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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-11
(45)【発行日】2022-05-19
(54)【発明の名称】発熱具
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/02 20060101AFI20220512BHJP
【FI】
A61F7/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017538808
(86)(22)【出願日】2015-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2015075810
(87)【国際公開番号】W WO2017042947
(87)【国際公開日】2017-03-16
【審査請求日】2018-08-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】伊賀上 剛
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】平瀬 知明
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-8288(JP,A)
【文献】特開平10-152432(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157726(WO,A1)
【文献】特開2006-298930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に貼付して使用される発熱具であって、
皮膚に伝える熱を発生させる発熱部と、
前記発熱部を収容し、皮膚に貼付される皮膚貼付面を有する収容体と、
前記収容体の皮膚貼付面側に設けられた粘着層と、を備え、
前記粘着層が、(A)メントール、並びに(B)カンフルを含み、生姜エキスを含ま
前記粘着層におけるメントールの含有量が1~5重量%であり、且つ前記粘着層におけるカンフルの含有量が3~6重量%である、
ことを特徴とする、発熱具(但し、粘着層が1気圧における沸点が100℃以上である油分を30~90重量%含有する場合を除く)
【請求項2】
皮膚に貼付して使用される発熱具であって、
皮膚に伝える熱を発生させる発熱部と、
前記発熱部を収容し、皮膚に貼付される皮膚貼付面を有する収容体と、
前記収容体の皮膚貼付面側に設けられた粘着層と、を備え、
前記粘着層が、(A)メントール、並びに(B)カンフル及び生姜エキスを含
前記粘着層におけるメントールの含有量が1~5重量%であり、且つ前記粘着層におけるカンフルの含有量が3~6重量%である、
ことを特徴とする、発熱具。
【請求項3】
前記収容体の皮膚貼付面側を構成する包材が、前記粘着層に含まれる成分の透過を遮断するバリア機能を有する、請求項1又は2に記載の発熱具。
【請求項4】
前記収容体の皮膚貼付面側を構成する包材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロ二トリル、又はエチレン-ビニルアルコール共重合体で形成された非通気性樹脂層、蒸着膜、或は金属箔膜を有する、請求項3に記載の発熱具。
【請求項5】
粘着層における生姜エキスの含有量が乾燥重量換算0.01~3重量%である、請求項に記載の発熱具。
【請求項6】
前記発熱部が、酸素との接触により発熱する発熱性組成物であり、前記収容体が少なくとも一部に通気性を有している、請求項1~のいずれかに記載の発熱具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発熱具に関する。より具体的には、本発明は、優れた温感と冷感が呈され、温熱作用を効果的に発揮できる発熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
空気と接触して発熱する発熱性組成物を利用した発熱具は、防寒等のための保温具としてのみならず、血行促進や疼痛緩和等のための治療用具等としても広く使用されている。
【0003】
従来の発熱具では、治療用具として使用する場合、夏場等の暑い時期には、温感のみでは暑熱感として感じられ、使用感が悪くなるという欠点がある。従来、発熱具の温感は、発熱性組成物の組成、発熱性組成物を収容する収容体による酸素流入量等を調節することによってコントロールできることが知られているが、このような発熱具の温感のコントロールでは、最高到達温度、昇温速度、持続時間等を調節できるに止まり、夏場等の暑い時期に知覚される暑熱感を減じることはできない。
【0004】
そこで、近年、冷感を呈させることにより、暑熱感が減じられる発熱具が開発されている。例えば、特許文献1には、発熱性組成物に清涼感を付与する冷感剤を配合した発熱具は、清涼感を知覚できることが報告されている。また、特許文献2には、発熱性組成物に、冷感剤とセスキテルペン炭化水素を特定量配合した発熱具は、温熱感と清涼感を知覚できることが報告されている。更に、特許文献3には、発熱性組成物に、環状エーテル構造を有するモノテルペノイドと環状ケトン構造を有するモノテルペノイドを特定量配合した発熱具は、保存中の清涼感の質の変化を効果的に防止し、清涼感が維持できることが報告されている。しかしながら、特許文献1~3のように、発熱性組成物に冷感剤等を配合する技術では、呈される温感が減じてしまい、優れた温感と冷感を両立させることができないという欠点がある。また、発熱具において、発熱性組成物は、通気性を有する収容体に収容されているため、特許文献1~3のように、発熱性組成物に冷感剤等を配合した発熱具では、冷感剤等の一部が収容体の通気孔を介して大気中に揮散するため、冷感の持続性が低いという欠点もある。
【0005】
近年、発熱具の機能性の向上に対する消費者の要望が高まっており、温感と冷感が共に高く知覚され、効果的に温熱作用を発揮できる発熱具の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-158507号公報
【文献】特開2014-128467号公報
【文献】特開2011-160885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた温感と冷感が呈され、温熱作用を効果的に発揮できる発熱具を提供することである。
【発明を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、皮膚に貼付して使用される発熱具において、発熱部を収容している収容体の皮膚貼付面に、(A)メントール、並びに(B)生姜エキス及び/又はカンフルを含む粘着層を設けることによって、当該粘着層に含まれる(A)メントールと(B)生姜エキス及び/又はカンフルとの相乗的作用によって、呈される冷感と温感が向上し、更に格段に優れた温感作用を発揮できることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 皮膚に貼付して使用される発熱具であって、
皮膚に伝える熱を発生させる発熱部と、
前記発熱部を収容し、皮膚に貼付される皮膚貼付面を有する収容体と、
前記収容体の皮膚貼付面側に設けられた粘着層と、を備え、
前記粘着層が、(A)メントール、並びに(B)生姜エキス及び/又はカンフルを含む、
ことを特徴とする、発熱具。
項2. 前記収容体の皮膚貼付面側を構成する包材が、前記粘着層に含まれる成分の透過を遮断するバリア機能を有する、項1に記載の発熱具。
項3. 前記収容体の皮膚貼付面側を構成する包材が、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロ二トリル、又はエチレン-ビニルアルコール共重合体で形成された非通気性樹脂層、蒸着膜、或は金属箔膜を有する、請求項2に記載の発熱具。
項4. 前記(B)成分として、生姜エキス及びカンフルを含む、項1~3のいずれかに記載の発熱具。
