(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】シート折り装置、画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 45/16 20060101AFI20220517BHJP
B65H 37/06 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B65H45/16
B65H37/06
(21)【出願番号】P 2017252471
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-10-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】原口 陽介
(72)【発明者】
【氏名】古橋 朋裕
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 道貴
(72)【発明者】
【氏名】星野 智道
(72)【発明者】
【氏名】米山 史晴
(72)【発明者】
【氏名】國枝 晶
(72)【発明者】
【氏名】森永 拓哉
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-216463(JP,A)
【文献】特開2014-240325(JP,A)
【文献】特開2007-302383(JP,A)
【文献】特開2004-284742(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0185993(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 45/00
B65H 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する
第1搬送ローラ対と、
前記第1搬送ローラ対から搬送された前記シートを搬送する正逆回転可能な第
2搬送ローラ対と、
前記第1搬送ローラ対と前記第2搬送ローラ対に保持された前記シートを折る
第1折りローラ対と、
前記第1折りローラ対により搬送された前記シートを搬送する正逆回転可能な
第3搬送ローラ対と、
前記第1折りローラ対と前記第3搬送ローラ対に保持された前記シートを折る
第2折りローラ対とを備えたシート折り処理装置において、
前記第3搬送ローラ対は、前記第1折りローラ対により第1の搬送速度で搬送
された前記シートの先端が、前記第3搬送ローラ対から所定量だけ突出するまで
に、減速しながら停止することにより前記シートの先端の位置決めを行うように
構成されており、
前記第1折りローラ対は、前記第3搬送ローラ対が減速を開始してから停止す
るまでの間、前記第1の搬送速度よりも遅い第2の搬送速度で前記シートの搬送
を継続するように構成されることを特徴とするシート折り装置。
【請求項2】
請求項1記載のシート折り装置において、
前記第3搬送ローラ対は、前記シートの先端の位置決めが終了した後、所定時
間停止している一方、
前記第1折りローラ対及び第2折りローラ対は、前記シートの先端の位置決め
が終了した後、第2の搬送速度よりも速く、前記第1の搬送速度よりも遅い第3
の搬送速度で前記シートを搬送することを特徴とするシート折り装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシート折り装置において、
前記第3搬送ローラ対は、正転から逆転に切り替わる際に、駆動源からの駆動
力が伝達されない空転期間を有しており、
前記第3搬送ローラ対は、正転により前記シートを搬送し後に一旦停止し、そ
の後、前記空転期間の間だけ逆転してから停止することにより前記シートの先端
の位置決めを行うことを特徴とするシート折り装置。
【請求項4】
請求項3に記載のシート折り装置において、
前記第3搬送ローラ対は、前記正転後に一旦停止する際、及び前記空転期間の
間だけ逆転してから停止する際に減速することを特徴とするシート折り装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載のシート折り装置において、
前記第3搬送ローラ対は、駆動軸と、前記駆動軸と同心で回転する駆動部材と、
前記駆動部材によって駆動される被駆動部と、前記駆動部材が前記被駆動部に対
して空転する空転領域と、を有することを特徴とするシート折り装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1に記載のシート折り装置において、
第2搬送ローラ対、第1折りローラ対、及び第2折りローラ対は、一方のロー
ラが互いに共有する共通ローラであり、該共通ローラが正逆回転可能に構成され
ており、他方のローラは、前記共通ローラに従動回転するシート折装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1に記載のシート折り装置において、
前記第1折りローラ対と前記
第2折りローラ対とを結ぶ前記シートの搬送経路
上の最短距離を第1距離とし、
第3搬送ローラ対と
第2折りローラ対とを結ぶ前
記シートの搬送経路上の最短距離を第2距離としたとき、
前記位置決め動作を行う際、
前記第1折りローラ対と
第3搬送ローラ対との間
に保持された前記シートの長さが前記第1距離と前記第2距離との加算値未満の
関係となるように、
前記第1折りローラ対及び
第3搬送ローラ対の駆動を制御す
ることを特徴とするシート折り装置。
【請求項8】
前記シートに画像を形成する画像形成装置と、
請求項1乃至7のいずれか1に記載のシート折り装置と、を備え、
前記シート折り装置は、前記画像形成装置によって画像が形成された前記シー
トを折ることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート折り装置、画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送部材のローラの回転力を用いてシートを折るシート折り装置は、例えば複写機やデジタル複合機等の画像形成装置内に組み込まれるか、或いは画像形成装置と組み合わせて使用される。何れの場合も、更に後処理装置が付加された構成は、画像形成システムと呼ばれている。
【0003】
その一例として、挟持反転方式で折り処理する際、2度目の用紙折り処理時に箱折れが生じないようにした「用紙処理装置及び画像形成システム」(特許文献1参照)が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に係る技術では、ローラの回転力を用いて用紙を折る際、折りを行う前に用紙を挟持するローラ対(搬送部材対)が駆動部と空転領域とを有し、駆動部又は用紙の位置決め動作を行った後、折り位置に用紙を送り込んで折りを行う。位置決め動作の際、上流側のローラ対は駆動を継続している。
【0005】
ところが、用紙を折る際、上流側のローラ対で用紙をそのまま等速で送り続けると、位置決め動作が完了する前に誤って用紙が折り位置に進入し、狙いの位置で用紙を折れなくなる場合がある。そこで、位置決め動作時に上流側のローラ対を停止して用紙を挟持し続ける手法も考えられるが、こうした場合には用紙の同じ箇所がローラ対で挟まれ続けるために加圧痕が付いてしまう虞がある。
【0006】
本発明は、加圧痕等のダメージを与えることなく、シートを折ることができるシート折り装置、画像形成システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、シートを搬送する第1搬
送ローラ対と、前記第1搬送ローラ対から搬送された前記シートを搬送する正逆
回転可能な第2搬送ローラ対と、前記第1搬送ローラ対と前記第2搬送ローラ対
に保持された前記シートを折る第1折りローラ対と、前記第1折りローラ対によ
り搬送された前記シートを搬送する正逆回転可能な第3搬送ローラ対と、前記第
1折りローラ対と前記第3搬送ローラ対に保持された前記シートを折る第2折り
ローラ対とを備えたシート折り処理装置において、前記第3搬送ローラ対は、前
記第1折りローラ対により第1の搬送速度で搬送された前記シートの先端が、前
記第3搬送ローラ対から所定量だけ突出するまでに、減速しながら停止すること
により前記シートの先端の位置決めを行うように構成されており、前記第1折り
ローラ対は、前記第3搬送ローラ対が減速を開始してから停止するまでの間、前
記第1の搬送速度よりも遅い第2の搬送速度で前記シートの搬送を継続するよう
に構成されるシート折り装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、上記構成により、加圧痕等のダメージを与えることなく、シートを折ることができるようになる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明のシート折り装置が適用される画像形成システムの概略構成を示した図であり、(a)は一形態に係る図、(b)は他形態に係る図である。
【
図2】
図1(a)及び
図1(b)に示されるシート折り装置の一例に係る主要部の基本構成を示す図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る折り処理装置によるZ折りの動作と用紙の流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【
図4】
図3で説明したZ折りの動作で適用される位置決め動作時の用紙における各ローラの接触部との距離を説明するための模式図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る折り処理装置による内三つ折りの動作と用紙の流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【
図6】本発明の実施例1に係る折り処理装置による外三つ折りの動作と用紙の流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る折り処理装置による二つ折りの動作と用紙の流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【
