(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】緑液処理方法、緑液処理管理システム
(51)【国際特許分類】
D21C 11/04 20060101AFI20220511BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20220511BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
D21C11/04 C
B01D21/01 A
B01D21/30 A
B01D21/01 106
B01D21/01 107A
B01D21/01 107B
(21)【出願番号】P 2020114974
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2021-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【氏名又は名称】井上 美和子
(74)【代理人】
【識別番号】100130683
【氏名又は名称】松田 政広
(72)【発明者】
【氏名】駿河 圭二
(72)【発明者】
【氏名】柏木 聡
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 康広
【審査官】川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-200821(JP,A)
【文献】特開2004-026639(JP,A)
【文献】特開2004-238232(JP,A)
【文献】特開2011-213528(JP,A)
【文献】特開2010-181150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21C 11/04
B01D 21/01
B01D 21/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
清澄緑液の液面から距離を空けて当該液面の上方に配置されているRGBカラーセンサ装置(当該RGBカラーセンサ装置は、清澄緑液を透過した発光体からの光を、清澄緑液を挟むように、発光体に対向して置かれた反射板で反射して、この反射光を、当該清澄緑液中に再度透過させた後、当該発光体側にある受光体で受光する構成を含まない。)にて、緑液清澄化装置の下流の清澄緑液の色調を監視し、
当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する、緑液処理方法。
【請求項2】
前記清澄緑液の色調は、清澄緑液の色調を測定して取得された清澄緑液の色調データである、請求項1に記載の緑液処理方法。
【請求項3】
前記清澄緑液の色調に基づき、当該清澄緑液の色調が赤色系統にある場合には粗緑液に対する薬剤注入量を増量させ、及び/又は、当該清澄緑液の色調が緑色系統にある場合には粗緑液に対する薬剤注入量を減量させて、粗緑液に対して適正薬剤注入量になるようにフィードバック制御する、請求項1又は2に記載の緑液処理方法。
【請求項4】
前記色調データが、L
*a
*b
*表色系の色調データa
*値である、請求項2又は3に記載の緑液処理方法。
【請求項5】
前記RGBカラーセンサ装置にて測定された清澄緑液の色調から清澄緑液のRGB表色系色調データを取得し、当該RGB表色系色調データをL
*a
*b
*表色系色調データに変換し、当該L
*a
*b
*表色系色調データのa
*値に基づき、粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する、請求項1に記載の緑液処理方法。
【請求項6】
前記清澄緑液の色調からのa
*値に基づき、当該清澄緑液の色調がa
*
値>0にある場合には粗緑液に対する薬剤注入量を増量させ、及び/又は、当該清澄緑液の色調が
a
*
値>0にない場合には粗緑液に対する薬剤注入量を減量させて、粗緑液に対して適正薬剤注入量になるようにフィードバック制御する、請求項4又は5に記載の緑液処理方法。
【請求項7】
さらにスラッジ濃度データを加えて、前記清澄緑液の色調からのa
*値のデータと、当該スラッジ濃度データとに基づき、粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する、請求項4~6のいずれか一項に記載の緑液処理方法。
【請求項8】
清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する制御部を備え、
当該制御部は、請求項1~7のいずれか一項に記載の緑液処理方法を実行する、緑液処理管理装置。
【請求項9】
清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する制御部を備え、
当該制御部は、請求項1~7のいずれか一項に記載の緑液処理方法を実行する、緑液処理管理装置を備える緑液処理管理システム。
【請求項10】
(a)前記請求項1~7のいずれか一項に記載の緑液処理方法を用いる緑液処理工程、を含む、又は、
(b)前記請求項1~7のいずれか一項に記載の緑液処理方法を用いる緑液処理工程と、当該緑液処理工程にて清澄化処理された緑液を用いる消和・苛性化工程と、を含む、
パルプ製造における苛性ソーダ及び/又は炭酸カルシウムのリサイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緑液処理方法、緑液処理管理システム、苛性化の生産性向上方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
パルプは、木材チップに水酸化ナトリウム(以下、「苛性ソーダ」ともいう)を含む蒸解処理用水を加え蒸解することにより製造され、この蒸解処理用水として白液が用いられている。そして、蒸解工程でチップをアルカリ(白液)で蒸煮してパルプを得るとともに、パルプ廃液(黒液)から蒸解薬剤と熱エネルギーの回収を行っている。パルプの製造工程では、蒸解工程、パルプ洗浄工程、黒液濃縮工程、黒液燃焼工程、緑液処理工程、白液処理工程、消和反応工程、苛性化反応工程、石灰焼成工程などから薬剤の回収が行われ、回収された薬剤を再利用している。
【0003】
黒液を燃焼して発生するスメルトには、未燃焼カーボン、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化鉄、二酸化ケイ素などの不溶性不純物(ドレッグス)が含まれている。さらに、木材チップには、この不溶性不純物のもととなる、カルシウム塩、バリウム塩、リン酸塩やセルロースやリグニンなどが豊富に含まれており、不溶性不純物が生じやすい。
このドレッグスと呼ばれる不溶性不純物は、白液処理工程における炭酸カルシウムの品質などに悪影響を及ぼす。炭酸カルシウムから酸化カルシウムが生成され、この酸化カルシウムを用いて消和反応工程及び苛性化反応工程を行い白液が製造されているため、より良好な品質の炭酸カルシウムが求められている。このため、緑液処理工程では、粗緑液からドレッグスをできるだけ除去し、より良好に清澄化された清澄緑液を製造することが重要である。
【0004】
例えば、特許文献1では、撹拌中の未清澄の緑液に、緑液を完全に苛性化するのに必要な生石灰量の0.5~10%、好ましくは1~5%の生石灰を添加し、その後、固形粒子が緑液から除去されることを特徴とする、緑液の清澄方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、緑液処理において、清澄緑液に含まれるSS(suspended solid;懸濁物質又は浮遊物質)の値や濁度を清澄化の指標として測定することで、緑液クラリファイアなどの緑液清澄化装置での緑液の処理状況をみている。
【0007】
しかしながら、SS値又は濁度を測定するために採取される清澄緑液は、90℃前後程度の高温及びpH13程度の強アルカリであるため、取り扱いに注意が必要である。
SS値は、清澄緑液を採取し、採取した清澄緑液を濾過し乾燥した後の乾燥重量をSS値としている。このように、SS値の測定は、清澄緑液の取り扱いに注意が必要な上に、作業工程も多く、専ら手分析のため、SS値の測定を迅速化することは難しく、SS値の測定回数は例えば1日あたり3回などと少なくなる。このようにSS値では、迅速な測定結果ではなく、測定回数も少なくなるため、現状の緑液処理状況を即時把握できず、清澄緑液中の不純物の増加のような異常を発見することが遅れる傾向にあった。
【0008】
また、濁度は、溶液中に分散している微細な粒子に起因する濁りの程度を光量的に測定して得ている。この濁度は、清澄緑液の溶液色によっても値が変わるため、緑液処理工程における清澄化の不良を正確に把握できないことがあるという知見を本発明者らは得ている。
さらに、本発明者らは、パルプ製造系において不純物が増加した際、特に長期定期修理明けに配管の腐食からくる金属の不純物の増加や木材種による不純物の増加の際には、清澄緑液に色の変化を起こし易いという知見を、得ている。
清澄緑液の色の変化は濁度では捉えきれず、清澄緑液の清澄化の不良を正確に把握できないため、緑液処理系の後工程である白液の品質、炭酸カルシウムの品質に悪い影響を与えることが多いという知見も本発明者らは得ている。
【0009】
このように、SS値及び濁度などを得る従来の測定方法では、清澄緑液の測定の迅速化が難しく、かつ現状の緑液の清澄化処理の正確な把握が難しく、粗緑液に対する適正な薬剤注入量にすることが難しい。このため、従来の測定方法では、緑液処理の操業管理を容易に行うことは困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、緑液処理の操業管理を容易に行うことができる技術を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、清澄緑液の色調変化に基づくことで、より適正な粗緑液に対する薬剤注入量をより迅速にフィードバック制御できることを見出し、以下のように本発明を完成させた。
【0012】
本発明は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する、緑液処理方法を提供するものである。
本発明は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する制御部を備える、緑液処理管理装置、又は当該装置を備える緑液処理管理システムを提供するものである。
本発明は、前記緑液処理方法によって清澄化処理された清澄緑液を用いる、苛性化の生産性を向上する方法を提供するものである。
本発明は、(a)前記緑液処理方法を用いる緑液処理工程、を含む、又は、 (b)前記緑液処理方法を用いる緑液処理工程と、当該緑液処理工程にて清澄化処理された緑液を用いる消和・苛性化工程と、を含む、パルプ製造における苛性ソーダ及び/又は炭酸カルシウムのリサイクルシステムを提供するものである。
【0013】
前記緑液の色調は、清澄緑液の色調を測定して取得された清澄緑液の色調データであってもよい。
前記清澄緑液の色調に基づき、当該緑液の色調が赤色系統にある場合には粗緑液に対する薬剤注入量を増量させ、及び/又は、当該清澄緑液の色調が緑色系統にある場合には粗緑液に対する薬剤注入量を減量させて、粗緑液に対して適正薬剤注入量になるようにフィードバック制御してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、緑液処理の操業管理を容易に行うことができる技術を提供することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。なお、数値における上限値と下限値は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る緑液製造系を備えたパルプ製造系の概略構成図であるが、本発明はこれに限定されない。