項5. 粘着層におけるメントールの含有量が0.1~10重量%である、項1~4のいずれかに記載の発熱具。
項6. 粘着層における生姜エキスの含有量が乾燥重量換算0.01~3重量%である、項1~5のいずれかに記載の発熱具。
項7. 粘着層におけるカンフルの含有量0.5~10重量%である、項1~6のいずれかに記載の発熱具。
項8. 前記発熱部が、酸素との接触により発熱する発熱性組成物であり、前記収容体が少なくとも一部に通気性を有している、項1~7のいずれかに記載の発熱具。
項9. 前記粘着層が、前記収容体の皮膚貼付面側に対して部分的に設けられている、項1~8のいずれかに記載の発熱具。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発熱具によれば、粘着層に含まれる(A)メントールと(B)生姜エキス及び/又はカンフルとの相乗的作用によって、優れた温感と冷感が呈されるので、暑熱感を低減でき、暑い時期や地域でも快適に使用することができる。また、本発明の発熱具によれば、粘着層に含まれる(A)メントールと(B)生姜エキス及び/又はカンフルとの相乗的作用によって温熱作用が向上しており、血行促進、肩こり改善、疼痛緩和等を目的とした治療具としても好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】水分吸収層の表面に粘着層がストライプ状に設けられた態様の発熱具について、皮膚貼付面側から見た平面概略図である。
図2】水分吸収層の表面に粘着層がドット状に設けられた態様の発熱具について、皮膚貼付面側から見た平面概略図である。
図3】水分吸収層の表面に粘着層が格子状に設けられた態様の発熱具について、皮膚貼付面側から見た平面概略図である。
図4】水分吸収層の表面に粘着層が網目状に設けられた態様の発熱具について、皮膚貼付面側から見た平面概略図である。
図5】水分吸収層の表面に粘着層が枠状に設けられた態様の発熱具について、皮膚貼付面側から見た平面概略図である。
図6】本発明の発熱具の好適な一形態の断面構造の概略図である。
図7】試験例1において、実施例1~3及び比較例1~4の発熱具の温感について経時的に評価した結果である。
図8】試験例1において、実施例1~3及び比較例1~4の発熱具の冷感について経時的に評価した結果である。
図9】試験例2において、実施例1及び比較例1の発熱具によってもたらされる皮膚温度を赤外線サーモグラフィーにて測定した結果である。
図10】試験例3において、実施例1及び比較例1の発熱具による腰痛の改善効果について評価した結果である。
図11】試験例4において、実施例1及び比較例1の発熱具を貼付し、血中酸化ヘモグロビン濃度を経時的に測定した結果である。
図12】試験例4において、実施例1及び比較例1の発熱具を貼付し、血中酸化ヘモグロビン濃度の積算値を算出した結果である。
図13】試験例5において、実施例1及び比較例1の発熱具をパッチ試験に供し、安全性について評価した結果である。
【0012】
また、本発明の治療具は、高い安全性も備えているので、保温や治療等の目的で日常的に使用することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発熱具は、皮膚に伝える熱を発生させる発熱部1と、前記発熱部1を収容し、皮膚に貼付される皮膚貼付面を有する収容体2と、前記収容体の皮膚貼付面側に設けられた粘着層3とを備え、前記粘着層3が、(A)メントール、並びに(B)生姜エキス及び/又はカンフルを含むことを特徴とする。以下、本発明の発熱具について詳述する。
【0014】
なお、本発明において、「冷感」及び「温感」とは、それぞれ、発熱具を皮膚に貼付した際に知覚される冷たさ及び温かさに関する感覚を指し、「温熱作用」とは、発熱具の物理的な発熱と、前記冷感及び温感とによって皮膚貼付部位にもたらされる生理作用(血行促進、肩こり改善、疼痛緩和等)を指す。
【0015】
<発熱部1>
本発明の発熱具は、発熱体として、皮膚に伝える熱を発生させる発熱部1を備える。当該発熱部1は、発熱し、温感を付与する役割を果たす。
【0016】
発熱部1は、発熱して皮膚に熱を伝え得ることを限度として、その発熱機構については特に制限されないが、例えば、酸素との接触により発熱する発熱組成物;通電により発熱する通電発熱体;マイクロ波の照射を受けて発熱する発熱体;液状、半固体状、又は固体状蓄熱材を利用して熱を発する発熱体等が挙げられる。これらの中でも、酸素との接触により発熱する発熱組成物は、使い捨てが可能であり、安全性、発熱効率、利便性等の点から、発熱部1として好適に使用される。
【0017】
酸素との接触により発熱する発熱組成物の組成については、特に制限されず、従来、使い捨てカイロ等で使用されているものであればよい。酸素との接触により発熱する発熱組成物の好適な一例として、被酸化性金属、酸化促進剤、及び水を含有する組成物が挙げられる。
【0018】
前記発熱組成物において、被酸化性金属は、酸素との接触によって酸化され、酸化熱によって発熱源となる役割を果たす。被酸化性金属の種類については、酸化によって発熱可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、鉄(還元鉄、鋳鉄、アトマイズド鉄、電解鉄)、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、カルシウム等の金属が挙げられる。これらの被酸化性金属は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
また、被酸化性金属の形状については、特に制限されないが、発熱効率の観点からは、好ましくは粉末状、粒状又は繊維状、更に好ましくは粉末状が挙げられる。
【0020】
これらの被酸化性金属の中でも、安全性、取扱性等の観点から、好ましくは鉄粉が挙げられる。
【0021】
被酸化性金属が粉末状である場合、その粒子径については、特に制限されないが、例えば、0.01~1000μm、好ましくは0.1~500μm、更に好ましくは0.5~300μmが挙げられる。ここで、粉末状の被酸化性金属の粒子径は、JIS8815-1994「ふるい分け試験方法通則」に規定されている「乾式ふるい分け試験」に従って測定される値である。
【0022】
前記発熱性組成物における被酸化性金属の含有量については、付与すべき発熱特性に応じて適宜設定されるが、例えば、20~80重量%、好ましくは25~70重量%、更に好ましくは30~60重量%が挙げられる。
【0023】
また、前記発熱組成物において、酸化促進剤は、酸素の保持、及び被酸化性金属に酸素を供給する役割を果たす。酸化促進剤の種類については、酸素の保持及び被酸化性金属への酸素の供給が可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、活性炭、カーボンブラック、アセチレンブラック、竹炭、木炭、コーヒーカス炭、黒鉛、石炭、椰子殻炭、暦青炭、泥炭、亜炭等の炭素材料が挙げられる。これらの酸化促進剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
これらの酸化促進剤の中でも、好ましくは活性炭、カーボンブラック、竹炭、木炭、コーヒーカス炭、更に好ましくは活性炭が挙げられる。
【0025】
また、酸化促進剤の形状については、特に制限されないが、発熱効率の観点からは、好ましくは粉末状、粒状又は繊維状、更に好ましくは粉末状が挙げられる。
【0026】
酸化促進剤が粉末状である場合、その粒子径については、特に制限されないが、例えば、0.001~1000μm、好ましくは0.005~500μm、更に好ましくは0.01~200μmが挙げられる。ここで、粉末状の酸化促進剤の粒子径は、JIS8815-1994「ふるい分け試験方法通則」に規定されている「乾式ふるい分け試験」に従って測定される値である。
【0027】
前記発熱性組成物における酸化促進剤の含有量については、付与すべき発熱特性等に応じて適宜設定されるが、例えば、1~30重量%、好ましく3~25重量%、更に好ましくは5~23重量%が挙げられる。
