(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-10
(45)【発行日】2022-05-18
(54)【発明の名称】固体樹脂を含有するモールド用離型剤
(51)【国際特許分類】
B29C 33/60 20060101AFI20220511BHJP
C08F 299/00 20060101ALI20220511BHJP
【FI】
B29C33/60
C08F299/00
(21)【出願番号】P 2019558174
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2018044000
(87)【国際公開番号】W WO2019111798
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-10-01
(31)【優先権主張番号】P 2017236025
(32)【優先日】2017-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018144239
(32)【優先日】2018-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 由紀
(72)【発明者】
【氏名】首藤 圭介
(72)【発明者】
【氏名】長澤 偉大
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203908(JP,A)
【文献】国際公開第2012/105340(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/60
C08F 299/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有するモールド用離型剤。(A):下記式(1)で表される基及び下記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の全ての末端に、ウレタン結合を介して、下記式(3)で表される基を含む重合性基を有する、多官能(メタ)アクリレート化合物
(B):前記(A)成分の質量に基づいて1phr乃至100phrの、1013.25hPa下23℃における物質の状態が固体である
重量平均分子量1000乃至30000のマクロモノマー又はポリマーであり、該マクロモノマーは重合性基を片末端に有し、該ポリマーは下記式(4)、下記式(5)及び下記式(6)で表される構造単位のうち2つ以上を有する
(C):前記(A)成分の質量に基づいて0.05phr乃至15phrの光重合開始剤(D):溶媒
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1又は2のパーフルオロアルキレン基を表し、R
2aは炭素原子数2又は3のアルキレン基を表し、R
2bは炭素原子数2又は3の3価の炭化水素基を表し、*はそれぞれ前記ウレタン結合の-O-基と結合する結合手を表し、p及びqはそれぞれ前記式(1)で表される基の数及び前記式(2a)で表される基の数を表すと共に独立して2以上の整数を表し、R
3はメチル基又は水素原子を表
し、R
4
乃至R
6
はそれぞれ独立にメチル基又は水素原子を表し、A
1
は炭素原子数1乃至8のアルキル基を表し、A
2
は炭素原子数5乃至10の脂環式炭化水素基を表し、A
3
は炭素原子数1又は2のアルキレン基を表し、Xは前記式(3)で表される基を1つ又は2つ有する重合性基を表す。)
【請求項2】
前記qが5乃至12の整数である、請求項1に記載のモールド用離型剤。
【請求項3】
前記式(2a)で表される基がポリ(オキシエチレン)基である、請求項1又は請求項2に記載のモールド用離型剤。
【請求項4】
前記重合性基が前記式(3)で表される基を少なくとも2つ含む、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
【請求項5】
前記式(1)で表される基が、オキシパーフルオロメチレン基及びオキシパーフルオロエチレン基の双方を有する基である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
【請求項6】
前記(B)成分が
(メタ)アクリロイルオキシ基又はビニル基を片末端に有するマクロモノマ
ーである、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
【請求項7】
前記(B)成分が下記式
(7)で表される3種の構造単位を有するコポリマー、下記式(8)で表される3種の構造単位を有するコポリマー、又は下記式(9)で表される2種の構造単位を有するコポリマーである、請求項1乃至請求項
5のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
【化2】
【請求項8】
下記(E)成分をさらに含有する、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
(E):前記(A)成分の質量に基づいて0.01phr乃至10phrの光増感剤
【請求項9】
前記モールド用離型剤の総質量100質量%に対し、前記(A)成分の割合が0.1質量%乃至10質量%である、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
【請求項10】
前記(A)成分の質量に基づいて前記(B)成分の割合が10phr乃至100phrである、請求項1乃至請求項9のいずれか一項に記載のモールド用離型剤。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のモールド用離型剤から形成された被膜を備えた、離型処理された表面を有するモールド。
【請求項12】
前記モールドは金属製モールド又は樹脂製モールドである請求項11に記載の離型処理さ
れた表面を有するモールド。
【請求項13】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載のモールド用離型剤を樹脂製モールド上に塗布する工程、及び前記樹脂製モールド上に塗布されたモールド用離型剤を露光して前記樹脂製モールドの表面に被膜を形成する工程を有し、前記被膜をベークする工程及び/又は前記露光前に前記モールド用離型剤をベークする工程をさらに有する、離型処理された表面を有する樹脂製モールドの作製方法。
【請求項14】
請求項11又は請求項12に記載の離型処理された表面を有するモールドを光硬化性樹脂に圧着する工程、前記光硬化性樹脂を前記モールドに圧着させたまま光硬化する工程、及び前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を前記離型処理された表面を有するモールドから離型する工程を有する、パターンが転写された最大膜厚が1.5mmの硬化膜の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント時にモールド上に塗布して使用する離型剤に関する。前記離型剤が適用されるモールドとしては、樹脂製モールドのみならず、例えば金属製モールド、シリコン(Si)製モールド、アルミナ(Al2O3)製モールド及び石英製モールドにも採用される。
【背景技術】
【0002】
