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特許7073818現像装置及びプロセスカートリッジユニット及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】現像装置及びプロセスカートリッジユニット及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/08 20060101AFI20220517BHJP
   G03G 21/18 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G03G15/08 226
G03G21/18 114
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018051256
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019164231
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一範
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 晃一
(72)【発明者】
【氏名】腰塚 慎之介
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-126764(JP,A)
【文献】特開2014-149424(JP,A)
【文献】特開2011-186280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/00
G03G 13/08
G03G 13/095
G03G 15/00
G03G 15/08
G03G 15/095
G03G 21/16 -21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界発生手段を内包し、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、
制部材と、を備え、
前記規制部材は、前記現像剤担持体と対向する先端を構成する磁性体である先端磁性板と、
前記先端磁性板を保持する本体部と、で構成され、
前記先端磁性板には、前記本体部に対する位置を固定するための穴が設けられており、前記穴の径Rと、前記穴から前記先端磁性板の規制側端部までの長さLが、
0.9963R+3.0671≦L≦7の関係となっていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記穴から前記先端磁性板の規制側端部までの長さLが、
0.9963R+3.0671≦L≦5の関係となっていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記穴は、前記現像剤担持体の画像形成領域幅の範囲に設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記穴に固定用部材が挿入され、当該固定用部材によって前記規制部材が固定されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の現像装置を具備することを特徴とするプロセスカートリッジユニット。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の現像装置を具備することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及びプロセスカートリッジユニット及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
像担持体上に現像剤であるトナーを用いて画像を形成する画像形成装置では、現像部においてトナーの供給量を規制するために板状の規制部材を備えている。一般にこの部材は、磁性を有する部材で構成されていて、ドクターブレードと称されることが多く、現像装置の基部に固定用部材となるネジで固定されたり、固定用部材となるピンによるカシメによって固定されている。このような規制部材の固定構造やそれを用いた現像装置及び画像形成装置としては、例えば特許文献1が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ネジやカシメにより規制部材を固定する場合、ネジやピンなどの固定用部材を挿入するための穴を規制部材に形成するが、穴を開けた箇所の法線磁気力が相対的に弱まり、磁気力のバラツキが生じ、現像剤の穂が寝て穴周辺部のみ汲み上げ量が増大することで、縦帯画像(異常画像)が発生してしまうことがある。