【
図2】本発明の一実施形態に関する緑液処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態に関する緑液処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に関する緑液処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の一実施形態に関する緑液処理方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が限定されて解釈されることはない。なお、数値における上限値と下限値は、所望により、任意に組み合わせることができる。
【0017】
本発明に係る緑液処理に関する一実施形態として、
図1などを参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0018】
1.本発明に係る緑液処理方法
【0019】
本発明は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する制御工程を含む、緑液処理方法を提供するものである。
本発明に係る緑液処理方法は、パルプ製造系の緑液処理系に適用することができる(例えば、
図1参照)。
【0020】
<1-1.本実施形態に係る緑液処理系>
本発明に係る緑液処理方法が適用される緑液処理系の概要について、以下に簡単に説明するが、本発明はこれに限定されず、様々な緑液処理系に適用することができる。
例えば、
図1を参照すると、緑液処理系は、上流から順に、溶解タンクと、粗緑液タンク(図示せず)と、緑液清澄化装置(好適には緑液クラリファイア)と、清澄緑液タンクと、それぞれを接続する各ライン(例えば、流路、配管など)といった各場所又は各部を備えていてもよい。
緑液清澄化装置として、重力沈降方式の装置、強制ろ過方式の装置などが挙げられるが、これらに特に限定されない。重力沈降方式の代表的な緑液クラリファイアが好ましい。緑液クラリファイアとして、特に限定されないが、例えば、多段クラリファイア、ユニットクラリファイア、貯槽兼用型クラリファイア、沈降濃縮式クラリファイアなどが挙げられ、このうち、貯槽兼用型が好ましい。
【0021】
溶解タンク(ディゾルビングタンク)において、黒液処理系から移送されたスメルトは水に撹拌され、溶解又は分散される。これにより、苛性ソーダに加え炭酸ナトリウムを豊富に含有する緑液(以下、「粗緑液」ともいう)が生成される。溶解タンクには、図示しない送液ポンプが設けられており、粗緑液はこの送液ポンプに吸引され、ラインにて、緑液清澄化装置へと移送される。
【0022】
緑液清澄化装置又はその上流において、粗緑液に緑液処理薬剤(以下、「薬剤」ともいう)を添加し、緑液清澄化装置において、粗緑液と緑液処理薬剤とを混合し固液分離することで、粗緑液に残存する未溶解成分などの不純物を粗緑液から除去する清澄化処理を行っている。この清澄化処理後により、不純物が除去された清澄緑液を得ることができる。このとき、緑液清澄化装置では、不純物を含むスラリー(緑液泥)が生成され蓄積される。このため、一定割合で(一定間隔にて又は一定量に達したとき)、緑液清澄化装置から蓄積されたスラッジを除去するため、引抜きポンプを用いてスラッジの引抜きを適宜行っている。この引き抜いたスラッジについて、スラッジ濃度測定部にて、スラリー1L中のスラッジ濃度(質量%)を測定する。当該スラッジ濃度は、JIS K 0067-1992「化学製品の減量及び残分試験方法」に基づいて行うことができる。スラッジを乾燥機を用いて105±2℃加熱乾燥し、乾燥後に重量を求める。
清澄化処理後の清澄緑液は、緑液清澄化装置から、清澄緑液移送ラインにて、清澄緑液タンクに移送されて、清澄緑液タンクにて貯留される。清澄緑液は、やがて、清澄緑液タンクから、ラインにて、苛性化系に移送される。
【0023】
<1-2.本実施形態における緑液処理方法>
本発明の実施形態に係る緑液処理方法は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から薬剤注入量をフィードバック制御することが好適である。
前記清澄緑液の色調は、清澄緑液の色調を測定して取得された清澄緑液の色調データであることが好適である。
【0024】
本発明者らは、後記〔実施例〕に示すように、清澄緑液の色調と清澄緑液の清澄化との関連性、より具体的には、粗緑液に対し薬剤注入量が不足していると清澄緑液の色調が赤色系統になり、さらに薬剤を添加していくことで清澄緑液の色調が緑色系統に変化し、より良好に清澄化された清澄緑液を得ることができることを明らかにした。
【0025】
すなわち、本実施形態は、清澄緑液の色調を監視することで、薬剤注入による現状の緑液の処理状況を、迅速かつ正確に把握することができる。
現状の緑液の処理状況には、清澄緑液の清澄化の現状(具体的には、凝集沈降していない不純物の存在状態)、粗緑液に対する薬剤注入量の現状(具体的には、過剰状態もしくは不足状態、又は適正状態)が含まれる。なお、不純物が凝集沈降できない理由として、薬剤(具体的には凝集剤)注入量が不足すると、不足分の不純物が凝集沈降できないため;薬剤(具体的には凝集剤)注入量が過剰になるとフロックが小さくなりすぎ、凝集沈降速度が低下するため;などがある。薬剤注入量が過剰すぎると、凝集沈降速度が低下することで、固液分離がうまくできずにキャリーオーバーになるリスクが高まる傾向にある。
【0026】
さらに、清澄緑液の色調を監視することで、清澄緑液の清澄化の程度も迅速かつ正確に把握することもできる。また、清澄緑液の色調であれば、清澄緑液に接触させなくとも監視又は測定することも可能である。このように清澄緑液の色調を監視することで、従来のSS値及び濁度を用いる方法と比較し、薬剤注入後の現状の緑液の処理状況を迅速かつ安全に把握できる。
【0027】
さらに、本実施形態では、上述のように、監視する清澄緑液の色調を用いることで現状の緑液の処理状況(具体的には薬剤注入量の現状)を迅速かつ正確に把握することができ、当該緑液の処理状況(具体的には薬剤注入量の現状)に基づき、現状の粗緑液に対して添加する薬剤の注入量(より具体的には、増加、減少、又は維持)を判定し、この判定した注入量の薬剤を粗緑液に対し添加するように制御することができる。これにより、清澄緑液が、迅速かつ正確により良好に清澄化しやすい。これにより、薬剤注入量がより適正化されるため、薬剤コストの低減も行うことができる。
【0028】
さらに、本実施形態は、清澄緑液の色調を測定して取得された清澄緑液の色調データに基づき、薬剤注入量の増加、維持又は減少を、フィードバック制御することが好適であり、これにより、清澄緑液を得る際に、粗緑液に対する薬剤注入量が、過剰又は不足にならず、適正になるように制御することができる。
【0029】
従来、緑液処理を行う現場ごとに、緑液処理系における処理規模、緑液処理系に求める清澄化処理能力、経時的な粗緑液中の不純物濃度の変化などが異なっている。例えば、緑液処理系では、連続的に又は間欠的にスメルトなどが溶解タンクに流入してくるため、粗緑液中の不純物濃度は一定ではなく変動しているのが一般的である。加えて従来の手法では清澄緑液を採取するため測定回数及び処理速度に限界があり、薬剤注入量の適正化のための制御が難しい。
【0030】
これに対し、上述のように色調の監視及び判定量の薬剤注入のフィードバック制御することで、本実施形態では、個々の現場にあった適正な薬剤注入量に容易にすることができる。さらに、本実施形態では、上述のように、色調の監視及び判定量の薬剤注入のフィードバック制御を即時に繰り返しできるため、粗緑液中の不純物濃度の変動にも適宜対応することができ、現状の粗緑液に対して適正な薬剤注入量を添加することができる。これにより、迅速かつ正確に清澄化された清澄緑液を得ることができる。このように、本実施形態を用いることで、緑液処理の操業管理を容易に行うことができる。
【0031】
<1-2-1.緑液の色調の監視>
本実施形態の緑液処理方法では、清澄緑液の色調を監視する。これにより、上述のように、薬剤注入による緑液の処理状況を、迅速かつ正確に把握することができる。
【0032】
前記清澄緑液の色調は、特に限定されないが、色の数値化ができる表色系の色調であることが好適である。当該表色系として、混色系又は顕色系のいずれでもよいが、CIE表色系を用いることが好適である。当該CIE表色系として、例えば、RGB系、XYZ表色系、L*a*b*表色系、L*u*v*表色系などが挙げられるが、これらに限定されない。このうち、RGB系、XYZ表色系、及びL*a*b*表色系から選択される1種又は2種以上がより好適である。
【0033】
また、これらCIE表色系は、必要に応じて相互に変換することが可能である。例えば、RGB系色調から、XYZ表色系色調又はL*a*b*表色系色調などに変換可能であり、また、XYZ表色系色調などからL*a*b*表色系色調などにも変換可能であり、その逆の変換も可能である。
このため、本実施形態において、清澄緑液の色調として取得したRGB表色系色調などから、L*a*b*表色系色調などに変換し、変換したL*a*b*表色系色調などにて薬剤注入量をフィードバック制御してもよいし、L*a*b*表色系色調などからRGB表色系色調などに変換し、変換したRGB表色系色調などにて薬剤注入量をフィードバック制御してもよい。
【0034】
前記緑液の色調は、清澄緑液の色調を測定して取得された清澄緑液の色調データであることが好適である。より具体的には、清澄緑液の色調を監視する際に、前記清澄緑液の色調を、後で詳述する色調測定装置によって測定し、この測定値を表色系の色調データとして取得することもできる。色調データを取得後、当該色調データを、制御部に送信してもよいし、内部又は外部の記憶部に記憶させてもよい。なお、色調測定装置は、下記の色調監視場所に適宜設定することができる。
【0035】
前記清澄緑液の色調を、経時的に監視することが好ましく、これにより清澄緑液の色調を経時的に取得することができる。経時的に色調を取得することで、より正確な薬剤注入量をフィードバック制御しやすい。
前記清澄緑液の色調を、連続的、又は間欠的(好適には一定間隔ごと)に監視してもよい。当該「一定間隔」とは、例えば、1~60分間隔や5~20分間隔などであり、一定間隔ごとに監視することで、取得データ量を低減し、制御部の処理速度を向上することができる。
【0036】
前記監視する清澄緑液は、上記<1-1.本実施形態に係る緑液処理系>で述べた緑液清澄化装置及びそれ以降の各場所又はこれら各部のいずれの清澄緑液であってもよい。より具体的には、前記監視する緑液は、緑液清澄化装置、清澄緑液タンク、及びそれぞれをつなぐ各ライン(例えば、流路、配管など)などの緑液処理系各部から選択される1種又は2種以上の緑液であってもよい。
【0037】
前記監視する清澄緑液は、緑液清澄化装置以降の下流がより好ましく、当該緑液清澄化装置以降の下流とは、より具体的には、緑液清澄化装置、当該装置後のライン(清澄緑液移送ライン)、及び清澄緑液タンクである。より好ましくは、緑液清澄化装置及び清澄緑液移送ラインであり、さらに好ましくは、清澄緑液移送ラインである。
さらに、清澄緑液移送ラインのなかでも、緑液清澄化装置から清澄緑液移送ラインに流した後の清澄緑液を監視することが好ましい。当該流した後として、薬剤注入量をフィードバック制御しやすい観点から、好ましくは「流出直後」であり、当該「流出直後」とは、より好適には流出後~2時間程度の間、さらに好適には流出後~1時間程度の間である。
【0038】
上述した緑液処理系の各場所又は各部を、清澄緑液の色調を監視する場所とすることができる。
前記清澄緑液の色調監視場所の数は、特に限定されず、1又は2以上であってもよい。当該色調監視場所を複数にすることで、緑液の処理状況を緑液処理系全体として把握しやすくなるので、より適正な薬剤注入量になるようにフィードバック制御しやすい。
