(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ヒータ制御装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
H05B 3/00 20060101AFI20220517BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H05B3/00 310K
H05B3/00 310C
H05B3/00 335
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2018138041
(22)【出願日】2018-07-23
【審査請求日】2021-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓郎
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-10193(JP,A)
【文献】特開2016-136175(JP,A)
【文献】特開2008-209604(JP,A)
【文献】特開2007-47473(JP,A)
【文献】特開2011-146862(JP,A)
【文献】特開平10-186908(JP,A)
【文献】特開2005-123977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0082276(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱対象物を加熱するヒータへ供給する交流電力を制御するヒータ制御装置であって、
前記交流電力のゼロクロスタイミングを挟んで第1遷移エッジおよび第2遷移エッジが順に現れるゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成手段と、
前記ゼロクロス信号の前記第2遷移エッジに基づいて、該第2遷移エッジを含む前記交流電力の半波期間以降の複数の半波期間のいずれかにおいて前記ヒータのオン時間を制御するヒータ点灯制御手段と
を有することを特徴とするヒータ制御装置。
【請求項2】
前記複数の半波期間のいずれかは、前記第2遷移エッジを含む前記交流電力の半波期間の次の半波期間であることを特徴とする請求項1に記載のヒータ制御装置。
【請求項3】
前記交流電力の前記ヒータへの供給をタイミング信号に応じて断続するトライアックを有し、
前記ヒータ点灯制御手段は、前記ゼロクロス信号の前記第2遷移エッジを基準にして、前記複数の半波期間のいずれかにおいて前記トライアックをオンさせる前記タイミング信号を生成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒータ制御装置。
【請求項4】
前記ゼロクロス信号生成手段は、
前記交流電力を全波整流するダイオードブリッジと、
前記ダイオードブリッジから出力される電圧に応じてパルス信号を生成し、生成したパルス信号を前記ゼロクロス信号として出力するフォトカプラと
を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のヒータ制御装置。
【請求項5】
加熱対象物を加熱するヒータへ供給する交流電力を制御するヒータ制御装置を備えた画像形成装置であって、
前記ヒータ制御装置は、
前記交流電力のゼロクロスタイミングを挟んで第1遷移エッジおよび第2遷移エッジが順に現れるゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成手段と、
前記ゼロクロス信号の前記第2遷移エッジに基づいて、該第2遷移エッジを含む前記交流電力の半波期間以降の複数の半波期間のいずれかにおいて前記ヒータのオン時間を制御するヒータ点灯制御手段と
を有することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータ制御装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に搭載される定着ヒータは、適切なヒータ温度に制御するための電力制御技術を必要とする。電力制御技術として、電源電圧のゼロクロス点を基準として、電源電圧の半波期間内に定着ヒータの点灯パターンを設定する位相制御技術がある。
【0003】
この種の位相制御技術は、定着ヒータの点灯により電源電圧の電圧降下が発生し、ゼロクロス点を示すゼロクロス信号のタイミングがずれた場合、タイミングがずれたゼロクロス信号を基準とする定着ヒータの点灯制御を実施しない間引き制御を実施する。これにより、定着ヒータの点灯期間が常に一定になるため、定着ヒータの電力制御の精度が向上する(特許文献1)。
【0004】
また、別の位相制御技術は、2個の交流半波を1組とする複数組の交流半波を制御単位とし、各組による定着ヒータの点灯制御を、「位相角0度でオン」、「所用の位相角でオン」、「オンしない」のいずかに設定する。これにより、位相制御によるノイズが低減され、フリッカが抑制される(特許文献2)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、定着ヒータの点灯制御を間引いて実施するため、定着ヒータの点灯頻度が下がり、制御周期内での定着ヒータへの電力供給量が低下するおそれがある。電力供給量が低下すると、定着ヒータの起動時間は長くなる。また、特許文献2では、定着ヒータの点灯により電圧降下が発生した場合、ゼロクロス信号のタイミングがずれるため、定着ヒータの電力制御の精度が低下する。
