(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】光ファイバ保持部材及び光ファイバ保持部材への光ファイバの配置方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/24 20060101AFI20220513BHJP
【FI】
G02B6/24
(21)【出願番号】P 2018044429
(22)【出願日】2018-03-12
【審査請求日】2020-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】森 健二
(72)【発明者】
【氏名】大池 瑞記
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-024337(JP,U)
【文献】特開2017-191211(JP,A)
【文献】実開平03-018505(JP,U)
【文献】特開2005-164865(JP,A)
【文献】実開昭62-079209(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2015/0063766(US,A1)
【文献】特開2005-258129(JP,A)
【文献】中国実用新案第201126484(CN,Y)
【文献】特開2003-322761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
G02B 6/255
G02B 6/36 - 6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ同士の接続を行うための光ファイバ保持部材であって、
光ファイバが配置される本体部と、
前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、
を具備し、
前記蓋部の下面の少なくとも一部には、光ファイバの押さえ部が設けられ、
前記本体部の光ファイバ設置面には、複数のV溝が形成され、
前記本体部の
、光ファイバの接続が行われる側である先端側から
後端側に向かって、前記V溝のピッチが
小さくなり、
前記蓋部は、前記本体部の後端部近傍を押圧する第1の押さえ部が設けられる第1の蓋部と、前記第1の押さえ部よりも、前記本体部の先端側を押圧可能な第2の押さえ部が設けられる第2の蓋部とを有し、前記第1の蓋部と前記第2の蓋部は別体であり、
前記第2の蓋部は、閉じた状態で、前記本体部に対して、前記V溝に略平行に移動可能であり、
前記第1の蓋部の先端部は、前記本体部の先端部に位置し、
前記第2の蓋部は、前記第1の蓋部の前記第1の押さえ部と、前記第1の蓋部の先端部との間に配置され、前記第1の蓋部の前記第1の押さえ部と、前記第1の蓋部の先端部との間を移動可能であり、前記第1の蓋部の先端部の下面側には凹部が形成され、前記第2の蓋部を前記本体部の先端方向に移動させた際に、前記第2の蓋部の一部が、前記凹部に嵌りこみ、前記第2の蓋部が前記第1の蓋部で保持されることを特徴とする光ファイバ保持部材。
【請求項2】
前記第2の蓋部を前記本体部の先端方向に移動させた際に、前記第2の蓋部と前記第1の蓋部の後端部との間に挿入されるスペーサを具備することを特徴とする請求項
1記載の光ファイバ保持部材。
【請求項3】
前記本体部の先端側に
隣接して配置され、前記本体部の先端側における前記V溝のピッチと略同一のピッチのV溝を有する補助部材を具備することを特徴とする請求項1
または請求項
2に記載の光ファイバ保持部材。
【請求項4】
請求項
1記載の光ファイバ保持部材への光ファイバの配置方法であって、
複数の光ファイバを、少なくとも前記本体部の後端部側における前記V溝に配置して、前記第1の蓋部と前記第2の蓋部とを閉じ、前記第2の押さえ部で光ファイバを押圧した状態で、前記第2の蓋部を前記本体部の先端側に移動させて光ファイバを前記V溝の全長にわたって配置することを特徴とする光ファイバ保持部材への光ファイバの配置方法。
【請求項5】
前記第2の蓋部を前記本体部の先端方向に移動させた後に、前記第2の蓋部と前記第1の蓋部の後端部との間にスペーサを挿入することを特徴とする請求項
