C09K19/54 Z
C09K19/38
C07D249/20 502
G02F1/13 500
G02F1/1337 520
(21)【出願番号】P 2019546550
(86)(22)【出願日】2018-08-03
(86)【国際出願番号】 JP2018029164
(87)【国際公開番号】W WO2019069549
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2017193047
(32)【優先日】2017-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 大輔
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 将之
(72)【発明者】
【氏名】奥村 一雄
(72)【発明者】
【氏名】澤田 道子
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-315819(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107142116(CN,A)
【文献】特表2004-520284(JP,A)
【文献】特開昭56-168651(JP,A)
【文献】国際公開第2017/075581(WO,A1)
【文献】特開2006-206819(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038552(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/034867(WO,A1)
【文献】REGISTRY[STN online],2017年05月19日,RN:2096454-57-6
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/54
C09K 19/30
C09K 19/12
C09K 19/14
C09K 19/20
C09K 19/34
C09K 19/32
C09K 19/38
C07D 249/20
G02F 1/13
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一添加物として式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、ネマチック相を有する液晶組成物。
式(1)において、R
1は、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、
または炭素数2から12のアルケニルオキシ
であり;R
2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよ
く;環Aは1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;aは、1または2であり;bは、0、1、2、3、または4であ
る。
【請求項2】
式(1)で表される化合物において、R
2がメチル、t-ブチル、t-ペンチル、
またはt-オクチル
であり、bが1、2、3、または4である、請求項1に記載の液晶組成物。
【請求項3】
第一添加物として式(1-1)から式(1-4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1または2に記載の液晶組成物。
式(1-1)から式(1-4)において、R
2はメチル、t-ブチル、t-ペンチル、
またはt-オクチル
である。
【請求項4】
第一添加物の割合が0.005質量%から2質量%の範囲である、請求項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項5】
第一成分として式(2)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(2)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z
1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり;cは、1、2、または3である。
【請求項6】
第一成分として式(2-1)から式(2-13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(2-1)から式(2-13)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項7】
第一成分の割合が10質量%から85質量%の範囲である、請求項5または6に記載の液晶組成物。
【請求項8】
第二成分として式(3)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3)において、R
5は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Dは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり;Z
2は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X
1およびX
2は独立して、水素またはフッ素であり;Y
1は、フッ素、塩素、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルオキシであり;dは、1、2、3、または4である。
【請求項9】
第二成分として式(3-1)から式(3-35)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3-1)から式(3-35)において、R
5は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
【請求項10】
第二成分の割合が10質量%から85質量%の範囲である、請求項8または9に記載の液晶組成物。
【請求項11】
第三成分として式(4)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(4)において、R
6およびR
7は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシであり;環Eおよび環Gは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり;環Fは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、または7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルであり;Z
3およびZ
4は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり;eは、1、2、または3であり、fは、0または1であり;eとfとの和は3以下である。
【請求項12】
第三成分として式(4-1)から式(4-27)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(4-1)から式(4-27)において、R
6およびR
7は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
【請求項13】
第三成分の割合が5質量%から80質量%の範囲である、請求項11または12に記載の液晶組成物。
【請求項14】
第二添加物として式(5)で表される重合性化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(5)において、環Iおよび環Kは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、テトラヒドロピラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、ピリミジン-2-イル、またはピリジン-2-イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;環Jは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;Z
5およびZ
6は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-、-C(CH
3)=CH-、-CH=C(CH
3)-、または-C(CH
3)=C(CH
3)-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;P
1、P
2、およびP
3は独立して、重合性基であり;Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合、または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;gは、0、1、または2であり;h、i、およびjは独立して、0、1、2、3、または4であり;そしてh、i、およびjの和は、1以上である。
【請求項15】
式(5)において、P
1、P
2、およびP
3が独立して式(P-1)から式(P-5)で表される重合性基の群から選択された基である請求項14に記載の液晶組成物。
式(P-1)から式(P-5)において、M
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。
【請求項16】
第二添加物として式(5-1)から式(5-29)で表される重合性化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項1から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(5-1)から式(5-29)において、P
4、P
5、およびP
6は独立して、式(P-1)から式(P-3)で表される重合性基の群から選択された基であり、M
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【請求項17】
第二添加物の割合が0.03質量%から10質量%の範囲である、請求項14から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【請求項19】
液晶表示素子の動作モードが、TNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、VAモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、請求項18に記載の液晶表示素子。
【請求項20】
請求項14から17のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有し、この液晶組成物中の重合性化合物が重合している、高分子支持配向型の液晶表示素子。
【請求項21】
請求項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物の、液晶表示素子における使用。
【請求項22】
請求項14から17のいずれか1項に記載の液晶組成物の、高分子支持配向型の液晶表示素子における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶組成物、この組成物を含有する液晶表示素子などに関する。誘電率異方性が正または負の液晶組成物、およびこの組成物を含有し、TN、OCB、IPS、VA、FFS、FPAなどのモードを有するAM(active matrix)素子に関する。高分子支持配向型の液晶表示素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子において、液晶分子の動作モードに基づいた分類は、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(fringe field switching)、FPA(field-induced photo-reactive alignment)などのモードである。素子の駆動方式に基づいた分類は、PM(passive matrix)とAM(active matrix)である。PMは、スタティック(static)、マルチプレックス(multiplex)などに分類され、AMは、TFT(thin film transistor)、MIM(metal insulator metal)などに分類される。TFTの分類は非晶質シリコン(amorphous silicon)および多結晶シリコン(polycrystal silicon)である。後者は製造工程によって高温型と低温型とに分類される。光源に基づいた分類は、自然光を利用する反射型、バックライトを利用する透過型、そして自然光とバックライトの両方を利用する半透過型である。
【0003】
液晶表示素子はネマチック相を有する液晶組成物を含有する。この組成物は適切な特性を有する。この組成物の特性を向上させることによって、良好な特性を有するAM素子を得ることができる。これらの特性における関連を下記の表1にまとめる。組成物の特性を市販されているAM素子に基づいてさらに説明する。ネマチック相の温度範囲は、素子の使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約70℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約-10℃以下である。組成物の粘度は素子の応答時間に関連する。素子で動画を表示するためには短い応答時間が好ましい。1ミリ秒でもより短い応答時間が望ましい。したがって、組成物における小さな粘度が好ましい。低い温度における小さな粘度はさらに好ましい。
【0004】
【0005】
組成物の光学異方性は、素子のコントラスト比に関連する。素子のモードに応じて、大きな光学異方性または小さな光学異方性、すなわち適切な光学異方性が必要である。組成物の光学異方性(Δn)と素子のセルギャップ(d)との積(Δn×d)は、コントラスト比を最大にするように設計される。適切な積の値は動作モードの種類に依存する。TNのようなモードの素子では、適切な値は約0.45μmである。この場合、小さなセルギャップの素子には大きな光学異方性を有する組成物が好ましい。組成物における大きな誘電率異方性は素子における低いしきい値電圧、小さな消費電力と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、大きな誘電率異方性が好ましい。特にFFSモードにおいては、斜め電界により、一部の液晶分子の配列がパネル基板に対して並行にならないため、これらの液晶分子のチルトアップを抑えるために液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)が大きい方が好ましい。液晶分子のチルトアップを抑えることにより、FFSモードを有する素子の透過率を上げることができるので、大きなコントラスト比に寄与する。組成物における大きな比抵抗は、素子における大きな電圧保持率と大きなコントラスト比に寄与する。したがって、初期段階において室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。長時間使用したあと、室温だけでなくネマチック相の上限温度に近い温度でも大きな比抵抗を有する組成物が好ましい。紫外線および熱に対する組成物の安定性は、液晶表示素子の寿命に関連する。これらの安定性が高いとき、この素子の寿命は長い。このような特性は、液晶モニター、液晶テレビなどに用いるAM素子に好ましい。
