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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】上皮癌治療薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/40 20060101AFI20220512BHJP
   A61K 47/00 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20220512BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220512BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220512BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220512BHJP
【FI】
A61K33/40
A61K47/00
A61K47/04
A61K47/18
A61K47/24
A61K47/42
A61P35/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021549357
(86)(22)【出願日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 JP2021019079
(87)【国際公開番号】W WO2021235506
(87)【国際公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2020089253
(32)【優先日】2020-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】辻川 和丈
(72)【発明者】
【氏名】高森 清人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 剛克
【審査官】藤代 亮
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0000875(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0145434(KR,A)
【文献】特開2014-084303(JP,A)
【文献】国際公開第2017/104797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
・IPC
A61K 33/40
A61K 47/00
A61K 47/04
A61K 47/18
A61K 47/24
A61K 47/42
A61P 35/00
A61P 43/00
・DB
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロゲンオキソ酸、ハロゲンオキソ酸イオン及びハロゲンオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含み、上皮癌の治療又は予防のために投与されることを特徴とする上皮癌治療薬。
【請求項2】
前記上皮癌が、泌尿器系、生殖器系、消化器系、循環器系、及び呼吸器系からなる群から選択される少なくとも一つの組織の癌である請求項1記載の上皮癌治療薬。
【請求項3】
前記上皮癌が、膀胱癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、卵管癌、精巣癌、前立腺癌、大腸癌、小腸癌、十二指腸癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、口腔癌、舌癌、咽頭癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、脾臓癌、腹膜癌、肺癌、及び眼癌からなる群から選択される少なくとも一つの組織の癌である請求項1又は2記載の上皮癌治療薬。
【請求項4】
前記ハロゲンオキソ酸が、塩素オキソ酸、臭素オキソ酸、及びヨウ素オキソ酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から3のいずれか一項に記載の上皮癌治療薬。
【請求項5】
前記ハロゲンオキソ酸が、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸、及び過ハロゲン酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から4のいずれか一項に記載の上皮癌治療薬。
【請求項6】
前記ハロゲンオキソ酸が、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、及び過ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1から5のいずれか一項に記載の上皮癌治療薬。
【請求項7】
さらに、ラジカル発生触媒を含み、
前記ラジカル発生触媒は、前記上皮癌治療薬に含まれる前記ハロゲンオキソ酸、ハロゲンオキソ酸イオン及びハロゲンオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質からのラジカル発生を触媒する物質である請求項1からのいずれか一項に記載の上皮癌治療薬。
【請求項8】
前記ラジカル発生触媒が、アンモニウム、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、リン脂質、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む請求項記載の上皮癌治療薬。
【請求項9】
前記アンモニウムが、下記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩である請求項記載の上皮癌治療薬。
【化XI】
前記化学式(XI)中、
11、R21、R31、及びR41、は、それぞれ水素原子もしくは芳香環であるか、又はアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよく、R11、R21、R31、及びR41は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R11、R21、R31、及びR41のうち2つ以上が一体化し、それらが結合するNとともに環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
は、アニオンである。
【請求項10】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩が、下記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩である請求項記載の上皮癌治療薬。
【化XII】
前記化学式(XII)中、
111は、炭素数が5~40のアルキル基であり、エーテル結合、ケトン(カルボニル基)、エステル結合、若しくはアミド結合、置換基、又は芳香環が含まれていてもよく、
21及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
【請求項11】
前記アンモニウムが、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウム、スフィンゴミエリン、ガングリオシドGM1、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、ベタレイン、レシチン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、及びコリン類からなる群から選択される少なくとも一つである請求項から10のいずれか一項に記載の上皮癌治療薬。
【請求項12】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩が、下記化学式(XIV)で表されるアンモニウム塩である請求項記載の上皮癌治療薬。
【化XIV】
前記化学式(XIV)中、
100は、環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
11及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
【請求項13】
前記ラジカル発生触媒のルイス酸性度が、0.4eV以上である請求項から12のいずれか一項に記載の上皮癌治療薬。
【請求項14】
上皮癌細胞のアポトーシス促進剤である請求項1から13のいずれか一項に記載の上皮癌治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上皮癌治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
上皮癌治療薬としては、いわゆる抗癌剤が広く用いられている(非特許文献1等)。また、膀胱癌の治療薬としては、いわゆるBCGも用いられている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】泌尿器ケア,古賀寛史、山口秋人,19,7,731-736,2014
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、抗癌剤及びBCGは副作用が強く、副作用による患者の苦痛が大きい。
【0005】
そこで、本発明は、副作用が小さい上皮癌治療薬を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の上皮癌治療薬は、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含み、上皮癌の治療又は予防のために使用されることを特徴とする。なお、本発明において「治療」は、特に断らない限り「予防」も含む。本発明において、「予防」は、例えば、再発予防を含み、例えば、上皮癌の再発予防を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、副作用が小さい上皮癌治療薬を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、MA-Tを用いて行ったUM-UC-3細胞及び5637細胞の増殖アッセイの結果を示すグラフである。
図2図2は、膀胱癌細胞のタイムラプス撮影におけるMA-T添加又は非添加後の撮影開始直後(0時間培養)の結果を示す写真である。
図3図3は、膀胱癌細胞のタイムラプス撮影におけるMA-T添加又は非添加後の撮影開始48時間後(48時間培養)の結果を示す写真である。
図4図4は、MA-T添加又は非添加5637細胞のアポトーシス解析を示す図である。
図5図5は、マウスのin vivoイメージングにより、MA-Tの膀胱内投与による膀胱腫瘍の縮小を示した写真である。
図6図6は、MA-T膀胱内投与マウスの体重変化を示すグラフである。
図7図7は、図6のマウスの膀胱の病理組織解析結果を示す顕微鏡写真である。
図8図8は、マウスへのルシフェラーゼ発現膀胱癌細胞の移植によるMA-Tの抗腫瘍作用による発光、膀胱重量の増加抑制、及び腫瘍組織病理解析結果を示すグラフ及び写真である。
図9図9は、マウスへのMA-T処理膀胱癌術後検体移植による腫瘍組織体積の増加抑制の経時的変化と、腫瘍重量の増加抑制とを示すグラフである。
図10図10は、図9の腫瘍組織病理解析結果を示す写真である。
図11図11のグラフは、UM-UC-3細胞に、500ppm NaClO水溶液を接触させた時間(左図)と各膀胱癌細胞の細胞増殖に対するNaClO水溶液の濃度依存性(右図)を示すグラフである。
図12図12は、UM-UC-3細胞をPBSあるいはNaClOと120分インキュベートして除去後ただちに(0時間)あるいは24時間培養後(24時間)の細胞の顕微鏡写真を示す図である。
図13図13は、500ppm NaClO水溶液を接触させたUM-UC-3細胞のアポトーシス誘導を示す図である。
図14図14は、500ppm NaClO水溶液を接触させたのち24時間(終夜)培養後のUM-UC-3細胞の細胞周期解析結果を示す図である。
図15図15は、NaClO上皮癌治療薬の抗腫瘍効果評価を示す図である。図15左下側のグラフにおいて、横軸は腫瘍移植12日後からの日数、縦軸は腫瘍体積(mm)を示す。図15上の写真は移植後27日目に解剖して摘出した膀胱の写真を、下右側のグラフは、その摘出腫瘍の重量(mg)を示す。
図16図16は、NaClO、塩化ベンゼトニウム及びMA-Tの膀胱癌細胞との接触によるラジカル産生の時間依存的変化を検証したグラフ及び蛍光顕微鏡画像である。
図17図17は、舌癌細胞「HSC-3」及び口腔癌細胞「HO-1-u-1」を500ppm NaClO水溶液と2時間接触させた後の48時間培養後の生存率を示すグラフである。
図18図18は、子宮癌細胞「HeLa」及び子宮癌細胞「HeLaS3」を500ppm NaClO水溶液と2時間接触させた後の48時間培養後の生存率を示すグラフである。
図19図19は、大腸癌細胞「HT29」及び大腸癌細胞「HT116」を500ppm NaClO水溶液と2時間接触させた後の48時間培養後の生存率を示すグラフである。
図20図20は、子宮癌細胞「HeLa」の増殖抑制に対する、NaClO水溶液単独使用の場合と、塩化ベンゼトニウム(ラジカル発生触媒)を併用した場合との効果を示すグラフである。
図21図21は、子宮癌細胞「HeLaS3」の増殖抑制に対する、NaClO水溶液単独使用の場合と、塩化ベンゼトニウム(ラジカル発生触媒)を併用した場合との効果を示すグラフである。
図22図22は、膵癌細胞「PK05」及び「PK10」の増殖抑制に対する、NaClO水溶液の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により限定されない。
【0010】
