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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】積層造形用サポート材
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20220517BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20220517BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20220517BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20220517BHJP
   C08L 29/04 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B29C64/40
C08L23/26
C08L53/02
B29C64/118
C08L29/04 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018065902
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019172924
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】酒井 紀人
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/182681(WO,A1)
【文献】特開2016-198954(JP,A)
【文献】特開2017-094599(JP,A)
【文献】特開2004-035759(JP,A)
【文献】特開2003-096258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 29/00-29/14
C08L 23/00-23/36
C08L 53/00-53/02
B29C 64/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100質量部のポリビニルアルコール系樹脂と、20~60質量部の酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有する積層造形用サポート材であって、
前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が、酸変性ブロック共重合体ではなく、
前記酸変性ブロック共重合体は、ハードセグメントとソフトセグメントを有し、
前記ハードセグメントが、芳香族ビニル化合物の重合体ブロックであり、
前記ソフトセグメントが、共役ジエン化合物の重合体ブロック、前記共役ジエン化合物の重合体ブロックに残存する二重結合の一部または全部が水素添加されたブロック、あるいはイソブチレンの重合体ブロックであることを特徴とする積層造形用サポート材。
【請求項2】
更に前記酸変性ブロック共重合体を含有することを特徴とする請求項1記載の積層造形用サポート材。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、前記酸変性ブロック共重合体を2~20質量部含有することを特徴とする請求項記載の積層造形用サポート材。
【請求項4】
前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が酸変性ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の積層造形用サポート材。
【請求項5】
前記ポリビニルアルコール系樹脂が側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の積層造形用サポート材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層造形に用いられ、最終的に除去される積層造形用サポート材に関する。
【背景技術】
【0002】
積層造形とは、所定の構造を有する立体物を造形する方法であって、流動状態の材料が押出された後、固化し、その上にさらに材料が積層されていくことで物品が造形される。積層造形方法にはUV硬化法、熱溶融積層法等が提案されているが、装置構造が簡便であることから、熱溶融積層法が広く使用されている。
【0003】
立体物を構成する材料は、モデル材と言い、モデル材としては種々の樹脂が検討されている。溶融成形性、熱安定性、固化後の機械物性から、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂やポリ乳酸(PLA)等が用いられてきたが、近年はポリプロピレン(PP)が使用されることが増えている。
【0004】
積層造形される立体物には様々な構造があり、造形される過程において立体物を構成する部分が存在しない部分を他の何かでサポートしておかなければ造形できない部分を含む場合がある。このような場合、立体物を製造する際に、立体物の重力方向の下側に、本来の立体物の構造には存在しない部分(つまり、空隙部分)を支持するサポート部が設けられる。このサポート部を形成する材料のことをサポート材といい、サポート部は造形過程で必要に応じて形成され、最終的には除去される。
【0005】
サポート部の除去方法は、造形後に主に液体に溶かして除去する方法と、削り取りにより除去する方法と、液体や気体で吹き飛ばして除去する方法等がある。しかしながら、削り取りによりサポート部を除去する方法は、立体物が複雑形状の場合には立体物に傷が付かないように削り取るのが難しく、吹き飛ばしにより除去する方法では、吹き飛ばし可能な強度としなければならないため、立体物をサポートするには強度が不足するという不具合を生じる。そこで、造形後に液体に溶かして除去できるサポート材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
かかるサポート材として用いられる水洗除去できる水溶性樹脂としては、非結晶性のポリビニルアルコール系樹脂(以下、「ポリビニルアルコール」を「PVA」とも言う。)が提案されており、そのPVA系樹脂に柔軟性を付与する為に、スチレン系熱可塑性エラストマーであるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)を添加することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2014-24329号公報
【文献】国際公開第2015/182681号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、モデル材としてポリプロピレンを用い、サポート材としてPVA系樹脂を用いる場合、サポート材のモデル材に対する接着性が十分ではなく、得られた立体物の精度が低下する場合がある。そこで、モデル材としてのポリプロピレンに対する接着性が改善されたサポート材が求められていた。
本発明はこのような背景下において、モデル材としてポリプロピレンを用いた場合でも、造形を安定的に行うことのできる、モデル材との接着性に優れる積層造形用サポート材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂と酸がグラフトされた酸変性ポリオレフィン系樹脂とを含有したサポート材とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)を特徴とする。
(1)ポリビニルアルコール系樹脂と酸変性ポリオレフィン系樹脂を含有することを特徴とする積層造形用サポート材。
(2)前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、前記酸変性ポリオレフィン系樹脂を10~80質量部含有することを特徴とする前記(1)記載の積層造形用サポート材。
(3)更に酸変性ブロック共重合体を含有することを特徴とする前記(1)又は(2)記載の積層造形用サポート材。