【0028】
また、前記発熱性組成物において、被酸化性金属と酸化促進剤の比率については、付与すべき発熱特性に応じて適宜設定されるが、例えば、被酸化性金属100重量部当たり、酸化促進剤が2~60重量部、好ましくは5~50重量部、更に好ましくは10~40重量部が挙げられる。
【0029】
また、前記発熱性組成物において、水は、酸素と共に被酸化金属を酸化させる役割を果たす。水については、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水、水道水、工業用水等のいずれを使用してもよい。
【0030】
発熱性組成物における水の含有量については、付与すべき発熱特性に応じて適宜設定されるが、例えば、5~50重量%、好ましく10~40重量%、更に好ましくは15~35重量%が挙げられる。
【0031】
前記発熱性組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、水溶性塩類が含まれていてもよい。水溶性塩類を含んでいる場合には、被酸化性金属の酸化を促進することが可能になる。
【0032】
水溶性塩類の種類については、特に制限されないが、例えば、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、又は重金属(鉄、銅、アルミニウム、亜鉛、ニッケル、銀、バリウム等)の硫酸塩、炭酸水素塩、塩化物若しくは水酸化物等が挙げられる。これらの水溶性塩類の中でも、導電性、化学的安定性等の観点から、好ましくは塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化鉄(第1、第2)等の塩化物、更に好ましくは塩化ナトリウムなどが挙げられる。これらの水溶性塩類は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0033】
前記発熱性組成物に水溶性塩類を配合する場合、その含有量については、付与すべき発熱特性に応じて適宜設定されるが、例えば、0.1~10重量%、好ましくは0.5~7重量%、更に好ましくは1~5重量%が挙げられる。
【0034】
また、前記発熱性組成物は、必要に応じて、保水剤を含んでいてもよい。保水剤は、水を保持して、酸化反応場に水を供給する役割を果たす。
【0035】
保水剤の種類については、特に制限されないが、例えば、バーミキュライト(蛭石)、パーライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、カオリン、タルク、スメクタイト、マイカ、ベントナイト、炭酸カルシウム、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、二酸化珪素、珪藻土等の無機多孔質物質;パルプ、木粉(おがくず)、綿、デンプン類、セルロース類等の有機物;ポリアクリル酸系樹脂、ポリスルホン酸系樹脂、無水マレイン酸系樹脂、ポリアクリルアミド系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレンオキシド系樹脂、ポリアスパラギン酸系樹脂、ポリグルタミン酸系樹脂、ポリアルギン酸系樹脂等の吸水性樹脂等が挙げられる。これらの保水剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
これらの保水剤の中でも、好ましくはバーミキュライト、ポリアクリル酸系樹脂木粉、パルプ、;更に好ましくはバーミキュライト、ポリアクリル酸系樹脂が挙げられる。また、保水剤として無機多孔質物質を使用する場合には、発熱性組成物中で空気の流路を確保することも可能になる。
【0037】
保水剤の粒径については、特に制限されないが、例えば、0.1~3000μm、好ましくは0.5~1000μm、更に好ましくは1~500μmが挙げられる。ここで、保水剤の粒子径は、JIS8815-1994「ふるい分け試験方法通則」に規定されている「乾式ふるい分け試験」に従って測定される値である。
【0038】
前記発熱性組成物に保水剤を配合する場合、その含有量については、付与すべき発熱特性に応じて適宜設定されるが、例えば、1~20重量%、好ましくは3~15重量%、更に好ましくは5~10重量%が挙げられる。
【0039】
前記発熱性組成物には、更に必要に応じて、金属イオン封鎖剤、香料、増粘剤、賦形剤、界面活性剤、水素発生抑制剤等が他の添加剤が含まれていてもよい。
【0040】
前記発熱性組成物は、前述する成分を所定量混合することにより調製することができる。前記発熱性組成物の調製は、酸素存在下で行ってもよいが、減圧下又は不活性ガス雰囲気下で調製することが好ましい。
【0041】
発熱部1は、本発明の発熱具を皮膚に貼付した際に適度な温度に発熱するように設定される。本発明の発熱具の最高到達温度については、適用対象となる皮膚部位、付与すべき温感や温熱作用等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、32~85℃程度、好ましくは34~70℃程度が挙げられる。当該最高到達温度は、JIS S4100:2007に規定されている方法に従って測定される値である。
【0042】
<収容体2>
本発明の発熱具は、前記発熱部1を収容している収容体2を備える。本発明の発熱具は皮膚に貼付して使用されるので、収容体2は、皮膚に貼付される皮膚貼付面を有する。
【0043】
収容体2は、前記発熱部1を収容するための収容部22と、皮膚に貼付される皮膚貼付面を有していればよく、従来、発熱具の収容体として使用されているものを用いることができる。また、前記発熱部1として酸素との接触により発熱する発熱性組成物を使用する場合には、収容体2は少なくとも一部において通気性を有していればよい。
【0044】
収容体2において、皮膚貼付面側に配される包材21(以下、「皮膚貼付面側包材」と表記することもある)は、通気性又は非通気性のいずれであってもよいが、非通気性であることが好ましい。
【0045】
また、非通気性の皮膚貼付面側包材21の場合、その構造については、特に制限されないが、非通気性の場合であれば、例えば、非通気性樹脂層211からなる単層シート、及び少なくとも非通気性樹脂層211を含む複層シートが挙げられる。皮膚貼付面側包材21において、非通気性樹脂層211は、空気の透過を遮断して非通気性を備えさせると共に、水分の透過を遮断し、水分バリア機能を備えさせる役割を果たす。
【0046】
非通気性の皮膚貼付面側包材21の形成に使用される非通気性樹脂層211の構成樹脂としては、特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0047】
非通気性の皮膚貼付面側包材21の形成に使用される非通気性樹脂層211の1層当たりの厚さについては、当該皮膚貼付面側包材21の層構成等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~100μm、好ましくは15~70μm、更に好ましくは20~50μmが挙げられる。
【0048】
また、少なくとも非通気性樹脂層211を含む複層構造の皮膚貼付面側包材21としては、具体的には、同一又は異なる非通気性樹脂層211を2層以上積層させた積層シート、少なくとも1層の非通気性樹脂層211の皮膚と接する面側に繊維基材212が積層された積層シートが挙げられる。少なくとも1層の非通気性樹脂層211に繊維基材212が積層されている積層シートは、本発明の発熱具を皮膚に貼付した際の使用感を向上させたり、本発明の発熱具の皮膚への貼付面の温度を調節したりできるので、非通気性の皮膚貼付面側包材21として好適に使用できる。
【0049】
繊維基材212としては、具体的には、不織布、織布が挙げられる。使用感等の観点から、繊維基材212として、好ましくは不織布が挙げられる。繊維基材212の素材については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ビニロン、レーヨン、アクリル、アセテート、ポリ塩化ビニル等の合成繊維;綿、麻、絹、紙等の天然繊維;これらの混合繊維等が挙げられる。これらの素材の中でも、使用感を高めるという観点から、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、更に好ましくはポリエチレンテレフタレート、ナイロンが挙げられる。