樹脂レンズは、携帯電話、デジタルカメラ、車載カメラなどの電子機器に用いられており、その電子機器の目的に応じた、優れた光学特性を有するものであることが求められている。また、使用態様に合わせて、高い耐久性、例えば耐熱性及び耐候性、並びに歩留まりよく成形できる高い生産性が求められている。このような要求を満たす樹脂レンズ用の材料としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンポリマー、メタクリル樹脂等の熱可塑性の透明樹脂が使用されていた。
【0003】
しかし、熱可塑性樹脂を用いた射出成型は歩留まりや生産効率が悪く、その改善やレンズ積層時の光軸ずれの抑制のために、室温で液状の硬化性樹脂を使った押しつけ成形によるウェハレベル成形への移行が盛んに検討されている。ウェハレベル成形では、生産性の観点から、ガラス基板等の支持体上にレンズを形成するハイブリッドレンズ方式が一般的である。
【0004】
ウェハレベル成形においては、モールドもウェハレベルで成型される必要がある。一般的な樹脂レンズ成形用のモールドとしては、石英製モールド、金属製モールド、及び樹脂製モールドが挙げられる。いずれのモールドを使用する場合でも、インプリント性を向上させるために、離型成分の内添、或いは離型層の形成が有効である。
【0005】
離型成分の内添、或いは離型層の形成においては、シリコーン系化合物又はフッ素系化合物が用いられる。フッ素系化合物は、表面エネルギーが低いため、撥水撥油性、防汚性、非粘着性、剥離性、離型性、滑り性、耐磨耗性、反射防止特性、耐薬品性などの界面制御に関する特性の向上が期待されており、含フッ素界面活性剤及び/又は環状構造を有するフッ素系ポリマーを含む光硬化性アクリル樹脂は離型性に優れることが、特許文献1に開示されている。
【0006】
従来、フッ素系化合物は有機溶媒への溶解性が低かったが、特許文献2では、高分岐ポリマーにフルオロアルキル基を導入し、得られる含フッ素高分岐ポリマーを樹脂の表面改質剤として採用することにより、有機溶媒に対する溶解性を向上させ、表面改質性に優れた成形体及び被膜が得られることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2006/114958号
【文献】特許第6156658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記含フッ素高分岐ポリマーは離型性、及び有機溶媒への溶解性に優れ、インプリントに有効な離型剤として用いることができる。しかし、使用するモールドによっては、該離型剤を、スピンコーター等を用いて塗布する時、及びその後、該離型剤に含まれる有機溶媒を除去するためのベーク時に、離型成分が流動し、モールドの表面の凹凸や異物を起点として、該離型成分の“ハジキ”が発生するという課題があった。このような“ハジキ”が発生した場合、目的のパターンがインプリントされる光硬化性樹脂にも、前記モールドの表面異常が転写されてしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、離型剤に固体樹脂を添加することで、該離型剤をモールドに塗布する時、及びその後、ベーク時に離型成分の流動を抑制し、モールドへの塗布性を向上させ、“ハジキ”を防止可能であることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、第1観点として、
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を含有するモールド用離型剤。
(A):下記式(1)で表される基及び下記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の全ての末端に、ウレタン結合を介して、下記式(3)で表される基を含む重合性基を有する、多官能(メタ)アクリレート化合物
(B):前記(A)成分の質量に基づいて1phr乃至100phrの、1013.25hPa下23℃における物質の状態が固体である樹脂
(C):前記(A)成分の質量に基づいて0.05phr乃至15phrの光重合開始剤
(D):溶媒
【化1】
(式中、R
1は炭素原子数1又は2のパーフルオロアルキレン基を表し、R
2aは炭素原子数2又は3のアルキレン基を表し、R
2bは炭素原子数2又は3の3価の炭化水素基を表し、*はそれぞれ前記ウレタン結合の-O-基と結合する結合手を表し、p及びqはそれぞれ前記式(1)で表される基の数及び前記式(2a)で表される基の数を表すと共に独立して2以上の整数を表し、R
3はメチル基又は水素原子を表す。)
第2観点として、前記qが5乃至12の整数である、第1観点に記載のモールド用離型剤。
第3観点として、前記式(2a)で表される基がポリ(オキシエチレン)基である、第1観点又は第2観点に記載のモールド用離型剤。
第4観点として、前記重合性基が前記式(3)で表される基を少なくとも2つ含む、第1観点乃至第3観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第5観点として、前記式(1)で表される基が、オキシパーフルオロメチレン基及びオキシパーフルオロエチレン基の双方を有する基である、第1観点乃至第4観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第6観点として、前記(B)成分が、分子量1000乃至30000のマクロモノマー又はポリマーである第1観点乃至第5観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第7観点として、前記(B)成分が下記式(4)、下記式(5)及び下記式(6)で表される構造単位のうち少なくとも1つを有するポリマーである、第1観点乃至第6観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
【化2】
(式中、R
4乃至R
6はそれぞれ独立にメチル基又は水素原子を表し、A
1は炭素原子数1乃至8のアルキル基を表し、A
2は炭素原子数5乃至10の脂環式炭化水素基を表し、A
3は炭素原子数1又は2のアルキレン基を表し、Xは前記式(3)で表される基を1つ又は2つ有する重合性基を表す。)
第8観点として、下記(E)成分をさらに含有する、第1観点乃至第7観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
(E):前記(A)成分の質量に基づいて0.01phr乃至10phrの光増感剤
第9観点として、前記モールド用離型剤の総質量100質量%に対し、前記(A)成分の割合が0.1質量%乃至10質量%である、第1観点乃至第8観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第10観点として、前記(A)成分の質量に基づいて前記(B)成分の割合が10phr乃至100phrである、第1観点乃至第9観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤。
第11観点として、第1観点乃至第10観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤から形成された被膜を備えた、離型処理された表面を有するモールド。
第12観点として、金属製モールド又は樹脂製モールドである第11観点に記載の離型処理された表面を有するモールド。
第13観点として、第1観点乃至第10観点のいずれか一に記載のモールド用離型剤を樹脂製モールド上に塗布する工程、及び前記樹脂製モールド上に塗布されたモールド用離型剤を露光して前記樹脂製モールドの表面に被膜を形成する工程を有し、前記被膜をベークする工程及び/又は前記露光前に前記モールド用離型剤をベークする工程をさらに有する、離型処理された表面を有する樹脂製モールドの作製方法。