(4)前記ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、前記酸変性ブロック共重合体を2~20質量部含有することを特徴とする前記(3)記載の積層造形用サポート材。
(5)前記酸変性ポリオレフィン系樹脂が酸変性ポリプロピレン系樹脂であることを特徴とする前記(1)~(4)のいずれか1つに記載の積層造形用サポート材。
(6)前記ポリビニルアルコール系樹脂が側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂であることを特徴とする前記(1)~(5)のいずれか1つに記載の積層造形用サポート材。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層造形用サポート材によれば、ポリプロピレン(PP)との接着性に優れるので、造形時に立体物の形状を設計通りに造形できる。
【0012】
本発明の積層造形用サポート材は、PVA系樹脂が海成分、ポリオレフィン系樹脂が島成分である海島構造を形成するものであり、島成分のポリオレフィン系樹脂を酸変性させ、PVA系樹脂中に微分散させることで、モデル材(PP)との接着性を向上させたものであると推測される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】モデル材及びサポート材からなる立体物(接着評価用造形物)の製造過程を模式的に示す図である。
図2】接着評価用造形物を用いた試験方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態についてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、(メタ)アリルとはアリルあるいはメタリル、(メタ)アクリルとはアクリルあるいはメタクリル、(メタ)アクリレートとはアクリレートあるいはメタクリレートをそれぞれ意味する。
【0015】
本実施形態の積層構造用サポート材は、ポリビニルアルコール(PVA)系樹脂と酸がグラフトされた酸変性ポリオレフィン系樹脂とを含有する。
以下に各樹脂について説明する。
【0016】
(PVA系樹脂)
PVA系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるポリビニルエステル系樹脂をケン化して得られる、ビニルアルコール構造単位を主体とする樹脂であり、ケン化度相当のビニルアルコール構造単位とケン化されずに残存したビニルエステル構造単位から構成される。
【0017】
上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、バーサチック酸ビニル等が挙げられるが、経済的に酢酸ビニルが好ましく用いられる。
【0018】
PVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定。)は、通常、150~4000であり、好ましくは200~2000であり、より好ましくは250~800であり、さらに好ましくは300~600である。かかる平均重合度が低すぎると溶融成形の際に安定した形状を形成することが困難になる傾向があり、高すぎると樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になる傾向がある。
【0019】
また、PVA系樹脂の重合度の指標として水溶液とした時の粘度が用いられる場合があり、本実施形態で用いられるPVA系樹脂の水溶液の粘度は、20℃における4重量%水溶液の粘度として、通常、1.5~20mPa・sであり、好ましくは2~12mPa・sであり、特に好ましくは2.5~8mPa・sである。粘度が低すぎると溶融成形の際に安定した形状を形成することが困難となる傾向があり、高すぎると樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になる傾向がある。
なお、本実施形態においてPVA系樹脂の水溶液の粘度は、JIS K 6726に準拠して測定した20℃における4重量%水溶液の粘度である。
【0020】
PVA系樹脂のケン化度は、通常、70~99.9モル%であり、好ましくは75~98.5モル%であり、特に好ましくは78~90モル%である。ケン化度が低すぎると柔軟性が高くなり過ぎて、積層時の形状安定性が低下する傾向がある。
なお、ケン化度はJIS K 6726に準拠して測定されたものである。
【0021】
PVA系樹脂の融点は、通常、120~230℃であり、好ましくは150~220℃であり、特に好ましくは160~190℃である。融点が高すぎると溶融成形の際の加工温度が高くなり樹脂が劣化する恐れがあり、低すぎると溶融成形の形状安定性が低下する傾向がある。
【0022】
また、通常のPVA系樹脂の場合、主鎖の結合様式は1,3-ジオール結合が主であり、1,2-ジオール結合の含有量は1.5~1.7モル%程度であるが、ビニルエステル系モノマーを重合する際の重合温度を高温にすることによって含有量を増やすことができ、その含有量を1.8モル%以上、更には2.0~3.5モル%有することが、酸変性ポリオレフィン系樹脂との親和性が向上する点で好ましい。
【0023】
本実施形態に用いられるPVA系樹脂としては、変性PVA系樹脂を用いることも可能で、例えば、ビニルエステル系モノマーと共重合性を有するモノマーと共重合し、得られた共重合体をケン化して得られる共重合変性PVA系樹脂や、PVA系樹脂を後変性させることで得られる後変性PVA系樹脂が挙げられる。
【0024】
上記共重合変性PVA系樹脂に用いられる、ビニルエステル系モノマーと共重合される単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類、N-アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルビニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン(1-(メタ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン、3-ブテン-1-オール、4-ペンテン-1-オール、5-ヘキセン-1-オール等のヒドロキシ基含有α-オレフィン類及びそのアシル化物などの誘導体等の共重合が挙げられる。
【0025】
また、上記後変性PVA系樹脂としては、例えば、ジケテンとの反応によるアセトアセチル基を有するもの、エチレンオキサイドとの反応によるポリアルキレンオキサイド基を有するもの、エポキシ化合物等との反応によるヒドロキシアルキル基を有するもの、あるいは各種官能基を有するアルデヒド化合物をPVA系樹脂と反応させて得られたもの等を挙げることができる。
【0026】
かかる変性PVA系樹脂中の変性量、すなわち共重合体中の各種単量体に由来する構成単位、あるいは後反応によって導入された官能基の含有量は、変性種によって特性が大きく異なるため一概には言えないが、通常、0.1~20モル%であり、特に0.5~15モル%の範囲が好ましく用いられる。
【0027】
本実施形態においては、用途の展開が広範囲である点から、PVA系樹脂としては溶融成形可能なPVA系樹脂であることが好ましい。溶融成形可能なPVA系樹脂としては、例えば、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂、エチレン由来の構造単位を有するエチレン変性PVA系樹脂、ポリアルキレンオキサイド基を有するアルキレンオキサイド基変性PVA系樹脂等が挙げられ、融点降下の観点から、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂が好ましい。
【0028】
側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂としては、例えば、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂、側鎖にヒドロキシアルキル基を有するPVA系樹脂(例えば、側鎖にヒドロキシメチル基を有するPVA系樹脂)等が挙げられる。中でも、下記一般式(1)で表される、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(以下、「1,2-ジオール含有PVA系樹脂」という場合がある。)がより好ましい。