【0050】
非通気性の皮膚貼付面側包材21の形成に使用される繊維基材212の目付けについては、当該皮膚貼付面側包材21の層構成等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、10~100g/m2、好ましくは15~70g/m2、更に好ましくは20~50g/m2が挙げられる。
【0051】
非通気性樹脂層211と繊維基材212との積層、樹脂層24a同士の積層は、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート等のラミネート方法;押出コート;共押出等によって行うことができる。
【0052】
また、非通気性の皮膚貼付面側包材21は、粘着層3に含まれる成分の透過を遮断するバリア機能を有していることが好ましい。このようなバリア機能を有することによって、粘着層3に含まれる成分が収容体2内部に透過するのを抑制でき、温感及び冷感をより一層向上させ、温熱作用を格段顕著に発揮させることが可能になる。
【0053】
皮膚貼付面側包材21に前記バリア機能を備えさせるには、前記バリア機能を有する樹脂(以下、「バリア性樹脂」と表記することがある)を用いて非通気性樹脂層211aを形成する方法、非通気性樹脂層211に蒸着膜又は金属箔膜を積層する方法等によって行うことができる。
【0054】
前記バリア性樹脂の種類については、粘着層3に含まれる成分の透過を遮断できることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。これらのバリア性樹脂の中でも、好ましくはポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
【0055】
また、バリア性樹脂で形成された非通気性樹脂層211aを設ける場合には、当該非通気性樹脂層211aに対して、更に熱溶着性に優れる熱可塑性樹脂で形成された非通気性樹脂層211bを積層させておくことが望ましい。このような熱溶着性に優れる熱可塑性樹脂としては、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0056】
前記蒸着膜を構成する素材については、粘着層3に含まれる成分の透過を遮断できることを限度として特に制限されないが、例えば、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケル等の金属;二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミ、酸化ジルコニウム等の無機酸化物;フッ化マグネシウム等の無機フッ化物等が挙げられる。
【0057】
前記蒸着膜の厚みについては、冷感剤の透過を抑制できる範囲であることを限度として特に制限されないが、例えば50~5000Å、好ましくは100~1000Åが挙げられる。
【0058】
前記蒸着膜は、非通気性樹脂層211に対して、物理蒸着法、化学蒸着法等の公知の蒸着方法で、前記素材を蒸着させることによって形成することができる。
【0059】
また、前記金属箔膜としては、例えば、アルミニウム箔、ステンレス箔等が挙げられる。これらの金属箔の中でも、好ましくはアルミニウム箔が挙げられる。
【0060】
前記金属箔膜の厚みについては、特に制限されないが、例えば5~50μm、好ましくは5~15μmが挙げられる。
【0061】
前記金属箔膜は、非通気性樹脂層211に対して、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート等の公知のラミネート方法に従って積層させることができる。
【0062】
皮膚貼付面側包材21の好適な層構造として、収容部22側から接着層3側に向けて、熱溶着性に優れる熱可塑性樹脂(ポリエチレン及び/又はポリプロピレン)で形成された非通気性樹脂層211b、バリア性樹脂で形成された非通気性樹脂層211a、及び繊維基材212がこの順で積層されている積層構造;収容部22側から接着層3側に向けて、ポリエチレン及び/又はポリプロピレンで形成された水分バリア非通気性樹脂層211b、蒸着膜又は金属箔膜、及び繊維基材212がこの順で積層されている積層構造等が挙げられる。
【0063】
また、皮膚貼付面側包材21を通気性にする場合には、その層構造、使用素材等については、皮膚貼付面側とは反対側に配される通気性の包材の場合と同様である。
【0064】
収容体2において、皮膚貼付面側とは反対側に配される包材23(以下、「非皮膚貼付面側包材」と表記することもある)は、従来の発熱具における収容体の非皮膚貼付面側包材と同様の素材で形成できる。非皮膚貼付面側包材23は、発熱部1として酸素との接触により発熱する発熱性組成物を使用する場合であれば、通気性を備えていることが必要になるが、発熱部1として当該発熱性組成物以外を使用する場合であれば、通気性又は非通気性のいずれであってもよい。
【0065】
通気性を備える非皮膚貼付面側包材23は、例えば、通気性樹脂層231、繊維基材232等によって形成することができる。
【0066】
通気性を備える非皮膚貼付面側包材23の形成に使用される通気性樹脂層231の構成樹脂については、特に制限されないが、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂として、具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0067】
通気性樹脂層231は、具体的には、通気性を確保するための細孔が設けられている樹脂フィルムであればよい。樹脂フィルムに設けられる細孔の形状、大きさ及び数については、収容体に備えさせるべき通気度に応じて適宜設定すればよい。
【0068】
通気性樹脂層231の厚さについては、非皮膚貼付面側包材23の層構成等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、15~150μm、好ましくは30~100μm、更に好ましくは50~80μmが挙げられる。
【0069】
非皮膚貼付面側包材23に使用される繊維基材232としては、具体的には、不織布、織布が挙げられる。使用感等の観点から、繊維基材232として、好ましくは不織布が挙げられる。繊維基材232の素材については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ビニロン、レーヨン、アクリル、アセテート、ポリ塩化ビニル等の合成繊維;綿、麻、絹、紙等の天然繊維;これらの混合繊維等が挙げられる。これらの素材の中でも、使用感を高めるという観点から、好ましくはポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリプロピレン、更に好ましくはポリエチレンテレフタレート、ナイロンが挙げられる。
【0070】
繊維基材232の目付けについては、非皮膚貼付面側包材の層構成等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、1~100g/m2、好ましくは5~70g/m2、更に好ましくは10~50g/m2が挙げられる。
【0071】
通気性を有する非皮膚貼付面側包材23の層構造としては、具体的には、通気性樹脂層231、又は繊維基材232からなる単層構造;通気性樹脂層231及び繊維基材232の内、同一又は異なる素材を2つ以上組み合わせた複層構造が挙げられる。使用感の向上、発熱組成物の漏出防止等の観点から、好ましくは、通気性樹脂層231からなる単層構造;収容体の内部から外部に向けて、通気性樹脂層231及び繊維基材232がこの順で積層されている積層構造が挙げられる。
【0072】
