(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】液体吐出装置、処理方法決定装置及び処理方法決定プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
B41J2/01 203
(21)【出願番号】P 2018051758
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】津田 直明
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-260338(JP,A)
【文献】特開2014-113690(JP,A)
【文献】特開2004-338402(JP,A)
【文献】特開2008-149564(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0058295(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に液体を吐出して液体塗布面を形成する液体吐出ヘッドと、
前記対象物を搬送する搬送部材と、
前記液体塗布面を形成するための複数の異なるパターンデータをもとに、前記液体吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御するヘッド制御部と、
前記パターンデータに対応する前記液体塗布面が形成されるように、前記搬送部材による前記対象物の搬送を制御する搬送制御部と、
前記液体塗布面が形成された前記対象物それぞれの所定位置を撮像する撮像部と、
撮像された前記所定位置の撮像画像それぞれをもとに、前記液体塗布面の形成処理方法を決定する決定部と
、を有し、
前記搬送制御部は、前記液体吐出ヘッドの連続する走査で前記液体塗布面の一部が重なる重なり部が形成されるように、前記搬送部材による前記対象物の搬送を制御し、
前記撮像部は、前記液体塗布面が形成された前記対象物それぞれの前記重なり部を撮像し、
前記決定部は、撮像された前記重なり部の前記撮像画像それぞれをもとに、前記液体吐出ヘッドによる前記液体塗布面の前記形成処理方法を決定し、
前記重なり部は、前記液体吐出ヘッドによる連続する走査間におけるドットの発生率が異なり、前記液体吐出ヘッドによる連続する走査間において前記重なり部を形成するために使用されるノズル数が異なり、且つ、前記ドットがランダムに発生するマスクを含むパターンデータをもとに、連続する走査で形成される、ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記撮像画像から得られた特徴量をもとに、品質がより良い前記液体塗布面の前記形成処理方法を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記特徴量の標準偏差と、前記特徴量の最大ピーク値及び最小ピーク値の差分値とをもとに、品質がより良い前記液体塗布面の前記形成処理方法を決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記マスクは、主走査方向の幅が副走査方向の幅の所定倍以上である
ことを特徴とする請求項
1から3のいずれか一に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドは、主走査方向においてノズルの一部が重なるように複数配置される
ことを特徴とする請求項1~
4の何れか一つに記載の液体吐出装置。
【請求項6】
複数の異なるパターンデータをもとに液体塗布面が形成された対象物それぞれの所定位置が撮像された撮像画像を取得する取得部と、
取得された前記撮像画像それぞれをもとに、前記液体塗布面の形成処理方法を決定する決定部と
、を有し、
前記対象物は、当該対象物に液体を吐出して前記液体塗布面を形成する液体吐出ヘッドの連続する走査で前記液体塗布面の一部が重なる重なり部が形成されるように、搬送部材によって搬送され、
前記取得部は、前記対象物それぞれの前記重なり部が撮像された撮像画像を取得し、
前記決定部は、撮像された前記重なり部の前記撮像画像それぞれをもとに、前記液体吐出ヘッドによる前記液体塗布面の前記形成処理方法を決定し、
前記重なり部は、前記液体吐出ヘッドの連続する走査間においてドットの発生率が異なり、前記液体吐出ヘッドによる連続する走査間において前記重なり部を形成するために使用されるノズル数が異なり、且つ前記ドットがランダムに発生するマスクを含むパターンデータをもとに、連続する走査で形成される、ことを特徴とする処理方法決定装置。
【請求項7】
複数の異なるパターンデータをもとに液体塗布面が形成された対象物それぞれの所定位置が撮像された撮像画像を取得する
取得ステップと、
取得された前記撮像画像それぞれをもとに、前記液体塗布面の形成処理方法を決定する
決定ステップと
、をコンピュータに実行させ、
前記対象物は、当該対象物に液体を吐出して前記液体塗布面を形成する液体吐出ヘッドの連続する走査で前記液体塗布面の一部が重なる重なり部が形成されるように、搬送部材によって搬送され、
前記取得ステップは、前記対象物それぞれの前記重なり部が撮像された撮像画像を取得し、
前記決定ステップは、撮像された前記重なり部の前記撮像画像それぞれをもとに、前記液体吐出ヘッドによる前記液体塗布面の前記形成処理方法を決定し、
