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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】熱硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 79/08 20060101AFI20220517BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20220517BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20220517BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20220517BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C08L79/08 D
C08G73/10
C08L33/14
C08F20/28
G02B5/20 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018153928
(22)【出願日】2018-08-20
(65)【公開番号】P2019044160
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2021-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2017166037
(32)【優先日】2017-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中原 鉄舟
(72)【発明者】
【氏名】近藤 学
(72)【発明者】
【氏名】奈良 和美
(72)【発明者】
【氏名】木村 佑希
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-138264(JP,A)
【文献】特開2007-079365(JP,A)
【文献】国際公開第2011/099352(WO,A1)
【文献】特開2015-004012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F 2/00-246/00
C08G73/00-73/26
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルアミド酸(A)、環状エーテル化合物の重合体(B)、及び硬化剤(C)を含む熱硬化性組成物であって、
前記ポリエステルアミド酸(A)が、Xモルのテトラカルボン酸二無水物、Yモルのジアミン及びZモルの多価ヒドロキシ化合物を、下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような比率で含む原料からの反応生成物であり、

0.2≦Z/Y≦8.0・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0・・・(2)

前記環状エーテル化合物の重合体(B)が、オキセタニル基を有する化合物(b1)のラジカル重合による単独重合体、オキセタニル基を有する化合物(b1)同士のラジカル重合による共重合体、及びオキセタニル基を有する化合物(b1)とオキシラニル基を有する化合物(b2)のラジカル重合による共重合体から選択される少なくとも1つであり、
前記オキセタニル基を有する化合物(b1)がオキセタニル基を有する(メタ)アクリレート化合物であり、
前記オキシラニル基を有する化合物(b2)がオキシラニル基を有する(メタ)アクリレート化合物である、熱硬化性組成物。
【請求項2】
前記ポリエステルアミド酸(A)が、下記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位を含む、請求項1に記載の熱硬化性組成物。
【化1】
式(3)及び式(4)において、Rはテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、Rはジアミンから2つの-NHを除いた残基であり、Rは多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基である。
【請求項3】
前記オキセタニル基を有する化合物(b1)が、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項4】
前記オキシラニル基を有する化合物(b2)が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチル アクリレートグリシジルエーテルから選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の熱硬化性組成物。
【請求項5】
前記環状エーテル化合物の重合体(B)の含有量が、ポリエステルアミド酸(A)100重量部に対して20~400重量部である、請求項1~4のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物を硬化させて得られる、硬化膜。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化膜を透明保護膜として有する、カラーフィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品における絶縁材料、半導体装置におけるパッシベーション膜、バッファーコート膜、層間絶縁膜、平坦化膜、液晶表示素子における層間絶縁膜、カラーフィルタ用保護膜等の形成に用いることができる熱硬化性組成物、それによる透明膜、及びその膜を有する電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子等の素子の製造工程では、有機溶剤、酸、アルカリ溶液等の種々の薬品処理がなされたり、スパッタリングにより配線電極を成膜する際に、表面が局部的に高温に加熱されたりすることがある。そのため、各種の素子の表面の劣化、損傷、変質を防止する目的で表面保護膜が設けられる場合がある。これらの保護膜には、上記のような製造工程中の各種処理に耐えることができる諸特性が要求される。具体的には、耐熱性、耐溶剤性・耐酸性・耐アルカリ性等の耐薬品性、耐水性、ガラス等の下地基板への密着性、透明性、耐傷性、平坦性、耐光性等が要求される。表示素子に求められる信頼性の要求特性が向上するに伴い、表示素子部材に求められる耐熱性が向上している中、耐熱性の良好なポリエステルアミド酸及びエポキシ化合物を含む熱硬化性組成物が提唱されている(特許文献1)。更に、近年の高精細化、薄型化された液晶表示素子に求められる平坦性が向上するに伴い、耐熱性が良好であることに加えて、平坦性の良好な熱硬化性組成物が提唱されている(特許文献2)。
