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特許7070813マット調積層フィルム、該マット調積層フィルムとプラスチック基材をラミネ-トしてなる積層体及びこれらを用いた包装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】マット調積層フィルム、該マット調積層フィルムとプラスチック基材をラミネ-トしてなる積層体及びこれらを用いた包装材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20220511BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B65D65/40 D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021570196
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2021031294
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】P 2020150420
(32)【優先日】2020-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】木田 智久
(72)【発明者】
【氏名】浜崎 桂輔
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康史
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068417(JP,A)
【文献】特開2011-194588(JP,A)
【文献】特開2020-055157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
B65D65/00- 65/46
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトフロ-レ-トが1g/10分以下(温度190℃、荷重2.16kg)の植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、メルトフロ-レ-トが0.5g/10分以上30g/10分以下(温度230℃、荷重2.16kg)のプロピレン系樹脂(a2)とを含有する表面樹脂層(A)と、
ポリオレフィン系樹脂(b1)を含有する樹脂層(B)と、が積層されたマット調積層フィルムであって、
前記プロピレン系樹脂(a2)としてプロピレン単独重合体(a2-1)及びプロピレン-エチレンブロック共重合体(a2-2)を含有し、
プロピレン単独重合体(a2-1)とプロピレン-エチレンブロック共重合体(a2-2)との質量比(a2-1)/(a2-2)が45/55~65/35であることを特徴とするマット調積層フィルム。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系樹脂(b1)として、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン(b1-1)と、プロピレン系樹脂(b1-2)を含有する請求項1記載のマット調積層フィルム。
【請求項3】
前記植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と前記プロピレン系樹脂(a2)との使用割合(質量比)(a1)/(a2)が60/40~40/60の範囲である請求項1又は2記載のマット調積層フィルム。
【請求項4】
樹脂層側に、シ-ル層を更に有する請求項1~3のいずれかに記載のマット調積層フィルム。
【請求項5】
前記積層フィルム中に含有するポリエチレンの総質量が、前記積層フィルムの質量に対して20質量%以上である請求項1~4のいずれかに記載のマット調積層フィルム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム上に他のフィルムをラミネ-トしてなる積層体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の積層フィルム又は請求項6に記載の積層体を用いた包装材。
【請求項8】
食品用の包装袋である請求項7に記載の包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、雑貨、雑誌等を包装する包装材に関するものであって、詳しくは単体のフィルム若しくは表面に印刷を施したり、和紙や他のフィルム等をラミネ-トしたりすることにより使用するマット調(つや消し性)の積層フィルム及び該フィルムからなる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パンや菓子等の食品や雑貨、雑誌等の各種包装において、多様な衣装の包装材が使用されている。なかでも、表面がつや消し性を有するマット調フィルムのニ-ズが高まっている。マット調フィルムは、一般の透明フィルムに比べ、和紙に近い風合いを有するため、内容物の高級感を引き出すものである。このようなマット調フィルムとしては、例えば、充分なマット感を得るために、プロピレン系材料と高密度ポリエチレンを混合した樹脂層と、プロピレン系樹脂を含有する樹脂層との多層化フィルム(特許文献1)等が開示されている。