4記載の光ファイバ保持部材への光ファイバの配置方法。
【請求項6】
請求項
3記載のファイバ保持部材への光ファイバの配置方法であって、
前記補助部材を前記本体部の先端側に
隣接して配置し、
複数の光ファイバを、前記本体部および前記補助部材のそれぞれの前記V溝に配置し、
前記補助部材において、光ファイバを押さえた状態で、前記蓋部を閉じ、光ファイバを前記本体部における前記V溝の全長にわたって配置することを特徴とする光ファイバ保持部材への光ファイバの配置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数本の光ファイバを、一括して保持することが可能な光ファイバ保持部材等に関する。
【背景技術】
【0002】
多量のデータを高速で伝送するための光ファイバケーブルには、ケーブルへの収納や作業の簡易化のため、多心光ファイバ心線が用いられている。光ファイバ心線の接続等を行う際には、光ファイバを保持するための光ファイバ保持部材が使用されるが、多心光ファイバ心線の各光ファイバを一括して接続等を行うためには、複数本の光ファイバを一括して保持する必要がある。
【0003】
このような光ファイバ保持部材としては、本体の長手方向に多心光ファイバ心線の全幅に対応する溝を形成し、溝に多心光ファイバ心線を配置した状態で蓋を閉じることで、蓋の内面に配置された凸部によって多心光ファイバ心線が押圧されて保持される光ファイバ保持部材がある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、多心光ファイバ心線は、各光ファイバ同士が互いに接触した状態で一体化される。すなわち、多心光ファイバ心線のピッチ(隣接する光ファイバの中心軸同士の間隔)は、おおむね、多心光ファイバ心線を構成する光ファイバの外径と略一致する。このため、多心光ファイバ心線の幅は、光ファイバの外径と本数とで決定される。
【0006】
このような多心光ファイバ心線を保持する従来の光ファイバ保持部材は、多心光ファイバ心線全体の幅方向の位置を規制すれば、各光ファイバの位置を規制することができる。このため、従来の光ファイバ保持部材では、多心光ファイバ心線の全幅に応じた溝を形成することで、各光ファイバの位置を規制することができた。
【0007】
一方、従来の多心光ファイバ心線は、250μm径の光ファイバで構成されることが一般的であった。すなわち、多くは250μmピッチで光ファイバが整列されていた。しかし、近年、より光ファイバの高密度化のため、200μmピッチの多心光ファイバ心線が使用されている。
【0008】
このような200μmピッチの多心光ファイバ心線同士を接続するためには、200μmピッチ用の光ファイバ保持部材が用いられる。すなわち、200μmピッチで整列された多心光ファイバ心線の幅に応じた溝が形成された光ファイバ保持部材が用いられる。
【0009】
しかし、従来使用されてきた250μmピッチの多心光ファイバ心線と200μmピッチの多心光ファイバ心線とを接続する場合がある。このため、250μmピッチの多心光ファイバ心線と200μmピッチの多心光ファイバ心線などのように、異なるピッチの多心光ファイバ心線同士を接続可能な光ファイバ保持部材が望まれている。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、ピッチの変換が可能であり、確実に多心光ファイバ心線を保持することが可能な光ファイバ保持部材等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、光ファイバ同士の接続を行うための光ファイバ保持部材であって、光ファイバが配置される本体部と、前記本体部に対して開閉可能な蓋部と、を具備し、前記蓋部の下面の少なくとも一部には、光ファイバの押さえ部が設けられ、前記本体部の光ファイバ設置面には、複数のV溝が形成され、前記本体部の、光ファイバの接続が行われる側である先端側から後端側に向かって、前記V溝のピッチが小さくなり、前記蓋部は、前記本体部の後端部近傍を押圧する第1の押さえ部が設けられる第1の蓋部と、前記