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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】腸内菌叢改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/47 20060101AFI20220513BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20220513BHJP
   A23L 33/195 20160101ALI20220513BHJP
   A61K 36/062 20060101ALI20220513BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220513BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20220513BHJP
   C12N 9/30 20060101ALN20220513BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALN20220513BHJP
【FI】
A61K38/47
A23L2/00 F
A23L33/195
A61K36/062
A61P1/00
A61P3/00
A61P37/00
C12N9/30
C12Q1/689 Z ZNA
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018500231
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2017005985
(87)【国際公開番号】W WO2017142079
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2016028941
(32)【優先日】2016-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000216162
【氏名又は名称】天野エンザイム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 学
(72)【発明者】
【氏名】山口 庄太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 範久
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-325045(JP,A)
【文献】特開2007-325580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A61K 36/00
A23L 33/00
A23L 2/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを有効成分とする、腸内菌叢改善剤(但し、糖転移酵素を含む場合、及びアスペルギルス・オリゼの生菌を含む場合を除く)。
【請求項2】
前記アミラーゼが、アスペルギルス・オリゼ由来である、請求項1に記載の腸内菌叢改善剤。
【請求項3】
前記アミラーゼが、α-アミラーゼである、請求項1又は2に記載の腸内菌叢改善剤。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の内服用医薬品(但し、糖転移酵素を含む場合、及びアスペルギルス・オリゼの生菌を含む場合を除く)。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の食品用添加剤(但し、糖転移酵素を含む場合、及びアスペルギルス・オリゼの生菌を含む場合を除く)。
【請求項6】
請求項1~3のいずれかに記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の飲食品(但し、糖転移酵素を含む場合、及びアスペルギルス・オリゼの生菌を含む場合を除く)。
【請求項7】
腸内菌叢改善剤(但し、糖転移酵素を含む場合、及びアスペルギルス・オリゼの生菌を含む場合を除く)の製造のためのアスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させ、腸内菌叢を改善できる腸内菌叢改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腸内環境と各種疾患の因果関係が盛んに研究されており、腸内環境の改善が各種疾患の予防又は改善に有効であることが明らかにされている。腸内には、乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌と、大腸菌等の悪玉菌が混在しており、善玉菌が優勢な菌叢を形成することが健全な腸内環境を形成する上で重要である。
【0003】
従来、プロバイオティックスやプレバイオティックス等が開発され、善玉菌を優勢にして腸内菌叢を改善する素材が種々提案されているが、アミラーゼやプロテアーゼ等の消化酵素の投与によっても、腸内菌叢を改善できることが報告されている。例えば、非特許文献1には、アミラーゼ、プロテアーゼ、及びキシラナーゼからなる特定のブレンド酵素を飼料と共に給餌した豚において、大腸内で乳酸桿菌の菌数が増加し、大腸菌の菌数が減少したことが報告されている。また、非特許文献2には、バシラス・アミロリクエファシエンス由来のアミラーゼ、バシラス・ズブチリス由来のプロテアーゼ、及びトリコデルマ由来のキシラナーゼからなる特定のブレンド酵素(Nopcozyme II; Diasham Resources Pte Ltd.)を飼料と共に給餌した豚において、乳酸桿菌の菌数が増加し、サルモネラや大腸菌の菌数が減少したことが報告されている。更に、非特許文献3には、アスペルギルス属由来の中性プロテアーゼ及びアスペルギルス・ニガー由来の酸性プロテアーゼには、ラットの腸内のラクトバシスル属細菌及び/又はビフィドバクテリウム属細菌の菌数の増加が認められたことが報告されている。