前記重なり部は、前記液体吐出ヘッドの連続する走査間においてドットの発生率が異なり、前記液体吐出ヘッドによる連続する走査間において前記重なり部を形成するために使用されるノズル数が異なり、且つ前記ドットがランダムに発生するマスクを含むパターンデータをもとに、連続する走査で形成される、処理方法決定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、処理方法決定装置及び処理方法決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット式のプリンタには、インク等の液体を吐出するノズルを用紙等の媒体の搬送方向に複数個繋げて構成された液体吐出ヘッドが備えられている。かかるプリンタでは、液体吐出ヘッドを1ライン分走査させ、媒体を所定量移動させた後に、液体吐出ヘッドを次の1ライン分走査させる、といった動作を繰り返し行なうことで、媒体上に液体塗布面を形成していく。このように、液体塗布面の形成を複数の走査によって実現する場合は、走査ごとの帯状の濃度差(バンディング等)が媒体上に発生することがある。
【0003】
バンディング等の画像不良の低減に関して、特許文献1(特許第5824828号公報)では、画像不良が生じた場合に、画像補正を行なうための補正領域の形状や大きさについて開示されている。また、バンディングの発生を低減するために、例えば、ノズルの下部とノズルの上部とから異なる走査で媒体上の同一箇所に液体を吐出させる技術がある。つまり、かかる技術では、ノズルの一部を連続する走査で重ねて液体を吐出することで、スジや濃淡ムラ等の画像不良を低減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術は、使用環境等によって異なる画像不良に対応することができないという問題がある。具体的には、ノズルの一部を連続する走査で重ねて液体を吐出したり、画像不良が生じた場合に画像補正を行なったりする従来技術は、媒体の種類や搬送精度、液体の吐出条件等の使用環境によって具合が異なる画像不良に対応することが困難である。つまり、画像不良は種々の条件によって変動するため、従来技術は、このような変動に汎用して対応できない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、使用環境等が異なる場合であっても、画像不良を抑制するための好適な条件を出力することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る液体吐出装置は、対象物に液体を吐出して液体塗布面を形成する液体吐出ヘッドと、前記対象物を搬送する搬送部材と、前記液体塗布面を形成するための複数の異なるパターンデータをもとに、前記液体吐出ヘッドによる前記液体の吐出を制御するヘッド制御部と、前記パターンデータに対応する前記液体塗布面が形成されるように、前記搬送部材による前記対象物の搬送を制御する搬送制御部と、前記液体塗布面が形成された前記対象物それぞれの所定位置を撮像する撮像部と、撮像された前記所定位置の撮像画像それぞれをもとに、前記液体塗布面の形成処理方法を決定する決定部と、を有し、前記搬送制御部は、前記液体吐出ヘッドの連続する走査で前記液体塗布面の一部が重なる重なり部が形成されるように、前記搬送部材による前記対象物の搬送を制御し、前記撮像部は、前記液体塗布面が形成された前記対象物それぞれの前記重なり部を撮像し、前記決定部は、撮像された前記重なり部の前記撮像画像それぞれをもとに、前記液体吐出ヘッドによる前記液体塗布面の前記形成処理方法を決定し、前記重なり部は、前記液体吐出ヘッドの連続する走査間においてドットの発生率が異なり、前記液体吐出ヘッドによる連続する走査間において前記重なり部を形成するために使用されるノズル数が異なり、且つ前記ドットがランダムに発生するマスクを含むパターンデータをもとに、連続する走査で形成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用環境等が異なる場合であっても、画像不良を抑制するための好適な条件を出力することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る液体吐出装置の内部の機械的構成を示す上面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る液体吐出装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図4A】
図4Aは、ライン状のスジが発生する画像不良の例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、濃さが異なる帯状の画像が発生する画像不良の例を示す図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る液体吐出装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係るパターンデータを用いて重なり部を形成する例を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施の形態1に係る重なり部を形成するパターンデータの例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係るRGB値の測定結果の例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施の形態1に係る液体塗布面の形成処理方法を決定する例を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係る液体吐出装置による処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施の形態2に係る印刷システムのシステム構成例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施の形態2に係る処理方法決定装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【
図13】
図13は、実施の形態2に係る処理方法決定装置の機能構成例を示すブロック図である。
【
図14】