なお、本発明において、化合物(例えば、後述するアンモニウム等)に互変異性体又は立体異性体(例:幾何異性体、配座異性体及び光学異性体)等の異性体が存在する場合は、特に断らない限り、いずれの異性体も本発明に用いることができる。また、本発明において、物質(例えば、後述するオキソ酸、オキソ酸イオン、ラジカル発生触媒等)が塩を形成し得る場合は、特に断らない限り、前記塩も本発明に用いることができる。前記塩は、酸付加塩でも良いが、塩基付加塩でも良い。さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜フッ素酸、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜フッ素酸、亜塩素酸、亜臭素酸、亜ヨウ素酸、フッ素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、及び過ヨウ素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p-ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸及び酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウム及び炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミン及びトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。これらの塩の製造方法も特に限定されず、例えば、前記化合物に、前記のような酸や塩基を公知の方法により適宜付加させる等の方法で製造することができる。
【0011】
また、本発明において、鎖状置換基(例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基等の炭化水素基)は、特に断らない限り、直鎖状でも分枝状でも良く、その炭素数は、特に限定されないが、例えば、1~40、1~32、1~24、1~18、1~12、1~6、又は1~2(不飽和炭化水素基の場合は2以上)であっても良い。また、本発明において、環状の基(例えば、アリール基、ヘテロアリール基等)の環員数(環を構成する原子の数)は、特に限定されないが、例えば、5~32、5~24、6~18、6~12、又は6~10であっても良い。また、置換基等に異性体が存在する場合は、特に断らない限り、どの異性体でも良く、例えば、単に「ナフチル基」という場合は、1-ナフチル基でも2-ナフチル基でも良い。
【0012】
[1.上皮癌治療薬]
本発明の上皮癌治療薬は、前述のとおり、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする。なお、後述するように、本発明の上皮癌治療薬は、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0013】
[1-1.オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩]
本発明の上皮癌治療薬において、例えば、前記オキソ酸が、ホウ酸、炭酸、オルト炭酸、カルボン酸、ケイ酸、亜硝酸、硝酸、亜リン酸、リン酸、ヒ酸、亜硫酸、硫酸、スルホン酸、スルフィン酸、クロム酸、ニクロム酸、過マンガン酸、及びハロゲンオキソ酸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0014】
前記オキソ酸は、例えば、ハロゲンオキソ酸であってもよい。前記ハロゲンオキソ酸は、例えば、塩素オキソ酸、臭素オキソ酸、及びヨウ素オキソ酸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ハロゲンオキソ酸は、例えば、塩素オキソ酸であってもよい。
【0015】
前記ハロゲンオキソ酸は、例えば、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、及び過ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ハロゲンオキソ酸は、例えば、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸、及び過ハロゲン酸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ハロゲンオキソ酸は、例えば、亜ハロゲン酸であってもよい。前記ハロゲンオキソ酸は、例えば、亜塩素酸であってもよい。
【0016】
本発明の上皮癌治療薬において、前記オキソ酸が、オキソ酸塩の形態である場合、前記オキソ酸塩は、特に限定されず、無機塩でも有機塩でもよい。前記無機塩及び前記有機塩も特に限定されないが、その具体例は、例えば、前述のとおりである。
【0017】
本発明の上皮癌治療薬において、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質の含有率は、特に限定されない。例えば、本発明の上皮癌治療薬が、後述するラジカル発生触媒を含まない場合は、上皮癌治療薬1gに対し、オキソ酸イオンの含有量が、0.1μg以上、1μg以上、2μg以上、3μg以上、5μg以上、10μg以上、100μg以上、200μg以上、500μg以上、1000μg以上、1500μg以上、2500μg以上、又は5000μg以上でもよく、10000μg以下、5000μg以下、2500μg以下、2000μg以下、1500μg、1000μg以下、500μg、100μg以下、又は10μg以下でもよい。本発明の上皮癌治療薬が、後述するラジカル発生触媒を含む場合は、上皮癌治療薬1gに対し、オキソ酸イオンの含有量が、例えば、0.1μg以上、1μg以上、2μg以上、3μg以上、5μg以上、10μg以上、100μg以上、200μg、500μg以上、1000μg以上、1500μg以上、2500μg以上、又は5000μg以上でもよく、10000μg以下、5000μg以下、2500μg以下、2000μg以下、1500μg、1000μg以下、500μg、100μg以下、又は10μg以下でもよい。
【0018】
[1-2.ラジカル発生触媒]
本発明の上皮癌治療薬は、前述のとおり、さらに、前記上皮癌治療薬に含まれる前記オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質からのラジカル発生を触媒する物質であるラジカル発生触媒を含んでいてもよい。以下、前記ラジカル発生触媒を「本発明のラジカル発生触媒」ということがある。
【0019】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、有機化合物でも無機物質でもよい。前記有機物質は、例えば、アンモニウム、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、リン脂質、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記無機物質は、金属イオン及び非金属イオンの一方又は両方を含んでいても良い。前記金属イオンは、典型金属イオン及び遷移金属イオンの一方又は両方を含んでいても良い。前記無機物質は、例えば、アルカリ土類金属イオン、希土類イオン、Mg2+、Sc3+、Li、Fe2+、Fe3+、Al3+、ケイ酸イオン、及びホウ酸イオンからなる群から選択される少なくとも一つであっても良い。アルカリ土類金属イオンとしては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、又はラジウムのイオンが挙げられ、より具体的には、例えば、Ca2+、Sr2+、Ba2+、及びRa2+が挙げられる。また、「希土類」は、スカンジウム21Sc、イットリウム39Yの2元素と、ランタン57Laからルテチウム71Luまでの15元素(ランタノイド)の計17元素の総称である。希土類イオンとしては、例えば、前記17元素のそれぞれに対する3価の陽イオンが挙げられる。
【0020】
また、前記ラジカル発生触媒は、例えば、CaCl、MgCl、FeCl、FeCl、AlCl、AlMeCl、AlMeCl、BF、BPh、BMe、TiCl、SiF、及びSiClからなる群から選択される少なくとも一つであっても良い。ただし、「Ph」はフェニル基を表し、「Me」はメチル基を表す。
【0021】
前記ラジカル発生触媒は、例えば、0.4eV以上であるルイス酸でもよい。また、前記ラジカル発生触媒は、例えば、ブレーンステッド酸としての酸解離定数pKが5以上であるブレーンステッド酸でもよい。前記pKの上限値は、特に限定されないが、例えば、50以下である。
【0022】
なお、本発明のラジカル発生触媒において、前記ラジカル発生触媒は、目的に応じて、反応性の強さ、酸性度の強さ、安全性等を考慮して適宜選択することができる。
【0023】
本発明において、アンモニウム、アミノ酸、ペプチド、及びリン脂質等がラジカル発生触媒として機能する理由は明らかではないが、前記アンモニウム、アミノ酸、ペプチド、及びリン脂質等がルイス酸としての機能を有するためであると推測される。なお、本発明において、「ルイス酸」は、例えば、前記ラジカル発生源に対してルイス酸として働く物質をいう。
【0024】
本発明のラジカル発生触媒のルイス酸性度は、例えば、0.4eV以上、0.5eV以上、又は0.6eV以上である。前記ルイス酸性度の上限値は、特に限定されないが、例えば、20eV以下である。本発明において、前記ルイス酸性度が前記数値以上又は以下であることの判断基準としては、例えば、後述する「ルイス酸性度の測定方法(1)」又は「ルイス酸性度の測定方法(2)」のいずれか一方による測定値が前記数値以上又は以下であればよい。
【0025】
前記ルイス酸性度は、例えば、Ohkubo, K.; Fukuzumi, S. Chem. Eur. J., 2000, 6, 4532、J. AM. CHEM. SOC. 2002, 124, 10270-10271、又はJ. Org. Chem. 2003, 68, 4720-4726に記載の方法により測定することができ、具体的には、下記の「ルイス酸性度の測定方法(1)」により測定することができる。
【0026】
(ルイス酸性度の測定方法(1))
下記化学反応式(1a)中のコバルトテトラフェニルポルフィリン、飽和O及びルイス酸性度の測定対象物(例えば金属等のカチオンであり、下記化学反応式(1a)ではMn+で表される)を含むアセトニトリル(MeCN)を、室温において紫外可視吸収スペクトル変化の測定をする。得られた反応速度定数(kcat)からルイス酸性度の指標であるΔE値(eV)を算出することができる。kcatの値は大きいほど強いルイス酸性度を示す。また、有機化合物のルイス酸性度は、量子化学計算によって算出される最低空軌道(LUMO)のエネルギー準位からも、見積もることができる。正側に大きい値であるほど強いルイス酸性度を示す。
【0027】
【数1a】
【0028】
なお、上記測定方法により測定(算出)されるルイス酸性度の指標となる、ルイス酸存在下におけるCoTPPと酸素の反応速度定数の例を以下に示す。下記表中において、「kcat,M-2s-1」で表される数値が、ルイス酸存在下におけるCoTPPと酸素である。「LUMO, eV」で表される数値が、LUMOのエネルギー準位である。また、「benzetonium chloride」は塩化ベンゼトニウムを表し、「benzalkonium chloride」は塩化ベンザルコニウムを表し、「tetramethylammonium hexafluorophosphate」はヘキサフルオロリン酸テトラメチルアンモニウム塩を表し、「tetrabutylammonium hexafluorophosphate」はヘキサフルオロリン酸テトラブチルアンモニウム塩を表し、「ammonium hexafluorophosphate」はヘキサフルオロリン酸アンモニウム塩を表す。
【0029】
【表tpp】
【0030】
また、本発明において、ルイス酸性度の測定は、ルイス酸性度の測定方法(1)において、酸素分子(O)に代えてユビキノン1(Q1)を用い、ユビキノン1を還元してユビキノン1のアニオンラジカルを生成させることにより行なってもよい。このようなルイス酸性度の測定方法を、以下において、「ルイス酸性度の測定方法(2)」という場合がある。ルイス酸性度の測定方法(2)において、測定は、酸素分子(O)に代えてユビキノン1(Q1)を用いること以外はルイス酸性度の測定方法(1)と同様にして行うことができる。また、ルイス酸性度の測定方法(2)においては、ルイス酸性度の測定方法(1)と同様に、得られた反応速度定数(kcat)からルイス酸性度の指標であるΔE値(eV)を算出することができる。ルイス酸性度の測定方法(2)は、例えば、Ohkubo, K.; Fukuzumi, S. Chem. Eur. J., 2000, 6, 4532に記載されており、同文献に記載された方法にしたがって、又はそれに準じて行うことができる。
【0031】
前記ルイス酸性度の測定方法(2)は、下記化学反応式(1b)に対する反応速度定数(kcat)を測定することにより行うことができる。
【数1b】
前記化学式(1b)中、
n+は、前記ラジカル発生触媒を表し、
CoTPPは、コバルト(II)テトラフェニルポルフィリンを表し、
Q1は、ユビキノン1を表し、
[(TPP)Co]は、コバルト(III)テトラフェニルポルフィリンカチオンを表し、
(Q1)・-は、ユビキノン1のアニオンラジカルを表す。
【0032】