【0004】
このように、従来、腸内菌叢を改善できる酵素製剤としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、及びキシラナーゼからなる特定のブレンド酵素が知られているが、これらの酵素の内、どの酵素が腸内菌叢の改善に寄与しているかについては明らかにされていない。また、このようなブレンド酵素の使用は、酵素製造のコストの上昇を招くという欠点もある。一方、アスペルギルス属由来の中性プロテアーゼ、及びアスペルギルス・ニガー由来の酸性プロテアーゼについては、単独でも腸内菌叢を改善できることが知られているが、他にどのような酵素であれば、単独使用で腸内菌叢の改善が可能になるかについては明らかにされていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Yi et al., Asian Astralas. J. Anim. Sci., 2013, 26: 1181-1188
【文献】Zhang et al., J. Amin. Sci., 2014, 92: 2063-2069
【文献】Yang et al., Biomedical Reports, 2015, 3: 715-720
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、健康増進に関する関心の高まりを受けて、善玉菌を優勢にして腸内菌叢を改善する新たな素材の開発が望まれているが、酵素を利用した腸内菌叢改善剤については、従来報告されている酵素製剤以外で、どのような酵素が有効であるかについては類推すらし得ないのが現状であった。
【0007】
このような状況の下、本発明の目的は、酵素を使用して、乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させ、腸内菌叢を改善できる腸内菌叢改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼは、腸内で乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させ、優れた腸内菌叢改善効果を奏し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを有効成分とする、腸内菌叢改善剤。
項2. 前記アミラーゼが、アスペルギルス・オリゼ由来である、項1に記載の腸内菌叢改善剤。
項3. 前記アミラーゼが、α-アミラーゼである、項1又は2に記載の腸内菌叢改善剤。
項4. 項1~3のいずれかに記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の内服用医薬品。
項5. 項1~3のいずれかに記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の食品用添加剤。
項6. 項1~3のいずれかに記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の飲食品。
項7. アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを腸内菌叢の改善が必要とされる者に経口適用する、腸内菌叢の改善方法。
項8. 前記アミラーゼが、アスペルギルス・オリゼ由来である、項7に記載の腸内菌叢の改善方法。
項9. 前記アミラーゼが、α-アミラーゼである、項7又は8に記載の腸内菌叢の改善方法。
項10. 腸内菌叢の改善処置に使用される、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼ。
項11. アスペルギルス・オリゼ由来である、項10に記載のアミラーゼ。
項12. α-アミラーゼである、項10又は11に記載のアミラーゼ。
項13. 腸内菌叢改善剤の製造のためのアスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼの使用。
項14. 前記アミラーゼが、アスペルギルス・オリゼ由来である、項13に記載の使用。
項15. 前記アミラーゼが、α-アミラーゼである、項13又は14に記載の使用。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを使用することにより、乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させ、腸内菌叢を改善できるので、腸内環境の健全化、健全な腸内環境の保持、腸内環境が不健全になることが一因となって生じる疾患・症状の予防又は治療に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.腸内菌叢改善剤
本発明の腸内菌叢改善剤は、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを有効成分とすることを特徴とする。以下、本発明の腸内菌叢改善剤について詳述する。
【0012】
[アミラーゼ]
本発明の腸内菌叢改善剤では、有効成分として、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを使用する。このように、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを選択し、これを使用することにより、腸内の乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌を増加させ、腸内菌叢を効果的に改善することが可能になる。
【0013】