一方、国内流通大手や食品メ-カ-では、COP21への対応や、持続可能な開発目標(SDGs)の一つに掲げられている「持続可能な生産消費形態を確保する」という目標にむけた取り組みとして、環境負荷低減パッケ-ジを積極推進している。従来からの環境負荷低減パッケ-ジの取り組みは「3R」(減容化、再利用、リサイクル)の推進化が図られてきたが、近年では、石油資源節約の観点からも、石油等の化石燃料由来成分を主成分とした樹脂に換えて、植物由来成分を主原料とした樹脂(以下、「植物由来の樹脂」という)の採用も増加している。
植物由来の樹脂としては、ポリ乳酸(PLA)に代表される生分解性樹脂があるが、当該樹脂はコストや加工性面で汎用化に問題があった。一方で、汎用樹脂としては、サトウキビ由来の再生可能資源である植物由来のポリエチレンが世界的な需要の高まりをみせ、生産量の増加によりコストも汎用的になっている。環境負荷低減パッケ-ジとしては、このような汎用の植物由来の樹脂をサニタリ-や食品の包装容器や雑貨やレジ袋に使用される例が多いが、最近になり、食品包装用フィルムへの採用が広がりつつある。
また、環境負荷低減のニ-ズは高まる一方であることから、植物由来の樹脂を使用したフィルム(バイオマスフィルム)において、植物由来の樹脂の割合(バイオマス度)をより高くすることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-68417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
植物由来の樹脂は、環境対応性は高いものの化石燃料由来の樹脂とは異なる性質を示すことが多い。そのため、化石由来の樹脂を植物由来の樹脂に置き換えてフィルムを作製すると、耐衝撃性、剛性、成膜性、光沢度、曇り度等のフィルムの各種物性において低下する場合がある。特に、植物由来の樹脂の割合を高くすると、フィルムの物性への影響が大きくなる。しかしながら、マット調積層フィルムにおいて、植物由来の樹脂を用いた場合の影響について、これまで検討がなされていない。
本発明者らは、マット調フィルムにおいて植物由来の樹脂を採用して各種物性を検討した結果、フィルム製造において最も基本的な性能の一つである成膜性が低下する問題が生じることがわかった。
本発明の課題は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、植物由来の樹脂を用いた場合にも優れた成膜性を有し、包装材に求められている包装適性、機械的強度を損なうことなく充分なマット感が得られる積層フィルム、該フィルムとプラスチック基材をラミネ-トしてなる積層体、及びこれらの積層フィルム又は積層体からなる包装材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、メルトフロ-レ-トが1g/10分以下の植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、メルトフロ-レ-トが0.5g/10分以上30g/10分以下のプロピレン系樹脂(a2)とを含有する表面樹脂層(A)と、ポリオレフィン系樹脂(b1)を含有する樹脂層(B)と、が積層されたマット調積層フィルムであって、前記プロピレン系樹脂(a2)としてプロピレン単独重合体(a2-1)及びプロピレン-エチレンブロック共重合体(a2-2)を含有することを特徴とするマット調積層フィルム、該マット調積層フィルムとプラスチック基材をラミネ-トしてなる積層体、及びこれらの積層フィルム又は積層体からなる包装材により、本発明の課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の積層フィルムは、植物由来の樹脂を含有することにより環境負荷を小さくすることができ、且つ、優れた成膜性を有し、包装材に求められている包装適性、機械的強度を損なうことなく充分なマット感を発現する。本発明の積層フィルムは、単体で使用することも可能であるし、また、他のプラスチック基材やプラスチック容器に接着又は融着可能であるため、包装材としての適性に優れるものである。従って、高級感を引き出すために使用される食品用、特には常温で保管・移送されるパン用包装袋として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明における積層フィルムは、表面樹脂層(A)と樹脂層(B)とを少なくとも有するマット調積層フィルムである。
本発明の積層フィルムにおける表面樹脂層(A)は、メルトフロ-レ-トが1g/10分以下の植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、メルトフロ-レ-トが0.5g/10分以上30g/10分以下のプロピレン系樹脂(a2)とを含有する。
【0008】