【0006】
本発明は、ヒータの点灯頻度を下げることなく、ヒータの電力制御の精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態は、加熱対象物を加熱するヒータへ供給する交流電力を制御するヒータ制御装置であって、前記交流電力のゼロクロスタイミングを挟んで第1遷移エッジおよび第2遷移エッジが順に現れるゼロクロス信号を生成するゼロクロス信号生成手段と、前記ゼロクロス信号の前記第2遷移エッジに基づいて、該第2遷移エッジを含む前記交流電力の半波期間以降の複数の半波期間のいずれかにおいて前記ヒータのオン時間を制御するヒータ点灯制御手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
ヒータの点灯頻度を下げることなく、ヒータの電力制御の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヒータ制御装置を含む画像形成装置の全体構成図である。
【
図2】
図1に示した定着装置と、定着装置を制御する制御部とを示すブロック図である。
【
図3】
図2に示したゼロクロス検出回路の例を示す回路図である。
【
図4】
図2に示した制御装置による定着ヒータの制御の例を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒータ制御装置を含む画像形成装置の全体構成図である。
図1に示す画像形成装置1は、例えば、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能等を有するデジタル複合機である。
【0011】
画像形成装置1は、図示しない操作部のアプリケーション切り替えキーにより、複写機能、プリンタ機能およびファクシミリ機能をそれぞれ実現する複数の動作モードを相互に切り替えることが可能である。なお、画像形成装置1は、複写機またはプリンタでもよい。
【0012】
画像形成装置1は、自動原稿送り装置(ADF;Auto Document Feeder)2、画像読み取り装置3、書き込みユニット4、プリンタユニット5および蓄電部として機能するキャパシタユニット6を有する。プリンタユニット5は、感光体ドラム51、現像装置52、搬送ベルト53および定着装置54を有する。以下、画像形成装置1での画像形成の流れの一例として、動作モードが複写モードに設定されている場合について簡単に説明する。
【0013】
複写モードでは、複写の対象である複数枚の原稿が自動原稿送り装置2にセットされる。図示しない操作部のスタートボタンが押されると、自動原稿送り装置2は、原稿を1枚ずつ画像読み取り装置3に送る。画像読み取り装置3は、自動原稿送り装置2から順に送られる原稿の画像情報を読み取る。読み取られた画像情報は、図示しない画像処理部により処理される。
【0014】
書き込みユニット4は、画像処理部により処理された画像情報を光情報に変換する。感光体ドラム51は、図示しない帯電器により一様に帯電された後、書き込みユニット4による変換で生成された光情報を含むレーザ光により露光される。露光により、感光体ドラム51上には静電潜像が形成される。
【0015】
現像装置52は、感光体ドラム51上の静電潜像を現像し、感光体ドラム51上にトナー像を形成する。搬送ベルト53は、トナー像を転写紙に転写する。定着装置54は、図示しない定着ヒータにより発生する熱と、圧力とを利用して、トナー像を転写紙上に定着させる。そして、原稿の画像が複写された転写紙は、排出部から排出される。
【0016】
図2は、
図1に示した定着装置54と、定着装置54を制御する制御装置60とを示すブロック図である。制御装置60は、電磁リレーMR1、MR2、ゼロクロス検出回路61、トライアック62、制御部64およびメモリ65を有する。例えば、制御装置60は、
図1に示したプリンタユニット5内に配置される回路基板に搭載される。制御装置60は、加熱対象物を加熱するヒータへ供給する交流電力を制御するヒータ制御装置の一例である。
【0017】
定着装置54は、所定の加熱対象物(上述した例では転写紙)を加熱する定着ヒータ54aを有する。例えば、定着ヒータ54aは、ハロゲンヒータであり、商用電源である交流電源ACにより動作する。なお、定着ヒータ54aは、ハロゲンヒータ以外のヒータでもよい。
【0018】
定着ヒータ54aの電源線の一方は、電磁リレーMR1および配電部インピーダンスZを介して交流電源ACに接続される。定着ヒータ54aの電源線の他方は、トライアック62および電磁リレーMR2を介して交流電源ACに接続される。
【0019】
ゼロクロス検出回路61は、電磁リレーMR1、MR2における定着ヒータ54a側の一端に接続される。ゼロクロス検出回路61は、電磁リレーMR1、MR2を介して供給される交流電源ACの交流電力の正負の切り替わり点であるゼロクロス点(すなわち、ゼロクロスタイミング)を検出し、ゼロクロス点の検出タイミングを示すゼロクロス信号ZCRSを生成する。ゼロクロス検出回路61は、ゼロクロス信号生成手段の一例である。
