(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-13
(45)【発行日】2022-05-23
(54)【発明の名称】III族窒化物結晶の製造方法
(51)【国際特許分類】
C30B 19/12 20060101AFI20220516BHJP
C30B 29/38 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
C30B19/12
C30B29/38 D
(21)【出願番号】P 2018037500
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2020-12-25
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、環境省、平成28年度未来のあるべき社会・ライフスタイルを創造する技術イノベーション事業(高品質GaN基板を用いた超高効率GaNパワー・光デバイスの技術開発とその実証)委託業務、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】森 勇介
(72)【発明者】
【氏名】今西 正幸
(72)【発明者】
【氏名】吉村 政志
(72)【発明者】
【氏名】村上 航介
(72)【発明者】
【氏名】岡山 芳央
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-012171(JP,A)
【文献】特開2005-263622(JP,A)
【文献】特開2011-073894(JP,A)
【文献】特開2017-178765(JP,A)
【文献】特許第5904421(JP,B2)
【文献】特開2012-197194(JP,A)
【文献】特開2016-160151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00 -35/00
H01L 21/208
H01L 21/28 -21/288
H01L 21/368
H01L 21/44 -21/445
H01L 29/40 -29/51
H01L 33/00
H01L 51/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、複数のIII族窒化物を、複数の種結晶として準備する種結晶準備工程と、
窒素を含む雰囲気下において、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムから選ばれる少なくとも1つのIII族元素とアルカリ金属とを含む融液に前記種結晶の表面を接触させることによって、前記III族元素と前記窒素とを前記融液中で反応させてIII族窒化物結晶を成長させる結晶成長工程と、
を含み、
前記結晶成長工程は、
前記複数の種結晶からそれぞれ断面が三角形状又は台形状の複数の第一のIII族窒化物結晶を成長させる第一の結晶成長工程と、
前記複数の第一のIII族窒化物結晶の間隙に第二のIII族窒化物結晶を成長させる第二の結晶成長工程と、
を含み、
前記第二の結晶成長工程は、前記基板の前記融液への浸漬と引き上げとを複数回繰り返すことを特徴とする、III族窒化物結晶の製造方法。
【請求項2】
前記第二の結晶成長工程は、前記第一の結晶成長工程で形成した前記第一のIII族窒化物結晶の傾斜面上に、III族窒化物結晶層を複数形成することを特徴とする、請求項1に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項3】
前記第一の結晶成長工程は、前記基板を前記融液に浸漬させることを特徴と
する、請求項1
又は2に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項4】
前記第二の結晶成長工程において、前記基板を前記融液へ浸漬させている時間が、前記基板を前記融液から引き上げている時間よりも短いことを特徴とする、請求項
1から3のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項5】
前記第二の結晶成長工程において、前記基板が前記融液の液面に対して傾斜した状態で前記基板を前記融液の液面の上下に昇降させることを特徴とする、請求項
1から4のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項6】
前記第二の結晶成長工程において、前記基板が前記融液から引き上げられている期間に、少なくとも一度は前記基板を前記融液の液面に対して傾斜させることを特徴とする、請求項
1から5のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項7】
前記第二の結晶成長工程において、前記基板が前記融液から引き上げられている期間に、前記基板上に存在する前記融液の被膜の厚みが一定量となるように制御することを特徴とする、請求項
1から6のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項8】