【0006】
TNモードを有するAM素子においては正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。VAモードを有するAM素子においては負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。高分子支持配向(PSA;polymer sustained alignment)型のAM素子においては正または負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。
【0007】
一方、熱硬化性組成物および熱可塑性組成物の熱、酸素、または光に対する安定性を向上させる化合物が、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、紫外線に対する高い安定性を有する液晶組成物を提供することである。別の目的は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、熱に対する高い安定性、残像等の表示不良の抑制のような特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。別の目的は、これらの特性の少なくとも2つのあいだで適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。
また、別の目的は、液晶組成物に添加して液晶組成物の紫外線に対する安定性を向上させることが可能な化合物を提供することである。
さらに別の目的は、このような組成物を含有し、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命のような特性を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第一添加物として式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物(以下、化合物(1)と記載する場合がある)を含有し、ネマチック相を有する液晶組成物、およびこの組成物を含有する液晶表示素子に関する。
式(1)において、R
1は、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり;R
2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、または式(A-1)で表される基であり;環Aは1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;aは、1または2であり;bは、0、1、2、3、または4であり;
式(A-1)において、R
aは、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく;Z
aは、炭素数1から20の分岐してもよいアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は-CH=CH-で置き換えられてもよく;sは、0または1であり;tは、0、1、2、3、4、または5である。
【0011】
また、本発明は、下記式(1’)で表される化合物に関する。
式(1’)において、R
1は、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり;R
2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく;環Aは1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;aは、1または2であり;bは、0、1、2、3、または4である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の1つの長所は、紫外線に対する高い安定性を有する液晶組成物を提供することである。別の長所は、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、熱に対する高い安定性、残像等の表示不良の抑制のような特性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。別の長所は、これらの特性の少なくとも2つのあいだで適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。また、別の長所は、液晶組成物に添加して液晶組成物の紫外線に対する安定性を向上させることが可能な化合物を提供することである。さらに、別の長所は、このような組成物を含有し、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、長い寿命のような特性を有する液晶表示素子を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この明細書における用語の使い方は次のとおりである。「液晶組成物」および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「組成物」および「素子」と略すことがある。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物および液晶相を有しないが、ネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に混合される化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4-シクロヘキシレンや1,4-フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。アルケニルを有する液晶性化合物は、その意味では重合性ではない。
【0014】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。この液晶組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。液晶性化合物の割合は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物の質量に基づいた質量百分率(質量%)で表される。添加物の割合は、添加物を含まない液晶組成物の質量に基づいた質量百分率(質量%)で表される。すなわち、液晶性化合物や添加物の割合は、液晶性化合物の全質量に基づいて算出される。質量百万分率(ppm)が用いられることがある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の質量に基づいて表される。
【0015】
「ネマチック相の上限温度」を「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、組成物が初期段階において大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと、大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。組成物や素子の特性が経時変化試験によって検討されることがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0016】
「少なくとも1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよい」のような表現がこの明細書で使われる。この場合、-CH2-CH2-CH2-は、隣接しない-CH2-が-O-で置き換えられることによって-O-CH2-O-に変換されてもよい。しかしながら、隣接した-CH2-が-O-で置き換えられることはない。この置き換えでは-O-O-CH2-(ペルオキシド)が生成するからである。すなわち、この表現は、「1つの-CH2-は-O-で置き換えられてもよい」と「少なくとも2つの隣接しない-CH2-は-O-で置き換えられてもよい」の両方とを意味する。このルールは、-O-への置き換えだけでなく、-CH=CH-や-COO-のような二価基への置き換えにも適用される。
【0017】
成分化合物の化学式において、末端基R3の記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR3が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2-1)のR3がエチルであり、化合物(2-2)のR3がエチルであるケースがある。化合物(2-1)のR3がエチルであり、化合物(2-2)のR3がプロピルであるケースもある。このルールは、他の末端基などの記号にも適用される。式(1)において、添え字‘a’が2のとき、2つの環Aが存在する。この化合物において、2つの環Aが表す2つの環は、同一であってもよく、または異なってもよい。このルールは、添え字‘a’が2より大きいとき、任意の2つの環Aにも適用される。このルールは、Z1、環Bなどの記号にも適用される。このルールは、化合物(5-27)における2つの-Sp2-P5のような場合にも適用される。
【0018】
六角形で囲んだA、B、C、Dなどの記号はそれぞれ環A、環B、環C、環Dなどの環に対応し、六員環、縮合環などの環を表す。化合物(1)および化合物(5)において、この六角形の一辺を横切る斜線は、環上の任意の水素がR2、-Sp1-P1などの基で置き換えられてもよいことを表す。‘b’などの添え字は、置き換えられた基の数を示す。添え字‘b’が0(ゼロ)のとき、そのような置き換えはない。添え字‘b’が2以上のとき、環上には複数のR2が存在する。R2が表す複数の基は、同一であってもよく、または異なってもよい。「環Aおよび環Bは独立して、X、Y、またはZである」の表現では、主語が複数であるから、「独立して」を用いる。主語が「環A」であるときは、主語が単数であるから「独立して」を用いない。
【0019】
2-フルオロ-1,4-フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン-2,5-ジイルのような、環から2つの水素を除くことによって生成した、左右非対称な二価基にも適用される。このルールは、カルボニルオキシ(-COO-または-OCO-)のような二価の結合基にも適用される。
【0020】
液晶性化合物のアルキルは、直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
【0021】
本発明は、下記の項などである。
【0022】
項1. 第一添加物として式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有し、ネマチック相を有する液晶組成物。
式(1)において、R
1は、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり;R
2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、または式(A-1)で表される基であり;環Aは1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;aは、1または2であり;bは、0、1、2、3、または4であり;
式(A-1)において、R
aは、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく;Z
aは、炭素数1から20の分岐してもよいアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は-CH=CH-で置き換えられてもよく;sは、0または1であり;tは、0、1、2、3、4、または5である。
【0023】
項2. 式(1)で表される化合物において、R2がメチル、t-ブチル、t-ペンチル、t-オクチル、またはα-クミルであり、bが1、2、3、または4である、項1に記載の液晶組成物。
【0024】
項3. 第一添加物として式(1-1)から式(1-4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1または2に記載の液晶組成物。
式(1-1)から式(1-4)において、R
2はメチル、t-ブチル、t-ペンチル、t-オクチル、またはα-クミルである。
【0025】
項4. 第一添加物の割合が0.005質量%から2質量%の範囲である、項1から3のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0026】
項5. 第一成分として式(2)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から4のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(2)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z
1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり;cは、1、2、または3である。
【0027】
項6. 第一成分として式(2-1)から式(2-13)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から5のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(2-1)から式(2-13)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。
【0028】
項7. 第一成分の割合が10質量%から85質量%の範囲である、項5または6に記載の液晶組成物。
【0029】
項8. 第二成分として式(3)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から7のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3)において、R
5は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルであり;環Dは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり;Z
2は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシであり;X
1およびX
2は独立して、水素またはフッ素であり;Y
1は、フッ素、塩素、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルオキシであり;dは、1、2、3、または4である。