【0020】
トライアック62は、電磁リレーMR2と定着ヒータ54aの電源線の他方との間に配置され、交流電源ACから供給される交流電力を制御部64からのトリガ信号TRGによってオンまたはオフされる。そして、トライアック62は、定着ヒータ54aへの交流電力の供給(すなわち、定着ヒータ54aの点灯および消灯)を制御する。トリガ信号TRGは、トライアック62をオンさせるタイミング信号の一例である。
【0021】
制御部64は、例えば、CPU(Central Processing unit)が制御プログラムを実行することで実現される。なお、制御部64は、ハードウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとにより実現されてもよい。
【0022】
制御部64は、ゼロクロス検出回路61からのゼロクロス信号ZCRSに基づいて、トライアック62をオンさせるトリガTRGの出力タイミング(出力位相)を決定し、決定した出力タイミングにしたがってトリガTRGを出力する。
【0023】
メモリ65は、例えば、CPUが実行するプログラムおよびCPUが使用するデータ等を保持する。例えば、メモリ65に保持されるデータは、交流電源ACの交流電力の半波周期に対する定着ヒータ54aの点灯期間の比率を示すデューティ比と、トリガ信号TRGのトライアック62への出力タイミングとの関係を示す情報を含んでもよい。
【0024】
電磁リレーMR1、MR2は、画像形成装置1の筐体に設けたドアの開閉に応じて動作するスイッチによって定着ヒータ54aへの電力の供給を断続する動作を行う。すなわち、電磁リレーMR1、MR2は、ドアを開くと定着ヒータ54aへの電力の供給を切断する動作を行う。なお、電磁リレーMR1、MR2は、CPUにより制御されなくてもよいため、制御装置60の外部に設けられてもよい。
【0025】
図3は、
図2に示したゼロクロス検出回路61の例を示す回路図である。ゼロクロス検出回路61は、ダイオードブリッジ61aおよびフォトカプラ61bを有する。ダイオードブリッジ61aは、交流電源ACから供給される交流電力を全波整流し、フォトカプラ61bに供給する。フォトカプラ61bは、発光素子であるLED(Light Emitting Diode)と、受光素子であるフォトトランジスタPTとを有する。
【0026】
LEDは、整流された交流電力の電圧の変化に応じて点滅を繰り返す。フォトトランジスタPTは、コレクタが電源線に接続され、エミッタが接地線に接続される。フォトトランジスタPTは、LEDが点灯するとオンされ、インバータIVを介してゼロクロス信号ZCRSをハイレベルに設定する。フォトトランジスタPTは、LEDが消灯するとオフされ、インバータIVを介してゼロクロス信号ZCRSをロウレベルに設定する。
【0027】
すなわち、フォトカプラ61bは、全波整流された交流電力の電源電圧が所定の閾値電圧を超えるとゼロクロス信号ZCRSをハイレベルに設定し、電源電圧が閾値電圧以下になるとゼロクロス信号ZCRSをロウレベルに設定する。これにより、ゼロクロス点の発生タイミングを挟んで立ち下がりエッジと立ち上がりエッジとを有するパルス状のゼロクロス信号ZCRSが生成される。このように、ゼロクロス信号ZCRSのロウレベル期間はゼロクロス点の発生タイミングを含むため、ゼロクロス信号ZCRSによりゼロクロス点の検出が可能である。
【0028】
図4は、
図2に示した制御装置60による定着ヒータ54aの制御の例を示すタイミング図である。
図4に示す例では、定着ヒータ54aの制御周期は、交流電力の2周期に設定される。なお、定着ヒータ54aの制御周期は、2周期に限定されるものではない。
図4は、40%のデューティ比で定着ヒータ54aを連続点灯させる例を示す。
【0029】
図4のヒータ電流において太い枠で示した網掛けの図形は、40%のデューティ比での定着ヒータ54aのオン期間(ヒータ電流が流れている点灯期間およびヒータ電流の大きさ)を示す。ヒータ電流において、破線で示す波形は、100%のデューティ比でのヒータ電流を示す。
【0030】
図4に示す電源電圧は、電磁リレーMR1、MR2を介して交流電源ACから供給される交流電力の電源電圧であり、ゼロクロス検出回路61に供給される電源電圧である。電源電圧の網掛けは、電源電圧の変化を見やすくするためのものである。
図4の縦方向に引いた太い一点鎖線は、交流電力の真のゼロクロス点のタイミング(すなわち、真のゼロクロスタイミング)を示す。
【0031】
ゼロクロス検出回路61は、ダイオードブリッジ61aにより全波整流した交流電源ACの電源電圧が所定の閾値電圧以下の場合、ゼロクロス信号ZCRSをロウレベルに設定する。これにより、真のゼロクロスタイミングを含むロウレベル期間を有するパルス信号であるゼロクロス信号ZCRSが生成される(
図4(a))。
【0032】
換言すれば、ゼロクロス信号ZCRSは、真のゼロクロスタイミングを挟んで順に現れる立ち下がりエッジ(第1遷移エッジ)および立ち上がりエッジ(第2遷移エッジ)を有する。ゼロクロス信号ZCRSに示す太い破線は、後述する電源電圧の電圧降下が発生しない場合の立ち下がりエッジを示す。
【0033】
なお、ゼロクロス信号ZCRSは、真のゼロクロスタイミングを挟んで順に現れる立ち上がりエッジと立ち下がりエッジとを有してもよい。この場合、