植物由来の高密度ポリエチレン(a1)は、サトウキビ、トウモロコシ、ビ-ト等を出発原料とする植物由来のエチレンから生成されるポリエチレン系樹脂である。当該バイオマスポリエチレン(a1)としては、例えば、線状高密度ポリエチレン(LHDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられ、これらは単独でも、混合して使用してもよい。これらのなかでも、特に、高密度ポリエチレン(HDPE)であることが好ましい。
本発明の植物由来の高密度ポリエチレン(a1)は、メルトフロ-レ-ト(温度190℃、荷重2.16kg)が1g/10分以下であることを必須とするものである。メルトフロ-レ-トが1g/10分を超えると、和紙の風合いに近いマット調のフィルムが得られにくくなる。特に好ましいメルトフロ-レ-トは0.05~0.8g/10分の範囲である。
【0009】
更に前記植物由来の高密度ポリエチレン(a1)の密度としては、0.935~0.970g/cmの範囲であるが、得られる積層フィルムのマット感・機械的な強度・フィルムの均一性等の観点から0.940~0.965g/cmの範囲であることがより好ましい。
【0010】
前記プロピレン系樹脂(a2)は、プロピレン単独重合体(a2-1)及びプロピレン-エチレンブロック共重合体(a2-2)を含有する。プロピレン系樹脂としてプロピレン単独重合体(a2-1)及びプロピレン-エチレンブロック共重合体(a2-2)の2成分を含有することにより、成膜性を向上させることができ、また、マット感と、表面粗さの調整が容易となる。
プロピレン系樹脂(a2)として前記プロピレン単独重合体(a2-1)及びプロピレン-エチレンブロック共重合体(a2-2)以外の樹脂、例えばプロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体(プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体、等)、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンを含有していてもよい。
【0011】
本発明のプロピレン系樹脂(a2)は、MFR(温度230℃、荷重2.16kg)が0.5g/10分以上30g/10分以下であることを必須とするものである。製袋時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上させる観点からは、4g/10分以上20g/10分以下であることが好ましく、5g/10分以上15g/10分以下であることがより好ましい。
また、本発明のプロピレン系樹脂(a2)は、融点が120~172℃であるものが好ましく、125~170℃であることが好ましい。MFR及び融点がこの範囲であれば、製袋時のフィルムの収縮をより少なくでき、更にフィルムの成膜性もより向上する。
【0012】
表面樹脂層(A)において、植物由来の高密度ポリエチレン(a1)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることが好ましい。
【0013】
植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、プロピレン系樹脂(a2)の使用割合としては、得られるフィルムに充分なマット感(高曇り度と低光沢度)を発現させるために、高密度ポリエチレン(a1)と、プロピレン系樹脂(a2)との質量比(a1)/(a2)が60/40~40/60の範囲であることが好ましい。植物由来の高密度ポリエチレン(a1)の使用割合がこれよりも低い場合には、目的とするマット感が得られにくく、一方、使用割合がこれよりも高い場合には、得られるフィルムの機械的な強度、特に衝撃強度が不足し、実用レベルの包装袋が得られにくい。
また、プロピレン単独重合体(a2-1)とプロピレン-エチレンブロック共重合体(a2-2)との質量比(a2-1)/(a2-2)が45/55~65/35の範囲であることが好ましい。
【0014】
表面樹脂層(A)中の植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、プロピレン系樹脂(a2)の含有量は、その総量が表面樹脂層(A)中の80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。当該範囲とすることで、好適な機械的強度のフィルムを得やすくなる。より好ましくは、植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、プロピレン単独重合体(a2-1)と、プロピレン-エチレンブロック共重合体(a2-2)との含有量は、その総量が表面樹脂層(A)中の80質量%以上であり、85質量%以上であり、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0015】
表面樹脂層(A)中には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、プロピレン系樹脂(a2)以外の他の成分を含有してもよい。当該他の成分としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、等が挙げられる。また、植物由来のエチレン系樹脂と併用して化石燃料由来のエチレン系樹脂を用いてもよい。