通気性樹脂層231と繊維基材232の積層は、ドライラミネート、押出ラミネート、熱ラミネート等の公知のラミネート方法によって行うことができる。
【0073】
また、非皮膚貼付面側包材23を非通気性にする場合には、その層構造、使用素材等については、非通気性の皮膚貼付面側包材21の場合と同様にすればよい。但し、非通気性の非皮膚貼付面側包材23では、粘着層3に含まれる成分の透過を遮断するバリア機能を備えさせる必要はなく、また前記蒸着膜及び金属箔膜は設けなくてもよい。
【0074】
本発明で使用される収容体2は、皮膚貼付面側包材21と非皮膚貼付面側包材23とを、発熱部1を収容する収容部22となる領域の周囲を張り合わせることによって形成される。
【0075】
皮膚貼付面側包材21と非皮膚貼付面側包材23を張り合わせる方法については、特に制限されないが、例えば、皮膚貼付面側包材21に含まれる樹脂層及び/又は非皮膚貼付面側包材23に含まれる樹脂層を利用して熱溶着(ヒートシール)させる方法、接着剤を使用して張り合わせる方法等が挙げられる。
【0076】
発熱部1として、酸素との接触により発熱する発熱性組成物を使用する場合、収容体2の収容部22に収容される当該発熱性組成物の量については、貼付する皮膚部位、当該発熱性組成物の発熱特性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、収容部22の1cm2当たり、当該発熱性組成物が0.01~1.5g程度、好ましくは0.05~1g程度、更に好ましくは0.1~0.8g程度が挙げられる。
【0077】
本発明で使用される収容体2において、発熱部1を収容する収容部22の数については、特に制限されず、1つであっても、また複数であってもよく、貼付する皮膚部位等に応じて適宜設定される。また、収容部22の大きさや形状についても、特に制限されず、貼付する皮膚部位の形状等に応じて適宜設定すればよい。
【0078】
<粘着層3>
本発明の発熱具は、前記収容体2における前記皮膚貼付面に、メントール(以下、(A)成分と表記することもある)、並びに生姜エキス及び/又はカンフル(以下、(B)成分と表記することもある)を含む粘着層3が設けられる。このような粘着層3を設けることによって、皮膚上に発熱具を固定するための固定具を別途使用することなく、皮膚の所定部位に簡便に発熱具を貼付することが可能となる。また、粘着層3に前記(A)成分及び(B)成分が含まれていることにより、これらの相乗的な作用によって、皮膚貼付部位で知覚される冷感と温感が向上し、更に格段に優れた温感作用を発揮することが可能になる。
【0079】
粘着層3には、(A)成分として、メントールを含有する。メントールは、d体、l体、dl体のいずれであってもよいが、好ましくはl体が挙げられる。
【0080】
また、(A)成分として、メントールを含む精油を使用してもよい。メントールを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することができるが、例えば、ハッカ油、ペパーミント油、スペアミント油等が挙げられる。
【0081】
粘着層3における(A)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、0.1~10重量%、好ましくは0.5~8重量%、更に好ましくは1~5重量%が挙げられる。(A)成分として、メントールを含む精油を配合する場合であれば、当該精油の含有量は、メントール含有量が前記範囲を充足するように調整すればよい。
【0082】
また、粘着層3には、前記(A)成分と共に、(B)成分として、生姜エキス及び/又はカンフルを含有する。
【0083】
(B)成分の内、生姜エキスは、生姜を抽出処理することにより得られる成分である。生姜エキスの原料として使用される生姜は、乾燥状態、又は未乾燥状態のいずれであってもよい。また、生姜エキスの原料として使用される生姜は、粉末化、細切化等の加工が施されたものであってもよい。更に、生姜エキスの原料として使用される生姜は、予め、糖質分解酵素、タンパク質分解酵素、脂質分解酵素、核酸分解酵素等の酵素を使用して、酵素処理が施されたものであってもよい。
【0084】
生姜の抽出処理に使用される抽出溶媒については、具体的には、水、含水エタノール(エタノール含有量30~95重量%程度)等が挙げられる。
【0085】
また、生姜の抽出処理条件としては、特に制限されないが、例えば、生姜1kg当たり、100~10万ml程度、好ましくは100~1万ml程度の抽出溶媒を使用し、5~120℃程度、好ましくは10~70℃程度の温度条件下で、10秒~24時間程度、好ましくは1分~6時間程度が挙げられる。
【0086】
生姜を抽出処理して得られた抽出液を濃縮又は乾燥することにより、生姜エキスが得られる。また、生姜を抽出処理して得られた抽出液については、必要に応じて、不溶物除去、除菌等の処理を行ってもよい。
【0087】
(B)成分として使用される生姜エキスは、乾燥状態、含水状態のいずれであってもよいが、好ましくは乾燥状態である。
【0088】
(B)成分として生姜エキスを使用する場合、粘着層3中の生姜エキスの含有量については、特に制限されないが、例えば、生姜エキスの乾燥重量換算で、0.01~3重量%、好ましくは0.05~2重量%、更に好ましくは0.1~1重量%が挙げられる。
【0089】
(B)成分として生姜エキスを使用する場合、前記(A)成分に対する生姜エキスの比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分100重量部当たり、生姜エキスが乾燥重量換算で、0.5~50重量部、好ましくは1~20重量部、更に好ましくは5~10重量部が挙げられる。
【0090】
また、(B)成分の内、カンフルは、d体、l体、dl体のいずれであってもよいが、好ましくはdl体が挙げられる。
【0091】
また、(B)成分として、カンフルを含む精油を使用してもよい。カンフルを含む精油は、公知のものから適宜選択して使用することもできる。
【0092】
(B)成分としてカンフルを使用する場合、粘着層3中のカンフルの含有量については、特に制限されないが、例えば、0.5~10重量%、好ましくは1~8重量%、更に好ましくは3~6重量%が挙げられる。(B)成分として、カンフルを含む精油を使用する場合であれば、当該精油の含有量は、カンフルの含有量が前記範囲を充足するように調整すればよい。
【0093】
(B)成分としてカンフルを使用する場合、前記(A)成分に対するカンフルの比率については、特に制限されないが、例えば、(A)成分100重量部当たり、カンフルが50~300重量部、好ましくは70~250重量部、更に好ましくは100~200重量部が挙げられる。(B)成分として、カンフルを含む精油を使用する場合であれば、精油に含まれるカンフルの比率が前記範囲を充足するように調整すればよい。
【0094】
粘着層3において、(B)成分として、生姜エキス又はカンフルのいずれか一方を単独で使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。(B)成分として、生姜エキス及びカンフルを組み合わせて使用すると、呈される温感及び冷感をより一層向上させ、温熱作用を格段顕著に発揮させることが可能になるので、特に好適である。(B)成分として、生姜エキス及びカンフルを組み合わせて使用する場合であっても、生姜エキス及びカンフルの粘着層3における含有量や(A)成分に対する比率については、前記範囲と同様である。
【0095】
また、粘着層3は、前記(A)成分及び(B)成分に加えて、皮膚への粘着性を備えさせるために粘着剤を基剤として含有する。
【0096】
粘着剤とは、油剤やその他の溶媒等の存在下で粘着性を示すポリマー(粘着性ポリマー)を含み、当該粘着性ポリマーが油剤やその他の溶媒等に分散又は溶解されて、粘着性を呈している組成物である。粘着剤に含まれる粘着性ポリマーの種類や組成は、公知であり、本発明では、従来の使い捨てカイロの粘着層に使用されている粘着剤を使用することができる。粘着剤の種類としては、具体的には、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤等が挙げられる。