第1の押さえ部よりも、前記本体部の先端側を押圧可能な第2の押さえ部が設けられる第2の蓋部とを有し、前記第1の蓋部と前記第2の蓋部は別体であり、前記第2の蓋部は、閉じた状態で、前記本体部に対して、前記V溝に略平行に移動可能であり、前記第1の蓋部の先端部は、前記本体部の先端部に位置し、前記第2の蓋部は、前記第1の蓋部の前記第1の押さえ部と、前記第1の蓋部の先端部との間に配置され、前記第1の蓋部の前記第1の押さえ部と、前記第1の蓋部の先端部との間を移動可能であり、前記第1の蓋部の先端部の下面側には凹部が形成され、前記第2の蓋部を前記本体部の先端方向に移動させた際に、前記第2の蓋部の一部が、前記凹部に嵌りこみ、前記第2の蓋部が前記第1の蓋部で保持されることを特徴とする光ファイバ保持部材である。
【0015】
前記第2の蓋部を前記本体部の先端方向に移動させた際に、前記第2の蓋部と前記第1の蓋部の後端部との間に挿入されるスペーサを具備してもよい。
【0016】
前記本体部の先端側に隣接して配置され、前記本体部の先端側における前記V溝のピッチと略同一のピッチのV溝を有する補助部材を具備してもよい。
【0017】
第1の発明によれば、光ファイバ設置面において、後端部におけるピッチよりも、先端部におけるピッチが広くなるようにピッチの異なるV溝が形成される。すなわち、光ファイバ保持部材の先端部においては、光ファイバ同士を所定の間隔で保持することができる。このため、例えば、200μmピッチの多心光ファイバ心線を250μmピッチに変換して保持することができる。
【0018】
また、蓋部が第1の蓋部と第2の蓋部に分割され、それぞれ独立して開閉可能とすることで、光ファイバ保持部材の後端側の多心光ファイバ心線を第1の蓋部を閉じて押さえた後、先端側の所定のピッチでV溝に配置された光ファイバを抑えることができる。このため、光ファイバをV溝に容易に配置することができる。
【0019】
特に、第2の蓋部を、V溝に沿って移動可能とすることで、まず、第1の蓋部近傍において第2の蓋部で光ファイバを抑えることができるため、光ファイバを各V溝に配置させ、その状態から本体部の先端側に向けて第2の蓋部を移動させることで、光ファイバを先端方向に向かってV溝に誘導しながら配置することができる。このため、確実に光ファイバをV溝の全長にわたって配置することができる。
【0020】
また、第2の蓋部を本体部の先端側に移動させた状態で、第2の蓋部が第1の蓋部の下面側に配置された凹部に嵌まり込むことで、第2の蓋部が第1の蓋部で保持され、光ファイバを押圧した状態で保持することができる。
【0021】
また、この状態で第1の蓋部と第2の蓋部との間にスペーサを配置することで、第2の蓋部が後方に移動することを防止することができる。
【0022】
また、蓋部を閉じる前に、本体部の先端側で光ファイバを所定のピッチで保持可能な補助部材で光ファイバを仮押さえすることで、蓋部を閉じる際に光ファイバが位置ずれを起こすことを抑制することができる。
【0023】
第2の発明は、第1の発明にかかるファイバ保持部材への光ファイバの配置方法であって、複数の光ファイバを、少なくとも前記本体部の後端部側における前記V溝に配置して、前記第1の蓋部と前記第2の蓋部とを閉じ、前記第2の押さえ部で光ファイバを押圧した状態で、前記第2の蓋部を前記本体部の先端側に移動させて光ファイバを前記V溝の全長にわたって配置することを特徴とする光ファイバ保持部材への光ファイバの配置方法である。
【0024】
この場合、前記第2の蓋部を前記本体部の先端方向に移動させた後に、前記第2の蓋部と前記第1の蓋部の後端部との間にスペーサを挿入してもよい。
【0025】
第2の発明によれば、第2の蓋部をV溝に沿って移動可能とすることで、光ファイバを先端方向に向かってV溝に誘導しながら配置することができる。このため、確実に光ファイバをV溝の全長にわたって配置することができる。
【0026】
また、この状態で第1の蓋部と第2の蓋部との間にスペーサを配置することで、第2の蓋部が後方に移動することを防止することができる。
【0027】