【0030】
項9. 第二成分として式(3-1)から式(3-35)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から8のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(3-1)から式(3-35)において、R
5は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。
【0031】
項10. 第二成分の割合が10質量%から85質量%の範囲である、項8または9に記載の液晶組成物。
【0032】
項11. 第三成分として式(4)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(4)において、R
6およびR
7は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシであり;環Eおよび環Gは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり;環Fは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、または7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルであり;Z
3およびZ
4は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり;eは、1、2、または3であり、fは、0または1であり;eとfとの和は3以下である。
【0033】
項12. 第三成分として式(4-1)から式(4-27)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(4-1)から式(4-27)において、R
6およびR
7は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。
【0034】
項13. 第三成分の割合が5質量%から80質量%の範囲である、項11または12に記載の液晶組成物。
【0035】
項14. 第二添加物として式(5)で表される重合性化合物から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から13のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(5)において、環Iおよび環Kは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、テトラヒドロピラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、ピリミジン-2-イル、またはピリジン-2-イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;環Jは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;Z
5およびZ
6は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-、-C(CH
3)=CH-、-CH=C(CH
3)-、または-C(CH
3)=C(CH
3)-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;P
1、P
2、およびP
3は独立して、重合性基であり;Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合、または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよく;gは、0、1、または2であり;h、i、およびjは独立して、0、1、2、3、または4であり;そしてh、i、およびjの和は、1以上である。
【0036】
項15. 式(5)において、P
1、P
2、およびP
3が独立して式(P-1)から式(P-5)で表される重合性基の群から選択された基である項14に記載の液晶組成物。
式(P-1)から式(P-5)において、M
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。
【0037】
項16. 第二添加物として式(5-1)から式(5-29)で表される重合性化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項1から15のいずれか1項に記載の液晶組成物。
式(5-1)から式(5-29)において、P
4、P
5、およびP
6は独立して、式(P-1)から式(P-3)で表される重合性基の群から選択された基であり、M
1、M
2、およびM
3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルであり;
Sp
1、Sp
2、およびSp
3は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0038】
項17. 第二添加物の割合が0.03質量%から10質量%の範囲である、項14から16のいずれか1項に記載の液晶組成物。
【0039】
項18. 項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有する液晶表示素子。
【0040】
項19. 液晶表示素子の動作モードが、TNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、VAモード、FFSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス方式である、項18に記載の液晶表示素子。
【0041】
項20. 項14から17のいずれか1項に記載の液晶組成物を含有し、この液晶組成物中の重合性化合物が重合している、高分子支持配向型の液晶表示素子。
【0042】
項21. 項1から17のいずれか1項に記載の液晶組成物の、液晶表示素子における使用。
【0043】
項22. 項14から17のいずれか1項に記載の液晶組成物の、高分子支持配向型の液晶表示素子における使用。
【0044】
項23. 式(1’)で表される化合物。
式(1’)において、R
1は、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり;R
2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく;環Aは1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく;aは、1または2であり;bは、0、1、2、3、または4である。
【0045】
項24. R2がメチル、t-ブチル、t-ペンチル、またはt-オクチルであり、bが1、2、3、または4である、項23に記載の化合物。
【0046】
項25. 式(1’-1)、式(1’-2)、式(1’-3)、または式(1’-4)で表される項24に記載の化合物。
式(1’-1)から式(1’-4)において、R
2は、メチル、t-ブチル、t-ペンチル、またはt-オクチルである。
【0047】
本発明は、次の項も含む。(a)光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤のような添加物の群から選択された1つの化合物、2つの化合物、または3つ以上の化合物を含有する上記の組成物。(b)上記の組成物を含有するAM素子。(c)重合性化合物をさらに含有する上記の組成物、およびこの組成物を含有する高分子支持配向(PSA)型のAM素子。(d)上記の組成物を含有し、この組成物中の重合性化合物が重合している、高分子支持配向(PSA)型のAM素子。(e)上記の組成物を含有し、そしてPC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、VA、FFS、またはFPAのモードを有する素子。(f)上記の組成物を含有する透過型の素子。(g)上記の組成物を、ネマチック相を有する組成物としての使用。(h)上記の組成物に光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用。
【0048】
本発明の組成物を次の順で説明する。第一に、組成物における成分化合物の構成を説明する。第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物に及ぼす主要な効果を説明する。第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分の好ましい割合およびその根拠を説明する。第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。第五に、好ましい成分化合物を示す。第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。第七に、成分化合物の合成法を説明する。最後に、組成物の用途を説明する。
【0049】
第一に、組成物の構成を説明する。この組成物は、複数の液晶性化合物を含有する。この組成物は、添加物を含有してもよい。添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物などである。この組成物は、液晶性化合物の観点から組成物Aと組成物Bに分類される。組成物Aは、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)から選択された液晶性化合物の他に、その他の液晶性化合物、添加物などをさらに含有してもよい。「その他の液晶性化合物」は、化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)とは異なる液晶性化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で組成物に混合される。
【0050】
組成物Bは、実質的に化合物(2)、化合物(3)、および化合物(4)から選択された液晶性化合物のみからなる。「実質的に」は、組成物Bが添加物を含有してもよいが、その他の液晶性化合物を含有しないことを意味する。組成物Bは組成物Aに比較して成分の数が少ない。コストを下げるという観点から、組成物Bは組成物Aよりも好ましい。その他の液晶性化合物を混合することによって特性をさらに調整できるという観点から、組成物Aは組成物Bよりも好ましい。
【0051】
第二に、成分化合物の主要な特性、およびこの化合物が組成物や素子に及ぼす主要な効果を説明する。成分化合物の主要な特性を本発明の効果に基づいて表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、成分化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、0(ゼロ)は、極めて小さいことを意味する。
【0052】
【0053】
成分化合物の主要な効果は次のとおりである。化合物(1)は、紫外線吸収剤として働き、熱または紫外線に対する高い安定性に寄与する。化合物(1)は、添加量が極めて少量であるので、多くの場合において、上限温度、光学異方性、および誘電率異方性のような特性には影響しない。化合物(2)は粘度を下げる、または上限温度を上げる。化合物(3)は正の誘電率異方性を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(4)は負の誘電率異方性を上げ、そして下限温度を下げる。化合物(5)は、重合性であるから重合によって重合体を与える。この重合体は、液晶分子の配向を安定化するので、素子の応答時間を短縮し、そして画面の焼き付きを改善する。
【0054】
紫外線吸収剤は、液晶組成物に添加することで液晶分子に代わり紫外線を吸収する。光エネルギーの吸収により紫外線吸収剤は基底状態から励起状態に遷移する。励起状態分子が分子内プロトン移動過程により構造変化を起こし、これが熱を放出して基底状態に戻る。別の機構としては、吸収光よりも低エネルギーの光として輻射することで基底状態に戻る。紫外線吸収剤を液晶組成物に添加することで、液晶分子の紫外線吸収による劣化を抑制することが可能となる。
【0055】
紫外線吸収剤は、液晶組成物の吸収波長や、曝露される紫外光の波長を広くカバーする吸収波長域を持つことが好ましい。紫外線吸収剤は、その構造により吸収波長域と効率が異なる。そのような観点から、化合物(1)は有用な紫外線吸収剤である。
【0056】
第三に、組成物における成分の組み合わせ、成分化合物の好ましい割合およびその根拠を説明する。組成物における成分の好ましい組み合わせは、化合物(1)+化合物(2)、化合物(1)+化合物(3)、化合物(1)+化合物(4)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(4)、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)+化合物(4)、または化合物(1)+化合物(2)+化合物(4)+化合物(5)である。特に好ましい組み合わせは、化合物(1)+化合物(2)+化合物(3)である。
【0057】
化合物(1)の好ましい割合は、熱または紫外線に対する安定性を上げるために約0.005質量%以上であり、下限温度を下げるために約2質量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01質量%から約1質量%の範囲である。特に好ましい割合は約0.03質量%から約0.5質量%の範囲である。
【0058】
化合物(2)の好ましい割合は、上限温度を上げるために、または粘度を下げるために約10質量%以上であり、誘電率異方性を上げるために約85質量%以下である。さらに好ましい割合は約20質量%から約80質量%の範囲である。特に好ましい割合は約30質量%から約70質量%の範囲である。
【0059】
化合物(3)の好ましい割合は、正の誘電率異方性を上げるために約10質量%以上であり、下限温度を下げるために約85質量%以下である。さらに好ましい割合は約20質量%から約80質量%の範囲である。特に好ましい割合は約30質量%から約70質量%の範囲である。
【0060】
化合物(4)の好ましい割合は、負の誘電率異方性を上げるために約5質量%以上であり、下限温度を下げるために約80質量%以下である。さらに好ましい割合は約5質量%から約75質量%の範囲である。特に好ましい割合は約10質量%から約70質量%の範囲である。
【0061】
化合物(5)は、高分子支持配向型の素子に適合させる目的で、組成物に添加される。化合物(5)の好ましい割合は、液晶分子を配向させるために約0.03質量%以上であり、素子の表示不良を防ぐために約10質量%以下である。さらに好ましい割合は、約0.1質量%から約2質量%の範囲である。特に好ましい割合は、約0.2質量%から約1.0質量%の範囲である。
【0062】