前記結晶成長工程は、前記第二の結晶成長工程の後に、表面が平坦な第三のIII族窒化物結晶を成長させる第三の結晶成長工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項9】
前記第三の結晶成長工程は、前記基板を前記融液に浸漬させることを特徴とする、請求項
8に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項10】
前記結晶成長工程の後に、前記III族窒化物結晶と前記基板とを前記種結晶の近傍において分離する工程をさらに含む、請求項1から
9のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項11】
前記第一の結晶成長工程は、前記複数の第一のIII族窒化物結晶が少なくとも一部の底面端部で互いに結合するまで行うことを特徴とする、請求項1から
10のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【請求項12】
前記第二の結晶成長工程は、前記複数の第一のIII族窒化物結晶が少なくとも一部の底面端部で互いに結合した後に行うことを特徴とする、請求項1から
11のいずれか一項に記載のIII族窒化物結晶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、III族窒化物結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、GaN等のIII族窒化物の結晶は、発光ダイオード等の材料として注目されている。このようなIII族窒化物の結晶の製造方法の一つとして、Na等のアルカリ金属融液(フラックス)中でIII族元素と窒素とを反応させ、結晶欠陥(転位)の少ない高品質な結晶を成長させるフラックス法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、大きなサイズのIII族窒化物結晶を得るために、サファイア基板上に有機金属気相成長法(MOCVD:Metal-Organic Chemical Vapor Deposition)等で形成したIII族窒化物層の複数の部分を種結晶として選択し、前記種結晶をアルカリ金属融液に接触させてIII族窒化物結晶を成長させる方法が開示されている(例えば、特許文献2及び3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4538596号公報
【文献】特許第4588340号公報
【文献】特許第5904421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献3に開示されている従来の製造方法を用いた場合、
図9に示したように、複数の種結晶2から成長させたIII族窒化物結晶3aを全体として結合させて成長させるため、(10-11)面などの傾斜面が表出する成長モードで成長を行う。このため、得られた角錐形状のIII族窒化物結晶3aには、結晶中への不純物の取り込みが多くなり、着色してしまうという課題があった。さらに、フラックス法で形成したIII族窒化物結晶の上にHVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法やMOCVD法を用いてデバイス製造に必要なIII族窒化物結晶層を形成する場合がある。このとき、含有する不純物量の差によって結晶格子のミスマッチが発生し、良好なIII族窒化物結晶層を形成できないという課題があった。また、フラックス法で形成したIII族窒化物結晶の表面の凹凸は比較的大きい。このため、表面の平坦なIII族窒化物結晶基板を製造するためには、表面の加工量が大きくなり、歩留り低下や製造コストの増大という課題があった。
【0005】
そこで、本開示は、表面が平坦で高品質かつ大サイズのIII族窒化物結晶の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、基板の上に複数のIII族窒化物を種結晶として準備する種結晶準備工程と、
窒素を含む雰囲気下において、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムから選ばれる少なくとも1つのIII族元素とアルカリ金属とを含む融液に前記種結晶の表面を接触させることによって、前記III族元素と前記窒素とを前記融液中で反応させてIII族窒化物結晶を成長させる結晶成長工程と、
を含み、
前記結晶成長工程は、
前記複数の種結晶からそれぞれ断面が三角形状又は台形状の複数の第一のIII族窒化物結晶を成長させる第一の結晶成長工程と、
前記複数の第一のIII族窒化物結晶の間隙に第二のIII族窒化物結晶を成長させる第二の結晶成長工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係るIII族窒化物結晶の製造方法において、結晶成長工程には、複数の第一のIII族窒化物結晶を成長させる第一の結晶成長工程と、複数の第一のIII族窒化物結晶の間隙に第二のIII族窒化物結晶を成長させる第二の結晶成長工程と、を含む。これによって、第一のIII属窒化物結晶の間隙を埋めて平坦なIII族窒化物結晶を得ることができる。また、複数の種結晶からIII族窒化物結晶を成長させて結合させるので、表面が平坦で高品質かつ大サイズのIII族窒化物結晶を製造することができる。さらに、表面が平坦なIII族窒化物結晶を製造する際の歩留り低下や製造コストの増大も抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施の形態1で用いるIII族窒化物結晶の製造装置の一例であって、基板を融液から引き上げている状態を示す概略断面図である。