第3の発明は、ファイバ保持部材への光ファイバの配置方法であって、前記補助部材を前記本体部の先端側に隣接して配置し、複数の光ファイバを、前記本体部および前記補助部材のそれぞれの前記V溝に配置し、また、第2の発明は、第1の発明にかかる前記補助部材において、光ファイバを押さえた状態で、前記蓋部を閉じ、光ファイバを前記本体部における前記V溝の全長にわたって配置することを特徴とする光ファイバ保持部材への光ファイバの配置方法である。
【0028】
第3の発明によれば、蓋部を閉じる前に、本体部の先端側で光ファイバを所定のピッチで保持可能な補助部材で光ファイバを仮押さえすることで、蓋部を閉じる際に光ファイバが位置ずれを起こすことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ピッチの変換が可能であり、確実に多心光ファイバ心線を保持することが可能な光ファイバ保持部材等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図4】(a)は
図3のC部の部分断面、(b)は
図3のD部の部分断面。
【
図7】蓋部5aを閉じた状態の光ファイバ保持部材1aを示す斜視図。
【
図8】蓋部5bを閉じた状態の光ファイバ保持部材1aを示す斜視図。
【
図9】蓋部5bを移動させた状態の光ファイバ保持部材1aを示す斜視図。
【
図10】(a)は
図8のG-G線断面図、(b)は
図9のH-H線断面図。
【
図11】(a)、(b)は、スペーサ19を取り付ける状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態にかかる光ファイバ保持部材1について説明する。
図1は、光ファイバ保持部材1を示す斜視図であり、
図2は、光ファイバ保持部材1を示す平面図である。光ファイバ保持部材1は、主に本体部3、蓋部5、押さえ部7等から構成される。
【0032】
本体部3は、光ファイバが配置される部位であり、略直方体の部材である。なお、本体部3の長手方向(保持対象の多心光ファイバ心線の軸方向)であって、多心光ファイバ心線の接続等が行われる側(図中矢印B方向)を光ファイバ保持部材1(本体部3)の先端側と称し、その逆側(図中矢印A方向)を光ファイバ保持部材1(本体部3)の後端側と称する。また、本体部3の光ファイバが配置される面内で、該長手方向に垂直な方向を本体部3の幅方向とする。
【0033】
本体部3の幅方向の一方の側方には、本体部3に対してヒンジにより開閉可能な蓋部5が設けられる。本体部3、蓋部5は例えば金属製である。本体部3の蓋部5との対向面には磁石9が配置される。蓋部5を本体部3に対して閉じると、磁石9によって、蓋部5が閉じた状態で維持される。蓋部5は、閉じた状態で蓋部5の裏面と本体部3の上面とが略平行となるように調整される。なお、長手方向に複数の蓋部5を備えていてもよい。
【0034】
蓋部5の下面(本体部3との対向面)の少なくとも一部には、光ファイバを押さえる押さえ部7が長手方向の所定の範囲にわたって形成される。押さえ部7は、蓋部5の内面から所定の量だけ突出する。押さえ部7は、本体部3上に配置される光ファイバを押圧して保持する部材である。なお、押さえ部7は、例えば樹脂製等であり、光ファイバを傷つけない部材で構成される。
【0035】
本体部3の上面(蓋部5との対向面)には、多心光ファイバ心線を構成する各光ファイバが配置される光ファイバ設置面13が形成される。本体部3の光ファイバ設置面13の上面には長手方向に沿って複数のV溝11が形成される。
【0036】
図3は、V溝11の拡大図であり、
図4(a)は、
図3のC部の部分断面、
図4(b)は、
図3のD部の部分断面である。V溝11の本体部3の後端側(図中右側)のピッチ(
図4(a)のE)は、本体部3の後端側(図中右側)のV溝11のピッチ(
図4(b)のF)よりも狭い。すなわち、本体部3の後端側から先端側に向かって、V溝11のピッチが大きくなる。例えば、
図4(a)のEは200μmであり、
図4(b)のFは250μmである。
【0037】
このように、本体部3の後端側のV溝11においては、例えば、光ファイバ15同士が互いに接触する。すなわち、光ファイバ15の外径が光ファイバ15のピッチと略一致する。一方、本体部3の先端側のV溝11においては、光ファイバ15は互いに離れて配置される。この際、光ファイバ15は、V溝11のピッチによって位置が設定される。