【0003】
上記の特性に加えて、最近では耐熱性、平坦性に加えて下地成分の溶出を低減させる特性(以下、バリア性ともいう)への要求が強くなっている。この背景には、特にカラーフィルタの分野において、広色域化への対応があり、各カラーフィルタメーカーでは色味は良いが溶出・分解しやすい色素の使用や、退色を防ぐために光硬化の処理を最低限にする等の傾向が見られる。結果として、これらの傾向に対応していない従来の保護膜においては、十分に下地の溶出を抑えることが出来ず、パネルを形成する際に溶出成分が混入し、ディスプレイの表示品位を低下させ、結果的に歩留まりを低下させてしまうといった問題が発生している。
【0004】
この要求に対し、保護膜に求められる具体的な対策として、配向膜形成時における、配向膜溶液の溶剤の循環防止、保護膜を形成した後の工程における焼成中のカラーフィルタからのガス成分のトラップ等が求められている。
【0005】
これらの優れた保護膜材料としては、上記に示した熱硬化性樹脂組成物(特許文献1及び特許文献2)に加えて、熱硬化性重合体組成物(特許文献3)がある。一方で、特許文献1、及び特許文献3の組成物は、各種処理への耐性は良好なものの、平坦性が不十分であり、場合によってはバリア性が低いという問題があった。また、特許文献2の組成物もまた、各種処理への耐性、及び平坦性は良好なものの、バリア性が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-105264
【文献】特開2008-156546
【文献】特開2006-282995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、下地成分の溶出を防ぎ、かつ平坦性に優れる硬化膜を与える熱硬化性組成物、及び該熱硬化性組成物によって形成される硬化膜を提供することであり、更には該硬化膜を有する電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物の反応生成物であるポリエステルアミド酸、環状エーテル化合物の重合体、並びに硬化剤を含む組成物を硬化して得られる硬化膜により、上記目的を達することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の構成を含む。
【0009】
[1] ポリエステルアミド酸(A)、環状エーテル化合物の重合体(B)、及び硬化剤(C)を含む熱硬化性組成物であって、
前記ポリエステルアミド酸(A)は、Xモルのテトラカルボン酸二無水物、Yモルのジアミン及びZモルの多価ヒドロキシ化合物を、下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような比率で含む原料からの反応生成物であり、

0.2≦Z/Y≦8.0・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0・・・(2)

前記環状エーテル化合物の重合体(B)がオキセタニル基を有する化合物(b1)の単独重合体、オキセタニル基を有する化合物(b1)同士の共重合体、及びオキセタニル基を有する化合物(b1)とオキシラニル基を有する化合物(b2)の共重合体から選択される少なくとも1つである、熱硬化性組成物。
【0010】
[2] 前記ポリエステルアミド酸(A)が、下記式(3)で表される構成単位及び下記式(4)で表される構成単位を含む、[1]項に記載の熱硬化性組成物。
【化1】
式(3)及び式(4)において、Rはテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、Rはジアミンから2つの-NHを除いた残基であり、Rは多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基である。
【0011】
[3] 前記オキセタニル基を有する化合物(b1)が、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレートから選択される少なくとも1つである、[1]項又は[2]項に記載の熱硬化性組成物。
【0012】
[4] 前記オキシラニル基を有する化合物(b2)が、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチル アクリレートグリシジルエーテルから選択される少なくとも1つである、[1]項又は[2]項に記載の熱硬化性組成物。
【0013】
[5] 前記環状エーテル化合物の重合体(B)の含有量が、ポリエステルアミド酸(A)100重量部に対して20~400重量部である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物。
【0014】
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の熱硬化性組成物を硬化させて得られる、硬化膜。
【0015】
[7] [6]項に記載の硬化膜を透明保護膜として有する、カラーフィルタ。
【発明の効果】
【0016】
本発明の好ましい態様に係る熱硬化性組成物は、下地成分の溶出を防ぎ、かつ平坦性に優れた材料であり、カラー液晶表示素子のカラーフィルタ保護膜として用いた場合、表示品位を向上させることができる。特に、染色法、顔料分散法、電着法及び印刷法により製造されたカラーフィルタの保護膜として有用である。又、各種光学材料の保護膜及び透明絶縁膜としても使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.本発明の熱硬化性組成物