【
図2】
図1のIII族窒化物結晶の製造装置において、基板を融液に浸漬している状態を示す概略断面図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法の一工程の概略断面図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法の一工程の概略断面図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法の一工程の概略断面図である。
【
図6】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法の一工程の概略断面図である。
【
図7】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法の一工程の概略断面図である。
【
図8】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法の一工程の概略断面図である。
【
図9】従来のIII族窒化物結晶の製造方法の一例の概略断面図である。
【
図10】本開示の実施の形態で用いるIII族窒化物結晶の製造装置における融液を保持する部分の他の例の融液保持機構を示す概略断面図である。
【
図11】
図10の融液保持機構に融液を保持している状態を示す概略断面図である。
【
図12】本開示の実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法における結晶成長条件と成長する結晶の断面形状との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、基板の上に、複数のIII族窒化物を、複数の種結晶として準備する種結晶準備工程と、
窒素を含む雰囲気下において、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムから選ばれる少なくとも1つのIII族元素とアルカリ金属とを含む融液に前記種結晶の表面を接触させることによって、前記III族元素と前記窒素とを前記融液中で反応させてIII族窒化物結晶を成長させる結晶成長工程と、
を含み、
前記結晶成長工程は、
前記複数の種結晶からそれぞれ断面が三角形状又は台形状の複数の第一のIII族窒化物結晶を成長させる第一の結晶成長工程と、
前記複数の第一のIII族窒化物結晶の間隙に第二のIII族窒化物結晶を成長させる第二の結晶成長工程と、
を含むことを特徴とする。
【0010】
第2の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1の態様において、前記第二の結晶成長工程は、前記第一の結晶成長工程で形成した前記第一のIII族窒化物結晶の傾斜面上に、III族窒化物結晶層を複数形成してもよい。
【0011】
第3の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1又は第2の態様において、前記第一の結晶成長工程は、前記基板を前記融液に浸漬させることを特徴とし、前記第二の結晶成長工程は、前記基板の前記融液への浸漬と引き上げとを複数回繰り返してもよい。
【0012】
第4の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第3の態様において、前記第二の結晶成長工程において、前記基板を前記融液へ浸漬させている時間が、前記基板を前記融液から引き上げている時間よりも短くてもよい。
【0013】
第5の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第3又は第4の態様において、前記第二の結晶成長工程において、前記基板が前記融液の液面に対して傾斜した状態で前記基板を前記融液の液面の上下に昇降させてもよい。
【0014】
第6の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第3又は第4の態様において、前記第二の結晶成長工程において、前記基板が前記融液から引き上げられている期間に、少なくとも一度は前記基板を前記融液の液面に対して傾斜させてもよい。
【0015】
第7の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第3又は第4の態様において、前記第二の結晶成長工程において、前記基板が前記融液から引き上げられている期間に、前記基板上に存在する前記融液の被膜の厚みが一定量となるように制御してもよい。
【0016】
第8の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1から第7のいずれかの態様において、前記結晶成長工程は、前記第二の結晶成長工程の後に、表面が平坦な第三のIII族窒化物結晶を成長させる第三の結晶成長工程をさらに含んでもよい。