図8】
図3、
図5、
図6、
図7で説明した本発明の実施例1に係る折り処理装置による折り処理後の用紙の形状を対比した図であり、(a)はZ折りを示す図、(b)は内三つ折りを示す図、(c)は外三つ折りを示す図、(d)は二つ折りを示す図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る折り処理装置によるZ折りの動作と用紙の流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【
図10】本発明の実施例2に係る折り処理装置による内三つ折りの動作と用紙の流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【
図11】本発明の実施例2に係る折り処理装置による外三つ折りの動作と用紙の流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【
図12】本発明の実施例2に係る折り処理装置による二つ折りの動作と用紙の流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【
図13】
図1(a)及び
図1(b)に示されるシート折り装置の他例に係る主要部の基本構成を示す図である。
【
図14】本発明の実施例1に係る折り処理装置のローラが空転機構を持つ場合の制御部による用紙の位置決め動作に係る制御処理を示すタイミングチャートである。
【
図15】
図14で説明した空転機構を持つローラの駆動部本体の構成を概念的に示す図である。
【
図16】本発明の実施例1に係る折り処理装置のローラが空転機構を持たない場合の制御部による用紙の位置決め動作に係る制御処理を示すタイミングチャートである。
【
図17】
図16で説明した空転機構を持たないローラの概略構成を示す図である。
【
図18】本発明の実施例2に係る折り処理装置のローラが空転機構を持つ場合の制御部による用紙の位置決め動作に係る制御処理を示すタイミングチャートである。
【
図19】本発明の実施例2に係る折り処理装置のローラが空転機構を持たない場合の制御部による用紙の位置決め動作に係る制御処理を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のシート折り装置、画像形成システムについて、幾つかの実施例を挙げ、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明のシート折り装置(以下、折り処理装置と呼ぶ)が適用される画像形成システムの概略構成を示した図であり、同図(a)は一形態に係る図、同図(b)は他形態に係る図である。
【0012】
図1(a)を参照すれば、一形態に係る画像形成システムは、画像形成装置D1に対して折り処理装置D2と後処理装置D3とが別体で組み合わされて構成される。また、
図1(b)を参照すれば、他形態に係る画像形成システムは、折り処理装置D2が内部に組み込まれた画像形成装置D4と後処理装置D3とが組み合わされて構成される。画像形成装置D1は、電子写真方式又はインクジェット方式の画像形成装置であり、スキャナにより読み取った画像又はネットワークを通じて受信した画像をシート上に形成する。後処理装置D3は、折り処理装置D2から搬送されるシートに対してパンチ、ステープル、ソート等の処理を施す。
【0013】
図2は、
図1(a)及び
図1(b)に示される折り処理装置D2の一例に係る主要部の基本構成を示す図である。
【0014】
図2を参照すれば、折り処理装置D2は、画像形成されたシートを搬送して折る機能を持つ。被搬送物としてのシートは、用紙、コート紙、厚紙、OHP、プラスチックフイルム、プリプレグ、銀箔等を示すが、以下は用紙Pを例にして説明する。
【0015】
折り処理装置D2は、モータM1~M3と、スルー搬送路W1及び分岐搬送路W2の所定箇所近傍に設けられた用紙検知センサSN1~SN3と、これらのモータM1~M3及び用紙検知センサSN1~SN3に接続されたCPU等の制御部Cと、を備える。また、折り処理装置D2は、以下に説明する用紙搬送用の搬送部材となる各種ローラを備える。この各種ローラは、モータM1~M3により駆動される主動ローラと、加圧スプリングS1~S5が具備される従動ローラとに大別することができる。主動ローラはモータM1~M3の回転軸との間でベルトが架け渡され、回転軸の回転力がベルトを介して伝達されて駆動されるようになっている。
【0016】
各種ローラには、一方側に加圧スプリングS1が具備され、他方側がモータM1の回転軸との間でベルトが架け渡される入口ローラ対R1と、加圧スプリングS2が具備された押し当てローラR2とが含まれる。また、モータM2の回転軸との間でベルトが架け渡される第1正逆転ローラR3と、加圧スプリングS3が具備された第1折りローラR4と、加圧スプリングS4が具備された第2折りローラR5とが含まれる。更に、一方側に加圧スプリングS5が具備され、他方側がモータM3の回転軸との間でベルトが架け渡される第2正逆転ローラ対R6が含まれる。
【0017】
折り処理装置D2において、スルー搬送路W1内で画像形成装置D1、D4より送られてきた用紙Pが用紙検知センサSN1で検知されると、制御部CはモータM1の駆動を制御して入口ローラ対R1を通り、押し当てローラR2に至るように用紙Pを搬送する。制御部Cは、モータM2の駆動を制御して第1正逆転ローラR3を介して押し当てローラR2の駆動を制御する。用紙Pが押し当てローラR2を通過して用紙検知センサSN2で検知されると、制御部Cは折り位置から算出される規定の量である突出量だけ用紙Pの先端が押し当てローラR2から突出した位置で押し当てローラR2を停止させる。
【0018】
このときの突出量は、用紙Pの搬送方向の長さや折り処理の内容(折り方等)によって適宜決定されるものである。用紙Pの突出量は、例えば用紙検知センサSN2から出力される先端検知信号の受信タイミングと、第1正逆転ローラR3の回転量とから把握することができる。
【0019】
その後、制御部Cは第1正逆転ローラR3の回転を逆転させる。下流側へ向かう方向を正方向とすれば、入口ローラ対R1は正方向、押し当てローラR2は逆方向に回転することで、入口ローラ対R1及び押し当てローラR2の間で用紙Pに撓みを形成させることができる。その撓みを第1正逆転ローラR3と第1折りローラR4との接触部(ニップ)に挟むことで第1の折り処理を行うことができる。第1折りローラR4と第1正逆転ローラR3との間の接触部を通過した用紙Pの第1折り部は、分岐搬送路W2に進入し、分岐搬送路W2内を第2正逆転ローラ対R6に向けて搬送される。尚、入口ローラ対R1及び押し当てローラR2の間で用紙Pに撓みを形成する際、入口ローラ対R1と押し当てローラR2のうちの何れか一方を停止させても良い。
【0020】
そして、用紙Pの第1折り部は、第2正逆転ローラ対R6の接触部に進入し、この接触部を通過した後に用紙検知センサSN3で検知される。用紙Pの第1折り部が用紙検知センサSN3で検知されると、制御部CはモータM3の駆動を制御して第2正逆転ローラ対R6の接触部の位置から用紙の第1折り部が予め決められた突出量だけ突出したところで第2正逆転ローラ対R6の回転を停止させる。また、このとき同時にモータM1、M2の駆動も制御し、入口ローラ対R1、第1正逆転ローラR3の回転についても停止させる。
【0021】
このときの突出量も、用紙Pの搬送方向の長さや折り処理の内容(折り方等)によって適宜決定されるものである。用紙Pの第1折り部の突出量は、例えば用紙検知センサSN3から出力される先端検知信号の受信タイミングと、第2正逆転ローラ対R6の回転量とから把握することができる。
【0022】
その後、モータM3を制御して用紙Pを分岐搬送路W2の排出側(後処理装置D3側)へ向かわせる方向に第2正逆転ローラ対R6の逆回転を開始する。同時に第1正逆転ローラR3の逆回転及び入口ローラ対R1の回転を再開させる。これにより、第1正逆転ローラR3と第2正逆転ローラ対R6との間の用紙Pに撓みが形成される。この撓み部分(折り返し部分)が第1正逆転ローラR3と第2折りローラR5との間の接触部に進入することで、その折り返し部分に第2折り部が形成される。このようにして、第2の折り処理を行うことができる。
【0023】
第1正逆転ローラR3と第2折りローラR5との間の接触部を通過した用紙Pの第2折り部は、分岐搬送路W2の排出側に向けて搬送される。そして、このように2つの折り部が形成された用紙Pは、第1正逆転ローラR3からの搬送力を受けて、後段の後処理装置D3へ送られる。
【0024】
制御部Cで決定される用紙の折り位置から算出される突出量は、用紙Pの折りたい位置と、ローラ構成の幾何学的な関係から求められる値と、実験的に得られる調整値とを加味して決定される値である。因みに、ここでの調整値とは、用紙Pの厚さや種類等の違いによる折り位置のオフセット量を実験的に定量化したものである。実際の用紙Pの折り位置は、押し当てローラR2や第2正逆転ローラ対R6からの突出量により決定されるため、この突出量がばらつけば、折り位置もばらついてしまうことになる。
【0025】
そこで、本実施形態に係る制御部Cは、用紙検知センサSN1~SN3による用紙先端の検知結果に応じてモータM1~M3の駆動を制御することにより、用紙Pの搬送や折りのタイミングを制御する。具体的に云えば、制御部Cは、第2搬送部材対(第2正逆転ローラ対R6)により用紙Pを搬送した後、第1搬送部材対(第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4)による用紙Pの搬送速度を位置決め動作の開始前よりも遅くした状態で位置決め動作を行う。この位置決め動作は、後文で詳述するように、搬送部材対に係る搬送路下流での用紙Pの先端位置の決定することや、搬送部材の構造上の空転領域で駆動部を回転させることによって被駆動部に対する駆動部材の姿勢(位置)を決める動作を示す。その後、制御部Cは、折り部材対(第1正逆転ローラR3、第2折りローラR5)へ用紙Pが入るように、第1搬送部材対(第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4)及び第2搬送部材対(第2正逆転ローラ対R6)の駆動を制御する。