第四に、成分化合物の好ましい形態を説明する。式(1)、式(2)、式(3)、および式(4)において、R1は、水素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルである。好ましいR1は、水素または炭素数1から12のアルキルである。R2は、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、または式(A-1)で表される基である。好ましいR2は、液晶の安定性に寄与する効果を上げるためにメチル、t-ブチル、t-ペンチル、t-オクチル、またはα-クミルである。R3およびR4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR3またはR4は、粘度を下げるために、炭素数2から12のアルケニルであり、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルである。R5は、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または炭素数2から12のアルケニルである。好ましいR5は、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルである。R6およびR7は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシである。好ましいR6またはR7は、安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルであり、誘電率異方性を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。
【0063】
式(A-1)において、R
aは、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数2から12のアルケニル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。好ましいR
aは、炭素数1から12のアルキルまたは炭素数1から12のアルコキシである。Z
aは、炭素数1から20の分岐してもよいアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。また、アルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は-CH=CH-で置き換えられてもよい。好ましいZ
aは、炭素数1から3の分岐してもよいアルキレンである。特に好ましいZ
aは、メチレンまたはジメチルメチレンである。sは、0または1である。好ましいsは、1である。tは、0、1、2、3、4、または5である。好ましいtは、0または1である。
【0064】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、t-ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、またはt-オクチルである。さらに好ましいアルキルは、粘度を下げるためにメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。
【0065】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルコキシは、メトキシまたはエトキシである。
【0066】
好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、粘度を下げるためにビニル、1-プロペニル、3-ブテニル、または3-ペンテニルである。これらのアルケニルにおける-CH=CH-の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。粘度を下げるためなどから1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ペンテニル、3-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2-ブテニル、2-ペンテニル、2-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。
【0067】
好ましいアルケニルオキシは、ビニルオキシ、アリルオキシ、3-ブテニルオキシ、3-ペンテニルオキシ、または4-ペンテニルオキシである。粘度を下げるために、さらに好ましいアルケニルオキシは、アリルオキシまたは3-ブテニルオキシである。
【0068】
少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルキルの好ましい例は、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシル、7-フルオロヘプチル、または8-フルオロオクチルである。さらに好ましい例は、誘電率異方性を上げるために2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、または5-フルオロペンチルである。
【0069】
少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2-ジフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル、5,5-ジフルオロ-4-ペンテニル、または6,6-ジフルオロ-5-ヘキセニルである。さらに好ましい例は、粘度を下げるために2,2-ジフルオロビニル、または4,4-ジフルオロ-3-ブテニルである。
【0070】
環Aは1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素、塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。好ましい環Aは、1,4-フェニレンまたはナフタレン-2,6-ジイルである。
【0071】
環Bおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。好ましい環Bまたは環Cは、粘度を下げるために、または上限温度を上げるために、1,4-シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4-フェニレンである。
【0072】
環Dは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレン、ピリミジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルである。好ましい環Dは、上限温度を上げるために1,4-シクロヘキシレンであり、光学異方性を上げるために1,4-フェニレンであり、誘電率異方性を上げるために2,6-ジフルオロ-1,4-フェニレンである。テトラヒドロピラン-2,5-ジイルは、
または
であり、好ましくは
である。
【0073】
環Eおよび環Gは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、またはテトラヒドロピラン-2,5-ジイルである。「少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン」の好ましい例は、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレンまたは2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレンである。好ましい環Eまたは環Gは、粘度を下げるために1,4-シクロヘキシレンであり、誘電率異方性を上げるためにテトラヒドロピラン-2,5-ジイルであり、光学異方性を上げるために1,4-フェニレンである。
【0074】
環Fは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、または7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルである。好ましい環Fは、粘度を下げるために2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり、光学異方性を下げるために2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレンであり、誘電率異方性を上げるために7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルである。
【0075】
Z1は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシである。好ましいZ1は、粘度を下げるために単結合である。Z2は、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはジフルオロメチレンオキシである。好ましいZ2は、粘度を下げるために単結合であり、誘電率異方性を上げるために、ジフルオロメチレンオキシである。Z3およびZ4は独立して、単結合、エチレン、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシである。好ましいZ3またはZ4は、粘度を下げるために単結合であり、下限温度を下げるためにエチレンであり、誘電率異方性を上げるためにメチレンオキシである。
【0076】
X1およびX2は独立して、水素またはフッ素である。好ましいX1またはX2は、誘電率異方性を上げるためにフッ素である。
【0077】
Y1は、フッ素、塩素、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルオキシである。好ましいY1は、誘電率異方性を上げるためにフッ素である。少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルキルの好ましい例は、トリフルオロメチルである。少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルコキシの好ましい例は、トリフルオロメトキシである。少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたアルケニルオキシの好ましい例は、トリフルオロビニルオキシである。
【0078】
aは、1または2であり、bは、0、1、2、3、または4である。好ましいaは1であり、好ましいbは1である。cは、1、2、または3である。好ましいcは粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。dは、1、2、3、または4である。好ましいdは、誘電率異方性を上げるために2または3である。eは、1、2、または3である。好ましいeは粘度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。fは、0または1である。好ましいfは粘度を下げるために0であり、下限温度を下げるために1である。eとfとの和は、3以下である。
【0079】
式(5)において、P
1、P
2、およびP
3は独立して、重合性基である。好ましいP
1、P
2、またはP
3は、式(P-1)から式(P-5)で表される重合性基の群から選択された基である。さらに好ましいP
1、P
2、またはP
3は、基(P-1)または基(P-2)である。特に好ましい基(P-1)は、-OCO-CH=CH
2または-OCO-C(CH
3)=CH
2である。基(P-1)から基(P-5)の波線は、結合する部位を示す。
【0080】
基(P-1)から基(P-5)において、M1、M2、およびM3は独立して、水素、フッ素、炭素数1から5のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から5のアルキルである。好ましいM1、M2、またはM3は、反応性を上げるために水素またはメチルである。さらに好ましいM1はメチルであり、さらに好ましいM2またはM3は水素である。
【0081】
式(5-1)から式(5-29)において、P
4、P
5、およびP
6は独立して、式(P-1)から式(P-3)で表される基である。好ましいP
4、P
5、またはP
6は、基(P-1)または基(P-2)である。さらに好ましい基(P-1)は、-OCO-CH=CH
2または-OCO-C(CH
3)=CH
2である。基(P-1)から基(P-3)の波線は、結合する部位を示す。
【0082】
式(5)において、Sp1、Sp2、およびSp3は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH2-CH2-は、-CH=CH-または-C≡C-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。好ましいSp1、Sp2、またはSp3は、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、-OCO-、-CO-CH=CH-、または-CH=CH-CO-である。さらに好ましいSp1、Sp2、またはSp3は、単結合である。
【0083】
環Iおよび環Kは独立して、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、テトラヒドロピラン-2-イル、1,3-ジオキサン-2-イル、ピリミジン-2-イル、またはピリジン-2-イルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。好ましい環Iまたは環Kは、フェニルである。環Jは、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-フェニレン、ナフタレン-1,2-ジイル、ナフタレン-1,3-ジイル、ナフタレン-1,4-ジイル、ナフタレン-1,5-ジイル、ナフタレン-1,6-ジイル、ナフタレン-1,7-ジイル、ナフタレン-1,8-ジイル、ナフタレン-2,3-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、ナフタレン-2,7-ジイル、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ピリミジン-2,5-ジイル、またはピリジン-2,5-ジイルであり、これらの環において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよい。好ましい環Jは、1,4-フェニレンまたは2-フルオロ-1,4-フェニレンである。
【0084】
Z5およびZ6は独立して、単結合または炭素数1から10のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH2-CH2-は、-CH=CH-、-C(CH3)=CH-、-CH=C(CH3)-、または-C(CH3)=C(CH3)-で置き換えられてもよく、これらの基において、少なくとも1つの水素は、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。好ましいZ5またはZ6は、単結合、-CH2CH2-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-、または-OCO-である。さらに好ましいZ5またはZ6は、単結合である。