【0017】
第9の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第8の態様において、前記第三の結晶成長工程は、前記基板を前記融液に浸漬させてもよい。
【0018】
上記構成によって、第三の結晶成長工程は、平坦な結晶面への成長モードであるため、得られる平坦なIII族窒化物結晶における結晶欠陥を少なくすることができる。さらに、結晶中の不純物の取り込みを抑制して着色や結晶格子ミスマッチの課題を解決することができる。
【0019】
第10の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1から第9のいずれかの態様において、前記結晶成長工程の後に、前記III族窒化物結晶と前記基板とを前記種結晶の近傍において分離する工程をさらに含んでもよい。
【0020】
第11の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1から第10のいずれかの態様において、前記第一の結晶成長工程は、前記複数の第一のIII族窒化物結晶が少なくとも一部の底面端部で互いに結合するまで行ってもよい。
【0021】
第12の態様に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、上記第1から第11のいずれかの態様において、前記第二の結晶成長工程は、前記複数の第一のIII族窒化物結晶が少なくとも一部の底面端部で互いに結合した後に行ってもよい。
【0022】
以下、本開示の実施の形態に係るIII族窒化物結晶の製造方法について、III族窒化物結晶としてGaN結晶を作製する実施の形態を例に説明する。なお、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本開示の実施の形態1で用いるIII族窒化物結晶の製造装置100の一例であって、基板11を融液12から引き上げている状態を示す概略断面図である。
図2は、
図1のIII族窒化物結晶の製造装置100において、基板11を融液12に浸漬している状態を示す概略断面図である。
図3から
図8は、実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法の各工程の概略断面図である。
【0024】
実施の形態1に係るIII族窒化物結晶の製造方法は、種結晶準備工程(
図3)と、結晶成長工程(
図4、
図5)と、を含む。種結晶準備工程では、種結晶として複数のIII族窒化物2を基板1上に準備する(
図3)。結晶成長工程では、窒素を含む雰囲気下において、ガリウム、アルミニウムおよびインジウムから選ばれる少なくとも1つのIII族元素とアルカリ金属とを含む融液12に複数の種結晶の表面を接触させる(
図2)。これによって、III族元素と窒素とを融液中で反応させてIII族窒化物結晶3、4を成長させる(
図4、
図5)。上記結晶成長工程は、第一の結晶成長工程(
図4)と、第二の結晶成長工程(
図5)と、を含む。第一の結晶成長工程では、複数の種結晶2からそれぞれ断面が三角形状又は台形状の複数の第一のIII族窒化物結晶3を成長させる(
図4)。第二の結晶成長工程では、複数の第一のIII族窒化物結晶3の間隙に複数の第二のIII族窒化物結晶4をそれぞれ成長させる(
図5)。
これによって、第一のIII属窒化物結晶の間隙を埋めて平坦なIII族窒化物結晶3、4を得ることができる。また、複数の種結晶2からIII族窒化物結晶3、4を成長させて結合させるので、表面が平坦で高品質かつ大サイズのIII族窒化物結晶3、4を製造することができる。さらに、表面が平坦なIII族窒化物結晶を製造する際の歩留り低下や製造コストの増大も抑制することができる。
【0025】
特に、第一の結晶成長工程では、基板11を融液12に浸漬させることによって、複数の種結晶2からそれぞれ断面が三角形状又は台形状の複数の第一のIII族窒化物結晶3を成長させることができる(
図2、
図4)。また、第二の結晶成長工程では、基板11の融液12への浸漬(
図2)と引き上げ(
図1)とを複数回繰り返すことによって、複数の第一のIII族窒化物結晶3の間隙に複数の第二のIII族窒化物結晶4をそれぞれ成長させることができる(
図5)。
さらに、第二の結晶成長工程の後に、表面が平坦な第三のIII族窒化物結晶を成長させる第三の結晶成長工程(
図6)をさらに含んでもよい。
【0026】
(種結晶準備工程)
結晶作製用基板として、まずサファイアからなる基板1を準備する。サファイアを用いるのは、GaNとの格子定数及び熱膨張係数の差が比較的小さいためである。サファイアの他には、例えば、SiCやGaAs、ScAlMgO4などを用いることができる。また、基板1の厚さとしては、100~3000μm程度であることが好ましく、400~1000μmであることがより好ましい。基板1の厚みが当該範囲であると、強度が十分に高く、GaN結晶の作製時に割れ等が生じ難い。また、基板1の形状は、特に制限されないが、工業的な実用性を考慮すると、直径50~200mm程度のウェハ状が好ましい。
【0027】