【0026】
また、制御部Cは、位置決め動作時において、第3搬送部材対(入口ローラ対R1)と第4搬送部材対(押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3)とについても減速させる。本実施形態において、制御部Cは、用紙検知センサSN3による用紙Pの検知後、所定のタイミングで第1搬送部材対(第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4)等のローラ対を減速させ、かつ位置決め動作を行う。その後、折り部材対(第1正逆転ローラR3、第2折りローラR5)へ用紙Pが入るように、モータM2、M3による第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2正逆転ローラ対R6の駆動を制御する。位置決め動作や
図2中の用紙P上に形成される撓みPt1、Pt2については後述する。
【実施例1】
【0027】
図3は、本発明の実施例1に係る折り処理装置によるZ折りの動作と用紙Pの流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【0028】
図3を参照すれば、段階(a)ではまだ用紙Pがスルー搬送路W1に進入していない状態を示すが、段階(b)では用紙Pの先端がスルー搬送路W1に進入して用紙検知センサSN1で検知される状態となっている。用紙検知センサSN1で用紙Pの先端が検知されると、制御部CがモータM1を駆動制御し、これに伴って入口ローラ対R1が回転を開始する。入口ローラ対R1の接触部を通過した用紙Pは、スルー搬送路W1内で押し当てローラR2へ向けて搬送される。
【0029】
その後、段階(c)のように用紙Pの先端が押し当てローラR2及び第1正逆転ローラR3の接触部を通過して用紙検知センサSN2で検知される。この時点において、制御部CはモータM2を駆動制御し、押し当てローラR2及び第1正逆転ローラR3の接触部の位置から用紙Pの先端までの突出量が任意の突出量Δ1になるまで用紙Pの搬送を続ける。突出量Δ1は、用紙Pの長さや折り方から決定され、第1正逆転ローラR3の回転量によって求められる。
【0030】
用紙Pの先端が突出量Δ1に達した時点で、入口ローラ対R1を搬送方向に回転させたまま、第1正逆転ローラR3の搬送方向に対する逆回転を開始する。即ち、ここでは制御部CがモータM2を駆動制御し、第1正逆転ローラR3を逆回転させる。こうすることで、用紙Pに撓みが形成され、形成された撓みを第1折りローラR4と第1正逆転ローラR3とで形成される第1折り手段に進入させることができる。この結果、段階(d)に示されるように用紙Pに対して搬送速度V1で第1折り処理を行う。第1正逆転ローラR3の逆回転の動作により押し当てローラR2及び第1折りローラR4も逆回転して用紙Pを折れば、ブレード等を用紙Pに突き当てて用紙Pを折る場合に比べて、用紙P上の狙いの位置で折りを施すことができ、折りの精度が良くなる。
【0031】
第1折り処理をされた用紙Pは、段階(e)に示されるように分岐搬送路W2内に搬送される。用紙Pは更に分岐搬送路W2内の奥へと搬送され、やがては第2正逆転ローラ対R6によって搬送される。第2正逆転ローラ対R6は制御部Cで駆動制御されるモータM3によって駆動される。第1折りの場合と同様に、用紙Pの第1折りの先端が第2正逆転ローラ対R6の接触部を通過して用紙検知センサSN3で検知される。この時点において、制御部CはモータM3を駆動制御し、第2正逆転ローラ対R6の接触部の位置からの用紙Pの第1折りの先端の突出量が任意の突出量Δ2になるまで用紙Pの搬送を続ける。突出量Δ2は突出量Δ1と同様で、用紙Pの長さや折り方から決定され、第2正逆転ローラ対R6の回転量によって求められる。用紙Pの第1折りの先端が任意の突出量Δ2に達した時点で、段階(f)に示されるように制御部Cが第2正逆転ローラ対R6に係る用紙Pの位置決め動作を行う。
【0032】
位置決め動作では、制御部CがモータM3を駆動制御し、第2正逆転ローラ対R6を一時停止する。この位置決め動作については、後文で詳細に説明する。この位置決め動作の間、段階(g)に示されるように用紙Pの撓み量Lを一定以下とする。このためには、制御部CがモータM1、M2を駆動制御し、入口ローラ対R1、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を停止させずに搬送速度V2となるようにして徐々に用紙Pを送り続ける。但し、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5の加圧が低く、用紙Pにダメージを与え難い場合には、入口ローラ対R1だけを搬送速度V2となるようにして用紙Pを送り続けても良い。即ち、この場合には、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5を一時停止させても良いことを示す。
【0033】
この後、制御部CはモータM1、M2、M3を駆動制御し、入口ローラ対R1、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を搬送速度V3となるように変速して用紙Pの第2折り処理を行う。段階(h)に示されるように第2折り処理をされた用紙Pは、段階(i)に示されるように第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部を通過して後段の後処理装置D3に搬送される。段階(i)の時点で入口ローラ対R1及び第2正逆転ローラ対R6は停止されている。因みに、Z折りされた用紙Pは
図8(a)に示されるような形状となる。
【0034】
上述した搬送速度V2を第1折り時の搬送速度V1よりも遅くすることにより、位置決め動作時に入口ローラ対R1、並びに押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5に係る接触部の位置で用紙Pに加圧痕を防止できる。しかも、位置決め動作の実行中に用紙Pが第2折りの位置へ引き込まれて折り位置の精度が低くなることを防止できる。また、第2折り時の搬送速度V3は搬送速度V2よりも速くすることにより、位置決め動作後の第2折り処理の生産性を高めることができる。尚、第2折り時の搬送速度V3は、第1折り時の搬送速度V1よりも低速とする。
【0035】
撓み量Lの大きさは、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5、第2正逆転ローラ対R6の位置関係、これらの径と搬送速度とから幾何学的に求められる量に基づいて実験を通して予め決定される。例えば用紙Pが第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4から第2正逆転ローラ対R6までに撓みなしに接触された時の各ローラ間における用紙Pの長さをL1とする。その状態で用紙Pを撓ませて第2折りローラR5に接触される瞬間の各ローラ間における用紙Pの長さをL2とする。このとき、L2とL1との差分で算出される撓み量L´に基づいて実験的に撓み量Lを決定する。
【0036】
図4は、Z折りの動作で適用される位置決め動作時の用紙Pにおける各ローラの接触部との距離を説明するための模式図である。位置決め動作時の入口ローラ対R1と押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5との搬送速度V2は、第2正逆転ローラ対R6を対象にした位置決め動作が完了した際に設定される。ここで、第1正逆転ローラR3及び第1折りローラR4の間の接触部から第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の間の接触部までを結ぶ用紙Pの搬送領域上における最短距離をx1と仮定する。また、第2正逆転ローラ対R6の接触部から第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の間の接触部までを結ぶ用紙Pの搬送領域上における最短距離をx2と仮定する。こうした場合、第1正逆転ローラR3及び第1折りローラR4と第2正逆転ローラ対R6とにより保持される用紙Pの長さx3がx1+x2の長さより短くなる関係となるように搬送速度V2を設定する。このように搬送速度V2を設定すれば、位置決め動作時に用紙Pが誤って第2折りの第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部に導入されてしまい、折り精度が低下することを確実に防止できる。
【0037】
以下は、用紙Pに対する内三つ折り、外三つ折りにおける動作について説明する。基本的な動作、用紙Pの流れはZ折りの場合と変わらない。但し、用紙Pの長さや折り方によって決定される任意の突出量Δ1、Δ2は異なるため、Z折り、内三つ折り、外三つ折りで第1正逆転ローラR3、第2正逆転ローラ対R6が逆回転を開始するタイミングはそれぞれ異なる。
【0038】
図5は、本発明の実施例1に係る折り処理装置による内三つ折りの動作と用紙Pの流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【0039】
図5を参照すれば、ここでは
図3で説明したZ折りの場合と内容及び動きが異なる部分を抜粋して説明する。段階(a)~段階(d)までは同様な内容及び動きであるため、ここまでの内容は省略する。内三つ折りでは、用紙Pが第1折りされた後の搬送により、段階(e)に示されるように用紙Pの後端が第1折りローラR4側に位置され、この時点では既に入口ローラ対R1が停止されている。また、内三つ折りでは、用紙Pの第1折りの先端が段階(f)に示されるように第2正逆転ローラ対R6の接触部を超えて任意の突出量Δ2に達した時点で、制御部Cが第2正逆転ローラ対R6に係る用紙Pの位置決め動作を行う。
【0040】
