(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-12
(45)【発行日】2022-05-20
(54)【発明の名称】自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C10M 169/06 20060101AFI20220513BHJP
C10M 115/08 20060101ALN20220513BHJP
C10M 143/00 20060101ALN20220513BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20220513BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20220513BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20220513BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20220513BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20220513BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20220513BHJP
C10N 50/10 20060101ALN20220513BHJP
【FI】
C10M169/06
C10M115/08
C10M143/00
C10N20:02
C10N20:04
C10N30:00 C
C10N30:00 Z
C10N30:02
C10N40:00 Z
C10N40:02
C10N50:10
(21)【出願番号】P 2018551664
(86)(22)【出願日】2017-11-15
(86)【国際出願番号】 JP2017041092
(87)【国際公開番号】W WO2018092806
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2016223641
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390029805
【氏名又は名称】THK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 剛
(72)【発明者】
【氏名】関口 浩紀
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 昌丈
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】河合 弘太郎
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-044265(JP,A)
【文献】国際公開第2010/150726(WO,A1)
【文献】特開2008-255272(JP,A)
【文献】特開2007-112998(JP,A)
【文献】特開2011-148908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 169/00
C10M 171/02
C10M 115/08
C10M 143/00
C10N 20/02
C10N 20/04
C10N 30/00
C10N 30/02
C10N 40/02
C10N 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
40℃動粘度が10~50mm
2/sである基油(A1)及び40℃動粘度が200~700mm
2/sである基油(A2)を含む混合基油(A)と、ウレア系増ちょう剤(B)と、ポリマー(C)とを含
有し、
前記ポリマー(C)が、炭素数2~20のオレフィンの単独重合体又は共重合体を含み、
前記ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)が、2,500~100,000であり、
前記ポリマー(C)の含有量が、グリース組成物の全量基準で、0.1~20質量%であり、
前記基油(A1)と前記基油(A2)との質量比[(A1):(A2)]が、1:1~1:0.1である、自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物。
【請求項2】
前記基油(A1)と前記基油(A2)との質量比[(A1):(A2)]が、1:
0.5~1:
0.15である請求項1に記載の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物。
【請求項3】
前記基油(A1)の粘度指数が110以上である請求項1又は2に記載の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物。
【請求項4】
グリース組成物の液体成分の粘度指数が120以上である請求項1~3の何れか1項に記載の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物。
【請求項5】
前記ポリマー(C)の含有量が、グリース組成物の全量基準で
1~20質量%である請求項1~
4の何れか1項に記載の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物。
【請求項6】
前記グリース組成物中のモリブデン原子含有量が、グリース組成物の全量基準で100質量ppm未満である請求項1~