次に、サファイアからなる基板1上にGaN単結晶からなる薄膜(図示せず)を、MOCVD法を用いて形成する。薄膜の厚さとしては、0.5~100μm程度であることが好ましく、1~5μmであることがより好ましい。薄膜の厚みが0.5μm以上であると、形成した薄膜が良好な単結晶となり、得られるGaNの結晶に格子欠陥等が生じ難くなる。MOCVD法でサファイア上に形成したGaN薄膜の転位密度は、一般的に107/cm2~109/cm2程度である。なお、基板1と薄膜との間に、バッファ層(図示せず)を形成してもよい。バッファ層は、サファイアからなる基板1上に高品質のGaN単結晶薄膜を形成するために、サファイアとGaNとの格子定数差を緩衝させるための層である。当該バッファ層は、サファイアとGaNの格子定数に近い材料が好ましく、GaNなどのIII族窒化物からなる層とすることができる。また、バッファ層は、400℃以上700℃以下の比較的低温のMOCVD法で成長させた、アモルファスもしくは多結晶状の層であることが好ましい。このようなバッファ層を用いると、バッファ層上に形成するGaN単結晶薄膜に格子欠陥等が生じ難くなる。また、バッファ層の厚みは、10nm以上50nm以下であることが好ましく、20nm以上40nm以下であることがより好ましい。バッファ層の厚みが10nm以上であると、格子定数差の緩衝効果が発揮され、得られるGaNの結晶に格子欠陥等が生じ難くなる。一方、バッファ層の厚みが過度に厚いと、サファイアからなる基板1の結晶格子の情報が失われて良好なエピタキシャル成長ができなくなる。
【0028】
次に、GaN単結晶からなる薄膜の一部を、フォトリソグラフィーとエッチングを用いた公知の方法により除去し、複数のGaN種結晶2を形成する。GaN種結晶2の形状はドット状であることが好ましく、ドットのサイズは、10~1000μm程度であることが好ましく、50~300μmであることがより好ましい。また、ドットは、GaNの結晶方位(a軸もしくはm軸)に概ね一致するように配置され、上面から見て正三角形の頂点に配置されることが好ましい。ドットの配置は、例えば、三角格子(図示せず)である。ここで、「概ね一致する」とは、特に限定されないが、例えば、三角格子の軸と結晶方位との差が10度以下、好ましくは1度以下の状態である。さらに、ドットのピッチは、ドットサイズの1.5~10倍程度であることが好ましく、2~5倍であることがより好ましい。また、ドットの形状としては、円形もしくは六角形が好ましい。ドットのサイズ・配置・ピッチ・形状が当該範囲であると、フラックス法でのGaN結晶成長時に初期の角錐成長及びGaN結晶同士の結合がし易く、また種結晶から引き継いだ転位が効率的に低減できるという効果が得られる。なお、上記では、ドットの配置として三角格子の場合を例として挙げたが、これに限られない。ドットの配置としては、例えば、正方格子であってもよいが、III族窒化物結晶が六方晶系に属するので三角格子が好ましい。また、上記では、種結晶2の形状としてドット状を例に挙げたが、これに限られない。種結晶2の形状としては、例えばストライプ状や、ドットをネガポジ反転させた網目状であってもよい。更に、複数の種結晶2からそれぞれ成長させる複数の第一のIII族窒化物結晶の形状は、角錐状でない場合もあり得る。すなわち、フラックス法でのGaN結晶成長の初期に、種結晶2の上に厚さ方向の断面形状が三角形状又は台形状となるようなGaN結晶を成長させることで種結晶から引き継いだ転位を低減できるという効果が得られる。
【0029】
図3に、本実施の形態で用いる、複数のドット状のGaN結晶を種結晶2として備えた基板11の一例の概略断面図を示す。
【0030】
(GaN結晶成長工程)
続いて、基板11のGaN種結晶2上に、GaN結晶3、4をフラックス法により形成する。GaN結晶成長工程は、例えば、
図1及び
図2に示すIII族窒化物結晶の製造装置100を用いて、以下のように実施することができる。なお、GaN結晶成長工程は、第一のGaN結晶成長工程(
図4)と、第二のGaN結晶成長工程(
図5)と、を含む。
【0031】
(第一のGaN結晶成長工程)
図1に示すように、III族窒化物結晶製造装置100は、ステンレスや断熱材等で形成された反応室103を有し、当該反応室103内には、坩堝102が設置されている。当該坩堝102は、ボロンナイトライド(BN)や、アルミナ(Al
2O
3)等から形成されたものとすることができる。また、反応室103の周囲には、ヒータ110が配置されており、ヒータ110は、反応室103の内部、特に坩堝102内部の温度を調整できるように設計されている。また、III族窒化物結晶製造装置100内には、GaN種結晶を備えた基板11を昇降可能に保持するための基板保持機構114が設置されている。また、反応室103には、窒素ガスを供給するための窒素供給ライン113が接続されており、当該窒素供給ライン113は、原料ガスボンベ(図示せず)等と接続されている。
【0032】