位置決め動作では、制御部CがモータM3を駆動制御し、第2正逆転ローラ対R6を一時停止する。この段階(f)では、用紙Pの後端が第1折りローラR4側寄りに位置されている。尚、位置決め動作については後文で詳述する。この位置決め動作の間、段階(g)に示されるように撓み量Lを一定以下とする。このためには、制御部CがモータM1、M2を駆動制御し、入口ローラ対R1、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を停止させずに搬送速度V2となるように徐々に用紙Pを送り続ける。
【0041】
この後、制御部CはモータM2、M3を駆動制御し、段階(h)に示されるように押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を搬送速度V3となるように変速して用紙Pの第2折り処理を行う。第2折り処理をされた用紙Pは、段階(i)に示されるように第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部を通過して後段の後処理装置D3に搬送される。段階(i)の時点で第2正逆転ローラ対R6は停止されている。因みに、内三つ折りされた用紙Pは
図8(b)に示されるような形状となる。
【0042】
図6は、本発明の実施例1に係る折り処理装置による外三つ折りの動作と用紙Pの流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【0043】
図6を参照すれば、外三つ折りの動きは
図3で説明したZ折りの場合や
図5で説明した内三つ折りの場合と比べ、第1正逆転ローラR3及び第2正逆転ローラ対R6が逆回転を開始するタイミングがそれぞれ異なるものの、基本事項は同じである。
【0044】
図6を参照すれば、外三つ折りは
図3で説明したZ折りの場合と内容及び動きが異なる部分を抜粋して説明する。段階(a)~段階(e)までは同様な内容及び動きであるため、ここまでの内容は省略する。外三つ折りでは、用紙Pの第1折りの先端が段階(f)に示されるように第2正逆転ローラ対R6の接触部を超えて任意の突出量Δ2に達した時点で、制御部Cが第2正逆転ローラ対R6に係る用紙Pの位置決め動作を行う。
【0045】
位置決め動作では、制御部CがモータM3を駆動制御し、第2正逆転ローラ対R6を一時停止する。この段階(f)では、用紙Pの先端が第2折りローラR5側寄りに位置されている。尚、位置決め動作については後文で詳述する。この位置決め動作の間、段階(g)に示されるように撓み量Lを一定以下とする。このためには、制御部CがモータM1、M2を駆動制御し、入口ローラ対R1、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を停止させずに搬送速度V2となるように徐々に用紙Pを送り続ける。尚、用紙Pの後端が入口ローラ対R1の接触部を通過した後、程なく入口ローラ対R1は停止する。
【0046】
この後、制御部CはモータM2、M3を駆動制御し、段階(h)に示されるように押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を搬送速度V3となるように変速して用紙Pの第2折り処理を行う。第2折り処理をされた用紙Pは、段階(i)に示されるように第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部を通過して後段の後処理装置D3に搬送される。外三つ折りの場合、段階(h)の時点で入口ローラ対R1は停止され、段階(i)の時点で第2正逆転ローラ対R6は停止されている。因みに、外三つ折りされた用紙Pは
図8(c)に示されるような形状となる。
【0047】
上述した
図3に係るZ折り、
図5に係る内三つ折り、
図6に係る外三つ折りの折り動作では、上流側の入口ローラ対R1、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4を低速で駆動しつつ位置決め動作の動作を行う。これにより、第2折りをされた用紙Pに箱折れが生じるのを防ぎつつ、用紙Pへ加圧痕が付くことを防ぎ、しかも位置決め動作の動作時に用紙Pが誤って折られてしまうことを防止できる。
【0048】
図7は、本発明の実施例1に係る折り処理装置による二つ折りの動作と用紙Pの流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【0049】
図7を参照すれば、段階(a)ではまだ用紙Pがスルー搬送路W1に進入していない状態を示すが、段階(b)では用紙Pの先端がスルー搬送路W1に進入して用紙検知センサSN1で検知される状態となっている。用紙検知センサSN1で用紙Pの先端が検知されると、制御部CがモータM1を駆動制御し、これに伴って入口ローラ対R1が回転を開始する。用紙Pはスルー搬送路W1内でそのまま搬送される。
【0050】
その後、段階(c)のように用紙Pの先端は第1折りローラR4と第1正逆転ローラR3との接触部に案内され、分岐搬送路W2内に搬送される。第1正逆転ローラR3は制御部Cで駆動制御されるモータM2によって駆動される。用紙Pが更に搬送されると、やがては第2正逆転ローラ対R6によって搬送される。第2正逆転ローラ対R6は制御部Cで駆動制御されるモータM3によって駆動される。そして、用紙Pの先端が第2正逆転ローラ対R6の接触部を通過して用紙検知センサSN3で検知される。この時点において、制御部CはモータM3を駆動制御し、第2正逆転ローラ対R6の接触部の位置からの用紙Pの先端の突出量が任意の突出量Δ1になるまで搬送を続ける。突出量Δ1は用紙Pの長さや折り方から決定され、第2正逆転ローラ対R6の回転量によって求められる。用紙Pの先端が段階(d)に示されるように任意の突出量Δ1に達した時点で、制御部Cが第2正逆転ローラ対R6に係る用紙Pの位置決め動作を行う。
【0051】
位置決め動作では、制御部CがモータM3を駆動制御し、第2正逆転ローラ対R6を一時停止する。この位置決め動作については、後文で詳細に説明する。この位置決め動作の間、段階(e)に示されるように撓み量Lを一定以下とする。このためには、制御部CがモータM1、M2、M3を駆動制御し、入口ローラ対R1、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を停止させずに搬送速度V2となるように徐々に用紙Pを送り続ける。但し、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5の加圧が低く、用紙Pにダメージを与え難い場合には、入口ローラ対R1だけを搬送速度V2となるようにして用紙Pを送り続けても良い。即ち、この場合には、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5を一時停止させても良いことを示す。尚、用紙Pの後端が入口ローラ対R1の接触部を通過した後、程なく入口ローラ対R1は停止する。
【0052】
この後、制御部CはモータM2、M3を駆動制御し、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を搬送速度V3となるように変速する。こうして、第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部で用紙Pの第1折り処理を行う。この状態は段階(g)に示される。第1折り処理をされた用紙Pは段階(h)及び段階(i)に示されるように第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部を通過して後段の後処理装置D3に搬送される。第1折りの時点では既に入口ローラ対R1が停止されており、段階(h)に至る時点では第2正逆転ローラ対R6も停止されている。因みに、二つ折りされた用紙Pは
図8(d)に示されるような形状となる。
【0053】
撓み量Lの決定方法はZ折りの場合と同様である。2つ折りでは用紙Pへの折りの形成は1か所のみのために箱折れは生じないが、上述した位置決め動作を行うことで、用紙Pの先端(第2正逆転ローラ対R6から突き出した部分)の停止位置が正確に定まる。これにより、用紙P上で2つ折りを施す位置を正確に定めることができる。また、位置決め動作時には入口ローラ対R1、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、及び第2折りローラR5を低速で駆動し続ける。これにより、用紙Pへの加圧痕が生じることを防止し、しかも位置決め動作の途中で上流側ローラにより用紙Pが同じ搬送速度で送られ続けることで第2折りの接触部へ進入することを確実に防止でき、折り位置の精度を向上することができる。因みに、上記第2折りの接触部は、第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部を示す。
【実施例2】
【0054】
図9は、本発明の実施例2に係る折り処理装置によるZ折りの動作と用紙Pの流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。実施例2に係る折り処理装置は、実施例1の装置と比べ、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5をそれぞれ対構成にし、第2正逆転ローラ対を持たせずに分岐搬送路W2′の形状を変更した点が相違している。対構成のローラは、略図するが、何れも一方がモータにより駆動される主動ローラ、他方が加圧スプリングにより付勢される従動ローラとなる。実施例1に係る折り処理装置との対比構成上で区別するため、参照符号で押し当てローラ対R2′に係るモータをM2′、第1正逆転ローラ対R3′に係るモータをM3′、第1折りローラ対R4′に係るモータをM4′とする。また、入口ローラ対R1に係るモータはM1、第2折りローラ対R5′に係るモータはM5とする。
【0055】
図9を参照すれば、段階(a)ではまだ用紙Pがスルー搬送路W1に進入していない状態を示すが、段階(b)では用紙Pの先端がスルー搬送路W1に進入して用紙検知センサSN1で検知される状態となっている。用紙検知センサSN1で用紙Pの先端が検知されると、制御部CがモータM1を駆動制御し、これに伴って入口ローラ対R1が回転を開始する。入口ローラ対R1の接触部を通過した用紙Pは、スルー搬送路W1内で押し当てローラ対R2′の接触部へ向けて搬送される。