【0085】
gは、0、1、または2である。好ましいgは、0または1である。h、i、およびjは独立して、0、1、2、3、または4であり、そしてh、i、およびjの和は、1以上である。好ましいh、i、またはjは、1または2である。
【0086】
第五に、好ましい成分化合物を示す。好ましい化合物(1)は、項3に記載の化合物(1-1)から化合物(1-4)であり、より好ましい化合物(1)は、項25に記載の化合物(1’-1)~(1’-4)である。
【0087】
好ましい化合物(2)は、項6に記載の化合物(2-1)から化合物(2-13)である。これらの化合物において、第一成分の少なくとも1つが、化合物(2-1)、化合物(2-3)、化合物(2-5)、化合物(2-6)、または化合物(2-8)であることが好ましい。特に好ましい化合物(2)は、R3およびR4の少なくとも一方がアルケニルである化合物(2-1)であり、その中でも特に3-HH-Vが好ましい。第一成分の少なくとも2つが、化合物(2-1)および化合物(2-3)、化合物(2-1)および化合物(2-5)、または化合物(2-1)および化合物(2-6)の組合せであることが好ましい。
【0088】
好ましい化合物(3)は、項9に記載の化合物(3-1)から化合物(3-35)である。これらの化合物において、第二成分の少なくとも1つが、化合物(3-4)、化合物(3-12)、化合物(3-14)、化合物(3-15)、化合物(3-18)、化合物(3-23)、化合物(3-24)、化合物(3-27)、化合物(3-29)、または化合物(3-30)であることが好ましい。第二成分の少なくとも2つが、化合物(3-12)および化合物(3-15)、化合物(3-14)および化合物(3-27)、化合物(3-18)および化合物(3-24)、化合物(3-18)および化合物(3-29)、化合物(3-24)および化合物(3-29)、または化合物(3-29)および化合物(3-30)の組み合わせであることが好ましい。
【0089】
好ましい化合物(4)は、項12に記載の化合物(4-1)から化合物(4-27)である。これらの化合物において、第三成分の少なくとも1つが、化合物(4-1)、化合物(4-3)、化合物(4-6)、化合物(4-8)、化合物(4-10)、または化合物(4-14)であることが好ましい。第三成分の少なくとも2つが、化合物(4-1)および化合物(4-8)、化合物(4-3)および化合物(4-8)、化合物(4-3)および化合物(4-14)、化合物(4-6)および化合物(4-8)、化合物(4-6)および化合物(4-10)、または化合物(4-8)および化合物(4-14)の組み合わせであることが好ましい。
【0090】
好ましい化合物(5)は、項16に記載の化合物(5-1)から化合物(5-29)である。これらの化合物において、第二添加物の少なくとも1つが、化合物(5-1)、化合物(5-2)、化合物(5-24)、化合物(5-25)、化合物(5-26)、または化合物(5-27)であることが好ましい。第二添加物の少なくとも2つが、化合物(5-1)および化合物(5-2)、化合物(5-1)および化合物(5-18)、化合物(5-2)および化合物(5-24)、化合物(5-2)および化合物(5-25)、化合物(5-2)および化合物(5-26)、化合物(5-25)および化合物(5-26)、または化合物(5-18)および化合物(5-24)の組み合わせであることが好ましい。
【0091】
第六に、組成物に添加してもよい添加物を説明する。このような添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、消光剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物などである。液晶分子のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性化合物が組成物に添加される。このような化合物の例は、化合物(6-1)から化合物(6-5)である。光学活性化合物の好ましい割合は約5質量%以下である。さらに好ましい割合は約0.01質量%から約2質量%の範囲である。
【0092】
【0093】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が組成物に添加される。酸化防止剤の好ましい例は、化合物(7-1)から化合物(7-3)などである。
【0094】
化合物(7-2)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように約600ppm以下である。さらに好ましい割合は、約100ppmから約300ppmの範囲である。
【0095】
化合物(1)は紫外線吸収剤として有用なベンゾトリアゾール誘導体である。このベンゾトリアゾール誘導体と共に、他の紫外線吸収剤を組成物に添加してもよい。このような紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。光安定剤の好ましい例は、化合物(8-1)から化合物(8-16)などである。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないために約10000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0096】
消光剤は、液晶化合物が吸収した光エネルギーを受容し、熱エネルギーに変換することにより、液晶化合物の分解を防止する化合物である。消光剤の好ましい例は、化合物(9-1)から化合物(9-7)などである。これらの消光剤における好ましい割合は、その効果を得るために約50ppm以上であり、下限温度を上げないために約20000ppm以下である。さらに好ましい割合は約100ppmから約10000ppmの範囲である。
【0097】
GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。色素の好ましい割合は、約0.01質量%から約10質量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が組成物に添加される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために約1ppm以上であり、表示不良を防ぐために約1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、約1ppmから約500ppmの範囲である。
【0098】
高分子支持配向(PSA)型の素子に適合させるために重合性化合物が用いられる。化合物(5)はこの目的に適している。化合物(5)と共に化合物(5)とは異なる重合性化合物を組成物に添加してもよい。このような重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの化合物である。さらに好ましい例は、アクリレートまたはメタクリレートの誘導体である。化合物(5)の好ましい割合は、重合性化合物の全質量に基づいて10質量%以上である。さらに好ましい割合は、50質量%以上である。特に好ましい割合は、80質量%以上である。最も好ましい割合は、100質量%である。
【0099】
化合物(5)のような重合性化合物は紫外線照射により重合する。光重合開始剤などの適切な開始剤存在下で重合させてもよい。重合のための適切な条件、開始剤の適切なタイプ、および適切な量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocur1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。光重合開始剤の好ましい割合は、重合性化合物の全質量に基づいて約0.1質量%から約5質量%の範囲である。さらに好ましい割合は約1質量%から約3質量%の範囲である。
【0100】
化合物(5)のような重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、フェノチアジンなどである。
【0101】
第七に、成分化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。化合物(1)の合成例は、実施例の項に記載する。化合物(2-1)は、特開昭59-176221号公報に記載された方法で合成する。化合物(3-4)は、特開平10-204016に記載された方法で合成する。化合物(4-1)は、特開2000-053602号公報に記載された方法で合成する。化合物(5-18)は特開平7-101900号公報に記載された方法で合成する。酸化防止剤は市販されている。式(7)のnが1である化合物は、アルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(7)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成する。
【0102】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0103】
最後に、組成物の用途を説明する。大部分の組成物は、約-10℃以下の下限温度、約70℃以上の上限温度、そして約0.07から約0.20の範囲の光学異方性を有する。成分化合物の割合を制御することによって、またはその他の液晶性化合物を混合することによって、約0.08から約0.25の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。さらには、試行錯誤によって約0.10から約0.30の範囲の光学異方性を有する組成物を調製してもよい。この組成物を含有する素子は大きな電圧保持率を有する。この組成物はAM素子に適する。この組成物は透過型のAM素子に特に適する。この組成物は、ネマチック相を有する組成物としての使用や、光学活性化合物を添加することによって光学活性な組成物としての使用が可能である。
【0104】
この組成物はAM素子への使用が可能である。さらにPM素子への使用も可能である。この組成物は、PC、TN、STN、ECB、OCB、IPS、FFS、VA、FPAなどのモードを有するAM素子およびPM素子への使用が可能である。VA、OCB、IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子への使用は特に好ましい。IPSモードまたはFFSモードを有するAM素子において、電圧が無印加のとき、液晶分子の配列がガラス基板に対して並行であってもよく、または垂直であってもよい。これらの素子が反射型、透過型または半透過型であってもよい。透過型の素子への使用は好ましい。非結晶シリコン-TFT素子または多結晶シリコン-TFT素子への使用も可能である。この組成物をマイクロカプセル化して作製したNCAP(nematic curvilinear aligned phase)型の素子や、組成物中に三次元の網目状高分子を形成させたPD(polymer dispersed)型の素子にも使用できる。
【実施例】
【0105】
実施例によって本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例1の組成物と実施例2の組成物との混合物を含む。本発明は、実施例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物、組成物および素子の特性は、下記に記載した方法により測定した。
【0106】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX-500を用いた。1H-NMRの測定では、試料をCDCl3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F-NMRの測定では、CFCl3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0107】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC-14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1質量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC-R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0108】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1-M50-025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0109】
組成物に含有される液晶性化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶性化合物の混合物をガスクロマトグラフィー(FID)で分析する。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶性化合物の割合(質量比)に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶性化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶性化合物の割合(質量%)は、ピークの面積比から算出することができる。
【0110】
吸光度:測定には日立ハイテクサイエンス社製のU-2001型ダブルビーム分光光度計を用いた。測定セルは、東ソー・クォーツ社製の石英ガラスセルのT-23-UV-10を使用し、リファレンスセルには和光純薬工業製の分光分析用シクロヘキサンのみを入れ、サンプルセルには試料の濃度が2.00μmol/gとなるように分光分析用シクロヘキサンで調整した測定溶液を入れた。吸光度は、波長800nmから200nmまでの帯域を1nmの刻み幅でスキャンした。
【0111】
測定試料:組成物または素子の特性を測定するときは、組成物をそのまま試料として用いた。化合物の特性を測定するときは、この化合物(15質量%)を母液晶(85質量%)に混合することによって測定用の試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)-0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10質量%:90質量%、5質量%:95質量%、1質量%:99質量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度、および誘電率異方性の値を求めた。
【0112】
下記の母液晶を用いた。成分化合物の割合は質量%で示した。
【0113】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED-2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0114】