5の何れか1項に記載の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物。
【請求項7】
(1)40℃動粘度が10~50mm
2/sである基油(A1)及び40℃動粘度が200~700mm
2/sである基油(A2)を含む混合基油(A)と、ウレア系増ちょう剤(B)とを混合し、グリース化する工程
、並びに、
(2)前記工程(1)で得られた組成物に、ポリマー(C)を混合する工程
を含む、自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物の製造方法であって、
前記ポリマー(C)が、炭素数2~20のオレフィンの単独重合体又は共重合体を含み、
前記ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)が、2,500~100,000であり、
前記ポリマー(C)の含有量が、グリース組成物の全量基準で、0.1~20質量%であり、
前記基油(A1)と前記基油(A2)との質量比[(A1):(A2)]が、1:1~1:0.1である、自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受、摺動部、接合部等の潤滑部を有する工作機械用の潤滑剤としては主に潤滑油が使用されていた。
【0003】
しかし、潤滑油は圧送可能であるものの、過剰な量を垂れ流して使用するため使用量が多くなり、工作機械のランニングコストが増えるという問題がある。加えて、潤滑油を用いた場合、潤滑油が飛散して機械を汚損したり、潤滑油のミストが発生して作業環境を悪化させたりする問題がある。
また、自動給脂装置を備えた機器にグリース組成物を用いる場合、圧送性が極めて重要となる。自動給脂装置とは、ポンプ等により、多数の潤滑部に適時適量のグリース組成物を供給する装置である。自動給脂装置の配管は数百メートルにおよぶことがあり、グリース組成物が配管内をスムーズに流動すること(圧送性に優れること)は極めて重要となる。
【0004】
このため、使用量を低減でき、環境改善を図ることができ、かつ圧送性に極めて優れるグリースが望まれている。工作機械用の潤滑剤として使用可能なグリースとして、例えば特許文献1の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、有機モリブデン等の基油に不溶の固体粉末を含み、圧送性に優れたグリース組成物が開示されている。しかしながら、特許文献1のグリース組成物は、半液状のグリースであるが故に、自動給脂装置から圧送され潤滑部に塗布されたグリースが離油しやすく、離油した油が潤滑油と同様の問題(機械の破損、作業環境の悪化)を生じさせる懸念がある。また、クーラント(冷却液)を使用する工作機械の潤滑部に特許文献1のグリース組成物が塗布された場合には、耐水性及び耐クーラント性が不十分であることが懸念される。
以上のように、従来のグリース組成物は、圧送性、離油、耐水性及び耐クーラント性を同時に解決できないものであった。特に、「圧送性」と「離油の抑制」とはトレードオフの関係であり、同時に解決することは困難であると考えられる。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、圧送性に優れながら、離油を抑制し、さらには、耐水性及び耐クーラント性が良好である、自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[2]の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物及びその製造方法を提供する。
[1]40℃動粘度が10~50mm2/sである基油(A1)及び40℃動粘度が200~700mm2/sである基油(A2)を含む混合基油(A)と、ウレア系増ちょう剤(B)と、ポリマー(C)とを含む、自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物。
[2]下記工程(1)及び(2)を含む、自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物の製造方法。
(1)40℃動粘度が10~50mm2/sである基油(A1)及び40℃動粘度が200~700mm2/sである基油(A2)を含む混合基油(A)と、ウレア系増ちょう剤(B)とを混合し、グリース化する工程。
(2)前記工程(1)で得られた組成物に、ポリマー(C)を混合する工程。
【発明の効果】
【0009】
本発明の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物は、圧送性に優れながら、離油を抑制し、さらには、耐水性及び耐クーラント性を良好にすることができる。また、本発明の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物の製造方法は、前述した効果を有するグリース組成物を簡易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物]
本実施形態の自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物は、40℃動粘度が10~50mm2/sである基油(A1)及び40℃動粘度が200~700mm2/sである基油(A2)を含む混合基油(A)と、ウレア系増ちょう剤(B)と、ポリマー(C)とを含むものである。
