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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/11 20060101AFI20220511BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/11 502
C08G65/40
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019515728
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2018017314
(87)【国際公開番号】W WO2018203540
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2017092008
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】緒方 裕斗
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄人
(72)【発明者】
【氏名】田村 護
(72)【発明者】
【氏名】岸岡 高広
【審査官】倉本 勝利
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-202228(JP,A)
【文献】特開2007-099943(JP,A)
【文献】特表2017-511780(JP,A)
【文献】国際公開第2015/030060(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/052130(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
C08G 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、下記式(1a)又は式(1b)で表される化合物、及び溶剤を含み、前記樹脂に対し、前記式(1a)又は式(1b)で表される化合物を0.01質量%乃至60質量%含有し、
前記樹脂は、ポリエステル、ポリエーテル及びノボラック樹脂のうちの1つ以上を有し、また該樹脂は、マレイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂を含まない、
レジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(式中、Xはカルボニル基又はメチレン基を表し、l及びmはそれぞれ独立に3≦l+m≦10の関係式を満たす0乃至5の整数を表し、nは2乃至5の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1a)で表される化合物における少なくとも一方のベンゼン環は、該環の2つ以上の隣接する炭素原子にフェノール性ヒドロキシ基が存在し、前記式(1b)で表される化合物におけるベンゼン環は、該環の2つ以上の隣接する炭素原子にフェノール性ヒドロキシ基が存在する、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記式(1a)で表される化合物においてl及びmはそれぞれ3を表し、前記式(1b)で表される化合物においてnは3を表す、請求項1又は請求項2に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記樹脂はエポキシ環又はオキセタン環を含む置換基を有さない共重合体である、請求項
1乃至請求項3のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
表面に凹部を有し且つ無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布する工程、前記レジスト下層膜形成組成物をベークすることにより少なくとも前記凹部にレジスト下層膜を形成する工程、及び前記レジスト下層膜上にレジストパターンを形成する工程を有する半導体素子の製造方法。
【請求項6】
前記半導体基板は、幅が0.001μm乃至0.10μmでアスペクト比が1乃至100のトレンチを有する、請求項5に記載の半導体素子の製造方法。
【請求項7】
表面に無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストパターンを形成する工程、前記レジストパターンをマスクとして前記レジスト下層膜をドライエッチングし前記無機膜又は前記半導体基板の表面を露出させる工程、及びドライエッチング後の前記レジスト下層膜をマスクとして、過酸化水素水溶液を用いて前記無機膜又は前記半導体基板をウエットエッチング及び洗浄する工程を有する、パターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光時に反射防止膜として機能すると共に、狭スペース及び高アスペクト比の凹部を埋め込むことができるレジスト下層膜、及び過酸化水素水溶液に対する耐性に優れたレジスト下層膜(保護膜)を形成するための組成物に関する。さらに前記レジスト下層膜を適用してパターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板とその上に形成されるレジスト膜との間にレジスト下層膜を設け、所望の形状のレジストパターンを形成する、リソグラフィープロセスが知られている。しかしながら、従来のレジスト下層膜、例えば下記特許文献1に記載されている、アミノプラスト系架橋剤を含む組成物から形成されたレジスト下層膜は、過酸化水素水溶液に対する耐性に劣る。そのため、このようなレジスト下層膜を、過酸化水素水溶液を用いたウエットエッチングプロセスにおけるマスクとして使用することができなかった。
【0003】
下記特許文献2には、保護されたカルボキシル基を有する化合物、カルボキシル基と反応可能な基を有する化合物、及び溶剤を含むリソグラフィー用下層膜形成組成物、又はカルボキシル基と反応可能な基と保護されたカルボキシル基とを有する化合物、及び溶剤を含むリソグラフィー用下層膜形成組成物が記載されており、当該組成物はアミノプラスト系架橋剤を必須成分として含まない。しかしながら特許文献2には、当該組成物から形成されたレジスト下層膜の過酸化水素水溶液に対する耐性について、何ら記載も示唆もない。
【0004】
下記特許文献3には、塩基性過酸化水素水溶液に対する耐性を有するレジスト下層膜を用いたパターン形成方法が記載されている。そして、当該レジスト下層膜を形成するための組成物は、重量平均分子量1000乃至100,000の、エポキシ基を有するポリマー、及び溶剤を含む。
【0005】
下記特許文献4には、構造単位中に硫黄原子を少なくとも1つ有するポリマーを用いたレジスト下層膜形成組成物が記載されている。半導体素子の製造において、表面に凹部を有する基板を用いる場合、当該基板の凹部を埋め込むことができるギャップフィル材又は平坦化膜が必要とされる。しかしながら、特許文献4には、凹部の埋め込み性について何ら記載はなく示唆もない。
【0006】
下記特許文献5には、トリアジン環及び硫黄原子を主鎖に有する共重合体を用いたレジスト下層膜形成組成物が記載されている。特許文献5に記載の組成物を用いることで、露光時に反射防止膜として機能し、さらに半導体基板のホール(直径0.12μm、深さ0.4μm)を埋め込むことができる、レジスト下層膜が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4145972号公報
【文献】国際公開第2005/013601号
【文献】国際公開第2015/030060号
【文献】国際公開第2009/096340号