本発明の熱硬化性組成物は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を含む原料からの反応生成物であるポリエステルアミド酸(A)、環状エーテル化合物の重合体(B)、並びに硬化剤(C)を含む組成物であって、環状エーテル化合物の重合体(B)が、オキセタニル基を有する化合物(b1)の単独重合体、オキセタニル基を有する化合物(b1)同士の共重合体、及びオキセタニル基を有する化合物(b1)とオキシラニル基を有する化合物(b2)の共重合体から選択される少なくとも1つである熱硬化性組成物である。
【0018】
1-1.ポリエステルアミド酸(A)
ポリエステルアミド酸は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を含む原料からの反応生成物である。更に詳しくは、Xモルのテトラカルボン酸二無水物、Yモルのジアミン及びZモルの多価ヒドロキシ化合物を、下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような比率で含む原料からの反応生成物である。

0.2≦Z/Y≦8.0・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0・・・(2)
【0019】
ポリエステルアミド酸(A)は下記式(3)で表される構成単位及び式(4)で表される構成単位を有することが好ましい。
【化2】
【0020】
式(3)及び式(4)において、Rはテトラカルボン酸二無水物から2つの-CO-O-CO-を除いた残基であり、好ましくは炭素数2~30の有機基である。Rはジアミンから2つの-NHを除いた残基であり、好ましくは炭素数2~30の有機基である。Rは多価ヒドロキシ化合物から2つの-OHを除いた残基であり、好ましくは炭素数2~20の有機基である。
【0021】
ポリエステルアミド酸(A)の合成には、少なくとも溶剤が必要であり、この溶剤をそのまま残してハンドリング性等を考慮した液状やゲル状の熱硬化性組成物としてもよいし、この溶剤を除去して運搬性等を考慮した固形状の組成物としてもよい。又、ポリエステルアミド酸(A)の合成には、原料として、必要に応じて、モノヒドロキシ化合物及びスチレン-無水マレイン酸共重合体から選択される1つ以上の化合物を含んでいてもよく、特にモノヒドロキシ化合物を含むことが好ましい。又、ポリエステルアミド酸(A)の合成には、原料として、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記以外の他の化合物を含んでいてもよい。
【0022】
1-1-1.テトラカルボン酸二無水物
本発明では、ポリエステルアミド酸(A)を得るための材料として、テトラカルボン酸二無水物を用いる。好ましいテトラカルボン酸二無水物の具体例は、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2-[ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)(商品名;TMEG-100、新日本理化株式会社)、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、エタンテトラカルボン酸二無水物、及びブタンテトラカルボン酸二無水物である。これらの内1つ以上を用いることができる。
【0023】
これらの中でも、良好な透明性を与える、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、2,2-[ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)]ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及びエチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)がより好ましく、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物及び1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物が更に好ましい。
【0024】
1-1-2.ジアミン
本発明では、ポリエステルアミド酸(A)を得るための材料として、ジアミンを用いる。好ましいジアミンの具体例は、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル][3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル][3-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、及び2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパンである。これらの内1つ以上を用いることができる。
【0025】
これらの中でも、良好な透明性を与える、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン及びビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホンがより好ましく、3,3’-ジアミノジフェニルスルホンが更に好ましい。
【0026】
1-1-3.多価ヒドロキシ化合物
本発明では、ポリエステルアミド酸(A)を得るための材料として、多価ヒドロキシ化合物を用いる。
【0027】
好ましい多価ヒドロキシ化合物の具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,2,5-ペンタントリオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,2,7-ヘプタントリオール、1,2-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、1,2,8-オクタントリオール、1,2-ノナンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2,9-ノナントリオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,2,10-デカントリオール、1,2-ドデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールS(ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジシクロヘキシル、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、