【0056】
その後、段階(c)のように用紙Pの先端が押し当てローラ対R2′の接触部を通過して用紙検知センサSN2で検知される。この時点において、制御部CはモータM2′を駆動制御し、押し当てローラ対R2′の接触部の位置から用紙Pの先端までの突出量が任意の突出量Δ1になるまで用紙Pの搬送を続ける。突出量Δ1は、用紙Pの長さや折り方から決定され、押し当てローラ対R2′の主動ローラの回転量によって求められる。
【0057】
用紙Pの先端が突出量Δ1に達した時点で、入口ローラ対R1を搬送方向に搬送速度V1となるように回転させたまま押し当てローラ対R2′の搬送方向に対する逆回転を開始すると共に、第1正逆転ローラ対R3′を下流の折り方向への回転を開始する。ここでは制御部CがモータM2′、M3′を駆動制御し、押し当てローラ対R2′を逆回転させ、第1正逆転ローラ対R3′を折り方向へ回転させる。こうすることで、段階(d)に示されるように用紙Pに撓みが形成され、形成された撓みを第1正逆転ローラ対R3′の接触部に進入させることで、第1正逆転ローラ対R3′の接触部で第1折り処理を行う。
【0058】
第1折り処理をされた用紙Pは搬送速度V1となるように段階(e)に示されるように分岐搬送路W2′内に搬送され、更に搬送されるとやがては第1折りローラ対R4′によって搬送される。第1折りローラ対R4′は制御部Cで駆動制御されるモータM4′によって駆動される。第1折り処理の場合と同様に、用紙Pの第1折りの先端が第1折りローラ対R4′の接触部を通過して用紙検知センサSN3で検知される。この時点において、制御部CはモータM4′を駆動制御し、第1折りローラ対R4′の接触部の位置から用紙Pの第1折りの先端までの突出量が任意の突出量Δ2になるまで用紙Pの搬送を続ける。突出量Δ2は突出量Δ1と同様で、用紙Pの長さや折り方から決定され、第1折りローラ対R4′の主動ローラの回転量によって求められる。用紙Pの第1折りの先端が任意の突出量Δ2に達した時点で、段階(f)に示されるように制御部Cが第1折りローラ対R4′に係る用紙Pの位置決め動作を行う。
【0059】
位置決め動作では、制御部CがモータM4′を駆動制御し、第1折りローラ対R4′を一時停止する。この位置決め動作については、後文で詳細に説明する。この位置決め動作の間、段階(g)に示されるように用紙Pの撓み量Lを一定以下とする。このためには、制御部CがモータM1、M3′、M4′を駆動制御し、入口ローラ対R1、第1正逆転ローラ対R3′、及び第1折りローラ対R4′を停止させずに搬送速度V2となるように徐々に用紙Pを送り続ける。このとき、第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′の加圧が低く、用紙Pにダメージを与え難い場合には、入口ローラ対R1だけを搬送速度V2となるようにして用紙Pを送り続けても良い。即ち、この場合には、第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′を一時停止させても良いことを示す。
【0060】
この後、制御部CはモータM1、M3′、M4′、M5を駆動制御し、入口ローラ対R1、第1正逆転ローラ対R3′、第1折りローラ対R4′、及び第2折りローラ対R5′を搬送速度V3となるように変速する。こうして段階(h)に示されるように用紙Pの第2折り処理を行う。第2折り処理をされた用紙Pは段階(i)に示されるように第2折りローラ対R5′の接触部を通過して後段の後処理装置D3に搬送される。段階(i)の時点で入口ローラ対R1、第1正逆転ローラ対R3′、及び第1折りローラ対R4′は停止されている。因みに、Z折りされた用紙Pは
図8(a)に示されるような形状となる。
【0061】
撓み量Lの大きさは、第1正逆転ローラ対R3′、第1折りローラ対R4′、第2折りローラ対R5′の位置関係、これらの径と搬送速度とから幾何学的に求められる量に基づいて実験を通して予め決定される。例えば用紙Pが第1正逆転ローラ対R3′から第2折りローラ対R5′までに撓みなしに接触された時の各ローラ間における用紙Pの長さをL1とする。その状態で用紙Pを撓ませて第2折りローラ対R5′に接触される瞬間の各ローラ間における用紙Pの長さをL2とする。このとき、L2とL1との差分で算出される撓み量L´に基づいて実験的に撓み量Lを決定する。
【0062】
位置決め動作時の入口ローラ対R1、押し当てローラ対R2′、第1正逆転ローラ対R3′の搬送速度V2は、第1折りローラ対R4′を対象にした位置決め動作が完了した際に設定される。ここで、第1正逆転ローラ対R3′の間の接触部から第2折りローラ対R5′の間の接触部までを結ぶ用紙Pの搬送領域上における最短距離をx1と仮定する。また、第1折りローラ対R4′の接触部から第2折りローラ対R5′の間の接触部までを結ぶ用紙Pの搬送領域上における最短距離をx2と仮定する。こうした場合、第1正逆転ローラ対R3′と第1折りローラ対R4′とにより保持される用紙Pの長さx3がx1+x2の長さより短くなる関係となるように搬送速度V2を設定する。このように搬送速度V2を設定すれば、位置決め動作時に用紙Pが誤って第2折りの第2折りローラ対R5′の接触部に導入されてしまい、折り精度が低下することを確実に防止できる。
【0063】
図10は、本発明の実施例2に係る折り処理装置による内三つ折りの動作と用紙Pの流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【0064】
図10を参照すれば、ここでは
図9で説明したZ折りの場合と内容及び動きが異なる部分を抜粋して説明する。段階(a)~段階(d)までは同様な内容及び動きであるため、ここまでの内容は省略する。内三つ折りでは、用紙Pが第1折りされた後の搬送により、段階(e)に示されるように用紙Pの後端が第1正逆転ローラ対R3′近傍に位置され、この時点で入口ローラ対R1は停止されている。また、内三つ折りでは、用紙Pの第1折りの先端が段階(f)に示されるように第1折りローラ対R4′の接触部を超えて任意の突出量Δ2に達した時点で、制御部Cが第1折りローラ対R4′に係る用紙Pの位置決め動作を行う。
【0065】
位置決め動作では、制御部CがモータM4′を駆動制御し、第1折りローラ対R4′を一時停止する。この段階(f)では、用紙Pの後端が第1正逆転ローラ対R3′と第1折りローラ対R4′との間の一方側寄りに位置されている。尚、位置決め動作については後文で詳述する。この位置決め動作の間、段階(g)に示されるように撓み量Lを一定以下とする。このためには、制御部CがモータM2′、M3′を駆動制御し、押し当てローラ対R2′と第1正逆転ローラ対R3′とを停止させずに搬送速度V2となるように徐々に用紙Pを送り続ける。このとき、第1正逆転ローラ対R3′の加圧が低く、用紙Pにダメージを与え難い場合には、第1正逆転ローラ対R3′だけを搬送速度V2となるように用紙Pを送り続けても良い。即ち、この場合には、第1折りローラ対R4′を一時停止させても良いことを示す。
【0066】
この後、制御部CはモータM3′、M4′、M5を駆動制御し、段階(h)に示されるように第1正逆転ローラ対R3′、第1折りローラ対R4′、及び第2折りローラ対R5′を搬送速度V3に変速する、こうして用紙Pの第2折り処理を行う。第2折り処理をされた用紙Pは、段階(i)に示されるように第2折りローラ対R5′の接触部を通過して後段の後処理装置D3に搬送される。第2折りローラ対R5′は制御部Cで駆動制御されるモータM5によって駆動される。段階(i)の時点で第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′は停止されている。因みに、内三つ折りされた用紙Pは
図8(b)に示されるような形状となる。
【0067】
図11は、本発明の実施例2に係る折り処理装置による外三つ折りの動作と用紙Pの流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【0068】
図11を参照すれば、外三つ折りの動きは
図9で説明したZ折りの場合や
図10で説明した内三つ折りの場合と比べ、第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′が逆回転を開始するタイミングがそれぞれ異なるものの、基本事項は同じである。
【0069】
図11を参照すれば、外三つ折りは
図9で説明したZ折りの場合と内容及び動きが異なる部分を抜粋して説明する。段階(a)~段階(e)までは同様な内容及び動きであるため、ここまでの内容は省略する。外三つ折りでは、用紙Pの第1折りの先端が段階(f)に示されるように第1折りローラ対R4′の接触部を超えて任意の突出量Δ2に達した時点で、制御部Cが第1折りローラ対R4′に係る用紙Pの位置決め動作を行う。
【0070】
位置決め動作では、制御部CがモータM4′を駆動制御し、第1折りローラ対R4′を一時停止する。この段階(f)では、用紙Pの先端が第1正逆転ローラ対R3′と第1折りローラ対R4′との間の他方側寄りに位置されている。尚、位置決め動作については後文で詳述する。この位置決め動作の間、段階(g)に示されるように撓み量Lを一定以下とする。このためには、制御部CがモータM1、M3、M4を駆動制御し、入口ローラ対R1、第1正逆転ローラ対R3′、及び第1折りローラ対R4′を停止させずに搬送速度V2となるように徐々に用紙Pを送り続ける。このとき、第1正逆転ローラ対R3′の加圧が低く、用紙Pにダメージを与え難い場合には、入口ローラ対R1だけを搬送速度V2となるように用紙Pを送り続けても良い。即ち、この場合には、第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′を一時停止させても良いことを示す。尚、用紙Pの後端が入口ローラ対R1の接触部を通過した後、程なく入口ローラ対R1は停止する。
【0071】