本発明の腸内菌叢改善剤において、使用するアミラーゼの由来微生物については、アスペルギルス属に属する微生物である限り、特に制限されないが、例えば、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・サイトイ、アスペルギルス・アワモリ等が挙げられる。これらの中でも、アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼは、腸内で乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させる作用が卓越しており、本発明において好適に使用される。
【0014】
また、本発明の腸内菌叢改善剤において、使用するアミラーゼの種類については、特に制限されず、例えば、α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、グルコアミラーゼ、イソアミラーゼ等が挙げられる。これらの中でも、より一層優れた腸内菌叢改善効果を奏させるという観点から、好ましくはα-アミラーゼが挙げられる。
【0015】
本発明の腸内菌叢改善剤では、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを1種単独で使用してもよく、また、由来微生物及び/又は種類が異なる複数のアミラーゼを組み合わせて使用してもよい。
【0016】
本発明で使用されるアミラーゼは、精製品であってもよいが、他の酵素等が混在する粗精製品であってもよい。なお、本発明の腸内菌叢改善剤において、アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼを粗精製品として使用する場合であれば、その好適な一態様として、中性プロテアーゼを含まないものが挙げられる。
【0017】
これらのアミラーゼの中でも、より一層優れた腸内菌叢改善効果を奏させるという観点から、好ましくはアスペルギルス・オリゼ由来のα-アミラーゼが挙げられる。本発明で使用されるアスペルギルス・オリゼ由来のα-アミラーゼの特性の例として、以下の(1)~(4)を満たすものが挙げられる。
(1)作用
デンプン、グリコーゲン等の多糖のα-1,4結合をランダムに加水分解する。作用様式はエンド型である。
(2)至適pH
pH5.0付近である。
(3)至適温度
50℃付近である。
(4)分子量
SDS-PAGEによる測定で45,000±5,000ダルトンである。
【0018】
本発明で使用されるアミラーゼは、アスペルギルス属に属する微生物を固体培養法で培養して得られた麹抽出液から調製することができる。具体的には、アスペルギルス属に属する微生物を固体培養した後に、培養抽出液を遠心分離や限外濾過等よって上清液を得て、更に必要に応じてこれを濃縮、精製、乾燥等に供することにより得ることができる。また、アミラーゼの製造において、得られるアミラーゼに他の酵素が混在するのを抑制するには、例えば、アミラーゼのみを特異的に生産する培地を使用して培養する方法、アミラーゼのみを沈殿に移行させられるアルコール沈降を行う方法、限外ろ過にてアミラーゼと他の酵素を分離する方法等を行えばよい。
【0019】
また、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼは市販されており、本発明の腸内菌叢改善剤では、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼとして、市販品を使用してもよい。このような市販品としては、具体的には、商品名「ビオザイムA」(アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ製剤、天野エンザイム株式会社製)、「ビオヂアスターゼ」(アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ製剤、天野エンザイム株式会社製)、「スミチームL」(アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ製剤、新日本化学工業株式会社製)、「グリンドアミルA」(アスペルギルス・オリゼ由来のアミラーゼ製剤、ダニスコジャパン株式会社製)等が例示される。
【0020】
[アミラーゼの適用量]
本発明の腸内菌叢改善剤の適用量については、該剤が使用される製品の種類、用途、期待される効果、適用形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、成人1日当たりの前記アミラーゼの摂取又は投与量として、1~300,000U、好ましくは10~150,000U、より好ましくは10~100,000U、より一層好ましくは50~50,000U、さらに好ましくは50~15,000U、最も好ましくは500~15,000Uが挙げられる。なお、本明細書において、アミラーゼ活性(U)は、以下の方法にて求められる値である。
【0021】
(アミラーゼの活性の測定法)
まず、1重量%バレイショデンプン溶液(pH5.0)10mLを試験管にとり、37℃に保温する。続いて、アミラーゼ活性の測定対象となるサンプルを含む酵素溶液(溶媒は水を使用)1mLを加えて37℃で正確に10分間おいた後、アルカリ性酒石酸塩液(10重量%水酸化ナトリウム・34.6重量%酒石酸ナトリウムカリウム四水和物溶液)、銅液(6.932重量%硫酸銅五水和物溶液)を順に2mLずつ加える。その後、沸騰水中に15分間おいた後に流水中で冷却し、37.5重量%ヨウ化カリウム溶液2mL、6倍希釈した濃硫酸を加えたのち、0.05mol/Lチオ硫酸ナトリウムで滴定する。ブランクは酵素溶液を水(ブランク液)にして実施する。本条件下、1分間に1mgのブドウ糖に相当する還元力の増加をもたらすアミラーゼ量を1Uとする。算出には以下式を用いる。
【数1】
【0022】
[腸内菌叢改善剤の用途]