本発明は、規制部材を固定する際に必要となる穴の大きさ、位置を規定することで、規制部材に起因する規制部材の磁気力バラツキを低減することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するため、本発明に係る現像装置は、磁界発生手段を内包し、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、制部材と、を備え、規制部材は、現像剤担持体と対向する先端を構成する磁性体である先端磁性板と、先端磁性板を保持する本体部と、で構成され、先端磁性板には、本体部に対する位置を固定するための穴が設けられており、穴の径Rと、穴から先端磁性板の規制側端部までの幅Lが、0.9963R+3.0671≦L1≦7の関係となっていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、規制部材に起因する規制部材の磁気力バラツキを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図。
図2】本発明の実施形態に係る現像装置の構成を説明する図。
図3】現像装置が備える規制部材の構成を説明する図。
図4】規制部材の構成を説明する図であり、(a)は穴の無い部分の断面図、(b)は穴がある部分の断面図。
図5】穴直下の法線磁気力と穴の位置Lとの関係の計測結果を示す図。
図6】穴直下の法線磁気力と穴の位置Lとの関係の計測結果を示す図。
図7】穴の位置Lと規制ギャップGとの関係の計測結果を示す図。
図8】穴の位置Lと径の違いによる法線磁気力の特性を説明する図。
図9図8と条件を変更した際の穴の位置Lと径の違いによる法線磁気力の特性を説明する図。
図10】本発明の効果を得られる穴の径と穴の位置との関係を示す図。
図11】規制部材の変形例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明に係る実施形態について図面を用いて説明する。実施形態において、同一の機能や構成を有するものには同一の符号を付し、重複説明は適宜省略する。図面は一部構成の理解を助けるために、部分的に省略又は模式的に示す場合もある。
本発明に係る現像装置は、磁性部材で構成された板状の規制部材をネジによる締結やカシメなどよって固定する場合、規制部材に形成する穴の位置を規制部材の端部から離し、穴の大きさによって規制部材の規制側端部と穴との距離を最適化することで、穴周辺部の磁気力低下を抑制して、汲み上げ量の長手方向偏差を小さくして画像品質を安定させるようにしたものである。本実施形態の構成であると、計算上で規制部材に起因するその長手方向(主走査方向)での磁気力バラツキを20%以下に低減でき、画像品質を安定させることができる。
【0008】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、複数の感光体が並行配設されたタンデム型のカラーレーザー複写機(以下、単に「複写機」という)の一実施形態について説明する。
実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係る複写機の概略構成図である。この複写機は、プリンタ部100、これを載せる給紙装置200、プリンタ部100の上に固定されたスキャナ300などを備えている。また、このスキャナ300の上に固定された自動原稿搬送装置(以下、ADFという)400なども備えている。
プリンタ部100は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像を形成するための4つの作像ユニット(プロセスカートリッジユニット)18Y,18M,18C,18Kを有する画像形成ユニット20を備えている。各符号の末尾に付されたY,M,C,Kという添字は、イエロー、マゼンタ、シアン、黒用の部材であることを示している(以下同様)。