【0097】
ゴム系粘着剤に含まれる粘着性ポリマーとしては、具体的には、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン系共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン系共重合体、ポリスチレン-ポリエチレン-ポリブチレン-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリエチレン-ポリプロピレン-ポリスチレン共重合体等が挙げられる。
【0098】
シリコーン系粘着剤としては、具体的には、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤、過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤等が挙げられる。
【0099】
アクリル系粘着剤に含まれる粘着性ポリマーとしては、具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル系モノマーを構成単位とする(メタ)アクリル系ポリマーが挙げられる。
【0100】
ウレタン系粘着剤に含まれる粘着性ポリマーとしては、具体的には、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリオールと、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂が挙げられる。
【0101】
これらの粘着剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0102】
これらの粘着剤の中でも、好ましくはゴム系粘着剤が挙げられる。
【0103】
粘着層3における粘着剤の含有量については、皮膚への粘着性、粘着剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、60~99.89重量%、好ましくは70~98重量%、更に好ましくは80~97重量%が挙げられる。
【0104】
粘着層3には、前述する成分の他に、必要に応じて、薬理成分や香粧成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、酸性ムコポリサッカライド、カミツレ、セイヨウトチノキ、イチョウ、ハマメリエキス、グレープフルーツエキス、ローズマリーエキス、レモンエキス、ビタミンE、ニコチン酸誘導体等の血行促進剤;グリセリン、セラミド、コラーゲン、ヒアルロン酸、スクワラン等の保湿剤;バジルエキス、ジュニパーエキス等の疲労回復剤;インドメタシン、ジクロフェナック、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカム、フェルビナック、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等の鎮痛剤;茶エキス、朝鮮人参エキス、カフェイン、セイヨウトチノキ、アミノフィリン、エスシン、アントシアニジン、有機ヨウ素化合物、オトギリ草エキス、シモツケ草エキス、スギナ、マンネンロウ、セイヨウキヅタ、チオムカーゼ、ヒアルウロニダーゼ等のスリミング剤;テルミナリア、ビスナガ、マユス、セイヨウトチノキ、アントシアニン、ビタミンP、キンセンカ、コンコリット酸、シラノール、等のむくみ改善剤;プロテアーゼ等のピーリング剤;チオグリコール酸カルシウム等の除毛剤;γ-オリザノール等の自律神経調節剤;天然香料、単品香料等の香料等が挙げられる。
【0105】
これらの薬理成分及び香粧成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、粘着層における薬理成分及び香粧成分の含有量については、付与すべき薬理的効果又は香粧的効果に応じて、適宜設定すればよい。
【0106】
粘着層3の塗布量については、貼付する皮膚への接着性、粘着層を形成する面積等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、粘着層3が形成されている領域(後述する粘着層形成領域3X)における粘着層3の塗布量として、20~150g/m2、好ましくは40~120g/m2、更に好ましくは60~100g/m2が挙げられる。
【0107】
粘着層3は、前記収容体2における皮膚貼付面の全面に設けられていてもよいが、皮膚貼付面に部分的に設けられていることが好ましい。前記収容体2における皮膚貼付面側包材21に繊維基材212が含まれている場合には、前記収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設けることにより、粘着層3が形成された領域(以下、「粘着層形成領域3X」と表記することもある)と、粘着層3が設けられておらず繊維基材212が露出した領域(以下、「繊維基材露出領域212X」と表記することもある)が形成され、繊維基材露出領域212Xにおいて、発汗した汗を繊維基材212が吸収し、汗を介して、粘着層非形成領域212X内に存在する(A)成分及び(B)成分が皮膚に働きかけ、作用を効果的に増大させることが可能になる。また、(A)成分によってもたらされる冷感は水分と接触している場合に一層効果的に知覚できるので、前記収容体1における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設けることにより、皮膚と発熱具との間に水分を確保することができ、(A)成分による冷感をより効果的に知覚させることも可能になる。
【0108】
収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設ける場合、粘着層3は、少なくとも、収容体2において発熱部1を収容している収容部22の下面領域内に設けられていることが好ましい。収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設ける場合、粘着層形成領域の形状については、特に制限されないが、例えば、ストライプ状、ドット状、格子状、網目状、水分吸収層の端部を囲む枠状等が挙げられる。
【0109】
収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設けた一態様として、図1にストライプ状の粘着層形成領域3Xが形成された態様を示す。ストライプ状の粘着層形成領域を形成する場合、粘着層形成領域3Xのストライプ幅については、発熱具を貼付する皮膚部位、発熱具の大きさ等に応じて、適宜設定すればよいが、例えば、1~100mm程度、好ましくは3~30mm程度が挙げられる。
【0110】
また、収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設けた一態様として、図2にドット状の粘着層形成領域3Xが形成された態様を示す。図2には、円形のドットが配された態様を示しているが、ドット形状は、楕円形、多角形、不定形等のいずれであってもよい。ドット状の粘着層形成領域3Xを形成する場合、ドット1個当たりの面積については、発熱具を貼付する皮膚部位、発熱具の大きさ等に応じて、適宜設定すればよいが、例えば、5~10000mm2程度、好ましくは500~3000mm2程度が挙げられる。
【0111】
また、収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設けた一態様として、図3に格子状の粘着層形成領域3Xが形成された態様を示す。格子状の粘着層形成領域3Xを形成する場合、格子1個当たりの面積については、発熱具を貼付する皮膚部位、発熱具の大きさ等に応じて、適宜設定すればよいが、例えば、1~3000mm2程度、好ましくは10~1000mm2程度が挙げられる。
【0112】