本発明のラジカル発生触媒のルイス酸性度は、例えば、前記化学反応式(1b)に対する反応速度定数(kcat)すなわち「ルイス酸性度の測定方法(2)」により測定される前記反応速度定数(kcat)の測定値(Kobs)が、例えば、1.0×10-5-1以上、2.0×10-5-1以上、3.0×10-5-1以上、4.0×10-5-1以上、5.0×10-5-1以上、6.0×10-5-1以上、7.0×10-5-1以上、8.0×10-5-1以上、9.0×10-5-1以上、1.0×10-4-1以上、2.0×10-4-1以上、3.0×10-4-1以上、4.0×10-4-1以上、5.0×10-4-1以上、6.0×10-4-1以上、7.0×10-4-1以上、8.0×10-4-1以上、9.0×10-4-1以上、1.0×10-3-1以上、2.0×10-3-1以上、3.0×10-3-1以上、4.0×10-3-1以上、5.0×10-3-1以上、6.0×10-3-1以上、7.0×10-3-1以上、8.0×10-3-1以上、9.0×10-3-1以上、1.0×10-2-1以上、2.0×10-2-1以上、3.0×10-2-1以上、4.0×10-2-1以上、5.0×10-2-1以上、6.0×10-2-1以上、7.0×10-2-1以上、8.0×10-2-1以上、又は9.0×10-2-1以上であってもよく、1.0×10-1-1以下、9.0×10-2-1以下、8.0×10-2-1以下、7.0×10-2-1以下、6.0×10-2-1以下、5.0×10-2-1以下、4.0×10-2-1以下、3.0×10-2-1以下、2.0×10-2-1以下、1.0×10-2-1以下、9.0×10-3-1以下、8.0×10-3-1以下、7.0×10-3-1以下、6.0×10-3-1以下、5.0×10-3-1以下、4.0×10-3-1以下、3.0×10-3-1以下、2.0×10-3-1以下、1.0×10-3-1以下、9.0×10-4-1以下、8.0×10-4-1以下、7.0×10-4-1以下、6.0×10-4-1以下、5.0×10-4-1以下、4.0×10-4-1以下、3.0×10-4-1以下、2.0×10-4-1以下、1.0×10-4-1以下、9.0×10-5-1以下、8.0×10-5-1以下、又は7.0×10-5-1以下であってもよい。
【0033】
本発明のラジカル発生触媒において、前記アンモニウムは、例えば、4級アンモニウムでも良いし、3級、2級、1級又は0級のアンモニウムでも良い。また、前記アンモニウムは、特に限定されず、例えば、核酸塩基等でもよいし、後述するアミノ酸、ペプチド等であってもよい。
【0034】
また、本発明のラジカル発生触媒は、例えば、陽イオン界面活性剤でも良く、第4級アンモニウム型陽イオン界面活性剤であっても良い。第4級アンモニウム型陽イオン界面活性剤としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウ、スフィンゴミエリン、ガングリオシドGM1、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、ベタレイン、レシチン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、及びコリン類(ベンゾイルコリンクロリド、及びラウロイルコリンクロリド水和物などのコリンクロリド、ホスホコリン、アセチルコリン、コリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、及び重酒石酸コリンなど)が挙げられる。ただし、本発明のラジカルの製造方法において、前記第4級アンモニウムは、界面活性剤のみには限定されない。
【0035】
本発明のラジカル発生触媒において、前記アンモニウムは、例えば、下記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩であっても良い。
【0036】
【化XI】
【0037】
前記化学式(XI)中、
11、R21、R31、及びR41、は、それぞれ水素原子もしくは芳香環であるか、又はアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよく、R11、R21、R31、及びR41は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R11、R21、R31、及びR41のうち2つ以上が一体化し、それらが結合するNとともに環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
は、アニオンである。Xは、例えば、ペルオキソ二硫酸イオンを除くアニオンである。
11、R21、R31、及びR41において、前記芳香環は、特に限定されず、例えば、ヘテロ原子を含んでいても含んでいなくても良く、置換基を有していても有していなくても良い。ヘテロ原子を含む前記芳香環(ヘテロ芳香環)としては、例えば、含窒素芳香環、含硫黄芳香環、含酸素芳香環等があげられる。ヘテロ原子を含まない前記芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等があげられる。ヘテロ芳香環としては、例えば、ピリジン環、チオフェン環、及びピレン環等があげられる。含窒素芳香環は、例えば、正電荷を有していなくてもよいし、有していてもよい。正電荷を有しない含窒素芳香環としては、例えば、ピロリン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、イソキノリン環、アクリジン環、3,4-ベンゾキノリン環、5,6-ベンゾキノリン環、6,7-ベンゾキノリン環、7,8-ベンゾキノリン環、3,4-ベンゾイソキノリン環、5,6-ベンゾイソキノリン環、6,7-ベンゾイソキノリン環、7,8-ベンゾイソキノリン環等があげられる。正電荷を有する含窒素芳香環としては、例えば、ピロリニウム環、ピリジニウム環、ピリダジニウム環、ピリミジニウム環、ピラジニウム環、キノリニウム環、イソキノリニウム環、アクリジニウム環、3,4-ベンゾキノリニウム環、5,6-ベンゾキノリニウム環、6,7-ベンゾキノリニウム環、7,8-ベンゾキノリニウム環、3,4-ベンゾイソキノリニウム環、5,6-ベンゾイソキノリニウム環、6,7-ベンゾイソキノリニウム環、7,8-ベンゾイソキノリニウム環等があげられる。含酸素芳香環又は含硫黄芳香環としては、例えば、前記ヘテロ原子を含まない芳香環又は含窒素芳香環の炭素原子又は窒素原子の少なくとも一つを、酸素原子及び硫黄原子の少なくとも一方で置き換えた芳香環があげられる。
11、R21、R31、及びR41において、前記アルキル基又は前記芳香環が置換基を有する場合、前記置換基は、特に限定されず、任意であるが、例えば、スルホ基、ニトロ基、ジアゾ基等があげられる。
【0038】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩であっても良い。
【0039】
【化XII】
【0040】
前記化学式(XII)中、
111は、炭素数が5~40のアルキル基であり、エーテル結合、ケトン(カルボニル基)、エステル結合、若しくはアミド結合、置換基、又は芳香環が含まれていてもよく、
21及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
111において、前記芳香環は、特に限定されず、例えば、ヘテロ原子を含んでいても含んでいなくても良く、置換基を有していても有していなくても良い。R111において、前記芳香環の具体例は、特に限定されないが、例えば、前記化学式(XI)のR11、R21、R31、及びR41と同様である。
111において、前記アルキル基又は前記芳香環が置換基を有する場合、前記置換基は、特に限定されず、任意であるが、例えば、前記化学式(XI)のR11、R21、R31、及びR41と同様である。
【0041】
前記化学式(XII)中、
21は、例えば、メチル基又はベンジル基でも良く、前記ベンジル基は、ベンゼン環の水素原子の1以上が任意の置換基で置換されていても置換されていなくても良く、前記任意の置換基は、例えば、アルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン、ヒドロキシ基(-OH)、メルカプト基(-SH)、又はアルキルチオ基(-SR、Rはアルキル基)であっても良い。
【0042】
前記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XIII)で表されるアンモニウム塩であっても良い。
【0043】
【化XIII】
【0044】
前記化学式(XIII)中、
111及びXは、前記化学式(XII)と同じである。
【0045】
前記アンモニウムは、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウム、スフィンゴミエリン、ガングリオシドGM1、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、ベタレイン、レシチン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、及びコリン類からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記アンモニウムは、例えば、塩化ベンゼトニウムであってもよい。
【0046】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XIV)で表されるアンモニウム塩であってもよい。
【0047】
【化XIV】
前記化学式(XIV)中、
100は、環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
11及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
【0048】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XV)で表されるアンモニウム塩であってもよい。
【0049】
【化XV】
【0050】
前記化学式(XV)中、
各Zは、それぞれ、CH又はNであり、同一でも異なっていてもよく、CHの場合は、Hは置換基で置換されていてもよく、
11及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
【0051】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XVI)で表されるアンモニウム塩であってもよい。
【0052】
【化XVI】
【0053】
前記化学式(XVI)中、
101、R102、R103、及びR104は、それぞれ水素原子又は置換基であり、R101、R102、R103、及びR104は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R101、R102、R103、及びR104のうち2つ以上が一体化し、それらが結合するNとともに環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
Zは、CH又はNであり、CHの場合は、Hは置換基で置換されていてもよく、
11及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
【0054】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、下記化学式(XVII)で表されるアンモニウム塩であってもよい。
【0055】
【化XVII】
【0056】
前記化学式(XVII)中、
111~R118は、それぞれ水素原子又は置換基であり、R111~R118は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R111~R118のうち2つ以上が一体化して環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、
芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
Zは、CH又はNであり、CHの場合は、Hは置換基で置換されていてもよく、
11及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
【0057】
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩は、例えば、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、及び塩化テトラブチルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも一つであっても良い。また、前記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩が、塩化ベンゼトニウムであることが特に好ましい。
【0058】
なお、塩化ベンゼトニウム(BznCl)は、例えば、下記化学式であらわすことができる。また、塩化ベンザルコニウムは、例えば、前記化学式(XIII)中、R111が炭素数8~18のアルキル基であり、Xが塩化物イオンである化合物として表すことができる。
【化Bzn】
【0059】
なお、前記化学式(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)及び(XVII)中、Xは、任意のアニオンであり、特に限定されない。また、Xは、1価のアニオンに限定されるものではなく、2価、3価等の任意の価数のアニオンでも良い。アニオンの電荷が2価、3価等の複数の場合、例えば、前記化学式(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)及び(XVII)中のアンモニウム(1価)の分子数は、アニオンの分子数×アニオンの価数(例えば、アニオンが2価の場合、アンモニウム(1価)の分子数は、アニオンの分子数の2倍)となる。Xとしては、例えば、ハロゲンイオン(フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、酢酸イオン、硝酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
【0060】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、前記化学式(XI)、(XII)、(XIII)、(XIV)、(XV)、(XVI)及び(XVII)に限定されず、芳香環を含む任意の構造のアンモニウムでもよい。前記芳香環としては、特に限定されないが、例えば、前記化学式(XI)のR11、R21、R31、及びR41において例示した芳香環があげられる。