図14は、実施の形態2に係る処理方法決定装置による処理の流れの例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、変形例に係る液体吐出ヘッドの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る液体吐出装置、処理方法決定装置及び処理方法決定プログラムの実施の形態を説明する。以下の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、各実施の形態は、内容を矛盾させない範囲で、適宜組み合わせることができる。
【0010】
(実施の形態1)
図1及び
図2を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100の機械的な構成を説明する。
図1は、実施の形態1に係る液体吐出装置100の斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る液体吐出装置100の内部の機械的構成を示す上面図である。
【0011】
図1に示すように、液体吐出装置100は、主走査方向(図中矢印A方向)に往復移動するキャリッジ118を備える。キャリッジ118は、主走査方向に沿って延設された主ガイドロッド3により支持される。また、キャリッジ118には、連結片118aが設けられている。連結片118aは、主ガイドロッド3と平行に設けられた副ガイド部材4に係合し、キャリッジ118の姿勢を安定させる。
【0012】
キャリッジ118は、駆動プーリ9と従動プーリ10との間に帳架されたタイミングベルト11に連結されている。駆動プーリ9は、主走査モータ116の駆動により回転する。従動プーリ10は、駆動プーリ9との間の距離を調整する機構を有し、タイミングベルト11に対して所定のテンションを与える役割を持つ。キャリッジ118は、主走査モータ116の駆動によりタイミングベルト11が送り動作されることで、主走査方向に往復移動する。キャリッジ118の移動量や移動速度は、例えば
図2に示すように、キャリッジ118に設けられた主走査エンコーダセンサ17がエンコーダシート14のマークを検知して出力するエンコーダ値に基づいて制御される。
【0013】
キャリッジ118には、液体吐出ヘッド119(
図3参照)が搭載される。液体吐出ヘッド119は、例えばイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)等の色のインクを吐出する複数のノズルを副走査方向(図中矢印B方向)にそれぞれ並べたノズル列を有する。なお、液体吐出ヘッド119によって吐出されるインクの色やノズル列の数はこれに限定されるものではない。液体吐出ヘッド119は、インク等の液体の吐出面(ノズル面)が下方(媒体P側)に向くように、キャリッジ118に支持されている。液体吐出ヘッド119は、液体吐出装置100に入力されたデータ(入力データ)に基づいて、媒体Pにインク等の液体を吐出して液体塗布面を形成する。
【0014】
液体吐出ヘッド119にインク等の液体を供給するための供給体であるカートリッジ7は、キャリッジ118には搭載されず、液体吐出装置100の所定の位置に配置されている。カートリッジ7と液体吐出ヘッド119とはパイプ等で連結されており、このパイプを介して、カートリッジ7から液体吐出ヘッド119に対してインク等の液体が供給される。
【0015】
液体吐出ヘッド119の吐出面と対向する位置には、
図2に示すように、プラテン16が設けられている。プラテン16は、液体吐出ヘッド119から媒体Pにインクが吐出される際に、媒体Pを支持するためのものである。例えば、プラテン16には、厚み方向に貫通する貫通孔が多数設けられ、個々の貫通孔を取り囲むようにリブ状の突起が形成されている。そして、プラテン16の媒体Pを支持する面とは逆側に設けられた吸引ファンを作動させることで、プラテン16上から媒体Pが脱落することを抑制する構成となっている。媒体Pは、副走査モータ117(
図3参照)によって駆動される搬送ローラにより挟持され、プラテン16上を、副走査方向(図中矢印B方向)に間欠的に搬送される。
【0016】
液体吐出ヘッド119には、上述したように、副走査方向に並ぶように形成された複数のノズルが設けられている。液体吐出装置100は、媒体Pを副走査方向に間欠的に搬送し、媒体Pの搬送が停止している間に、キャリッジ118を主走査方向に往復移動させながら、入力データに応じて液体吐出ヘッド119のノズルを選択的に駆動し、液体吐出ヘッド119からプラテン16上の媒体Pにインク等の液体を吐出して、媒体Pに液体塗布面を形成する。
【0017】
ここで、媒体Pは、液体が付着可能なもの、すなわち、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布の記録媒体や、電子基板、圧電素子等の電子部品、紛体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の記録媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。また、液体が付着可能なものの材質としては、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的にでも付着可能であれば良い。本実施の形態に係る液体吐出装置100では、媒体Pの一例である用紙に画像形成(印刷)している。
【0018】
図1に戻り、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド119の信頼性を維持するための維持機構15を備える。維持機構15は、液体吐出ヘッド119の吐出面の清掃やキャッピング、液体吐出ヘッド119からの不要なインクの排出等を行なう。
【0019】
液体吐出装置100を構成する上記の各構成要素は、外装体2の内部に配置されている。外装体2には、カバー部材2aが開閉可能に設けられている。液体吐出装置100のメンテナンス時やジャム発生時には、カバー部材2aを開けることにより、外装体2の内部に設けられた各構成要素に対して作業を行なうことができる。