なお、以下、「自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物」のことを「自動給脂用グリース組成物」と称する場合がある。
【0011】
<混合基油(A)>
混合基油(A)は、40℃動粘度が10~50mm2/sである基油(A1)及び40℃動粘度が200~700mm2/sである基油(A2)を含むものである。
なお、本実施形態において、40℃動粘度及び粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定することができる。
【0012】
本実施形態の自動給脂用グリース組成物は、該混合基油(A)と、後述するウレア系増ちょう剤(B)及びポリマー(C)とを含むことにより、圧送性に優れながら、離油を抑制し、さらには、耐水性及び耐クーラント性を良好にすることができる。
自動給脂用グリース組成物が基油(A1)を含まない場合、圧送性を良好にすることができない。また、自動給脂用グリース組成物が基油(A2)を含まない場合、離油を抑制することができず、また、耐水性及び耐クーラント性を良好にすることができない。
【0013】
基油(A1)は、40℃動粘度が10~50mm2/sの基油である。基油(A1)の40℃動粘度が10mm2/s未満の場合、離油を抑制することができず、さらには、耐水性及び耐クーラント性を良好にすることができない。また、基油(A1)の40℃動粘度が50mm2/sを超える場合、圧送性を向上することができない。
基油(A1)の40℃動粘度は、10~40mm2/sであることが好ましく、10~30mm2/sであることがより好ましく、15~30mm2/sであることがさらに好ましい。
【0014】
基油(A1)としては、40℃動粘度が上記範囲のものであれば特に制限されず、鉱油及び/又は合成油から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0015】
基油(A1)としての鉱油としては、溶剤精製、水添精製等の通常の精製法により得られるパラフィン基系鉱油、中間基系鉱油及びナフテン基系鉱油等;フィッシャートロプシュプロセス等により製造されるワックス(ガストゥリキッドワックス)、鉱油系ワックス等のワックスを異性化することによって製造されるワックス異性化系油;等が挙げられる。
基油(A1)としての合成油としては、炭化水素系合成油、エーテル系合成油等が挙げられる。炭化水素系合成油としては、ポリブテン、ポリイソブチレン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、エチレン-プロピレン共重合体等のα-オレフィンオリゴマー又はその水素化物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等を挙げることができる。エーテル系合成油としては、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。
【0016】
基油(A1)は、粘度指数が110以上であることが好ましく、120以上であることがより好ましく、130以上であることがさらに好ましい。基油(A1)の粘度指数を110以上とすることにより、本実施形態の効果(圧送性の向上、離油の抑制、耐水性の向上、及び耐クーラント性の向上)を生じる温度領域を広げることができる。
【0017】
基油(A2)は、40℃動粘度が200~700mm2/sの基油である。基油(A2)の40℃動粘度が200mm2/s未満の場合、離油を抑制することができない。また、基油(A1)の40℃動粘度が700mm2/sを超える場合、圧送性を向上することができない。
基油(A2)の40℃動粘度は、200~650mm2/sであることが好ましく、200~600mm2/sであることがより好ましく、300~500mm2/sであることがさらに好ましい。
【0018】
基油(A2)としては、40℃動粘度が上記範囲のものであれば特に制限されず、鉱油及び/又は合成油から選ばれる1種以上を用いることができる。
【0019】
基油(A2)としての鉱油としては、ブライトストックが挙げられる。ブライトストックとは、原油の減圧蒸留残さ油を溶剤脱れき、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水素精製して製造される高粘度基油のことをいう。
基油(A2)としての合成油としては、炭化水素系合成油、エーテル系合成油等が挙げられる。炭化水素系合成油及びエーテル系合成油の具体例は、基油(A1)と同様である。
【0020】
基油(A2)は、粘度指数が80以上であることが好ましく、90以上であることがより好ましく、100以上であることがさらに好ましい。基油(A2)の粘度指数を80以上とすることにより、本実施形態の効果(圧送性の向上、離油の抑制、耐水性の向上、及び耐クーラント性の向上)を生じる温度領域を広げることができる。
【0021】
本実施形態では、基油(A1)と基油(A2)との質量比[(A1):(A2)]が1:5~1:0.1であることが好ましい。基油(A1)が1質量部に対して基油(A2)を0.1質量部以上とすることにより、離油を抑制しやすくすることができる。また、基油(A1)が1質量部に対して基油(A2)を5質量部以下とすることにより、圧送性を良好にしやすくできる。
基油(A1)と基油(A2)との質量比[(A1):(A2)]は、1:2~1:0.1であることがより好ましく、1:1~1:0.1であることがさらに好ましく、1:0.5~1:0.15がよりさらに好ましい。
【0022】