GaN結晶成長の際、まず、III族窒化物結晶製造装置100の反応室103内の坩堝102に、フラックスとなるNaとIII族元素であるGaを入れる。NaとGaの投入量は、例えばモル量比で85:15~50:50程度である。このとき、必要に応じて、微量添加物を添加してもよい。なお、これらの作業を空気中で行うと、Naが酸化する可能性がある。そこで、当該作業は、Arや窒素ガス等の不活性ガスを充填した状態で行うことが好ましい。次に、反応室103内を密閉し、坩堝の温度を800℃以上1000℃以下、より好ましくは850℃以上950℃以下に調整し、さらに反応室103内に窒素ガスを送り込む。このとき、反応室103内のガス圧を1×106Pa以上1×107Pa以下、より好ましくは3×106Pa以上5×106Pa以下とする。反応室103内のガス圧を高めることで、高温で溶融したNa中に窒素が溶解しやすくなり、前記の温度及び圧力とすることによりGaN結晶が高速に成長できる。その後、Na、Ga、および微量添加物が均一に混合するまで、保持もしくは攪拌混合等を行う。保持もしくは攪拌混合は、1~50時間行うことが好ましく、10~25時間行うことがより好ましい。このような時間の保持もしくは攪拌混合を行うと、Na、Ga、および微量添加物を均一に混合できる。またこのとき、基板11が所定温度より低い、もしくは均一に混合していないNaやGaの融液12と接触すると、GaN種結晶2のエッチングや品質の悪いGaN結晶の析出などが発生する場合がある。そのため、基板保持機構114により、基板11を反応室103の上部に保持しておくことが好ましい。
【0033】
その後、
図2に示すように、基板11を融液12に浸漬させる。また、浸漬中に融液12の攪拌等を行ってもよい。融液12の攪拌は、揺動、回転などによって坩堝102を物理的に運動させてもよく、攪拌棒や攪拌羽根などを用いて融液12を攪拌してもよい。また、融液12に熱勾配を生じさせ、熱対流によって、融液12を攪拌してもよい。攪拌することにより、融液12中のGaおよびNの濃度を均一な状態に保ち、安定して結晶を成長させることができる。そして、融液12中のGaと溶解している窒素がGaN種結晶2の表面で反応して、GaN単結晶がGaN種結晶2上にエピタキシャル成長する。この状態で、一定時間にわたって融液12に浸漬して結晶成長させることで、
図4に示す断面が三角形状又は台形状、具体的には角錐形状を有する第一のGaN結晶3を得ることができる。なお、GaN結晶を角錐形状に成長させることにより、MOCVD法で形成した転位密度10
7/cm
2~10
9/cm
2程度の種結晶2から引き継ぐ転位を角錐の頂点部に集束させることができる。さらに、転位の集束と次の第二のGaN結晶成長工程とを良好に行うためには、
図4に示したように、複数の種結晶2から成長した角錐同士がその少なくとも一部の底面の端部でちょうど互いに結合する程度に第一のGaN結晶成長を行うことが好ましい。角錐同士が結合していない場合は、その部分で、次の第二のGaN結晶成長時に転位の多いGaN結晶が成長してしまうためである。そこで、次の第二のGaN結晶成長は、角錐同士の少なくとも一部の底部の端部で互いに結合した後に行うことが好ましい。第二のGaN結晶成長は、さらに角錐同士の底部の端部の結合が進行して、底部の端部がほぼ互いに結合した後に行ってもよい。
【0034】
なお、
図12は、窒素圧力条件による結晶成長方向の依存性のデータの一例を示す図である。同
図12より、フラックス法により成長するGaN結晶の断面形状は窒素圧力に依存し、低い圧力では角錐形状に、高い圧力では台形形状になることが分かる。窒素圧力は融液中に溶け込む窒素濃度に影響するため、前述の形状の変化は、融液中のGaNの過飽和度に依存していると考えることができる。過飽和度は窒素圧力だけでなく、温度にも依存し、低温では高過飽和度、高温では低過飽和度となる。そこで、第一のGaN結晶成長工程の窒素圧力及び温度は、成長するGaN結晶が角錐形状になるように、前述の範囲の中で適宜設定する。
【0035】
(第二のGaN結晶成長工程)
次に、断面が三角形状又は台形状を有する第一のGaN結晶3が成長した基板11について、
図1と
図2の状態を交互に繰り返す。つまり、基板11の融液12への浸漬(
図2)・引き上げ(
図1)を複数回繰り返して、
図5に示したように、断面が三角形状又は台形状の第一のGaN結晶3の間隙に第二のGaN結晶4を成長させる。つまり、第一のGaN結晶3の間隙を埋め込んで表面が平坦になるように、第二のGaN結晶4を成長させる。ここで、ポイントとなるのは、
図1に示すように、基板11を融液12から引き上げることである。前述したように、第一のGaN結晶3の間隙を埋め込むような成長モードを実現するには、過飽和度を大きくする必要がある。一方、過飽和度を大きくすることは、結晶成長の駆動力を高めることであり、融液12と坩堝102との界面や基板保持機構114との接触部などでGaN多結晶が大量に発生し、基板11上へのGaN単結晶の成長を阻害してしまうという課題がある。本発明者らは、融液12に浸漬した状態で、窒素圧力や温度を様々な値に変えて実験を繰り返したが、断面が三角形状又は台形状の第一のGaN結晶3の間隙を埋め込んで表面が平坦になる成長モードを実現しつつ、多結晶の発生を抑制し、良好なGaN単結晶を成長させることはできなかった。
【0036】