【0029】
【化1】
【0030】
(式(1)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
【0031】
なお、1,2-ジオール含有PVA系樹脂の1,2-ジオール構造単位以外の部分は、通常のPVA系樹脂と同様、ビニルアルコール構造単位と未ケン化部分のビニルエステル構造単位である。
【0032】
一般式(1)において、R~Rの炭素数1~4のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等であり、必要に応じて、ハロゲン基、水酸基、エステル基、カルボン酸基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
~Rは、全て同一であっても異なっていてもよいが、すべて水素原子であることが側鎖の末端が一級水酸基となり更に酸変性ポリオレフィン系樹脂の官能基との反応性が向上する点で望ましい。
【0033】
また、一般式(1)における結合鎖(X)としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、フェニレン基、ナフチレン基等の炭化水素基(これらの炭化水素基はフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等で置換されていてもよい。)の他、-O-、-(CHO)-、-(OCH-、-(CHO)CH-、-CO-、-COCO-、-CO(CHCO-、-CO(C)CO-、-S-、-CS-、-SO-、-SO-、-NR-、-CONR-、-NRCO-、-CSNR-、-NRCS-、-NRNR-、-HPO-、-Si(OR)-、-OSi(OR)-、-OSi(OR)O-、-Ti(OR)-、-OTi(OR)-、-OTi(OR)O-、-Al(OR)-、-OAl(OR)-、-OAl(OR)O-、等(Rは各々独立して任意の置換基であり、水素原子、アルキル基が好ましく、またmは1~5の整数である。)が挙げられる。
Xは、製造時あるいは使用時の安定性の点で、単結合、炭素数6以下のアルキレン基(特にメチレン基)、あるいは-CHOCH-が好ましく、中でも、熱安定性の点や高温下や酸性条件下での安定性の点で単結合が最も好ましい。
【0034】
側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂の変性率(含有量)は、通常、0.1~20モル%であり、好ましくは0.5~15モル%であり、更に好ましくは1~10モル%であり、特に好ましくは2~8モル%である。かかる変性率が低すぎると酸変性ポリオレフィン系樹脂の官能基との反応性が低下する傾向があり、高すぎると結晶化速度が遅くなりすぎて、積層時に形状が変形する傾向がある。
かかる変性率は、H-NMR(300MHzプロトンNMR、d6-DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出する。
【0035】
側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂の平均重合度(JIS K6726に準拠して測定。)は、通常、150~4000であり、好ましくは200~2000であり、より好ましくは250~800であり、さらに好ましくは300~500である。かかる平均重合度が低すぎると溶融成形の際に安定した形状を形成することが困難になる傾向があり、高すぎると樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になる傾向がある。
【0036】
また、側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂の粘度は、20℃における4重量%水溶液の粘度として、通常、1.5~20mPa・sであり、好ましくは2~12mPa・sであり、特に好ましくは2.5~8mPa・sである。粘度が低すぎると溶融成形の際に安定した形状を形成することが困難となる傾向があり、高すぎると樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて溶融成形が困難になる傾向がある。
なお、本実施形態において側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂の水溶液の粘度は、JIS K 6726に準拠して測定した20℃における4重量%水溶液の粘度である。
【0037】
側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂のケン化度は、通常、70~99.9モル%であり、好ましくは75~98.5モル%であり、特に好ましくは78~90モル%である。ケン化度が低すぎると柔軟性が高くなり過ぎて、積層時の形状安定性が低下する傾向がある。
なお、ケン化度はJIS K 6726に準拠して測定されたものである。
【0038】
かかる側鎖に一級水酸基を有するPVA系樹脂は、公知の製造方法により製造することができる。特に、1,2-ジオール含有PVA系樹脂を例にとり説明する。1,2-ジオール含有PVA系樹脂は、例えば、特開2002-284818号公報、特開2004-285143号公報、特開2006-95825号公報に記載されている方法により製造することができる。
すなわち、(i)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(2)で示される化合物との共重合体をケン化する方法、(ii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(3)で示されるビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化及び脱炭酸する方法、(iii)ビニルエステル系モノマーと下記一般式(4)で示される2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化及び脱ケタール化する方法などにより、製造することができる。
【0039】
【化2】
【0040】
(式(2)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表し、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又はR-CO-(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基である。)を表す。)
【0041】
【化3】
【0042】
(式(3)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表す。)
【0043】
【化4】
【0044】
(式(4)中、R~Rはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Xは単結合又は結合鎖を表し、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
【0045】
式(2)~式(4)中のR~R及びXの具体例、好ましい例示は、上記式(1)の場合と同様であり、また、R~R11の炭素数1~4のアルキル基の具体例、好ましい例示も式(1)の場合と同様である。
【0046】
上記方法のうち、共重合反応性及び工業的な取扱いにおいて優れるという点で、(i)の方法が好ましく、特に、上記一般式(2)で示される化合物は、R~Rが水素原子、Xが単結合、R、RがR-CO-であり、Rが炭素数1~4のアルキル基である3,4-ジアシロキシ-1-ブテンが好ましく、その中でも特にRがメチル基である3,4-ジアセトキシ-1-ブテンが好ましく用いられる。
【0047】
本実施形態で用いられるPVA系樹脂は、1種類であっても、2種類以上の混合物であってもよく、その場合は、上述の未変性PVA系樹脂同士、未変性PVA系樹脂と各種変性PVA系樹脂、特に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂との組み合わせ等を挙げることができる。また、ケン化度、重合度、変性率等が異なるPVA系樹脂同士の組み合せ等も挙げることができる。