混合基油(A)は、上述した基油(A1)及び基油(A2)以外の基油を含有していてもよい。
なお、本実施形態の効果を発現しやすくする観点からは、混合基油(A)の全量に対する基油(A1)及び基油(A2)の含有割合[(基油(A1)の含有量+基油(A2)の含有量)/混合基油(A)の全量]は、75~100質量%であることが好ましく、90~100質量%であることがより好ましく、95~100質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
自動給脂用グリース組成物中の混合基油(A)の含有量は、グリース組成物の全量基準で、好ましくは50~99質量%、より好ましくは60~95質量%、さらに好ましくは70~90質量%である。
【0024】
<ウレア系増ちょう剤(B)>
ウレア系増ちょう剤(B)は、各種の増ちょう剤の中でも、離油の抑制、並びに、耐水性及び耐クーラント性を良好にしやすい点で好ましい。
ウレア系増ちょう剤は、ウレア結合を有する化合物であればよいが、2つのウレア結合を有するジウレアが好ましく、下記一般式(b1)で表される化合物がより好ましい。
R1-NHCONH-R3-NHCONH-R2 (b1)
上記一般式(b1)中、R1及びR2は、それぞれ独立に、炭素数6~24の1価の炭化水素基を示し、R1及びR2は、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。R3は、炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を示す。
【0025】
前記一般式(b1)中のR1及びR2として選択し得る1価の炭化水素基の炭素数としては、6~24であるが、好ましくは6~20、より好ましくは6~18である。
また、R1及びR2として選択し得る1価の炭化水素基としては、飽和又は不飽和の1価の鎖式炭化水素基、飽和又は不飽和の1価の脂環式炭化水素基、1価の芳香族炭化水素基が挙げられる。これらの中でも、飽和又は不飽和の1価の鎖式炭化水素基が好ましく、また、飽和の1価の鎖式炭化水素基及び不飽和の1価の鎖式炭化水素基の混合物も好ましい。
【0026】
1価の飽和鎖式炭化水素基としては、炭素数6~24の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が挙げられ、具体的には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、オクタデセニル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
1価の不飽和鎖式炭化水素基としては、炭素数6~24の直鎖又は分岐鎖のアルケニル基が挙げられ、具体的には、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、オレイル基、ゲラニル基、ファルネシル基、リノレイル基等が挙げられる。
なお、1価の飽和鎖式炭化水素基及び1価の不飽和鎖式炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0027】
1価の飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基等のシクロアルキル基;メチルシクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、ジエチルシクロヘキシル基、プロピルシクロヘキシル基、イソプロピルシクロヘキシル基、1-メチル-プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ペンチルシクロヘキシル基、ペンチル-メチルシクロヘキシル基、ヘキシルシクロヘキシル基等の炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロアルキル基(好ましくは、炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロヘキシル基);等が挙げられる。
【0028】
1価の不飽和脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基、シクロオクテニル基等のシクロアルケニル基;メチルシクロヘキセニル基、ジメチルシクロヘキセニル基、エチルシクロヘキセニル基、ジエチルシクロヘキセニル基、プロピルシクロヘキセニル基等の炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロアルケニル基(好ましくは、炭素数1~6のアルキル基で置換されたシクロヘキセニル基);等が挙げられる。
【0029】
1価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、ナフチル基、ジフェニルメチル基、ジフェニルエチル基、ジフェニルプロピル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基等が挙げられる。
【0030】
前記一般式(b1)中のR3として選択し得る2価の芳香族炭化水素基の炭素数としては、6~18であるが、好ましくは6~15、より好ましくは6~13である。
R3として選択し得る2価の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニレン基、ジフェニルメチレン基、ジフェニルエチレン基、ジフェニルプロピレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基、エチルフェニレン基等が挙げられる。