【0038】
なお、それぞれのV溝11は一直線状に形成されてもよいが、
図3に示したように、後端部近傍と先端部近傍に、長手方向に平行なストレート部11a、11cを形成し、中間部に徐々にピッチが変化するテーパ部11bを形成してもよい。すなわち、ストレート部11a、テーパ部11b、ストレート部11cの境界において、V溝11が屈曲してもよい。
【0039】
また、V溝11は、必ずしも断面形状がV字状である物に限られず、
図4(a)、
図4(b)に示したように下面に平坦面を有してもよい。また、V溝11は、本体部3の全長にわたって形成されてもよいが、図示したように、本体部3の後端部近傍は、従来の様に、多心光ファイバ心線の全幅に対応する一つ(一体)の溝であってもよく、この場合には、長手方向の途中から先端までの間にV溝11が形成される。
【0040】
次に、光ファイバ保持部材1への多心光ファイバ心線の配置方法について説明する。前述したように、例えば200μmピッチの多心光ファイバ心線を構成する各光ファイバを、それぞれV溝11上に配置する。次に、蓋部5を閉じることで、各光ファイバがV溝11に配置された状態で、押さえ部7によって上方から押さえつけられて保持される。
【0041】
なお、各光ファイバをV溝11に配置した後、蓋部5を閉じる際に光ファイバの位置がずれる恐れがある。例えば、光ファイバがV溝11から外れる恐れがある。このような場合には、
図5に示すように、補助部材21を用いてもよい。すなわち、光ファイバ保持部材1は、別途補助部材21を具備してもよい。
【0042】
補助部材21は、本体部3の先端側に配置され、本体部3の先端側におけるV溝11のピッチと略同一のピッチのV溝23を有する。なお、補助部材21は、本体部3とは別体で構成される。このため、補助部材21は、本体部3に対する位置決め機構が設けられる。図示した例では、平面視において、補助部材21の凹部と本体部3の先端の凸部とが嵌合することで、補助部材21と本体部3との幅方向の位置が合わせられる。
【0043】
この場合、まず、本体部3の先端側に補助部材21を配置する。この際、本体部3のV溝11と補助部材21のV溝23が連続する。なお、V溝23は、V溝11の先端部におけるピッチで互いに略平行に形成される。
【0044】
次に、多心光ファイバ心線(図示せず)の各光ファイバを、本体部3のV溝11と補助部材21のV溝23に配置し、補助部材21上の光ファイバを指で押さえる。この状態で、蓋部5を閉じることで、蓋部5が完全に閉じるまで、本体部3の先端部近傍の各光ファイバの位置ずれを防止することができる。すなわち、各光ファイバを押さえた状態で蓋部5を閉じることができ、光ファイバを本体部3におけるV溝11の全長にわたって配置することができる。なお、補助部材21にも他の蓋部を設けて、当該蓋部の下面の押さえ部によって各光ファイバを押さえてもよい。
【0045】
このようにして多心光ファイバ心線が保持された光ファイバ保持部材1を用いれば、容易に、ピッチの異なる多心光ファイバ心線同士を接続することができる。例えば、200μmピッチの多心光ファイバ心線を、光ファイバ保持部材1の先端において250μmピッチで配置する。また、別の従来の光ファイバ保持部材には、250μmピッチの多心光ファイバ心線を保持する。これらを融着機にセットして融着を行うことで、異なるピッチの多心光ファイバ心線同士を一括して融着することができる。
【0046】
以上、本実施の形態によれば、本体部3に複数のV溝11が形成されるため、多心光ファイバ心線の各光ファイバをV溝11に配置することができる。このため、各光ファイバをV溝11のピッチで整列させることができる。すなわち、V溝11によって、光ファイバの径よりも大きなピッチで整列させることができる。したがって、V溝11のピッチを先端に行くにつれて広くすることで、光ファイバのピッチを広げて保持することができる。このため、ピッチの異なる多心光ファイバ心線同士を接続することが可能となる。
【0047】