【0028】
グリセリンモノアリルエーテル、トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ジペンタエリスリトールモノアリルエーテル、ジペンタエリスリトールジアリルエーテル、ジペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ジペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ソルビトールモノアリルエーテル、ソルビトールジアリルエーテル、ソルビトールトリアリルエーテル、ソルビトールテトラアリルエーテル、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールモノ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールSジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールSジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビキシレノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビフェノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、フルオレンジフェノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、トリシクロデカンジメタノールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びエポキシ基を1分子あたり2個以上含む他の化合物の(メタ)アクリル酸変性物を挙げることができる。
【0029】
これらの中で、反応溶剤への溶解性が良好な、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、イソシアヌル酸トリス(2-ヒドロキシエチル)、2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジシクロヘキシル、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール、4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール)、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールSジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールSジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びプロピレンオキシド変性ビスフェノールFジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物が好ましい。さらに、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-ヒドロキシベンジルアルコール、4-ヒドロキシベンジルアルコール、4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール)、2-(4-ヒドロキシフェニル)エタノール、エチレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物、及びプロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸変性物が特により好ましい。
【0030】
エチレングリコールジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物、プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物、グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物、プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物、及びプロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物として、下記市販品を用いることができる。
【0031】
エチレングリコールジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル40EM(商品名;共栄社化学株式会社)である。プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル70PA(商品名;共栄社化学株式会社)である。トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル200PA(商品名;共栄社化学株式会社)である。グリセリンジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル80MFA(商品名;共栄社化学株式会社)である。ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル3000MK(商品名;共栄社化学株式会社)である。ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル3000A(商品名;共栄社化学株式会社)である。プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルのメタクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル3002M(N)(商品名;共栄社化学株式会社)である。プロピレンオキシド変性ビスフェノールAジグリシジルエーテルのアクリル酸変性物の具体例は、エポキシエステル3002A(N)(商品名;共栄社化学株式会社)である。