これらの中でも、フェニレン基、ジフェニルメチレン基、ジフェニルエチレン基、又はジフェニルプロピレン基が好ましく、ジフェニルメチレン基がより好ましい。
【0031】
ウレア系増ちょう剤として用いるジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとを反応させることによって得ることができる。例えば、上述した混合基油(A)にジイソシアネートを配合し、加熱して、ジイソシアネートを溶解した組成物Aを得る工程(工程i)の後、組成物Aを加熱し撹拌しながら、混合基油(A)にモノアミンを溶解させた組成物Bを添加する工程(工程ii)を行うことにより、当該反応を実施できる。
また、ジイソシアネートとして、前記一般式(b1)中のR3で示される2価の芳香族炭化水素基に対応する基を有するジイソシアネートを用い、モノアミンとして、R1及びR2で示される1価の炭化水素基に対応する基を有するアミンを用いて、上記の方法を行うことにより、前記一般式(b1)で表される化合物を合成することができる。
【0032】
自動給脂用グリース組成物中のウレア系増ちょう剤(B)の含有量は、グリース組成物の全量基準で、好ましくは1~10質量%、より好ましくは1~8質量%、さらに好ましくは2~6質量%である。
ウレア系増ちょう剤(B)の含有量を1質量%以上とすることにより、自動給脂用グリース組成物の混和ちょう度を適度な範囲に調製し易く、取り扱い易いグリースとすることができる。また、ウレア系増ちょう剤(B)の含有量を10質量%以下とすることにより、自動給脂用グリース組成物が硬くなり過ぎることを抑制し、圧送性を良好とすることができる。また、ウレア系増ちょう剤(B)の含有量を1~10質量%とすることにより、本実施形態の効果(圧送性の向上、離油の抑制、耐水性の向上、及び耐クーラント性の向上)を得やすくできる。
【0033】
<ポリマー(C)>
本実施形態の自動給脂用グリース組成物は、さらにポリマー(C)を含む。グリース組成物がポリマー(C)を含まない場合、離油を抑制できず、さらには、耐水性、耐クーラント性を良好にできない。
【0034】
上記効果を得やすくする観点から、ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)は2,000以上であることが好ましい。なお、ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)が大き過ぎると圧送性が悪化する傾向がある。このため、ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)は2,000~1,000,000であることがより好ましく、2,500~100,000であることがさらに好ましい。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)を用いて計測されるポリスチレン換算の値を示す。
また、上記効果を得やすくする観点から、ポリマーの40℃動粘度は1,000mm2/s以上が好ましく、10,000mm2/s以上がより好ましく、10,000mm2/s以上100,000mm2/s以下がさらに好ましく、25,000mm2/s以上50,000mm2/s以下がよりさらに好ましい。
【0035】
ポリマー(C)としては、それ自体が液状のものか、混合基油(A)に溶解可能なものを用いる。このようなポリマー(C)としては、ポリ(メタ)アクリレート、ポリオレフィン等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。これらの中でもポリオレフィンが好ましい。
【0036】
ポリ(メタ)アクリレートは、下記一般式(c1)で表される(メタ)アクリレートモノマーを含む重合性モノマーの重合体である。
【化1】
【0037】
一般式(c1)中、R4は水素またはメチル基を示し、R5は炭素数1~200の直鎖状または分枝状のアルキル基を示す。R5は、好ましくは炭素数1~40のアルキル基、より好ましくは炭素数1~28のアルキル基、さらに好ましくは炭素数1~25のアルキル基である。
一般式(c1)において、R5は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、及びオクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基、ヘントリアコンチル基、ドトリアコンチル基、トリトリアコンチル基、テトラコンチル基、ペンタトリアコンチル基、ヘキサトリコンチル基、オクタトリアコンチル基、テトラコンチル基等が例示でき、これらは直鎖状でも分枝状でもよい。
【0038】
ポリオレフィンとしては、炭素数2~20のオレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。
炭素数2~20のオレフィンとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、3-メチル-1-ブテン、4-フェニル-1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ペンテン、3,4-ジメチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、5-メチル-1-ヘキセン、6-フェニル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、及び1-エイコセン等が挙げられる。