清澄緑液を経時的に監視する場合、同じ場所の清澄緑液を経時的に監視してもよいし、別々の場所の清澄緑液を経時的に監視してもよいが、同じ場所の清澄緑液を経時的に監視することで、清澄緑液の色調変化を監視しやすいので、好ましい。
【0039】
前記清澄緑液を監視する場合、いずれの方向からでも清澄緑液を監視することができるが、上方向から清澄緑液を監視することが好ましい。また、前記清澄緑液を監視する場合、清澄緑液から所定の距離を空けて清澄緑液の色調を監視することが好ましく、当該所定の距離として、例えば0~1000mmであり、より好ましくは30~500mm、さらに好ましくは50~200mmである。また、清澄緑液を監視する場合、緑液処理系の各場所又は各部に、清澄緑液を流入させ、監視するための色調監視用ライン(例えば、バイパスラインなど)を設けることが好ましい。このとき、流入させる清澄緑液は、液面付近(例えば、液面~液面から50cm程度の間)の清澄緑液が好ましい。これにより、清澄緑液を監視しやすく、清澄緑液の温度などを調整しやすい。
【0040】
前記清澄緑液の色調監視場所に、色調測定装置(例えば、カラーセンサなど)又はこれを備える色調監視部を設けることができる。これにより、従来であれば強アルカリ及び高温といった取り扱いにくい清澄緑液を容易に経時的に監視できる。また、当該色調測定装置であれば、清澄緑液に接触させる必要もなく、清澄緑液処理系への設置も容易である。
【0041】
前記監視する清澄緑液のpH及び温度は、特に限定されないが、清澄緑液のpH(20℃)は、好ましくは12以上、より好ましくは13以上であり、清澄緑液の温度は、好ましくは4~50℃程度、より好ましくは10~40℃、さらに好ましくは15~40℃である。
【0042】
<1-2-2.薬剤注入量のフィードバック制御>
本実施形態では、前記清澄緑液の色調から薬剤注入量をフィードバック制御する。これにより、現状の粗緑液に対して、適正な薬剤注入量になるように、より迅速にかつより正確にフィードバック制御することができる。
【0043】
「前記清澄緑液の色調から」とは、「現状の清澄緑液の色調値から」が好ましく、現状の清澄緑液の色調値に基づき、現状の粗緑液に対して添加する薬剤注入量を判定することが好適である。より具体的には、上述のように、現状の清澄緑液の色調値と、基準となる清澄緑液の色調値とを対比することが好適である。「前記清澄緑液の色調」は、上記「1-2-1.」で述べたように、前記清澄緑液の色調データが好適である。
基準となる清澄緑液の色調の値(以下、「清澄緑液色調の基準値」ともいう)としては、例えば、過去に測定した清澄緑液の色調値(以下、「過去の色調値」ともいう)、清澄緑液の色調値(以下、「適正の色調値」ともいう)などが挙げられるが、これらに限定されない。また、当該色調値は、所定の数値の幅を有していてもよい。
【0044】
前記過去の色調値は、清澄緑液処理系内において過去に測定した清澄緑液の色調値であってもよく、より好適には、直近に測定された過去の清澄緑液の色調値である。当該直近とは、1つ又は2つ前に(より好適には1つ前に)測定された過去の色調値であってもよく、現状の測定時から前に60分以内(より好適には、前に5~30分以内)に測定された過去の清澄緑液の色調値であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。さらに、同じ色調監視場所で測定した過去の清澄緑液の色調値と現状の清澄緑液の色調値とを対比することが好ましく、より具体的には、近接する直近の過去の清澄緑液の色調値と現状の清澄緑液の色調値とを対比することがより好ましい。これにより、より迅速にかつより正確に薬剤注入量をフィードバック制御することができる。
【0045】
「適正の色調値」がRGB表色系である場合、当該RGB表色系の色調値は、薄緑色の色調を表すRGB表色系の色調値であることが好適である。R値は赤、G値は緑、B値は青を表し、3者の組合せで考えることもできる。制御を簡単にするためにG値にて管理することが好ましい。当該G値として、好ましくは(G100~255)であり、より好ましくは(G125~255)、さらに好ましくは(G150~255)、よりさらに好ましくは(G200~255)である。当該数値は現場の操業によって変わるものであり、必ずしも限定するものではない。現場に合わせた適正範囲内にすることにより、より良好に清澄化された清澄緑液を得るとともに、より良好に薬剤注入量の適正化を図ることができる。
【0046】
「適正の色調値」がL*a*b*表色系である場合、当該L*a*b*表色系の色調値は、薄緑色の色調を表すL*a*b*表色系の色調値であることが好適である。L*値は明度、a*値は高いと赤色、低いと緑色、b*値は高いと黄色、低いと青色を表し、3者の組合せで考えることもできる。制御を簡単にするためにa*値にて管理することが好ましい。適正値は、現場の操業条件によって変わるものであり、必ずしも限定するものではない。
当該a*値として、好ましくは1.5以下、より好ましくは1.0以下、より好ましくは0以下、さらに好ましくは-0.5以下、より好ましくは-1.0以下、さらに好ましくは-1.5以下である。当該数値範囲内にすることにより、より良好に清澄化された清澄緑液を得るとともに、より良好に薬剤注入量の適正化を図ることができる。
【0047】
薬剤を添加する場所として、好ましくは、緑液清澄化装置(好適には緑液クラリファイア)、及び/又はその上流であり、より好ましくはその上流にある移送ライン、さらに好ましくは溶解タンクからの粗緑液を移送するライン(以下、「粗緑液移送ライン」ともいう)である。さらに、粗緑液移送ライン上に、粗緑液を貯留するための粗緑液タンクを配置してもよく、この場合、薬剤を添加する場所として、粗緑液タンクから緑液清澄化装置までの間の粗緑液移送ラインがより好ましい。
本実施形態において、薬剤を粗緑液に添加した後、緑液清澄化装置において粗緑液を処理することで、粗緑液から不純物(例えば、不溶性不純物、金属不純物など)を除去でき、粗緑液の清澄化を促進することができる。
薬剤を添加する場所の数は、特に限定されないが、単数又は複数のいずれでもよく、1又は2以上であってもよい。
【0048】
本実施形態における薬剤注入に用いる薬剤は、粗緑液を清澄化させる目的で使用できる薬剤(緑液処理剤)であれば、特に限定されず、同一又は異なる種類の薬剤を使用してもよい。緑液処理剤として、一般的に、緑液中のドレッグス及び/又は不溶性金属を凝集することができる高分子重合体が、使用されている。緑液処理剤として、市販されている高分子凝集剤を用いることが、コスト低減及び品質性安定の観点から、好適である。
【0049】
高分子重合体として、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、両性系のいずれでもよい。このうち、カチオン系及び/又はアニオン系の高分子重合体が好適に用いられている。高分子重合体は、公知の製造方法にて得たものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。当該高分子重合体を、高分子凝集剤に含有させて、緑液処理剤として使用することができる。
【0050】
高分子重合体の粘度平均分子量は、特に限定されないが、1万~6,000万程度が好ましく、2万~4,000万程度がより好ましく、3万~2,000万程度がさらに好ましい。
なお、本実施形態に用いる高分子の粘度平均分子量は、JIS K 7367-1:2002 「プラスチック─毛細管形粘度計を用いたポリマー希釈溶液の粘度の求め方─第 1 部:通則」に基づいて得られたポリマーの固有粘度を使い、求めることができる。(高分子凝集剤:高分子系を中心とした沈澱凝集剤,大森英三,高分子刊行会,1973年)。
【0051】
カチオン系凝集剤として用いられるカチオン系高分子重合体として、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンイミン、エチレンジアミンエピクロルヒドリン重縮合物、ポリアルキレンポリアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロリドやジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの四級アンモニウム塩を構成モノマーとする重合体などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
【0052】
アニオン系凝集剤として用いられるアニオン系高分子重合体として、特に限定されないが、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリルアミドとの共重合体、(メタ)アクリルアミド・2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体、及びそれらのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム、カリウムなど)などが挙げられ、アクリルアミド系、及びこれらの共重合体などが挙げられ、これらから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
アニオン系高分子重合体の粘度平均分子量は、5万~3,000万程度が好ましく、50万~2,000万程度がより好ましい。カチオン系高分子重合体にアニオン系凝集剤を併用することで、凝集物の沈降性がさらに改善される点で有利である。
【0053】
本実施形態では、清澄緑液の色調に基づき、現状の粗緑液に対して添加する薬剤注入量(例えば、粗緑液1L当たりの薬剤の質量(mg))を判定することができる。色調の監視及び判定量の薬剤注入をフィードバック制御することにより、粗緑液に対してより適正な薬剤注入量になるように調整することができる。これにより、本実施形態では、最終的に、清澄緑液の色調に基づき、粗緑液に対して添加する期間(例えば、1年間、1月間、1週間、1日間など)当たりの薬剤の合計使用量を、従来の合計使用量よりも低減することができる。
【0054】
なお、本実施形態における薬剤注入量の上限値及び下限値は、薬剤ごとに適宜決定することができ、特に限定されないが、例えば、一般的な緑液処理系における薬剤注入量の上限値及び下限値を参考にすることができる。一般的な緑液処理系での薬剤注入量は、粗緑液1L当たり、薬剤0.1~50mg程度である。アニオン系高分子凝集剤の添加量は、一般的に、粗緑液1L当たり、0.1~20mgが好適である。カチオン系高分子凝集剤の添加量は、一般的に、粗緑液1L当たり、0.5~40mgが好適である。
【0055】
本実施形態のフィードバック制御の一例を、以下に説明するがこれに限定されない。
本実施形態のフィードバック制御は、前記清澄緑液の色調に基づき、当該清澄緑液の色調が赤色系統にある場合には粗緑液に対する薬剤注入量を増量させ、及び/又は、当該清澄緑液の色調が緑色系統にある場合には粗緑液に対する薬剤注入量を減量させて、粗緑液に対して適正な薬剤注入量になるようにすることが好適である。
【0056】
より好適な本実施形態のフィードバック制御は、現状の清澄緑液の色調値を、基準となる清澄緑液の色調値と比較して、粗緑液に対して添加する薬剤注入量を判定し、その判定した薬剤注入量を粗緑液に対して添加することである。さらに、現状の清澄緑液の色調値の監視及び粗緑液に対して添加した薬剤注入量を経時的にフィードバック制御することで、粗緑液に対する薬剤注入量がより適正化していくので、好適である。
これにより、緑液処理系の薬剤の使用コストをより抑制し、粗緑液をより迅速にかつより正確に清澄化できる。これにより、緑液処理の操業管理をより容易に行うことができる。
【0057】
好適な具体例として、例えば、