【0032】
1-1-4.モノヒドロキシ化合物
本発明では、ポリエステルアミド酸(A)を得るための材料として、モノヒドロキシ化合物を用いてもよい。モノヒドロキシ化合物を用いることで、熱硬化性組成物の保存安定性が向上する。好ましいモノヒドロキシ化合物の具体例は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、フェノール、ボルネオール、マルトール、リナロール、テルピネオール、ジメチルベンジルカルビノール、及び3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、である。これらの内1つ以上を用いることができる。
【0033】
これらの中でもイソプロピルアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、又は3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタンがより好ましい。これらを使用してできるポリエステルアミド酸(A)と、環状エーテル化合物の重合体(B)、及び硬化剤(C)を混合した場合の相溶性や、熱硬化性組成物のカラーフィルタ上への塗布性を考慮すると、モノヒドロキシ化合物にはベンジルアルコールの使用が更に好ましい。
【0034】
モノヒドロキシ化合物は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び多価ヒドロキシ化合物の合計量100重量部に対して0~300重量部含有して反応させることが好ましい。より好ましくは5~200重量部である。
【0035】
1-1-5.スチレン-無水マレイン酸共重合体
又、本発明に用いられるポリエステルアミド酸(A)は、上記の原料に酸無水物基を3個以上有する化合物を添加して合成してもよい。酸無水物基を3個以上有する化合物を添加して合成したポリエステルアミド酸(A)は、透明性の向上が期待されるため好ましい。酸無水物基を3個以上有する化合物の例は、スチレン-無水マレイン酸共重合体である。スチレン-無水マレイン酸共重合体を構成する各成分の比率については、スチレン/無水マレイン酸のモル比が0.5~4であり、好ましくは1~3である。スチレン/無水マレイン酸のモル比は1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0036】
スチレン-無水マレイン酸共重合体の具体例は、SMA3000P、SMA2000P、及びSMA1000P(いずれも商品名;川原油化株式会社)である。これらの中でも耐熱性及び耐アルカリ性が良好なSMA1000Pが特に好ましい。
【0037】
スチレン-無水マレイン酸共重合体は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び多価ヒドロキシ化合物の合計量100重量部に対して0~500重量部含有することが好ましい。より好ましくは10~300重量部である。
【0038】
1-1-6.アミノ基を1つ有するアミノシラン化合物
ポリエステルアミド酸(A)の合成には、原料として、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて上記以外の他の原料を含んでいてもよく、このような他の原料の例は、アミノ基を1つ有するアミノシラン化合物である。アミノ基を1つ有するアミノシラン化合物はポリエステルアミド酸(A)の末端の酸無水物基と反応させて末端にシリル基を導入するために用いられる。アミノ基を1つ有するアミノシラン化合物を添加して反応することにより得られたポリエステルアミド酸(A)を含有する本発明の熱硬化性組成物を用いると、得られた硬化膜の耐酸性が改善される。更に、上述したモノマーの構成で反応させる場合には、モノヒドロキシ化合物及びアミノ基を1つ有するアミノシラン化合物を両方添加して反応させることもできる。
【0039】
本発明で用いられる好ましいアミノ基を1つ有するアミノシラン化合物の具体例は、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、4-アミノブチルメチルジエトキシシラン、p-アミノフェニルトリメトキシシラン、p-アミノフェニルトリエトキシシラン、p-アミノフェニルメチルジメトキシシラン、p-アミノフェニルメチルジエトキシシラン、m-アミノフェニルトリメトキシシラン、及びm-アミノフェニルメチルジエトキシシランである。これらの内1つ以上を用いることができる。
【0040】
これらの中でも硬化膜の耐酸性が良好になる3-アミノプロピルトリエトキシシラン及びp-アミノフェニルトリメトキシシランがより好ましく、3-アミノプロピルトリエトキシシランが耐酸性、相溶性の観点から更に好ましい。
【0041】
アミノ基を1つ有するアミノシラン化合物は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び多価ヒドロキシ化合物の合計量100重量部に対して0~300重量部含有することが好ましい。より好ましくは5~200重量部である。
【0042】
1-1-7.ポリエステルアミド酸(A)の合成反応に用いる溶剤
ポリエステルアミド酸(A)を得るための合成反応に用いる溶剤(以降、「反応溶剤」と称することがある。)の具体例は、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン、及びN,N-ジメチルアセトアミドである。これらの中でもプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシプロピオン酸メチル、及びジエチレングリコールメチルエチルエーテルが好ましい。
【0043】
1-1-8.ポリエステルアミド酸(A)の合成方法