図3に示したゼロクロス検出回路61において、直列に接続された2つのインバータIVがフォトトランジスタPTのコレクタに接続される。
【0034】
制御部64は、定着ヒータ54aを点灯する場合、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間の次の半波期間において、デューティ比で決定されるタイミングで、定着ヒータ54aを点灯させるためのトリガ信号TRGを生成する(
図4(b))。そして、制御部64は、生成したトリガ信号TRGをトライアック62に出力する。
【0035】
以下では、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間以降の複数の半波期間のいずれかを、点灯半波期間とも称する。点灯半波期間は、トリガ信号TRGを出力して定着ヒータ54aを点灯させる半波期間であり、
図4の例では、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間の次の半波期間に設定される。
【0036】
図4では、デューティ比が40%のため、制御部64は、点灯半波期間の60%が経過したタイミングでトリガ信号TRGの出力を開始する。なお、デューティ比が100%の場合、制御装置60は、点灯半波期間の開始タイミング(すなわち、ゼロクロスタイミング)でトリガ信号TRGの出力を開始する。
【0037】
トライアック62は、トリガ信号TRGの立ち上がりエッジに応答してオンし、定着ヒータ54aに電力を供給する。これにより、定着ヒータ54aにヒータ電流が流れ、定着ヒータ54aがオン(点灯)する(
図4(c))。トライアック62は、電源電圧がゼロクロス点に到達するとオフし、定着ヒータ54aへの電力の供給を停止する。定着ヒータ54aは、電力の供給の停止によりオフ(消灯)する。これにより、デューティ比に応じた期間、定着ヒータ54aが点灯する。制御部64のうち、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジに基づいて、点灯半波期間に定着ヒータ54aのオン時間を制御する機能部は、ヒータ点灯制御手段の一例である。
【0038】
図4に示す例では、白抜きの矢印で示すように、定着ヒータ54aの点灯時の突入電流により交流電源ACの電源電圧に電圧降下が発生する(
図4(d))。これにより、ダイオードブリッジ61aにより全波整流された電源電圧がフォトカプラ61bの閾値電圧以下になるタイミングが早まる。したがって、ゼロクロス検出回路61は、電圧降下が発生しない場合に比べて、ゼロクロス信号ZCRSの立ち下がりエッジを早く生成する(
図4(e))。
【0039】
すなわち、真のゼロクロスタイミングに対するゼロクロス信号ZCRSの立ち下がりエッジのずれ量は、突入電流の有無と突入電流の量に応じて変化する。なお、電源電圧がゼロクロス点から上昇または下降を開始する期間は、電源電圧が低いため、デューティ比が100%に設定されている場合でも電圧降下は発生しない。このため、ゼロクロス検出回路61が電源電圧の上昇時および下降時に生成するゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジは、定着ヒータ54aの動作の影響を受けず、真のゼロクロスタイミングからのずれ量は常に一定になる。
【0040】
制御部64は、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを基準にして、デューティ比に応じたタイミングでトリガ信号TRGを生成する。このため、電源電圧の電圧降下の有無にかかわらず、点灯半波期間において、常にデューティ比に対応するタイミングでトリガ信号TRGを出力することができる。
【0041】
また、電圧降下の影響を受けずにゼロクロス信号ZCRSを生成できるため、制御周期内のすべての半波期間に定着ヒータ54aを点灯させることができ、定着ヒータ54aの点灯頻度が低下することを抑止できる。したがって、制御周期内での定着ヒータ54aへの電力供給量が低下することを抑止でき、定着ヒータ54aの起動時間が長くなることを防止できる。
【0042】
この結果、目標の位相角で定着ヒータ54aを点灯させることができ、定着ヒータ54aの点灯頻度を低下させることなく、定着ヒータ54aに供給する電力の精度を向上することができる。すなわち、定着装置54の定着温度を精度よく制御することができる。
【0043】
さらに、電圧降下の影響を受けないゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジに基づいて定着ヒータ54aの動作を制御できるため、電圧降下の発生を検出する電圧検出回路を不要にできる。
【0044】
なお、
図4では、点灯半波期間を、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間の次の半波期間に設定する例を示したが、点灯半波期間は、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間以降の半波期間のいずれかに設定されればよい。但し、制御部64によるトリガ信号TRGの生成制御を簡易にし、トリガ信号TRGの生成精度を向上するためには、点灯半波期間は、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間に最も近い半波期間(すなわち次の半波期間)であることが望ましい。