【0061】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、スルホン酸系アミン又はそのアンモニウムでもよい。前記スルホン酸系アミンとは、例えば、分子中にスルホ基(スルホン酸基)を有するアミンである。前記スルホン酸系アミンとしては、例えば、タウリン、スルファミン酸、3-アミノ-4-ヒドロキシ-1-ナフタレンスルホン酸、スルファミン酸、p-トルイジン-2-スルホン酸、o-アニシジン-5-スルホン酸、ダイレクト ブルー 14、3-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート、アミノメタンスルホン酸、3-スルホプロピルアミン、2-アミノベンゼンスルホン酸、R(+)-3-アミノテトラヒドロフラン トルエン、4-アミノ-5-ヒドロキシ-1,7-ナフタレンジスルホン酸、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸、4’-アミノ-3’-メトキシアゾベンゼン-3-スルホン酸ナトリウム、Lapatinib ditosylate、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸、8-アミノ-1,3,6-ナフタレントリスルホン酸二ナトリウム水和物、1-アミノナフタレン-2-スルホン酸、(2S,3S)-3-アミノ-2-メチル-4-オキソ-1-アゼチジンスルホン酸、3-(1-ナフチルアミノ)プロパンスルホン酸ナトリウム、3-メチル-4-アミノベンゼンスルホン酸、3-シクロヘキシルアミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸 ナトリウム、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸 ナトリウム、4-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、スルファミン酸ナトリウム、トリカイン、スルファニル酸 ナトリウム、1,4-フェニレンジアミン-2-スルホン酸、p-アニシジン-2-スルホン酸、6-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、3,4-ジアミノベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4-クロロベンゼンスルホン酸、3-[(4-アミノ-3-メチルフェニル)アゾ]ベンゼンスルホン酸、3-アミノ-4-ヒドロキシ-5-ニトロベンゼンスルホン酸、5-アミノ-6-ヒドロキシ-3-ニトロベンゼンスルホン酸、4-アセトアミド-2-アミノベンゼンスルホン酸水和物、2-アミノフェノール-4-スルホン酸、1-アミノ-2-メトキシ-5-メチル-4-ベンゼンスルホン酸、ダンシル酸、Sulfamic acid [(1S,2S,4R)-4-[4-[[(1S)-2,3-dihydro-1H-inden-1-yl]amino]-7H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-7-yl]-2-hydroxycyclopentyl]methyl ester、5-スルホ-4’-ジエチルアミノ-2,2’-ジヒドロキシアゾベンゼン、2-アミノナフタレン-6,8-ジスルホン酸、2-[N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-エタンスルホン酸ナトリウム、3-アセチル-2-(メチルアミノスルホニル)チオフェン、4-アミノ-2-クロロトルエン-5-スルホン酸ナトリウム、5-(3-AMINO-5-OXO-2-PYRAZOLIN-1-YL)-2-PHENOXYBENZENESULFONIC ACID、スルファミン酸カリウム、P-AMINOAZOBENZENE MONOSULFONIC ACID、3-[(3-Cholamidopropyl)dimethylammonio]-2-hydroxy-1-propanesulfonate、3-アミノ-2,7-ナフタレンジスルホン酸一ナトリウム、3-[N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム塩、二(アミド硫酸)コバルト(II)、3-(4-アミノ-3-メトキシフェニルアゾ)ベンゼンスルホン酸、スルファミン酸ニッケル(II)四水和物、2,4-ジアミノベンゼンスルホン酸ナトリウム、5-アミノ-2-クロロトルエン-4-スルホン酸、2,5-ジクロロスルファニル酸、4-メチルベンゼンスルホン酸、APTS(アミノピレントリスルホン酸)、4’-アミノアゾベンゼン-3-スルホン酸、ポンタシル カルミン 2B、p-アニシジン-3-スルホン酸、4,4’-ビス(4-アミノ-1-ナフチルアゾ)-2,2’-スチルベンスルホン酸、3-AMINONAPHTHALENE-8-HYDROXY-4,6-DISULFONIC ACID、4-アミノ-1,5-ナフタレンジスルホン酸ナトリウム、4-アミノアゾベンゼン-4’-スルホン酸ナトリウム、5-アミノ-2-メチルベンゼンスルホン酸、7-アミノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、アリザリンサフィロールSE、7-アミノ-2-ナフタレンスルホン酸 ナトリウム、6-アミノ-5-ブロモピリジン-3-スルホン酸、2-アミノエタンチオールp-トルエンスルホン酸塩、2-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸ナトリウム、6-アミノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム水和物、N,N,N’,N’-テトラエチルスルファミド、5-アミノ-2-エトキシベンゼンスルホン酸、3,5-ジアミノ-2,4,6-トリメチルベンゼンスルホン酸、7-アミノ-1-ナフタレンスルホン酸、スルファミン酸 グアニジン、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸、ジアミド硫酸ニッケル(II)、4-アミノ-4’-ニトロスチルベン-2,2’-ジスルホン酸二ナトリウム、アニリン-2,5-ジスルホン酸一ナトリウム、5-アミノ-1-ナフトール-3-スルホン酸水和物、2,5-ジクロロスルファニル酸 ナトリウム、6-アミノヘキサン酸ヘキシルp-トルエンスルホナート、rac-(R*)-2-(4-クロロフェニル)-3-アミノ-1-プロパンスルホン酸、2-(N,N-ジプロピル)アミノ アニソール-4-スルホン酸、2-アミノ-4-クロロフェノール-6-スルホン酸、6-アミノ-1,3-ナフタレンジスルホン酸、5,10,15,20-テトラキス〔4-(トリメチルアンモニオ)フェニル〕-21H,-23H-ポルフィンテトラトシレート、5-アミノ-2-[(4-アミノフェニル)アミノ]ベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-クロロベンゼンスルホン酸、2-アミノベンゼンスルホン酸フェニルエステル、4-アセチルアミノ-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’-ジスルホン酸ジナトリウム、(S)-3-AMINO-2-OXETANONE P-TOLUENESULFONIC ACID SALT、5-アセチルアミノ-4-ヒドロキシ-2,7-ナフタレンジスルホン酸二ナトリウム、2-フェニルアミノ-5-アミノベンゼンスルホン酸、4-オクタデシルアミノ-4-オキソ-2-[(ソジオオキシ)スルホニル]ブタン酸ナトリウム、3,5-ジアミノ-4-メチルベンゼンスルホン酸等があげられる。
【0062】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、ニコチン系アミン又はそのアンモニウムでもよい。前記ニコチン系アミンとは、例えば、分子中に、環状構造を有し、かつ、前記環状構造がニコチン骨格を含むアミンである。前記ニコチン系アミンとしては、例えば、ニコチンアミド、アルカロイド等があげられる。
【0063】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、亜硝酸系アミン又は亜硝酸系アンモニウムでもよい。前記亜硝酸系アミン又は亜硝酸系アンモニウムとは、例えば、アミンと亜硝酸又は亜硝酸誘導体とを反応させて得られる化合物である。前記亜硝酸系アミン又は亜硝酸系アンモニウムとしては、例えば、ジアゾ化合物、ジアゾニウム塩、N-ニトロソ化合物、C-ニトロソ化合物等があげられる。
【0064】
また、本発明のラジカル発生触媒において、前記アンモニウムは、1分子中にアンモニウム構造(N)を複数含んでいても良い。さらに、前記アンモニウムは、例えば、π電子相互作用により複数の分子が会合し、二量体又は三量体等を形成していても良い。
【0065】
本発明のラジカル発生触媒において、前記アミノ酸は、特に限定されない。前記アミノ酸は、例えば、分子中に、アミノ基又はイミノ基と、カルボキシ基との両方を、それぞれ少なくとも1つずつ含んでいればよい。前記アミノ酸は、例えば、α-アミノ酸でもよく、β-アミノ酸でもよく、γ-アミノ酸でもよく、それら以外のアミノ酸でもよい。前記アミノ酸は、例えば、タンパク質を構成するアミノ酸でもよく、具体的には、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、リシン、ヒドロキシリシン、アルギニン、システイン、シスチン、メチオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、プロリン、及び4-ヒドロキシプロリンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0066】
本発明のラジカル発生触媒において、前記ペプチドは、特に限定されない。前記ペプチドは、例えば、前記アミノ酸分子が2個以上、ペプチド結合により結合したものであればよい。前記ペプチドは、例えば、酸化型グルタチオン(GSSG)及び還元型グルタチオン(GSH)の少なくとも一方であってもよい。
【0067】
本発明のラジカル発生触媒において、前記リン脂質は、特に限定されない。前記リン脂質は、例えば、分子中にリン原子を含む脂質であればよく、例えば、分子中にリン酸エステル結合(P-O-C)を含む脂質であってもよい。前記リン脂質は、例えば、分子中に、アミノ基、イミノ基、アンモニウム基、及びイミニウム基の少なくとも一つを有していてもよいし、有していなくてもよい。前記リン脂質は、例えば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、及びカルジオリピンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。
【0068】
本発明のラジカル発生触媒は、前述のとおり、本発明の上皮癌治療薬に含まれる前記オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質からのラジカル発生を触媒する物質である。したがって、本発明のラジカル発生触媒は、例えば、生体外でラジカル発生源からのラジカル発生を触媒してもよいが、生体内において、前記オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質からのラジカル発生を触媒することが好ましい。前記生体内は、例えば、人体内でもよいが、人間以外の動物の体内でもよい。
【0069】
本発明のラジカル発生触媒は、例えば、消化器官内において、ラジカル発生源からのラジカル発生を触媒してもよい。前記消化器官は、例えば、口腔部、咽頭部、食道、胃、十二指腸、小腸及び大腸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記消化器官は、例えば、大腸であってもよい。前記小腸は、例えば、十二指腸、空腸及び回腸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記大腸は、例えば、盲腸、結腸及び直腸からなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。本発明のラジカル発生触媒は、例えば、前記消化器官内の殺菌、腸内細菌叢の変化の誘導、潰瘍性大腸炎の治療又は症状の抑制等に用いてもよい。
【0070】
本発明の上皮癌治療薬において、前記ラジカル発生触媒の含有率は、特に限定されない。例えば、上皮癌治療薬1gに対し、前記ラジカル発生触媒の含有量が、0.1μg以上、1μg以上、2μg以上、3μg以上、5μg以上、10μg以上、100μg以上、200μg、500μg以上、1500μg以上、2500μg以上、又は5000μg以上でもよく、10000μg以下、5000μg以下、2500μg以下、2000μg以下、1000μg以下、500μg、100μg以下、又は10μg以下でもよい。
【0071】
[1-3.その他の任意成分]
本発明の上皮癌治療薬は、前述のとおり、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする。本発明の上皮癌治療薬は、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分としては、例えば、前記ラジカル発生触媒が挙げられる。また、本発明の上皮癌治療薬は、前記ラジカル発生触媒以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記ラジカル発生触媒以外の任意成分は、特に限定されない。その具体例については、下記「2.上皮癌治療薬の形態、製造方法、使用方法等」に記載する。
【0072】
[2.上皮癌治療薬の形態、製造方法、使用方法等]
本発明の上皮癌治療薬の形態は、特に限定されず、例えば、固形、粉末、半固形状、液状等でもよい。固形の場合は、例えば、錠剤、カプセル等でもよい。
【0073】
本発明の上皮癌治療薬の製造方法も特に限定されず、例えば、一般的な薬剤の製造方法と同様もしくはそれに準じた方法で製造することができる。具体的には、例えば、本発明の上皮癌治療薬の全成分を単に混合するのみでもよい。また、例えば、前記全成分を混合後に、例えば、押し固めて錠剤にしてもよいし、カプセルに封入してもよい。
【0074】
本発明の上皮癌治療薬は、前述のとおり、前記ラジカル発生触媒以外の任意成分を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。前記任意成分は、前述のとおり、特に限定されず、例えば、一般的な薬剤と同様又はそれに準じてもよい。前記任意成分としては、例えば、本発明の上皮癌治療薬が液状である場合は、水、pH緩衝液、生理食塩水等が挙げられる。