【0020】
次に、
図3を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成を説明する。
図3は、実施の形態1に係る液体吐出装置100のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0021】
図3に示すように、液体吐出装置100は、制御部101を備える。また、液体吐出装置100は、装置全体の制御を司るCPU(Central Processing Unit)102を備える。液体吐出装置100は、CPU102に対して、ROM(Read Only Memory)103と、RAM(Random Access Memory)104と、不揮発性メモリ(NVRAM:Non‐Volatile RAM)105と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)106とを接続する。
【0022】
ROM103は、CPU102が実行するプログラムや、その他の固定データ等を格納する。RAM104は、画像データ等を一時格納する。不揮発性メモリ105は、液体吐出装置100の電源が遮断されている間もデータを保持する。ASIC106は、各種信号処理や並び替え等を行なう画像処理、その他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0023】
また、制御部101は、I/F107と、印刷制御部108と、主走査モータ駆動部109と、副走査モータ駆動部110と、I/O111とを備える。また、制御部101は、操作パネル112と、環境センサ113と、読取センサ114とを接続する。
【0024】
I/F107は、ホスト側との間でデータや信号を送受するインタフェースである。具体的には、I/F107は、情報処理装置、画像読取装置、撮像装置等のホストのプリンタドライバが生成した印刷データ等を、ケーブルやネットワーク等を介して受信する。つまり、制御部101に対する印刷データの生成出力は、ホスト側のプリンタドライバによって行なわれても良い。CPU102は、I/F107に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析する。そして、ASIC106にて画像処理やデータの並び替え処理等が行なわれ、画像データが印刷制御部108やヘッドドライバ115に転送される。
【0025】
印刷制御部108は、液体吐出ヘッド119を駆動するための駆動波形を生成するとともに、液体吐出ヘッド119がノズルから液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を選択駆動させる画像データ及びそれに伴う各種データを、ヘッドドライバ115に出力する。
【0026】
印刷制御部108は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ構成となっていても良い。印刷制御部108は、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行することによって所望の機能を発揮する。
【0027】
印刷制御部108のCPUが実行するプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
【0028】
さらに、印刷制御部108のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることで提供するように構成しても良い。また、印刷制御部108のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。
【0029】
主走査モータ駆動部109は、主走査モータ116を駆動する。主走査モータ116は、駆動により、液体吐出ヘッド119を備えたキャリッジ118を主走査方向に移動させる。副走査モータ駆動部110は、副走査モータ117を駆動する。副走査モータ117は、駆動により、液体吐出ヘッド119による液体の吐出対象となる対象物(例えば、媒体P)を搬送する搬送部材120(例えば、上述した搬送ローラ等)を動作させる。
【0030】
I/O111は、環境センサ113や読取センサ114からの情報を取得し、液体吐出装置100の各部の制御に要する情報を抽出する。例えば、環境センサ113は、環境温度や環境湿度等を検出する。また、読取センサ114は、液体塗布面が形成された媒体Pの所定位置を撮像する2次元センサである。かかる読取センサ114は、「撮像部」に対応する。なお、I/O111は、環境センサ113や読取センサ114以外の各種センサからの情報も入力する。操作パネル112は、各種情報の入力や表示を行なう。
【0031】
ここで、液体吐出装置100における印刷制御処理の概略について説明する。
【0032】
液体吐出装置100のCPU102は、I/F107の受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC106にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行なって印刷制御部108に転送する。
【0033】
印刷制御部108は、所要のタイミングでヘッドドライバ115に画像データや駆動波形を出力する。詳細には、印刷制御部108は、ROM103に格納されてCPU102で読み出される駆動パルスのパターンデータをD/A変換して増幅することにより、1つの駆動パルス或いは複数の駆動パルスで構成される駆動波形を生成する。
【0034】
なお、画像出力するための画像データ(例えば、ドットパターンデータ)の生成は、例えばROM103にフォントデータを格納して行なっても良いし、ホスト側のプリンタドライバで画像データをビットマップに展開して液体吐出装置100に転送するようにしても良い。