【0048】
(酸変性ポリオレフィン系樹脂)
酸変性ポリオレフィン系樹脂は酸がグラフトされたポリオレフィン系樹脂である。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、例えば、オレフィンモノマーとカルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーを共重合したり、ポリオレフィン系樹脂にカルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーをグラフトしたりすることにより得られる。
【0049】
オレフィンモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-オクタデセン等の炭素数2~20程度のα-オレフィンが挙げられる。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、エチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体、エチレンと他のモノマーとの共重合体、プロピレンと他のモノマーとの共重合体等が挙げられ、他のモノマーとしては、上記したα-オレフィンや、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂の具体例としては、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のエチレン単独重合体、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ヘキセン共重合体、エチレン・オクテン共重合体、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体、エチレン・プロピレン・ヘキセン共重合体、エチレン・プロピレン・オクテン共重合体、エチレン・ブテン・ヘキセン共重合体、エチレン・ブテン・オクテン共重合体、エチレン・ヘキセン・オクテン共重合体等のエチレン-α-オレフィン共重合体、及び、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系重合体;プロピレン単独重合体(プロピレンホモポリマー)、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・ヘキセンランダム共重合体、プロピレン・ブテン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・ヘキセン・オクテンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体等のプロピレン系重合体;ブテン系重合体等が挙げられる。
ここで、エチレン系重合体、プロピレン系重合体、ブテン系重合体とは、それぞれ、エチレン、プロピレン、またはブテンをモノマー単位の50モル%以上の組成で含有する樹脂を言う。これらのポリオレフィン系樹脂は、1種類を用いても2種類以上を併用することもできる。
【0052】
本実施形態においては、エチレン系重合体であるエチレン単独重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体や、プロピレン系重合体であるプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体が安価で容易に入手することができ、経済性に優れるため好ましい。更には機械的特性の観点から、エチレン単独重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体が好ましく、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体がより好ましい。
【0053】
カルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーとしては、例えば、マレイン酸、フマル酸、クロロマレイン酸、ハイミック酸、シトラコン酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;アクリル酸、ブタン酸、クロトン酸、ビニル酢酸、メタクリル酸、ペンテン酸、ドデセン酸、リノール酸、アンゲリカ酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸;無水マレイン酸、無水ハイミック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、アクリル酸の無水物等前記の不飽和ジカルボン酸または不飽和モノカルボン酸の酸無水物等が挙げられる。
カルボキシル基または酸無水物基を有するモノマーは、1種を単独で用いても、2種以上を組み合せて用いてもよい。これらのうち、特に無水マレイン酸は、PVA系樹脂やブロック共重合体との相溶性が良いことから好適である。
【0054】
本実施形態で用いる酸変性ポリオレフィン系樹脂は、PVA系樹脂やブロック共重合体との相溶性の観点から、前記の不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物をポリオレフィン系樹脂にグラフト変性させたものが好適に用いることができる。
【0055】
ここで「グラフト変性」とは、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物をポリオレフィン系樹脂の共重合成分として用いるのではなく、既に製造されているポリオレフィン系樹脂に対し、反応によって不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を結合させるものである。すなわち、本発明において「グラフト変性」とは、不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物がポリオレフィン系樹脂の骨格に対して鎖長が長い側鎖として導入される場合のみならず、ポリオレフィン系樹脂に化学結合していれば包含される。
【0056】
ポリオレフィン系樹脂のグラフト変性は、従来公知の種々の方法で行うことができる。変性方法は限定されないが、(i)溶融させたポリオレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を添加してグラフト共重合させる溶融変性法、(ii)溶媒に溶解させたポリオレフィン系樹脂に不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物を添加してグラフト共重合させる溶液変性法等が挙げられる。これらのうち、衛生性の観点から、溶媒を使用しなくてもよい溶融変性法が好ましく、押出機を用いてグラフト変性することがより好ましい。なお、効率よくグラフト変性するためには、ラジカル開始剤の存在下に変性することが好ましい。
【0057】
酸変性ポリオレフィン系樹脂は、グラフト変性させたポリオレフィン系樹脂だけからなるものであっても、ポリオレフィン系樹脂と同種又は異種の未変性ポリオレフィン系樹脂との混合物のいずれであってもよい。
【0058】
本実施形態において、酸変性ポリオレフィン系樹脂は、PVA系樹脂との相溶性に優れると言う点で、ポリプロピレン系樹脂を不飽和カルボン酸または不飽和カルボン酸無水物でグラフト変性させた酸変性ポリプロピレン系樹脂であることが好ましく、ポリプロピレンを無水マレイン酸でグラフト変性させた無水マレイン酸変性ポリプロピレンであることがより好ましい。
【0059】
酸変性ポリオレフィン系樹脂の酸変性率(含有量)としては、0.05~10.0質量%であることが好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましく、0.2~2.0質量%が更に好ましい。酸変性率が低すぎると押出溶融成形が不安定となる傾向があり、また高すぎても押出溶融成形性が困難となる傾向がある。
【0060】