第14観点として、第11観点又は第12観点に記載の離型処理された表面を有するモールドを光硬化性樹脂に圧着する工程、前記光硬化性樹脂を前記モールドに圧着させたまま光硬化する工程、及び前記光硬化する工程の後、得られた光硬化物を前記離型処理された表面を有するモールドから離型する工程を有する、パターンが転写された最大膜厚が1.5mmの硬化膜の作製方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のモールド用離型剤を採用することにより、該離型剤をモールドに塗布する時、及びその後、ベーク時に離型成分である(A)成分の流動を抑制することで“ハジキ”を防止し、インプリント時に該モールドの表面異常が転写されてしまうことを防止可能である。
【0012】
さらに、本発明のモールド用離型剤は、上記(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の種類及び含有割合を変更することで、該離型剤の硬化速度、動的粘度、膜厚、及び塗布性をコントロールすることができる。したがって、本発明のモールド用離型剤は、モールド、製造するデバイス種、製造工程及びベーク工程の種類に対応した離型剤の設計が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[(A)成分]
(A)成分の多官能(メタ)アクリレート化合物は、前記式(1)で表される基及び前記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の全ての末端に、ウレタン結合を介して、前記式(3)で表される基、すなわち(メタ)アクリロイルオキシ基を含む重合性基を有する。本発明において(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方を意味する。また例えば(メタ)アクロイルオキシ基は、アクリロイルオキシ基とメタクリロイルオキシ基の双方を意味する。ここで、上記多官能(メタ)アクリレート化合物は、単官能(メタ)アクリレート化合物を除く、2官能以上のアクリレート化合物又はメタクリレート化合物である。そして、上記ウレタン結合とは、-NH-C(=O)-O-で表される構造をいう。上記多官能(メタ)アクリレート化合物は、1分子中に、ウレタン結合を2つ又は4つ、及び(メタ)アクリロイルオキシ基を含む重合性基を2つ又は4つ有する。なお、前記式(1)で表される基はポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基と称することがあり、前記式(2a)で表される基はポリ(オキシアルキレン)基と称することがある。
【0014】
上記線状又は鎖状の分子鎖は、前記式(1)で表される基及び前記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む分子鎖であれば特に限定されない。上記線状又は鎖状の分子鎖において、前記式(1)で表される基と前記式(2a)又は式(2b)で表される基の結合順序は特に限定されず、また各基の数は特に限定されない。また、上記線状又は鎖状の分子鎖において、式(1)で表される基と式(2a)又は式(2b)で表される基は、単結合で結合(直接結合)されていてもよいし、炭素原子数1乃至3のアルキレン基、炭素原子数1乃至3のパーフルオロアルキレン基、或いはそれらの組み合わせ等の構造(連結基)を介して結合されていてもよい。
【0015】
前記式(1)で表される基におけるオキシパーフルオロアルキレン基:-(O-R1)-のR1の炭素原子数は1又は2である。すなわち、前記式(1)で表される基は、炭素原子数1又は2の2価のフッ化炭素基と酸素原子が交互に連結した構造を有し、オキシパーフルオロアルキレン基は炭素原子数1又は2の2価のフッ化炭素基と酸素原子が連結した構造を有する。該オキシパーフルオロアルキレン基として具体的には、-(OCF2)-(すなわち、オキシパーフルオロメチレン基)及び-(OCF2CF2)-(すなわち、オキシパーフルオロエチレン基)が挙げられる。上記オキシパーフルオロアルキレン基は、-(OCF2)-及び-(OCF2CF2)-のうちいずれか1種を単独で使用してもよく、2種を組み合わせて使用してもよい。2種を組み合わせて使用する場合、-(OCF2)-及び-(OCF2CF2)-の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
【0016】
モールドの離型性を高める観点から、前記式(1)で表される基として、-(OCF2)-(すなわち、オキシパーフルオロメチレン基)と-(OCF2CF2)-(すなわち、オキシパーフルオロエチレン基)の双方を有する基を用いることが好ましい。前記式(1)で表される基として、-(OCF2)-と-(OCF2CF2)-とが、モル比率で[-(OCF2)-]:[-(OCF2CF2)-]=2:1~1:2となる割合で含む基であることが好ましく、およそ1:1となる割合で含む基であることがより好ましい。これらの結合は、ブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。前記式(1)で表される基の数pは、2以上の整数であり、5乃至30の範囲であることが好ましく、7乃至21の範囲であることがより好ましい。
【0017】
また、前記式(1)で表される基のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000乃至5,000、好ましくは1,500乃至3,000である。
【0018】
前記式(2a)で表される基におけるオキシアルキレン基:-(O-R2)-のR2の炭素原子数は2又は3である。すなわち、前記式(2a)で表される基は、炭素原子数2又は3のアルキレン基と酸素原子が交互に連結した構造を有し、オキシアルキレン基は炭素原子数2又は3のアルキレン基と酸素原子が連結した構造を有する。上記オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、及びオキシトリメチレン基が挙げられる。上記オキシアルキレン基は、1種を単独で使用してもよく、或いは2種以上を組み合わせて使用してもよく、その場合、2種以上のオキシアルキレン基の結合はブロック結合及びランダム結合の何れであってもよい。
【0019】
前記式(2a)で表される基は、例えばポリ(オキシエチレン)基である。前記式(2a)で表される基の数qは2以上の整数であり、例えば2乃至15の範囲であり、好ましくは2乃至12の範囲、又は5乃至12の範囲、或いは7乃至12の範囲である。
【0020】
前記式(2b)で表される基における3価の炭化水素基:R2bの炭素原子数は2又は3である。すなわち、前記式(2b)で表される基は、炭素原子数2又は3のアルカントリレン基(炭素原子数2又は3のアルキレン基の任意の炭素原子から一個の水素原子を除去した3価の基)に1つの酸素原子が連結した構造を有する。前記式(2b)で表される基の中でも、1,2,3-プロパントリイル基の1位(又は3位)に1つの酸素原子が連結した基であることが好ましい。
【0021】
上記重合性基は、(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ有するものに限らず、2つ以上有するものであってもよい。上記重合性基として、例えば、以下に示す式[X1]乃至式[X5]で表される構造(末端基)、及びこれらの構造(末端基)におけるアクリロイルオキシ基をメタクリロイルオキシ基に置換した構造が挙げられる。