この後、制御部Cは、モータM3′、M4′、M5を駆動制御し、段階(h)に示されるように第1正逆転ローラ対R3′、第1折りローラ対R4′、及び第2折りローラ対R5′を搬送速度V3となるように変速する。こうして用紙Pの第2折り処理を行う。第2折り処理をされた用紙Pは、段階(i)に示されるように第2折りローラ対R5′の接触部を通過して後段の後処理装置D3に搬送される。段階(i)の時点で第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′は停止されている。因みに、外三つ折りされた用紙Pは
図8(c)に示されるような形状となる。
【0072】
図12は、本発明の実施例2に係る折り処理装置による二つ折りの動作と用紙Pの流れを段階(a)~(i)毎に示した模式図である。
【0073】
図12を参照すれば、段階(a)ではまだ用紙Pがスルー搬送路W1に進入していない状態を示すが、段階(b)では用紙Pの先端がスルー搬送路W1に進入して用紙検知センサSN1に検知される状態となっている。用紙検知センサSN1で用紙Pの先端が検知されると、制御部CがモータM1の駆動を制御し、これに伴って入口ローラ対R1が回転を開始する。用紙Pはスルー搬送路W1内でそのまま搬送される。
【0074】
その後、段階(c)のように用紙Pの先端は第1正逆転ローラ対R3′の接触部に案内され、分岐搬送路W2′内に搬送される。第1正逆転ローラ対R3′は制御部Cで駆動制御されるモータM2′によって駆動される。用紙Pが更に搬送されると、やがては第1折りローラ対R4′によって搬送される。第1折りローラ対R4′は制御部Cで駆動制御されるモータM4′によって駆動される。そして、用紙Pの先端が第1折りローラ対R4′の接触部を通過して用紙検知センサSN3で検知される。この時点において、制御部CはモータM4′を駆動制御し、第1折りローラ対R4′の接触部の位置からの用紙Pの先端の突出量が任意の突出量Δ1になるまで搬送を続ける。突出量Δ1は用紙Pの長さや折り方から決定され、第1折りローラ対R4′の主動ローラの回転量によって求められる。用紙Pの先端が段階(d)に示されるように任意の突出量Δ1に達した時点で、制御部Cが第1折りローラ対R4′に係る用紙Pの位置決め動作を行う。
【0075】
位置決め動作では、制御部CがモータM4′を駆動制御し、第1折りローラ対R4′を一時停止する。この位置決め動作については、後文で詳細に説明する。この位置決め動作の間、段階(e)に示されるように撓み量Lを一定以下とする。このためには、制御部CがモータM1、M3′、M4′を駆動制御し、入口ローラ対R1と第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′とを停止させずに搬送速度V2となるように徐々に用紙Pを送り続ける。但し、第1正逆転ローラ対R3′の加圧が低く、用紙Pにダメージを与え難い場合には、入口ローラ対R1だけを搬送速度V2となるように用紙Pを送り続けても良い。即ち、この場合には、第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′を一時停止させても良いことを示す。
【0076】
この後、制御部CはモータM1、M2′、M3′を駆動制御し、入口ローラ対R1、第1正逆転ローラ対R3′、及び第1折りローラ対R4′を搬送速度V3となるように変速する。こうして段階(g)に示されるように第2折りローラ対R5′の接触部で用紙Pの第1折り処理を行う。第1折り処理をされた用紙Pは段階(h)及び段階(i)に示されるように第2折りローラ対R5′の接触部を通過して後段の後処理装置D3に搬送される。第1折りの時点では入口ローラ対R1が停止されており、段階(i)に至る時点では第1正逆転ローラ対R3′及び第1折りローラ対R4′も停止されている。因みに、二つ折りされた用紙Pは
図8(d)に示されるような形状となる。
【0077】
ところで、
図2に示した折り処理装置D2は、細部構成を変更することができる。
図13は、折り処理装置D2の他例に係る主要部の基本構成を示す図である。
【0078】
図13に示す折り処理装置D2の他例では、第2折りローラR5が第1正逆転ローラR3でなく、第1折りローラR4と接触するようにし、第2折りローラR5を駆動するモータM4を設け、分岐搬送路W2″の形状を変更している。ここでは、第1折りローラR4と第2折りローラR5との間の接触部で最終段の折りを施すため、第2折りローラR5を駆動するモータM4を設けている。また、係る変形に対応させ、第2正逆転ローラ対R6を
図2の場合の第1正逆転ローラR3に対して右下側方向とは反対側の左下側方向に配置できる分岐搬送路W2″としている。
【0079】
図13に示す折り処理装置D2では、制御部CがモータM2を駆動制御し、第1正逆転ローラR3及び第1折りローラR4の接触部で第1折り処理を施す。第1折り処理された用紙Pは、分岐搬送路W2″の下り勾配の傾斜に沿って第2正逆転ローラ対R6側に搬送される。第2正逆転ローラ対R6は制御部Cで駆動制御されるモータM3によって駆動される。そして、第2正逆転ローラ対R6に用紙Pの第1折りの先端部分を通過させ、
図13中で左方向へ所定量搬送した後、制御部Cが第2正逆転ローラ対R6に係る用紙Pの位置決め動作を行う。この後、制御部CはモータM2、M3を駆動制御し、第1正逆転ローラR3及び第1折りローラR4を更に回転させることによって第1折りローラR4及び第2折りローラR5の接触部の前で用紙Pを撓ませる。更に、制御部CはモータM4を駆動制御し、第1折りローラR4及び第2折りローラR5の接触部で用紙Pに第2折り処理を施す。最後に用紙Pは分岐搬送路W2″の上り勾配の傾斜に沿ってスルー搬送路W1の搬入側(
図13中で右方向)に排紙される。これにより、Z折り、内三つ折り、及び外三つ折りが行われ、排紙される。
【0080】
図13に示す折り処理装置D2の場合、スルー搬送路W1を通って
図13中右側から搬送される用紙Pを分岐搬送路W2″における
図13中の右側、即ち、用紙Pが搬送される側と同じ側へ排紙する。従って、折り処理機構の右側に用紙Pの搬送用スペースを設けなくても、Z折り、内三つ折り、及び外三つ折りを行って装置外部へ排紙することができる。
【0081】
図14は、本発明の実施例1に係る折り処理装置のローラ(第2正逆転ローラ対R6)が空転機構を持つ場合の制御部Cによる用紙Pの位置決め動作に係る制御処理を示すタイミングチャートである。即ち、
図14では、モータM3で駆動する第2正逆転ローラ対R6について、特許文献1に開示された箱折れ防止のために空転する遊び(空転領域)R6aの空転機構を設けた場合の構成で位置決めする動作のタイミングを示している。
図14中の破線は各モータの回転数が零、即ち各モータが停止状態であることを示す。
【0082】
実施例1に係る折り処理装置では、用紙Pの先端が突出量Δ2に達した時点で位置決め動作を行う。ここでは分岐搬送路W2における第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部の方向を排出方向とする。モータM1は、入口ローラ対R1を駆動させ、時計回りCWでは用紙Pを排出方向、或いは分岐搬送路W2の搬送方向に送り、反時計回りCCWではそれらの逆転方向に送る構造になっている。モータM2は、第1正逆転ローラR3を駆動させ、押し当てローラR2、第1折りローラR4、第2折りローラR5を従動させ、時計回りCWでは用紙Pを上記排出方向、或いは分岐搬送路W2の搬送方向に送り、反時計回りCCWではそれらの逆転方向に送る構造になっている。モータM3は、第2正逆転ローラ対R6を駆動させ、時計回りCWでは用紙Pを分岐搬送路W2の搬送方向に送り、反時計回りCCWでは用紙Pを上記排出方向に送る構造になっている。
【0083】
図15は、空転機構を持つローラ(第2正逆転ローラ対R6)の駆動部本体R6a1の構成を概念的に示す図である。この遊び(空転領域)R6aを有する第2正逆転ローラ対R6は、
図15(a)に示すように駆動部本体R6a1、駆動軸R6a2、駆動軸R6a2の駆動力を駆動部本体R6a1の被駆動部R6a3に伝達する駆動部材R6a4から成る。駆動部材R6a4は、駆動部本体R6a1内の空間部R6a5で空転し、被駆動部R6a3に当たった時点で、一方向については駆動力を駆動部本体R6a1側に伝達することができる。また、他方向については、駆動部本体R6a1がロックされ、駆動部本体R6a1は回転しないようになっている。
【0084】
例えば
図15(a)の状態で、時計回りCW方向に駆動軸R6a2が回転すると、駆動部本体R6a1はそのまま時計回りCW方向に回転する。これに対し、
図15(a)の状態で、反時計回りCCW方向に駆動軸R6a2が回転すると、
図15(b)に示す位置まで駆動軸R6a2及び駆動部材R6a4は空転する。駆動部材R6a4が空転する間は、駆動部本体R6a1の被駆動部R6a3には、駆動部材R6a4の駆動力が伝達されず、駆動部本体R6a1は回転しない。逆に言うと、駆動部材R6a4が被駆動部R6a3に接触することなく、空間部R6a5内に位置している間は、駆動部本体R6a1は空転する。
【0085】
また、
図15(b)の状態から駆動軸R6a2が時計回りCW方向に回転し、駆動部材R6a4が被駆動部R6a3の側面に当たるまで、駆動部材R6a4は空転領域R6aに位置しているので、駆動力は伝達されず、駆動部本体R6a1は回転しない。この状態を
図15(c)に示す。そして、空転領域R6a内の遊びがなくなり駆動部材R6a4が被駆動部R6a3に当たった時点で駆動力が駆動部本体R6a1側に伝達され、駆動部本体R6a1は回転を開始する。この状態を
図15(d)に示す。
【0086】
尚、
図15では、空転領域R6aを備えた機構は、第2正逆転ローラ対R6を駆動する駆動部本体R6a1内に設けられているが、その他の駆動機構、例えばギヤ側に設けることもできる。更には、ギヤに駆動力を伝達するモータの駆動軸からギヤへの駆動力伝達経路に設けることも可能である。何れにしても、駆動源から第2正逆転ローラ対R6までの駆動力伝達経路に設けることができる。尚、第2正逆転ローラ対R6は駆動部本体R6a1の回転に同期して回転する。従って、駆動部本体R6a1の回転動作は第2正逆転ローラ対R6の回転動作と等価である。
【0087】