図2~4に示すように、(a)現状の清澄緑液が赤色系統の色調値の範囲内である場合には、現状の薬剤注入量が、現状の粗緑液処理において、不足であると判定する。この判定結果により、現状の薬剤注入量よりも粗緑液に対する薬剤注入量を増量するように、薬剤を粗緑液に添加する。(b)現状の清澄緑液が緑色系統の色調値の範囲内である場合には、現状の薬剤注入量が、現状の緑液処理において、過剰であると判定する。この判定結果により、現状の薬剤注入量よりも粗緑液に対する薬剤注入量を減量するように、薬剤を緑液に添加する。(c)現状の清澄緑液が所定の色調値の範囲内である場合には、現状の薬剤注入量が適正であると判定し、現状の緑液処理において、粗緑液に対する現状の薬剤注入量を維持する。
これら(a)~(c)により、過剰又は不足をより抑制することができ、緑液処理系の薬剤の使用コストをより抑制し、粗緑液をより迅速にかつより正確に清澄化処理できる。これにより、緑液処理の操業管理をより容易に行うことができる。
【0058】
より好適な具体例として、例えば、
図2~5に示すように、(a1)前記(a)において、現状の清澄緑液が赤色系統の色調値の範囲内である場合(YES)であって、緑液クラリファイアからの排泥である引抜きスラッジ濃度が所定値以内(より好適には1~15質量%)である場合(YES)、現状の緑液クラリファイアの凝集による固液分離はできていると判定し、さらに不純物の除去を促進する薬剤の注入量を増加する。この判定結果に従って、粗緑液に対する薬剤注入量の増加を行う。一方で、スラッジ濃度が所定値からはずれた場合(より好適には1~15質量%でない場合)(NO)、現状の緑液クラリファイアの凝集による固液分離はできていないと判定する。この場合は、凝集に良い、又は、悪い影響を及ぼす可能性のある、不純物の除去を促進する薬剤の注入量は維持する。
【0059】
より好適には、(b1)前記(b)において、現状の緑液が緑色系統の色調値の範囲内である場合(YES)であって、緑液クラリファイアからの排泥である引抜きスラッジ濃度が所定値以内(より好適には1~15質量%)でない場合(NO)、現状の緑液クラリファイアの凝集による固液分離はできていないと判定する。この場合は、凝集に良い、又は、悪い影響を及ぼす可能性のある、不純物の除去を促進する薬剤の注入量は維持する。一方、スラッジ濃度が所定値以内(より好適には1~15質量%)である場合(YES)、現状の緑液クラリファイアの凝集による固液分離はできていると判定する。この場合は、凝集に良い、又は、悪い影響を及ぼす可能性のある、不純物の除去を促進する薬剤の注入量を減少する。この判定結果に従って、粗緑液に対する薬剤注入量の減量を行う。
【0060】
より好適には、(c1)前記(a)において現状の緑液が赤色系統の色調値の範囲内でない場合(NO)である場合、かつ、前記(b)において現状の清澄緑液が緑色系統の色調値の範囲内でない場合(NO)である場合、現状の薬剤注入量が適正であると判定し、現状の薬剤注入量を維持する。この判定結果に従って、粗緑液に対する薬剤注入量の維持を行う。
【0061】
これら(a1)~(c1)により、薬剤注入量の過剰又は不足を、より抑制することができ、緑液処理系の薬剤の使用コストをより抑制し、粗緑液をより迅速にかつより正確に清澄化処理できる。これにより、緑液処理の操業管理をより容易に行うことができる。
なお、上記(a1)~(c1)におけるドレッグス濃度は、入力部から操作者が入力して、制御部に送信してもよいし、予め記憶部に記憶されていたドレッグス濃度が、制御部に送信されてもよい。
【0062】
なお、本実施形態において、「基準となる清澄緑液の色調値」と「粗緑液に対する薬剤注入量」(例えば、薬剤の種類及び好適な注入量)とを紐づけて管理することが好適である。これにより、「基準となる清澄緑液の色調値」から、好適な「粗緑液に対する薬剤注入量」を取得し、これを緑液処理に利用することも可能である。
【0063】
<1-3.本実施形態における緑液処理方法の例>
本実施形態における緑液処理方法の例の説明において、上述した「1-1.」「1-2.」と重複する、粗緑液、清澄緑液、清澄緑液の色調、色調監視場所、色調値、薬剤、フィードバック制御などの各構成や各処理方法などの説明については適宜省略するが、当該「1-1.」及び「1-2.」の説明が、本実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。また、本実施形態における緑液処理方法の例の説明において、後述する「2.」~「5.」の説明を、本実施形態に当てはめることができ、適宜採用することもできる。
【0064】
本実施形態における緑液処理方法は、前記清澄緑液の色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する制御工程を少なくとも含むものである。
さらに好適には、前記清澄緑液の色調を監視及び/又は測定する色調監視工程をさらに含むことである。当該色調監視工程において、より好適には、清澄緑液の色調を測定して色調データを取得することである。
【0065】
本実施形態における制御工程において、制御部が、清澄緑液の色調に基づき粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御することができる。さらに具体的には、制御部は、色調監視部からの清澄緑液の色調データに基づき、清澄緑液の色調を監視することができ、必要に応じて色調監視部に清澄緑液の色調の測定を指示することができる。制御部は、当該清澄緑液の色調データに基づき、薬剤注入部に対して、粗緑液に添加する所定の薬剤注入量を指示することができる。制御部は、清澄緑液の色調データに加えて、スラッジ濃度測定部からのスラッジ濃度データに基づき、薬剤注入部に対して、粗緑液に添加する所定の薬剤注入量を指示することができる。さらに、色調監視部は、所定の薬剤注入量を粗緑液に添加した緑液の処理状況を、清澄緑液の色調(色調データ)として、測定し、当該清澄緑液の色調(色調データ)を制御部に送信することができる。制御部は、色調の監視及び判定量の薬剤注入をフィードバック制御することができ、経時的に行うことが好適である。
【0066】
上述のように、制御部は、前記清澄緑液の色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御することができる。さらに、制御部は、前記清澄緑液の色調に基づき、薬剤注入量の調整を薬剤注入部に、連続的に又は間欠的(一定間隔ごと)に、フィードバック制御することによって、粗緑液に対して、適正な薬剤注入量にすることができる。
このようにして、制御部は、薬剤注入量の過剰又は不足を、より抑制することができ、緑液処理系の薬剤の使用コストをより抑制し、粗緑液をより迅速にかつより正確に清澄化処理できる。これにより、緑液処理の操業管理をより容易に行うことができる。
【0067】
本実施形態は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する制御工程を含む、緑液処理方法を提供することもできる。
本実施形態は、前記制御工程に、さらに、前記清澄緑液の色調を測定する色調監視工程、及び/又は、粗緑液に薬剤注入を行う薬剤注入工程、を含む緑液処理方法を提供することが好適である。
より好適な本実施形態は、
清澄緑液の色調を監視及び/又は測定すること(色調監視工程)、
粗緑液に薬剤を注入すること(薬剤注入工程)、及び、
前記清澄緑液の色調を監視及び/又は測定し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバックして、粗緑液に薬剤を注入することを制御すること(制御工程)、を含むことである。
【0068】
さらに、より好適な本実施形態は、さらに、緑液清澄化装置から引き抜いたスラッジ濃度を測定する工程、を含む、緑液処理方法を提供することである。
より好適な本実施形態は、
清澄緑液の色調を監視及び/又は測定すること(色調監視工程)、
緑液清澄化装置から引き抜いたスラッジ濃度を測定すること(スラッジ濃度測定工程)、
粗緑液に薬剤を注入すること(薬剤注入工程)、及び、
清澄緑液の色調を監視及び/又は測定するとともに、前記引抜いたスラッジ濃度を監視及び/又は測定し、当該清澄緑液の色調及び当該スラッジ濃度に基づき粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバックして、粗緑液に薬剤を注入することを制御すること(制御工程)、を含むことである。
【0069】
<1-4.本実施形態における緑液処理の例>
本実施形態における緑液処理の手順などについて、
図2~5を参照して、より詳細に説明するが、本実施形態における緑液処理方法は、これらに限定されない。当該緑液処理の手順の説明は、本実施形態の緑液処理方法、緑液処理管理装置、及び緑液処理系の動作などの説明ともすることができる。
【0070】
<1-4-1.本実施形態におけるフィードバック制御の例1>
本実施形態の例1について、
図2を参照して説明する。
ステップ101において、フィードバック制御が開始される。
ステップ102において、制御部は、色調監視部又は記憶部から、清澄緑液の色調データを取得する。このとき、色調監視部は、色調測定部にて測定された、測定時の清澄緑
液の色調データを、制御部に送信する。
なお、制御部が、清澄緑液の色調の監視及び/又は測定するように、色調監視部に指示をしてもよい。色調監視部は、清澄緑液移送ラインから測定容器に流入させた清澄緑液を非接触にて上方向から、監視及び/又は測定することが好適である。色調監視部は、測定された色調データを記憶部に記憶させてもよく、この場合、測定された色調データは、記憶部から制御部に送信してもよい。
【0071】
ステップ103において、制御部は、測定時の清澄緑液の色調データに基づき、粗緑液に対する薬剤注入量をより適正になるように調整する。より具体的には、制御部は、当該清澄緑液の色調データを、基準となる清澄緑液の色調の値(清澄緑液色調の基準値)データと比較し、より適正な薬剤注入量を判定する。当該清澄緑液色調の基準値を、予め記憶部に記憶させておき、記憶部から制御部に送信してもよい。
制御部は、当該判定に基づき、薬剤注入部に対し、粗緑液に対する薬剤注入量を指示する。これにより、薬剤注入部は、薬剤タンクから、薬剤ポンプを用いて、緑液処理系(好適には粗緑液移送ライン)の粗緑液に、薬剤を添加する。このとき、薬剤注入部は、薬剤ポンプの動作を調整して、粗緑液1L当たりの薬剤注入量を、測定時の薬剤注入量よりも増加又は減少させる、又は、測定時の薬剤注入量を維持する。
【0072】
ステップ104において、制御部は、粗緑液に対する薬剤注入量の調整を行った後に、調整後の清澄緑液の色調を測定するか否かを指示する。測定する場合には、ステップ102に戻り、引き続きフィードバック制御を行う。測定をしない場合には、フィードバック制御工程を終了する。操作者は、「引き続きフィードバック制御を行う」ために、予め「測定する」を設定しておくことが好ましく、予め「測定する」を設定する場合、操作者は、適宜「終了」としてもよいし、予め終了時期などを設定しておいてもよい。
【0073】
<1-4-2.本実施形態におけるフィードバック制御の例2>
本実施形態の例2について、
図3を参照して説明する。上述した、本実施形態におけるフィードバック制御の例1と重複する部分については適宜省略する。
ステップ201において、フィードバック制御が開始される。
ステップ202において、制御部は、色調監視部又は記憶部から、清澄緑液の色調データを取得する。ステップ202において、ステップ102と重複する制御部及び色調監視部などの説明については、省略する。
【0074】
ステップ203において、制御部は、測定時の清澄緑液の色調データに基づき、測定時の清澄緑液の色調が、過去の清澄緑液の色調と比較し、赤色系統になったか否か(YES or NO)を判定する。
赤色系統になった場合(YES)には、ステップ204に移行し、赤色系統にならなかった場合(NO)には、ステップ206に移行する。