【0039】
ポリオレフィンの具体例としては、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0040】
ポリマー(C)の含有量は、グリース組成物の全量基準で、好ましくは0.1~20質量%、より好ましくは1~20質量%、さらに好ましくは3.5~20質量%、よりさらに好ましくは4.0~15質量%である。
ポリマー(C)の含有量を0.1質量%以上とすることにより、離油を抑制しやすくすることができ、さらには、耐水性及び耐クーラント性をより良好にしやすくできる。また、ポリマー(C)の含有量を20質量%以下とすることにより、圧送性が低下することを抑制できる。
【0041】
<添加剤>
本実施形態の自動給脂用グリース組成物は、一般的なグリースに配合される添加剤を含有していてもよい。
このような添加剤としては、酸化防止剤、防錆剤、極圧剤、清浄分散剤、腐食防止剤、金属不活性剤等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。
【0042】
酸化防止剤としては、例えば、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキル化-α-ナフチルアミン等のアミン系酸化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤;等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、アミン化合物等が挙げられる。
極圧剤としては、例えば、リン系化合物、硫黄・リン系化合物等が挙げられる。
清浄分散剤としては、例えば、コハク酸イミド、ボロン系コハク酸イミド等の無灰分散剤が挙げられる。
腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、チアゾール化合物等が挙げられる。
金属不活性剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられる。
【0043】
自動給脂用グリース組成物中における各添加剤の含有量は、グリース組成物の全量基準で、通常0~10質量%、好ましくは0~7質量%、より好ましくは0~5質量%、より更に好ましくは0~2質量%である。
【0044】
<金属成分>
本実施形態では、自動給脂用グリース組成物中のモリブデン原子含有量がグリース組成物の全量基準で100質量ppm未満であることが好ましく、50質量ppm未満であることがより好ましく、10質量ppm未満であることがさらに好ましい。
自動給脂用グリース組成物中のモリブデン原子含有量を100質量ppm未満とすることにより、ゴム製シール材が膨潤すること等による機器の動作不良を抑制できる。
【0045】
また、本実施形態では、自動給脂用グリース組成物中の固体潤滑剤の含有量がグリース組成物の全量基準で5質量%未満であることが好ましく、1質量%未満がより好ましく、0.1質量%未満がさらに好ましい。自動給脂用グリース組成物中の固体潤滑剤の含有量を5質量%未満とすることにより、圧送性を良好にできる。
【0046】
固体潤滑剤としては、基油に不溶な有機系・無機系の材料を用いることができ、例えば、固体状の耐荷重添加剤、無機系又は有機系固体粉末が挙げられる。具体的には、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、シアヌル酸メラミン(MCA)、二硫化モリブデン、グラファイトが挙げられる。固体状の耐荷重添加剤としては有機モリブデンやジアルキルジチオカルバミン酸金属塩が挙げられる。また、無機系の固体粉末としては、酸化亜鉛や酸化チタンなどの金属酸化物や金属粉末などが挙げられ、有機系の固体粉末としては、樹脂の固体粉末や食品の固体粉末などが挙げられる。
【0047】
<自動給脂用グリース組成物の物性>
自動給脂用グリース組成物の液体成分の40℃動粘度は、70~200mm2/sであることが好ましく、80~170mm2/sであることがより好ましく、90~150mm2/sであることがさらに好ましい。
グリース組成物の液体成分の40℃動粘度を70mm2/s以上とすることにより、離油を抑制しやすくできる。また、グリース組成物の液体成分の40℃動粘度を200mm2/s以下とすることにより、圧送性を良好にしやすくできる。
なお、本明細書において、「自動給脂用グリース組成物の液体成分」とは、混合基油(A)と、混合基油(A)に溶解したポリマー(C)等の添加剤とから構成される、常温(20℃)で液状を示す成分を意味するものとする。自動給脂用グリース組成物の液体成分は、例えば、自動給脂用グリース組成物を遠心分離することにより抽出できる。
【0048】
なお、基油(A1)、基油(A2)及びポリマー(C)の何れかを含まないグリース組成物の液体成分の40℃動粘度を上記の範囲としても、圧送性の向上、離油の抑制、耐水性の向上、及び耐クーラント性の向上を同時に達成することはできない。
【0049】
自動給脂用グリース組成物の液体成分の粘度指数は、120以上であることが好ましく、130以上であることがより好ましく、140以上であることがさらに好ましい。グリース組成物の液体成分の粘度指数を120以上とすることにより、本実施形態の効果(圧送性の向上、離油の抑制、耐水性の向上、及び耐クーラント性の向上)を生じる温度領域を広げることができる。
【0050】