また、補助部材21を用いることで、蓋部5を閉じる際に各光ファイバを押さえておくことができるため、蓋部5を閉じる際に各光ファイバがV溝11から外れることを抑制することができる。
【0048】
次に、第2の実施形態について説明する。
図6は、第2の実施形態の光ファイバ保持部材1aを示す斜視図である。なお、以下の説明において、光ファイバ保持部材1と同一の機能を奏する構成については、
図1~
図5と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0049】
光ファイバ保持部材1aは、光ファイバ保持部材1と略同様の構成であるが、蓋部5a、5bが用いられる点で異なる。光ファイバ保持部材1aの蓋部は、第1の蓋部である蓋部5aと、第2の蓋部である蓋部5bからなる。蓋部5aの下面の少なくとも一部には、第1の押さえ部である押さえ部7aが設けられる。押さえ部7aは、本体部3の後端部近傍を押圧可能である。
【0050】
蓋部5aよりも本体部3の先端側には蓋部5bが配置される。蓋部5bの下面の少なくとも一部には、第2の押さえ部である押さえ部7bが設けられる。押さえ部7bは、本体部3の先端側を押圧可能である。すなわち、押さえ部7bは、押さえ部7aよりも本体部3の先端側を押圧可能である。
【0051】
蓋部5aは、枠状であり、前述したように、後端部側には押さえ部7aが設けられる。蓋部5aの先端側の下面には凹部17が形成される。凹部17は下面の一部が切り欠かれ部位である。なお、凹部17は、後方に向けて開口する。
【0052】
蓋部5a、5bは、それぞれ独立して開閉可能である。なお、蓋部5bは、蓋部5aの外側に位置し、蓋部5bは、蓋部5aが閉じている状態でのみ開閉可能である。また、蓋部5bは、閉じた状態で、本体部3に対して、本体部3の長手方向に(V溝11に略平行に)移動可能である。より詳細には、蓋部5bは、蓋部5aの押さえ部7aと、蓋部5aの先端部との間を移動可能である。
【0053】
次に、光ファイバ保持部材1aへの多心光ファイバ心線の配置方法について説明する。まず、多心光ファイバ心線(図示せず)の複数の光ファイバを、光ファイバ設置面13に配置し、少なくとも本体部3の後端部側におけるV溝11に配置して蓋部5aを閉じる。
【0054】
図7は、蓋部5aのみを閉じた状態を示す図である。この状態では、多心光ファイバ心線は、押さえ部7aによって押さえられる。すなわち、押さえ部7aにおいては、多心光ファイバ心線は、そのピッチのまま押さえ部7aで押さえられる。なお、押さえ部7aは、V溝11の一部に掛かっていてもよく、V溝11の後方(多心光ファイバ心線の幅に応じた一体の溝)のみを押圧してもよい。
【0055】
図8は、さらに蓋部5bを閉じた状態を示す図であり、
図10(a)は、
図8のG-G線断面図である。蓋部5bを閉じると、蓋部5bの下面の押さえ部7bで各光ファイバを押さえることができる。すなわち、蓋部5aと蓋部5bとを閉じると、押さえ部7a、7bで光ファイバを押圧した状態となる。
【0056】
この際、押さえ部7bは、蓋部5aの押さえ部7aに近い位置で各光ファイバを押さえることができる。このため、各光ファイバは、多心光ファイバ心線のピッチとほぼ同一のピッチのV溝11へ効率よく案内されて、それぞれのV溝11へ各光ファイバを配置することができる。すなわち、V溝11の後端近傍において、押さえ部7bで各光ファイバをV溝11に対して押さえることができる。
【0057】
なお、蓋部5bの一部は、閉じた状態で蓋部5aの一部と接触し、蓋部5bが所定以上に強く閉じられることがない、例えば、図示したように、蓋部5bの先端部に段部を形成し、当該段部が蓋部5aとの対向面と接触することで、蓋部5bの閉じ量が規制される。
【0058】
図9は、蓋部5bを本体部3の先端側にスライド移動させた状態を示す図であり、
図10(b)は、
図9のH-H線断面図である。蓋部5bを先端側に移動させると、各光ファイバは、後方から先端に向かって徐々に押さえられる部位が移動する。前述したように、V溝11の後方は、多心光ファイバ心線のピッチとほぼ一致するため、比較的容易にV溝11へ誘導可能であるが、V溝11の先端側はピッチが広がるため、各光ファイバを広げながらV溝11へ配置する必要がある。