【0075】
ステップ204において、制御部は、赤色系統の判定(YES)に基づき、薬剤注入部に対し、測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液に対する薬剤注入量を増加させるように指示する。これにより、薬剤注入部は、薬剤ポンプの動作を調整して、測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液1L当たりの薬剤注入量を増加させる。
【0076】
ステップ205において、制御部は、赤色系統の判定(NO)に基づき、薬剤注入部に対し、測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液に対する薬剤注入量を減少させるように指示する。これにより、薬剤注入部は、薬剤ポンプの動作を調整して、測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液1L当たりの薬剤注入量を減少させる。
なお、図示しないが、制御部は、色調が赤色系統にならず、色調が「適正の色調値」になっている場合には、測定時の薬剤注入量を維持するように、薬剤注入部に指示することができる。
【0077】
ステップ206において、制御部は、薬剤注入量の調整を行った後に、調整後の清澄緑液の色調を測定するか否かを指示する。測定する場合には、ステップ202に戻り、引き続きフィードバック制御を行う。測定をしない場合には、フィードバック制御工程を終了する。操作者は、「引き続きフィードバック制御を行う」ために、予め「測定する」を設定しておくことが好ましく、予め「測定する」を設定する場合、操作者は、適宜「終了」としてもよいし、予め終了時期などを設定しておいてもよい。
【0078】
<1-4-3.本実施形態におけるフィードバック制御の例3>
本実施形態の例3について、
図4を参照して説明する。上述した、本実施形態におけるフィードバック制御の例1及び2と重複する部分については適宜省略する。
ステップ301において、フィードバック制御が開始される。
ステップ302において、制御部は、色調監視部又は記憶部から、清澄緑液の色調データを取得する。ステップ302において、ステップ102と重複する制御部及び色調監視部などの説明については、省略する。
【0079】
ステップ303において、制御部は、清澄緑液の色調データに基づき、測定時の清澄緑液の色調が、過去の清澄緑液の色調と比較し、緑色系統になったか否か(YES or NO)を判定する。
緑色系統になった場合(YES)には、ステップ304に移行し、緑色系統にならなかった場合(NO)には、ステップ306に移行する。
【0080】
ステップ304において、制御部は、緑色系統の判定(YES)に基づき、薬剤注入部に対し、測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液に対する薬剤注入量を減少させるように指示する。これにより、薬剤注入部は、薬剤ポンプの動作を調整して、測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液1L当たりの薬剤注入量を減少させる。
【0081】
ステップ305において、制御部は、緑色系統の判定(NO)に基づき、薬剤注入部に対し、測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液に対する薬剤注入量を増加させるように指示する。これにより、薬剤注入部は、薬剤ポンプの動作を調整して、測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液1L当たりの薬剤注入量を増加させる。
なお、図示しないが、制御部は、色調が緑色系統になり、色調が「適正の色調値」になっている場合には、測定時の薬剤注入量を維持するように、薬剤注入部に指示することができる。
【0082】
ステップ306において、制御部は、薬剤注入量の調整を行った行後に、調整後の清澄緑液の色調を測定するか否かを指示する。測定する場合には、ステップ302に戻り、引き続きフィードバック制御を行う。測定をしない場合には、フィードバック制御工程を終了する。操作者は、「引き続きフィードバック制御を行う」ために、予め「測定する」を設定しておくことが好ましく、予め「測定する」を設定する場合、操作者は、適宜「終了」としてもよいし、予め終了時期などを設定しておいてもよい。
【0083】
<1-4-4.本実施形態におけるフィードバック制御の例4>
本実施形態の例4について、
図5を参照して説明する。
ステップ401において、フィードバック制御が開始される。
ステップ402において、制御部は、色調監視部から、清澄緑液のRGB表色系色調データを取得する。このとき、色調監視部は、色調測定部にて測定された、測定時の清澄緑
液の色調データ(RGB表色系)を、制御部に送信する。ステップ402において、ステップ102と重複する制御部及び色調監視部などの説明については、省略する。
【0084】
ステップ403において、制御部は、取得した清澄緑液のRGB表色系色調データを、L*a*b*表色系色調データに変換する。
なお、色調監視部が、清澄緑液のRGB表色系色調データを、L*a*b*表色系色調データに変換してもよい。この場合には、制御部は、ステップ402をスキップし、ステップ403において、色調監視部から、L*a*b*表色系色調データを取得するでもよい。
【0085】
ステップ404において、制御部は、清澄緑液のL*a*b*表色系色調データに基づき、a*値が所定値以上(好適には>0)である場合(YES)、ステップ405に移行する。一方で、a
*
値が所定値以上(好適には>0)でない場合(NO)、ステップ407に移行する。
【0086】
ステップ405において、制御部は、スラッジ濃度が所定値以内(好適には1~15質量%)である場合(YES)、現状の緑液クラリファイアの凝集による固液分離はできていると判定し、さらに不純物の除去を促進する薬剤の注入量を増加する。この判定結果に従って、粗緑液に対する薬剤注入量の増加を行う。ステップ406に移行する。一方で、スラッジ濃度が所定値(好適には1~15質量%)でない場合(NO)、現状の緑液クラリファイアの凝集による固液分離はできていないと判定する。この場合は、凝集に良い、または、悪い影響を及ぼす可能性のある、不純物の除去を促進する薬剤の注入量は維持し、ステップ410に移行する。
制御部は、スラッジ濃度測定部又はスラッジ濃度測定値を記憶する記憶部から、スラッジ濃度のデータを取得してもよい。なお、スラッジ濃度測定部は、一定割合でスラッジ濃度を測定し、測定されたスラッジ濃度をデータとして記憶部に記憶させてもよい。
【0087】
ステップ406において、制御部は、ステップ404及び405の判定結果に基づき、薬剤注入部に対し、色調測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液に対する薬剤注入量を増加させるように指示する。これにより、薬剤注入部は、薬剤ポンプの動作を調整して、色調測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液1L当たりの薬剤注入量を増加させる。そして、ステップ410に移行する。
【0088】
ステップ407において、制御部は、清澄緑液のL*a*b*表色系色調データに基づき、a*値が所定値より小(好適にはa
*
値<-20)である場合(YES)、ステップ408に移行する。一方で、a*値が所定値より小(好適にはa
*
値<-20)でない場合(NO)、色調測定時の薬剤注入量が適正であると判定し、色調測定時の薬剤注入量を維持し、ステップ410に移行する。
【0089】
ステップ408において、制御部は、スラッジ濃度が所定値以内(好適には1~15質量%)である場合(YES)、ステップ409に移行する。一方で、スラッジ濃度が所定値以内(好適には1~15質量%)でない場合(NO)、現状の緑液クラリファイアの凝集による固液分離はできていないと判定する。この場合は、凝集に良い、または、悪い影響を及ぼす可能性のある、不純物の除去を促進する薬剤の、色調測定時の薬剤注入量を維持し、ステップ410に移行する。
【0090】
ステップ409において、制御部は、ステップ407及び408の判定結果に基づき、薬剤注入部に対し、色調測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液に対する薬剤注入量を減少させるように指示する。これにより、薬剤注入部は、薬剤ポンプの動作を調整して、色調測定時の薬剤注入量よりも、粗緑液1L当たりの薬剤注入量を減少させる。そして、ステップ410に移行する。
【0091】
ステップ410において、制御部は、薬剤注入量の調整を行った後に、調整後の清澄緑液の色調を測定するか否かを指示する。測定する場合には、ステップ402に戻り、引き続きフィードバック制御を行う。測定をしない場合には、フィードバック制御工程を終了する。操作者は、「引き続きフィードバック制御を行う」ために、予め「測定する」を設定しておくことが好ましく、予め「測定する」を設定する場合、操作者は、適宜「終了」としてもよいし、予め終了時期などを設定しておいてもよい。
【0092】
2.本実施形態における緑液処理管理装置、及び当該緑液処理管理装置を備える緑液処理管理システム、緑液処理系
【0093】
本実施形態における緑液処理管理装置及び当該緑液処理管理装置を備える緑液処理管理システム、緑液処理系の説明において、上述した「1.」と重複する、粗緑液、清澄緑液、清澄緑液の色調、色調監視場所、色調値、薬剤、フィードバック制御などの各構成、各処理方法、各装置などの説明については適宜省略するが、当該「1.」の説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。また、本実施形態における緑液処理方法の例の説明において、後述する「3.」~「5.」の説明を、本実施形態にも当てはめることができ、適宜採用することもできる。
【0094】
<2-1.緑液処理管理装置及び緑液処理管理システム>
本実施形態は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する制御部を備える、緑液処理管理装置又は、当該装置を備える緑液処理管理システムを提供することができる。
【0095】
本実施形態における緑液処理管理装置は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御するような構成を有する制御部を少なくとも備えることが好適である。これにより、緑液処理系における緑液処理状況をより迅速にかつより正確に管理することができる。本実施形態を用いることで、緑液処理の操業管理をより容易に行うことができる。
緑液処理管理装置は、通信部をさらに設けてもよく、当該通信部は、制御部と、これ以外の部及び/又は装置とが、無線及び/又は無線にて送受信できるような構成を有することが好適である。このような通信部を設けることで、ネットワークによる緑液処理管理システムを構築してもよい。
【0096】
緑液処理管理装置は、前記制御部と、清澄緑液の色調を監視及び/又は測定するための色調測定装置(又は「色調測定部」ともいう)とを、備えてもよい。当該色調測定装置は前記色調監視部に備えられていてもよく、前記制御部と、前記色調測定装置を備える色調監視部と、を備える緑液処理管理装置であってもよい。
また、緑液処理管理装置は、後述する、入力部、出力部、記憶部、及び通信部から選択される1種又は2種以上を、適宜備えてもよい。
【0097】
<2-1-1.本実施形態における制御部>
本実施形態における制御部は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御するような構成を有する。