本実施形態の自動給脂用グリース組成物は、混和ちょう度が300~500であることが好ましく、350~500であることがより好ましく、400~500であることがさらに好ましい。混和ちょう度を300以上とすることにより、圧送性をより良好にすることができる。また、混和ちょう度を500以下とすることにより、グリース状を維持できる。
なお、本明細書において、グリースの混和ちょう度は、JIS K2220:2013に準拠して測定された値を意味する。
【0051】
本実施形態の自動給脂用グリース組成物は、基油(A1)及び基油(A2)を含む混合基油(A)と、ウレア系増ちょう剤(B)とポリマーを含むことにより、圧送性を良好にすることと、離油を抑制するトレードオフの問題を解消している。つまり、本実施形態の自動給脂用グリース組成物は、圧送性をより良好にするために混和ちょう度を300以上としても、離油を抑制することができる。
【0052】
<グリース組成物の用途>
本実施形態のグリース組成物は、自動給脂装置を備えた機器用のグリース組成物として用いられる。特に、自動給脂装置を備えた機器内に、さらにクーラント供給装置を備えた機器用のグリース組成物として好適に用いられる。
各種の機器としては、軸受、摺動部、接合部等の潤滑部を有する工作機械、建設機械、射出成形機、プレス機械、クレーン、マシニングセンタ及びロボット等が挙げられる。
【0053】
自動給脂装置とは、ポンプ等により、多数の潤滑部に適時適量のグリース組成物を供給する装置である。自動給脂装置の配管は数百メートルにおよぶことがあるため、自動給脂装置に用いられるグリース組成物は、配管内をスムーズに流動すること(圧送性に優れること)が極めて重要となる。
【0054】
[自動給脂用グリース組成物の製造方法]
本実施形態の自動給脂用グリース組成物の製造方法は、下記工程(1)及び(2)を含む製造方法が挙げられる。
(1)40℃動粘度が10~50mm2/sである基油(A1)及び40℃動粘度が300~700mm2/sである基油(A2)を含む混合基油(A)と、ウレア系増ちょう剤(B)とを混合し、グリース化する工程。
(2)前記工程(1)で得られた組成物に、ポリマー(C)を混合する工程。
【0055】
ウレア系増ちょう剤(B)は、工程(1)の過程中に合成してもよい。例えば、上述した工程i、工程iiの手段を行うことにより、混合基油(A)中でジウレア化合物を合成することができる。
【0056】
工程(1)では、攪拌翼等を用いた攪拌により、混合基油(A)とウレア系増ちょう剤(B)とを十分に混合することが好ましい。混合時の温度は、50~180℃とすることが好ましい。
また、混合基油(A)とウレア系増ちょう剤(B)とを十分に混合した後は、100~200℃で、30~90分間保持することが好ましい。
【0057】
工程(2)では、攪拌翼等を用いた攪拌により、工程(1)で得られた組成物とポリマー(C)とを十分に混合することが好ましい。
工程(2)においては、ポリマー(C)と共に、上述した添加剤を混合してもよい。
【実施例】
【0058】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
【0059】
1.測定及び評価
実施例1~4及び比較例1~5の自動給脂用グリース組成物に関して、以下の測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
1-1.基油の40℃動粘度及び粘度指数
JIS K2283:2000に準拠して、実施例及び比較例で用いた基油1~5の40℃動粘度及び粘度指数を測定した。また、実施例1~4、比較例1~4の自動給脂用グリース組成物の液体成分の40℃動粘度及び粘度指数を測定した。なお、グリース組成物の液体成分は、コクサン社製の冷却高速遠心機(商品名:H-2000B)を下記条件で運転し、グリース組成物を遠心分離して抽出した。
(運転条件)
16,500rpm、40℃、15h
【0060】
1-2.モリブデン原子含有量(Mo含有量)
ASTM D4951に準拠して、自動給脂用グリース組成物のモリブデン原子含有量(Mo含有量)を測定した。
【0061】
1-3.混和ちょう度
JIS K2220:2013に準拠して、自動給脂用グリース組成物の混和ちょう度を測定した。
【0062】
1-4.圧送性
DIN51805に準拠して、-20℃で5分間保持した後に圧力上昇させ、自動給脂用グリース組成物が押し出された時の圧力(kPa)を測定し、下記の判定基準で評価した。
(判定基準)
A:15kPa未満
B:15kPa以上30kPa未満
C:30kPa以上
【0063】
1-5.離油度
JIS K2220:2013の離油度試験方法に準拠して、自動給脂用グリース組成物から分離した油の質量割合を測定し、下記の判定基準で評価した。
(判定基準)
A:0質量%以上10質量%未満
B:10質量%以上20質量%未満
C:20質量%以上
【0064】
1-6.耐油分離性
コクサン社製の冷却高速遠心機(商品名: H-2000B)を下記条件で運転し、容器内に詰めた自動給脂用グリース組成物から分離した油の質量割合を算出し、下記の判定基準で評価した。
(試験条件)
17,800rpm、40℃、1h
(判定基準)
A:0質量%以上15質量%未満
B:15質量%以上30質量%未満
C:30質量%以上
【0065】
1-7.耐水性
JIS K2220:2013の水洗耐水度試験方法に準拠して、試験により洗い流された自動給脂用グリース組成物の質量割合を測定し、下記の判定基準で評価した。
(判定基準)
A:0質量%以上2質量%未満
B:2質量%以上4質量%未満
C:4質量%以上
【0066】
1-8.耐クーラント性