【0016】
また、本発明の積層フィルムにおいて、表面樹脂層(A)のJIS B-0601に基づく表面粗さ(Ra)は0.5~2.0であることが好ましい。この範囲の表面粗さであることによって、和紙の風合いを有する好適なマット調のフィルムを得られるため、意匠性を向上させることができる。
【0017】
前記表面粗さ(Ra)の範囲を調整するためには、高密度ポリエチレン(a1)とプロピレン系樹脂(a2)との質量比を前記のように質量比(a1)/(a2)が60/40~40/60の割合で用いればよく、特に調整を必要とするものではない。
【0018】
植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、プロピレン系樹脂(a2)とのMFRの差は、5g/10分以上であることが好ましく、6g/10分以上であることがより好ましい。当該範囲とすることで、好適なマット調の樹脂層を得やすくなる。
【0019】
本発明の積層フィルムは、前述の特定の表面樹脂層(A)を、ポリオレフィン系樹脂(b1)を含有してなる樹脂層(B)に積層してなるものである。この様な多層構造のフィルムとすることによって、単体使用でもマット感があり、又包装袋用途としての強度等を発現することが可能となる。
【0020】
前記ポリオレフィン系樹脂(b1)としては、包装フィルムに使用される各種ポリオレフィン系樹脂を使用でき、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体、(プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-1-ヘキセンランダム共重合体等)、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどのプロピレン系樹脂(b1-2)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-メチルメタアクリレ-ト共重合体(EMMA)、エチレン-エチルアクリレ-ト共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレ-ト(EMA)共重合体、エチレン-エチルアクリレ-ト-無水マレイン酸共重合体(E-EA-MAH)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体、更にはエチレン-アクリル酸共重合体のアイオノマ-、エチレン-メタクリル酸共重合体のアイオノマ-等を使用できる。なかでも、表面樹脂層(A)との密着性を向上させやすいことからプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。この様に、表面樹脂層(A)と樹脂層(B)とで同系の樹脂を用いることにより、積層フィルムの層間強度を強めることができる。特に好ましく用いることができるのは、プロピレン-エチレン共重合体である。
また、植物由来のバイオマス樹脂の割合を高めるために、ポリオレフィン系樹脂(b1)として植物由来の樹脂を用いることが好ましい。植物由来の樹脂としては、表面樹脂層(A)との密着性を向上させやすいことから、表面樹脂層(A)で用いた植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と同じ樹脂又は同系のエチレン系樹脂を用いることが好ましい。具体的には、サトウキビ、トウモロコシ、ビ-ト等を出発原料とする植物由来のエチレンから生成されるポリエチレン系樹脂であり、例えば、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、線状中密度ポリエチレン(LMDPE)、線状高密度ポリエチレン(LHDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等が挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも、特に、直鎖状低密度ポリエチレン(b1-1)であることが好ましい。直鎖状低密度ポリエレンとしては、密度が0.925g/cm以下であることが好ましく、0.920g/cm以下であることがより好ましい。使用する直鎖状低密度ポリエチレンの密度を上記範囲とすることで、好適な溶断強度と高い耐衝撃性、耐破袋性を兼備しやすくなる。
【0021】
樹脂層(B)に使用する植物由来のポリエチレンのMFRは、0.1~30g/10分が好ましく、0.5~20g/10分が特に好ましい。1g/10分以上とすることで、好適な製膜性を得やすくなり、20g/10分以下とすることで、好適な成形性を得やすくなる。
【0022】
なお、表面樹脂層(A)に用いられる植物由来の高密度ポリエチレン(a1)及び樹脂層(B)に用いられる植物由来のエチレン系樹脂は、石油由来の製造方法に対して、原料がサトウキビなどの植物で、モノマ-生成までは異なるが、それ以外は、製造方法は同一である。製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法で製造されたものでできる。例えば、チ-グラ-・ナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた製造法が上げられる。