正の誘電率異方性を有する液晶組成物においては、以下に記載する(1)から(15)の測定方法を用いた。
【0115】
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0116】
(2)ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを<-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0117】
(3)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0118】
(4)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995)に記載された方法に従った。ツイスト角が0°であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文中の40頁記載の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0119】
(5)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。
【0120】
(6)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。
【0121】
(7)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0122】
(8)電圧保持率(VHR-1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(1Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で166.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0123】
(9)電圧保持率(VHR-2;60℃で測定;%):25℃の代わりに、60℃で測定した以外は、上記と同じ手順で電圧保持率を測定した。得られた値をVHR-2で表した。
【0124】
(10)電圧保持率(VHR-3;60℃で測定;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmであった。この素子に試料を注入し、5mW/cm2の紫外線を167分間照射した。光源はアイグラフィックス株式会社製ブラックライト、F40T10/BL(ピーク波長369nm)であり、素子と光源の間隔は5mmであった。VHR-3の測定では、166.7ミリ秒のあいだ、減衰する電圧を測定した。大きなVHR-3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。
【0125】
(11)電圧保持率(VHR-4;60℃で測定;%):試料を注入したTN素子を120℃の恒温槽内で20時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。VHR-4の測定では、166.7ミリ秒のあいだ減衰する電圧を測定した。大きなVHR-4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。
【0126】
(12)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0127】
(13)弾性定数(K;25℃で測定;pN):測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。測定した静電容量(C)と印加電圧(V)の値を「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に同171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数は、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値で表した。
【0128】
(14)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0129】
(15)短軸方向における誘電率(ε⊥;25℃で測定):2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0130】
負の誘電率異方性を有する液晶組成物においては、以下に記載する(16)から(28)の測定方法を用いた。
【0131】
(16)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0132】
(17)ネマチック相の下限温度(TC;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、TCを<-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0133】
(18)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0134】
(19)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s):測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に39ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM. Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、(6)項で測定した。
【0135】
(20)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n∥は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n∥-n⊥、の式から計算した。
【0136】
(21)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε∥-ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε∥およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε∥)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε∥)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0137】
(22)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧-透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧で表した。
【0138】
(23)電圧保持率(VHR-1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。このTN素子にパルス電圧(1Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で166.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0139】
(24)電圧保持率(VHR-2;60℃で測定;%):25℃の代わりに、60℃で測定した以外は、上記と同じ手順で電圧保持率を測定した。得られた値をVHR-2で表した。
【0140】
(25)電圧保持率(VHR-3;60℃で測定;%):紫外線を照射したあと、電圧保持率を測定し、紫外線に対する安定性を評価した。測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そしてセルギャップは5μmであった。この素子に試料を注入し、5mW/cm2の紫外線を167分間照射した。光源はアイグラフィックス株式会社製ブラックライト、F40T10/BL(ピーク波長369nm)であり、素子と光源の間隔は5mmであった。VHR-3の測定では、166.7ミリ秒のあいだ、減衰する電圧を測定した。大きなVHR-3を有する組成物は紫外線に対して大きな安定性を有する。
【0141】
(26)電圧保持率(VHR-4;25℃で測定;%):試料を注入したTN素子を80℃の恒温槽内で500時間加熱したあと、電圧保持率を測定し、熱に対する安定性を評価した。VHR-4の測定では、166.7ミリ秒のあいだ減衰する電圧を測定した。大きなVHR-4を有する組成物は熱に対して大きな安定性を有する。
【0142】
(27)応答時間(τ;25℃で測定;ms):測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。応答時間は、透過率10%から90%に変化するのに要した時間(立ち上がり時間;rise time;ミリ秒)と透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)の合計で表した。
【0143】
(28)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0144】
合成例1
化合物(1-1)は、下記の経路で合成した。
【0145】
1000mlの3つ口フラスコに2-(tert-ブチル)-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール(40.0g、0.126mol)、フェニルボロン酸(15.598g、0.127mol)、PdCl2(Amphos)2(Pd-132、0.179g、0.250mmol)、炭酸カリウム(35.010g、0.253mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(12.520g、38.000mmol)、トルエン(200ml)、イソプロピルアルコール(200ml)、水(20ml)を入れて加熱還流した。3時間後、水(200ml)にあけてから水層と有機層を分離した後、水層をさらにトルエン(200ml)で抽出した。併せた有機層を飽和食塩水(100ml×2)で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をヘプタン/トルエン=9/1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することで化合物(1-1)(26.1g、0.073mol、収率58%)を得た。
【0146】
1H-NMR(ppm;CDCl3):δ11.73(s,1H)、8.09(dd,J=16.5Hz,J=1.3Hz,2H)、7.98(d,J=8.8Hz,1H)、7.74(dd,J=8.8Hz,J=1.3Hz,1H)、7.69(dd,J=16.5Hz,J=1.3Hz,2H)、7.52-7.49(m,2H)、7.44-7.41(m,1H)、7.19(d,J=1.9Hz,1H)、2.41(s,3H)、1.51(s,9H).
【0147】
吸光度(任意単位):0.216(369nm).
【0148】
合成例2
化合物(1-2)は、下記経路で合成した。
【0149】
500mlの3つ口フラスコに2-(tert-ブチル)-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール(50.0g、0.158mol)、4-プロピルフェニルボロン酸(26.277g、0.160mol)、PdCl2(Amphos)2(Pd-132、0.224g、0.320mmol)、炭酸カリウム(43.762g、0.317mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(15.312g、47.50mmol)、イソプロピルアルコール(250ml)を入れて加熱還流した。3時間後、水(200ml)にあけてから水層と有機層を分離した後、水層をさらにトルエン(200ml)で抽出した。併せた有機層を飽和食塩水(100ml×2)で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をヘプタン/トルエン=9/1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することで化合物(1-2)(39.3g、0.0984mol、収率62%)を得た。
【0150】
1H-NMR(ppm;CDCl3):δ11.73(s,1H)、8.09(d,J=1.3Hz,1H)、6.04(dd,J=1.3Hz,J=1.0Hz,1H)、7.94(d,J=8.8Hz,1H)、7.72(dd,J=8.8Hz,J=1.3Hz,1H)、7.58(d,J=8.1Hz,2H)、7.30(d,J=8.1Hz,2H)、7.18(d,J=1.9Hz,1H)、2.65(t,J=7.5Hz,2H)、2.39(s,3H)、1.70(sext,J=7.5Hz,2H)、1.51(s,9H)、0.99(t,J=7.4Hz,3H).
【0151】
吸光度(任意単位):0.216(369nm).
【0152】
合成例3
化合物(1-3)は、下記経路で合成した。
【0153】
200mlの3つ口フラスコに2-(tert-ブチル)-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール(5.00g、0.0158mol)、4'-プロピル-4-ビフェニルボロン酸(3.840g、0.0160mol)、PdCl2(Amphos)2(Pd-132、0.0224g、0.0320mmol)、炭酸カリウム(4.3762g、0.0317mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(1.5312g、4.750mmol)、トルエン(25ml)、イソプロピルアルコール(25ml)、水(2.5ml)を入れて加熱還流した。3時間後、水(20ml)にあけてから水層と有機層を分離した後、水層をさらにトルエン(20ml)で抽出した。併せた有機層を飽和食塩水(10ml×2)で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をヘプタン/トルエン=9/1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することで化合物(1-3)(3.30g、6.94mmol、収率44%)を得た。
【0154】
1H-NMR(ppm;CDCl3):δ11.74(s,1H)、8.12-8.11(m,2H)、8.03(dd,J=8.9Hz,J=0.75Hz,1H)、7.80(dd,J=8.9Hz,J=1.3Hz,1H)、7.77-7.72(m,4H)、7.59(d,J=8.1Hz,2H)、7.29(d,J=8.1Hz,2H)、7.19(d,J=1.9Hz,1H)、2.65(t,J=7.5Hz,2H)、2.40(s,3H)、1.70(sext,J=7.5Hz,2H)、1.51(s,9H)、0.99(t,J=7.4Hz,3H).
【0155】
吸光度(任意単位):0.294(369nm).