酸変性ポリオレフィン系樹脂の密度は限定されないが、通常0.85g/cm~0.96g/cm、好ましくは0.87g/cm~0.95g/cmである。密度が小さすぎると水溶解時に水面に浮遊物が発生する傾向があり、また大きすぎると沈殿物が底に残る傾向がある。
【0061】
また、酸変性ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は特に限定されないが、成形性の点から通常0.01~50g/10分、さらには0.1~10g/10分のものが好ましい。なお、酸変性ポリオレフィン系樹脂のMFRは、エチレン系重合体またはブテン系重合体に基づく樹脂である場合は190℃、荷重2.16kgでの値を意味し、プロピレン系重合体に基づく樹脂である場合は230℃、荷重2.16kgでの値を意味する。
【0062】
積層造形用サポート材中、酸変性ポリオレフィン系樹脂は、PVA系樹脂100質量部に対して10~80質量部の割合で含有させることが好ましい。PVA系樹脂100質量部に対して酸変性ポリオレフィン系樹脂を10質量部以上となるように含有させることでポリプロピレンとの接着性を向上させることができ、80質量部以下とすることで高水分散性(水溶解性)を維持することができる。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、PVA系樹脂100質量部に対して10~60質量部であることがより好ましく、20~40質量部が更に好ましい。
【0063】
(酸変性ブロック共重合体)
本実施形態の積層造形用サポート材には、更に酸変性ブロック共重合体を含有することが好ましい。酸変性ブロック共重合体は、未変性ブロック共重合体と不飽和カルボン酸無水物または不飽和ジカルボン酸の1種または2種以上とを加熱下に反応させて得られる、側鎖に水酸基と反応し得る官能基を有するブロックを有するブロック共重合体である。積層造形用サポート材中に酸変性ブロック共重合体を有することで、特に、引き剥がし性、成型安定性を向上させることができる。
【0064】
本実施形態にて用いられるブロック共重合体は、ハードセグメントとして、スチレンに代表される芳香族ビニル化合物の重合体ブロックを有し、ソフトセグメントとして、共役ジエン化合物の重合体ブロックや、かかる重合体ブロックに残存する二重結合の一部、または全部が水素添加されたブロック、あるいはイソブチレンの重合体ブロックを有するものである。特に、かかるブロック共重合体として、側鎖に水酸基と反応しうる官能基を有するものが好ましく、具体的にはカルボン酸基あるいはその誘導体基(以下、「カルボン酸基」を略記することがある。)を有するものが好ましく用いられる。
【0065】
ブロック共重合体中の各ブロックの構成は、ハードセグメントをAで示し、ソフトセグメントをBで示した場合に、A-Bで表されるジブロック共重合体、A-B-AまたはB-A-Bで表されるトリブロック共重合体、さらにAとBが交互に接続したポリブロック共重合体などを挙げることができ、その構造も直鎖状、分岐状、星型などを挙げることができる。中でも、力学特性の点でA-B-Aで表される直鎖状のトリブロック共重合体が好適である。
【0066】
ハードセグメントである芳香族ビニル化合物の重合体ブロックの形成に用いられるモノマーとしては、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン等のアルキルスチレン;モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン等のハロゲン化スチレン;ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、インデン、アセトナフチレンなどのベンゼン環以外の芳香環を有するビニル化合物、およびその誘導体等を挙げることができる。かかる芳香族ビニル化合物の重合体ブロックは、上述のモノマーの単独重合体ブロックでも、複数のモノマーによる共重合体ブロックでもよいが、スチレンの単独重合体ブロックが好適に用いられる。
【0067】
なお、かかる芳香族ビニル化合物の重合体ブロックは、本発明の効果を阻害しない範囲で、芳香族ビニル化合物以外のモノマーが少量共重合されたものでもよく、かかるモノマーとしては、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどのオレフィン類、ブタジエン、イソプレンなどのジエン化合物、メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物やアリルエーテル化合物等を挙げることができ、その共重合比率は、通常、重合体ブロック全体の10モル%以下である。
【0068】
ブロック共重合体中の芳香族ビニル化合物の重合体ブロックの重量平均分子量は、通常、10,000~300,000であり、特に20,000~200,000、さらに50,000~100,000のものが好ましく用いられる。
【0069】
また、ソフトセグメントである重合体ブロックの形成に用いられるモノマーとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンなどの共役ジエン化合物、およびイソブチレンを挙げることができ、これらを単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。中でもイソプレン、ブタジエン、およびイソブチレンの単独重合ブロックや共重合ブロックが好ましく、特にブタジエン、あるいはイソブチレンの単独重合ブロックが好適に用いられる。
【0070】
なお、かかる共役ジエン化合物の重合体ブロックの場合、重合によって複数の結合形式をとる場合があり、例えば、ブタジエンでは、1,2-結合によるブタジエン単位(-CH-CH(CH=CH)-)と1,4-結合によるブタジエン単位(-CH-CH=CH-CH-)が生成する。これらの生成比率は、共役ジエン化合物の種類により異なるので、一概にはいえないが、ブタジエンの場合、1,2-結合が生成する比率は、通常、20~80モル%の範囲である。
【0071】
かかる共役ジエン化合物による重合体ブロックは、残存する二重結合の一部または全部を水素添加することによって、スチレン系熱可塑性エラストマーの耐熱性や耐候性を向上させることが可能である。その際の水素添加率は、50モル%以上であることが好ましく、特に70モル%以上のものが好ましく用いられる。
なお、かかる水素添加により、例えばブタジエンの1,2-結合によるブタジエン単位は、ブチレン単位(-CH-CH(CH-CH)-)となり、1,4-結合によって生成するブタジエン単位は二つの連続したエチレン単位(-CH-CH-CH-CH-)となるが、通常は前者が優先して生成する。
【0072】
なお、かかるソフトセグメントである重合体ブロックは、本発明の効果を阻害しない範囲で、上述のモノマー以外のモノマーが少量共重合されたものでもよく、かかるモノマーとしては、スチレンなどの芳香族ビニル化合物、ブテン、ペンテン、ヘキセンなどのオレフィン類、メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル化合物やアリルエーテル化合物等を挙げることができ、その共重合比率は、通常、重合体ブロック全体の10モル%以下である。
【0073】
また、ブロック共重合体中の共役ジエン化合物、あるいはイソブチレンに由来する重合体ブロックの重量平均分子量は、通常、10,000~300,000であり、特に20,000~200,000、さらに50,000~100,000のものが好ましく用いられる。
【0074】
上述の通り、本発明に用いられるブロック共重合体は、ハードセグメントが芳香族ビニル化合物の重合体ブロックであり、ソフトセグメントが共役ジエン化合物の重合体ブロック、またはその残存二重結合の一部、あるいは全部が水素添加された重合体ブロック、イソブチレンの重合体ブロックなどからなるものであり、その代表例としては、例えば、スチレンとブタジエンを原料とするスチレン/ブタジエンブロック共重合体(SBS)、SBSのブタジエン構造単位における側鎖二重結合が水素添加されたスチレン/ブタジエン/ブチレンブロック共重合体(SBBS)、さらに主鎖二重結合が水素添加されたスチレン/エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレンとイソプレンを原料とするスチレン/イソプレンブロック共重合体(SIPS)、スチレンとイソブチレンを原料とするスチレン/イソブチレンブロック共重合体(SIBS)などを挙げることができ、中でも熱安定性、耐候性に優れるSEBSやSIBSが好ましく用いられる。