前記制御部は、緑液清澄化装置に添加する薬剤を貯留する薬剤タンクと、この薬剤タンクから粗緑液に薬剤を注入する薬剤注入ポンプと、緑液処理の状態を監視し当該清澄緑液の色調を測定するための色調監視部と、を制御することができる。前記制御部は、薬剤タンク及び薬剤注入ポンプを備える薬剤注入部を制御し、粗緑液に対する薬剤注入量を調整してもよい。
さらに、前記制御部は、緑液清澄化装置からスラリーを引き抜く引抜きポンプと、引抜きスラッジ濃度を測定するスラッジ濃度測定部を制御することができる。
【0098】
さらに、前記制御部と、薬剤タンク、薬剤注入ポンプ、色調監視部、引抜きポンプ、スラッジ濃度測定部などの各部とは、それぞれ、無線及び/又は有線にて送受信可能なような構成を有する通信部を設けてもよく、これによりネットワークによるシステム構築ができ、制御部は、ネットワークを介して各部を制御することができる。
前記制御部は、「1.」(好適には、<1-2-2.薬剤注入量のフィードバック制御>、<1-3.本実施形態における緑液処理方法の例>、<1-4.本実施形態における緑液処理の例>)に従って、緑液処理又は緑液処理管理を実行することができる。
【0099】
<2-1-2.色調監視部>
前記色調監視部は、清澄緑液の色調を測定できる色調測定装置(又は「色調測定部」ともいう)を少なくとも備えることが好ましい。当該色調監視部は、無線及び/又は無線にて、少なくとも制御部と送受信できるような構成を有する通信部を、さらに設けてもよい。
前記色調測定装置の緑液処理系の設置場所は、上述した色調監視場所に設置することができ、例えば、好ましくは清澄緑液移送ラインである。
【0100】
前記色調監視部は、前記色調測定装置の他に、測定容器及び/又は色調監視用ラインをさらに備えてもよい。このような場合、測定容器及び/又は色調監視用ラインに清澄緑液を流入させ、流入した清澄緑液の色調を色調測定装置にて測定してもよい。
【0101】
<2-1-2-1.色調測定装置(色調測定部)>
前記色調測定装置として、例えば、色彩計、分光測色計、色差計などの計測機器を含むことができるが、これらに限定されない。
前記色調測定装置として、色彩の元となる3つの刺激値を直接測定する刺激値直読法による装置(例えば、カラーセンサ装置等);分光反射率(透過率)を測定してそこから計算によってX,Y,Z、L*a*b*などの三刺激値、もしくはその他のインデックスを計算する分光測色計(Spectrophotometer)などが挙げられる。
【0102】
前記色調測定装置として、例えば、カラーセンサ装置、画像センサ装置、色彩計、分光測色計などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明で用いられる色調測定装置は、一般的に用いられている色調測定装置でもよい。
【0103】
前記色調測定装置で示される、清澄緑液の色表現の色調は、特に限定されないが、RGB表色系、XYZ表色系、及びL*a*b*表色系から選択される1種又は2種以上が好ましい。
これら表色系は相互に変換可能であるので、例えば、カラーセンサ装置、画像センサ装置、色彩計、分光測色計などで測定した表色系を、必要とする表色系に変換することができる。より具体的には、色彩計で測定したL*a*b*表色系からXYZ表色系に変換することができる。また、カラーセンサ装置で測定したRGB表色系からL*a*b*表色系に変換することができる。
【0104】
前記で得られる清澄緑液の色調は、RGB表色系及び/又はXYZ表色系が好ましく、より好ましくはXYZ表色系である。カラーセンサ装置又は画像センサ装置を用いることで、得られる赤色、緑色、青色の3色の各値の組み合わせを緑液処理の清澄化の指標として利用することができる。この3色の組み合わせ条件を、粗緑液に対する薬剤注入量の増減の指標として利用することで、より適正な薬剤注入量をフィードバックすることができ、これにより粗緑液をより良好に清澄化することができる。
【0105】
前記カラーセンサ装置は、投光部から光を検出対象物(清澄緑液)に照射し、検出対象物(清澄緑液)によって反射する光を受光部で検出する光センサ装置の一種である
当該カラーセンサ装置(特にRGBカラーセンサ装置)は、赤色、緑色、青色のそれぞれの受光量及び受光量の比率を検知及び計算することができ、検出対象物の色を判別することができる(例えば、受光比率=赤:緑:青=4:4:1など)。
【0106】
また、当該カラーセンサ装置は、XYZ表色系、RGB表色系として、清澄緑液の色調結果を示すことができるが、XYZ表色系から、L*a*b*表色系に変換して示すことができる。
当該カラーセンサ装置は、検出対象物を画像として取り込み解析し、各受光量及び各受光量の比率を計算したり、検出対象物の色を判別してもよい。
【0107】
カラーセンサ装置は、投光部及び受光部を少なくとも備え、当該投光部及び受光部は検出部として配置され、投光部の投光する面と受光部の受光する面は同じ面(投光・受光面)であってもよい。また、投光面及び/又は受光面は、検出対象物の面の上方に、検出対象物の面と略平行に配置されていることが好適である。
投光部は、白色LED(発光ダイオード)、白色蛍光灯などの光源を含み、白色LEDが好ましい。
受光部は、CCD(Charge Coupled Device)、フォトダイオード(例えば、3ch(RGB)Siフォトダイオードなど)などの受光素子を含む。
【0108】
測定距離は、検出対象物と、投光面及び/又は受光面との距離であり、この測定距離は、特に限定されないが、例えば、30~500mmなどが挙げられ、清澄緑液の色調を測定するための測定容器に取り込んだときの清澄緑液の液面から200~500mm程度(より好適には250~400mm)が好ましく、このときの可変スポットは直径9~18mm程度が好ましい。
測定する際の検出対象物(清澄緑液)の温度は、特に限定されないが、一般的な緑液処理系の緑液温度50~95℃が好ましく、清澄緑液の色調を測定するための測定容器に取り込んだときに60~90℃がより好ましく、70~85℃がよりさらに好ましい。
測定する際の周囲照度は、白熱ランプなど人工光の場合には、10,000 lux以下が好ましく、太陽光などの自然光の場合には、20,000 lux以下が好ましい。
なお、測定する際の周囲温度及び周囲湿度は、特に限定されないが、例えば-20~+50℃程度及び35~85% RHであればよく、通常の気候温度内や室温内(4~30℃)で測定することができる。
【0109】
また、カラーセンサ装置は、必要に応じて、外部にデータを送信する通信部、条件などを入力する入力部、アラートや測定結果などをディスプレイなどに表示する出力部、測定条件や測定結果などを記憶する記憶部を備えてもよい。
【0110】
カラーセンサ装置として、例えば、アンプ内蔵型ホワイトスポット光電センサ LR-W500((株)キーエンス社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
画像センサ装置は、カラーセンサ装置に用いられる構成(例えば、投光部、受光部など)を採用することができる。当該画像センサ装置は、検出対象物から得られた画像を解析することによって、カラーセンサ装置と同様に、赤色、緑色、青色のそれぞれの受光量及び受光量の比率を検知及び計算することができ、検出対象物の色を判別することができる。
【0112】
<2-1-2-2.測定容器>
前記測定容器は、清澄緑液の色調を測定するための容器であり、色調測定装置の投光及び反射光が、透過又は通過できる構造又は材質であることが好ましい。当該材質として、ガラス、石英、プラスチック樹脂などが挙げられるが、耐アルカリ性の材質がより好適である。測定容器は、投光及び反射光が、通過できる開口部(孔など)を有していてもよく、上方向に開口していることが好ましい。
【0113】
<2-1-2-3.色調監視用ライン>
前記色調監視用ラインは、上記緑液処理系の色調監視場所に適宜設けることができ、このラインに、監視及び/又は測定する清澄緑液を流してもよい。さらに、当該色調監視用ラインは、流入した清澄緑液が緑液処理系(例えば、同じ場所に)に戻るような、バイパスラインであってもよい。当該色調監視用ライン上に、色調測定装置を設けて、清澄緑液の監視などを行ってもよい。さらに、色調監視用ライン上に前記測定容器を配置し、当該測定容器に清澄緑液を流入させて、測定容器内にて清澄緑液の監視などを行ってもよい。
前記色調監視用ラインを設けることで、清澄緑液及びその量、その速度などを適宜調整して、清澄緑液を監視及び/又は測定しやすい。
【0114】
<2-2.本実施形態における緑液処理管理システム>
本実施形態に係る緑液処理管理システムには、上述した少なくとも制御部を備える緑液処理管理装置が備えられていることが好適である。本実施形態の緑液処理管理システムは、制御部又は当該制御部を備える緑液処理管理装置と、他の部又は他の装置とが、無線及び/又は有線にて、送受信可能な通信部を更に設けてもよい。
【0115】
なお、本実施形態に関する方法を、緑液処理状況などを管理するための装置(例えば、コンピュータ、PLC、サーバ、クラウドサービスなど)におけるCPUなどを含む装置又は制御部によって実現させることも可能である。また、本実施形態に関する方法を、記録媒体(不揮発性メモリ(USBメモリなど)、HDD、CD、DVD、ブルーレイなど)などを備えるハードウェア資源にプログラムとして格納し、制御部によって実現させることも可能である。当該制御部によって、粗緑液に所定量の薬剤を添加するように制御する緑液処理状況の管理システムなど、当該制御部もしくは当該システムを備える装置を提供することも可能である。また、当該管理装置には、キーボードなどの入力部、ネットワークなどの通信部、ディスプレイなどの表示部などを備えてもよい。
【0116】
緑液処理状況などを管理するための装置又は緑液処理の管理システムは、キーボードなどの入力部、ネットワークなどの通信部、ディスプレイなどの出力部、HDDなどの記憶部、上述した色調測定部などを備えることができる。当該装置又はシステムは、入力部、出力部、記憶部を備えることが好ましく、さらに、通信部及び/又は測定部を備えることが好ましい。
前記入力部は、本実施形態の方法を行う操作者によって、ユーザ操作を受け付けることができる。当該入力部は、例えばマウス及び/又はキーボードなどを含むことができる。また、表示装置のディスプレイ面がタッチ操作を受け付ける入力部として構成されてもよい。
前記出力部は、緑液処理状況及びこれに関連する情報(例えば、表、図、説明文など)などを出力することができる。当該出力部は、例えば、画像を表示する表示装置、音を出力するスピーカー、紙などの印刷媒体に印刷する印刷装置などを挙げることができるが、これらに限定されない。
前記記憶部は、操作者が入力したデータ、緑液処理状況をみるために設定されているデータを記憶することができる。当該記憶部は、例えば記録媒体を含んでよい。
【0117】
<2-3.緑液処理系>
本実施形態における緑液処理管理装置及び当該緑液処理管理装置を備える緑液処理管理システムの説明において、上述した「1.」<2-1.><2-2.>と重複する、粗緑液、清澄緑液、清澄緑液の色調、色調監視場所、色調値、薬剤、フィードバック制御などの各構成、各処理方法、各装置などの説明については適宜省略するが、当該「1.」<2-1.><2-2.>の説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。また、本実施形態における緑液処理方法の例の説明において、後述する「3.」~「5.」の説明を、本実施形態にも当てはめることができ、適宜採用することもできる。
【0118】
本実施形態の緑液処理系は、上述した清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する、緑液処理方法を用いることができる。