【0022】
【0023】
(A)成分の多官能(メタ)アクリレート化合物は、工業的製造が容易であるという点から、以下に示す構造式(A-1)で表される化合物、(A-2)で表される化合物、及び(A-3)で表される化合物、並びにこれらの化合物中のアクリロイルオキシ基をメタクリロイルオキシ基に置換した化合物を好ましい例として挙げることができる。なお、下記構造式中、2つのX又は4つのXはそれぞれ前記式[X1]乃至式[X5]で表される構造(末端基)のうちの1つを表し、PFPEは前記ポリ(オキシパーフルオロアルキレン)基を表し、q
1及びq
2はそれぞれ独立してオキシエチレン基の数、例えば2乃至15の整数を表し、好ましくは2乃至12の整数を表し、又は5乃至12の整数を表し、或いは7乃至12の整数を表す。
【化4】
【0024】
前記(A)成分の多官能(メタ)アクリレート化合物において、1つの重合性基は、(メタ)アクリロイルオキシ基を2つ以上有する、例えば上記式[X3]乃至式[X5]で表される構造(末端基)であることが好ましい。
【0025】
本発明において(A)成分は、前記モールド用離型剤の総質量、すなわち、該(A)成分と後述する、(B)成分、(C)成分及び(D)成分、並びに任意成分である(E)成分及びその他添加剤との総質量100質量%に対し、好ましくは0.1質量%乃至10質量%、より好ましくは0.5質量%乃至8質量%の割合で使用することが望ましい。
【0026】
本発明のモールド用離型剤の(A)成分は、例えば、前記式(1)で表される基の両末端に、直接結合するか或いは前記連結基を介して結合する、前記式(2a)又は式(2b)で表される基を介して、少なくとも2つのヒドロキシ基を有する化合物において、その少なくとも2つのヒドロキシ基に対して、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、1,1-ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等の、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するイソシアネート化合物をウレタン化反応させる方法により得られる。(A)成分のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,500乃至7,000、好ましくは2,000乃至6,000である。
【0027】
なお本発明のモールド用離型剤は、(A)成分に加えて、前記式(1)で表される基及び前記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の一部の末端にのみウレタン結合を介して、(メタ)アクリロイルオキシ基を含む重合性基を有し、且つ該線状又は鎖状の分子鎖の他の末端にヒドロキシ基を有する化合物(すなわち該他の末端においては重合性基を有していない化合物)が含まれていてもよい。本発明のモールド用離型剤はさらに、前記式(1)で表される基及び前記式(2a)又は式(2b)で表される基を含む線状又は鎖状の分子鎖の全ての末端にヒドロキシ基を有する化合物、すなわち上記重合性基を有していない化合物が含まれていてもよい。
【0028】
[(B)成分]
(B)成分である樹脂は、1013.25hPa下23℃における物質の状態が固体である。該樹脂は、重量平均分子量1000乃至30000であるマクロモノマー又はポリマーである。ここで、マクロモノマーは、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基などの重合性基を片末端に有する、分子量が比較的大きい化合物であり、他のモノマーと共重合することでポリマーが合成される。上記樹脂の具体例を以下に挙げるが、これらの例に限定されるものではない。該樹脂がマクロモノマーの場合、例えば、マクロモノマーAA-6、同45%AA-6、同AA-6SR、同AK-5、同AS-6、同AN-6S、同AW-6S(以上、東亞合成(株)製)が挙げられる。また該樹脂がポリマーの場合、例えば、下記式(7)で表される3種の構造単位を有するコポリマー、下記式(8)で表される3種の構造単位を有するコポリマー、下記式(9)で表される2種の構造単位を有するコポリマー、及び下記式(10)で表される構造単位を有するホモポリマーが挙げられ、該ポリマーの重量平均分子量は1000乃至30000であり、好ましくは10000乃至30000である。
【化5】
【0029】
本発明において(B)成分は、前記(A)成分の質量に基づいて1phr乃至100phr、好ましくは10phr乃至100phr、より好ましくは20phr乃至100phrの割合で使用することが望ましい。本明細書において“phr”とは、(A)成分の質量100gに対する、(B)成分、又は後述する(C)成分もしくは(E)成分の質量を表す。
【0030】
前記(B)成分が、1013.25hPa下23℃における物質の状態が固体であるため、本発明のモールド用離型剤をモールドに塗布する時、及びその後、ベーク時に後述する(D)成分が除去される際、前記(A)成分の流動を抑制できる。
【0031】
前記(B)成分の含有割合が1phr未満の場合、前記(A)成分の流動抑制効果が十分に発現されず、“ハジキ”が解消されない。一方、(B)成分の含有割合が100phrを超える場合、離型性が低下する。また、本発明のモールド用離型剤をモールドに塗布する時、及びその後、ベーク時に後述する(D)成分が除去される際、多量の(B)成分の存在により平坦性が損なわれやすく、それによってモールドのパターン形状が変化してしまう可能性がある。
【0032】
前記(B)成分が前記式(3)で表される基、すなわち(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有する場合、架橋性の向上が見込めるため、インプリント時のレンズへの前記(A)成分の転写が抑制され、離型性が低下しにくい利点もある。
【0033】
前記(B)成分として1013.25hPa下23℃における物質の状態が液体である樹脂を用いる場合、架橋性の向上は見込めるものの、それ自体が流動性を有するため、前記(A)成分の流動を抑制することが困難である。
【0034】
[(C)成分]
(C)成分である光重合開始剤は、光硬化時に使用する光源に吸収をもつものであれば、特に限定されるものではない。該光重合開始剤として、例えば、tert-ブチルペルオキシ-iso-ブチレート、2,5-ジメチル-2,5-ビス(ベンゾイルジオキシ)ヘキサン、1,4-ビス[α-(tert-ブチルジオキシ)-iso-プロポキシ]ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチルジオキシ)ヘキセンヒドロペルオキシド、α-(iso-プロピルフェニル)-iso-プロピルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルジオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルジオキシ)バレレート、シクロヘキサノンペルオキシド、2,2’,5,5’-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(tert-アミルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ヘキシルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’-ビス