【0075】
かかるブロック共重合体中のハードセグメントである芳香族ビニル化合物の重合体ブロックとソフトセグメントである重合体ブロックの含有比率としては、重量比で、通常、10/90~70/30であり、特に、20/80~50/50の範囲のものが好適である。芳香族ビニル化合物の重合体ブロックの含有比率が多すぎたり、少なすぎたりすると、ブロック共重合体の柔軟性とゴム弾性のバランスが崩れる場合があり、その結果、本発明のサポート材の引き剥がし性などの特性が不充分となる場合がある。
【0076】
ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと、共役ジエン化合物あるいはイソブチレンの重合体ブロックを有するブロック共重合体を得て、さらに必要に応じて共役ジエン化合物の重合体ブロック中の二重結合を水素添加することによって得ることができる。
まず、芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと、共役ジエン化合物、あるいはイソブチレンの重合体ブロックを有するブロック共重合体の製造法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば、アルキルリチウム化合物などを開始剤とし、不活性有機溶媒中で芳香族ビニル化合物と共役ジエン化合物、あるいはイソブチレンを逐次重合させる方法などを挙げることができる。
次に、この芳香族ビニル化合物の重合体ブロックと共役ジエン化合物の重合体ブロックを有するブロック共重合体を水素添加する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、水素化ホウ素化合物などの還元剤を用いる方法や、白金、パラジウム、ラネーニッケルなどの金属触媒を用いた水素還元などを挙げることができる。
【0077】
本実施形態に用いる酸変性ブロック共重合体は、側鎖に水酸基と反応しうる官能基を有する。かかる官能基は特にカルボン酸であることが好ましく、かかる側鎖に水酸基と反応しうる官能基を有するブロック共重合体を用いることによって、特に引き剥がし性、成形安定性に優れたサポート材を得ることが可能となる。
【0078】
ブロック共重合体中のカルボン酸の含有量としては、滴定法で測定した酸価が、通常、0.5~20mgCHONa/gであり、特に1~10mgCHONa/g、さらに1.5~3mgCHONa/gのものが好ましく用いられる。
かかる酸価が低すぎると、官能基を導入した効果が充分に得られず、また、高すぎると架橋反応によりサポート材の溶融粘度が高くなりすぎる傾向がある。
酸価の調整に当たっては、官能基の導入量を調整するほかに、官能基を有するブロック共重合体と官能基を有しないブロック共重合体を混合して官能基の含有量を調整するなどする方法が挙げられる。
【0079】
かかるカルボン酸を含有する官能基をブロック共重合体に導入する方法としては、公知の方法を用いることが可能であり、例えば、ブロック共重合体の製造時、すなわち、共重合時にα、β-不飽和カルボン酸またはその誘導体を共重合させる方法、あるいは、ブロック共重合体の製造後、これにα、β-不飽和カルボン酸またはその誘導体を付加させる方法が好ましく用いられる。かかる付加方法としては、例えば、ラジカル開始剤の存在下、あるいは非存在下、溶液中でのラジカル反応による方法や、押出機中で溶融混練する方法などを挙げることができる。
【0080】
かかるカルボン酸基導入に用いられるα、β-不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等のα、β-不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、コハク酸、イタコン酸、フタル酸等のα、β-不飽和ジカルボン酸;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート等のα、β-不飽和モノカルボン酸エステルなどを挙げることができる。また、本発明のブロック共重合体に導入されたカルボン酸基は隣接するカルボン酸基との間で酸無水物構造を形成していてもよく、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸等のα、β-不飽和ジカルボン酸無水物などを挙げることができる。
【0081】
本実施形態において用いられる酸性基ブロック共重合体の重量平均分子量は、通常、50,000~500,000であり、特に120,000~450,000、さらに150,000~400,000のものが好ましく用いられる。
かかる重量平均分子量が大きすぎても小さすぎても、PVA系樹脂中に酸変性ブロック共重合体が均一分散したモルホロジーが得られず、樹脂の機械物性が低下する傾向がある。
なお、酸変性ブロック共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、ポリスチレンを標準として求めた値である。
【0082】
また、酸変性ブロック共重合体の220℃、せん断速度122sec-1での溶融粘度は、通常100~3000mPa・sであり、特に300~2000mPa・s、さらに800~1500mPa・sのものが好ましく用いられる。
【0083】
また、本実施形態において、酸変性ブロック共重合体は、1種類のものを用いてもよいが、所望の特性を得る目的で複数のものを適宜混合して用いることも可能である。
【0084】
積層造形用サポート材中、酸変性ブロック共重合体は、PVA系樹脂100質量部に対して2~20質量部の割合で含有させることが好ましい。PVA系樹脂100質量部に対して酸変性ブロック共重合体を2質量部以上となるように含有させることで水溶解時の水面浮遊物を減少させることができ、20質量部以下とすることで組成物の溶融粘度の安定性を維持できる。酸変性ブロック共重合体は、PVA系樹脂100質量部に対して2~15質量部であることがより好ましく、5~10質量部が更に好ましい。
【0085】
本実施形態の積層造形用サポート材には、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の添加物を含有することができる。以下、その他の成分について説明する。
【0086】
積層造形用サポート材はストランドの状態で積層造形装置のヘッド部に供給されるため、円滑にサポート材を供給できる点を考慮すると適度な剛性を有することが好ましい。また、積層造形装置のヘッド部にストランド状のサポート材を供給する際、チューブの中を通して供給されることがあるため、チューブの内面とサポート材の表面の摺動性が良好であることが好ましい。また、積層造形装置へのサポート材のストランドを円滑にヘッド部に供給するためには、サポート材の表面状態が平滑であり、かつタック性がないことが好ましい。一般に、PVA系樹脂のストランド表面は吸湿しやすく、タック性が発現しやすいため、ストランドが適度な剛性を有し、ストランドのタック性を抑制するために、サポート材がフィラーを含有することが好ましい。
【0087】
フィラーとしては有機フィラーと無機フィラーがあるが、熱安定性が良好な点で無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、窒化物、炭素類、金属類等が挙げられ、サポート材の熱安定性に悪影響を与えない点で、ケイ酸塩が好ましい。ケイ酸塩としては、例えば、珪酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セピオライト、イモゴライト、セリサリト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ系バルーン等が挙げられるが、よりサポート材の表面平滑性が良好となり、タック性が軽減される点でタルクが好ましい。
【0088】