本実施形態の緑液処理系は、上述した清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御するような構成を有する制御部を少なくとも備える緑液処理管理装置又は緑液処理管理システムを備えることができる。
本実施形態の緑液処理系は、パルプ製造系に適用することができる。
【0119】
図1に示すように、緑液処理管理装置100に備えられている制御部101は、色調監視部102に備えられている色調測定装置(図示せず)に、現状の清澄緑液の色調を監視及び/又は測定させ、当該色調監視部102から、現状の清澄緑液の色調データを取得することができる。制御部101は、当該取得した清澄緑液の色調データの変化に基づき、粗緑液に対する適正な薬剤注入量に調整するように、薬剤34及び薬剤注入ポンプ35を備える薬剤注入部に指示をすることができる。
薬剤移送ラインに薬剤注入部から薬剤が添加された後、緑液クラリファイア32にて緑液処理が行われる。その緑液処理状況を色調監視部102にて監視し、当該色調監視部102から、薬剤添加後の緑液の色調データが制御部101に送信され、制御部101は、薬剤添加後の清澄緑液の色調データを取得する。そして、制御部101は、
図2~5に示すように、色調の監視及び判定量の薬剤注入を繰り返し行うことで、粗緑液に対して適正な薬剤注入量になるようにフィードバック制御を行うことができる。
これにより、緑液処理系の粗緑液に対して適正な薬剤注入量にすることができる。このように、機器測定による清澄緑液の色調に基づき粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御することができ、この制御によって粗緑液に対する適正な薬剤注入量に調整できる。これにより、緑液処理の操業管理を容易に行うことができる。
【0120】
また、制御部101は、引抜きポンプ36に、緑液クラリファイアからドレッグスを含むスラッジを一定割合で引き抜くように指示することができる。さらに制御部101は、引き抜かれたスラッジ濃度の測定値を、スラッジ濃度測定部37から取得してもよいし、当該測定部37から送信され記憶していた記憶部から取得すしてもよい。そして、制御部101は、清澄緑液の色調データ及びスラッジ濃度のデータに基づき、粗緑液に対して適正な薬剤注入量に調整することができる。制御部101は、当該取得した清澄緑液の色調データの変化に基づき、粗緑液に対する適正な薬剤注入量になるように、薬剤34及び薬剤注入ポンプ35を備える薬剤注入部に指示をすることができる。
薬剤移送ラインに薬剤注入部から薬剤が添加された後、緑液クラリファイア32にて緑液処理が行われる。その緑液処理状況を色調監視部102にて監視し、当該色調監視部102から、薬剤添加の清澄緑液の色調データが制御部101に送信され、制御部101は、薬剤添加後の清澄緑液の色調データを取得する。そして、制御部101は、色調の監視及び判定量の薬剤注入を繰り返し行うことで、粗緑液に対する適正な薬剤注入量になるようにフィードバック制御を行うことができる(例えば、
図2~5)。
これにより、緑液処理系の粗緑液に対して適正な薬剤注入量にすることができ、緑液処理の操業管理を容易に行うことができる。
【0121】
3.本実施形態における緑液処理方法を用いるパルプ製造系の概要
【0122】
本発明に係る緑液処理方法を用いるパルプ製造系の概要について、以下に説明するが、ここで説明するパルプ製造系は一例であり、本実施形態は当該パルプ製造系に特に限定されない。
本実施形態における緑液処理方法を用いるパルプ製造系の説明において、上述した「1.」及び「2.」と重複する粗緑液、清澄緑液、清澄緑液の色調、色調監視場所、色調値、薬剤、フィードバック制御などの各構成、各方法、各装置などの説明については適宜省略するが、当該「1.」及び「2.」の説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。また、本実施形態における緑液処理方法の例の説明において、後述する「4.」~「5.」の説明を、本実施形態に当てはめることができ、適宜採用することもできる。
【0123】
図1は、本発明に関する緑液処理方法を用いるパルプ製造系1の概略構成図であり、本発明はこれに限定されない。本実施形態おけるパルプ製造系は、一般的なパルプ製造系に、本実施形態における緑液処理管理装置又は緑液処理管理システムを組み込んでもよい。
【0124】
本実施形態に関するパルプ製造系1は、蒸解系10と、黒液処理系20と、緑液処理系30と、消和・苛性化系40と、を備えることができる。これら系は、
図1において実線で示される管で互いに連通され、全体として循環路を構成していてもよい。
以下、各系についてより詳細に説明する。
【0125】
<3-1.蒸解系>
蒸解系10は、蒸解釜11を有し、この蒸解釜11の下流にはパルプ精製部が設けられていてもよい。蒸解釜11には、パルプの原料である木材チップと、苛性ソーダを含有する白液とが投入され、木材チップの蒸解が行われる。
これによって生じたパルプはパルプ精選系へと移送され、当該精選系にて精選及び洗浄工程を経た後、次いで漂白工程、抄紙工程などを順次受け、紙が製造される。一方で、廃液である黒液は、苛性ソーダの回収などのため、後述するエバポレータ21へと移送される。
【0126】
<3-2.黒液処理系>
黒液処理系20は、上流から順に、エバポレータ21と、ボイラ22と、を有してもよい。黒液は、エバポレータ21で濃縮された後(黒液濃縮工程)、ボイラ22へと移送され、このボイラ22内で燃焼される(黒液燃焼工程)。これにより、黒液に含有されていた無機ナトリウム塩が溶融し、ボイラ22の底部からスメルトとして排出される。排出されたスメルトは、溶解(ディゾルビング)タンク31へと移送される。
【0127】
なお、ボイラ22には、熱エネルギーを回収するための熱回収系が設けられていてよい。このような熱回収系としては、従来公知のものが使用できる(例えば、特開平6-212586号公報参照)。
【0128】
<3-3.緑液処理系>
本実施形態における緑液処理系30の説明において、上述した「1.」「2.」と重複する各構成、処理方法などの説明については適宜省略するが、当該「1.」及び「2.」の説明が、本実施形態にも当てはまり、適宜採用することができる。
【0129】
少なくとも、清澄緑液の色調を監視でき、粗緑液に対するより適正な薬剤注入量をより迅速にフィードバック制御できる制御部101又は当該制御部101を備える緑液処理管理装置100が設けられている。さらに、緑液処理系30には、清澄緑液の色調を監視でき、清澄緑液の色調を測定できる色調監視部102が設けられていることが好適である。
【0130】
さらに、緑液処理系30には、緑液処理剤を粗緑液に添加できる薬剤タンク34及び薬剤注入ポンプ35が設けられていることが好適である。薬剤タンクの数は、特に限定されず、1つ又は2つもしくは3つ以上の複数であってもよく、使用する薬剤の種類ごとに薬剤タンクを設置してもよい。薬剤注入ポンプの数は、特に限定されず、1つ又は2つもしくは3つ以上の複数であってもよく、使用する薬剤の種類ごとに薬剤注入ポンプを配置してもよい。
【0131】
制御部101は、薬剤タンク34中の薬剤状態(例えば、残量、濃度、種類)を管理でき、当該薬剤状態を制御することができる。当該制御部101は、薬剤注入ポンプ35のポンプ動作を制御することができ、これにより粗緑液に添加する緑液処理剤の薬剤注入量を調整することができる。一方で、薬剤タンク34及び薬剤注入ポンプ35は、薬剤状態及び薬剤注入量の状況を、制御部101に送信することができる。
【0132】
<3-4.消和・苛性化系>
消和・苛性化系40は、苛性化系41と、白液クラリファイア42と、白液タンク43と、を有してもよい。消和・苛性化系40は、この白液クラリファイア42の下流に位置するライムマッドワッシャー46、ライムマッドフィルター45、キルン44をさらに有してもよい。苛性化系41、白液クラリファイア42、白液タンク43は、互いに連通され、全体として循環路を構成する。
【0133】
苛性化系41へと移送された清澄緑液は、この苛性化系41において、キルン44から供給された酸化カルシウムと混合される。この混合に関して、より詳細に説明する。
【0134】
苛性化系41は、スレーカ411と、このスレーカ411の下流に位置する複数の苛性化反応槽412とを有してもよい。スレーカ411に移送された清澄緑液(通常、90~100℃、pH13~14)は、同じくスレーカ411に供給された酸化カルシウムと混合される。これにより、酸化カルシウムが水で消和されて水酸化カルシウムが生成される(消和反応工程)。その後、苛性化反応槽412へと移送されると、緑液中の炭酸ナトリウムが水酸化カルシウムと反応し、苛性ソーダ及び炭酸カルシウムが生成される(苛性化反応工程)。
【0135】
このようにして得られた白液は、白液クラリファイア42へと移送される。この白液クラリファイア42において、不溶性の炭酸カルシウムが沈降され分離された後、白液は白液タンク43に貯留され、やがて蒸解釜11へと循環して再利用されることになる。一方で、分離された炭酸カルシウムは、キルン44へと回収され、キルン44にて焙焼されて、酸化カルシウムへと戻って(石灰焼成工程)、苛性化系41において再利用される。
【0136】
より具体的には、苛性化系41において、キルン44で得られた酸化カルシウム(CaO)を、スレーカ411の清澄緑液に添加することで消和反応:CaO+水→Ca(OH)2+水となり、さらにスレーカ411の清澄緑液のNa2CO3と反応し、Ca(OH)2+Na2CO3+水→CaCO3(↓)+2NaOH+水となり、CaCO3が回収されたNaOHを含む水溶液は白液として使用される。このようにして、苛性ソーダ及び炭酸カルシウムは、苛性化工程中の回収サイクルにて、再生資源として繰り返し利用される。
【0137】
4.本実施形態における苛性化の生産性向上方法及び生産性向上の管理システム
【0138】
本実施形態における苛性化の生産性向上方法及び生産性向上の管理システムの説明において、上述した「1.」~「3.」と重複する、粗緑液、清澄緑液、清澄緑液の色調、色調監視場所、色調値、薬剤、フィードバック制御などの各構成、各処理方法、各装置などの説明については適宜省略するが、当該「1.」~「3.」の説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。また、本実施形態における緑液処理方法の例の説明において、後述する「5.」の説明を、本実施形態に当てはめることができ、適宜採用することもできる。
【0139】
本実施形態は、前記緑液処理方法又は緑液処理系によって清澄化処理された清澄緑液を用いる、苛性化の生産性を向上する方法を提供することができる。
従来の方法では緑液清澄化が悪く、不純物があると苛性化率が下がり白液の品質が悪くなること、石灰の品質が悪くなることにつながっていた。さらに、苛性化率の低い白液は、蒸解工程に戻されても働きが悪いことになる。さらに、石灰の品質が悪いと、キルンで焼成されたときに生石灰になる有効石灰度も低くなり、新たに購入石灰の量が増えることになる。
【0140】
これに対し、上述のように、本実施形態の緑液処理方法又は緑液処理系によって清澄化処理された清澄緑液は、より適正な薬剤注入量にて緑液処理されるため、より良好に清澄化されている。さらに、当該清澄緑液は、粗緑液中の不純物濃度の変動にも適宜対応して清澄化処理ができ、これにより、より良好に清澄化されている。
【0141】
このため、本実施形態によって清澄化処理された緑液を用いることで、従来よりも、苛性化率がより向上し白液の品質がより良くなること、石灰の品質がより良くなる。さらに、苛性化率がより向上した白液は、蒸解工程に戻されても働きがより良好である。さらに、石灰の品質がより良好になるので、キルンで焼成されたときに生石灰になる有効石灰度もより高くなり、新たに購入石灰の量を減らすことも可能である。