【0045】
ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを基準にすることで、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間以降のいずれに点灯半波期間が設定されても、目標の位相角で定着ヒータ54aを点灯させることができる。この結果、点灯半波期間の位置によらず、定着ヒータ54aの点灯頻度を低下させることなく定着ヒータ54aに供給する電力の精度を向上することができる。
【0046】
さらに、点灯半波期間を、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間以降の半波期間のいずれかに設定するにすることで、例えば、デューティ比が100%の場合にも、定着ヒータ54aをデューティ比で示される期間に点灯させることができる。
【0047】
図4の下側のかぎ括弧内は、トリガ信号TRGがゼロクロス信号ZCRSの立ち下がりエッジを基準にして生成される例を示す。上述したように、ゼロクロス信号ZCRSの立ち下がりエッジの発生タイミングは、定着ヒータ54aの点灯による電源電圧の電圧降下の影響により、電圧降下が発生しない場合に比べて早くなる。このため、トリガ信号TRGの出力タイミングも、電圧降下が発生しない場合(
図4(f))に比べて早くなる(
図4(g))。
【0048】
これにより、設定されたデューティ比より長い期間、定着ヒータ54aが点灯するため、目標値より大きい電力が定着ヒータ54aに供給されてしまう。すなわち、ゼロクロス信号ZCRSの立ち下がりエッジを基準にして定着ヒータ54aを点灯する場合、定着ヒータ54aに供給する電力の精度が低下する問題があり、ヒータ電流が増加する問題がある。さらに、ヒータ電流の増加により突入電流が増加した場合、同一の交流電源ACに接続される蛍光灯がちらつきなどの不具合が原因するおそれがある。
【0049】
これに対して、トリガ信号TRGがゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジに基づいて生成される場合、定着ヒータ54aの点灯期間をデューティ比通りに設定することができる。したがって、目標値を超える電力が定着ヒータ54aに供給されることはなく、突入電流が増加することを抑制できる。この結果、例えば、突入電流に起因して蛍光灯がちらつく可能性を下げることができる。
【0050】
一方、トリガ信号TRGをゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジに基づいて生成し、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間中に、デューティ比で決定されるタイミングでトリガ信号TRGを生成することが考えられる。しかしながら、この手法では、例えば、デューティ比が100%などの高い値に設定される場合、定着ヒータ54aをデューティ比に応じた期間点灯させることができない。例えば、ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジの真のゼロクロスタイミングからのずれ量が、2%のデューティ比に相当する場合、デューティ比を100%に設定した場合にも、定着ヒータ54aを98%のデューティ比でしか点灯させることができない。
【0051】
以上、
図1から
図4に示す実施形態では、目標の位相角で定着ヒータ54aを点灯させることができ、定着ヒータ54aの点灯頻度を低下させることなく、定着ヒータ54aに供給する電力の精度を向上することができる。すなわち、定着ヒータ54aの起動時間が長くなることを抑止しつつ、定着装置54の定着温度を精度よく制御することができる。
【0052】
ゼロクロス信号ZCRSの立ち上がりエッジを含む半波期間以降のいずれに点灯半波期間が設定されても、目標の位相角で定着ヒータ54aを点灯させることができる。この結果、点灯半波期間の位置によらず、定着ヒータ54aの点灯頻度を低下させることなく、定着ヒータ54aに供給する電力の精度を向上することができる。
【0053】
定着ヒータ54aに目標値を超える電力が供給されることを抑止できるため、突入電流の増加を抑制することができる。この結果、同一の交流電源ACに接続される蛍光灯において、突入電流に起因して蛍光灯がちらつく可能性を下げることができる。
【0054】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 画像形成装置
2 自動原稿送り装置
3 画像読み取り装置
4 書き込みユニット
5 プリンタユニット
6 キャパシタユニット
51 感光体ドラム
52 現像装置
53 搬送ベルト
54 定着装置
54a 定着ヒータ
60 制御装置
61 ゼロクロス検出回路
61a ダイオードブリッジ
61b フォトカプラ
62 トライアック
64 制御部
65 メモリ
AC 交流電源
MR1、MR2 電磁リレー
TRG トリガ
ZCRS ゼロクロス信号
【先行技術文献】
【特許文献】
【0056】
【文献】特開2018-010193号公報
【文献】特開2008-209604号公報