【0023】
具体的には、チタン含有化合物自体またはチタン含有化合物をマグネシウム化合物等の担体に担持させたものを主触媒とし、有機アルミニウム化合物を助触媒とした触媒系で、プロピレン単独または所望のエチレンなどのα-オレフィンを添加して重合を行う方法を挙げることが出来る。この重合は、スラリ-重合法、溶液重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
【0024】
また、均一系触媒を用いてもよく、従来から用いられているバナジュウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒、あるいはシクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基、インデニル基、置換インデニル基等を1又は2個を配位子とするジルコニウム、チタン、ハフニウムなどの遷移金属化合物、該配位子が幾何学的に制御された遷移金属化合物とアルミノキサンやイオン性化合物などの助触媒からなるメタロセン系触媒等の均一系触媒系も挙げることができる。メタロセン触媒は、必要により有機アルミ化合物を用いて、溶媒存在下の均一系重合のほか、スラリ-重合法、気相重合法等のいずれのプロセスでもよい。
【0025】
このような植物由来のポリエチレンの市販品としては、ブラスケム社製、SGM9450F、SLL118、SLL118/21、SLL218、SLL318、SLH118、SLH218、SLH0820等が例示できる。
【0026】
なかでも、樹脂層(B)は、積層フィルムの強度・剛性を高めると共に、表面樹脂層(A)とのマット感をより強調でき、更に積層フィルムのバイオマス度を高める点から、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン(b1-1)と、1種又は2種以上のプロピレン系樹脂(b1-2)を組み合わせて用いることが好ましい。このときの使用割合としては、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン(b1-1)/プロピレン系樹脂(b1-2)=5/95~30/70の範囲であることがより好ましい。
【0027】
樹脂層(B)において、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン(b1-1)の含有量は、高い耐衝撃性、耐破袋性の点から、10質量%以上であることが好ましく、15質量%であることがより好ましい。
【0028】
樹脂層(B)中のポリオレフィン系樹脂(b1)の含有量は、その総量が樹脂層(B)中の80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。当該範囲とすることで、好適な機械的強度のフィルムを得やすくなる。植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン(b1-1)と、プロピレン系樹脂(b1-2)との含有量は、その総量が樹脂層(B)中の80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0029】
表面樹脂層(A)及び樹脂層(B)が積層された積層フィルムは、包装袋として用いる場合には、機械的強度とヒ-トシ-ル性とのバランスに優れる点から、樹脂層(B)側にシ-ル層(C)を更に有するものであることが好ましい。
【0030】
前記シ-ル層(C)は、積層フィルムのシ-ル層(C)同士、又はその他の材質からなる容器等にヒ-トシ-ル際に容易にシ-ル強度が得られるように設計するものであり、得られる積層フィルムの用途によって、樹脂種を選択することができる。特に包装袋として用い、シ-ル層(C)同士をヒ-トシ-ルする場合に、適度なシ-ル強度が得られる点から、プロピレン-エチレンランダム共重合体を含有するものであることが好ましい。更に、シ-ル強度を調整するためには、エチレン-α-オレフィン共重合体を併用する
ことも可能である。
【0031】
本発明のマット調積層フィルムは、表面樹脂層(A)、樹脂層(B)及びシ-ル層(C)以外に1又は2以上の他の層を有していてもよい。他の層は、包装フィルムに使用される各種樹脂材料を使用でき、樹脂層(B)とシ-ル層(C)の間に設けられることが好ましい。
【0032】
本発明のマット調積層フィルム中に含有するポリエチレンの総質量は、積層フィルムの質量に対して20質量%以上であることが好ましく、23質量%以上であることがより好ましく、24質量%以上であることが更に好ましい。マット調積層フィルムにおいて植物由来の成分を多くしてバイオマス度を高めるためには、マット調積層フィルムの質量に対して植物由来のポリエチレンの総質量を20質量%以上とすることが好ましく、23質量%以上であることがより好ましく、24質量%以上とすることが更に好ましい。
また、表面樹脂層(A)と表面樹脂層に隣接する樹脂層(B)を合計した質量に対して、ポリエチレンの総質量、好ましくは植物由来のポリエチレンの総質量を24質量%以上とすることが好ましく、27質量%以上であることがより好ましく、28質量%であることが更に好ましい。
