(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】腸内菌叢改善剤
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20220513BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20220513BHJP
A23L 33/18 20160101ALI20220513BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20220513BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20220513BHJP
A61P 37/00 20060101ALI20220513BHJP
C12N 9/62 20060101ALN20220513BHJP
C12Q 1/689 20180101ALN20220513BHJP
【FI】
A61K38/48
A23L2/00 F
A23L33/18
A61P1/00
A61P3/00
A61P37/00
C12N9/62 ZNA
C12Q1/689 Z
(21)【出願番号】P 2018500232
(86)(22)【出願日】2017-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2017005986
(87)【国際公開番号】W WO2017142080
(87)【国際公開日】2017-08-24
【審査請求日】2020-01-30
(31)【優先権主張番号】P 2016028942
(32)【優先日】2016-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000216162
【氏名又は名称】天野エンザイム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】黒田 学
(72)【発明者】
【氏名】山口 庄太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 範久
【審査官】渡邉 潤也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-004760(JP,A)
【文献】国際公開第2012/022745(WO,A1)
【文献】特開2012-188372(JP,A)
【文献】GOMI Katsuya, et al.,Cloning and Nucleotide Sequence of the Acid Protease-encoding Gene (pepA) from Aspergillus oryzae,Biosci. Biotech. Biochem.,1993年,vol.57, no.7,pp.1095-1100
【文献】第68回日本栄養・食糧学会大会講演要旨集,2014年04月30日,286頁,3L-02a
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00
A23L 33/00
A23L 2/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(1)~(3)の少なくとも1種のポリペプチドからなるプロテアーゼを有効成分とする、腸内菌叢改善剤。
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性が80%以上であり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の内服用医薬品。
【請求項3】
請求項1に記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の食品用添加剤。
【請求項4】
請求項1に記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の飲食品。
【請求項5】
以下の(1)~(3)の少なくとも1種のポリペプチドからなるプロテアーゼの、腸内菌叢改善剤の製造のための使用。
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性が80%以上であり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させ、腸内菌叢を改善できる腸内菌叢改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腸内環境と各種疾患の因果関係が盛んに研究されており、腸内環境の改善が各種疾患の予防又は改善に有効であることが明らかにされている。腸内には、乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌と、大腸菌等の悪玉菌が混在しており、善玉菌が優勢な菌叢を形成することが健全な腸内環境を形成する上で重要である。
【0003】
従来、プロバイオティックスやプレバイオティックス等が開発され、善玉菌を優勢にして腸内菌叢を改善する素材が種々提案されているが、アミラーゼやプロテアーゼ等の消化酵素の投与によっても、腸内菌叢を改善できることが報告されている。例えば、非特許文献1には、アミラーゼ、プロテアーゼ、及びキシラナーゼからなる特定のブレンド酵素を飼料と共に給餌した豚において、大腸内で乳酸桿菌の菌数が増加し、大腸菌の菌数が減少したことが報告されている。また、非特許文献2には、バシラス・アミロリクエファシエンス由来のアミラーゼ、バシラス・ズブチリス由来のプロテアーゼ、及びトリコデルマ由来のキシラナーゼからなる特定のブレンド酵素(Nopcozyme II; Diasham Resources Pte Ltd.)を飼料と共に給餌した豚において、乳酸桿菌の菌数が増加し、サルモネラや大腸菌の菌数が減少したことが報告されている。