作像ユニット18Y,18M,18C,18Kの他には、光書込ユニット21、中間転写ユニット17、二次転写装置22、レジストローラ対49、ベルト定着方式の定着装置25などが配設されている。光書込ユニット21は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラーなどを有し、画像データに基づいて後述の感光体の表面にレーザー光を照射する。
【0009】
作像ユニット18Y,18M,18C,18Kは、ドラム状の感光体1、帯電器、現像装置4、ドラムクリーニング装置、除電器などを有している。以下、イエロー用の作像ユニット18Yを例にして説明する。帯電手段たる帯電器によって、感光体1Yの表面は一様帯電される。帯電処理が施された感光体1Yの表面には、光書込ユニット21によって変調及び偏向されたレーザー光が照射される。すると、照射部(露光部)の電位が減衰する。この減衰により、感光体1Yの表面にY用の静電潜像が形成される。形成されたY用の静電潜像は現像手段たる現像装置4Yによって現像されてYトナー像となる。
Y用の感光体1Y上に形成されたYトナー像は、後述する中間転写ベルト110に一次転写される。一次転写後の感光体1Yの表面は、ドラムクリーニング装置によって転写残トナーがクリーニングされる。その後、感光体1Yの表面は、除電器によって除電される。そして、帯電器によって一様帯電せしめられて、初期状態に戻る。以上のような一連のプロセスが、他の作像ユニット18M,18C,18Kにおいても同様に行われる。
【0010】
中間転写ユニット17は、中間転写ベルト110やベルトクリーニング装置90などを有している。また、張架ローラ14、駆動ローラ15、二次転写バックアップローラ16、4つの一次転写バイアスローラ62Y,62M,62C,62Kなども有している。中間転写ベルト110は、張架ローラ14を含む複数のローラによってテンション張架されている。そして、ベルト駆動モータによって駆動される駆動ローラ15の回転駆動によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。
4つの一次転写バイアスローラ62Y,62M,62C,62Kは、それぞれ中間転写ベルト110の内周面側に接触するように配設され、電源から一次転写バイアスの印加を受ける。また、中間転写ベルト110をその内周面側から感光体1Y,1M,1C,1Kに向けて押圧してY,M,C,K用の一次転写ニップを形成する。各一次転写ニップには、一次転写バイアスの影響により、感光体と一次転写バイアスローラとの間に一次転写電界が形成される。
【0011】
Y用の感光体1Y上に形成されたYトナー像は、この一次転写電界やニップ圧の影響によって中間転写ベルト110上に一次転写される。このYトナー像の上には、M,C,K用の感光体1M,C,K上に形成されたM,C,Kトナー像が順次重ね合わせて一次転写される。この重ね合わせの一次転写により、中間転写ベルト110上には多重トナー像たる4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像は、後述の二次転写ニップで記録体たる記録シートに二次転写される。二次転写ニップ通過後の中間転写ベルト110の表面に残留する転写残トナーは、図中左側の駆動ローラ15との間にベルトを挟み込むベルトクリーニング装置90によってクリーニングされる。
中間転写ユニット17の図中下方には、2本の張架ローラ23によって紙搬送ベルト24を張架している二次転写装置22が配設されている。紙搬送ベルト24は、少なくとも何れか一方の張架ローラ23の回転駆動に伴って、図中反時計回り方向に無端移動せしめられる。2本の張架ローラ23のうち、図中右側に配設された一方のローラは、中間転写ユニット17の二次転写バックアップローラ16との間に、中間転写ベルト110及び紙搬送ベルト24を挟み込んでいる。この挟み込みにより、中間転写ユニット17の中間転写ベルト110と、二次転写装置22の紙搬送ベルト24とが接触する二次転写ニップが形成されている。そして、この一方の張架ローラ23には、トナーと逆極性の二次転写バイアスが電源によって印加される。
【0012】