【文献】国際公開第2015/098525号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体素子の製造において、露光時に反射防止膜として機能すること、半導体基板の凹部を埋め込むことができること、及び過酸化水素水溶液に対する耐性を有し、該過酸化水素水溶液に対する保護膜として用いたパターン形成ができること、これら全ての要件を満たすレジスト下層膜が求められている。しかし、前記凹部が狭スペース及び高アスペクト比のトレンチである場合、従来のレジスト下層膜形成組成物を用いて該凹部を完全に埋め込むことは容易ではなかった。また、従来のレジスト下層膜形成組成物では該レジスト下層膜を用いたパターン形成を行うことは容易ではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、樹脂、フェノール性ヒドロキシ基を複数有するベンゾフェノン誘導体、ジフェニルメタン誘導体又は安息香酸誘導体、及び溶剤を含み、前記樹脂成分の含有量に対し前記ベンゾフェノン誘導体、ジフェニルメタン誘導体又は安息香酸誘導体を特定量含有するレジスト下層膜形成組成物を適用することにより、上記課題を解決するものである。ここで、前記フェノール性ヒドロキシ基とは、ベンゼン環に結合したヒドロキシ基を意味する。
【0010】
本発明の第1の態様は、樹脂、下記式(1a)又は式(1b)で表される化合物、及び溶剤を含み、前記樹脂に対し、前記式(1a)又は式(1b)で表される化合物を0.01質量%乃至60質量%含有する、レジスト下層膜形成組成物である。
【化1】
(式中、Xはカルボニル基又はメチレン基を表し、l及びmはそれぞれ独立に3≦l+m≦10の関係式を満たす0乃至5の整数を表し、nは2乃至5の整数を表す。)
【0011】
前記式(1a)で表される化合物は、好ましくは、少なくとも一方のベンゼン環において、該環の2つ以上の隣接する炭素原子にフェノール性ヒドロキシ基が存在し、前記式(1b)で表される化合物は、好ましくは、ベンゼン環において、該環の2つ以上の隣接する炭素原子にフェノール性ヒドロキシ基が存在する。
前記式(1a)で表される化合物においてl及びmは例えばそれぞれ3を表し、前記式(1b)で表される化合物においてnは例えば3を表す。
【0012】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、架橋剤を含有してもよい。例えば、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基が結合した窒素原子を少なくとも2つ有する含窒素化合物、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を少なくとも2つ有する芳香族化合物、少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物、或いは少なくとも2つのブロックイソシアネート基を有する化合物である。
【0013】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、架橋反応を促進させるために、架橋触媒を含有してもよい。例えば、スルホン酸化合物若しくはカルボン酸化合物、又は熱酸発生剤である。
【0014】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、界面活性剤をさらに含有してもよい。
【0015】
前記樹脂は、例えば、エポキシ環又はオキセタン環を含む置換基を有さない共重合体である。
【0016】
本発明の第2の態様は、表面に凹部を有し且つ無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に、本発明の第1の態様のレジスト下層膜形成組成物を塗布する工程、前記レジスト下層膜形成組成物をベークすることにより少なくとも前記凹部にレジスト下層膜を形成する工程、及び前記レジスト下層膜上にレジストパターンを形成する工程を有する半導体素子の製造方法である。
【0017】
前記半導体基板は、例えば、幅が0.001μm乃至0.10μmでアスペクト比が1乃至10のトレンチを有する。
【0018】
本発明の第3の態様は、表面に無機膜が形成されていてもよい半導体基板上に本発明の第1の態様のレジスト下層膜形成組成物を用いてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストパターンを形成する工程、前記レジストパターンをマスクとして前記レジスト下層膜をドライエッチングし前記無機膜又は前記半導体基板の表面を露出させる工程、及びドライエッチング後の前記レジスト下層膜をマスクとして、過酸化水素水溶液を用いて前記無機膜又は前記半導体基板をウエットエッチング及び洗浄する工程を有する、パターン形成方法である。
【0019】
前記過酸化水素水溶液として、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、トリエタノールアミン又は尿素を含む塩基性過酸化水素水溶液、及び塩酸又は硫酸を含む酸性過酸化水素水溶液が挙げられる。前記過酸化水素水溶液がアンモニアを含む塩基性過酸化水素水溶液である場合、当該塩基性過酸化水素水溶液は、例えば、25質量%乃至30質量%のアンモニア水溶液(A)、30質量%乃至36質量%の過酸化水素水溶液(B)及び水(C)の混合物であり、前記アンモニア水溶液(A)に対する前記過酸化水素水溶液(B)の体積比:(B)/(A)は例えば0.1乃至20.0、及び前記アンモニア水溶液(A)に対する前記水(C)の体積比:(C)/(A)は例えば0.1乃至50.0である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、過酸化水素水溶液に対する耐性を有する。そのため、本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜(保護膜)は、過酸化水素水溶液を用いたエッチングプロセス及び洗浄プロセスにおけるマスクとして使用できる。
【0021】
本発明のレジスト下層膜形成組成物から形成されるレジスト下層膜は、フェノール性ヒドロキシ基を複数有する、ベンゾフェノン誘導体、又は安息香酸誘導体を含む。このようなレジスト下層膜形成組成物を用いることによって、露光時に反射防止膜として機能し、さらに狭スペース及び高アスペクト比のトレンチを完全に埋め込むことができる、レジスト下層膜が得られる。本明細書で“完全に埋め込む”とは、レジスト下層膜でトレンチ内部が充填された結果、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた断面観察により、当該トレンチにボイド(隙間)が観察されない状態を表す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を用いて作製されたレジスト下層膜上に形成されたフォトレジストパターンの断面SEM像である。
図2】レジスト下層膜によるトレンチの埋め込み性(充填性)試験で使用した、SiO2ウエハーの断面を表す模式図である。
図3】実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を用いてSiO2ウエハー上にレジスト下層膜が形成された、当該SiO2ウエハーの断面SEM像である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれる成分について、以下に詳細を説明する。
【0024】
[樹脂]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、樹脂を必須成分として含む。当該樹脂は特に限定されないが、例えば、ポリエステル、ポリエーテル及びノボラック樹脂が挙げられる。また、当該樹脂として、エポキシ環又はオキセタン環を含む置換基を有さない共重合体が好ましく用いられる。上記エポキシ環又はオキセタン環を含む置換基として、例えば、グリシジル基及びオキセタニル基が挙げられる。
【0025】
[式(1a)又は式(1b)で表される化合物]
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、前記式(1a)又は式(1b)で表される化合物を必須成分として含む。当該式(1a)で表される化合物として、例えば下記式(1a-1)乃至式(1a-20)で表される化合物が挙げられる。