また、収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設けた一態様として、図4に網目状の粘着層形成領域3Xが形成された態様を示す。網目状の粘着層形成領域3Xを形成する場合、網目を形成する線幅については、発熱具を貼付する皮膚部位、発熱具の大きさ等に応じて、適宜設定すればよいが、例えば、1~100mm程度、好ましくは3~30mm程度が挙げられる。
【0113】
また、収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設けた一態様として、図5に枠状の粘着層形成領域3Xが形成された態様を示す。枠状の粘着層形成領域3Xを形成する場合、枠の幅については、発熱具を貼付する皮膚部位、発熱具の大きさ等に応じて、適宜設定すればよいが、例えば、1~100mm程度、好ましくは3~50mm程度が挙げられる。
【0114】
また、収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設ける場合には、形成される繊維基材露出領域212Xは、収容体2の皮膚貼付面の端部まで連通していることが好ましい。繊維基材露出領域212Xが収容体2の皮膚貼付面の端部まで連通している場合には、発熱具を皮膚に貼付した際に空気の通り道を確保でき、使用時の発汗によるベタツキをより一層効果的に抑制することが可能になる。繊維基材露出領域212Xが収容体2の皮膚貼付面の端部まで連通している態様としては、具体的には、粘着層3がストライプ状又はドット状に形成された態様が挙げられる。
【0115】
収容体2における皮膚貼付面に対して粘着層3を部分的に設ける場合、粘着層形成領域3Xと繊維基材露出領域232Xの面積比については、貼付する皮膚への接着性等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、粘着層形成領域3X:繊維基材露出領域232Xの面積比として、通常100:5~2000、好ましくは100:10~400、更に好ましくは100:25~150が挙げられる。
【0116】
粘着層3は、収容体2の皮膚貼付面に対して、公知のコート法によって塗工することによって形成される。
【0117】
<離型層>
本発明の発熱具において、必要に応じて、前記粘着層3の表面(皮膚貼付される側)には、剥離可能な離型層が設けられていてもよい。離型層が設けられている場合には、保存中の粘着層の乾燥防止、保存中の粘着層中の有効成分の揮発防止、粘着層の粘着性による取扱性の低下の防止等を図ることができる。
【0118】
離型層としては、ポリエチレンテレフタラート、ポリアクリロ二トリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン等の樹脂フィルム;シリコン加工等の離型性付与加工を施した紙等が挙げられる。また、離型層として樹脂フィルムを使用する場合であっても、シリコン加工等の離型性付与加工が施されていてもよい。これらの離型層の中でも、ポリエチレンテレフタラート、ポリアクリロ二トリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の樹脂フィルムは、粘着層中の有効成分の吸着を抑制できるので好適である。
【0119】
<好適な態様>
本発明の発熱具の好適な一形態の断面構造の概略図を図6に示す。図6に示す発熱具では、皮膚貼付面側包材21と非皮膚貼付面側包材23の端部同士を張り合わすことにより、収容部22を有する収容体2が形成されており、収容体2中に、発熱部1として、酸素との接触により発熱する発熱性組成物が収容されている。図6に示す発熱具では、収容体2の皮膚貼付面側包材21が、収容部22側から皮膚貼付面に向けて、溶着性に優れる熱可塑性樹脂(ポリエチレン及び/又はポリプロピレン)で形成された非通気性樹脂層211b、バリア性樹脂で形成された非通気性樹脂層211a、及び繊維基材212がこの順で積層されている積層シートで構成されている。また、図6に示す発熱具では、収容体2の非皮膚貼付面側包材23が、収容部22側から外側に向けて通気性樹脂層231及び繊維基材232がこの順で積層されている積層シートで形成されている。また、図6に示す発熱具では、粘着層3は水分吸収層211に対して部分的に設けられているが、水分吸収層211の全面に粘着層3が設けられていてもよい。なお、図6には、便宜上、離型層については割愛している。
【0120】
<使用態様・包装形態>
本発明の発熱具は、粘着層を皮膚に貼付することによって、身体の保温具又は治療用具として使用される。特に、本発明の発熱具は、格段に優れた温熱作用を発揮できるので、血行促進、疼痛緩和、肩こり改善等のための治療用具として特に好適に使用される。
【0121】
本発明の発熱具が適用される皮膚部位については、特に制限されないが、例えば、目、顔、首、肩、腰、背中、腹部、臀部、腕、脚、足裏等が挙げられる。
【0122】
本発明の発熱具は、発熱部1が酸素との接触により発熱する発熱性組成物である場合には、酸素バリア性を有する包装材に包装され、当該発熱性組成物が空気と接触しない状態で提供される。使用時に当該包装材を開封することによって、当該発熱性組成物が空気と接触し、発熱が開始する。
【実施例
【0123】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0124】
1.発熱具の製造
実施例1
ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び不織布(ポリエチレンテレフタレート製)がこの順に積層している非通気性積層シートからなる皮膚貼付面側包材(縦13cm、横9.5cmの長方形)を準備した。当該皮膚貼付面側包材の不織布の表面に対して部分的に、140℃で加熱混合した下記組成の粘着層形成用組成物Aを、粘着層を形成する領域における塗布量が100g/m2となるように塗工し、その後冷却することによって、皮膚貼付面側包材上に粘着層を部分的に形成した。なお、粘着層の部分的な形成は、図1に示すストライプ状で、粘着層形成領域のストライプ幅が14.25mm、水分吸収層(不織布)露出領域の横幅が12.7mm、粘着層形成領域:水分吸収層露出領域の面積比が60:40となるように設定して行った。
<粘着層形成用組成物A>
メントール(商品名「薄荷脳」、長岡実業株式会社製) 2.5重量%
生姜エキス(商品名「ショウガ抽出液」、アルプス薬品工業株式会社製)(液状) 5重量%(乾燥原料換算で約0.2重量%に相当)
カンフル(商品名「dl-カンフル[SP]」、長岡実業株式会社製) 4重量%
ゴム系粘着剤 88.5重量%
合計 100重量%
【0125】
次いで、皮膚貼付面側包材上の粘着層に、シリコン加工が施されたポリエチレンテレフタレートフィルムからなる離型層(縦13cm、横9.5cmの長方形)を張り合わせた。
【0126】
また、別途、細孔が設けられたポリエチレンフィルム及び不織布(ポリエチレンテレフタレート製)が積層している通気性積層シートからなる非皮膚貼付面側包材(縦13cm、横9.5cmの長方形)を準備した。
【0127】
次いで、鉄粉22g、活性炭6g、水溶性塩・保水剤・水混合物10g(塩化ナトリウム、吸水性樹脂、蛭石、水等の混合物;水8.5g含有)を混合し、発熱性組成物を調製した。得られた発熱性組成物38gを、皮膚貼付面側包材のポリエチレンフィルム側と皮膚貼付面側包材のポリエチレンフィルム側で挟持させた状態で、皮膚貼付面側包材と非皮膚貼付面側包材の端部同士を熱溶着することにより、収容部(縦12cm、横8.5cm)に発熱性組成物が収容された発熱具を製造した。製造した発熱具は、素早く、密封袋に収容した。
【0128】
実施例2
下記組成の粘着層形成用組成物Bを使用して粘着層を形成したこと以外は、前記実施例1と同条件で、発熱具を製造した。
<粘着層形成用組成物B>
メントール(商品名「薄荷脳」、長岡実業株式会社製) 2.5重量%
生姜エキス(商品名「ショウガ抽出液」、アルプス薬品工業株式会社製)(液状) 5重量%(乾燥原料換算で約0.2重量%に相当)
ゴム系粘着剤 82.5重量%
合計 100重量%
【0129】
実施例3
下記組成の粘着層形成用組成物Cを使用して粘着層を形成したこと以外は、前記実施例1と同条件で、発熱具を製造した。