下記条件によるクーラント吹付け試験で判定した。
(試験方法)
SPCC-SD鋼板に自動給脂用グリース組成物を2mm厚さに塗布した。鋼板を45°に傾け、グリース組成物の塗布面に対して、スプレー(吐出量:60ml/min、空気圧:0.24MPa、吹付け距離:150~200mm、ノズル口径:1.0mm)でクーラント(出光興産社製の商品名「ダフニーアルファクールEW」の希釈液、濃度10質量%)を上下左右まんべんなく5分間吹き付けた後のグリース組成物の状態を目視で評価した。初期段階からグリース組成物の状態の変化がないものを「A」、クーラントによってグリース組成物が流され塗膜表面が乱れたものを「C」とした。試験時の温度は30℃とした。
【0067】
2.グリース組成物の調製又は準備
[実施例1]
反応容器に、基油1(基油(A1)に相当)半量と、基油3(基油(A2)に相当)全量と、ジイソシアネート全量とをとり、60~80℃に加温した。別容器に、基油1(基油(A1)に相当)の半量とステアリルアミン全量をとり、60~80℃に加温し、これを反応容器に加え攪拌した。発熱反応の為、反応物の温度は上昇するが、約60分間、この状態で攪拌を続け、反応を充分に行った後、昇温し130~170℃で約60分間保持し、室温まで冷却した。これにポリマー及び添加剤を全量加え、攪拌、分散した後、3本ロールミルで混練し、実施例1の自動給脂用グリース組成物を得た。得られたグリース組成物の配合比等を表1に示す。
【0068】
[実施例2]
グリース組成物の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして実施例2の自動給脂用グリース組成物を得た。
【0069】
[実施例3]
基油1を基油2に変更し、基油3を基油4に変更し、さらに、グリース組成物の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして実施例3の自動給脂用グリース組成物を得た。
【0070】
[実施例4]
グリース組成物の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして実施例4の自動給脂用グリース組成物を得た。
【0071】
[比較例1]
ポリマー(C)を配合せず、基油1を基油5に変更し、さらに、グリース組成物の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして比較例1の自動給脂用グリース組成物を得た。
【0072】
[比較例2]
基油1を基油5に変更し、さらに、グリース組成物の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして比較例2の自動給脂用グリース組成物を得た。
【0073】
[比較例3]
ポリマー(C)を配合せず、さらに、グリース組成物の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして比較例3の自動給脂用グリース組成物を得た。
【0074】
[比較例4]
基油3を基油5に変更し、さらに、グリース組成物の配合比を表1のように変更した以外は実施例1と同様にして比較例4の自動給脂用グリース組成物を得た。
【0075】
[比較例5]
比較例5の自動給脂用グリース組成物として、市販品のグリース組成物(リューベ社製、商品名:LHLX100、ポリマー非含有、モリブデン系極圧剤含有)を準備した。
【0076】
【0077】
表1において、基油、ウレア系増ちょう剤、ポリマーの詳細を以下に示す。
<基油>
基油1:パラフィン系鉱油(40℃動粘度が20mm2/s、粘度指数が120である基油(A1))
基油2:α-オレフィンオリゴマー(40℃動粘度が30mm2/s、粘度指数が140の基油(A1))
基油3:ブライトストック(40℃動粘度が380mm2/s、粘度指数が110である基油(A2))
基油4:α-オレフィンオリゴマー(40℃動粘度が400mm2/s、粘度指数が150の基油(A2))
基油5:パラフィン系鉱油(40℃動粘度が90mm2/s、粘度指数が110であるその他の基油)
【0078】
<ウレア系増ちょう剤>
一般式(b1)中のR1及びR2がステアリル基(オクタデシル基)、R3がジフェニルメチレン基である脂肪族ジウレア
<ポリマー>
重量平均分子量14,400のエチレンプロピレンオリゴマー(40℃動粘度が37,500mm2/s)
<添加剤混合物>
防錆剤、アミン系酸化防止剤及びリン系極圧剤を含む添加剤混合物(添加剤混合物10質量部中に、防錆剤1.5質量部、アミン系酸化防止剤6質量部、リン系極圧剤2.5質量部を含む)
【0079】
表1の結果から、基油(A1)、基油(A2)、ウレア系増ちょう剤(B)及びポリマー(C)を含む実施例1~4の自動給脂用グリース組成物は、圧送性に優れながら、離油を抑制し、さらには、耐水性及び耐クーラント性が良好であることが確認できる。また、実施例1~4の自動給脂用グリース組成物はモリブデン原子を実質的に含有しないため、ゴム製のシール材が膨潤することによる機器の動作不良を抑制できるものであった。
一方、比較例1及び2の自動給脂用グリース組成物は、基油(A1)を含まないため、圧送性が劣るものであった。
比較例1、3及び5の自動給脂用グリース組成物は、ポリマー(C)を含まないため、離油を抑制できず、さらには、耐水性及び耐クーラント性が劣るものであった。
比較例4の自動給脂用グリース組成物は、基油(A2)を含まないため、離油を抑制できず、さらには、圧送性、耐水性、耐クーラント性が劣るものであった。