用紙Pが搬送される際、第2正逆転ローラ対R6は用紙Pを下流側に搬送する方向に回転している。第2正逆転ローラ対R6が回転し続けると、空転領域R6a内の遊びがなくなり、遊びがなくなった時点で第2正逆転ローラ対R6は回転を開始するので、用紙Pは下流側(
図2において図中右下方向)に搬送可能となる。
図2において、第2正逆転ローラ対R6は、遊びがなく回転を継続した状態で、第1正逆転ローラR3と第1折りローラR4とから搬送されてくる用紙Pを受け取る。第2正逆転ローラ対R6は、受け取った用紙をさらに所定量下流側へ搬送する。その後、用紙検知センサSN3を用いて用紙Pを所定の位置で停止させる。ここでは用紙検知センサSN3を使用して制御部Cが用紙Pの停止位置を検知する構成としたが、モータM3のパルスカウント制御、DCモータのエンコーダ出力等によって用紙Pの停止位置を決定しても良い。
【0088】
実施例1に係る折り処理装置での位置決め動作とは、第1番目に第2正逆転ローラ対R6よりも下流側の搬送経路において用紙Pの先端の位置を決める動作を含む。また、位置決め動作は、第2番目に
図15を参照して説明した第2正逆転ローラ対R6の空転領域R6aにおいて駆動部材R6a4を回転させることによって被駆動部R6a3に対する駆動部材R6a4の姿勢(位置)を決める動作を含む。
【0089】
位置決め動作の第1番目は、
図14に示されるように用紙検知センサSN3で用紙Pの先端を検知(ON)してから所定時間経過後に減速開始するタイミングからモータM3の回転速度が零になるタイミングまでのモータM3の駆動動作に相当する。減速開始するタイミングは、
図14でモータM3の回転速度の波形がゼロ(点線)を横切るタイミングである。
【0090】
実施例1に係る折り処理装置は、第2搬送部材対である第2正逆転ローラ対R6に用紙Pが搬送された後、第2正逆転ローラ対R6から突出する用紙Pの先端位置を決める動作を行う。また、折り処理装置は、所定のタイミングで第2正逆転ローラ対R6の減速を開始し、停止させる動作を行う。これにより、用紙Pが停止したときの用紙Pの先端位置を正確に決めることができる。特にモータM3の減速開始のタイミング及び回転速度が零になるタイミングを制御することにより、用紙Pの搬送速度を所定位置で停止させ、用紙Pが停止したときの用紙Pの先端位置をより正確に決めることができる。
【0091】
位置決め動作の第2番目は、第1番目の動作に続くものである。具体的にはモータM3の回転速度が零になるタイミングからモータM3を反時計回りCCW方向に駆動して空間部R6a5内で駆動部材R6a4を所定量回転させ、被駆動部R6a3に対する駆動部材R6a4の姿勢(位置)を決めるモータM3の駆動動作に相当する。第2正逆転ローラ対R6は、駆動軸R6a2と、駆動軸R6a2と同心で回転する駆動部材R6a4と、駆動部材R6a4によって駆動される被駆動部R6a3と、駆動部材R6a4が被駆動部R6a3に対して空転する空間部R6a5と、を有する。位置決め動作の第2番目は、駆動部材R6a4を空転領域R6a内で空転させるもので、
図14においてモータM3の回転速度が零になりモータM3の駆動が停止した時点で終了する。
【0092】
この位置決め動作の第2番目は、被駆動部R6a3に対して駆動部材R6a4が突き当たるように、駆動部材R6a4の位置を決めるものと換言できる。このとき、
図2で下側に示される第2正逆転ローラ対R6の被駆動部R6a3及び駆動部材R6a4は、
図15(b)に示す状態となる。そして、モータM3が停止することにより、駆動軸R6a2と駆動部材R6a4とは、同図に示される位置から回転しないように固定されている。同図に示す状態では、第2正逆転ローラ対R6の被駆動部R6a3が駆動部材R6a4と突き当たることにより、駆動部本体R6a1及び被駆動部R6a3はCW方向への回転が規制される。
【0093】
一方、駆動部本体R6a1及び被駆動部R6a3は、空転領域R6aの分だけCCW方向への回転(空転)が可能である。これにより、用紙Pは、下流方向への移動がロック(規制)される一方、上流方向への移動(即ち、第2正逆転ローラ対R6から上流方向への引き抜き)はフリー(移動可能)な状態となる。下流方向へは用紙Pの移動がロックされることで、位置決め動作に続く第2折り処理の動作において用紙Pの先端(第1折りを施した用紙P上の部位)が誤って搬送方向下流へずれることを防止する。これにより、用紙Pの位置を正確に決めることができる。また、上流方向へは用紙Pを移動フリー(引き抜き可能)となる。これにより、第2正逆転ローラ対R6の回転(駆動)が停止した状態で、第2正逆転ローラ対R6と他のローラ対(特に第1正逆転ローラR3と第2折りローラR5)との間で用紙Pの引っ張り合いが起きることを防止し、用紙Pが破れたり変形することを防止する。
【0094】
図14のタイミングチャートを参照すれば、初めは制御部CがモータM1、M2、M3を駆動制御して搬送速度V1となるように用紙Pを分岐搬送路W2の搬送方向へ送る。ここでは、用紙Pの先端を用紙検知センサSN3が検知してから突出量Δ2になるまで用紙Pを送り続ける。その後、モータM3の減速を開始した後、搬送速度V4となるように空転分の距離Y1を解消する。この減速から空転解消分の解消の間を位置決め動作とするが、
図14中でのPositioningの部分が該当する。この間もモータM1、M2は用紙Pを折る方向に動き続けているので、位置決め動作の間、例えばそのまま搬送速度V1で動かし続けると、直ちに用紙Pが第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部に接触してしまう。このため、位置決め動作の間、用紙Pが第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部に接触しない程度にモータM1、M2を搬送速度V2となるように変速や減速するなりし、距離Y1を止めずに用紙Pを送り続けるようにする。但し、モータM1が駆動する入口ローラ対R1の接触圧が低く、更に入口ローラ対R1と第1正逆転ローラR3との間で用紙Pに十分な撓みがある場合は、モータM1は位置決め動作の間、停止させても良い。尚、モータM1、M2、M3の駆動制御による搬送速度V3は用紙Pに対するZ折り、内三つ折り、外三つ折りを行う場合の第2折り処理、二つ折りを行う場合の第1折り処理を実施するときの値である。
【0095】
位置決め動作(
図14のPositioning)が終了した後、モータM1、M2は搬送速度V3で用紙Pの搬送を継続させる一方、モータM3は停止させる。このとき、用紙Pに形成された撓み部分Pt1は、第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部へ進入する(
図3の(g)参照)。また、このときに用紙Pを挟んでいる第2正逆転ローラ対R6は、上述した空転領域R6aの分だけ空転し、用紙Pは第2正逆転ローラ対R6から所定量引き抜かれる。用紙Pが第2正逆転ローラ対R6から引き抜かれる間、第2正逆転ローラ対R6と第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5との間に形成されていた用紙P上の撓みPt2は解消される。尚、用紙P上の撓みPt2は、第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の入り口付近に形成される用紙Pの撓みPt1とは別のものであり、
図2中において、第2正逆転ローラ対R6と第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5との間で用紙Pが上側に凸となるように波打つことで形成される撓みである。
【0096】
仮に、用紙P上の撓みPt2を解消しないまま第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5に用紙Pが進入してこれらのローラ対を抜けると、既に形成された折り部(
図2中で第2正逆転ローラ対R6の右下位置の折り部)の近傍に別の折り部が形成される。これにより、用紙Pに所謂箱折れが生じる。本実施例によれば、第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5との間に用紙Pが進入する前に、用紙P上の撓みPt2を予め解消することにより、箱折れが生じることを防止する。その後、
図14に示すようにモータM3の回転を再び開始し、モータM1およびM2と共に搬送速度V3で用紙Pを搬送することで(
図3(h)参照)、用紙Pに対するZ折り処理が完了する。
【0097】
図16は、本発明の実施例1に係る折り処理装置のローラ(第2正逆転ローラ対R6)が空転機構を持たない場合の制御部Cによる用紙Pの位置決め動作に係る制御処理を示すタイミングチャートである。
【0098】
図17は、空転機構を持たないローラ(第2正逆転ローラ対R6)の概略構成を示す図であり、同図(a)はモータM3の時計回りに関する図、同図(b)はモータM3の反時計回りに関する図である。
【0099】
図17(a)及び
図17(b)を参照すれば、ここでは第2正逆転ローラ対R6の駆動構成において、ワンウェイクラッチ10と電磁クラッチ11との2つを用い、上述した駆動部本体R6a1に遊び(空転領域)R6aを設けた構成と同様の機能を持たせている。
【0100】
具体的に云えば、第2正逆転ローラ対R6を駆動ローラとして働かせ、これらの駆動ローラを駆動する従動ギヤ8a、8bと、これらの従動ギヤ8a、8bの駆動力を各駆動ローラに伝達する伝達機構9a、9bと、を備える。また、従動ギヤ8aを駆動する駆動ギヤをモータM3で駆動する構成となっている。その他、従動ギヤ8aにワンウェイクラッチ10と電磁クラッチ11とを連結し、モータM3の駆動機構をワンウェイクラッチ10と電磁クラッチ11とに連結している。従動ギヤ8bは従動ギヤ8aと噛み合い、駆動ギヤの回転に同期して回転し、この回転駆動力が駆動ローラにそれぞれ伝達される。
【0101】
このように構成によれば、
図17(a)に示されるようにモータM3が時計回りCW方向に回転している場合は、第2正逆転ローラ対R6は用紙Pを上流側に搬送する方向に回転する。そのとき、電磁クラッチ11はOFFの状態である。また、電磁クラッチ11がOFFの状態で且つモータM3が停止している状態では、ワンウェイクラッチ10が設けられているために、用紙Pが上流方向に引っ張られると第2正逆転ローラ対R6は用紙Pに連れ回る。一方、用紙Pが下流方向に動こうとした際には第2正逆転ローラ対R6が回転せずにロックし、用紙Pの移動が規制される。