【0004】
このように、従来、腸内菌叢を改善できる酵素製剤としては、アミラーゼ、プロテアーゼ、及びキシラナーゼからなる特定のブレンド酵素が知られているが、これらの酵素の内、どの酵素が腸内菌叢の改善に寄与しているかについては明らかにされていない。また、このようなブレンド酵素の使用は、酵素製造のコストの上昇を招くという欠点もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Yi et al., Asian Astralas. J. Anim. Sci., 2013, 26: 1181-1188
【文献】Zhang et al., J. Amin. Sci., 2014, 92: 2063-2069
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、健康増進に関する関心の高まりを受けて、善玉菌を優勢にして腸内菌叢を改善する新たな素材の開発が望まれているが、酵素を利用した腸内菌叢改善剤については、従来報告されている酵素製剤以外で、どのような酵素が有効であるかについては類推すらし得ないのが現状であった。
【0007】
このような状況の下、本発明の目的は、酵素を使用して、乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させ、腸内菌叢を改善できる腸内菌叢改善剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、配列番号1に示すアミノ酸配列のポリペプチドからなるプロテアーゼには、腸内で乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させ、優れた腸内菌叢改善効果を奏し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 以下の(1)~(3)の少なくとも1種のポリペプチドからなるプロテアーゼを有効成分とする、腸内菌叢改善剤。
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性が80%以上であり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
項2. 項1に記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の内服用医薬品。
項3. 項1に記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の食品用添加剤。
項4. 項1に記載の腸内菌叢改善剤を含む、腸内菌叢改善用の飲食品。
項5. 以下の(1)~(3)の少なくとも1種のポリペプチドからなるプロテアーゼを腸内菌叢の改善が必要とされる者に経口適用する、腸内菌叢の改善方法。
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性が80%以上であり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
項6. 腸内菌叢の改善処置に使用される、以下の(1)~(3)の少なくとも1種のポリペプチドからなるプロテアーゼ。
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性が80%以上であり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
項7. 以下の(1)~(3)の少なくとも1種のポリペプチドからなるプロテアーゼの、腸内菌叢改善剤の製造のための使用。
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性が80%以上であり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特定のプロテアーゼを使用することにより、乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌の菌数を増加させ、腸内菌叢を改善できるので、腸内環境の健全化、健全な腸内環境の保持、腸内環境が不健全になることが一因となって生じる疾患・症状の予防又は治療に有効である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.腸内菌叢改善剤
本発明の腸内菌叢改善剤は、特定のプロテアーゼを有効成分とすることを特徴とする。以下、本発明の腸内菌叢改善剤について詳述する。
【0012】
[プロテアーゼ]
本発明の腸内菌叢改善剤は、以下の(1)~(3)の少なくとも1種のポリペプチドからなるプロテアーゼを有効成分として使用する。このように、特定のプロテアーゼを選択し、これを使用することにより、腸内の乳酸菌やビフィズス菌等の善玉菌を増加させ、腸内菌叢を効果的に改善することが可能になる。
(1)配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド。
(2)配列番号1に示すアミノ酸配列において、1個又は数個のアミノ酸が置換、付加、挿入又は欠失されてなり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性が80%以上であり、且つ、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