【0035】
ヘッドドライバ115は、入力される画像データ(例えば、ドットパターンデータ)に基づいて、印刷制御部108から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを、選択的に液体吐出ヘッド119の圧力発生手段に対して印加することにより、液体吐出ヘッド119を駆動する。
【0036】
次に、
図4A及び
図4Bを用いて、画像不良について説明する。
図4Aは、ライン状のスジが発生する画像不良の例を示す図である。
図4Bは、濃さが異なる帯状の画像が発生する画像不良の例を示す図である。
【0037】
図4Aに示すように、インクジェット方式によって画像形成する場合は、液体吐出ヘッド119を走査する方向に、白又は色が濃くなったライン状のスジが発生する画像不良となる可能性がある。また、
図4Bに示すように、インクジェット方式によって画像形成する場合は、液体吐出ヘッド119を走査する方向に、濃度の濃い部分と薄い部分とが帯状に交互に発生する画像不良となる可能性がある。これらの画像不良は、媒体Pを搬送する方向に一定間隔で発生する場合が多い。また、これらの画像不良は、液体吐出ヘッド119の連続する走査で形成される液体塗布面の境や、多層に液体塗布面を形成したときに発生することがある。本実施の形態では、液体塗布面の境を含む部分や、多層に液体塗布面を形成する部分を、「つなぎ処理範囲」と呼ぶ場合がある。
【0038】
画像不良の要因としては、媒体Pを搬送する際に、搬送量に誤差が生じてドットの位置がずれてしまう場合、一部のノズルが吐出不安定になり吐出されるインク滴の大きさが小さくなる場合、吐出速度が遅くなって着弾位置がずれてしまう場合等である。このような画像不良がベタ部に発生した場合は、該当する特徴量(例えば、RGB値等)で見た時に、ばらつきや、最大のピーク値と最小のピーク値との差分値が大きくなる。本実施の形態は、これらのデータを比較することで、画像不良を抑制可能な画像処理方法を見出す。また、これらの要因は、初期に生じていなくても使用環境等によって発生する場合があり、発生する画像不良の程度も良くなる場合もあるし、悪くなる場合もある。
【0039】
そこで、本実施の形態では、複数の異なるパターンデータをもとに媒体Pに液体塗布面を形成し、画像不良が発生する可能性がある所定位置を読取センサ114で撮像し、撮像画像をもとに、画像不良を抑制するための画像処理方法を決定する。所定位置は、上述したつなぎ処理範囲を含む。
【0040】
次に、
図5を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100の機能構成を説明する。
図5は、実施の形態1に係る液体吐出装置100の機能構成例を示すブロック図である。
【0041】
図5に示すように、液体吐出装置100は、ヘッド制御部151と、搬送制御部152と、決定部153とを有する。
【0042】
ヘッド制御部151は、液体吐出ヘッド119による液体の吐出を制御する。より具体的には、ヘッド制御部151は、媒体Pに液体塗布面を形成するための複数の異なるパターンデータ(例えば、上述したドットパターンデータ等の画像データ)をもとに、液体吐出ヘッド119による液体の吐出を制御する。パターンデータは、画像不良が発生する可能性がある各パターンに対応する。パターンデータの詳細については後述する。ヘッド制御部151は、印刷制御部108やヘッドドライバ115の機能の一つである。
【0043】
搬送制御部152は、搬送部材120による媒体Pの搬送を制御する。より具体的には、搬送制御部152は、パターンデータに対応する液体塗布面が形成されるように、搬送部材120による媒体Pの搬送を制御する。例えば、搬送制御部152は、パターンデータに対応する液体塗布面が形成されるように、副走査モータ駆動部110等に、媒体Pの搬送量を指示する。
【0044】
搬送制御部152は、パターンデータによっては、例えば液体吐出ヘッド119の連続する走査で液体塗布面の一部が重なる重なり部が形成されるように、搬送部材120による媒体Pの搬送を制御する。例えば、重なり部は、ドットの発生率が異なり、且つ、ドットがランダムに発生するマスクを含むパターンデータをもとに、液体吐出ヘッド119の連続する走査で形成される。従って、読取センサ114は、この重なり部を含む所定位置を撮像する場合がある。
【0045】
決定部153は、撮像画像をもとに、液体塗布面の形成処理方法を決定する。より具体的には、決定部153は、読取センサ114によって撮像された媒体Pの所定位置(上述した「重なり部」を含む場合がある)の撮像画像それぞれから、RGB値等の特徴量を測定し、品質がより良い液体塗布面の形成処理方法を決定する。上述したように、RGB値のばらつきや、最大のピーク値と最小のピーク値との差分値が大きいと、画像不良が発生している可能性がある。このため、決定部153は、RGB値の標準偏差と、RGB値の最大のピーク値及び最小のピーク値の差分値とをもとに、品質がより良い液体塗布面の形成処理方法を決定する。
【0046】
例えば、標準偏差をDev、差分値をPeとする場合、決定部153は、Dev+Peが最も小さい値(ばらつきや誤差がより少ない)となったパターンデータを選択し、このパターンデータをもとにした液体塗布面の形成時の各種条件を、品質がより良い液体塗布面の形成処理方法(最適条件)とする。決定部153によって決定された形成処理方法は、次回以降の印刷における条件としてフィードバックすることができる。
【0047】
次に、
図6を用いて、実施の形態1に係るパターンデータを用いて重なり部を形成する場合を説明する。
図6は、実施の形態1に係るパターンデータを用いて重なり部を形成する例を説明する図である。
【0048】