【0102】
これに対し、
図17(b)に示されるようにモータM3が反時計回りCCW方向に回転している場合は、電磁クラッチ11をONの状態にする。これにより、第2正逆転ローラ対R6は逆方向(用紙Pを下流側に搬送する方向)に回転し、ワンウェイクラッチ10側の従動ギヤ8aは回らない状態となる。よって、第2正逆転ローラ対R6の基本機能を確実に得ることが可能であり、箱折れ現象を回避することが可能となる。係る構成によれば、駆動部本体R6a1に遊び(空転領域)R6aを設けた機構と同等の動作を既存のワンウェイクラッチ10と電磁クラッチ11とを組み合わせて実現することができる。
【0103】
第2正逆転ローラ対R6に空転機構がない場合は、減速して停止するまでの動きに該当するPositioningの部分を位置決め動作する。即ち、ここでの位置決め動作とは、第2正逆転ローラ対R6よりも下流側の搬送経路において用紙Pの先端の位置を決める動作である。
【0104】
図16のタイミングチャートを参照すれば、初めは制御部Cの駆動制御により位置決め動作の間、用紙Pが第1正逆転ローラR3及び第2折りローラR5の接触部に接触しない程度の搬送速度V2となるようにモータM1、M2を変速や減速するなりする。そうして、モータM3のスルーダウン分の距離Y1を止めずに用紙Pを送り続けるようにする。この場合も、位置決め動作により、第1正逆転ローラR3と第2折りローラR5との間で用紙Pに折り処理を施す前に、モータM3の減速開始や停止のタイミングを制御する。これにより、用紙Pの先端位置を正確に決めることができる。また、位置決め動作完了前に第1正逆転ローラR3と第2折りローラR5との間に用紙Pが誤って挟みこまれることを防止し、折り精度を確保すると共に、加圧痕の発生を防止することができる。
【0105】
モータM1が駆動する入口ローラ対R1の接触圧が低く、更に入口ローラ対R1と第1正逆転ローラR3との間に十分な撓みがある場合は、モータM1は位置決め動作の間、停止しても良い。
図16ではモータM3が減速を開始するタイミングとモータM1、M2が減速を開始するタイミングとを同時とした場合を示しているが、両者のタイミングはずらしても良い。この場合も、
図16中のPositioning期間内にモータM1、M2の駆動制御により搬送速度V2とする。これにより、入口ローラ対R1、押し当てローラR2、第1正逆転ローラR3、第1折りローラR4、第2折りローラR5の搬送速度を低速にすれば良い。この結果、これらを完全に停止させる場合に比べて加圧痕を防止することができる。また、搬送中の用紙Pをローラ対同士の間で引っ張り合わない範囲であれば、搬送速度V2を反時計回りCCW方向ではなく、時計回りCW方向としても良い。この場合も加圧痕を防止することができる。尚、ここでもモータM1、M2、M3の駆動制御による搬送速度V3は用紙Pに対するZ折り、内三つ折り、外三つ折りを行う場合の第2折り処理、二つ折りを行う場合の第1折り処理を実施するときの値である。
【0106】
図18は、本発明の実施例2に係る折り処理装置のローラ(第1折りローラ対R4′)が上記空転機構を持つ場合の制御部による用紙Pの位置決め動作に係る制御処理を示すタイミングチャートである。即ち、
図18は、モータM4′で駆動する第1折りローラ対R4′について、上記箱折れ防止のために空転する遊び(空転領域)R6aの空転機構を設けた場合の構成で位置決めする動作のタイミングを示している。
【0107】
実施例2に係る折り処理装置の場合にはモータ数が増えるものの、基本的な位置決め動作やその範囲は実施例1に係る折り処理装置の場合と変わらず、用紙Pの先端が突出量Δ2に達した時点で位置決め動作を行う際のタイミングを示している。ここでは分岐搬送路W2′における第2折りローラ対R5′の接触部の方向を折り方向、及び排出方向とする。モータM1、M2′は、入口ローラ対R1、押し当てローラ対R2′をそれぞれ駆動させ、それぞれ時計回りCW方向では用紙Pを用紙検知センサSN2の方向に送り、反時計回りCCW方向では折り方向、及び排出方向に送る構造になっている。モータM3′は、第1正逆転ローラ対R3′を駆動させ、反時計回りCCW方向で用紙Pを折り方向、及び排出方向に送る構造になっている。モータM4′は、第1折りローラ対R4′を駆動させ、時計回りCW方向で用紙Pを分岐搬送路W2′の搬送方向に送り、反時計回りCCWで用紙Pを排出方向に送る構造になっている。モータM5は、第2折りローラ対R5′を駆動させ、反時計回りCCW方向で用紙Pを折り方向、及び排出方向に送る構造になっている。
【0108】
図18のタイミングチャートを参照すれば、初めは制御部CがモータM1、M2′、M3′、M4′を駆動制御して搬送速度V1となるように分岐搬送路W2′の搬送方向へ用紙Pを送る。ここでは、用紙Pの先端を用紙検知センサSN3が検知してから突出量Δ2になるまで送る。その後、モータM4′の減速を開始した後、搬送速度V4となるようにして空転分の距離Y1を解消する。この減速から空転解消分の解消の間、
図18中のPositioningの部分を位置決め動作とする。この間も、モータM1、M2′、M3′は用紙Pを折る方向に動き続けているので、位置決め動作の間、例えばそのまま搬送速度V1で動かし続けると、直ちに用紙Pが第2折りローラ対R5′の接触部に接触されてしまう。このため、位置決め動作の間は、モータM1、M2′、M3′、M5を第2折りローラ対R5′の接触部に接触しない程度の搬送速度V2となるように変速や減速するなりし、距離Y1を止めずに用紙Pを送り続けるようにする。尚、モータM1、M2′、M3′、M4′、M5の駆動制御による搬送速度V3は用紙Pに対するZ折り、内三つ折り、外三つ折りを行う場合の第2折り処理、二つ折りを行う場合の第1折り処理を実施するときの値である。
【0109】
図19は、本発明の実施例2に係る折り処理装置のローラ(第1折りローラ対R4′)が上記空転機構を持たない場合の制御部による用紙Pの位置決め動作に係る制御処理を示すタイミングチャートである。
【0110】
図19のタイミングチャートを参照すれば、ここでも初めは制御部Cの駆動制御により位置決め動作の間、用紙Pが第2折りローラ対R5′の接触部に接触しない程度の搬送速度V2となるようにモータM1、M2′、M3′、M5を変速や減速するなりする。そうして、モータM4′のスルーダウン分の距離Y1を止めずに用紙Pを送り続けるようにする。この場合も、位置決め動作により、第2折りローラ対R5′の間で用紙Pに折り処理を施す前に、モータM4′の減速開始や停止のタイミングを制御する。これにより、用紙Pの先端位置を正確に決めることができる。また、位置決め動作完了前に第2折りローラ対R5′の間に用紙Pが誤って挟みこまれることを防止し、折り精度を確保すると共に、加圧痕の発生を防止することができる。
【0111】
モータM1が駆動する入口ローラ対R1の接触圧が低く、更に入口ローラ対R1と第1正逆転ローラ対R3′との間に十分な撓みがある場合は、モータM1は位置決め動作の間、停止しても良い。
図19ではモータM4′が減速を開始するタイミングとモータM1、M2′、M3′が減速を開始するタイミングとを同時とした場合を示しているが、両者のタイミングはずらしても良い。この場合も、
図19中のPositioning期間内にモータM1、モータM2′、モータM3′、モータM5を駆動制御して搬送速度V2とする。これにより、入口ローラ対R1、押し当てローラ対R2′、第1正逆転ローラ対R3′、第2折りローラ対R5′の搬送速度を低速にすれば良い。この結果、これらを完全に停止させる場合に比べて加圧痕を防止することができる。また、搬送中の用紙Pをローラ対同士の間で引っ張り合わない範囲であれば、搬送速度V2を反時計回りCCW方向ではなく、時計回りCW方向としても良い。この場合も加圧痕を防止することができる。尚、ここでもモータM1、M2′、M3′、M4′、M5の駆動制御による搬送速度V3は用紙Pに対するZ折り、内三つ折り、外三つ折りを行う場合の第2折り処理、二つ折りを行う場合の第1折り処理を実施するときの値である。
【0112】
以上に説明した折り処理装置は、用紙Pに折り処理を行う際、用紙Pを搬送部材対の接触部で挟持する搬送部材のうち、折り処理時に逆転させる搬送部材以外で加圧力の強い搬送部材は完全には停止させずに徐々に遅い搬送速度で用紙Pを搬送する制御を行う。これにより、加圧された搬送部材が用紙Pの一点に接している時間が短くなる。この結果、用紙Pへのダメージが低減され、しかも位置決め動作をしている間に用紙Pが折られてしまうことを適確に防止できる。
【0113】
尚、本発明は上述した各実施例に限定されず、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。シートを搬送する搬送部材としてローラを用いる代わりにベルトを用いても良い。上記各実施例は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能であるが、これらは添付した特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
8a、8b 従動ギヤ
9a、9b 伝達機構
10 ワンウェイクラッチ
11 電磁クラッチ
C 制御部
D1、D4 画像形成装置
D2 折り処理装置
D3 後処理装置
M1~M5、M2′、M3′、M4′ モータ
P 用紙
R1 入口ローラ対
R2 押し当てローラ
R2′′ 押し当てローラ対
R3 第1正逆転ローラ
R3′ 第1正逆転ローラ対
R4 第1折りローラ
R4′ 第1折りローラ対
R5 第2折りローラ
R5′ 第2折りローラ対
R6 第2正逆転ローラ対
R6a 遊び(空転領域)
R6a1 駆動部本体
R6a2 駆動軸
R6a3 被駆動部
R6a4 駆動部材
R6a5 空間部
S1~S5 加圧スプリング
SN1~SN3 用紙検知センサ
W1 スルー搬送路
W2、W2′、W2″ 分岐搬送路
【先行技術文献】
【特許文献】
【0115】