本発明の腸内菌叢改善剤は、前記アミラーゼの作用によって、腸内でビフィズス菌及び乳酸菌等の善玉菌の菌数を増加させ、善玉菌が優勢な菌叢を形成させることができるので、腸内環境の健全化、健全な腸内環境の保持等の目的で使用される。特に、本発明の腸内菌叢改善剤は、腸内でビフィドバクテリウム属細菌及びラクトバシスル属細菌の菌数を増加させる作用に優れているので、ビフィドバクテリウム属細菌及びラクトバシスル属細菌の腸内菌数増加剤として使用することもできる。
【0023】
また、本発明の腸内菌叢改善剤は、善玉菌が優勢な菌叢を形成させることにより腸内環境の健全化が図られるので、腸内環境が不健全になることが一因となって生じる疾患や症状の予防又は治療の目的で使用することもできる。このような疾患や症状としては、例えば、免疫力の低下、大腸ガン、アレルギー疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肥満、炎症性腸疾患等が挙げられる。
【0024】
[腸内菌叢改善剤の使用形態]
本発明の腸内菌叢改善剤は、経口摂取又は経口投与により経口適用される。本発明の腸内菌叢改善剤は、経口摂取又は経口投与され、腸内に到達すると、腸内菌叢を改善する作用を発揮するので、飲食品、内服用医薬品、飼料、ペットフード等の各種製品に配合して使用することができる。
【0025】
また、本発明の腸内菌叢改善剤を前記各種製品に配合する場合、当該製品には、必要に応じて、本発明の腸内菌叢改善剤と共に、プロバイオティクス及び/又はプレバイオティクスが含まれていてもよい。
【0026】
プロバイオティクスとして使用される微生物としては、例えば、乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌等が挙げられる。乳酸菌としては、具体的には、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィリス、ラクトバチルス・プランタルム等のラクトバチルス属乳酸菌;エンテロコッカス・フェーカリス、エンテロコッカス・フェーシウム、エンテロコッカス・ヒラエ等のエンテロコッカス属乳酸菌;ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス・サーモフィラス等のストレプトコッカス属乳酸菌等が挙げられる。また、ビフィズス菌としては、具体的には、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム等が挙げられる。これらのプロバイオティクスは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
また、プレバイオティクスとしては、例えば、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース等が挙げられる。これらのプレバイオティクスは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
また、本発明の腸内菌叢改善剤が配合される製品の剤型は、固形状、半固形状、液状等のいずれであってもよく、当該製品の種類や用途に応じて適宜設定される。
【0029】
本発明の腸内菌叢改善剤を飲食品に使用する場合、前記アミラーゼを、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調整して、腸内菌叢改善効果を奏する飲食品として提供される。このような飲食品としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に制限されないが、例えば、錠剤、顆粒、粉剤、カプセル、ソフトカプセル等のサプリメント;栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料等が例示される。
【0030】
本発明の腸内菌叢改善剤を飲食品に使用する場合、飲食品に対する該剤の配合量については、飲食品の形態等に応じて異なるが、例えば、サプリメントの場合であれば、前記アミラーゼが0.3~100,000U/g、好ましくは3~50,000U/g、より好ましくは3~30,000U/g、より一層好ましくは15~15,000U/g、さらに好ましくは15~5,000U/g、最も好ましくは150~5,000U/gとなる範囲が挙げられる。また、例えば、飲料の場合であれば、前記アミラーゼが0.003~1,000U/mL、好ましくは0.03~500U/mL、より好ましくは0.03~300U/mL、より一層好ましくは0.15~150U/mL、さらに好ましくは0.15~50U/mL、最も好ましくは1.5~50U/mLとなる範囲が挙げられる。
【0031】
更に、本発明の腸内菌叢改善剤を飲食品の分野で使用する場合、本発明の腸内菌叢改善剤を単独で、又は他の成分と組み合わせて、腸内菌叢改善用の食品用添加剤として提供することもできる。
【0032】
また、本発明の腸内菌叢改善剤を内服用医薬品に使用する場合、本発明の腸内菌叢改善剤を単独で、又は他の薬理活性成分、薬学的に許容される基剤や添加剤等と組み合わせて所望の形態に調整して、腸内菌叢改善効果を奏する内服用医薬品として提供される。このような医薬品の形態としては、特に制限されないが、具体的には、錠剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤、液剤等の経口投与製剤が挙げられる。
【0033】
内服用医薬品の製造に使用される基剤や添加剤としては、例えば、水、アルコール等の水性基剤、油性基材、賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、清涼化剤、pH調整剤、増粘剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、界面活性剤、乳化剤、可溶化剤、溶解補助剤、香料、防腐剤等が挙げられる。