本発明で用いられるポリエステルアミド酸(A)は、テトラカルボン酸二無水物Xモル、ジアミンYモル、及び多価ヒドロキシ化合物Zモルを上記溶剤中で反応させることで合成され、このときX、Y及びZはそれらの間に下記式(1)及び式(2)の関係が成立するような割合に定めることが好ましい。この範囲であれば、ポリエステルアミド酸(A)の溶剤への溶解性が高く、したがって組成物の塗布性が向上し、結果として平坦性に優れた硬化膜を得ることができる。

0.2≦Z/Y≦8.0 ・・・・・・・(1)
0.2≦(Y+Z)/X≦5.0 ・・・(2)

式(1)は、好ましくは0.7≦Z/Y≦7.0であり、より好ましくは1.0≦Z/Y≦5.0である。又、式(2)は、好ましくは0.5≦(Y+Z)/X≦4.0であり、より好ましくは0.6≦(Y+Z)/X≦2.0である。
【0044】
本発明で用いられるポリエステルアミド酸(A)は、上記の反応条件において(Y+Z)に対してXを過剰に用いた条件下では、末端に酸無水物基(-CO-O-CO-)を有する分子が、末端にアミノ基や水酸基を有する分子より過剰に生成すると考えられる。そのようなモノマーの構成で反応させる場合には、必要により、分子末端の酸無水物基と反応させて末端をエステル化するために、上述したモノヒドロキシ化合物を添加することができる。モノヒドロキシ化合物を添加して反応することにより得られたポリエステルアミド酸(A)は、環状エーテル化合物の重合体(B)及び硬化剤(C)との相溶性が改善されるとともに、それらを含む本発明の熱硬化性組成物の塗布性が改善される。
【0045】
反応溶剤は、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物の合計100重量部に対し100重量部以上使用すると、反応がスムーズに進行するので好ましい。反応は40℃~200℃で、0.2~20時間反応させるのがよい。
【0046】
反応原料の反応系への添加順序は、特に限定されない。すなわち、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を同時に反応溶剤に加える方法、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物を反応溶剤中に溶解させた後、テトラカルボン酸二無水物を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物と多価ヒドロキシ化合物をあらかじめ反応させた後、その生成物にジアミンを添加する方法、又はテトラカルボン酸二無水物及びジアミンをあらかじめ反応させた後、その生成物に多価ヒドロキシ化合物を添加する方法等いずれの方法も用いることができる。
【0047】
前記のアミノ基を1つ有するアミノシラン化合物を反応させる場合には、テトラカルボン酸二無水物並びに、ジアミン及び多価ヒドロキシ化合物の反応が終了した後に、反応後の溶液を40℃以下まで冷却した後、アミノ基を1つ有するアミノシラン化合物を添加し、10~40℃で0.1~6時間反応させるとよい。又、モノヒドロキシ化合物は反応のどの時点で添加してもよい。
【0048】
このようにして合成されたポリエステルアミド酸(A)は式(3)で表される構成単位及び式(4)で表される構成単位を含み、その末端は原料であるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン若しくは多価ヒドロキシ化合物に由来する酸無水物基、アミノ基若しくはヒドロキシ基であるか、又はこれら化合物以外の添加物がその末端を構成する。このような構成を含むことで、硬化性が良好となる。
【0049】
得られたポリエステルアミド酸(A)の重量平均分子量は1,000~200,000であることが好ましく、2,000~50,000がより好ましい。これらの範囲にあれば、平坦性及び耐熱性が良好となる。
【0050】
本明細書中の重量平均分子量は、GPC法(カラム温度:35℃、流速:1ml/min)により求めたポリスチレン換算での値である。標準のポリスチレンには分子量が645~132900のポリスチレン(例えば、アジレント・テクノロジー株式会社のポリスチレンキャリブレーションキットPL2010-0102)、カラムにはPLgel MIXED-D(アジレント・テクノロジー株式会社)を用い、移動相としてTHFを使用して測定することができる。なお、本明細書中の市販品の重量平均分子量はカタログ掲載値である。
【0051】
1-2.環状エーテル化合物の重合体(B)
本発明に用いられる環状エーテル化合物の重合体(B)は、オキセタニル基を有する化合物(b1)の単独重合体、オキセタニル基を有する化合物(b1)同士の共重合体、及びオキセタニル基を有する化合物(b1)とオキシラニル基を有する化合物(b2)の共重合体から選択される少なくとも1つである。環状エーテル化合物の重合体(B)は、1つでもよく、2つ以上用いてもよい。
【0052】
オキセタニル基を有する化合物(b1)とオキシラニル基を有する化合物(b2)を共重合させる場合、オキセタニル基を有する化合物(b1)の割合は、環状エーテル化合物の重合体(B)中50~90重量%であると、バリア性の観点から好ましい。オキセタニル基を有する化合物(b1)の割合が70~90重量%であると、よりバリア性が向上する。
【0053】
オキセタニル基を有する化合物(b1)の具体例としては、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート(例えば、商品名;OXE-10、大阪有機化学工業株式会社)、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート(例えば、商品名;OXE-30、大阪有機化学工業株式会社)が挙げられる。
【0054】
オキシラニル基を有する化合物(b2)の具体例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、メチルグリシジルメタクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルが挙げられる。
【0055】
1-3.ポリエステルアミド酸(A)に対する環状エーテル化合物の重合体(B)の割合