<粘着層形成用組成物C>
メントール(商品名「薄荷脳」、長岡実業株式会社製) 2.5重量%
カンフル(商品名「dl-カンフル[SP]」、長岡実業株式会社製) 4重量%
ゴム系粘着剤 93.5重量%
合計 100重量%
【0130】
比較例1
有効成分を配合せず、ゴム系粘着剤のみからなる粘着層を使用したこと以外は、前記実施例1と同条件で、発熱具を製造した。
【0131】
比較例2
下記組成の粘着層形成用組成物Dを使用して粘着層を形成したこと以外は、前記実施例1と同条件で、発熱具を製造した。
<粘着層形成用組成物D>
メントール(商品名「薄荷脳」、長岡実業株式会社製) 2.5重量%
ゴム系粘着剤 97.5重量%
合計 100重量%
【0132】
比較例3
下記組成の粘着層形成用組成物Eを使用して粘着層を形成したこと以外は、前記実施例1と同条件で、発熱具を製造した。
<粘着層形成用組成物E>
生姜エキス(商品名「ショウガ抽出液」、アルプス薬品工業株式会社製)(液状) 5重量%(乾燥原料換算で約0.2重量%に相当)
ゴム系粘着剤 95重量%
合計 100重量%
【0133】
比較例4
下記組成の粘着層形成用組成物Fを使用して粘着層を形成したこと以外は、前記実施例1と同条件で、発熱具を製造した。
<粘着層形成用組成物F>
カンフル(商品名「dl-カンフル[SP]」、長岡実業株式会社製) 4重量%
ゴム系粘着剤 96重量%
合計 100重量%
【0134】
2.発熱具の評価
試験例1:温感及び冷感の評価
実施例1~3及び比較例1~4の発熱具を、5名の被験者の腰部に貼付し、継時的に、呈される温感及び冷感を以下の判定基準に従って評点化し、その平均値を算出した。
(温感及び冷感の判定基準)
4:非常に強く感じる
3:強く感じる
2:弱く感じる
1:非常に弱く感じる
0:全く感じない
【0135】
得られた結果を図7及び8に示す。温感に関しては、粘着層に生姜エキスを単独で含む場合(比較例3)では、粘着層に有効成分を含まない場合(比較例1)と同程度の温感が呈されていたが、粘着層にメントール又はカンフルを単独で含む場合(比較例2及び3)では、粘着層に有効成分を含まない場合(比較例1)に比して、呈される温感が低下していた。これに対して、粘着層にメントールと生姜エキス及び/又はカンフルを含む場合(実施例1~3)では、粘着層に生姜エキスを単独で含む場合(比較例3)に比して、温感が向上しており、メントールと生姜エキス及び/又はカンフルとの相乗作用による温感向上が認められた。とりわけ、メントール、生姜エキス、及びカンフルを含む場合(実施例1)には、温感の向上が格別顕著に認められた。
【0136】
また、冷感に関しては、粘着層にメントールを単独で含む場合(比較例2)では、粘着層に有効成分を含まない場合(比較例1)に比して、冷感が向上していたが、粘着層に生姜エキス又はカンフルを単独で含む場合(比較例3及び4)では、粘着層に有効成分を含まない場合(比較例1)と同程度の冷感が知覚された。これに対して、粘着層にメントールと生姜エキス及び/又はカンフルを含む場合(実施例1~3)では、粘着層にメントールを単独で含む場合(比較例2)に比して、冷感が向上しており、しかも冷感の持続性も格段に向上していた。特に、粘着層に、メントール、生姜エキス、及びカンフルを含む場合(実施例1)では、冷感の向上が格別顕著に認められた。
【0137】
即ち、以上の結果から、粘着層にメントールと生姜エキス及び/又はカンフルを含む場合、特にメントール、生姜エキス、及びカンフルを含む場合において、相乗的に温感と冷感が向上することが明らかとなった。
【0138】
試験例2:皮膚温度の評価
2名の被験者によって、実施例1及び比較例1の発熱具によってもたらされる皮膚温度について評価した。具体的には、被験者の左肩に実施例1の発熱具を貼付し、右肩に比較例1の発熱具を貼付した。貼付前及び貼付開始から60分後に、赤外線サーモグラフィーを用いて、皮膚表面温度の測定を行った。なお、貼付開始から60分後の皮膚温度については、発熱具を貼った状態と発熱具を剥がした状態の双方について測定した。
【0139】
得られた結果を図9に示す。図9から明なように、実施例1の発熱具は、皮膚温度は比較例1の場合と同程度であった。即ち、本試験結果から、実施例1の発熱具は、比較例1の発熱具と同程度の皮膚温度をもたらすにも拘わらず、知覚される温感及び冷感の向上が図られていることが明らかとなった。
【0140】
試験例3:腰痛緩和効果の評価
腰痛を感じている10名の被験者によって、実施例1及び比較例1の発熱具の腰痛緩和効果を評価した。具体的には、被験者の腰部に、実施例1及び比較例1の発熱具を60分間貼付し、腰痛の程度をVAS(Visual Analogue Scale)にて経時的に評価した。VAS評価では、「痛みが無い」を0点(最少点数)、「これ以上の痛みがないくらい痛い」を150点(最大点数)として、感じられる腰痛の程度を評点化した。10名の被験者によって評点化された腰痛の程度の平均値を算出することにより、腰痛緩和効果を評価した。
【0141】
得られた結果を図10に示す。図10に示す通り、粘着層にメントール、生姜エキス、及びカンフルを含む場合(実施例1)では、格段に優れた腰痛緩和効果及び即効性が認められた。
【0142】
試験例4:血流量の評価
6名の被験者によって、実施例1及び比較例1の発熱具によって血流量の変化を評価した。具体的には、先ず、被験者を腹臥位の状態にして、背部の筋血流量の測定を開始した。血流量が安定になった時点から10分後に、第3腰椎と第2腰椎の間が中心となるように、実施例1及び比較例1の発熱具を縦向きに貼付し、発熱具を貼付してから40分後に、発熱具を取り外した。発熱具の貼付10分前から発熱具を取り外して10分経過時まで、被験者の背部の筋血流量の測定を行った。なお、筋血流量については赤外線酸素モニタ装置(NIRO-200、浜松ホトニクス株式会社製)にて血中酸化ヘモグロビン濃度を測定した。
【0143】
得られた結果を図11及び12に示す。図11には、血中酸化ヘモグロビン濃度の継時変化を示し、図12には、血中酸化ヘモグロビン濃度の積算値(定積分値)を示す。この結果から、粘着層にメントール、生姜エキス、及びカンフルを含む発熱具は、粘着層に有効成分を含まない場合に比べて、血流量の向上が認められ、優れた温熱作用を発揮できることが確認された。
【0144】
試験例5:安全性の評価
以下のパッチ試験を行うことにより、各発熱具の安全性について評価した。先ず、各発熱具を構成する皮膚貼付面側包材(粘着層付)を一辺8mmの正方形に切り取り、被験サンプルとした。パッチテストユニットとして、Finn Chamber (EPITEST, Finland) on Scanpor tape (NORGESPLASTER, Norway)を用い、被験サンプルの粘着層を30名の被験者の背部に、24時間貼付した。ユニット除去後30~60分(貼付24時間後)及び貼付48時間後(ユニット除去から24時間後)に、各皮膚部位における反応を表1に示す本邦基準でスコア化し、以下の式に従って、皮膚刺激インデックス値を算出した。
【0145】
【表1】
【0146】
【数1】
【0147】
得られた結果を図13に示す。この結果から、メントール、生姜エキス、及びカンフルを含む粘着層を備える発熱具は、粘着層にメントールを単独で含む場合に比して、刺激インデックス値が低減しており、格段に高い安全性を有していることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0148】
1 発熱部
2 収容体
21 皮膚貼付面側包材
211 非通気性樹脂層
211a バリア性樹脂で形成された非通気性樹脂層
211b 熱溶着性に優れる熱可塑性樹脂で形成された非通気性樹脂層
212 繊維基材
23 非皮膚貼付面側包材
231 通気性樹脂層
232 繊維基材
3 粘着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
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