(tert-ブチルペルオキシカルボニル)-4,4’-ジカルボキシベンゾフェノン、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ジ-tert-ブチルジペルオキシイソフタレート等の有機過酸化物;9,10-アントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-クロロアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチル、ベンゾインエチルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン等のベンゾイン誘導体;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-[4-{4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)ベンジル}-フェニル]-2-メチル-プロパン-1-オン、フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-1-ブタノン、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モルホリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オン等のアルキルフェノン系化合物;ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物;2-(O-ベンゾイルオキシム)-1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン、1-(O-アセチルオキシム)-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン等のオキシムエステル系化合物が挙げられる。
【0035】
上記光重合開始剤は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、IRGACURE(登録商標)651、同184、同500、同2959、同127、同754、同907、同369、同379、同379EG、同819、同819DW、同1800、同1870、同784、同OXE01、同OXE02、同250、同1173、同MBF、同4265、同TPO(以上、BASFジャパン(株)製)、KAYACURE(登録商標)DETX、同MBP、同DMBI、同EPA、同OA(以上、日本化薬(株)製)、VICURE-10、同55(以上、STAUFFER Co.LTD製)、ESACURE(登録商標)KIP150、同TZT、同1001、同KTO46、同KB1、同KL200、同KS300、同EB3、トリアジン-PMS、トリアジンA、トリアジンB(以上、日本シイベルヘグナー(株)製)、アデカオプトマーN-1717、同N-1414、同N-1606(以上、(株)ADEKA製)が挙げられる。
【0036】
上記光重合開始剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
本発明のモールド用離型剤における(C)成分の含有割合は、上記(A)成分の質量に基づいて、例えば0.05phr乃至15phrであり、好ましくは0.1phr乃至15phrであり、或いは0.1phr乃至10phrであり、より好ましくは0.5phr乃至8phrである。(C)成分の含有割合が0.05phr未満の場合には、十分な硬化性が得られず、繰り返しインプリントを行う間に、離型性が悪化しやすくなる。一方、(C)成分の含有割合が15phrを超える場合、紫外線領域における透明性が低下する。
【0038】
[(D)成分]
(D)成分である溶媒は、前記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び後述する(E)成分の粘度調節の役割を果たし、該(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分の粘度を調節することができるものであれば、特に限定されるものではない。前記(A)成分の多官能(メタ)アクリレート製造時において反応系に使用した溶媒、及び前記(B)成分の樹脂製造時において反応系に使用した溶媒を、そのまま(D)成分の溶媒として用いることもできる。
【0039】
該溶媒としては、例えば、トルエン、p-キシレン、o-キシレン、スチレン、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコ-ルジメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール、1-オクタノール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、γ-ブチロラクトン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn-ブチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、酢酸n-ブチル、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノール、アリルアルコール、n-プロパノール、2-メチル-2-ブタノール、イソブタノール、n-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、1-ペンタノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチルヘキサノール、トリメチレングリコール、1-メトキシ-2-ブタノール、イソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、N-シクロヘキシル-2-ピロリジン、メチルパーフルオロプロピルエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロイソブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフロオロ-3-メトキシ-4-(トリフルオロメチル)-ペンタン、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、ペンタフルオロノナン、ヘキサフルオロベンゼン、ヘプタデカフルオロ-n-オクチルブロミド、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-メトキシプロパン、オクタデカフルオロオクタン、オクタフルオロシクロペンテン、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロデカリン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロヘプタン、オクタフルオロトルエン、パーフルオロトリペンチルアミン、パーフルオロトリエチルアミン、パーフルオロ(1,3-ジメチルシクロヘキサン)、パーフルオロイソヘキサンが挙げられる。
【0040】
上記溶媒は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、ノベック(登録商標)7000、同7100、同7200、同7300(以上、スリーエムジャパン(株)製)、アサヒクリン(登録商標)AE-3000、同AE-3100E(以上、AGC(株)製)、バートレル(登録商標)XF、同XF-UP、同XE-XP、同X-E10、同X-P10、同X-D、同X-GY、同MCA、同SDG、同SMT、同SFR、同DC、同シネラ、同スープリオン、同サイオン(以上、三井・デュポン フロロケミカル(株)製)が挙げられる。