二次転写バイアスの印加により、二次転写ニップには中間転写ユニット17の中間転写ベルト110上の4色トナー像をベルト側からこの一方の張架ローラ23側に向けて静電移動させる二次転写電界が形成される。後述のレジストローラ対49によって中間転写ベルト110上の4色トナー像に同期するように二次転写ニップに送込まれた記録シートには、この二次転写電界やニップ圧の影響を受けた4色トナー像が二次転写せしめられる。
【0013】
複写機本体の下部に設けられた給紙装置200には、内部に複数の記録シートを紙束の状態で複数枚重ねて収容可能な給紙カセット44が、鉛直方向に複数重なるように配設されている。それぞれの給紙カセット44は、紙束の一番上の記録シートに給紙ローラ42を押し当てている。そして、給紙ローラ42を回転させることにより、一番上の記録シートを給紙路46に向けて送り出される。
給紙カセット44から送り出された記録シートを受け入れる給紙路46は、複数の搬送ローラ対47と、その路内の末端付近に設けられたレジストローラ対49とを有している。そして、記録シートをレジストローラ対49に向けて搬送する。レジストローラ対49に向けて搬送された記録シートは、レジストローラ対49のローラ間に挟まれる。一方、中間転写ユニット17において、中間転写ベルト110上に形成された4色トナー像は、ベルトの無端移動に伴って上記二次転写ニップに進入する。レジストローラ対49は、ローラ間に挟み込んだ記録シートを二次転写ニップにて4色トナー像に密着させ得るタイミングで送り出す。
【0014】
二次転写ニップでは、中間転写ベルト110上の4色トナー像が記録シートに密着する。そして、記録シート上に二次転写されて、白色の記録シート上でフルカラー画像となる。このようにしてフルカラー画像が形成された記録シートは、紙搬送ベルト24の無端移動に伴って二次転写ニップを出た後、紙搬送ベルト24上から定着装置25に送られる。
定着装置25は、定着ベルト26を2本のローラによって張架しながら無端移動せしめるベルトユニットと、このベルトユニットの一方のローラに向けて押圧される加圧ローラ27とを備えている。これら定着ベルト26と加圧ローラ27とは互いに当接して定着ニップを形成しており、紙搬送ベルト24から受け取った記録シートをここに挟み込む。ベルトユニットにおける2本のローラのうち、加圧ローラ27から押圧される方のローラは、内部に熱源を有しており、これの発熱によって定着ベルト26を加圧する。加圧された定着ベルト26は、定着ニップに挟み込まれた記録シートを加熱する。この加熱やニップ圧の影響により、フルカラー画像が記録シートに定着せしめられる。
定着装置25内で定着処理が施された記録シートは、プリンタ筐体の図中左側板の外側に設けたスタック部57上にスタックされるか、もう一方の面にもトナー像を形成するために上述の二次転写ニップに戻されるかする。
【0015】
原稿のコピーがとられる際には、例えばシート原稿の束がADF400の原稿台30上セットされる。但し、その原稿が本状に閉じられている片綴じ原稿である場合には、コンタクトガラス32上にセットされる。このセットに先立ち、複写機本体に対してADF400が開かれ、スキャナ300のコンタクトガラス32が露出される。この後、閉じられたADF400によって片綴じ原稿が押さえられる。
原稿がセットされた後、コピースタートスイッチが押下されると、スキャナ300による原稿読取動作がスタートする。但し、ADF400にシート原稿がセットされた場合には、この原稿読取動作に先立って、ADF400がシート原稿をコンタクトガラス32まで自動移動させる。原稿読取動作では、まず、第1走行体33と第2走行体34とがともに走行を開始し、第1走行体33に設けられた光源から光が発射される。そして、原稿面からの反射光が第2走行体34内に設けられたミラーによって反射せしめられ、結像レンズ35を通過した後、読取センサー36に入射される。読取センサー36は、入射光に基づいて画像情報を構築する。
【0016】
このような原稿読取動作と並行して、作像ユニット18Y,18M,18C,18K内の各機器や、中間転写ユニット17、二次転写装置22、定着装置25がそれぞれ駆動を開始する。そして、読取センサー36によって構築された画像情報に基づいて、光書込ユニット21が駆動制御されて、各感光体1Y,1M,1C,1K上に、Y,M,C,Kトナー像が形成される。これらトナー像は、中間転写ベルト110上に重ね合わせ転写された4色トナー像となる。