なお、一般的に、苛性化率は(NaOH/(NaOH+Na2CO3)×100(%)(Na2Oとして))、焼成率は(CaO/(CaO+CaCO3)×100(%))で表される。
【0142】
このように、本実施形態によって清澄化処理された清澄緑液を用いることで、より良好に苛性化の生産性を向上させること、苛性化工程をより良好に制御させること、有効石灰度をより良好に制御することなどができるので、上述の「1.」~「3.」に関する本実施形態は、消和・苛性化系、当該系で用いられる方法又は装置などに適用することができる。本実施形態は、例えば、消和・苛性化処理の管理方法、消和・苛性化処理管理システム、消和・苛性化処理の管理装置などであってもよい。
よって、本実施形態は、前記緑液処理方法によって清澄化処理された清澄緑液を用いる、苛性化の生産性向上、消和・苛性化工程の制御、及び有効石灰度の制御などに関する方法、又はこれらの管理システムなどを提供することができる。
【0143】
なお、苛性化の生産性の向上とは、苛性ソーダ及び/又は炭酸カルシウムの生産性を向上させることである。より具体的には、苛性化率、炭酸カルシウム回収率、苛性ソーダの品質、酸化カルシウムの品質、キルンでの焼成率などが向上すること;苛性ソーダ、炭酸カルシウム(酸化カルシウム)の回収サイクルが向上することなどが挙げられる。
【0144】
本実施形態は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する緑液処理方法によって、清澄化処理された清澄緑液を用いる、苛性化の生産性向上の方法又はシステムを提供することができる。
本実施形態は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する緑液処理方法によって、清澄化処理された清澄緑液を用いる、消和・苛性化工程の制御の方法又はシステムを提供することができる。
本実施形態は、清澄緑液の色調を監視し、当該色調から粗緑液に対する薬剤注入量をフィードバック制御する緑液処理方法によって、清澄化処理された清澄緑液を用いる、有効石灰度の制御の方法又はシステムを提供することができる。
上述の方法又はシステムにより、例えば、蒸解系に用いる白液を製造することができる。また、キルンにて焼成する炭酸カルシウムを製造することができる。また、パルプ製造に再利用する苛性ソーダ及び/又は炭酸カルシウムを製造することができる。なお、これら効果に限定されない。
【0145】
5.本発明に関するパルプ製造における薬剤の回収方法及び回収管理システム
【0146】
本実施形態におけるパルプ製造における薬剤の回収方法及び回収管理システムの説明において、上述した「1.」~「4.」と重複する「粗緑液、清澄緑液、清澄緑液の色調、色調監視場所、色調値、薬剤、フィードバック制御など」の各構成、処理方法などの説明については適宜省略するが、当該「1.」~「4.」の説明が、本実施形態にも当てはまり、当該説明を適宜採用することができる。
【0147】
本実施形態では、(a)前記緑液処理方法を用いる緑液処理工程、を含む、又は、
(b)前記緑液処理方法を用いる緑液処理工程と、当該緑液処理工程にて清澄化処理された清澄緑液を用いる消和・苛性化工程と、を含む、パルプ製造における薬剤のリサイクルシステムを提供することもできる。当該緑液処理方法は、上述した「1.」の各構成及び各方法などを、適宜採用することができる。
【0148】
本実施形態では、一般的なパルプ製造工程に本発明に関する薬剤の回収工程を適用することで、薬剤の回収工程を含む、パルプ製造方法又はパルプ製造システム、パルプ製造における薬剤の回収方法、薬剤の品質又は回収率の向上方法、回収管理システムなどを提供することができる。
【0149】
前記パルプ製造方法又はパルプ製造の管理システムは、特に限定されず、一般的なパルプを製造する方法又は管理システムを採用することができる。
一般的なパルプの製造工程として、例えば、木材をチップ化する原料チップ化処理工程、木材チップに苛性ソーダを含む処理用水(具体的には白液)を加え、高温高圧で煮、樹脂(リグニン)を溶かし繊維分(パルプ)を取り出す蒸解工程、パルプ中の異物をスクリーン及び洗浄装置に通して除去し洗浄する精選及び洗浄工程、蒸解工程で残った樹脂を酸素で分解する酵素脱リグニン工程、薬剤でパルプを漂白する漂白工程が挙げられ、通常このような順序にてパルプ製造が行われている。通常、パルプは、抄紙工程などを含む紙の製造に用いられている。
【0150】
本実施形態の薬剤の回収方法又は回収管理システムでは、前記蒸解工程にて生じた黒液を処理する黒液処理系より生じた粗緑液を処理することが好適である。
また、本実施形態の薬剤の回収方法又は回収管理システムでは、本実施形態に関する消和・苛性化系にて得られた白液を前記蒸解工程に移送することが好適であり、より具体的には蒸解釜に添加することがより好適である。これにより、苛性化の生産性が向上した白液を用いてチップを蒸解する蒸解工程を行うことができる。
本実施形態の薬剤の回収方法又は回収管理システムによれば、苛性ソーダ及び/又は炭酸カルシウムにおける品質及び/又は回収率が向上することができる。これによって、苛性化の生産性が向上することができる。このため、本発明は、苛性ソーダ及び/又は炭酸カルシウムといった薬剤の回収方法もしくは回収管理システム、リサイクル方法もしくはリサイクル管理システムとしても、優れた技術である。
【実施例】
【0151】
以下の試験例などを挙げて、本発明の実施形態について説明をする。なお、本発明の範囲は試験例などに限定されるものではない。
【0152】
<試験例1>
下記のように、色調測定の緑液測定装置などを使い、清澄緑液を連続的に測定し、緑液清澄化装置への薬剤添加量の調整を検討した。清澄緑液の色調をRGBのデータとして取り出し、それぞれの数字の範囲を決め、それからずれた時に、カチオン系凝集剤(凝結剤)の添加量の増減、もしくは、アニオン系凝集剤の添加量の増減を行うように制御することを検討した。
【0153】
<緑液測定装置の構成>
緑液測定装置は、RGBカラーセンサ、マルチセンサコントローラ、プログラマブルコントローラ、及びネットワーク通信ユニットを、カラーセンサ装置として、備えるものである。
清澄緑液測定の原理は、カラーセンサから投光された白色LED光が測定対象物(液面)に当たり、対象物が反射した色をカラーセンサの受光部が検出しRGBの色成分としてデータが演算出力され、当該RGB値データが通信ユニットから外部に出力される。このRGB値データは、緑液処理の制御部を含むコンピュータに出力され、コンピュータ画面にこのときのRGB値が表示される。
【0154】
なお、RGBカラーセンサとして、アンプ内蔵型ホワイトスポット光電センサ LR-W500(株)キーエンス社製)を使用した。
マルチセンサコントローラとして、マルチセンサコントローラ MU-N12((株)キーエンス社製)を使用した。
プログラマブル コントローラ(PLC)として入力16点/出力16点 KV-NC32T2((株)キーエンス社製)を使用した。
ネットワーク通信ユニットとして、通信ユニット EtherNet/IPTM対応 NU-EP1((株)キーエンス社製)を使用した。
【0155】
<ホワイトスポット光電センサ LR-W500>
検出距離 30~500mm(投光面から試料の液面)
最小スポットサイズ 可変スポット 約o3.5 at 100mm/約o9 at 250mm/約o18mm at 500mm
応答時間 200μs/1ms/10ms/100ms/500ms 切換式
光源 白色LED
使用周囲照度 白熱ランプ10,000 lux以下、太陽光:20,000 lux以下;
使用周囲温度 -20~+50℃(氷結しないこと)
使用周囲湿度 35~85% RH(結露しないこと)
【0156】
1.本発明での液体の色調測定の実験データ
<実験条件>
上記緑液測定装置にて、以下4種類のサンプル溶液を測定した。
(1)N/1000 ヨウ素溶液
(2)大手製紙会社の清澄緑液(現場の緑液処理系より採取した清澄化処理後の清澄緑液)
(3)大手製紙会社の粗緑液を緑液処理用の高分子重合体の凝集剤により固液分離した上澄み溶液(模擬的に作製した清澄緑液)(上記(2)清澄緑液を採取したときに、粗緑液タンクに貯留されていた粗緑液)
(4)ヨウ素でんぷん反応溶液(でんぷん100mg/L)
【0157】
なお、大手製紙会社の粗緑液(凝集剤無添加)のpHは13以上であった。また、粗緑液を上記緑液測定装置のカラーセンサにて測定したが、色調データを得ることができなかった。
前記(3)で、アクリルアミド系凝集剤として使用した高分子重合体(アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物、粘度平均分子量1600万)。
下記表1に示すように、清澄緑液のG値は(G228)、a*値(-0.8)であった。粗緑液沈殿上澄(清澄緑液)のG値は(G241)、a*値(-1.5)であった。これら試料の入手先の緑液処理系でスラッジを引き抜いたときのスラッジ濃度は8%であり、当該スラッジ濃度は、「JIS K 102 14.1「工場排水試験方法」 懸濁物質」にて測定されたものである。
【0158】
測定条件
上記(1)~(4)の各サンプル溶液を、各200mL容ガラスビーカーに、200mL入れ、サンプル溶液入りのガラスビーカー1~4を用意した。サンプル溶液の液温は、室温(18℃)になるようにした。上記(2)及び(3)の清澄緑液のサンプル溶液のpH(20℃)は、pH13以上であった。
緑液測定装置のカラーセンサを、ガラスビーカーの液面の上方に配置した。このとき、カラーセンサの投光面と、ビーカーの液面とが、略平行になるようにした。カラーセンサの投光面とビーカーの液面との距離を、下記の測定距離とした。
緑液測定装置に備えるカラーセンサにて、各ガラスビーカー1~4に入っているサンプル溶液の色調を上方より測定した。
測定容器 200mL ガラスビーカー(高さ90mm、直径67mm)
測定距離 センサの投光面及び受光面から30cm(センサの測定面からビーカー液面までの距離)
測定温度 室温(18℃)
【0159】
【0160】
本発明者らは、緑液処理が悪いと清澄緑液が赤色を帯びてくることを見出し、色調変化を画像処理し連続的に監視できることを見出した。なお、赤色は、硫酸鉄IIが増えて酸化され硫酸鉄IIIになり赤色を帯びていると推定している。粗緑液中の鉄の量を下げることが目的ではないが、凝集剤を粗緑液に添加することで色調が薄緑色に変化し、結果として色調が清澄緑液の清澄性の指標となりえることを見出した。
さらに、上記試験の結果を考慮した結果、緑液清澄化装置後の清澄緑液を容器に取り込み、清澄緑液の上部から、清澄緑液の色調検出できる緑液測定装置にて、清澄緑液の液面の画像を取り込み、清澄緑液の色調を解析することができる。この解析結果に基づき、清澄緑液の色調が所望の範囲内になるように、緑液清澄化装置に添加する薬剤の量を調整することができる。
例えば、清澄緑液の色調が赤色系統の場合には、粗緑液に対する薬剤を増量し、一方で清澄緑液の色調が緑色系統の場合には、粗緑液に対する薬剤を減量するように、薬剤量を調整することができる。このようにして、適正な薬剤注入量になるようにフィードバック制御することができる。
【符号の説明】
【0161】
1 パルプ製造系; 10 蒸解系; 11 蒸解釜; 20 黒液処理系; 21 エバポレータ; 22 ボイラ; 30 緑液処理(粗緑液の処理)系; 31 溶解タンク(分散); 32 緑液クラリファイア(清澄); 33 清澄緑液タンク; 36 引抜きポンプ; 37 スラッジ濃度測定部; 40 消和・苛性化系; 34 薬剤タンク; 35 薬剤注入ポンプ; 41 苛性化系; 42 白液クラリファイア; 43 白液タンク; 44 キルン; 411 スレーカ; 412 苛性化反応槽; 45 ライムマッドフィルター; 46 ライムマッドウォッシャー; 100 緑液処理管理装置;101 制御部; 102 色調監視部