【0033】
本発明の積層フィルムは、単体でもフィルムとして充分な強度を有するために、その全厚として20~50μmの範囲であることが好ましく、特にパン等の比較的軽量な内容物の包装用等に使用する場合には、25~40μmであることが好ましい。
【0034】
更に、積層フィルムに対して充分なマット感(高曇り度と低光沢度)を与えるためには
、表面樹脂層(A)が全厚の10~40%になるようにすることが好ましい。樹脂層(A)の厚さは、好適な意匠性を得やすいことから、2~20μmとすることが好ましく、4~16μmとすることがより好ましい。
また、樹脂層(B)は全厚の30~90%になるようにすることが好ましい。樹脂層(B)の厚さ6~45μmとすることが好ましく、10~30μmとすることがより好ましい。
さらに、シ-ル層(C)を設ける場合は、シ-ル層(C)は全厚の10~25%になるようにすることが好ましい。シ-ル層(C)の厚さ2~12.5μmとすることが好ましく、3~10μmとすることがより好ましい。
【0035】
本発明の積層フィルムの曇り度は、充分なマット感を得るために、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
【0036】
本発明の積層フィルムの光沢度は、表面のつやを抑えて和紙に近い風合いを出すためには20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましく、5%以下であることが更に好ましい。
本発明の積層フィルムの剛性は、包装材として適用した際に好適な強度を保持するために、500MPa以上であることが好ましく、600MPa以上であることがより好ましく、650MPa以上であることが更に好ましい。
また、本発明の積層フィルムの衝撃強度は、0.15J(23℃)以上であることが好ましく、0.17J(23℃)以上であることがより好ましい。衝撃強度は、積層フィルムを23℃に状態調整された恒温室内で、サンプルを6時間保持した後、直径25.4mmの球状の衝撃頭を用いてフィルムインパクト法で測定することにより求められる。
【0037】
前記の各樹脂層(A)、(B)又は(C)には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【0038】
本発明の積層フィルムの製造方法としては、特に限定されないが、例えば、表面樹脂層(A)、樹脂層(B)及びシ-ル層(C)に用いる各樹脂又は樹脂混合物を、それぞれ別々の押出機で加熱溶融させ、共押出多層ダイス法やフィ-ドブロック法等の方法により溶融状態で(A)/(B)/(C)の順で積層した後、インフレ-ションやTダイ・チルロ-ル法等によりフィルム状に成形する共押出法が挙げられる。この共押出法は、各層の厚さの比率を比較的自由に調整することが可能で、衛生性に優れ、コストパフォ-マンスにも優れた共押出多層フィルムが得られるので好ましい。さらに、本発明で用いる高密度ポリエチレン(a1)と、プロピレン系樹脂(a2)には、両者間で融点の差が大きいため、共押出加工時にフィルム外観が劣化する場合がある。このような劣化を抑制するためには、比較的高温で溶融押出を行うことができるTダイ・チルロ-ル法が好ましい。
【0039】
本発明の積層フィルムは、上記の製造方法によって、実質的に無延伸の多層フィルムとして得られるため、真空成形による深絞り成形等の二次成形も可能となる。
【0040】
さらに、表面樹脂層(A)に印刷等を行なう場合には、印刷インキとの接着性等を向上させるため、前記樹脂層(A)に表面処理を施すことが好ましい。樹脂層(B)またはシ-ル層(C)面に他フィルムと貼り合わせる場合には、接着剤との密着性を向上させるために、前記樹脂層(B)またはシ-ル層(C)に表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理等の表面酸化処理、あるいはサンドブラスト等の表面凹凸処理を挙げることができるが、好ましくはコロナ処理である。
【0041】
前記包装袋は、本発明の積層フィルムのシ-ル層(C)をヒ-トシ-ル層として、シ-ル層(C)同士を重ねてヒ-トシ-ル、あるいは表面樹脂層(A)とシ-ル層(C)とを重ね合わせてヒ-トシ-ルすることにより、シ-ル層(C)を内側として形成した包装袋であることが好ましい。例えば当該積層フィルム2枚を所望とする包装袋の大きさに切り出して、それらを重ねて3辺をヒ-トシ-ルして袋状にした後、ヒ-トシ-ルをしていない1辺から内容物を充填しヒ-トシ-ルして密封することで包装袋として用いることができる。さらには自動包装機によりロ-ル状のフィルムを円筒形に端部をシ-ルした後、上下をシ-ルすることにより包装袋を形成することも可能である
【0042】
また、本発明の積層フィルムと他のフィルムをラミネ-トして複合フィルムとして使用することもできる。他のフィルムは、表面樹脂層(A)側に設けても、樹脂層(B)又はシ-ル層(C)側に設けてもよいが、樹脂層(B)又はシ-ル層(C)側にシ-ラントフィルムを設けることが好ましい。