【0041】
[(E)成分]
(E)成分である光増感剤としては、例えば、チオキサンテン系、チオキサントン系、キサンテン系、ケトン系、チオピリリウム塩系、ベーススチリル系、メロシアニン系、3-置換クマリン系、3,4-置換クマリン系、シアニン系、アクリジン系、チアジン系、フェノチアジン系、アントラセン系、コロネン系、ベンズアントラセン系、ペリレン系、ケトクマリン系、クマリン系、ボレート系が挙げられる。上記光増感剤は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、アントラキュアー(登録商標)UVS-581、同UVS-1331(以上、川崎化成工業(株)製)、KAYACURE(登録商標)DETX-S(日本化薬(株)製)が挙げられる。この光増感剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。一方、モールドの表面に目的の膜を形成できるなら、本発明のモールド用離型剤は(E)成分である光増感剤を含有しなくてもよい。上記光増感剤を用いることによって、UV領域の吸収波長を調整することもできる。本発明のモールド用離型剤が(E)成分を含有する場合、その含有割合は、上記(A)成分の質量に基づいて、例えば0.01phr乃至10phrであり、好ましくは0.1phr乃至5phrである。
【0042】
[その他添加剤]
本発明のモールド用離型剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて界面活性剤、連鎖移動剤等の添加剤を含有することができる。
【0043】
上記界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。上記界面活性剤は、市販品として入手が可能であり、その具体例としては、エフトップ(登録商標)EF301、同EF303、同EF352(以上、三菱マテリアル電子化成(株)製)、メガファック(登録商標)F-171、同F-173、同F-477、同F-486、同F-554、同F-556、同R-08、同R-30、同R-30N、同R-40、同R-40-LM、同RS-56、同RS-75、同RS-72-K、同RS-76-E、同RS-76-NS、同RS-78、同RS-90(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431(以上、スリーエムジャパン(株)製)、アサヒガード(登録商標)AG710、サーフロン(登録商標)S-382、同SC101、同SC102、同SC103、同SC104、同SC105、同SC106(以上、AGC(株)製)等のフッ素系界面活性剤;及びオルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、BYK-302、BYK-307、BYK-322、BYK-323、BYK-330、BYK-333、BYK-370、BYK-375、BYK-378、BYK-UV 3500、BYK-UV 3570(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)が挙げられる。上記界面活性剤は、1種単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0044】
上記連鎖移動剤としては、例えば、チオール化合物として、メルカプト酢酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル、3-メルカプトプロピオン酸3-メトキシブチル、3-メルカプトプロピオン酸n-オクチル、3-メルカプトプロピオン酸ステアリル、1,4-ビス(3-メルカプトプロピオニルオキシ)ブタン、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等のメルカプトカルボン酸エステル類;エタンチオール、2-メチルプロパン-2-チオール、n-ドデカンチオール、2,3,3,4,4,5-ヘキサメチルヘキサン-2-チオール(tert-ドデカンチオール)、エタン-1,2-ジチオール、プロパン-1,3-ジチオール、ベンジルチオール等のアルキルチオール類;ベンゼンチオール、3-メチルベンゼンチオール、4-メチルベンゼンチオール、ナフタレン-2-チオール、ピリジン-2-チオール、ベンゾイミダゾール-2-チオール、ベンゾチアゾール-2-チオール等の芳香族チオール類;2-メルカプトエタノール、4-メルカプト-1-ブタノール等のメルカプトアルコール類;3-(トリメトキシシリル)プロパン-1-チオール、3-(トリエトキシシリル)プロパン-1-チオール等のシラン含有チオール類;ビス(2-メルカプトエチル)エーテルが挙げられ、ジスルフィド化合物として、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジイソプロピルジスルフィド、ジブチルジスルフィド、ジ-tert-ブチルジスルフィド、ジペンチルジスルフィド、ジイソペンチルジスルフィド、ジヘキシルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジデシルジスルフィド、ビス(2,3,3,4,4,5-ヘキサメチルヘキサン-2-イル)ジスルフィド(ジ-tert-ドデシルジスルフィド)、ビス(2,2-ジエトキシエチル)ジスルフィド、ビス(2-ヒドロキシエチル)ジスルフィド、ジベンジルジスルフィド等のアルキルジスルフィド類;ジフェニルジスルフィド、ジ-p-トリルジスルフィド、ジ(ピリジン-2-イル)ピリジルジスルフィド、ジ(ベンゾイミダゾール-2-イル)ジスルフィド、ジ(ベンゾチアゾール-2-イル)ジスルフィド等の芳香族ジスルフィド類;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ビス(ペンタメチレン)チウラムジスルフィド等のチウラムジスルフィド類;α-メチルスチレンダイマーが挙げられる。この連鎖移動剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
[モールド用離型剤の調製]
本発明のモールド用離型剤の調製方法は、特に限定されないが、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分、並びに任意で(E)成分及び上記その他添加剤を混合し、均一な状態となっていればよい。また、(A)成分乃至(D)成分、並びに所望により(E)成分及び上記その他添加剤を混合する際の順序は、均一なモールド用離型剤が得られるなら、特に限定されない。例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を所定の割合で混合し、均一なモールド用離型剤を調製する方法が挙げられる。さらに、この調製方法の適当な段階において、必要に応じて、(E)成分及び上記その他の添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0046】
[モールド用離型剤の塗布方法]