フィラーの粒度としては0.5~500μmであることが好ましく、50~400μmがより好ましく、100~300μmが更に好ましい。さらに、フィラーとしてタルクを用いる場合、タルクの粒度としては0.5~10μmであることが好ましく、1~5μmがより好ましく、2~3μmが更に好ましい。これらの粒度が小さすぎると樹脂への練り込みが困難となる傾向があり、大きすぎると表面荒れや強度の低下の原因となる傾向がある。工業的には、例えば、日本タルク株式会社製「SG-95」、「SG-200」(いずれも商品名)、富士タルク工業株式会社製「LSM-400」(商品名)等を用いることができる。
なお、ここで言う粒度とは、レーザー回折法で測定した粒子径D50を指す。
【0089】
フィラーの含有量としては、積層造形用サポート材中、0~40質量%であることが好ましく、2~30質量%がより好ましく、3~10質量%が更に好ましい。フィラーの含有量が少なすぎるとフィラー配合の効果が発現されず、また多すぎるとストランド表面の平滑性が低下したり、柔軟性が低下する傾向がある。
【0090】
また、サポート材には可塑剤が配合されることがあるが、本実施形態における積層造形用サポート材の成形安定性を向上させるには可塑剤の含有量は少ないことが好ましく、積層造形用サポート材中、20質量%以下、さらには10質量%以下、さらには1質量%以下、特には0.1質量%以下であることが好ましい。
【0091】
さらに、上記成分以外に、酸化防止剤、着色剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、滑剤等の公知の添加剤、また他の熱可塑性樹脂を適宜配合することができる。他の熱可塑性樹脂としては、例えば、具体的には、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、ポリプロピレン、プロピレン-α-オレフィン(炭素数4~20のα-オレフィン)共重合体、ポリブテン、ポリペンテン等のオレフィンの単独又は共重合体、ポリ環状オレフィン、或いはこれらのオレフィンの単独又は共重合体を不飽和カルボン酸又はそのエステルでグラフト変性したもの等の広義のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル、ポリアミド、共重合ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、ポリウレタンエラストマー、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0092】
(積層造形用サポート材の作製方法)
本実施形態において、積層造形用サポート材は、例えば、上記の各成分の所定量を混合、加熱し溶融状態で混練した後、ストランド状に押出し、冷却して、リールに巻き取ることにより作製することができる。
具体的には各成分を予め混合したもの、もしくは別々に単軸または多軸の押出機に供給され、加熱溶融混練され、1穴もしくは多穴のストランドダイスから径1.5~3.0mmのストランド状に押出され、空冷または水冷等により冷却固化した後、リールに巻き取られる。ストランドの径は安定していることが必要で、また、リールに巻きつけられても破断しない程度の柔軟性と靭性を有し、積層造形の際、ヘッドに遅滞なく送り出される程度の剛性が必要である。
【0093】
(積層造形物の製造方法、および積層造形物)
本実施形態の積層造形用サポート材を用いた積層造形物の製造方法について説明する。
積層造形に用いられる積層造形装置はモデル材とサポート材を各々押し出せるヘッドを複数個以上持つ熱溶融による積層造形ができるものであれば公知のものを用いればよく、例えば、フラッシュフォージ社製クリエイト、レイズ・エンタープライズ社製Eagleed、3Dシステムズ社製MBot Grid II、ストラタシス社製uPrint SE等のデュアルヘッドタイプの積層造形装置を用いることができる。
【0094】
立体を形作るモデル材としては、例えば、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリ乳酸(PLA)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン等種々の樹脂が検討されているが、溶融成形性、熱安定性、固化後の機械物性の観点からポリプロピレン(PP)が主に用いられ、サポート材はかかるポリプロピレン(PP)との密着性に優れることが要求される。
【0095】
モデル材についてもサポート材と同様に、ストランド状に成形され、リールに巻かれた状態で提供される。モデル材とサポート材のストランドは積層造形装置の別々のヘッドに供給され、ヘッド部で加熱溶融され、別々のノズルからステージ上に押し付けられる様に流動状態にて積層されていく。
【0096】
ヘッド部での溶融温度は、通常150~220℃で、200~1000psiの圧力で押出され、積層ピッチは、通常200~350μmである。
【0097】
上記の様に、サポート材およびモデル材により作製された積層物は、冷却固化された後、上記積層物からサポート材を除去することで、最終目的である積層造形物が得られる。例えば、本発明のサポート材は水により溶解除去することができる。上記溶解除去の方法として、容器に入れられた水もしくは温水に積層物を浸漬してサポート材を溶解除去してもよいし、積層物のサポート材を流水で洗い流してもよい。積層物を浸漬してサポート材を溶解除去する場合は、溶解除去時間を短縮するために撹拌したり超音波を与えることが好ましく、また、水温は25~80℃程度が好ましい。サポート材の溶解除去に際しては、サポート材の重量に対し、10~10000倍程度の水もしくは温水が使用される。本発明のサポート材は比較的低温でも溶解除去が容易であることも特徴である。
【実施例
【0098】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、例中「部」、「%」とあるのは、特記しない限り質量基準を意味する。
【0099】
(実施例1)
(1)PVA系樹脂の製造
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル85部、メタノール460部、及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン7.6部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリルを0.32部投入し、撹拌しながら窒素気流下で温度を上昇させ、重合を開始した。さらに、重合開始0.5時間後に酢酸ビニル765部を8時間滴下(滴下速度95.6部/時間)した。重合開始から2.5時間目と4.5時間目にアゾビスイソブチロニトリルを0.2部ずつ追加し、酢酸ビニルの重合率が85%となった時点で、m-ジニトロベンゼンを所定量添加して重合を終了し、続いて、メタノール蒸気を吹き込みつつ蒸留することで未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0100】
次いで、該溶液をメタノールで希釈し、固形分濃度を50重量%に調整してニーダーに仕込み、溶液温度を35℃に保ちながら、水酸化ナトリウム中のナトリウム分2質量%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して9ミリモルとなる割合で加えてケン化を行った。ケン化が進行すると共にケン化物が析出し、粒子状となった時点で、さらに2質量%メタノール溶液を酢酸ビニル構造単位及び3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の合計量1モルに対して4ミリモル追加し、ケン化を行った。その後、中和用の酢酸を水酸化ナトリウムの0.8当量を添加し、ろ別し、メタノールでよく洗浄して熱風乾燥機中で乾燥し、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(A)(以下、「PVA系樹脂(A)」と言う。)を得た。
【0101】
得られたPVA系樹脂(A)のケン化度は、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析したところ、88モル%であった。また平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ410であった。