【0013】
前記(1)に示すポリペプチドは、アスペルギルス・オリゼ由来の酸性プロテーゼであり、前記(2)及び(3)に示すポリペプチドは、前記(1)に示すポリペプチドの変異体である。
【0014】
前記(2)のポリペプチドにおいて、導入されるアミノ酸の改変は、置換、付加、挿入、及び欠失の中から1種類の改変のみ(例えば置換のみ)を含むものであってもよく、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。前記(2)のポリペプチドにおいて、導入される置換、付加、挿入又は欠失されるアミノ酸は、1個又は数個であればよく、例えば、1~81個、好ましくは1~48個、又は1~32個、更に好ましくは1~16個、1~10個、又は1~8個、特に好ましくは1~3個、1又は2個或いは1個が挙げられる。
【0015】
また、前記(3)のポリペプチドにおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性は、80%以上であればよいが、好ましくは85%以上、好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、特に好ましくは99%以上が挙げられる。
【0016】
ここで、前記(3)のポリペプチドおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列に対する配列同一性とは、配列番号1に示すアミノ酸配列と比較して算出される配列同一性である。また、「配列同一性」とは、BLAST PACKAGE[sgi32 bit edition,Version 2.0.12;available from National Center for Biotechnology Information(NCBI)]のbl2seq program(Tatiana A.Tatsusova,Thomas L.Madden,FEMS Microbiol.Lett.,Vol.174,p247-250,1999)により得られるアミノ酸配列の同一性の値を示す。パラメーターは、Gap insertion Cost value:11、Gap extension Cost value:1に設定すればよい。
【0017】
また、前記(2)及び(3)のポリペプチドにおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列に対してアミノ酸置換が導入されている場合、導入されるアミノ酸置換の好適な一態様として保存的置換が挙げられる。即ち前記(2)及び(3)のポリペプチドにおける置換としては、例えば、置換前のアミノ酸が非極性アミノ酸であれば他の非極性アミノ酸への置換、置換前のアミノ酸が非荷電性アミノ酸であれば他の非荷電性アミノ酸への置換、置換前のアミノ酸が酸性アミノ酸であれば他の酸性アミノ酸への置換、及び置換前のアミノ酸が塩基性アミノ酸であれば他の塩基性アミノ酸への置換が挙げられる。
【0018】
前記(2)及び(3)のポリペプチドにおいて、「配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドと同等のプロテアーゼ活性を有する」とは、下記条件でプロテアーゼ活性を測定した際に、前記(1)のポリペプチドとプロテアーゼ活性が同等(即ち、前記(1)のポリペプチドのプロテアーゼ活性を100%とした場合に、プロテアーゼ活性が80~120%程度を示すこと)であることを意味する。
(プロテアーゼの活性の測定法)
まず、0.6重量%カゼイン溶液(pH3.0)5mLを試験管にとり37℃に保温する。続いて、プロテアーゼ活性の測定対象となるサンプルを含む酵素溶液(溶媒は水を使用)1mLを加えて37℃で正確に10分間おいた後、0.44mol/Lトリクロロ酢酸溶液5mLを加え、反応を停止させる。37℃で30分間おいたのち、ろ紙ろ過して得られたろ液2mLを別の試験管にとり、0.55mol/L炭酸ナトリウム5mL、3倍希釈フォリン試液1mLを順に加える。37℃で30分間おいた後に吸収波長660nmにおける吸光度を測定する。ブランク操作は、トリクロロ酢酸溶液添加後に酵素溶液を加える。また別途10~40μg/mLのチロジン溶液を用いて、先述のろ液に対する操作と同様の操作をすることによりチロジン検量線を作成する。本条件下、1分間にチロジン1μgに相当するフォリン試液呈色物質の増加をもたらす酵素量を1Uとする。算出には以下式を用いる。
【数1】
【0019】
前記(1)~(3)のポリペプチドは、当該ポリペプチドを産生するアスペルギルス・オリゼを培養する方法によって得ることができ、また公知の遺伝子工学的手法によって得ることもできる。
【0020】
[プロテアーゼの適用量]
本発明の腸内菌叢改善剤の適用量については、該剤が使用される製品の種類、用途、期待される効果、適用形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、成人1日当たり前記プロテアーゼの摂取又は投与量として、0.1~3,000mg、好ましくは1~2000mg、より好ましくは1~1000mg、より一層好ましくは2~500mg、さらに好ましくは2~150mg、最も好ましくは5~100mgが挙げられる。
【0021】
[腸内菌叢改善剤の用途]
本発明の腸内菌叢改善剤は、前記プロテアーゼの作用によって、腸内でビフィズス菌及び乳酸菌等の善玉菌の菌数を増加させ、善玉菌が優勢な菌叢を形成させることができるので、腸内環境の健全化、健全な腸内環境の保持等の目的で使用される。特に、本発明の腸内菌叢改善剤は、腸内でビフィドバクテリウム属細菌及びラクトバシスル属細菌の菌数を増加させる作用に優れているので、ビフィドバクテリウム属細菌及びラクトバシスル属細菌の腸内菌数増加剤として使用することもできる。