【化2】
【0026】
前記式(1a)で表される化合物の中で、例えば、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4,4’-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4-トリヒドロキシジフェニルメタン、及び2,3,4,4’-テトラヒドロキシジフェニルメタンは、容易に入手可能である点で好ましい。また、前記式(1a)で表される化合物の中で、過酸化水素水溶液に対する耐性向上の点から、フェノール性ヒドロキシ基を複数有するベンゾフェノン誘導体がより好ましい。
【0027】
前記式(1b)で表される化合物として、下記式(1b-1)乃至式(1b-15)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0028】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、前記式(1a)又は式(1b)で表される化合物を、前記樹脂の含有量に対し、例えば0.01質量%乃至60質量%、好ましくは0.1質量%乃至20質量%含むものである。前記式(1a)又は式(1b)で表される化合物の含有量が0.01質量%未満である場合、本発明の効果を得られないことがある。
【0029】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、任意成分として、上記化合物と共に、架橋剤を含むことができる。この架橋剤は架橋性化合物とも称する。当該架橋性化合物としては、少なくとも2つの架橋形成置換基を有する化合物が好ましく用いられ、例えば、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基といった架橋形成置換基を少なくとも2つ有する、メラミン系化合物、置換尿素系化合物又は芳香族化合物、少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物、及び少なくとも2つのブロックイソシアネート基を有する化合物が挙げられる。アルコキシメチル基として、例えば、メトキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基及びブトキシメチル基が挙げられる。架橋性化合物として、より好ましくは、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基が結合した窒素原子を少なくとも2つ、例えば2乃至4つ有する含窒素化合物が用いられる。当該含窒素化合物として、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素及び1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素が挙げられる。
【0030】
上記ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を少なくとも2つ有する芳香族化合物として、例えば、1-ヒドロキシベンゼン-2,4,6-トリメタノール、3,3’,5,5’-テトラキス(ヒドロキシメチル)-4,4’-ジヒドロキシビフェニル(商品名:TML-BP,本州化学工業(株)製)、5,5’-[2,2,2-トリフルオロ-1-(トリフルオロメチル)エチリデン]ビス[2-ヒドロキシ-1,3-ベンゼンジメタノール](商品名:TML-BPAF-MF,本州化学工業(株)製)、2,2-ジメトキシメチル-4-t-ブチルフェノール(商品名:DMOM-PTBP,本州化学工業(株)製)、3,3’,5,5’-テトラメトキシメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル(商品名:TMOM-BP,本州化学工業(株)製)、ビス(2-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン(商品名:DM-BIPC-F,旭有機材工業(株)製)、ビス(4-ヒドロキシ-3-ヒドロキシメチル-5-メチルフェニル)メタン(商品名:DM-BIOC-F,旭有機材工業(株)製)、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジヒドロキシメチルフェニル)プロパン(商品名:TM-BIP-A,旭有機材工業(株)製)が挙げられる。
【0031】
上記少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物として、例えば、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,2-エポキシ-4-(エポキシエチル)シクロヘキサン、グリセロールトリグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、2,6-ジグリシジルフェニルグリシジルエーテル、1,1,3-トリス[p-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]プロパン、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、4,4’-メチレンビス(N,N-ジグリシジルアニリン)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、トリメチロールエタントリグリシジルエーテル、ビスフェノール-A-ジグリシジルエーテル、(株)ダイセル製のエポリード〔登録商標〕GT-401、同GT-403、同GT-301、同GT-302、セロキサイド〔登録商標〕2021、同3000、三菱化学(株)製の1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010、828、807、152、154、180S75、871、872、日本化薬(株)製のEPPN201、同202、EOCN-102、同103S、同104S、同1020、同1025、同1027、ナガセケムテックス(株)製のデナコール〔登録商標〕EX-252、同EX-611、同EX-612、同EX-614、同EX-622、同EX-411、同EX-512、同EX-522、同EX-421、同EX-313、同EX-314、同EX-321、BASFジャパン(株)製のCY175、CY177、CY179、CY182、CY184、CY192、DIC(株)製のエピクロン200、同400、同7015、同835LV、同850CRPが挙げられる。
【0032】
上記少なくとも2つのエポキシ基を有する化合物として、ポリマー化合物を使用することもできる。このポリマー化合物は、エポキシ基を少なくとも2つ有するポリマーであれば特に制限なく使用することができ、エポキシ基を有する付加重合性モノマーを用いた付加重合により、又はヒドロキシ基を有するポリマーと、エピクロルヒドリン、グリシジルトシレート等のエポキシ基を有する化合物との反応により製造することができる。エポキシ基を少なくとも2つ有するポリマーとして、例えば、ポリグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート及びエチルメタクリレートの共重合体、グリシジルメタクリレート、スチレン及び2-ヒドロキシエチルメタクリレートの共重合体等の付加重合ポリマー、エポキシノボラック等の縮重合ポリマーが挙げられる。前記ポリマー化合物の重量平均分子量としては、例えば、300乃至200,000である。なお、重量平均分子量は、GPCにより、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0033】
少なくとも二つのエポキシ基を有する化合物として、さらに、アミノ基を有するエポキシ樹脂を使用することもできる。このようなエポキシ樹脂として、例えば、YH-434、YH-434L(以上、新日化エポキシ製造(株)製)が挙げられる。
【0034】