また、式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量は、H-NMR(300MHzプロトンNMR、d6-DMSO溶液、内部標準物質;テトラメチルシラン、50℃)にて測定した積分値より算出したところ、2モル%であった。
【0102】
(2)サポート材の作製
上記のPVA系樹脂(A)100部と、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社製「アドマーQF500」(商品名))34部と、カルボン酸基を有するスチレン/エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEBS)(旭化成株式会社製「タフテックM1943」(商品名)、スチレン含有量20質量%、酸価10mgCHONa/g)8.6部を、混合しドライブレンドした。これを二軸押出機に供給し、下記条件で溶融混練し、直径1.75mmのストランド状に押出して、ベルト上で空冷し、リールに巻き取り、サポート材を得た。
〔溶融混練条件〕
押出機:株式会社テクノベル製 15mmφ L/D=60
押出温度:C1/C2/C3/C4/C5/C6/C7/C8/D=150/170/180/190/200/210/220/220/220(℃)
回転数:200rpm
吐出量:1.5kg/時
【0103】
(3)接着性の評価
3Dプリンター(Ninjabot社製「FDM-200HW-X」(商品名))に上記で得られたサポート材(フィラメント)とポリプロピレンのモデル材(フィラメント)(Verbatim製「PP Filament 1.75mm-Transparent」(商品名))をセットし、接着性評価用の造形物を作製した。具体的な作製方法は以下の通りである。
図1に示すように、まず、プラットフォーム5(造形台)上に、矢印Y方向を積層方向として、下から第1のサポート材構成部1,1’、モデル材構成部2,2’、第2のサポート材構成部3の順に積層し、積層物を作製した。なお、第1のサポート材構成部1’及びモデル材構成部2’は最終的に積層物から取り除かれる部分であり、樹脂充填率(Infill)30%で作製した。次に、積層物をプラットフォーム5から引き剥がし、更に第1のサポート材構成部1’及びモデル材構成部2’を引き剥がし、接着性評価用造形物10を作製した。
【0104】
オートグラフ(株式会社島津製作所製「AG-IS」(商品名))を用いて、モデル材のサポート材に対する接着性を評価した。具体的に、図2に示すように、接着性評価用造形物10の第1のサポート材構成部1の突出部1aとモデル材構成部2の突出部2aにチャックを挟み、相反する方向に5mm/minの速度で引っ張った際の剥離強度を測定した。
同様に、サポート材のモデル材に対する接着性を評価した。具体的に、図2に示すように、接着性評価用造形物10のモデル材構成部2の突出部2aと第2のサポート材構成部3の突出部3aにチャックを挟み、相反する方向に5mm/minの速度で引っ張った際の剥離強度を測定した。
剥離強度が350N以上であるものは接着強度が強く接着性に優れると評価できる。なお、接着強度350N以上で、接着部分の剥離が起こる前に、サポート材やモデル材が破壊された場合は、「材破」と評価した。結果を表1に示す。
【0105】
(実施例2)
実施例1において、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの仕込み量を10部にし、重合時間を短くして、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(B)(以下、「PVA系樹脂(B)」と言う。)を得た。
得られたPVA系樹脂(B)のケン化度は、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析したところ、88モル%であった。また平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ390であった。
また、式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量は、2.5モル%であった。
【0106】
PVA系樹脂(B)を用いて実施例1と同様にしてサポート材を得、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
(実施例3)
実施例2で得られたPVA系樹脂(B)100部と、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三井化学株式会社製「アドマーQF500」(商品名))43部を、混合しドライブレンドした。これを二軸押出機に供給し、実施例1と同じ条件でサポート材を得た。
得られたサポート材を用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
(比較例1)
実施例2で得られたPVA系樹脂(B)100部と、カルボン酸基を有するスチレン/エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEBS)(旭化成株式会社製「タフテックM1943/H1043ブレンド品」(商品名)、スチレン含有量58質量%、酸価2mgCHONa/g)43部を、混合しドライブレンドした。これを二軸押出機に供給し、実施例1と同じ条件でサポート材を得た。
得られたサポート材を用いて、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
(比較例2)
実施例1において、3,4-ジアセトキシ-1-ブテンの仕込み量を13.6部とし、重合時間を短くして、側鎖に1,2-ジオール構造を有するPVA系樹脂(C)(以下、「PVA系樹脂(C)」と言う。)を得た。
得られたPVA系樹脂(C)のケン化度は、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析したところ、88モル%であった。また平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ350であった。
また、式(1)で表される1,2-ジオール構造単位の含有量は、3モル%であった。
【0110】
得られたPVA系樹脂(C)100部と、カルボン酸基を有するスチレン/エチレン/ブチレンブロック共重合体(SEBS)(旭化成株式会社製「タフテックM1911」(商品名)、スチレン含有量30質量%、酸価2mgCHONa/g)43部を、混合しドライブレンドした。これを二軸押出機に供給し、実施例1と同じ条件でサポート材を得た。
得られたサポート材を用いて、実施例1と同様に評価を行った。なお、接着性の評価では、第2のサポート材構成部はモデル材構成部に接着しなかった。結果を表1に示す。
【0111】
(比較例3)
未変性のPVA系樹脂(D)(以下、「PVA系樹脂(D)」と言う。)を用いた。
PVA系樹脂(D)のケン化度は、樹脂中の残存酢酸ビニルおよび3,4-ジアセトキシ-1-ブテン構造単位の加水分解に要するアルカリ消費量で分析したところ、72モル%であった。また平均重合度は、JIS K 6726に準拠して分析を行ったところ550であった。
【0112】
PVA系樹脂(D)を二軸押出機に供給し、実施例1と同じ条件でサポート材を得た。
得られたサポート材を用いて、実施例1と同様に評価を行った。なお、接着性の評価では、第1のサポート材構成部と第2のサポート材構成部のいずれもモデル材構成部に接着しなかった。結果を表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
表1の結果より、実施例1~3は、サポート材構成部に対するモデル材構成部の接着強度、モデル材構成部に対するサポート材構成部の接着強度がいずれも350N以上であり、実施例1~3のサポート材はモデル材との接着性に優れることが分かった。
【符号の説明】
【0115】
1、1’ 第1のサポート材構成部
2、2’ モデル材構成部
3 第2のサポート材構成部
1a、2a、3a 突出部
5 プラットフォーム
10 接着性評価用造形物

図1
図2