【0017】
原稿読取動作の開始とほぼ同時に、給紙装置200内では給紙動作が開始される。この給紙動作では、給紙ローラ42の1つが選択回転せしめられ、ペーパーバンク43内に多段に収容される給紙カセット44の1つから記録シートが送り出される。送り出された記録シートは、分離ローラ45で1枚ずつ分離されて給紙路46に進入した後、搬送ローラ対47によって二次転写ニップに向けて搬送される。このような給紙カセット44からの給紙に代えて、手差しトレイ51からの給紙が行われる場合もある。この場合、手差し給紙ローラ50が選択回転せしめられて手差しトレイ51上の記録シートを送り出した後、分離ローラ52が記録シートを1枚ずつ分離してプリンタ部100の手差し給紙路53に給紙する。
【0018】
2色以上のトナーからなる多色画像を形成する場合には、中間転写ベルト110をその上部張架面がほぼ水平になる姿勢で張架して、上部張架面に全ての感光体1Y,1M,1C,1Kを接触させる。これに対し、Kトナーのみからなるモノクロ画像を形成する場合には、姿勢調整機構により、中間転写ベルト110を図中左下に傾けるような姿勢にして、その上部張架面をY,M,C用の感光体1Y,M,Cから離間させる。そして、4つの感光体1Y,1M,1C,1Kのうち、K用の感光体1Kだけを図中反時計回りに回転させて、Kトナー像だけを作像する。この際、Y,M,Cについては、感光体1Y,1M,1Cだけでなく、現像器も駆動を停止させて、感光体や現像剤の不要な消耗を防止する。
【0019】
図2は、4つ作像ユニット18Y,M,C,Kのうちの何れか1つにおける現像装置4及び感光体1を示す拡大図である。4つの作像ユニット18Y,18M,18C,18Kは、それぞれ扱うトナーの色が異なる点の他がほぼ同様の構成になっているので、同図では「4」の後に付すY,M,C,Kという添字を省略している。
感光体1は図中矢印A方向に回転しながら、その表面が帯電装置によって帯電せしめられる。帯電した感光体1の表面は光書込ユニット21から照射されたレーザー光によって静電潜像を担持する。この静電潜像に対して現像装置4からトナーが供給されることで、静電潜像が現像されてトナー像になる。
現像装置4は、図中矢印B方向に回転しながら感光体1の表面の静電潜像にトナーを供給して静電潜像を現像する現像剤担持体としての現像ローラ5を有している。現像ローラ5に現像剤を供給しながら図の紙面に直交する方向に現像剤を搬送する供給搬送部材としての供給スクリュー8を具備する供給搬送路9を有している。供給搬送路9内では、供給スクリュー8の回転駆動により、磁性キャリア及びトナーを含有する現像剤がスクリュー回転軸線方向に搬送される。
【0020】
現像ローラ5は、非磁性パイプからなる中空構造の回転可能な現像スリーブ5aと、これに連れ回らないように内包され且つスリーブ回転方向に並ぶ複数の磁極を具備する磁界発生手段たるマグネットローラ5bとを有している。表面に複数のV溝あるいはサンドブラスト処理による複数の凹部を具備している現像スリーブ5aは、アルミ製又はステンレス製の素管からなる。現像スリーブ5aは、その回転に伴って供給搬送路9との対向部を通過する際に、回転不能なマグネットローラ5bの汲み上げ磁極の発する磁力により、供給搬送路9内の現像剤を汲み上げて担持する。これによって現像スリーブ5aの表面上に形成された現像剤の層は、規制ブレード12の先端と現像スリーブ5aの表面との間に形成される規制ギャップGを通過する際に、その層厚が所定の厚みに規制される。
【0021】
規制ギャップGを通過して所定の厚みに規制された現像剤層は、現像スリーブ5aの回転に伴って、感光体1と対向する現像領域に搬送されて現像に寄与する。その後、現像ローラ5の回転に伴って、回収スクリュー6との対向位置まで搬送される。その対向位置には、現像ローラ5に内包される回転不能なマグネットローラ5bの2つの反発磁極により、反発磁界が形成されている。現像剤層はその反発磁界の作用によって現像スリーブ5aの表面から離脱して回収搬送路7内の回収スクリュー6に回収される。
規制ブレード12の近傍であって且つ規制ブレード12よりも現像スリーブ5aの回転方向の上流側には、規制ブレード12によって規制されて規制ブレード12よりも上流側で滞留する現像剤の量を規制する滞留規制部材13が配設されている。この滞留規制部材13は、前述した規制ギャップGよりも大きな滞留ギャップを介して、現像スリーブ5aの表面に対向する対向部材である。