【0075】
本発明の上皮癌治療薬は、前記任意成分として、例えば、一種類以上の薬学的に許容可能な添加物をさらに含んでいてもよい。すなわち、例えば、硫酸化多糖又は硫酸化オリゴ糖を、投与に先立ち、一種類以上の薬学的に許容可能な添加物と共に製剤してもよい。前記添加物は、特に限定されないが、例えば、担体、希釈剤、香料、甘味料、滑沢剤、溶解剤、懸濁剤、結合剤、錠剤崩壊剤、及びカプセル化材等の不活性物質が挙げられる。また、これら以外にも、例えば、医薬の分野で一般に使用されている任意の添加物を適宜用いてもよい。
【0076】
前記添加物は、本発明の上皮癌治療薬を経口投与する場合は、例えば、以下に列挙する物質を使用することができる。担体としては、例えば、ラクトース、デンプン、スクロース、グルコース、炭酸ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、メチルセルロース等が可能である。崩壊剤としては、例えば、トウモロコシ粉、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガム、アルギン酸等が可能である。結合剤としては、例えば、ゼラチン、天然糖、ベータラクトース、トウモロコシ甘味料、天然及び合成ゴム、アラビアゴム、トラガカントゴム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス等が可能である。滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸、オレイン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、食塩、タルク等が可能である。
【0077】
本発明の上皮癌治療薬は、例えば、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つと、必要に応じ前記ラジカル発生触媒及びその他の任意成分とを、希釈剤と混合しても良いし、担体に封入しても良い。前記担体は、例えば、カプセル、小袋、紙その他の容器の形態が可能である。前記担体は希釈剤を兼ねてもよく、固体でも、半固体でも、ビヒクルとして作用する液体でも良い。また、本発明の医薬の形態は、特に限定されないが、例えば、錠剤、ピル、散剤、ローゼンジ、エリキシル、懸濁液、乳濁液、溶液、シロップ、エアロゾル、軟膏、軟・硬ゼラチンカプセル、坐薬、滅菌注射用液及び包装滅菌散剤等の種々の形態が可能である。
【0078】
本発明の上皮癌治療薬の投与形態は特に限定されず、その目的に応じて、経口的に、又は非経口的に投与することができる。経口剤として投与する時の形態は、特に限定されず、通常の及び腸溶性錠剤、カプセル、ピル、散剤、顆粒剤、エリキシル剤、チンキ剤、溶剤、懸濁剤、シロップ、固体もしくは液体エアロゾル、及び乳濁液等、当業者が通常用いる形態を選択することができる。また、非経口投与時の形態も特に限定されず、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、筋肉内投与、注射、点滴等、当業者が通常用いる形態を選択することができる。
【0079】
また、本発明の上皮癌治療薬の1回当たりの投与量及び投与間隔等は特に限定されず、その目的に応じて適宜選択することができる。それらは、患者の年齢、体重、性別、医学的状態、病状、投与経路、患者の代謝・排泄機能のレベル、使用される剤形、投与される特定のオキソ酸、オキソ酸イオン又はオキソ酸塩を含む種々の要素を考慮して、当業者によって選定することができる。本発明の上皮癌治療薬の1回当たりの投与濃度は、局所投与の場合、例えば、100ppm(0.1質量%)以上、200ppm以上、300ppm以上、500ppm以上、1000ppm以上、2500ppm以上、又は5000ppm以上であってもよく、例えば、5000ppm(3質量%)以下、2500ppm以下、1000ppm以下、500ppm以下、300ppm以下、又は200ppm以下であってもよい。本発明の上皮癌治療薬の1回当たりの投与間隔は、局所投与の場合、次回の投与までの間隔が、例えば、1日以上、2日以上、3日以上、4日以上、5日以上、6日以上又は7日以上であってもよく、例えば、7日以下、6日以下、5日以下、4日以下、3日以下、又は2日以下であってもよい。例えば、膀胱癌に対し、再発予防のために経尿道的切除術後直後及び週1回4~8回の投与(投与液量10~40ml、例えば30ml)で本発明の上皮癌治療薬を投与してもよい。
【0080】
本発明の上皮癌治療薬の有効成分であるオキソ酸、オキソ酸イオン又はオキソ酸塩は、一般的な上皮癌治療薬と比較して毒性が低い。また、本発明の上皮癌治療薬の有効成分であるオキソ酸、オキソ酸イオン又はオキソ酸塩については、その毒性がよく知られているため、患者に安全な投与量及び投与間隔等を選択することができる。このため、本発明によれば、例えば、一般的に使用されている抗癌剤やBCG製剤と比べて非常に副作用が小さい上皮癌治療薬を提供することができる。また、本発明の上皮癌治療薬によれば、例えば、強い再発抑制作用(再発予防効果)を得ることも可能である。すなわち、本発明の上皮癌治療薬によれば、例えば、上皮癌の再発率をきわめて低くすることができる。
【0081】
また、本発明の上皮癌治療薬は、例えば、上皮癌細胞のアポトーシス促進剤として用いることもできる。例えば、上皮癌細胞のアポトーシスを促進することで、前記上皮癌細胞の増殖を、さらに効果的に抑制することができる。
【0082】
また、本発明によれば、前記オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを使用する本発明の上皮癌治療薬の製造方法を提供することができる。本発明の上皮癌治療薬の製造方法について、具体的には前述のとおりである。本発明の上皮癌治療薬の製造方法において、前述のとおり、前記ラジカル発生触媒を用いても用いなくてもよいし、前記ラジカル発生触媒以外の任意成分を用いても用いなくてもよい。また、本発明によれば、本発明の上皮癌治療薬を患者に投与する工程を含む、前記患者の上皮癌の治療方法を提供することができる。前記投与する工程において、投与方法、投与量、投与間隔等は特に限定されず、例えば、前述のとおりである。
【0083】
本発明の上皮癌治療薬の投与対象、又は本発明による治療の対象となる患者は、例えば、ヒト又はヒトを除く非ヒト動物である。前記非ヒト動物は、例えば、マウス、ラッド、ウサギ、サル、イヌ、ウシ等があげられる。
【実施例
【0084】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例には限定されない。
【0085】
[実施例1:MA-Tを用いた膀胱癌治療薬]
以下のようにして、膀胱癌治療薬(本発明の上皮癌治療薬)を製造し、さらに、その効果を確認した。なお、以下において、NaClO及び塩化ベンゼトニウムを含む水溶液(薬剤)を「MA-T」ということがある。MA-Tにおいて、NaClO及び塩化ベンゼトニウムの濃度は、それぞれ、特に限定されないが、例えば、NaClO及び塩化ベンゼトニウムを同質量用いることができる。以下において、例えば、100ppm NaClO及び100ppm塩化ベンゼトニウムを含む水溶液(薬剤)を「100ppm MA-T」ということがある。MA-Tは、NaClOを含むため、本発明の上皮癌治療薬として機能する。また、以下において、MA-Tを用いて製造した本発明の上皮癌治療薬を、「本発明のMA-T上皮癌治療薬」という場合がある。
【0086】
[(1)細胞培養]
膀胱癌細胞株UM-UC-3はATCC(American Type Culture Collection)より、BOY-12Eは東北大学より、UM-UC-2、5637、及びEJ-1は奈良県立医科大学より、それぞれ入手して使用した。
【0087】
UM-UC-3、UM-UC-2、及びEJ-1細胞は、D-MEM(Low glucose、富士フィルム和光純薬株式会社の商品名)、5637細胞はRPMI-1640(富士フィルム和光純薬株式会社の商品名)、BOY-12E細胞はE-MEM(富士フィルム和光純薬株式会社の商品名)にそれぞれFetal bovine serum(FBS,Biosera社)を10体積%になるように加えた培地を用い、37℃、5%CO環境下で培養した。継代する際は0.025% Trypsin/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を細胞に添加し37℃、5%COにてインキュベートすることで細胞を剥離し、さらに、1500rpmで3分間遠心して細胞を回収した。
【0088】
[(2)試薬調製]
10000ppmのNaClO(亜塩素酸ナトリウム)水溶液及び10000ppmの塩化ベンゼトニウム水溶液を10×リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline、PBS)と蒸留水(distilled water、DW)とで下表のように最終1×PBSになるように希釈し、NaClO及び塩化ベンゼトニウムの1×PBS水溶液を調製した。これらの水溶液は、MA-Tを含む本発明の上皮癌治療薬、すなわち「本発明のMA-T上皮癌治療薬」に該当する。なお、PBSにおいて、「10×」は10倍濃度を表し、「1×」は1倍濃度を表す。下記表1には、調製した水溶液の全量を400μLとした場合に必要な各溶液の量を示す。
【0089】
【表1】
【0090】
図1のグラフに、UM-UC-3細胞及び5637細胞の細胞増殖に対するNaClOと塩化ベンゼトニウムの混合水溶液の効果を濃度及び反応時間依存的解析した図を示す。横軸は、時間(hr)であり、縦軸は、正規化された指数で表した細胞数である。xCelligenceによる解析結果は、添加直後の値でノーマライズしてnormalie cell indexとして表した。図示のとおり、それぞれ、NaClOと塩化ベンゼトニウムの混合水溶液濃度が25ppmの低濃度でも膀胱癌細胞増殖の抑制が見られ、NaClOと塩化ベンゼトニウムの混合水溶液濃度が高濃度になると、膀胱癌細胞増殖がさらに抑制され、100ppmではいずれの細胞の増殖も完全に抑制されることが確認できた。
【0091】
[(3)タイムラプス(Time laps)撮影]
3cmディッシュにUM-UC-3細胞を1×10cells/1000ml/dishで播種し、翌日に培養培地を除去した後、100ppm MA-T水溶液を1000μL/well添加し、120分間インキュベートした。MA-T水溶液を除去後、通常培養培地を全てのウェルに添加し、microscope incubation system(株式会社東海ヒットの商品名)を併設したBZ-X710(株式会社キーエンスの商品名)を用いて20倍レンズで同視野を10分おきに48時間撮影した。得られた画像を同システムに内蔵されているソフトを用いて動画処理した。なお、対照(Control)として、MA-T水溶液に代えてPBSを用いること以外は同様に処理したサンプルを用いて、同様に撮影及び動画処理をした。
【0092】
図2及び3の写真に、前記タイムラプス撮影の結果を示す。図2は、撮影開始直後(0時間培養)の写真であり、図3は、撮影開始48時間後(48時間培養)の写真である。図2及び3において、それぞれ、「Control」は、PBS添加群(対照)を表し、「MA-T」は、100ppm MA-T(すなわち、本発明のMA-T上皮癌治療薬を加えた)サンプルを表す。図示のとおり、PBS添加群(Control)では、48時間後にUM-UC-3細胞の増殖が確認されたのに対し、本発明のMA-T上皮癌治療薬を加えたUM-UC-3細胞では増殖が抑制されていた。すなわち、本発明のMA-T上皮癌治療薬には、膀胱癌細胞の増殖を抑制する効果があることが確認された。
【0093】
[(4)アポトーシス解析]
6ウェルプレートに各細胞を播種した。UM-UC-3細胞は5×10cells/wellで、5637細胞は8×10cells/wellで播種した。翌日に培養培地を除去し100ppm MA-T水溶液を添加した。その後、37℃、5%CO環境下でインキュベート(UM-UC-3細胞に対しては12時間、5637細胞に対しては6時間)した後、上清も含めて細胞を回収し、3000rpmで5分間遠心して細胞ペレットを得た。この細胞ペレットを1×PBSで2回洗浄した後、Annexin V-FITC Apoptosis Detection Kit(Bio Vision社の商品名)の1×Binding bufferを294μL、Propidium iodideを3μL、Annexin Vを3μL添加し懸濁させた。懸濁液を37μmのナイロンメッシュ(NBCメッシュテック社)に通し、round bottom tube(Falcon社)に移した。その後、FACS Calibur(Becton Dickinson社の商品名)により各染色細胞のポピュレーションを解析した。FACSのvoltage調節のためにPropidium iodideとAnnexin Vそれぞれの単染色サンプルを用意した。なお、対照(Control)として、PBSを用いること以外は同様に処理したサンプルを用いて、同様にアポトーシス解析をした。
【0094】
図4に、5637細胞のアポトーシス解析を示す。同図において、「Control」は、PBSサンプル(対照)を表し、「MA-T」は、100ppm MA-T(すなわち、本発明のMA-T上皮癌治療薬を加えた)サンプルを表す。図示のとおり、PBSサンプル(対照)では、5637細胞のアポトーシス率が8.5%であったのに対し、本発明の上皮癌治療薬を加えたMA-Tでは、5637細胞のアポトーシス率が30.2%であった。すなわち、本発明の上皮癌治療薬には、上皮癌細胞のアポトーシスを促進する効果があることが確認された。
【0095】
[(5)ルシフェラーゼ発現膀胱癌細胞の同所性移植モデルを用いたMA-Tの抗腫瘍作用]
独自開発技術であるルシフェラーゼ発現膀胱癌細胞のマウス同所性移植モデルを用いた評価を実施した。具体的には、ルシフェラーゼ発現ヒト膀胱癌細胞UM-UC-3を作製し、マウスへ移植後10日目にルシフェラーゼ基質を投与し、ルシフェラーゼ活性をin vivoイメージングした(投与前)。その後MA-Tを50μl膀胱内に投与し、その2日後に再度イメージングした。その結果、後述するように、顕著なルシフェラーゼ活性の低下がMA-T投与により認められた。