本発明のモールド用離型剤は、これをモールドの表面へ塗布し、露光により光硬化させることで、該モールドの表面に被膜を作製することができる。該被膜が作製されたモールドは、離型処理された表面を有する。本発明のモールド用離型剤の塗布方法としては、公知又は周知の方法、例えば、スピンコート法、ディップ法、フローコート法、インクジェット法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、スリットコート法、ロールコート法、転写印刷法、刷毛塗り、ブレードコート法、エアーナイフコート法を挙げることができる。
【0047】
本発明のモールド用離型剤が塗布されるモールドとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基を1分子中に少なくとも2つ有する化合物を含有する樹脂組成物を光硬化させて得られる樹脂製モールド、石英製モールド、アルミナ(Al2O3)製モールド、シリコン(Si)製モールド、及びニッケル、アルミニウム等の金属製モールドが挙げられる。
【0048】
本発明のモールド用離型剤を硬化させる光源としては、特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、KrFエキシマーレーザー、ArFエキシマーレーザー、F2エキシマーレーザー、電子線(EB)、極端紫外線(EUV)、紫外線LED(UV-LED)を挙げることができる。また、波長は、一般的には、436nmのG線、405nmのH線、365nmのI線、又はGHI混合線を用いることができる。さらに、露光量は、好ましくは、30mJ/cm2乃至2000mJ/cm2、より好ましくは30mJ/cm2乃至1000mJ/cm2である。
【0049】
本発明のモールド用離型剤の(D)成分である溶媒を蒸発させる目的で、該モールド用離型剤を塗布後、光硬化前にベーク工程を加えてもよい。ベーク工程に使用する機器としては、特に限定されるものではなく、例えば、ホットプレート、オーブン、又はファーネスを用いて、適切な雰囲気下、すなわち大気、窒素等の不活性ガス、又は真空中でベークすることができるものであればよい。ベーク温度は、溶媒を蒸発させることが可能な、例えば、40℃乃至200℃で行うことができる。また、前記モールド用離型剤を塗布後、光硬化させて得られた膜にベーク工程を加えてもよい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものでない。なお、下記合成例、及び塗布膜の表面粗さ評価において、物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0051】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
(1-1)合成例1で使用
装置:東ソー(株)製 HLC-8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC K-802.5、GPC K-803
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
標準試料:ポリスチレン
(1-2)合成例2で使用
装置:(株)島津製作所製 GPCシステム
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF-804L、GPC KF-803L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
標準試料:ポリスチレン
(2)撹拌脱泡機装置:(株)シンキー製 自転・公転ミキサー あわとり練太郎〔登録商標〕ARE-310
(3)スピンコーター
装置:Brewer Science社製 CEE 200X
(4)UV露光
装置:アイグラフィックス(株)製 バッチ式UV照射装置(高圧水銀灯2kW×1灯)
(5)水接触角測定
装置:協和界面科学(株)製 自動表面張力計DM700型
22G針、滴下量1.0μL
(6)“ハジキ”観察
装置:三鷹光器(株)製 非接触表面性状測定装置PF-60
【0052】
下記合成例、実施例及び比較例において使用した化合物の供給元は以下の通りである。
PFPE1:ポリ(オキシエチレン)基(繰り返し単位の数8乃至9)を介して両末端にヒドロキシ基を有するパーフルオロポリエーテル[ソルベイスペシャルティポリマーズ社製 商品名:Fluorolink(登録商標)5147X]
BEI:1,1-ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート[昭和電工(株)製 商品名:カレンズ〔登録商標〕BEI]
DOTDD:ジオクチル錫ジネオデカノエート[日東化成(株)製 商品名:ネオスタン〔登録商標〕U-830]
DBTDL:ジラウリン酸ジブチル錫[東京化成工業(株)製]
AOI:昭和電工(株)製 商品名:カレンズ〔登録商標〕AOI
IRGACURE819:BASFジャパン(株)製 商品名:IRGACURE〔登録商標〕819
DETX-S:日本化薬(株)製 商品名:KAYACURE〔登録商標〕DETX-S
AA-6:東亞合成(株)製 商品名:マクロモノマーAA-6
PET30:日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD〔登録商標〕PET-30
AD-TMP:新中村化学工業(株)製 商品名:AD-TMP
DPHA:日本化薬(株)製 商品名:KAYARAD〔登録商標〕DPHA
A-DCP:新中村化学工業(株)製 商品名:A-DCP
HBPE4:第一工業製薬(株)製 商品名:ニューフロンティア〔登録商標〕HBPE-4
IRGACURE184:BASFジャパン(株)製 商品名:IRGACURE〔登録商標〕184
【0053】
<合成例1>
3つ口フラスコに、PFPE1 10.5g、BEI 2.39g、DOTDD 0.0644g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、本明細書ではPGMEAと略称する。)12.9gを仕込んだ。上記3つ口フラスコ内の混合物を、スターラーチップを用いて室温(およそ23℃)で48時間撹拌し、反応物を得た。この反応物へPGMEAを41.0g加え、(A)成分である多官能アクリレート化合物SM1を含むPGMEA溶液を固形分19.3質量%で得た。得られたSM1の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは、3,100であった。
【0054】
<合成例2>
滴下ロート付き4つ口フラスコ中にPGMEAを45.2g仕込み、さらに該滴下ロート中にメチルメタクリレート50.0g、イソボルニルアクリレート29.7g、2-ヒドロキシエチルメタクリレート9.28g、及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル5.89gをPGMEA176.2gに溶解させた溶液を加えた。前記4つ口フラスコ内の雰囲気を窒素置換後、該4つ口フラスコ内を80℃に昇温し、前記滴下ロート中の溶液を3時間かけて該4つ口フラスコ中に滴下した。滴下終了後、12時間反応させ、さらに110℃で1時間撹拌した後、前記4つ口フラスコ内の温度を60℃まで低下させた。得られた反応溶液にメチルハイドロキノン0.266g、DBTDL0.45g、及びAOI 15.1gを加え、60℃で3時間撹拌させた。反応溶液を室温に戻し、10℃に冷却したメタノールを用いて再沈殿・乾燥させることで、下記式(7)で表される構造単位を有するコポリマー1を得た。得られたコポリマー1の、GPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは、13,900であった。
【化6】
【0055】