上記少なくとも2つのブロックイソシアネート基を有する化合物として、例えば、三井化学(株)製のタケネート〔登録商標〕B-830、同B-870N、エボニック デグサ社製のVESTANAT〔登録商標〕-B1358/100が挙げられる。
これらの化合物は、単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
上記架橋性化合物が使用される場合、当該架橋性化合物の含有量は、前記樹脂の含有量に対し、例えば1質量%乃至80質量%、好ましくは5質量%乃至60質量%である。前記架橋性化合物の含有量が過少である場合及び過剰である場合には、形成される膜のレジスト溶剤に対する耐性が得られにくくなることがある。
【0036】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、任意成分として、架橋反応を促進させるために、架橋触媒(酸触媒)を含有してもよい。当該架橋触媒として、例えば、スルホン酸化合物若しくはカルボン酸化合物、又は熱酸発生剤を用いることができる。スルホン酸化合物として、例えば、p-トルエンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホナート、ピリジニウム-トリフルオロメタンスルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ピリジニウム-4-ヒドロキシベンゼンスルホナート、n-ドデシルベンゼンスルホン酸、4-ニトロベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸が挙げられる。カルボン酸化合物として、例えば、サリチル酸、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸が挙げられる。熱酸発生剤として、例えば、K-PURE〔登録商標〕CXC-1612、同CXC-1614、同TAG-2172、同TAG-2179、同TAG-2678、同TAG2689、同TAG2700(King Industries社製)、及びSI-45、SI-60、SI-80、SI-100、SI-110、SI-150(三新化学工業(株)製)が挙げられる。
これら架橋触媒は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。当該架橋触媒が使用される場合、その含有量は、前記樹脂の含有量に対し、例えば0.1質量%乃至20質量%、好ましくは1質量%乃至10質量%である。
【0037】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、任意成分として、基板に対する塗布性を向上させるために界面活性剤を含むことができる。前記界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤、エフトップ〔登録商標〕EF301、同EF303、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック〔登録商標〕F171、同F173、同R-30、同R-30N、同R-40-LM(DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガード〔登録商標〕AG710、サーフロン〔登録商標〕S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。これらの界面活性剤は単独で添加してもよいし、また2種以上の組合せで添加することもできる。
【0038】
上記界面活性剤が使用される場合、当該界面活性剤の含有量は、前記樹脂の含有量に対し、例えば、0.01質量%乃至5質量%、好ましくは0.1質量%乃至3質量%である。
【0039】
本発明のレジスト下層膜形成組成物は、上記各成分を適当な溶剤に溶解させることによって調製でき、均一な溶液状態で用いられる。そのような溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びN-メチルピロリドンを用いることができる。これらの溶剤は単独または2種以上の組合せで使用することができる。さらに、これらの溶剤に、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等の高沸点溶剤を混合して使用することもできる。
【0040】
調製した組成物は、孔径が例えば0.2μm、又は0.1μm、もしくは0.05μmのフィルター等を用いてろ過した後、使用することが好ましい。本発明のレジスト下層膜形成組成物は、室温で長期間の貯蔵安定性にも優れる。
【0041】
本発明のレジスト下層膜形成組成物を用いたパターン形成方法について、以下に説明する。
本発明のパターン形成方法により、半導体基板の表面や半導体基板上の無機膜等にパターンを形成することができる。
【0042】
本発明のレジスト下層膜形成組成物が塗布される半導体基板としては、例えば、シリコン基板、ゲルマニウム基板、及びヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム等の化合物半導体ウエハーが挙げられる。表面に無機膜が形成された半導体基板を用いる場合、当該無機膜は、例えば、ALD(原子層堆積)法、CVD(化学気相堆積)法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スピンコーティング法(スピンオングラス:SOG)により形成される。前記無機膜として、例えば、ポリシリコン膜、酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜、窒化チタン膜、窒化酸化チタン膜、タングステン膜、窒化ガリウム膜、及びヒ化ガリウム膜が挙げられる。
【0043】
凹部を有する上記基板の上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明の組成物が塗布され、その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることによりレジスト下層膜が形成される。ベーク条件としては、ベーク温度80℃乃至350℃、ベーク時間0.3分乃至10分間の中から適宜選択される。好ましくは、ベーク温度120℃乃至300℃、ベーク時間0.5分乃至5分間である。ここで、レジスト下層膜の膜厚としては、0.005μm乃至3.0μm、例えば0.01μm乃至0.1μm、又は0.05μm乃至0.5μmである。
【0044】
ベーク時の温度が、上記範囲より低い場合には架橋が不十分となり、形成されるレジスト下層膜の、レジスト溶剤又は過酸化水素水溶液に対する耐性が得られにくくなることがある。一方、ベーク時の温度が上記範囲より高い場合は、レジスト下層膜が熱によって分解し、当該レジスト膜とインターミキシングを起こすことがある。
【0045】
次いで前記レジスト下層膜の上に、レジスト膜を形成する。レジスト膜の形成は一般的な方法、すなわち、フォトレジスト溶液のレジスト下層膜上への塗布及びベークによって行なうことができる。
【0046】
前記レジスト膜の形成に使用するフォトレジスト溶液としては、露光に使用される光源に感光するものであれば特に限定はなく、ネガ型、ポジ型いずれも使用できる。
【0047】
レジストパターンを形成する際、該レジストパターンの所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して露光が行なわれる。露光には、例えば、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザーを使用することができる。露光後、必要に応じて露光後加熱(Post Exposure Bake)が行なわれる。“露光後加熱”の条件としては、加熱温度80℃乃至150℃、加熱時間0.3分乃至10分間の中から適宜選択される。その後、アルカリ現像液で現像する工程を経て、レジストパターンが形成される。
【0048】