図6に示すように、液体吐出ヘッド119は、ヘッド制御部151による制御に従い、n走査目の液体塗布面を媒体Pに形成する。その後、液体吐出ヘッド119は、n走査目と連続する走査であるn+1走査目の液体塗布面を媒体Pに形成する。このとき、搬送制御部152は、n走査目とn+1走査目とで、液体塗布面の一部が多層になるように媒体Pの搬送を制御する。これらにより、媒体Pには、重なり部が形成される。
図6では、n走査目において、媒体Pの搬送方向に対して液体吐出ヘッド119の上流側のノズル6つ、n+1走査目において、媒体Pの搬送方向に対して液体吐出ヘッド119の下流側のノズル6つにより、重なり部を形成する例を示している。読取センサ114は、このようにして形成された重なり部を含む所定位置を撮像する。なお、xは、媒体Pにおける位置を示す(
図8参照)。
【0049】
図7は、実施の形態1に係る重なり部を形成するパターンデータの例を示す図である。
【0050】
図7に示すように、重なり部は、n走査目の液体吐出ヘッド119の上流側のノズルと、n+1走査目の液体吐出ヘッド119の下流側のノズルとの両方から吐出されるドットで構成される。例えば、重なり部は、副走査方向にドットの発生率を90パーセントから10パーセントまで漸減させ、且つ、ランダムに発生させたマスクをかけて、上流側と下流側とのドットを組み合わせたときのドット発生率が100パーセントになるようにする。また、例えば、マスクの主走査方向の幅は、繰り返しパターンが目立たなくなるように、副走査方向の幅の4倍以上としている。
【0051】
このような液体吐出ヘッド119の走査によって媒体Pに液体塗布面を形成した場合に、画像不良を検知する方法としては、重なり部を含む所定位置を読取センサ114で撮像した撮像画像のRGB値を測定する。その際、x方向(
図6参照)にRGB値をとっていくと、
図8に示すグラフのようになる。
【0052】
図8は、実施の形態1に係るRGB値の測定結果の例を示す図である。
【0053】
図8に示すように、重なり部においてスジが発生する画像不良である場合は、グラフのピーク値が大きく現れる。また、重なり部において濃淡ムラが発生する画像不良である場合は、細かい変動成分が現れ、標準偏差が大きくなる。従って、決定部153は、これらの値を読み取ることにより、重なり部に特有の画像不良を検出できる。
【0054】
図9は、実施の形態1に係る液体塗布面の形成処理方法を決定する例を説明する図である。なお、
図9において、重ねノズル数とは、n走査目とn+1走査目との液体の吐出で重なり部を形成するために使用されたノズル数を指す。例えば、上述した
図6では重ねノズル数は「6」である。また、重ねノズル数を表すtとuとの関係は、t<uとする。なお、
図9に示す破線の枠は、つなぎ処理範囲を表している。つなぎ処理範囲には、重なり部が含まれる場合がある。
【0055】
図9に示すように、処理方法Aは、
図7で示したパターンデータを用いて処理したときを表している。処理方法Aでは、マスクをかけているから、スジや濃淡ムラが発生しにくい。処理方法Bは、n+1走査目の液体吐出ヘッド119のドット発生率を100パーセントとしている。処理方法Bのつなぎ処理範囲に含まれる線は、スジを表している。処理方法Bにおけるスジは、媒体Pの搬送方向の下流側に発生する可能性がある。
【0056】
処理方法Cは、n走査目の液体吐出ヘッド119のドット発生率を100パーセントとしている。処理方法Cのつなぎ処理範囲に含まれる線は、スジを表している。処理方法Cにおけるスジは、媒体Pの搬送方向の上流側に発生する可能性がある。処理方法Dは、n走査目の液体吐出ヘッド119のドット発生率を50パーセント、n+1走査目の液体吐出ヘッド119のドット発生率を50パーセントとしている。処理方法Dのつなぎ処理範囲に含まれる線は、スジを表している。処理方法Dにおけるスジは、媒体Pのつなぎ処理範囲のほぼ中央に発生する可能性がある。なお、処理方法の種類や重ねノズル数の数は、上記のものに限られない。
【0057】
決定部153は、各処理方法、各重ねノズル数によって液体塗布面が形成された媒体Pの所定位置の撮像画像それぞれから、RGB値を測定し、標準偏差Dev+差分値Peを算出する。そして、決定部153は、算出した値が最も小さい値となったパターンデータを選択し、選択したパターンデータをもとにした液体塗布面の形成時の各種条件を、品質がより良い液体塗布面の形成処理方法(最適条件)とする。例えば、Dev+Peの値が、
図9に示す左下のパターンデータで最小になった場合、最適条件は、処理方法A、重ねノズル数uとなる。
【0058】
また、処理方法B、処理方法C、処理方法Dは、つなぎ処理範囲にスジが発生する可能性がある処理方法であるが、液体吐出ヘッド119の特性によっては、処理方法Aのようにマスクをかけない方が液体塗布面の品質が良い場合もある。このため、本実施の形態では、様々な処理方法や重ねノズル数に対応する液体塗布面の形成を実施している。
【0059】
次に、
図10を用いて、実施の形態1に係る液体吐出装置100による処理の流れを説明する。
図10は、実施の形態1に係る液体吐出装置100による処理の流れの例を示すフローチャートである。
【0060】
図10に示すように、液体吐出装置100は、複数の異なるパターンデータをもとに、印刷を行なう(ステップS101)。そして、液体吐出装置100は、印刷物それぞれの所定位置を撮像する(ステップS102)。続いて、液体吐出装置100は、所定位置を撮像した撮像画像のRGB値を測定し、RGB値の標準偏差Devと、RGB値の最大のピーク値及び最小のピーク値の差分値Peとを算出する(ステップS103)。
【0061】
その後、液体吐出装置100は、標準偏差Dev+差分値Peが最小となる印刷物を特定する(ステップS104)。そして、液体吐出装置100は、標準偏差Dev+差分値Peが最小となる印刷物を印刷したときの、処理方法と重ねノズル数とを、品質がより良い印刷物の画像形成処理方法として決定する(ステップS105)。
【0062】