【0096】
[(5-1)膀胱癌細胞同所性移植モデルの構築]
pGL4.51[luc2/CMV/Neo] vector (Promega) を PstI (NEB) でリニアライズ後、Wizard SV Gel and PCR Clean-Up Systemを用いてpGL4.51リニアライズ化ベクターを精製した。Lipofectamine 3000を用いたフォワード法によりUM-UC-3細胞にpGL4.51リニアライズ化ベクターをトランスフェクションし、3000μg/mL G-418(Wako社の商品名)を用いてセレクションすることによりルシフェラーゼ発現ヒト膀胱癌細胞UM-UC-3 Flucを作製した。この細胞を用いて下記の手順で膀胱癌細胞同所性移植モデルを構築した。

(1) 6-7週齢の雌BALB/c Slc-nu/nuにイソフルラン麻酔下で仰臥位に保定後、針を除去した24G3/4サーフローF&F(テルモ株式会社の商品名)を用い、尿道口から膀胱内にカテーテルを通し、尿を排出した。
(2) 100μL0.2% Trypsin (Life technologies) /0.05% EDTA (DOJINDO) を膀胱内に注入した。カテーテルを挿入した状態でディスポクレンメ (夏目製作所、AM-1 30g)で尿道口を止め、カテーテルをゆっくりと抜いた。
(3) Trypsin/EDTA注入5分後、仰向けからうつ伏せに体位を変え、腹部を摩ってTrypsin/EDTAを排出した。
(4) 100μL PBS膀胱内に注入し、PBSの入排出を2~3回繰り返して膀胱内を洗浄した。
(5) カテーテルを介してUM-UC-3 Fluc細胞 (5.0×106 cells/mouse) を50μLの無血清DMEM培地に懸濁し、膀胱内に注入した。その後、細胞が漏出しないよう尿道口をクレンメで止め、カテーテルを取り除いた。
(6) マウスを麻酔ボックス (シナノ製作所) に入れ、2時間留置した。
(7) 細胞注入後2時間後にクレンメを外し、マウスの状態を確認した後に元のケージに戻した。
【0097】
UM-UC-3 Fluc細胞膀胱内移植マウスのin vivo イメージングは、下記の手順で行った。

(1) ルシフェラーゼの基質として、VivoGlo In Vivo Imaging Substrates (Promega者の商品名)4mgを200μL PBSで溶解した。調整した溶液200μLを腹腔内投与した。投与後3分間ケージ内でマウスを放置後、3分間麻酔下に置いた。その後、イメージング装置NightOWL (BERTHOLD TECHNOLOGIES社の商品名)を用いて、露光時間60秒間、Pixel Bining 1×1で撮影を行った。
(2) 移植後10日目と24日目のルシフェラーゼの発光を測定し、その比率を発光比率として倍数であらわした。
【0098】
さらに、前述のとおり、in vivoイメージング後にMA-T投与を行った。具体的には、100ppm MA-Tを、UM-UC-3 Fluc移植10日後にルシフェラーゼ活性測定後に50μl膀胱内に投与した。投与後3分間ケージ内でマウスを遊ばせ、更に3分間麻酔下に置いた。その2日後、再度、イメージング装置NightOWL (BERTHOLD TECHNOLOGIES社の商品名)を用いて、露光時間60秒間、Pixel Bining 1×1で撮影し、in vivoイメージングを行った。
【0099】
図5の写真に、MA-T投与前と投与2日後とのin vivoイメージング結果を示す。図中、「MA-T107」は、MA-Tを投与したマウスを表し、「Control」は、対照として、MA-Tに代えてPBSを50μl膀胱内に投与した以外は同様にしてin vivoイメージングをしたマウスを表す。図示のとおり、MA-Tを投与しなかったマウスでは、ほとんど発光の低下つまり腫瘍の縮小が見られなかったが、MA-Tを投与したマウスでは、腫瘍の縮小が顕著であった。
【0100】
[(5-2)MA-T膀胱内投与マウスの体重変化と膀胱の病理組織解析]
前記「(5-1)膀胱同所性移植モデルの構築」と同様にして膀胱同所性移植モデルを構築したマウスに対し、100ppm MA-T又はコントロールとしてPBSを、マウス膀胱内に50μlの用量で週2回2週間投与した。投与後、前記マウスの体重変化を10日後まで測定した。図6のグラフに、その結果を示す。横軸は日数であり、縦軸は、測定開始時(0日)のマウス体重を1としたマウス体重(体重変化割合)である。「MA-T107」は、MA-Tを投与したマウスであり、「PBS」は、コントロールとしてPBSを投与したマウスである。図示のとおり、MA-T投与により顕著な体重減少は認められなかった。
【0101】
さらに、投与終了後10日目にマウス膀胱を摘出し、その病理組織解析を行った。図7の顕微鏡写真に、その結果を示す。図7上段は膀胱の全体像を示し、下段は拡大像を示す。図示のとおり、PBS投与群とMA-T投与群で病理組織学的な異常は認められなかった。
【0102】
[(6)腫瘍組織病理解析]
前記「(5)ルシフェラーゼ発現膀胱癌細胞の同所性移植モデルを用いたMA-Tの抗腫瘍作用」のUM-UC-3 Fluc移植マウスの24日目の膀胱を摘出し、10%中性緩衝ホルマリンで固定し、腫瘍組織のパラフィンブロックを作製してヘマトキシリン・エオシン(HE)染色を行った。
【0103】
図8のグラフに、移植後10日目と24日目に測定した膀胱腫瘍のルシフェラーゼ発光値比率と、24日目に解剖後測定した膀胱重量とを示す。同図において、「Control」は、PBSサンプル(対照)を表し、「MA-T」は、100ppm MA-T(すなわち、本発明の上皮癌治療薬)サンプルの投与群を表す。また、図8右側の写真は、HE染色後に撮影した写真である。図8に示すとおり、本発明のMA-Tでは、PBSサンプル(対照)と比較して、膀胱癌細胞の増殖が抑制され、膀胱腫瘍に組織学的にダメージが生じていることが確認された。
【0104】
[(7)膀胱癌患者由来異種移植(patient-derived xenograft、PDX)マウスを用いたMA-Tの抗腫瘍効果評価]
膀胱癌臨床検体由来の腫瘍を継代移植したマウスモデルを使用した。2ヶ月前に腫瘍を継代移植(passage8)したSHO Hairless SCIDマウス(オス、腫瘍移植時4週齢)3匹より腫瘍を摘出した。摘出した腫瘍を約5mm四方の大きさに切り分け、各腫瘍組織片を100ppm MA-T水溶液及び対照として1×PBS溶液に120分浸した。その後SHO Hairless SCID マウス(オス、4週齢)の皮下に腫瘍を移植し(PBS浸漬群:n=10、MA-T浸漬群:n=10)、移植日より3日おきに腫瘍径(長径と短径)を測定した。腫瘍体積は下記数式(A)により算出した。移植後32日目に腫瘍を摘出し、各腫瘍重量を測定した。統計処理はstudent’s t-testにより行った。

腫瘍体積=(長径×短径^2)/2 (A)
【0105】
[(7-1)腫瘍組織病理解析]
前記「(7)膀胱癌患者由来異種移植(patient-derived xenograft、PDX)マウスを用いたMA-T水溶液の抗腫瘍効果評価」のPDXマウスより摘出した腫瘍組織を10%中性緩衝ホルマリンで固定し、腫瘍組織のパラフィンブロックを作製してHE染色を行った。
【0106】
図9左側のグラフに、腫瘍移植後日数と、腫瘍体積との関係を示す。横軸は、移植後日数(日)であり、縦軸は、腫瘍体積(mm3)である。また、図9右側のグラフは、移植後32日目に解剖して摘出した腫瘍の重量(mg)を示す、図9において、「Control」は、PBSサンプル(対照)を表し、「MA-T」は、100ppm MA-T(すなわち、本発明のMA-T上皮癌治療薬を加えた)サンプルを表す。図9に示すとおり、本発明のMA-T上皮癌治療薬で処理した群では、PBSサンプル(対照)と比較して、膀胱癌腫瘍の増殖が抑制されていることが確認された。
【0107】
さらに図10に示すように、32日目に摘出した腫瘍のHE染色の結果、MA-T水溶液処理群では腫瘍の壊死像が組織学的に確認された。
【0108】
[実施例2:亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含む膀胱癌治療薬]
以下のようにして、NaClOを含む膀胱癌治療薬(本発明の上皮癌治療薬)を製造し、さらに、その効果を確認した。なお、以下において、NaClOを含む本発明の上皮癌治療薬を「本発明のNaClO上皮癌治療薬」又は単に「NaClO上皮癌治療薬」ということがある。
【0109】
[(1)細胞培養]
膀胱癌細胞株UM-UC-3、大腸癌細胞株HT-29、HCT116はATCC(American Type Culture Collection)より、BOY-12Eは東北大学より、UM-UC-2、5637、EJ-1は奈良県立医科大学より、それぞれ入手して使用した。子宮癌細胞株HeLa、子宮頸癌細胞株HeLaS3、舌癌細胞株HSC-3及び口腔癌細胞株HO-1-u-1はJCRB(Japanese Collection of Research Bioresources)細胞バンクより入手した。
【0110】
UM-UC-3細胞、UM-UC-2細胞、EJ-1細胞、5637細胞、BOY-12E細胞は、前記実施例1の「(1)細胞培養」に記載の方法で培養して使用した。HeLa細胞、HeLaS3細胞、HSC-3細胞はE-MEM(富士フィルム和光純薬株式会社)、HO-1-u-1細胞はDulbecco‘s modifwied Eagle’s medium - F12 medium (1:1 mix)(富士フィルム和光純薬株式会社)HT-29細胞とHCT116細胞はMcCoy‘s 5a Medium(富士フィルム和光純薬株式会社)にそれぞれFetal bovine serum(FBS,Biosera社)を10体積%になるように加えた培地を用い、37℃、5%CO環境下で培養した。継代する際は0.025% Trypsin/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を細胞に添加し37℃、5%COにてインキュベートすることで細胞を剥離し、さらに、1500rpmで3分間遠心して細胞を回収した。
【0111】
[(2)試薬調製]
10000ppmのNaClO(亜塩素酸ナトリウム)水溶液(Lot. No. 170612C)を10×リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline、PBS)と蒸留水(distilled water、DW)とで下表のように最終1×PBSになるように希釈し、NaClOの1×PBS水溶液を調製した。これらの水溶液は、NaClOを含む本発明の上皮癌治療薬、すなわち「本発明のNaClO上皮癌治療薬」に該当する。なお、PBSにおいて、「10×」は10倍濃度を表し、「1×」は1倍濃度を表す。下記表1には、調製したNaClO水溶液の全量を400μLとした場合に必要な各溶液の量を示す。
【0112】
【表2】
【0113】
[(3)WST-8 assay]
以下のようにしてWST-8 assayを行った。
【0114】
[NaClO水溶液の反応時間及び濃度の検討]
96ウェル(well)プレートに各細胞を播種した。このとき、UM-UC-3、UM-UC-2、EJ-1、及びBOY-12Eの各細胞は1200cells/wellで、5637細胞は1500cells/wellで播種した。翌日に全てのウェルから培地を除き、500ppm(反応時間検討)及び各濃度のNaClO水溶液を100μL/wellで3つの(triplicate)ウェルに添加した。このプレートを、37℃、5% CO環境下で30,60,90,120分(反応時間検討、臨床試験における膀胱内注入による排尿の我慢可能な時間を考慮して最長時間を120分に設定)及び120分(濃度検討)インキュベートした後に、各ウェル内の溶液を除去した。その後、通常培養培地を全てのウェルに90μLずつ添加し、さらに48時間培養した。その後、Cell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所[DOJINDO]の商品名)を1ウェルあたり10μLずつ加え、37℃、5% CO環境下で2時間インキュベートし、吸収波長450nm、対照波長630nmの吸光値をiMarkマイクロプレートリーダー(BIORAD社の商品名)を用いて測定した。
【0115】
図11のグラフは、UM-UC-3細胞に、500ppm NaClO水溶液を各時間接触させた際の細胞増殖割合(左図)と各膀胱癌細胞の細胞増殖に対するNaClO水溶液の濃度依存性(右図)を示す。横軸は、左図では時間(min)であり、右図は濃度(ppm)である。縦軸は、正規化された指数で表した細胞増殖割合である。図示のとおり、500ppm NaClO水溶液とUM-UC-3細胞のインキュベートにより時間依存的に細胞増殖が抑制され、120分インキュベートにより6割以上の増殖抑制作用が見られた。また各種膀胱癌細胞に対するNaClO水溶液の120分インキュベートでは濃度依存性の増殖抑制が見られ、500ppm以上ではほぼ完全に膀胱癌の増殖が抑制されていることが確認できた。
【0116】
図12は、UM-UC-3細胞をPBSあるいはNaClOと120分インキュベートして除去後ただちに(0時間)あるいは24時間培養後(24時間)の細胞の顕微鏡写真を示す。コントロール群(左上図)と比べNaClO群(右上図)ではNaClOと120分インキュベート後(NaClO除去後0時間)で既に細胞の形態変化が見られた。さらに、NaClOと120分インキュベートし、その除去後24時間目においては細胞の退縮が確認でき(下中央図)、その一部の拡大により(下右図)アポトーシス小胞とみられる小胞の形成が確認された。「Control」は、NaClOを加えないPBS添加群サンプル(対照)を表し、NaClOは、500ppm NaClOを加えた(すなわち、本発明のNaClO上皮癌治療薬を加えた)サンプルを表す。
【0117】
[(4)アポトーシス解析]