一方、融液12中の窒素濃度は、融液12表面から窒素が溶け込むことから、融液12表面に近いほど高いことが分かっており、高い過飽和度を実現するには、融液表面ギリギリでGaN結晶を成長させることが有効である。しかしながら、基板11を融液表面ギリギリで高精度かつ長時間保持することは、高温高圧の容器の中で、かつ結晶成長と原料消費が同時に起こる状況では、非常に難しい。そこで、本発明者らは、基板11を融液12に浸漬した後に引き上げることで、基板11の表面に融液の薄い被膜が形成されると考え、実験を行った。その結果、多結晶発生を抑制する低い過飽和度となる窒素圧力と温度条件においても、第一のGaN結晶3の間隙を埋めて表面が平坦になる成長モードを実現することに成功した。一方で、被膜状の融液からGaN結晶を成長させることになるため、融液中のGaが結晶成長に従って枯渇し、成長が停止することも判明した。そこで、第一のGaN結晶3の間隙を埋め込むために必要な成長厚さを実現するため、基板11の融液12への浸漬・引き上げを複数回繰り返すという、第二のGaN結晶成長工程を考案し、本発明に至った。例えば、基板11の融液12への浸漬・引き上げを50~500回程度繰り返すことで、表面が平坦な第二のGaN結晶4が得られた。
【0037】
融液への浸漬と引き上げを複数回繰り返す手法としては、前述したように基板を上下に昇降させる方式以外にも、坩堝全体を揺動させたり、坩堝を傾けた状態で回転させたりする方式なども考えられるが、このような方式では、融液が激しく流動することによる多結晶の発生や、坩堝周辺の熱対流が鉛直軸に対して非対称となることによる温度分布の悪化という課題があるため、基板を上下に昇降させる方式がより好ましい。
【0038】
なお、被膜状の融液を安定して基板11の全面に形成するためには、基板11を融液12の液面に対して1~15度程度傾斜させることが好ましい。当該範囲で基板11を傾斜させることにより、基板11の表面形状と融液12の表面張力と重力とのバランスによって、被膜を好適な厚みに制御できる。それとともに、基板11上の融液溜まりを抑制することができる。また、基板11は、
図1に示したように、融液12の液面に対して常時傾斜させていてもよい。あるいは、融液12から引き上げられている期間に少なくとも一度、基板11を融液12の液面に対し傾斜させてもよい。
【0039】
(他の例について)
図10は、実施の形態1で用いるIII族窒化物結晶の製造装置における融液12を保持する部分の他の例の融液保持機構115を示す概略断面図である。
図11は、
図10の融液保持機構115に融液12aを保持している状態を示す概略断面図である。
図10及び11に示したように、基板11上の融液12aが所定の厚みになるように調整する融液保持機構115を設けてもよい。この融液保持機構115は、
図10及び
図11に示すように、基板11を囲む周壁であって、設けようとする被膜状の融液12aの厚さ分だけ基板11の表面より高い周壁であってもよい。この場合は、基板保持機構114aは、基板11及び融液保持機構115を収納していればよく、基板11を坩堝102内の融液12の液面に対して傾斜させる必要は無い。融液保持機構115に融液12aを保持させる方法としては、例えば、上記と同様に基板保持機構114を反応室103内の坩堝102内の融液12に浸漬させて、融液保持機構115の周壁の中に融液12aを導入することができる。この場合、
図2との相違点は基板保持機構114aが坩堝102内の融液12の液面に対して傾斜していないことである。
【0040】
ここで、基板11を融液12に浸漬する時間と、基板11を融液12から引き上げている時間とについては、前述のメカニズムにより、低過飽和度の融液12への基板11の浸漬時間をできるだけ短くすることが好ましい。一方、基板11を融液12から引き上げている時間は、被膜状融液中のGaが枯渇するまでの時間に設定することが、効率的である。例えば、浸漬時間は0~30分、引き上げ時間は1~60分が好ましい。なお、浸漬時間0分とは、基板11が融液12に浸漬された後、直ちに引き上げられる場合を意味しており、この場合、基板11は融液12に浸漬されている。つまり、0分とは、基板11が融液12中に留まる時間としては実質的に0分であるということを意味する。具体的には、
図2で基板11が融液12の液面より下方に達した後、直ちに引き上げられる状態を意味している。そこで、0分には、例えば秒単位の時間を含んでもよい。また、第二のGaN結晶成長工程の温度は、多結晶の発生を抑制するために、第一のGaN結晶成長工程の温度よりも、例えば3~50℃程度高くすることが好ましい。
【0041】
なお、第二のGaN結晶4をカソードルミネッセンス法で観察すると、
図5に示したように、断面が三角形状又は台形状の第一のGaN結晶3の斜面に沿った複数の層が見られる。第二のGaN結晶4は、高品質なGaN単結晶である。なお、成長時の被膜状融液中のGa濃度の変化などにより、融液12への浸漬・引き上げに伴う周期的なわずかな不純物濃度の差が結晶中に存在する。このため、周期的な不純物濃度の差が層として観察される場合があると考えられる。
【0042】
(第三のGaN結晶成長工程)
第二のGaN結晶成長工程にて表面が平坦になったGaN結晶3、4の上に、