その際、使用する他のフィルムとしては、比較的機械強度の弱いLDPE、EVA、ポリプロピレン等のフィルムを用いることができ、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)を用いることが好ましい。また、LDPE、EVA、ポリプロピレン等のフィルムと、比較的引き裂き性の良い延伸フィルム、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレ-トフィルム(OPET)、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)等とを貼り合わせたラミネ-トフィルムも用いることができる。
また、本発明の積層フィルムと他のフィルムをラミネ-トしてなる積層体の積層方法としては、上記のヒ-トシ-ルの他に、例えば、ドライラミネ-ション、ウェットラミネ-ション、ノンソルベントラミネ-ション、押出ラミネ-ション等の方法が挙げられる。
【0043】
前記ドライラミネ-ションで用いる接着剤としては、例えば、ポリエ-テル-ポリウレ
タン系接着剤、ポリエステル-ポリウレタン系接着剤等が挙げられる。
【0044】
本発明の積層フィルム、または本発明の積層フィルムとプラスチック基材をラミネ-トしてなる積層体を用いた包装材としては、食品、薬品、工業部品、雑貨、雑誌等の用途に用いる包装袋、容器、容器の蓋材等が挙げられる。特に、マット感が従来になく優れる点から、和紙等に似た包装材を提供でき、高級感を引き出すために用いる食品用等に好適に用いることができる。
【実施例
【0045】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳しく説明する。以下、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0046】
実施例1
表面層(A)として、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:7.0 g/10分間)20部と、サトウキビ由来高密度ポリエチレン(Braskem社 SGM9450F 密度:0.952g/cm3、MFR:0.05 g/10分間)55部と、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:7.0 g/10分間)25部とからなる混合物を用いた。
また、樹脂層(B)として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:7.0 g/10分間)85部と、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン(Braskem社 SLH218 密度:0.916g/cm3、MFR:2.3 g/10分間)15部からなる混合物を用いた。
更に、シ-ル層(C)として、(1)プロピレン-エチレンランダム共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:5.0 g/10分間)80部と、(2)プロピレン-エチレンランダム共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:8.0 g/10分間)20部からなる混合物を用いた。
これらをそれぞれ3台の押出機に供給し、表面樹脂層(A)と樹脂層(B)とシ-ル層(C)の平均厚さが7:10:3となるように共押出して、厚さ30μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られた3層フィルムのシ-ル層(C)に、表面エネルギ-が36mN/mになるようにコロナ放電処理を施して、積層フィルムを得た。
【0047】
実施例2
実施例1の表面樹脂層(A)として、プロピレン単独重合体27部/サトウキビ由来高密度ポリエチレン55部/プロピレン-エチレンブロック共重合体18部に代えた以外は実施例1と同様に行い、厚さ30μmの3層からなる共押出多層フィルムを得た。次いで、得られたフィルムのシ-ル層(C)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギ-が36mN/mになるようにコロナ放電処理を施した。
【0048】
比較例1
表面樹脂層(A)として、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:7.0 g/10分間)40部と、サトウキビ由来高密度ポリエチレン(Braskem社 SGM9450F 密度:0.952g/cm3、MFR:0.05 g/10分間)60部からなる混合物を用いた。
また、中間層(B)として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:7.0 g/10分間)85部と、サトウキビ由来直鎖状低密度高密度ポリエチレン(Braskem社 SLH218 密度:0.916g/cm3、MFR:2.3 g/10分間)15部からなる混合物を用いた。
更に、シ-ル層(C)として、(1)プロピレン-エチレンランダム共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:5.0 g/10分間)80部と、(2)プロピレン-エチレンランダム共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:8.0 g/10分間)20部からなる混合物を用いた。