6ウェルプレートにUM-UC-3細胞を5×10cells/wellで播種した。翌日に培養培地を除去し500ppm NaClO水溶液を添加した。その後、37℃、5%CO環境下で120分インキュベートした。NaClO水溶液を除去後、通常培養液を添加し24時間培養した後、上清も含めて細胞を回収し、3000rpmで5分間遠心して細胞ペレットを得た。この細胞ペレットを1×PBSで2回洗浄した後、Annexin V-FITC Apoptosis Detection Kit(Bio Vision社の商品名)の1×Binding bufferを294μL、Propidium iodideを3μL、Annexin Vを3μL添加し懸濁させた。懸濁液を37μmのナイロンメッシュ(NBCメッシュテック社)に通し、round bottom tube(Falcon社)に移した。その後、FACS Calibur(Becton Dickinson社の商品名)により各染色細胞のポピュレーションを解析した。FACSのvoltage調節のためにPropidium iodideとAnnexin Vそれぞれの単染色サンプルを用意した。なお、対照(Control)として、NaClO水溶液に代えてNaClOを含まないPBSを用いること以外は同様に処理したサンプルを用いて、同様にアポトーシス解析をした。
【0118】
図13に、UM-UC-3細胞のアポトーシス解析を示す。同図において、「Control」は、NaClOを加えなかったPBSサンプル(対照)を表し、「NaClO」は、500ppm NaClOを加えた(すなわち、本発明のNaClO上皮癌治療薬を加えた)サンプルを表す。図示のとおり、NaClOを加えなかったPBSサンプル(対照)では、UM-UC-3細胞のアポトーシス率が14.6%であったのに対し、本発明の上皮癌治療薬を加えた500ppm NaClOでは、UM-UC-3細胞のアポトーシス率が43.8%であった。すなわち、本発明のNaClO上皮癌治療薬には、膀胱癌細胞にアポトーシスを顕著に誘導する効果があることが確認された。
【0119】
[(5)細胞周期解析]
UM-UC-3細胞に対し、細胞ペレットを得るまでの操作を、前記「(4)アポトーシス解析」と同様に行った。得られた細胞ペレットに70%エタノール水溶液700μLを1滴ずつ加え、-20℃で終夜保存した。それを、4℃において3000rpmで5分間遠心後、上清を除き1×PBSで2回洗浄した。さらに、10mg/mLのRNase(富士フィルム和光純薬株式会社の商品名)10μL、1×PBS 50μLを添加し、室温で30分間インキュベートした。その後、0.5mg/mL PI(Propidium iodide[ヨウ化プロピジウム]、SIGMA Aldrich社)溶液50μLを添加したFACS buffer(3%FCS in 1×PBS)500μLに懸濁させた。その懸濁液を37μmナイロンメッシュに通した後、FACS Calibur(Becton Dickinson社の商品名)により測定した。なお、対照(Control)として、NaClO水溶液に代えてNaClOを含まないPBSを用いること以外は同様に処理したサンプルを用いて、同様に細胞周期解析をした。
【0120】
図14に、NaClO水溶液除去後24時間(終夜)培養後のUM-UC-3細胞の細胞周期解析結果を示す。同図において、「Control」は、NaClOを加えなかったPBSサンプル(対照)を表し、「NaClO」は、500ppm NaClOを加えた(すなわち、本発明のNaClO上皮癌治療薬を加えた)サンプルを表す。図示のとおり、本発明のNaClO上皮癌治療薬を加えた群では、PBS群(対照)と比較して、アポトーシス細胞分画を示すsubG1期の分画比率が顕著に増加していた。すなわち、本発明のNaClO上皮癌治療薬には、膀胱癌細胞にアポトーシスによる細胞死を誘導することが確認された。
【0121】
[(6)膀胱癌患者由来異種移植(patient-derived xenograft、PDX)マウスを用いたNaClO上皮癌治療薬の抗腫瘍効果評価]
膀胱癌臨床検体由来の腫瘍を継代移植したマウス腫瘍モデルは、100ppm MA-T水溶液に代えて500ppm NaClO水溶液を使用した以外は、前記実施例1の[(7)膀胱癌患者由来異種移植(patient-derived xenograft、PDX)マウスを用いたMA-Tの抗腫瘍効果評価]と同様に実施した。使用したSHO Hairless SCID マウス(オス、4週齢)はPBS浸漬群、NaClO浸漬群ともn=8であり、移植日より12日目から3日おきに腫瘍径(長径と短径)を測定した。また27日目に摘出した腫瘍の写真を撮ったのち、その重量を測定した。
【0122】
図15左下側のグラフにおいて、横軸は腫瘍移植12日後からの日数、縦軸は腫瘍体積(mm)を示す。また、図15上の写真は移植後27日目に解剖して摘出した腫瘍の写真を、下右側のグラフは、その摘出腫瘍の重量(mg)を示す。図15において、「Control」は、PBSサンプル(対照)を表し、「NaClO」は、500ppm NaClO(すなわち、本発明のNaClO上皮癌治療薬)に浸漬した腫瘍移植結果を表す。図15に示すとおり、本発明のNaClO上皮癌治療薬に浸漬した群では、PBS群(対照)と比較して、膀胱癌腫瘍の有意な増殖抑制が確認された。さらに摘出腫瘍の写真と腫瘍重量の解析から、膀胱腫瘍の増加が抑制されていることも確認された。
【0123】
[(7)ラジカル発生の検証]
NaClO水溶液、塩化ベンゼトニウム水溶液(ラジカル発生触媒)ならびにMA-Tのラジカル産生を検証した。UM-UC-3細胞を96well plateに5000cell/wellで播種した。翌日、培地を除去し、Hank‘s Balanced Salt Solution(HBSS)で希釈した生細胞における活性酸素種の検出及び定量試薬であるCellROX(ThermoFisher社の商品名)を20μMの濃度で50μL/well加え、37℃で1時間培養した。その後HBSSで希釈したNaClO水溶液(A)、塩化ベンゼトニウム水溶液(B)ならびにMA-Tを50μL/well添加し、蛍光強度を蛍光プレートリーダーGloMAX(Promega社の商品名)で経時的に測定した。また終濃度500ppmのNaClO水溶液添加UM-UC-3細胞の活性酸素による蛍光を、BioZero蛍光顕微鏡(キーエンスの商品名)を用いてExcitation Filter(Red 627 nm)Emission Filter(660-720 nm)により検出した。
【0124】
図16の左図では縦軸に蛍光強度を横軸に添加したサンプルを示す。単独ではラジカル産生能がないNaClO(A)と塩化ベンゼトニウム(B)のうち、NaClO(A)は細胞と接触するにより時間依存的な活性酸種の産生が確認された。また100ppm NaClO(A100)はMA-T(100ppm NaClOと100ppm塩化ベンゼトニウムの合剤)と同等以上の活性酸素種の検出が見られ、膀胱癌細胞に対する作用を確認した500ppmNaClOは単独で顕著な活性酸素産生が確認できた。これはMA-Tとは異なる活性酸素種がNaClOと膀胱癌細胞の接触により産生していることを示すものと考えられる。また、図16右側の写真に、前記細胞のBioZero蛍光顕微鏡による画像を示す。上段は、NaClO及び塩化ベンゼトニウムを加えなかった対照(Control)の画像であり、下段は、終濃度500ppmのNaClO水溶液添加の画像である。図示のとおり、500ppmNaClOは単独で膀胱癌細胞に顕著な活性酸素産生を示す蛍光が確認できた。
【0125】
[(8)舌癌細胞、口腔癌細胞、子宮癌細胞、子宮頸癌細胞及び大腸癌細胞に対するNaClOの作用]
【0126】
以下のようにして、本発明のNaClO上皮癌治療薬の、膀胱癌細胞以外の上皮癌細胞に対する治療薬としての効果を確認した。
【0127】
インキュベート時間を対象癌患者に対する許容時間も考慮し120分間に代えて60分間(1時間)にしたことと、膀胱癌細胞を、舌癌細胞「HSC-3」、口腔癌細胞「HO-1-u-1」、子宮癌細胞「HeLa」、子宮癌細胞「HeLaS3」、大腸癌細胞「HT29」、又は大腸癌細胞「HT116」に変更したこと以外は、前記「(3)WST-8 assay」と同様にして各癌細胞を48時間培養し、癌細胞増殖アッセイを行った。図17図18及び図19のグラフに、48時間培養後の各癌細胞の生存率を示す。図17図18及び図19のグラフにおいて、横軸は、NaClO水溶液の濃度(ppm)であり、縦軸は、癌細胞の生存率(%)である。
【0128】
図17図18及び図19に示すとおり、舌癌細胞、口腔癌細胞、子宮癌細胞、子宮頸癌細胞及び大腸癌細胞に対しても、本発明のNaClO上皮癌細胞治療薬が、癌細胞増殖の抑制効果を示すことが確認された。
【0129】
[(9)ラジカル発生触媒の効果の確認]
NaClO水溶液中に塩化ベンゼトニウム(ラジカル発生触媒)を加えたこと以外は前記「(8)舌癌、口腔癌、子宮癌細胞、子宮頸癌細胞及び大腸癌細胞に対するNaClOの作用」と同様にして、子宮癌細胞「HeLa」及び子宮癌細胞「HeLaS3」の各癌細胞を48時間培養し、癌細胞増殖アッセイを行った。NaClO水溶液中の塩化ベンゼトニウム濃度は、5ppm、10ppm、15ppm及び20ppmに変化させて、それぞれ同様のアッセイを行った。
【0130】
図20及び図21のグラフにその結果を示す。図20及び図21において、「A剤」は、NaClOを表し、「B剤」は、塩化ベンゼトニウム(ラジカル発生触媒)を表す。図20及び図21のグラフにおいて、横軸は、NaClO水溶液の濃度(ppm)であり、縦軸は、癌細胞の生存率(%)である。また、図20及び図21中において、「Control」は、塩化ベンゼトニウムを加えなかった場合、すなわち、前記「(9)舌癌、口腔癌、子宮癌細胞、子宮頸癌細胞及び大腸癌細胞に対するNaClOの作用」の結果を示す。図20及び18に示すとおり、NaClOのみでも癌細胞増殖の抑制効果が見られたが、塩化ベンゼトニウム(ラジカル発生触媒)の添加により、癌細胞増殖の抑制効果の相加作用が確認できた。
【0131】
[実施例3:亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含む膵癌治療薬]
以下のようにして、NaClOを含む膵癌治療薬(本発明の上皮癌治療薬)を製造し、さらに、その効果を確認した。なお、本実施例の膵癌治療薬は、NaClOを含む本発明の上皮癌治療薬、すなわち「本発明のNaClO上皮癌治療薬」又は単に「NaClO上皮癌治療薬」に該当する。
【0132】
以下のようにして、膵癌初代培養細胞に対するNaClO水溶液(本発明のNaClO上皮癌治療薬)の作用を解析した。
【0133】
[(1)細胞培養]
膵癌臨床検体から大阪大学薬学研究科で樹立した初代培養細胞PK05及びPK10を使用した。これらの細胞を、RPMI-1640(富士フィルム和光純薬株式会社の商品名)にFBS(Biosera社)を10体積%になるように加えた培地を用い、37℃、5%CO環境下で培養した。継代する際は0.025% Trypsin/EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を細胞に添加し37℃、5%COにてインキュベートすることで細胞を剥離し、さらに、1500rpmで3分間遠心して細胞を回収した。
【0134】
[(2)試薬調製]
実施例2「亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含む膀胱癌治療薬」の「(2)試薬調製」と同様に、10000ppmのNaClO(亜塩素酸ナトリウム)水溶液(Lot. No. 170612C)、10×リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline、PBS)及び蒸留水(distilled water、DW)を混合し、最終的に1×PBSになるとともにNaClOが所定濃度になるようにした。このようにして、NaClOを0ppm、2ppm、4ppm、8ppm、16ppm、31ppm、63ppm、125ppm、250ppm、又は500ppmの濃度で含む1×PBS水溶液を、それぞれ調製した。これらの水溶液は、NaClOの濃度以外は、実施例2「亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を含む膀胱癌治療薬」の「(2)試薬調製」で調製した水溶液と同じである。これらの水溶液は、NaClOを含む本発明の上皮癌治療薬、すなわち「本発明のNaClO上皮癌治療薬」に該当する。なお、PBSにおいて、「10×」は10倍濃度を表し、「1×」は1倍濃度を表す。
【0135】
[(3)細胞生存性評価]
96ウェル(well)プレートに、「(1)細胞培養」で培養したPK05又はPK10の各細胞を5000cells/wellで播種した。翌日に全てのウェルから培地を除き、「(2)試薬調製」で調製した各濃度のNaClO水溶液を100μL/wellで3つの(triplicate)ウェルに添加した。このプレートを、37℃、5% CO環境下で48時間培養した。その後、Cell Counting Kit-8(株式会社同仁化学研究所[DOJINDO]の商品名)を1ウェルあたり10μLずつ加え、37℃、5% CO環境下で2時間インキュベートし、吸収波長450nm、対照波長630nmの吸光値をiMarkマイクロプレートリーダー(BIORAD社の商品名)を用いて測定した。図22のグラフにその結果を示す。図22において、「A剤」は、NaClOを表す。図22のグラフにおいて、横軸は、NaClO水溶液の濃度(ppm)であり、縦軸は、癌細胞の生存率(%)である。なお、縦軸において、癌細胞の生存率(%)は、NaClO濃度が0ppmの(すなわち亜塩素酸ナトリウムを含まない)1×PBS水溶液(Control)を添加したウェルの細胞生存率を100%として表した。図22に示すとおり、PK05及びPK10のいずれの膵癌細胞に対しても、NaClO濃度依存的な増殖抑制作用が確認できた。すなわち、「(2)試薬調製」で調製した各濃度のNaClO水溶液が、膵癌治療薬(すなわち上皮癌治療薬)として働くことが確認できた。また、31ppm以上のNaClO水溶液とのインキュベートでは、ほぼ完全に膵臓癌細胞の増殖が抑制されることが確認できた。
【0136】
<付記>
本発明の実施形態及び実施例の一部又は全部は、以下の付記のように記載することができる。ただし、本発明は以下の付記には限定されない。