上述したように、液体吐出装置100は、複数の異なるパターンデータをもとに媒体Pに液体塗布面を形成し、液体塗布面が形成された所定位置を撮像して得られた撮像画像のRGB値を測定する。そして、液体吐出装置100は、RGB値の標準偏差Devと、RGB値の最大のピーク値及び最小のピーク値の差分値Peとから、標準偏差Dev+差分値Peの値が最小となるパターンデータを選択する。液体吐出装置100は、選択したパターンデータをもとにした液体塗布面の形成時の重ねノズル数や処理方法を、品質がより良い液体塗布面の形成処理方法として決定する。これらの結果、液体吐出装置100は、使用環境等が異なる場合であっても、画像不良を抑制するための好適な条件を出力することができる。
【0063】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、液体吐出装置100が、より良い品質となる液体塗布面の形成処理方法を決定する場合を説明した。より良い品質となる液体塗布面の形成処理方法の決定は、液体吐出装置100に接続された外部装置によって実施されても良い。実施の形態2では、液体吐出装置100に接続された外部装置によって、より良い品質となる液体塗布面の形成処理方法が決定される場合を説明する。なお、実施の形態2では、実施の形態1と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明を省略する場合がある。
【0064】
図11は、実施の形態2に係る印刷システム1のシステム構成例を示す図である。
【0065】
図11に示すように、印刷システム1には、液体吐出装置100と、処理方法決定装置200とが含まれる。
【0066】
液体吐出装置100は、実施の形態1で説明した各構成要素により、複数の異なるパターンデータをもとに媒体Pに液体塗布面を形成し、液体塗布面が形成された媒体Pの所定位置を撮像する処理を行なう。実施の形態2において、液体吐出装置100は、所定位置を撮像した撮像画像それぞれを処理方法決定装置200に対して送信する。
【0067】
処理方法決定装置200は、液体吐出装置100から、所定位置を撮像した撮像画像それぞれを取得し、取得した撮像画像それぞれをもとに、より良い品質となる液体塗布面の形成処理方法を決定する処理を行なう。例えば、処理方法決定装置200は、PC(Personal Computer)等の情報処理装置である。
【0068】
図12は、実施の形態2に係る処理方法決定装置200のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【0069】
図12に示すように、処理方法決定装置200は、CPU202と、ROM203と、RAM204と、I/F205とを有する。上記各部は、バス201を介して相互に接続される。
【0070】
CPU202は、RAM204等を作業領域としてROM203等に格納されたプログラムを実行することで、処理方法決定装置200の動作を統括的に制御する。I/F205は、処理方法決定装置200に接続される外部装置(例えば、液体吐出装置100等)との間で、各種情報のやり取りを行なうためのインタフェースである。
【0071】
次に、
図13を用いて、実施の形態2に係る処理方法決定装置200の機能構成を説明する。
図13は、実施の形態2に係る処理方法決定装置200の機能構成例を示すブロック図である。
【0072】
図13に示すように、処理方法決定装置200は、取得部251と、決定部252とを有する。
【0073】
取得部251は、複数の異なるパターンデータをもとに液体塗布面が形成された対象物それぞれの所定位置が撮像された撮像画像を取得する。実施の形態2に係る液体吐出装置100では、実施の形態1と同様に、複数の異なるパターンデータをもとに媒体Pに液体塗布面を形成し、液体塗布面が形成された媒体Pの所定位置を撮像し、所定位置を撮像した撮像画像を得る。取得部251は、このように液体吐出装置100によって得られた撮像画像それぞれを取得する。
【0074】
決定部252は、撮像画像をもとに、液体塗布面の形成処理方法を決定する。より具体的には、決定部252は、取得部251によって取得された撮像画像それぞれから、RGB値等の特徴量を測定し、RGB値の標準偏差Devと、RGB値の最大のピーク値及び最小のピーク値の差分値Peとをもとに、品質がより良い液体塗布面の形成処理方法を決定する。決定部252による詳細な処理は、実施の形態1で説明した決定部153による処理と同様である。
【0075】
次に、
図14を用いて、実施の形態2に係る処理方法決定装置200による処理の流れを説明する。
図14は、実施の形態2に係る処理方法決定装置200による処理の流れの例を示すフローチャートである。
【0076】
図14に示すように、処理方法決定装置200は、媒体Pの所定位置を撮像した撮像画像それぞれを取得する(ステップS201)。そして、処理方法決定装置200は、所定位置を撮像した撮像画像のRGB値を測定し、RGB値の標準偏差Devと、RGB値の最大のピーク値及び最小のピーク値の差分値Peとを算出する(ステップS202)。続いて、処理方法決定装置200は、標準偏差Dev+差分値Peが最小となる印刷物を特定する(ステップS203)。その後、処理方法決定装置200は、標準偏差Dev+差分値Peが最小となる印刷物が印刷されたときの、処理方法と重ねノズル数とを、品質がより良い印刷物の画像形成処理方法として決定する(ステップS204)。
【0077】
上述したように、処理方法決定装置200は、複数の異なるパターンデータをもとに液体塗布面が形成された媒体Pそれぞれの所定位置が撮像された撮像画像を取得し、取得した撮像画像それぞれをもとに、液体塗布面の形成処理方法を決定する。この結果、処理方法決定装置200は、使用環境が異なる場合であっても、画像不良を抑制するための好適な条件を出力することができる。
【0078】
(変形例)