前記アルカリ現像液としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液のようなアルカリ性水溶液を挙げることができる。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。現像の条件としては、現像温度5℃乃至50℃、現像時間10秒乃至300秒から適宜選択される。
【0049】
次いで、形成したレジストパターンをマスクとして、前記レジスト下層膜をドライエッチングする。その際、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されている場合、その無機膜の表面を露出させ、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されていない場合、その半導体基板の表面を露出させる。
【0050】
さらに、ドライエッチング後のレジスト下層膜(そのレジスト下層膜上にレジストパターンが残存している場合、そのレジストパターンも)をマスクとして、過酸化水素水溶液を用いてウエットエッチングすることにより、所望のパターンが形成される(例えば、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されている場合、その無機膜に所望のパターンを形成することができ、また、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されていない場合、その半導体基板の表面に所望のパターンを形成することができる。)。ウエットエッチングの薬液としては、塩基性を示す物質、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、トリエタノールアミン等の有機アミンと過酸化水素水とを混合しpHを塩基性にした塩基性過酸化水素水溶液、及び塩酸、硫酸等の無機酸と過酸化水素水とを混合した酸性過酸化水素水溶液を挙げることができる。その他、pHを塩基性にすることができるもの、例えば、尿素と過酸化水素水を混合し、加熱により尿素の熱分解を引き起こすことでアンモニアを発生させ、最終的にpHを塩基性にするものも、ウエットエッチングの薬液として使用できる。塩基性過酸化水素水溶液及び酸性過酸化水素水溶液の使用温度は25℃乃至90℃であることが望ましく、40℃乃至80℃であることがさらに望ましい。ウエットエッチング時間としては、0.1分乃至30分であることが望ましく、0.5分乃至15分であることがさらに望ましい。
【実施例
【0051】
以下、本発明のレジスト下層膜形成組成物の具体例を、下記実施例を用いて説明するが、これによって本発明が限定されるものではない。
【0052】
下記合成例で得られた反応生成物の重量平均分子量の測定に用いた装置等を示す。
装置:東ソー(株)製HLC-8320GPC
GPCカラム:Asahipak〔登録商標〕GF-310HQ、同GF-510HQ、同GF-710HQ
カラム温度:40℃
流量:0.6ml/分
溶離液:DMF
標準試料:ポリスチレン
【0053】
<合成例1>
プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、本明細書ではPGMEと略称する。)62.94gに、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレン(DIC(株)製、製品名:HP-4032D)10.00g、3,3’-ジチオジプロピオン酸(SC有機化学(株)製、製品名:DTDPA)5.07g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.67gを添加した後、105℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3,000であった。得られた反応生成物は、下記式(2)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化4】
【0054】
<合成例2>
PGME289.49gに、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレン(DIC(株)製、製品名:HP-4032D)15.00g、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製、製品名:MA-DGIC)23.10g、3,3’-ジチオジプロピオン酸(SC有機化学(株)製、製品名:DTDPA)31.72g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド2.55gを添加した後、105℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3,300であった。得られた反応生成物は、下記式(3)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化5】
【0055】
<合成例3>
PGME321.10gに、1,6-ビス(2,3-エポキシプロパン-1-イルオキシ)ナフタレン(DIC(株)製、製品名HP-4032D)16.00g、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製、製品名:MA-DGIC)24.64g、3,3’-ジチオジプロピオン酸(SC有機化学(株)製、製品名:DTDPA)36.92g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド2.72gを添加した後、105℃で24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は2,300であった。得られた反応生成物は、前記式(3)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【0056】
<合成例4>
PGME55.16gに、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製、製品名:エポライト40E)5.00g、5-フェニル-5-エチルバルビツル酸8.09g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.54gを添加した後、140℃にて加熱還流下、24時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は3,000であった。得られた反応生成物は、下記式(4)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化6】
【0057】
<合成例5>
PGME59.76gに、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(東洋ファインケム(株)製、製品名:1,4-BD-DEP(P))7.00g、モノアリルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製、製品名:MAICA)7.10g、ラジカルトラップ剤としてヒドロキノン(東京化成工業(株)製)0.19g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.65gを添加した後、140℃にて加熱還流下、6時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は5,000であった。得られた反応生成物は、下記式(5)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化7】
【0058】
<合成例6>