【0022】
供給搬送路9の下方であって回収搬送路7の側方には、攪拌搬送路10が配設されている。攪拌搬送路10内においては、撹拌スクリュー11の回転駆動により、現像剤が供給搬送路9とは逆に図の紙面の直交する方向における奥側から手前側に向けて搬送される。供給搬送路9と攪拌搬送路10とは仕切り部材としての第一仕切り壁133によって仕切られている。第一仕切り壁133の供給搬送路9と攪拌搬送路10とを仕切る箇所は図の紙面に直交する方向の手前側と奥側との両端は開口部となっており、供給搬送路9と攪拌搬送路10とが連通している。
供給搬送路9と回収搬送路7とも第一仕切り壁133によって仕切られているが、第一仕切り壁133の供給搬送路9と回収搬送路7とを仕切る箇所には開口部が設けられていない。また、攪拌搬送路10と回収搬送路7との2つの搬送路は仕切り部材としての第二仕切り壁134によって仕切られている。第二仕切り壁134は、図の紙面に直交する方向における手前側が開口部となっており、攪拌搬送路10と回収搬送路7とが連通している。
【0023】
供給スクリュー8、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11は樹脂製もしくは金属製のスクリュー部材からなっている。供給スクリューは2条巻き構造のスクリュー部材であり、回収スクリュー6及び攪拌スクリュー11は1条巻き構造のスクリュー部材である。
回収搬送路7に回収された現像剤は、図の紙面の直交する奥側から手前側に搬送され、手前側の端部付近に存在する開口部を通過して攪拌搬送路10に進入する。その直後に、攪拌搬送路10の上側に設けられたトナー補給口から補給されてくる新たなトナーと混合される。回収搬送路7の図中手前側端部まで搬送された現像剤は、第一仕切り壁133における図中手前側の端部に設けられた開口を通って、供給搬送路9内に進入する。
【0024】
攪拌搬送路10から供給搬送路9に進入した現像剤は、供給スクリュー8の回転駆動に伴って、図の紙面の直交する方向における手前側から奥側に向けて搬送される。その過程で、一部の現像剤が現像ローラ5に汲み上げられる。残りの現像剤は、供給搬送路9における図中奥側の端部まで搬送され、第一仕切り壁133の図中奥側の端部に設けられた開口部を通って攪拌搬送路10に戻される。攪拌搬送路10の底板には、トナー濃度センサーが設けられおり、制御部はトナー濃度センサーから出力に基づいて、必要に応じてトナー補給装置を駆動して現像剤のトナー濃度を回復させる。
【0025】
供給搬送路9の現像剤搬送方向の下流端近傍には、現像剤排出口94が設けられており、供給搬送路9内における現像剤の高さレベルが閾値を超えた場合には、現像剤排出口94から現像剤がオーバーフローする。そして、排出搬送スクリュー2aによって現像装置4の外部に排出される。
供給搬送路9内では、現像剤が移動する際の勢いや、供給スクリュー8の回転する力によって飛び跳ねることで、現像剤の高さレベルが閾値を超えていないにもかかわらず、現像剤が現像剤排出口94から排出されてしまうことがある。このような排出を防止するために、供給搬送路9の上方にブロック部材3を設け、供給スクリュー8の回転に伴って飛び跳ねようとする現像剤をブロック部材3に当てて供給スクリュー8に戻すようにしている。ブロック部材3は、その底面が供給スクリュー8の形状に沿ったR形状の樹脂製の部材である。供給スクリュー8の形状に沿ったR形状であることにより、供給スクリュー8全体を覆うようにブロック部材3の底面を全体的に供給スクリュー8に近接させることが可能になる。これにより、現像剤の飛び跳ねを確実に阻止することができる。
【0026】