【0156】
合成例4
化合物(1-4)は、下記経路で合成した。
【0157】
200mlの3つ口フラスコに2-(tert-ブチル)-6-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-メチルフェノール(5.00g、0.0158mol)、2-ナフタレンボロン酸(2.750g、0.0160mol)、PdCl2(Amphos)2(Pd-132、0.0224g、0.0320mmol)、炭酸カリウム(4.3762g、0.0317mol)、テトラブチルアンモニウムブロミド(1.5312g、4.750mmol)、トルエン(25ml)、イソプロピルアルコール(25ml)、水(2.5ml)を入れて加熱還流した。3時間後、水(20ml)にあけてから水層と有機層を分離した後、水層をさらにトルエン(20ml)で抽出した。併せた有機層を飽和食塩水(10ml×2)で洗浄して、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮した。得られた残渣をヘプタン/トルエン=9/1(体積比)を展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することで化合物(1-4)(0.52g、1.28mmol、収率8.1%)を得た。
【0158】
1H-NMR(ppm;CDCl3):δ11.74(s,1H)、8.20(s,1H)、8.13(d,J=6.6,J=1.3Hz,2H)、8.02(d,J=8.9Hz,1H)、7.98(d,J=8.6Hz,1H)、7.94(d,J=7.4Hz,1H)、7.89(ddd,J=8.4Hz,J=8.0Hz,J=1.2Hz,2H)、7.82(dd,J=8.4Hz,J=1.7Hz,1H),7.56-7.51(m,2H)、7.12(d,J=1.9Hz,1H)、2.41(s,3H)、1.52(s,9H).
【0159】
吸光度(任意単位):0.176(369nm).
【0160】
組成物の実施例を以下に示す。成分化合物は、下記の表3の定義に基づいて記号によって表した。表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。記号化された化合物の後にあるかっこ内の番号は、化合物が属する化学式を表す。(-)の記号はその他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、添加物を含まない液晶組成物の質量に基づいた質量百分率(質量%)である。最後に、組成物の特性値をまとめた。
【0161】
【0162】
[比較例1]
3-HH-V (2-1) 44%
V-HHB-1 (2-5) 6%
2-BB(F)B-3 (2-8) 2%
3-HHB(F,F)-F (3-2) 4%
4-HHB(F,F)-F (3-2) 5%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 6%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 13%
3-HBBXB(F,F)-F (3-23) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 2%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 8%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 7%
NI=79.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.106;Δε=8.5;Vth=2.18V;η=11.6mPa・s;γ1=60.0mPa・s;VHR-3=35.5%.
【0163】
[実施例1]
比較例1の組成物に化合物(1-1)を添加した組成物を実施例1とした。
3-HH-V (2-1) 44%
V-HHB-1 (2-5) 6%
2-BB(F)B-3 (2-8) 2%
3-HHB(F,F)-F (3-2) 4%
4-HHB(F,F)-F (3-2) 5%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 6%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 13%
3-HBBXB(F,F)-F (3-23) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 2%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 8%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 7%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=78.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.106;Δε=8.5;Vth=2.18V;η=11.6mPa・s;γ1=60.0mPa・s;VHR-3=87.8%.
【0164】
[比較例2]
3-HH-V (2-1) 29%
1-BB-3 (2-3) 10%
3-HHB-1 (2-5) 8%
5-B(F)BB-2 (2-7) 6%
3-BB(2F,3F)-O2 (4-6) 13%
2-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-10) 20%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-10) 14%
NI=74.5℃;Tc<-20℃;Δn=0.106;Δε=-3.0;Vth=2.21V;η=14.7mPa・s;VHR-3=40.9%.
【0165】
[実施例2]
比較例2の組成物に化合物(1-1)を添加した組成物を実施例2とした。
3-HH-V (2-1) 29%
1-BB-3 (2-3) 10%
3-HHB-1 (2-5) 8%
5-B(F)BB-2 (2-7) 6%
3-BB(2F,3F)-O2 (4-6) 13%
2-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-10) 20%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (4-10) 14%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=73.5℃;Tc<-20℃;Δn=0.106;Δε=-3.0;Vth=2.21V;η=14.7mPa・s;VHR-3=78.1%.
【0166】
[実施例3]
3-HH-V (2-1) 23%
3-HH-V1 (2-1) 10%
1V2-HH-3 (2-1) 9%
V2-HHB-1 (2-5) 8%
3-HHXB(F,F)-CF3 (3-5) 12%
3-GB(F,F)XB(F,F)-F (3-14) 8%
3-GBB(F)B(F,F)-F (3-22) 3%
4-GBB(F)B(F,F)-F (3-22) 2%
3-HBBXB(F,F)-F (3-23) 3%
4-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-27) 5%
5-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-27) 5%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 12%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=87.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.101;Δε=13.4;Vth=1.34V;η=20.6mPa・s;γ1=123.7mPa・s;VHR-3=84.8%.
【0167】
[実施例4]
3-HH-V (2-1) 18%
3-HH-4 (2-1) 11%
5-HB-O2 (2-2) 2%
3-HHB-1 (2-5) 5%
3-HHB-3 (2-5) 5%
3-HHB-O1 (2-5) 6%
3-HHB(F,F)-F (3-2) 10%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 2%
3-GHB(F,F)-F (3-7) 4%
3-BB(F)B(F,F)-F (3-15) 7%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 14%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 10%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 6%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=77.2℃;Tc<-20℃;Δn=0.108;Δε=10.4;Vth=1.35V;η=17.8mPa・s;γ1=79.9mPa・s;VHR-3=82.4%.
【0168】
[実施例5]
3-HH-V (2-1) 18%
3-HH-4 (2-1) 11%
5-HB-O2 (2-2) 2%
3-HHB-1 (2-5) 5%
3-HHB-3 (2-5) 5%
3-HHB-O1 (2-5) 6%
3-HHB(F,F)-F (3-2) 10%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 2%
3-GHB(F,F)-F (3-7) 4%
3-BB(F)B(F,F)-F (3-15) 7%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 14%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 10%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 6%
この組成物に化合物(1-2)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=77.1℃;Tc<-20℃;Δn=0.108;Δε=10.4;Vth=1.35V;η=17.8mPa・s;γ1=79.9mPa・s;VHR-3=81.5%.
【0169】
[実施例6]
3-HH-V (2-1) 44%
V-HHB-1 (2-5) 6%
2-BB(F)B-3 (2-8) 2%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 6%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 13%
3-HHBB(F,F)-F (3-19) 4%
4-HHBB(F,F)-F (3-19) 5%
3-HBBXB(F,F)-F (3-23) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (3-28) 2%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 8%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 7%
この組成物に化合物(1-3)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=79.3℃;Tc<-20℃;Δn=0.106;Δε=8.5;Vth=1.45V;η=11.6mPa・s;γ1=60.0mPa・s;VHR-3=80.2%.
【0170】
[実施例7]
2-HH-5 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 10%
3-HH-V1 (2-1) 7%
4-HH-V (2-1) 10%
4-HH-V1 (2-1) 8%
5-HB-O2 (2-2) 7%
4-HHEH-3 (2-4) 3%
1-BB(F)B-2V (2-8) 3%
5-HXB(F,F)-F (3-1) 6%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 6%
V-HB(F)B(F,F)-F (3-9) 5%
3-HHB(F)B(F,F)-F (3-20) 7%
2-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (3-28) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (3-28) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F)-F (3-28) 4%
5-HB-CL (3) 5%
1O1-HBBH-3 (-) 5%
この組成物に化合物(1-4)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=78.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.095;Δε=3.4;Vth=1.50V;η=8.4mPa・s;γ1=54.2mPa・s;VHR-3=78.3%.
【0171】
[実施例8]
2-HH-5 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 25%
3-HH-V1 (2-1) 7%
4-HH-V1 (2-1) 6%
5-HB-O2 (2-2) 5%
7-HB-1 (2-2) 5%
VFF-HHB-O1 (2-5) 8%
VFF-HHB-1 (2-5) 3%
3-HBB(F,F)-F (3-8) 5%
5-HBB(F,F)-F (3-8) 4%
3-BB(F)B(F,F)-F (3-15) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 5%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (3-30) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(3-31) 4%
3-HH2BB(F,F)-F (3) 3%
4-HH2BB(F,F)-F (3) 3%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=78.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.101;Δε=4.6;Vth=1.71V;η=11.0mPa・s;γ1=47.2mPa・s;VHR-3=80.1%.