【0034】
本発明の腸内菌叢改善剤を内服用医薬品として使用する場合、内服用医薬品に対する該剤の配合割合については、内服用医薬品の形態等に応じて、前述する適用量を充足する範囲で適宜設定すればよいが、例えば、固形状又は半固形状の内服用医薬品の場合であれば、前記アミラーゼが0.3~100,000U/g、好ましくは3~50,000U/g、より好ましくは3~30,000U/g、より一層好ましくは15~15,000U/g、さらに好ましくは15~5,000U/g、最も好ましくは150~5,000U/gとなる範囲が挙げられる。また、液状の内服用医薬品の場合であれば、前記アミラーゼが0.003~1,000U/mL、好ましくは0.03~500U/mL、より好ましくは0.03~300U/mL、より一層好ましくは0.15~150U/mL、さらに好ましくは0.15~50U/mL、最も好ましくは1.5~50U/mLとなる範囲が挙げられる。
【0035】
また本発明の腸内菌叢改善剤を飼料又はペットフードに使用する場合、本発明の腸内菌叢改善剤を単独で又は他の飼料成分と組み合わせて所望の形態に調整して、腸内菌叢改善効果を奏する飼料又はペットフードとして提供される。飼料又はペットフードに使用される飼料成分としては、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦等の穀類;ふすま、米ぬか等のぬか類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の粕類;脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉等の動物性飼料類;ビール酵母等の酵母類;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム類;ビタミン類;アミノ酸類;糖類等が挙げられる。
【0036】
本発明の腸内菌叢改善剤を飼料又はペットフードとして使用する場合、飼料又はペットフードに対する該剤の配合割合については、飼料又はペットフードの形態や種類、適用対象となる動物の種類等に応じて異なるが、例えば、前記アミラーゼが0.003~1,000U/g、好ましくは0.03~500U/g、より好ましくは0.03~300U/g、より一層好ましくは0.15~150U/g、さらに好ましくは0.15~50U/g、最も好ましくは1.5~50U/gとなる範囲が挙げられる。
【0037】
2.その他の態様
前述するように、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼは、腸内菌叢を改善する作用がある。従って、本発明は、更に、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼを腸内菌叢の改善が必要とされる者に経口適用する、腸内菌叢の改善方法;腸内菌叢の改善処置に使用される、アスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼ;並びに、腸内菌叢改善剤の製造のためのアスペルギルス属に属する微生物由来のアミラーゼの使用を提供する。これらの発明における具体的態様については、前記「1.腸内菌叢改善剤」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0038】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0039】
試験例1:アスペルギルス・オリゼ由来アミラーゼが腸内菌叢に及ぼす影響
SDラット(オス、3週齢、株式会社広島実験動物研究所より入手)を用いて、アスペルギルス・オリゼ由来アミラーゼ製剤であるビオザイムA(天野エンザイム)の摂取が腸内菌叢に及ぼす影響を調べた。実験は、対照群と実施群の2群に分け、各群5匹のラットを用いた。それぞれの群について表1に示す飼料を14日間自由に摂取させた。
【0040】
なお、実験に使用したビオザイムAは、下記特性のアスペルギルス・オリゼ由来のα-アミラーゼが約20重量%含まれている粉末状製剤である。また、ビオザイムAに含まれる総タンパク質当たりのα-アミラーゼ含量は70重量%以上であり、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動で確認する限り、中性プロテアーゼは含まれていないことが確認されている。
(ビオザイムAに含まれるα-アミラーゼの特性)
(1)作用
デンプン、グリコーゲン等の多糖のα-1,4結合をランダムに加水分解する。作用様式はエンド型である。
(2)至適pH
pH5.0付近である。
(3)至適温度
50℃付近である。
(4)分子量
SDS-PAGEによる測定で45,000±5,000ダルトンである。
【0041】
【表1】
【0042】
飼料摂取14日後に各群のSDラットの盲腸内容物量を求めると共に、SDラットの盲腸内容物中細菌を表2に示すプライマーを使用してリアルタイムPCRで解析し、腸内のビフィズス菌(Bifidobacterium spp.)と乳酸菌(Lactobacillus spp.)の菌数を計測した。
【0043】
【表2】
得られた結果を表3に示す。食餌量は群間の差異が見られなく、これにより群間のエネルギー摂取量は同等であり正確な群間比較ができると言える。また、対照群に比べて実施群の方が、腸内のビフィズス菌及び乳酸菌の菌数が共に高値であった。即ち、アスペルギルス属由来アミラーゼの摂取により、ビフィズス菌及び乳酸菌の増殖が促進され、腸内菌叢が改善されることが確認された。また、盲腸内容物は、対照群に比べて実施群の方が高値であり、この結果は、アスペルギルス属由来アミラーゼの摂取により腸内環境が改善されたことを支持している。
【0044】
【表3】
【配列表】
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