本発明の熱硬化性組成物におけるポリエステルアミド酸(A)100重量部に対する環状エーテル化合物の重合体(B)の総量の割合は、20~400重量部である。環状エーテル化合物の重合体(B)の総量の割合がこの範囲であると、バリア性、平坦性、耐熱性のバランスが良好である。
【0056】
1-4.硬化剤(C)
本発明の熱硬化性組成物には、平坦性、耐薬品性を向上させるために、硬化剤(C)を用いてもよい。硬化剤(C)としては、酸無水物系硬化剤、カルボン酸含有ポリマー、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、触媒型硬化剤、及びスルホニウム塩、ベンゾチアゾリウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩等の感熱性酸発生剤等があるが、硬化膜の着色を避けること及び硬化膜の耐熱性の観点から、酸無水物系硬化剤又はイミダゾール系硬化剤が好ましい。
【0057】
前記酸無水物系硬化剤の具体例は、無水マレイン酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物等の脂肪族ジカルボン酸無水物;無水フタル酸、トリメリット酸無水物等の芳香族多価カルボン酸無水物、並びにスチレン-無水マレイン酸共重合体である。これらの中でも耐熱性と溶剤に対する溶解性のバランスの良好な、トリメリット酸無水物及びヘキサヒドロトリメリット酸無水物が好ましい。
【0058】
前記カルボン酸含有ポリマーの具体例としては、ARUFON UC-3000、ARUFON UC-3090(いずれも商品名;東亞合成株式会社)、マープルーフ MA-0215Z、マープルーフ MA-0217Z、及びマープルーフ MA-0221Z(いずれも商品名;日油株式会社)が挙げられる。これらの中でも耐熱性と溶剤に対する溶解性、及び平坦性のバランスの良好な、ARUFON UC-3000が好ましい。
【0059】
前記イミダゾール系硬化剤の具体例は、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイトである。これらの中でも硬化性と溶剤に対する溶解性のバランスの良好な、2-ウンデシルイミダゾールが好ましい。
【0060】
フェノール系硬化剤の具体例は、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、4,4’-(3,3,5-トリメチル-1,1-シクロヘキサンジイル)ビス(フェノール)、及び1,1,2,2-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンが挙げられる。これらの中でも耐熱性及び相溶性のバランスが良好な、α,α,α’-トリス(4-ヒドロキシフェニル)-1-エチル-4-イソプロピルベンゼン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、及び9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレンが好ましい。
【0061】
硬化剤(C)を使用する場合、環状エーテル化合物の重合体(B)100重量部に対する硬化剤(C)の割合は、0.1~60重量部である。硬化剤(C)が酸無水物系硬化剤の場合の添加量については、より詳細には、オキセタニル基及びオキシラニル基に対して、硬化剤中のカルボン酸無水物基又はカルボキシル基が0.1~1.5倍当量になるよう添加するのが好ましい。このとき、カルボン酸無水物基は2価で計算する。カルボン酸無水物基又はカルボキシル基が0.15~0.8倍当量になるよう添加すると耐薬品性が一層向上するので、より好ましい。
【0062】
1-5.その他の成分
本発明の熱硬化性組成物には、平坦性、耐傷性、塗布均一性、接着性などの膜物性を向上させるために各種の添加剤を添加することができる。添加剤には、オキシラニル基を有する化合物(b2)以外のエポキシ化合物、重合性二重結合を有する化合物、溶剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系、フッ素系又はシリコン系のレベリング剤・界面活性剤、シランカップリング剤等の密着性向上剤、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物等の酸化防止剤が主に挙げられる。
【0063】
1-5-1.エポキシ化合物
本発明の熱硬化性組成物には、オキシラニル基を有する化合物(b2)以外のエポキシ化合物を用いても良い。本発明の熱硬化組成物に任意に用いられるエポキシ化合物は、1分子当たり2つ以上のエポキシ基を有する化合物である。エポキシ化合物は、1つでもよく、2つ以上用いてもよい。
【0064】
上記エポキシ化合物の例は、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、グリシジルエステル型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、脂肪族ポリグリシジルエーテル化合物、環式脂肪族エポキシ化合物、エポキシ基を有するモノマーと他のモノマーとの共重合体、及びシロキサン結合部位を有するエポキシ化合物である。
【0065】
ビスフェノールA型エポキシ化合物の市販品の具体例は、jER 828、1004、1009(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)であり;ビスフェノールF型エポキシ化合物の市販品の具体例は、jER 806、4005P(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)であり;グリシジルエーテル型エポキシ化合物の市販品の具体例は、TECHMORE VG3101L(商品名;株式会社プリンテック)、EHPE-3150(商品名;株式会社ダイセル)、EPPN-501H、502H(いずれも商品名;日本化薬株式会社)、及びjER 1032H60(商品名;三菱ケミカル株式会社)であり;グリシジルエステル型エポキシ化合物の市販品の具体例は、デナコール EX-721(商品名;ナガセケムテックス株式会社)、及び1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジル(商品名;東京化成工業株式会社製)であり;ビフェニル型エポキシ化合物の市販品の具体例は、jER