図6に示したように、必要に応じて所望の厚みの第三のGaN結晶5を成長させることができる。第三のGaN結晶5を厚くすると、反りやクラックを抑制することができる。例えば、サファイアからなる基板1よりもGaN結晶の厚さ(3、4、5の合計)が薄い場合は、GaN結晶にクラックが入り易い。そのため、第三のGaN結晶5の膜厚を大きくすることで、GaN結晶3、4、5へのクラックの発生を抑制できる。また、第三のGaN結晶成長工程は、平坦な結晶面への成長モードであり、平坦なGaN結晶を厚く成長させる工程である。そのため、成長速度や成長時間を重視し、基板11を融液12へ浸漬して行うことが好ましい。さらに、第一のGaN結晶3で転位を集束させていることにより、第三のGaN結晶5の転位密度は、10
6/cm
2以下である。
【0043】
なお、第三のGaN結晶成長工程の終了後、GaN結晶3、4、5を取り出すために温度と圧力を常温・常圧に戻す必要がある。この時に融液12の過飽和度が大きく変動し、基板11を浸漬したままだと、成長したGaN結晶のエッチングや低品質のGaN結晶の析出が発生する。このため、第三のGaN結晶成長工程の終了後には、基板11を融液12から引き上げた状態で温度と圧力を常温・常圧に戻すことが好ましい。
【0044】
(分離工程)
最後に、所望の厚みとなったGaN結晶3、4、5とサファイアからなる基板1とを、
図7に示したように、GaN種結晶2の近傍において分離しても良い。例えば、850~950℃の結晶成長温度から常温までの間で、GaN結晶3、4、5とサファイアからなる基板1とは、熱膨張係数が異なる。つまり、常温まで冷却する過程で、GaN結晶3、4、5とサファイアからなる基板1との熱膨張係数の差を利用して、断面積が最も小さく破断し易いGaN種結晶2の近傍で分離することができる。これにより、反りやクラックの抑制された大サイズのGaN結晶3、4、5が得られる。
【0045】
なお、得られた大サイズのGaN結晶3、4、5から、
図8に示したように、GaN種結晶2、GaN結晶3及び4を除去し、さらに表面(図の上側)を研磨することにより、大口径のGaN結晶5を製造できる。GaN種結晶2、GaN結晶3及び4を除去することによって、高転位領域を含むことを抑制することができる。また、GaN結晶5では、平坦面での結晶成長を行ったことによって、(10-11)面などの傾斜面が表出する成長モードを抑制でき、不純物濃度を低くすることができる。
【0046】
(その他の実施の形態)
なお、上記の実施形態において、NaやGaと共に微量添加物を添加すると、得られるGaNの電気伝導性やバンドギャップを調整することが可能となる。微量添加物の例には、ボロン(B)、タリウム(Tl)、カルシウム(Ca)、カルシウム(Ca)の群から選択される少なくとも一つの元素を含む化合物、珪素(Si)、硫黄(S)、セレン(Se)、テルル(Te)、炭素(C)、酸素(O)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、アルミナ(Al2O3)、窒化インジウム(InN)、窒化珪素(Si3N4)、酸化珪素(SiO2)、酸化インジウム(In2O3)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化マグネシウム(MgO)、およびゲルマニウム(Ge)等が含まれる。これらの微量添加物は、1種類のみ添加してもよく、2種以上を添加してもよい。
【0047】
また、上記では、フラックスとしてNaを用いる形態を説明したが、本開示はこれに限定されず、Na以外のアルカリ金属を用いてもよい。具体的には、Na、Li、K、Rb、CsおよびFrからなる群から選択される少なくとも1つを含み、例えば、NaとLiとの混合フラックスなどであってもよい。
【0048】
さらに上記では、III族窒化物としてGaNの結晶を作製する形態について説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示のIII族窒化物は、III族元素(Al、Ga、またはIn)および窒素を含む2元、3元、または4元の化合物とすることができる。例えば、一般式Al1-x-yGayInxN(式中、xおよびyは0≦x≦1,0≦y≦1,0≦1-x-y≦1を満たす)で表される化合物とすることができる。また、III族窒化物は、p型またはn型の不純物を含んでいてもよい。なお、III族窒化物種結晶2についても、材料としてGaNを記載したが、上記に示した化合物とすることができる。
【0049】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本開示に係るIII族窒化物結晶の製造方法を利用することで、表面が平坦で高品質かつ大サイズのIII族窒化物結晶を得ることができる。例えば、発光ムラや輝度低下の少ないIII族窒化物結晶のLED素子等を歩留り良く低コストに製造することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1 基板
2 種結晶
3、3a 第一のIII族窒化物結晶(角錐形状)
4 第二のIII族窒化物結晶(複数のIII族窒化物結晶層)
5 第三のIII族窒化物結晶(平坦厚膜成長部)
11 基板
12、12a 融液
21 III族窒化物結晶
100 III族窒化物結晶製造装置
102 坩堝
103 反応室
110 ヒータ
113 窒素供給ライン
114、114a 基板保持機構
115 融液保持機構