(付記1)
オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含み、上皮癌の治療又は予防のために使用されることを特徴とする上皮癌治療薬。
(付記2)
前記上皮癌が、泌尿器系、生殖器系、消化器系、循環器系、及び呼吸器系からなる群から選択される少なくとも一つの組織の癌である付記1記載の上皮癌治療薬。
(付記3)
前記上皮癌が、膀胱癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、卵管癌、精巣癌、前立腺癌、大腸癌、小腸癌、十二指腸癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、口腔癌、舌癌、咽頭癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、脾臓癌、腹膜癌、肺癌、及び眼癌からなる群から選択される少なくとも一つの組織の癌である付記1又は2記載の上皮癌治療薬。
(付記4)
前記オキソ酸が、ハロゲンオキソ酸である付記1から3のいずれかに記載の上皮癌治療薬。
(付記5)
前記ハロゲンオキソ酸が、塩素オキソ酸、臭素オキソ酸、及びヨウ素オキソ酸からなる群から選択される少なくとも一つである付記4記載の上皮癌治療薬。
(付記6)
前記ハロゲンオキソ酸が、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸、及び過ハロゲン酸からなる群から選択される少なくとも一つである付記4又は5記載の上皮癌治療薬。
(付記7)
前記ハロゲンオキソ酸が、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、及び過ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つである付記4又は5記載の上皮癌治療薬。
(付記8)
さらに、ラジカル発生触媒を含み、
前記ラジカル発生触媒は、前記上皮癌治療薬に含まれる前記オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質からのラジカル発生を触媒する物質である付記1から7のいずれかに記載の上皮癌治療薬。
(付記9)
前記ラジカル発生触媒が、アンモニウム、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、リン脂質、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む付記8記載の上皮癌治療薬。
(付記10)
前記アンモニウムが、下記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩である付記9記載の上皮癌治療薬。
【化XI】
前記化学式(XI)中、
11、R21、R31、及びR41、は、それぞれ水素原子もしくは芳香環であるか、又はアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよく、R11、R21、R31、及びR41は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R11、R21、R31、及びR41のうち2つ以上が一体化し、それらが結合するNとともに環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
は、アニオンである。
(付記11)
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩が、下記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩である付記10記載の上皮癌治療薬。
【化XII】
前記化学式(XII)中、
111は、炭素数が5~40のアルキル基であり、エーテル結合、ケトン(カルボニル基)、エステル結合、若しくはアミド結合、置換基、又は芳香環が含まれていてもよく、
21及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
(付記12)
前記アンモニウムが、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウム、スフィンゴミエリン、ガングリオシドGM1、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、ベタレイン、レシチン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、及びコリン類からなる群から選択される少なくとも一つである付記9から11のいずれかに記載の上皮癌治療薬。
(付記13)
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩が、下記化学式(XIV)で表されるアンモニウム塩である付記10記載の上皮癌治療薬。
【化XIV】
前記化学式(XIV)中、
100は、環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
11及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
(付記14)
前記ラジカル発生触媒のルイス酸性度が、0.4eV以上である付記8から13のいずれかに記載の上皮癌治療薬。
(付記15)
上皮癌細胞のアポトーシス促進剤である付記1から14のいずれかに記載の上皮癌治療薬。
(付記16)
オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つを含み、上皮癌の治療又は予防のために使用されることを特徴とする薬学的組成物。
(付記17)
前記上皮癌が、泌尿器系、生殖器系、消化器系、循環器系、及び呼吸器系からなる群から選択される少なくとも一つの組織の癌である付記16記載の薬学的組成物。
(付記18)
前記上皮癌が、膀胱癌、子宮癌、子宮頸癌、卵巣癌、卵管癌、精巣癌、前立腺癌、大腸癌、小腸癌、十二指腸癌、胃癌、食道癌、喉頭癌、口腔癌、舌癌、咽頭癌、肝臓癌、膵臓癌、胆嚢癌、脾臓癌、腹膜癌、肺癌、及び眼癌からなる群から選択される少なくとも一つの組織の癌である付記16又は17記載の薬学的組成物。
(付記19)
前記オキソ酸が、ハロゲンオキソ酸である付記16から18のいずれかに記載の薬学的組成物。
(付記20)
前記ハロゲンオキソ酸が、塩素オキソ酸、臭素オキソ酸、及びヨウ素オキソ酸からなる群から選択される少なくとも一つである付記19記載の薬学的組成物。
(付記21)
前記ハロゲンオキソ酸が、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸、ハロゲン酸、及び過ハロゲン酸からなる群から選択される少なくとも一つである付記19又は20記載の薬学的組成物。
(付記22)
前記ハロゲンオキソ酸が、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、及び過ヨウ素酸からなる群から選択される少なくとも一つである付記19又は20記載の薬学的組成物。
(付記23)
さらに、ラジカル発生触媒を含み、
前記ラジカル発生触媒は、前記薬学的組成物に含まれる前記オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質からのラジカル発生を触媒する物質である付記26から22のいずれかに記載の薬学的組成物。
(付記24)
前記ラジカル発生触媒が、アンモニウム、アミノ酸、タンパク質、ペプチド、リン脂質、及びそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つを含む付記23記載の薬学的組成物。
(付記25)
前記アンモニウムが、下記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩である付記24記載の薬学的組成物。
【化XI】
前記化学式(XI)中、
11、R21、R31、及びR41、は、それぞれ水素原子もしくは芳香環であるか、又はアルキル基であり、前記アルキル基は、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、若しくはアミド結合、又は芳香環が含まれていてもよく、R11、R21、R31、及びR41は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、
又は、R11、R21、R31、及びR41のうち2つ以上が一体化し、それらが結合するNとともに環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
は、アニオンである。
(付記26)
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩が、下記化学式(XII)で表されるアンモニウム塩である付記25記載の薬学的組成物。
【化XII】
前記化学式(XII)中、
111は、炭素数が5~40のアルキル基であり、エーテル結合、ケトン(カルボニル基)、エステル結合、若しくはアミド結合、置換基、又は芳香環が含まれていてもよく、
21及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
(付記27)
前記アンモニウムが、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化アンモニウム、塩化メチルアンモニウム、塩化テトラブチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム、エドロホニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ベンジルトリエチルアンモニウム、オキシトロピウム、カルバコール、グリコピロニウム、サフラニン、シナピン、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、スキサメトニウム、スフィンゴミエリン、ガングリオシドGM1、デナトニウム、トリゴネリン、ネオスチグミン、パラコート、ピリドスチグミン、フェロデンドリン、プラリドキシムヨウ化メチル、ベタイン、ベタニン、ベタネコール、ベタレイン、レシチン、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、ウラシル、及びコリン類からなる群から選択される少なくとも一つである付記24から26のいずれかに記載の薬学的組成物。
(付記28)
前記化学式(XI)で表されるアンモニウム塩が、下記化学式(XIV)で表されるアンモニウム塩である付記25記載の薬学的組成物。
【化XIV】
前記化学式(XIV)中、
100は、環状構造を形成していてもよく、前記環状構造は、飽和でも不飽和でもよく、芳香環でも非芳香環でもよく、1以上の置換基を有していても有していなくてもよく、
11及びXは、前記化学式(XI)と同じである。
(付記29)
前記ラジカル発生触媒のルイス酸性度が、0.4eV以上である付記23から28のいずれかに記載の薬学的組成物。
(付記30)
上皮癌細胞のアポトーシス促進剤である付記16から29のいずれかに記載の薬学的組成物。
(付記31)
付記1から15のいずれかに記載の上皮癌治療薬を製造するための、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの使用。
(付記32)
付記16から30のいずれかに記載の薬学的組成物を製造するための、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの使用。
(付記33)
オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質の、付記1から15のいずれかに記載の上皮癌治療薬又は付記16から30のいずれかに記載の薬学的組成物としての使用。
(付記34)
付記1から15のいずれかに記載の上皮癌治療薬又は付記16から30のいずれかに記載の薬学的組成物を患者に投与する投与工程を含む、前記患者の上皮癌を治療又は予防する方法。
(付記35)
患者の上皮癌を治療又は予防するためにオキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質を患者に投与する投与工程を含む、前記患者の上皮癌を治療又は予防する方法。
(付記36)
患者の上皮癌を治療又は予防するために付記1から15のいずれかに記載の上皮癌治療薬又は付記16から30のいずれかに記載の薬学的組成物を患者に投与する投与工程を含む、付記1から15のいずれかに記載の上皮癌治療薬又は付記16から30のいずれかに記載の薬学的組成物の使用。
(付記37)
患者の上皮癌を治療又は予防するためにオキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質を患者に投与する投与工程を含む、オキソ酸、オキソ酸イオン及びオキソ酸塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質の使用。
【0137】
以上、実施形態及び実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態及び実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【産業上の利用可能性】
【0138】
以上、説明したとおり、本発明によれば、副作用が小さい上皮癌治療薬を提供することができる。本発明の上皮癌治療薬は、膀胱癌、舌癌、口腔癌、子宮癌、子宮頸癌、大腸癌等の多種多様な上皮癌に対する治療薬として有用である。本発明の上皮癌治療薬は、例えば、実施例で示したとおり、活性酸素産生によるアポトーシス誘導上皮癌治療薬として有用である。
【0139】
この出願は、2020年5月21日に出願された日本出願特願2020-089253を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。
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