上記実施の形態では、液体吐出ヘッド119の連続した走査によって液体塗布面を形成する場合を説明した。液体塗布面の形成は、これに限られるものではなく、例えば複数の液体吐出ヘッド119によって実現しても良い。
【0079】
図15は、変形例に係る液体吐出ヘッド119の構成例を示す図である。
【0080】
図15に示すように、キャリッジ118には、液体吐出ヘッド119aと、液体吐出ヘッド119bとが搭載される。また、液体吐出ヘッド119aと液体吐出ヘッド119bとは、主走査方向においてノズルの一部が重なるように配置される。
図15では、液体吐出ヘッド119aと液体吐出ヘッド119bとで、互いに6つのノズルが重なる例を示している。つまり、重ねノズル数は「6」となる。なお、重ねノズル数は「6」に限られるわけではない。このような液体吐出ヘッド119を利用して、上記実施の形態で説明した処理を実現することもできる。
【0081】
変形例では、
図9に示した重ねノズル数が1つだけ(例えば、重ねノズル数uだけ)である場合の各パターンデータをもとに、媒体Pに液体塗布面を形成していくことになる。このほかの処理については、上記実施の形態で説明した処理と同様に実現することができる。
【0082】
また、上記文書中や図面中等で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータ等を含む情報は、特記する場合を除いて任意に変更することができる。また、図示した装置の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、装置の分散又は統合の具体的形態は、図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負担や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に、分散又は統合することができる。
【0083】
また、処理方法決定装置200で実行される処理方法決定プログラムは、一つの様態として、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、処理方法決定装置200で実行される処理方法決定プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、処理方法決定装置200で実行される処理方法決定プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。また、処理方法決定プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成しても良い。
【0084】
処理方法決定装置200で実行される処理方法決定プログラムは、上述した各部(取得部251、決定部252)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が記憶媒体から処理方法決定プログラムを読み出して実行することにより、上記各部が主記憶装置上にロードされ、取得部251、決定部252が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0085】
また、上記実施の形態で説明した液体吐出装置100は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけではなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0086】
このような液体吐出装置100は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙にかかわる手段、その他、前処理装置、後処理装置等も含むことができる。
【0087】
例えば、液体吐出装置100として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、紛体を層状に形成した紛体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0088】
また、液体吐出装置100は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0089】
上記の「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、紛体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着する全てのものが含まれる。
【0090】
上記の「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的にでも付着可能であれば良い。
【0091】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであれば良く、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、等を含む溶液、懸濁液、エマルジョン等であり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0092】
また、液体吐出装置100は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置等が含まれる。
【0093】
また、液体吐出装置100としては他にも、用紙の表面を改質する等の目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置等がある。
【符号の説明】
【0094】
100 液体吐出装置
114 読取センサ
119 液体吐出ヘッド
120 搬送部材
151 ヘッド制御部
152 搬送制御部
153 決定部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】