PGME132.74gに、エチレングリコールジグリシジルエーテル(共栄社化学(株)製、製品名:エポライト40E)6.00g、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(日本化薬(株)製、製品名:RE-303S-L)11.36g、モノアリルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製、製品名:MAICA)14.14g、ラジカルトラップ剤としてヒドロキノン(東京化成工業(株)製)0.38g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド1.29gを添加した後、140℃にて加熱還流下、6時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は8,500であった。得られた反応生成物は、下記式(6)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化8】
【0059】
<合成例7>
PGME79.32gに、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(東洋ファインケム(株)製、製品名:1,4-BD-DEP(P))10.00g、イソプロピリデンビス(2-アリル-4,1-フェニレン)ビス(グリシジルエーテル)(日本化薬(株)製、製品名:RE-810NM)21.31g、モノアリルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製、製品名:MAICA)18.61g、ラジカルトラップ剤としてヒドロキノン(東京化成工業(株)製)0.55g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド2.41gを添加した後、140℃にて加熱還流下、6時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は23,500であった。得られた反応生成物は、下記式(7)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【化9】
【0060】
<合成例8>
PGME15.54gに、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(東洋ファインケム(株)製、製品名:1,4-BD-DEP(P))3.00g、イソプロピリデンビス(2-アリル-4,1-フェニレン)ビス(グリシジルエーテル)(日本化薬(株)製、製品名:RE-810NM)2.74g、モノアリルイソシアヌレート(四国化成工業(株)製、製品名:MAICA)3.99g、ラジカルトラップ剤としてヒドロキノン(東京化成工業(株)製)0.12g、及び触媒としてエチルトリフェニルホスホニウムブロマイド0.52gを添加した後、140℃にて加熱還流下、6時間反応させ、反応生成物を含む溶液を得た。その後、イソプロピルアルコールにて再沈殿を行い、得られた反応生成物のGPC分析を行ったところ、標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量は20,000であった。得られた反応生成物は、前記式(7)で表される構造単位を有する共重合体と推定される。
【0061】
〔レジスト下層膜形成組成物の調製〕
<実施例1>
前記合成例1で得た、共重合体3.17gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)19.76gに、PGME41.06g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:パウダーリンク1174,日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.48g、5-スルホサリチル酸(東京化成工業(株)製)0.079g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.48g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.0032gを混合し、6.0質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0062】
<実施例2>
前記合成例2で得た、共重合体2.16gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)13.44gに、PGME15.35g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:パウダーリンク1174,日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.11g、5-スルホサリチル酸(東京化成工業(株)製)0.11g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.11g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.0022gを混合し、6.2質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0063】
<実施例3>
前記合成例2で得た、共重合体0.54gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)3.25gに、PGME6.10g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:パウダーリンク1174,日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.027g、5-スルホサリチル酸(東京化成工業(株)製)0.027g、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)0.027g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00054gを混合し、6.2質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0064】
<実施例4>
前記合成例2で得た、共重合体2.85gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)16.79gに、PGME32.96g、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.11g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.14g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.0028gを混合し、6.2質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0065】
<実施例5>
前記合成例2で得た、共重合体0.56gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)3.31gに、PGME6.61g、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.021g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.056g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00056gを混合し、6.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0066】
<実施例6>
前記合成例3で得た、共重合体1.12gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)7.05gに、PGME12.80g、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.042g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.11g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.0011gを混合し、6.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0067】