これらをそれぞれ3台の押出機に供給し、表面樹脂層(A)と樹脂層(B)とシ-ル層(C)の平均厚さが7:10:3となるように共押出して、厚さ30μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られたフィルムのシ-ル層(C)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギ-が36mN/mになるようにコロナ放電処理を施した。
【0049】
比較例2
表面樹脂層(A)として、プロピレン単独重合体(密度:0.90g/cm3、MFR:7.0 g/10分間)40部と、化石燃料由来の高密度ポリエチレン(密度:0.955g/cm3、MFR:0.35 g/10分間)60部からなる混合物を用いた。
また、中間層(B)として、プロピレン-エチレンブロック共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:7.0 g/10分間)90部と、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレン(密度:0.905g/cm3、MFR:4g/10分間)15部からなる混合物を用いた。
更に、シ-ル層(C)として、(1)プロピレン-エチレンランダム共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:5.0 g/10分間)80部と、(2)プロピレン-エチレンランダム共重合体(密度:0.90 g/cm3、MFR:8.0 g/10分間)20部からなる混合物を用いた。
これらをそれぞれ3台の押出機に供給し、表面樹脂層(A)と樹脂層(B)とシ-ル層(C)の平均厚さが3:5:2となるように共押出して、厚さ30μmの3層フィルムを成形した。次いで、得られたフィルムのシ-ル層(C)の表面を、実施例1と同様に表面エネルギ-が36mN/mになるようにコロナ放電処理を施した。
【0050】
上記の実施例1、2及び比較例1、2で得られた積層フィルムを用いて、下記の試験及び評価を行った。
【0051】
(1)曇り度の測定
得られたフィルムを用い、JIS K7105に基づき、フィルム1枚についてヘ-ズメ-タ-(日本電飾工業株式会社製)を用いて曇り度(単位:%)測定した。
【0052】
(2)光沢度の測定
得られたフィルムを用い、JIS K7105に基づき、フィルム1枚についてヘ-ズメ-タ-(日本電飾工業株式会社製)を用いて光沢度(単位:%)を測定した。
【0053】
(3)表面粗さ(Ra)の測定
得られたフィルムを用い、JIS B-0601に基づき、フィルム1枚について東京精密社製 SURFCOM 480Aを用いて表面樹脂層(A)側の表面粗さ(Ra)(単位:μm)を測定した。
【0054】
(4)剛性の測定
得られたフィルムを用い、ASTM D-882に基づき、23℃における1%接線モジュラス(単位:MPa)を、フィルム製造時の押出方向(以下、「MD」という。)について、テンシロン引張試験機〔株式会社エ-・アンド・デ-製〕を用いて測定した。
【0055】
(5)衝撃強度の測定
得られたフィルムを用い、23℃に状態調整された恒温室内で、サンプルを6時間保持した後、直径25.4mmの球状の衝撃頭を用いてフィルムインパクト法で測定した。
【0056】
(6)成膜性
得られたフィルムを用いて、目視にてフィルムの外観を確認した。
○:フィルムに穴が発生していないもの
×:フィルムに穴が開いているもの
(7)バイオマス度
フィルム中に含まれる植物由来のポリエチレンの配合比から、バイオマス度を計算した。
【0057】
上記で得られた結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

表1の結果より、比較例1の表面樹脂層(A)として植物由来高密度ポリエチレン/プロピレン単独重合体の2元系を用いた積層フィルムは成膜中に穴が発生し、衝撃強度も低下した。比較例2の表面樹脂層(A)として高密度ポリエチレン/プロピレン単独重合体の2元系を用いた積層フィルムでは穴が発生しなかったことから、比較例1の穴の原因は、植物由来高密度ポリエチレンを用いたことに起因すると考えられる。これに対して、実施例1及び2の積層フィルムは植物由来の樹脂を含有し、高水準のバイオマス度を達成しつつ、曇り度や光沢度に優れ、好適な剛性、衝撃強度、表面滑り性、成膜性を有することから、環境負荷低減を実現できる包装用フィルムとして好適である。
【要約】
メルトフロ-レ-トが1g/10分以下の植物由来の高密度ポリエチレン(a1)と、メルトフロ-レ-トが0.5g/10分以上30g/10分以下のプロピレン系樹脂(a2)とを含有する表面樹脂層(A)と、ポリオレフィン系樹脂(b1)を含有する樹脂層(B)と、が積層されたマット調積層フィルムであって、前記プロピレン系樹脂(a2)としてプロピレン単独重合体(a2-1)及びプロピレン-α-オレフィンブロック共重合体(a2-2)を含有するマット調積層フィルムを提供する。