【0059】
しかし、押さえ部7bを後方から先端側にV溝11に沿って移動させることで、V溝11の後端側において各V溝11へ配置された各光ファイバを、順次V溝11に沿ってピッチを広げながら、V溝11へ誘導することができる。したがって、V溝11の全長にわたって各光ファイバを配置し、V溝11の先端側で各光ファイバを保持することができる。
【0060】
また、蓋部5bの先端部は、本体部3の最先端まで移動させると、蓋部5aの先端側の一部が、凹部17に嵌まり込む。このため、蓋部5bが外面側から蓋部5aによって押さえられ、保持される。したがって、蓋部5bが誤って開くことが抑制される。したがって、各光ファイバの先端部近傍が押さえられた状態を保持することができ、各光ファイバを確実にV溝11のピッチで保持することができる。
【0061】
この状態で、各光ファイバの切断や接続を行うことができるが、さらに、必要に応じて
図11(a)に示すようなスペーサ19を用いてもよい。スペーサ19は、蓋部5bを本体部3の先端方向に移動させた後に、蓋部5bと蓋部5aの後端部との間に挿入される。
図11は、スペーサ19を蓋部5aと蓋部5bとの隙間に挿入した状態を示す図である。
【0062】
スペーサ19の長さは、蓋部5a(押さえ部7a側)と蓋部5bとの間の隙間とほぼ一致する。このため、スペーサ19を取り付けると、蓋部5bが後方へ移動することを防止することができる。すなわち、蓋部5bが先端側に固定され、確実に各光ファイバを本体部3の先端部近傍で押さえ部7bで押さえることができる。
【0063】
第2の実施形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、蓋部5a、5bを分割することで、まず、蓋部5aの押さえ部7aで多心光ファイバ心線をそのピッチのまま押さえることができる。さらに、その状態でV溝11に対して蓋部5bの押さえ部7bで押さえることで、各光ファイバをそれぞれのV溝11へ効率良く配置することができる。
【0064】
また、各光ファイバを押さえながら蓋部5bを移動可能とすることで、各光ファイバをV溝11に沿って徐々にピッチを変えながらV溝11の全長にわたって各光ファイバを配置することができる。すなわち、ピッチが徐々に変化し、先端側ではピッチが広くなるV溝11に対して、確実に各光ファイバを誘導して配置することができる。
【0065】
また、蓋部5bの先端部の一部を蓋部5aの背面側に形成された凹部17に嵌め込むことで、蓋部5bを蓋部5aで押さえることができるため、蓋部5bが誤って開くことを抑制することができる。なお、蓋部5aは、磁石9によって閉じた状態が保持されるため、蓋部5aが開くことを抑制することができる。
【0066】
また、蓋部5bを先端側に移動させた後、蓋部5aと蓋部5bとの間に生じた隙間にスペーサ19を取り付けることで、蓋部5bが後方に移動してしまうことを抑制することができる。このため、確実に本体部3の先端部において、各光ファイバを押さえた状態を保持することができる。
【0067】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
例えば、多心光ファイバ心線は、200μmピッチである場合に限られず、狭いピッチの多心光ファイバ心線を広いピッチに変換する場合には、それに応じたV溝11を形成すれば、いずれのピッチの多心光ファイバ心線にも適用可能である。
【0069】
また、V溝11の本数は特に限定されず、2本以上の光ファイバからなる多心光ファイバ心線に適用可能である。また、スペーサ19は、光ファイバ保持部材1aとは別体として説明したが、本体部3、又は蓋部5等と一体の部材として具備していても良い。
【符号の説明】
【0070】
1、1a………光ファイバ保持部材
3………本体部
5、5a、5b………蓋部
7、7a、7b………押さえ部材
9………磁石
11、23………V溝
11a、11c………ストレート部
11b………テーパ部
13………光ファイバ設置面
15………光ファイバ
17………凹部
19………スペーサ
21………補助部材