【0022】
また、本発明の腸内菌叢改善剤は、善玉菌が優勢な菌叢を形成させることにより腸内環境の健全化が図られるので、腸内環境が不健全になることが一因となって生じる疾患や症状の予防又は治療の目的で使用することもできる。このような疾患や症状としては、例えば、免疫力の低下、大腸ガン、アレルギー疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、肥満、炎症性腸疾患等が挙げられる。
【0023】
[腸内菌叢改善剤の使用形態]
本発明の腸内菌叢改善剤は、経口摂取又は経口投与により経口適用される。本発明の腸内菌叢改善剤は、経口摂取又は経口投与され、腸内に到達すると、腸内菌叢を改善する作用を発揮するので、飲食品、内服用医薬品、飼料、ペットフード等の各種製品に配合して使用することができる。
【0024】
また、本発明の腸内菌叢改善剤を前記各種製品に配合する場合、当該製品には、必要に応じて、本発明の腸内菌叢改善剤と共に、プロバイオティクス及び/又はプレバイオティクスが含まれていてもよい。
【0025】
プロバイオティクスとして使用される微生物としては、例えば、乳酸菌、ビフィズス菌、納豆菌等が挙げられる。乳酸菌としては、具体的には、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・アシドフィリス、ラクトバチルス・プランタルム等のラクトバチルス属乳酸菌;エンテロコッカス・フェーカリス、エンテロコッカス・フェーシウム、エンテロコッカス・ヒラエ等のエンテロコッカス属乳酸菌;ストレプトコッカス・ボビス、ストレプトコッカス・サーモフィラス等のストレプトコッカス属乳酸菌等が挙げられる。また、ビフィズス菌としては、具体的には、ビフィドバクテリウム・アドレッセンティス、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・シュードロンガム、ビフィドバクテリウム・サーモフィラム等が挙げられる。これらのプロバイオティクスは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
また、プレバイオティクスとしては、例えば、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、ラクチュロース等が挙げられる。これらのプレバイオティクスは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
また、本発明の腸内菌叢改善剤が配合される製品の剤型は、固形状、半固形状、液状等のいずれであってもよく、当該製品の種類や用途に応じて適宜設定される。
【0028】
本発明の腸内菌叢改善剤を飲食品に使用する場合、前記プロテアーゼを、そのまま又は他の食品素材や添加成分と組み合わせて所望の形態に調整して、腸内菌叢改善用の飲食品として提供される。このような飲食品としては、一般の飲食品の他、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品、病者用食品等が挙げられる。これらの飲食品の形態として、特に制限されないが、例えば、錠剤、顆粒、粉剤、カプセル、ソフトカプセル等のサプリメント;栄養ドリンク、果汁飲料、炭酸飲料、乳酸飲料等の飲料等が例示される。
【0029】
本発明の腸内菌叢改善剤を飲食品に使用する場合、飲食品に対する該剤の配合量については、飲食品の形態等に応じて異なるが、例えば、サプリメントの場合であれば、前記プロテアーゼが0.03~1,000mg/g、好ましくは0.3~700mg/g、より好ましくは0.3~350mg/g、より一層好ましくは0.6~170mg/g、さらに好ましくは0.6~80mg/g、最も好ましくは1.5~50mg/gとなる範囲が挙げられる。また、例えば、飲料の場合であれば、前記プロテアーゼが0.0003~10mg/mL、好ましくは0.003~7mg/mL、より好ましくは0.003~3.5mg/mL、より一層好ましくは0.006~1.7mg/mL、さらに好ましくは0.006~0.8mg/mL、最も好ましくは0.015~0.5mg/mLとなる範囲が挙げられる。
【0030】
更に、本発明の腸内菌叢改善剤を飲食品の分野で使用する場合、本発明の腸内菌叢改善剤を単独で、又は他の成分と組み合わせて、腸内菌叢改善用の食品用添加剤として提供することもできる。
【0031】
また、本発明の腸内菌叢改善剤を内服用医薬品に使用する場合、本発明の腸内菌叢改善剤を単独で、又は他の薬理活性成分、薬学的に許容される基剤や添加剤等と組み合わせて所望の形態に調整して、腸内菌叢改善効果を奏する内服用医薬品として提供される。このような医薬品の形態としては、特に制限されないが、具体的には、錠剤、顆粒剤、粉剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤、シロップ剤、液剤等の経口投与製剤が挙げられる。
【0032】
内服用医薬品の製造に使用される基剤や添加剤としては、例えば、水、アルコール等の水性基剤、油性基材、賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、滑沢剤、清涼化剤、pH調整剤、増粘剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、界面活性剤、乳化剤、可溶化剤、溶解補助剤、香料、防腐剤等が挙げられる。
【0033】