図3は、現像装置4の規制ブレード12と現像ローラ5との位置関係を示す図である。図4(a)、図4(b)は規制ブレード12の固定用の穴のない部位と穴のある部位の断面図である。本実施形態に係る規制ブレード12は、板状のブレード本体部120と、板状の先端磁性板121とを有している。本実施形態において、先端磁性体は規制部材である。ステンレス板等からなるブレード本体部120は、規制ブレード12全体としてある程度の剛性を発揮できるように、比較的厚めの板状に成形された板状部材からなる。薄板状の先端磁性板121は、規制ブレード12における現像スリーブ5a(現像ローラ5)に対向する先端部を構成するものであり、比較的薄い磁性板からなる。この先端磁性板121がブレード本体部120におけるスリーブ回転方向上流側の面の先端部に固定用部材となるネジ60で固定されている。このため、先端磁性板121には、図3図4(b)に示すようにネジ60を挿入するための穴122が長手方向C(図3参照)に向かって複数形成されている。穴122は、それぞれ現像ローラ5の画像形成領域幅Wの範囲D内に配置されている。この画像形成領域幅Wとは、現像ローラ5に担持されたトナー像が感光体1上の静電潜像を現像する領域の長手方向幅であり、最大通紙幅に対応した幅でもある。それぞれの穴122から先端磁性板121の規制側端部となる先端121aまでの長さは同一とされている。
なお、ここでは、先端磁性板121をブレード本体部120に固定するのにネジ止めとしているが、ピンを穴122に挿入してカシメて固定するようにしてもよい。本発明は、磁性を有す板状部材に穴が形成されている場合、穴の分だけ磁性体が少なくなるため、穴の空いていない部位よりも磁気力が弱まり、汲み上げ量が変動することで縦帯画像が生じるという技術的課題がある構成であれば、特段、固定方法を限定するものではない。
【0027】
本発明者らは、穴122のない箇所と穴122のある箇所、それぞれについて法線方向磁気力を計算して、穴122のある箇所での磁気力低下量を求めた。従来の規制部材のように、穴の径や形成する位置などを気にしない条件で計算すると、穴の法線磁気力低下は約32%である。従来の規制部材では縦帯画像が発生することがあり、縦帯部の画像濃度偏差はΔID=0.03程度である。一般に縦帯が目立たなくなるレベルであるΔID=0.02以下(従来の3分の2以下)まで改善するには、磁気力低下を20%以下(従来の3分の2以下)にする必要がある。
本実施形態では、図4(b)に示すように、穴122の径(直径)をR、穴122から規制側端部となる先端磁性板121の先端121aまでの長さ(距離)をL、穴122から先端磁性板121の上端部121bまでの長さ(距離)をL、先端磁性板121の先端121aと現像ローラ5の表面までの距離G(すなわち規制制ギャップGの寸法)とし、これら4つのパラメータをそれぞれ振って磁気力を計算した。先端磁性板121(規制部材)の厚さtは0.3mmで固定した。適正な現像条件となる汲み上げ量にするため、通常、距離Gは0.3~0.6mm程度の範囲で設定される。
【0028】
図5図6図7は、穴位置(L,L)の水準振りの磁気力計算の結果をプロットした図である。図5は距離Lを変更した際の穴直下の法線磁気力の変化を示す図である。図5において、縦軸は穴がない箇所との磁気力比(%)を示し、横軸は穴の距離L2(mm)を示す。ここでは、(R=2,L+L=4.46、G=0.48mm固定)とした。図5によると、距離(長さ)Lを小さくし、距離(長さ)Lを大きくするほど、穴位置での磁気力低下は抑制できることがわかる。ただし、距離(長さ)Lを小さくしていくと、剛性の低下による変形などが懸念され、小さくするには限界がある。このため、距離(長さ)L=1mm程度が望ましい。以降の計算において、距離(長さ)L=1mmで固定とする。
【0029】
一方、図6は、穴位置(L,L)のうち、距離(長さ)Lを変更した際の穴直下の法線磁気力の変化を示す図である。図6において、縦軸は穴がない箇所との磁気力比(%)を示し、横軸は穴の位置(端部から穴までの長さ)L1(mm)を示す。図5によると、距離(長さ)Lを大きくしていくと、カシメ等で磁性板121を固定する際に磁性板121の変形が大きくなり先端121aの平面度が悪くなる。距離(長さ)Lが7mmを超えると、真直度0.3mmを超えて現像ローラ5と接触するリスクが高まるため、距離(長さ)Lは7mm以下にする必要がある。実際には3~5mm程度としている。このため、距離(長さ)Lは上記の通り5mm以下であると真直度の関係が良くなるのでより好ましい。
【0030】
図7は、距離G(すなわち規制制ギャップGの寸法)の水準振りの磁気力計算結果をプロットした図である。図7において、縦軸は端部から穴までの距離(長さ)L(mm)を示し、横軸は距離G(mm)を示す。図7によると、距離Gが大きいほど、穴部分の磁気力低下率は大きく、縦帯画像等の余裕度は小さくなる。磁気力低下を20%以下にするためには、距離Gが大きいほど距離(長さ)L1を大きくする必要がある。