<実施例7>
前記合成例2で得た、共重合体0.57gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)3.44gに、PGME6.51g、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.021g、2,3,3’,4,4’,5’-ヘキサヒドロキシベンゾフェノン(東京化成工業(株)製)0.029g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00056gを混合し、6.2質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0068】
<実施例8>
前記合成例4で得た、共重合体0.56gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)3.34gに、PGME5.56g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、本明細書ではPGMEAと略称する。)0.93g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:パウダーリンク1174,日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.14g、K-PURE〔登録商標〕TAG2689(King Industries社製)0.0056g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.028g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00056gを混合し、7.3質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0069】
<実施例9>
前記合成例5で得た、共重合体0.51gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)2.97gに、PGME5.91g、PGMEA0.93g、3,3’,5,5’-テトラメトキシメチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル(商品名:TMOM-BP,本州化学工業(株)製)0.13g、K-PURE〔登録商標〕TAG2689(King Industries社製)0.013g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.051g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00051gを混合し、7.0質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0070】
<実施例10>
前記合成例6で得た、共重合体1.19gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)7.03gに、PGME5.91g、PGMEA0.93g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:パウダーリンク1174,日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.24g、ピリジニウムトリフルオロメタンスルホナート(東京化成工業(株)製)0.018g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.059g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.0012gを混合し、7.5質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0071】
<実施例11>
前記合成例7で得た、共重合体0.51gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)2.97gに、PGME6.02g、PGMEA0.95g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.051g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00051gを混合し、5.2質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0072】
<実施例12>
前記合成例8で得た、共重合体0.53gに、PGME8.51g、PGMEA0.95g、没食子酸水和物(東京化成工業(株)製)0.053g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00053gを混合し、5.4質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。
【0073】
<比較例1>
前記合成例1で得た、共重合体0.53gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)3.17gに、PGME4.49g、PGMEA0.89g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:パウダーリンク1174,日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.079g、5-スルホサリチル酸(東京化成工業(株)製)0.013g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00013gを混合し、6.2質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。本比較例は、前記式(1a)又は式(1b)で表される化合物を含まない例である。
【0074】
<比較例2>
前記合成例2で得た、共重合体0.56gを含む溶液(溶剤は合成時に用いたPGME)3.40gに、PGME5.96g、テトラメトキシメチルグリコールウリル(商品名:パウダーリンク1174,日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.028g、5-スルホサリチル酸(東京化成工業(株)製)0.028g、及び界面活性剤(DIC(株)製、商品名:R-30N)0.00056gを混合し、6.2質量%溶液とした。その溶液を、孔径0.2μmのポリテトラフルオロエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、レジスト下層膜形成組成物を調製した。本比較例もまた、前記式(1a)又は式(1b)で表される化合物を含まない例である。
【0075】
〔フォトレジスト溶剤への溶出試験〕
実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。その後、ホットプレート上で下記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。これらのレジスト下層膜を、フォトレジスト溶液に使用される溶剤であるPGME及びPGMEAに浸漬し、両溶剤に不溶であることを確認した。また、フォトレジスト現像用のアルカリ現像液(2.38質量%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)に浸漬し、当該アルカリ現像液に不溶であることを確認した。
【0076】
〔光学パラメーターの試験〕