【0172】
[実施例9]
2-HH-5 (2-1) 8%
3-HH-V (2-1) 28%
4-HH-V1 (2-1) 7%
5-HB-O2 (2-2) 2%
7-HB-1 (2-2) 5%
VFF-HHB-O1 (2-5) 8%
VFF-HHB-1 (2-5) 3%
3-HBB(F,F)-F (3-8) 5%
5-HBB(F,F)-F (3-8) 4%
3-BB(F)B(F,F)-F (3-15) 3%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 5%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (3-30) 3%
5-BB(F)B(F,F)XB(F)B(F,F)-F
(3-31) 4%
3-HH2BB(F,F)-F (3) 3%
4-HH2BB(F,F)-F (3) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (4-14) 2%
2-BB(2F,3F)B-3 (4-19) 4%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=80.7℃;Tc<-20℃;Δn=0.109;Δε=4.8;Vth=3.01V;η=13.3mPa・s;γ1=57.4mPa・s;VHR-3=79.8%.
【0173】
[実施例10]
3-HH-V (2-1) 28%
V2-BB-1 (2-3) 20%
1-BB(F)B-2V (2-8) 7%
2-BB(F)B-2V (2-8) 10%
3-BB(F)B-2V (2-8) 11%
2-BB(F)B-3 (2-8) 4%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 9.5%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 5%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (3-30) 5.5%
この組成物に化合物(1-1)を0.3質量%の割合で添加した。
Tc<-20℃;Δn=0.161;Δε=4.1;Vth=2.15V;η=13.6mPa・s;γ1=44.0mPa・s;VHR-3=72.1%.
【0174】
[実施例11]
3-HH-V (2-1) 13%
5-HB-O2 (2-2) 2%
V-HHB-1 (2-5) 10%
3-HHB-1 (2-5) 5%
3-HHB-O1 (2-5) 3.5%
2-BB(F)B-2V (2-8) 4%
3-BB(F)B-2V (2-8) 4%
2-HHB(F,F)-F (3-2) 10%
3-HHB(F,F)-F (3-2) 12%
3-HBB(F,F)-F (3-8) 8%
3-BB(F)B(F,F)-F (3-15) 8.5%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 16%
3-HHBB(F,F)-F (3-19) 4%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=83.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.120;Δε=8.4;Vth=1.54V;VHR-3=70.2%.
【0175】
[実施例12]
3-HH-V (2-1) 34%
3-HH-V1 (2-1) 5%
3-HH-VFF (2-1) 2%
V-HHB-1 (2-5) 12%
V2-HHB-1 (2-5) 11.5%
3-HHB-1 (2-5) 2%
1-BB(F)B-2V (2-8) 2%
2-BB(F)B-2V (2-8) 6%
3-BB(F)B-2V (2-8) 4%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 3.5%
3-HBBXB(F,F)-F (3-23) 3%
3-HBB(F,F)XB(F,F)-F (3-24) 7%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-28) 2%
5-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-28) 6%
この組成物に化合物(1-1)を0.4質量%の割合で添加した。
NI=103.5℃;Tc<-20℃;Δn=0.113;Δε=3.5;Vth=2.52V;γ1=63.0mPa・s;VHR-3=91.7%.
【0176】
[実施例13]
3-HH-V (2-1) 34%
3-HH-V1 (2-1) 4%
V-HHB-1 (2-5) 8%
3-HHB-O1 (2-5) 3%
2-BB(F)B-3 (2-8) 3%
1-BB(F)B-2V (2-8) 4%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 11%
3-GB(F)B(F,F)-F (3-12) 10%
3-GB(F,F)XB(F,F)-F (3-14) 10%
3-GB(F)B(F)B(F)-F (3-21) 3%
4-GBB(F)B(F,F)-F (3-22) 2%
2-HBB(2F,3F)-O2 (4-14) 2%
3-HBB(2F,3F)-O2 (4-14) 6%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=80.7℃;Tc<-20℃;Δn=0.102;Δε=6.5;Vth=1.59V;η=14.2mPa・s;γ1=60.0mPa・s;VHR-3=70.0%.
【0177】
[実施例14]
3-HH-V (2-1) 34%
3-HHB-O1 (2-5) 3%
3-HHB-3 (2-5) 1%
V-HHB-1 (2-5) 12%
V2-HHB-1 (2-5) 14%
1-BB(F)B-2V (2-8) 2%
2-BB(F)B-2V (2-8) 5%
3-BB(F)B-2V (2-8) 4%
3-HHXB(F,F)-F (3-4) 1%
3-GB(F)B(F)-F (3-11) 8%
3-GB(F)B(F,F)-F (3-12) 8%
3-GB(F,F)XB(F,F)-F (3-14) 7%
3-GBB(F)B(F,F)-F (3-22) 1%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=89.4℃;Tc<-20℃;Δn=0.105;Δε=4.9;Vth=1.91V;η=13.7mPa・s;γ1=63.0mPa・s;VHR-3=70.4%.
【0178】
[実施例15]
3-HH-V (2-1) 34.5%
3-HH-V1 (2-1) 8%
3-HHB-1 (2-5) 3%
V-HHB-1 (2-5) 12%
3-HBB-2 (2-6) 4%
V-HBB-2 (2-6) 5%
1-BB(F)B-2V (2-8) 4%
2-BB(F)B-2V (2-8) 4%
3-BB(F)B(F,F)-F (3-15) 5%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 7%
4-GB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-27) 3.5%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 7%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=84.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.119;Δε=5.3;Vth=1.93V;η=12.1mPa・s;γ1=49.0mPa・s;VHR-3=70.4%.
【0179】
[実施例16]
3-HH-V (2-1) 34%
3-HH-V1 (2-1) 5.5%
V-HHB-1 (2-5) 13%
V-HBB-2 (2-6) 5%
2-BB(F)B-3 (2-8) 4%
1-BB(F)B-2V (2-8) 4%
2-BB(F)B-2V (2-8) 5%
3-BB(F)B-2V (2-8) 4%
3-BB(F)B(F,F)-CF3 (3-16) 3%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 8.5%
3-HBB(F,F)XB(F,F)-F (3-24) 4%
3-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 3%
4-BB(F)B(F,F)XB(F,F)-F (3-29) 4%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (3-30) 3%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=84.9℃;Tc<-20℃;Δn=0.130;Δε=5.2;Vth=2.06V;η=13.6mPa・s;γ1=55.0mPa・s;VHR-3=85.2%.
【0180】
[実施例17]
3-HH-V (2-1) 48%
V2-BB-1 (2-3) 4%
1-BB(F)B-2V (2-8) 7%
2-BB(F)B-2V (2-8) 10%
3-BB(F)B-2V (2-8) 12%
3-BB(F)B(F,F)-CF3 (3-16) 4%
3-BB(F,F)XB(F,F)-F (3-18) 13%
3-BB(F,F)XB(F)B(F,F)-F (3-30) 2%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
Tc<-20℃;Δn=0.130;Δε=3.6;Vth=2.15V;η=12.0mPa・s;γ1=33.0mPa・s;VHR-3=70.5%.
【0181】
[実施例18]
3-HH-V (2-1) 20%
V-HBB-2 (2-6) 11%
3-HBB-2 (2-6) 14%
3-HB(2F,3F)-O2 (4-1) 13%
5-HB(2F,3F)-O2 (4-1) 13%
3-H2B(2F,3F)-O2 (4-2) 9%
V-HHB(2F,3F)-O1 (4-8) 4%
V-HHB(2F,3F)-O2 (4-8) 10%
3-HHB(2F,3F)-O2 (4-8) 6%
この組成物に化合物(1-1)を0.5質量%の割合で添加した。
NI=73.8℃;Tc<-20℃;Δn=0.103;Δε=-2.9;Vth=2.26V;η=16.7mPa・s;γ1=94.0mPa・s;VHR-3=76.8%.
【0182】
比較例1および比較例2の組成物の紫外線照射後の電圧保持率(VHR-3)は35.5%および40.9%であった。一方、実施例1および実施例2の組成物のVHR-3は87.8%および78.1%であった。このように、実施例の組成物は、比較例の組成物と比べて、大きなVHR-3を有した。したがって、本発明の液晶組成物は優れた特性を有すると結論される。
【産業上の利用可能性】
【0183】
本発明の液晶組成物は、液晶モニター、液晶テレビなどに用いることができる。