<実施例1>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液を1.00g、(B)成分として合成例2で得られたコポリマー1を0.0386g、(C)成分としてIRGACURE819を0.0039g、(E)成分としてDETX-Sを0.0002g、及び(D)成分としてPGMEAを5.69g混合し、モールド用離型剤1を調製した。
【0056】
<実施例2>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液を1.00g、(B)成分としてAA-6を0.0386g、(C)成分としてIRGACURE819を0.0039g、(E)成分としてDETX-Sを0.0002g、及び(D)成分としてPGMEAを5.69g混合し、モールド用離型剤2を調製した。
【0057】
<比較例1>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液を1.00g、(C)成分としてIRGACURE819を0.0039g、(E)成分としてDETX-Sを0.0002g、及び(D)成分としてPGMEAを5.69g混合し、モールド用離型剤3を調製した。本比較例のモールド用離型剤3は(B)成分を含まない。
【0058】
<比較例2>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液を1.00g、(B)成分としてPET30を0.0386g、(C)成分としてIRGACURE819を0.0039g、(E)成分としてDETX-Sを0.0002g、及び(D)成分としてPGMEAを5.69g混合し、モールド用離型剤4を調製した。本比較例のモールド用離型剤4は、(B)成分が1013.25hPa下23℃における物質の状態が液体の樹脂である。
【0059】
<比較例3>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液を1.00g、(B)成分としてAD-TMPを0.0386g、(C)成分としてIRGACURE819を0.0039g、(E)成分としてDETX-Sを0.0002g、及び(D)成分としてPGMEAを5.69g混合し、モールド用離型剤5を調製した。本比較例のモールド用離型剤5は、(B)成分が1013.25hPa下23℃における物質の状態が液体の樹脂である。
【0060】
<比較例4>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液を1.00g、(B)成分としてDPHAを0.0386g、(C)成分としてIRGACURE819を0.0039g、(E)成分としてDETX-Sを0.0002g、及び(D)成分としてPGMEAを5.69g混合し、モールド用離型剤6を調製した。本比較例のモールド用離型剤6は、(B)成分が1013.25hPa下23℃における物質の状態が液体の樹脂である。
【0061】
<比較例5>
(A)成分として合成例1で得られたSM1を含むPGMEA溶液1.00g、(B)成分としてA-DCPを0.0386g、(C)成分としてIRGACURE819を0.0039g、(E)成分としてDETX-Sを0.0002g、及び(D)成分としてPGMEAを5.69g混合し、モールド用離型剤7を調製した。本比較例のモールド用離型剤7は、(B)成分が1013.25hPa下23℃における物質の状態が液体の樹脂である。
【0062】
<樹脂モールド材料の調製>
HBPE4を3.50g、PET30を1.50g及びIRGACURE184を0.005g混合し、樹脂モールド材料を調製した。
【0063】
[水接触角の測定]
シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名:KBM-5103)をPGMEAで5質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで密着処理した石英基板上に、実施例1、実施例2及び比較例1乃至比較例5で調製したモールド用離型剤1乃至7を、前記スピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において80℃で5分間ベークした。次いで、前記UV照射装置を用いてi線バンドパスフィルター(朝日分光(株)製)を介して40mW/cm2で245秒間UV露光し、水接触角測定用サンプルを作製した。
【0064】
前記の方法で作製した水接触角測定用サンプルを、前記水接触角測定装置を用いて純水滴下3秒後の水接触角を測定した。結果を下記表1に示す。
【0065】
[離型処理された表面を有する樹脂製モールドの作製及び“ハジキ”の確認]
前記シランカップリング剤をPGMEAで5質量%に希釈した溶液を塗布し乾燥することで密着処理した石英基板上に、前記樹脂モールド材料をポッティングし、10分間静置させた。その後、光硬化させることで、前記石英基板上に凸・球面構造の樹脂製モールドを得た。その樹脂製モールド上に、実施例1、実施例2及び比較例1乃至比較例5で調製したモールド用離型剤1乃至7を、前記スピンコーターを用いて塗布し、ホットプレート上において80℃で5分間ベークした。次いで、前記UV照射装置を用いてi線バンドパスフィルター(朝日分光(株)製)を介して40mW/cm2で245秒間UV露光した。
【0066】
前記の方法で作製した離型処理された表面を有する樹脂製モールドについて、“ハジキ”発生の有無を、前記非接触表面性状測定装置を用いて観察した。結果を下記表1、
図1及び
図2に示す。表1中、×は“ハジキ”が観察されたことを表し、○は“ハジキ”が観察されなかったことを表す。
図1は、実施例1で調製したモールド用離型剤1を用いて離型処理した樹脂製モールドの観察結果を示す。
図2は、比較例1で調製したモールド用離型剤3を用いて離型処理した樹脂製モールドの観察結果を示し、
図1には見られない“ハジキ”が観察された。
【0067】
【0068】
表1に示す結果より、実施例1、実施例2及び比較例1乃至比較例5で調製したモールド用離型剤1乃至7を用いて離型処理された表面を有する樹脂製モールドは、100°以上の高い水接触角を示した。この結果から、モールド用離型剤1乃至7を用いて離型処理された表面を有する樹脂製モールドは、該モールド用離型剤の(A)成分中のフッ素成分が表面に移行していることが示唆される。また、実施例1及び実施例2で調製したモールド用離型剤1及び2を用いて離型処理された表面を有する樹脂製モールド上に“ハジキ”は観察されなかった。一方、比較例1乃至比較例5で調製したモールド用離型剤3乃至7を用いて離型処理された表面を有する樹脂製モールド上全体に“ハジキ”が確認された。この結果は、1013.25hPa下23℃における物質の状態が固体である(B)成分を添加することにより、モールド用離型剤中の(A)成分の流動による“ハジキ”の発生が抑制されたことを示している。一方、(B)成分未添加の比較例1、及び1013.25hPa下23℃における物質の状態が液体である(B)成分を添加した比較例2乃至比較例5では、(A)成分の流動を抑制できないことを示している。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【
図1】
図1は、実施例1で調製したモールド用離型剤1を用いて離型処理した樹脂モールドを、非接触表面性状測定装置を用いて観察した結果を示す。
【
図2】
図2は、比較例1で調製したモールド用離型剤3を用いて離型処理した樹脂モールドを、非接触表面性状測定装置を用いて観察した結果を示す。