【0031】
図8図9は、径Rと距離(長さ)Lの水準振りの磁気力計算結果をプロットした図である。図8は、距離(長さ)L=1、距離Gd=0.3とし、穴の大きさは4水準(R=1,2,3,4)の場合の、距離(長さ)Lの水準振りの結果を示す。図9は、距離(長さ)L=1、距離Gd=0.6とし、穴の大きさは4水準(R=1,2,3,4)としたときの距離(長さ)Lの水準振りの結果を示す。図8図9において、穴の大きさである径Rは、R1<R2<R3<R4の関係ある。図8図9によると、穴122の径(大きさ)Rが小さいほど、穴位置での磁気力低下は小さい。また、距離(長さ)Lが大きいほど穴位置での磁気力低下は小さい。
【0032】
図10は、穴部の磁気力低下が20%となる径R,距離(長さ)Lの条件を示す図である。ここでは、距離(長さ)L=1としている。同図において、縦軸は端部から穴までの距離(長さ)L(mm)を示し、横軸は穴121の径R(mm)を示し、距離Gdの変化をプロットしている。
図10の結果を元に、穴122の磁気力低下が20%となる径R,距離(長さ)Lの条件は、以下の条件を満たす構成とするとき、平面度を保ちつつ、穴122の磁気力低下が20%以下に抑えられ、縦帯画像を抑制できることが確認できた。
0.9963R+3.0671≦L≦7
【0033】
すなわち、本実施形態に係る現像装置4によると、磁界発生手段であるマグネットローラ5bを内包し、トナーを担持して搬送する現像剤担持体となる現像ローラ5と、磁性体によって構成される規制部材としての先端磁性体121を備えた構成において、先端磁性体121に設けた穴122の径Rと、穴122から先端磁性体121の規制側端部121aまでの幅Lを、0.9963R+3.0671≦L1≦7を満たすように設定することで、穴122の周辺部の磁気力低下を抑制できるので、汲み上げ量の長手方向Cでの穴122の空いている部位と空いていない部位での磁気力の偏差を小さくでき、画像品質を安定させることができる。
【0034】
また、穴122から規制部材の規制側端部122aまでの距離(長さ)Lを0.9963R+3.0671≦L1≦5の関係を満たすように設定すれば、すなわち、距離(長さ)Lを上記の通り5mm以下とすることで、真直度がL1≦7の場合よりも好ましいものとなる。
穴122は、現像ローラ5の画像形成領域幅の範囲に設けられているので、上記関係を満足すように形成することで、より画像品質を安定させることができる。
【0035】
上記の実施形態において、規制部材となる規制ブレード12は、ブレード本体部120、先端磁性板121の2つの部材で構成し、先端磁性板121をブレード本体部120に固定する際に固定用部材を挿入する穴122と先端磁性板121の規制側端部となる先端121aまでの位置関係について規定したが、規制部材の形態はこのような形態に限定されるものではない。
例えば、図11に示すように、磁性を有する1枚の板状部材220の長手方向Cに穴122を形成し、現像装置4のケーシング40に、直接、ネジ60で固定する形態の規制ブレード12Aであってもよい。この場合には、ケーシング40に板状部材220を取り付けて固定する穴122と板状部材220の規制側端部となる先端220aでの長さをLとすれば、実施形態で説明したものと同様の作用効果を得ることができる。
【0036】
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
1 画像形成装置
4(Y、M、C、K)現像装置
5 現像剤担持体(現像ローラ)
5a 現像スリーブ
5b 磁界発生手段(マグネットローラ)
12、220 規制部材
18(Y、M、C、K)プロセスカートリッジ
60 固定用部材(ネジ)
120 ブレード本体部
121 先端磁性体(規制部材)
121a 規制側端部(先端)
122 穴
D 領域
穴から規制側端部までの長さ
R 穴の径(直径)
W 画像形成領域幅
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【文献】特開2014-085655号公報
図1
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図11