実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。その後、ホットプレート上で下記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。そして、これらのレジスト下層膜を光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、VUV-VASE VU-302)を用い、波長193nm及び248nmでの、屈折率(n値)及び減衰係数(k値)を測定した。その結果を下記表1に示す。上記レジスト下層膜が十分な反射防止機能を有するためには、波長193nm又は248nmでのk値は0.1以上であることが望ましい。
【0077】
【表1】
【0078】
〔塩基性過酸化水素水溶液耐性試験〕
実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、スピナーにより、窒化チタン膜が表面に形成されたシリコン基板上に塗布した。その後、ホットプレート上で上記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。そして、上記シリコン基板上に作製されたレジスト下層膜を、下記表2で示す組成の塩基性過酸化水素水溶液(上記表1ではAPMと略称する。)に、同表に示す温度で浸漬し、そのレジスト下層膜がシリコン基板から剥がれるまでの時間を計測し、APM耐性を評価した。その結果を上記表1に示す。表1中、“○”は1分間浸漬時に上記レジスト下層膜の剥がれが観察されない状態を表し、“×”は1分間浸漬時に上記レジスト下層膜の一部又は全てにおいて剥がれが観察された状態を表している。
【0079】
【表2】
【0080】
〔フォトレジストパターン形状の評価〕
実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成用組成物を、スピナーにより、シリコンウエハー上に塗布した。それから、ホットプレート上で上記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。このレジスト下層膜の上に、市販のフォトレジスト溶液(JSR(株)製、商品名:AR2772)をスピナーにより塗布し、ホットプレート上で110℃にて90秒間ベークして、フォトレジスト膜(膜厚0.2μm)を形成した。
【0081】
次いで、(株)ニコン製スキャナー、NSRS307E(波長193nm、NA:0.85,σ:0.62/0.93(ANNULAR))を用い、現像後にフォトレジストのライン幅及びそのフォトレジストのライン間の幅が0.10μmであり、すなわち0.10μmL/S(デンスライン)であって、そのようなラインが100本形成されるように設定されたフォトマスクを通して露光を行った。その後、ホットプレート上、110℃で90秒間露光後加熱(PEB)をおこない、冷却後、工業規格の60秒シングルパドル式工程にて、現像液として0.26規定の水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液を用いて現像し、フォトレジストパターンを得た。
【0082】
得られたフォトレジストパターンについて、基板すなわちシリコンウエハーと垂直方向の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、リソグラフィー特性(上記表1ではリソ特性と略称する。)を評価した。その結果、いずれのフォトレジストパターンの断面形状も、良好なストレートの裾形状で、ほぼ矩形状であることが観察された。実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を用い、最終的にレジスト下層膜上に形成されたフォトレジストパターンの断面を撮影したSEM像を、図1にそれぞれ示す。表1中、“○”は前記フォトレジストパターンが倒れることなく形成されている状態を表し、“×”は前記フォトレジストパターンが倒れた状態を表している。
【0083】
〔埋め込み性(充填性)の試験〕
実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を、スピナーにより、トレンチ(幅0.01μm、深さ0.23μm)を複数有しSiO2膜が表面に形成されたシリコンウエハー(以下、本明細書ではSiO2ウエハーと略称する。)上に塗布した。その後、ホットプレート上で上記表1に示す温度で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚0.2μm)を形成した。
【0084】
なお図2に、本試験で使用したSiO2ウエハー4及び該ウエハーに対して形成した下層膜3の模式図を示す。当該SiO2ウエハー4は、トレンチのDense(密)パターンを有し、このDenseパターンは、トレンチ中心から隣のトレンチ中心までの間隔が、当該トレンチ幅の10倍であるパターンである。図2に示すとおり、SiO2ウエハー4のトレンチの深さ1は0.23μmであり、トレンチの幅2は0.01μmである。
【0085】
上述のように、実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2のレジスト下層膜形成組成物を用いてSiO2ウエハー上にレジスト下層膜が形成された、当該SiO2ウエハーの断面形状を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察することにより、レジスト下層膜によるSiO2ウエハーのトレンチへの埋め込み性(充填性)を評価した。得られた結果を図3に示す。実施例1乃至実施例12のレジスト下層膜形成組成物を用いてSiO2ウエハー上にレジスト下層膜を形成した場合、トレンチ部にボイド(隙間)は観察されず、当該レジスト下層膜でトレンチ内部は充填され、トレンチ全体が完全に埋め込まれていることが観察された。しかし、比較例1及び比較例2のレジスト下層膜形成組成物を用いてSiO2ウエハー上にレジスト下層膜を形成した場合、トレンチ部にボイド(隙間)は観察され、当該レジスト下層膜でトレンチ内部は充填されておらず、トレンチ全体が完全に埋め込まれていないことが観察された。表1中、“○”は前記トレンチ部にボイドが観察されない状態を表し、“×”は前記トレンチ部にボイドが観察される状態を表している。
【0086】
上記表1に示す結果は、実施例1乃至実施例12、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を用いて作製されたレジスト下層膜は、193nm又は248nmでのk値が0.1より大きい値を示している。すなわち、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザーのいずれかの光源用いた露光プロセスで反射防止機能を有していることを示している。
【0087】
また、実施例1乃至実施例12で調製されたレジスト下層膜形成組成物を用いて作製されたレジスト下層膜は、塩基性過酸化水素水溶液に対して十分な耐性を有することが示された。すなわち、これらの塗膜は、塩基性過酸化水素水溶液に対する保護膜となり得ることがわかった。一方、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を用いて作製されたレジスト下層膜は、塩基性過酸化水素水溶液に対する耐性を有さないことが示され、これらの塗膜は、塩基性過酸化水素水溶液に対する保護膜となり得ないことが明らかとなった。
【0088】
さらに、実施例1乃至実施例12で調製されたレジスト下層膜形成組成物を用いてSiO2ウエハー上に作製されたレジスト下層膜はトレンチ部にボイド(隙間)が観察されず、レジスト下層膜でトレンチ内部は充填され、トレンチ全体が完全に埋め込まれていることが観察された。一方、比較例1及び比較例2で調製されたレジスト下層膜形成組成物を用いて作製されたレジスト下層膜は、トレンチ部にボイド(隙間)が観察され、レジスト下層膜でトレンチ内部は充填されておらず、トレンチ全体が完全に埋め込まれていないことが観察された。
【符号の説明】
【0089】
1 SiO2ウエハーのトレンチの深さ
2 SiO2ウエハーのトレンチの幅
3 レジスト下層膜
4 SiO2ウエハー
図1
図2
図3