本発明の腸内菌叢改善剤を内服用医薬品として使用する場合、内服用医薬品に対する該剤の配合割合については、内服用医薬品の形態等に応じて、前述する適用量を充足する範囲で適宜設定すればよいが、例えば、固形状又は半固形状の内服用医薬品の場合であれば、前記プロテアーゼが0.03~1,000mg/g、好ましくは0.3~700mg/g、より好ましくは0.3~350mg/g、より一層好ましくは0.6~170mg/g、さらに好ましくは0.6~80mg/g、最も好ましくは1.5~50mg/gとなる範囲が挙げられる。また、液状の内服用医薬品の場合であれば、前記プロテアーゼが0.0003~10mg/mL、好ましくは0.003~7mg/mL、より好ましくは0.003~3.5mg/mL、より一層好ましくは0.006~1.7mg/mL、さらに好ましくは0.006~0.8mg/mL、最も好ましくは0.015~0.5mg/mLとなる範囲が挙げられる。
【0034】
また本発明の腸内菌叢改善剤を飼料又はペットフードに使用する場合、本発明の腸内菌叢改善剤を単独で又は他の飼料成分と組み合わせて所望の形態に調整して、腸内菌叢改善効果を奏する飼料又はペットフードとして提供される。飼料又はペットフードに使用される飼料成分としては、例えば、トウモロコシ、小麦、大麦、ライ麦等の穀類;ふすま、米ぬか等のぬか類;コーングルテンミール、コーンジャムミール等の粕類;脱脂粉乳、ホエー、魚粉、骨粉等の動物性飼料類;ビール酵母等の酵母類;リン酸カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム類;ビタミン類;アミノ酸類;糖類等が挙げられる。
【0035】
本発明の腸内菌叢改善剤を飼料又はペットフードとして使用する場合、飼料又はペットフードに対する該剤の配合割合については、飼料又はペットフードの形態や種類、適用対象となる動物の種類等に応じて異なるが、例えば、前記プロテアーゼが0.00067~6.7mg/g、好ましくは0.0067~6.7mg/g、更に好ましくは0.0067~0.67mg/gとなる範囲が挙げられる。
【0036】
2.その他の態様
前述するように、前記プロテアーゼは、腸内菌叢を改善する作用がある。従って、本発明は、更に、前記プロテアーゼを腸内菌叢の改善が必要とされる者に経口適用する、腸内菌叢の改善方法;腸内菌叢の改善処置に使用される、前記プロテアーゼ;並びに、前記プロテアーゼの腸内菌叢改善剤の製造のための使用を提供する。これらの発明における具体的態様については、前記「1.腸内菌叢改善剤」の欄に記載の通りである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0038】
試験例1:配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドが腸内菌叢に及ぼす影響
1.プロテアーゼの調製
配列番号1に示すアミノ酸配列のポリペプチドからなるプロテアーゼは、生産菌である微生物を固体培養法で培養して得られた麹抽出液から調製した。具体的には、小麦ふすまからなる固体培養培地にて、アスペルギルス・オリゼを25±5℃にて約3日間培養した。更に、培養後の麹を水に浸漬させることでポリペプチドを抽出し、ケイソウ土ろ過により麹を除いて、ポリペプチド溶液を得た。次いで、ポリペプチド溶液を限外ろ過膜にて濃縮した後に、脱塩によりポリペプチド粗精製液を得た。ポリペプチド粗精製液をメンブランフィルターろ過にて除菌した後、噴霧乾燥機にて噴霧乾燥することで粉末状の粗精製ポリペプチドを得た。更に、この粗精製ポリペプチドを、順にイオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、脱塩カラムクロマトグラフィー、及び凍結乾燥の精製工程に供し、精製ポリプチド粉末を得た。また、得られた精製ポリペプチドをSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動及びCBB染色に供し、確認されたポリペプチドのバンドについて、酵素処理した後にLC-MS/MS解析し、配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドであることを確認した。
【0039】
2.ラットを用いた腸内菌叢の改善効果の評価
SDラット(オス、3週齢、株式会社広島実験動物研究所より入手)を用いて、配列番号1に示すアミノ酸配列のポリペプチドからなるプロテアーゼの摂取が腸内菌叢に及ぼす影響を調べた。実験は、対照群1及び2と実施群1及び2の4群に分け、対照群1は8匹、対照群2は4匹、実施群1及び2は4匹のラットを用いた。それぞれの群について表1に示す飼料を14日間自由に摂取させた。
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飼料摂取14日後にSDラットの盲腸内容物中細菌を表2に示すプライマーを使用してリアルタイムPCRで解析し、腸内のビフィズス菌(Bifidobacterium spp.)と乳酸菌(Lactobacillus spp.)の菌数を計測した。
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3.結果
得られた結果を表3に示す。対照群1及び2に比べて実施群1及び2の方が、腸内のビフィズス菌及び乳酸菌の菌数が共に高値であった。即ち、配列番号1に示すアミノ酸配列のプロテアーゼの摂取により、ビフィズス菌及び乳酸菌の増殖が促進され、腸内菌叢が改善されることが確認された。また、単なるペプチドの投与ではなく、酵素活性のあるプロテアーゼを摂取することで、腸内菌叢が改善されることが確認された。
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【配列表】