YX4000、YX4000H、YL6121H(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)、及びNC-3000、NC-3000-L、NC-3000-H、NC-3100(いずれも商品名;日本化薬株式会社)であり;フェノールノボラック型エポキシ化合物の市販品の具体例は、EPPN-201(商品名;日本化薬株式会社)、及びjER 152、154(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)等であり;クレゾールノボラック型エポキシ化合物の市販品の具体例は、EOCN-102S、103S、104S、1020(いずれも商品名;日本化薬株式会社)等であり;ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物の市販品の具体例は、jER 157S65、157S70(いずれも商品名;三菱ケミカル株式会社)であり;環式脂肪族エポキシ化合物の市販品の具体例は、セロキサイド2021P、3000(いずれも商品名;株式会社ダイセル)であり;シロキサン結合部位を有するエポキシ化合物の市販品の具体例は、1,3-ビス[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]テトラメチルジシロキサン(商品名;ジェレストインコーポレイテッド)、TSL9906(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)、COATOSIL MP-200(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)、コンポセラン SQ506(商品名;荒川化学株式会社)、ES-1023(商品名;信越化学工業株式会社)である。
【0066】
尚、TECHMORE VG3101L(商品名;株式会社プリンテック)は2-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-2-[4-[1,1-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エチル]フェニル]プロパン、及び1,3-ビス[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-[4-[1-[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]-1-メチルエチル]フェニル]エチル]フェノキシ]-2-プロパノールの混合物であり;EHPE-3150(商品名;株式会社ダイセル)は2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物であり;セロキサイド2021P(商品名;株式会社ダイセル)は3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートであり;セロキサイド3000(商品名;株式会社ダイセル)は1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタンであり;COATOSIL MP-200(商品名;モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランの重合体である。
【0067】
上記エポキシ化合物は上記の化合物を単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0068】
1-5-2.ポリエステルアミド酸(A)に対するオキシラニル基を有する化合物(b2)以外のエポキシ化合物の割合
本発明の熱硬化性組成物におけるポリエステルアミド酸(A)100重量部に対する上記オキシラニル基を有する化合物(b2)以外のエポキシ化合物の総量の割合は、0~100重量部である。オキシラニル基を有する化合物(b2)以外のエポキシ化合物の総量の割合がこの範囲であると、平坦性、耐熱性、耐薬品性、密着性、バリア性のバランスが良好である。よりバリア性を重視する場合には、オキシラニル基を有する化合物(b2)以外のエポキシ化合物の総量は0~50重量部の範囲であることが好ましい。
【0069】
1-5-3.重合性二重結合を有する化合物
本発明の熱硬化性組成物には、重合性二重結合を有する化合物を用いても良い。本発明の熱硬化性組成物に用いられる重合性二重結合を有する化合物は、重合性二重結合を1分子当り2個以上有する限り特に限定されるものではない。
【0070】
上記重合性二重結合を有する化合物の内、重合性二重結合を1分子当り2個有する化合物の具体例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ビス[(メタ)アクリロキシネオペンチルグリコール]アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン・エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートである。
【0071】
上記重合性二重結合を有する化合物の内、重合性二重結合を1分子あたり3個以上有する化合物の具体例は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エピクロルヒドリン変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン・エチレンオキシド変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス[(メタ)アクリロキシエチル]イソシアヌレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びアルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びカルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートである。
【0072】
上記重合性二重結合を有する化合物は上記の化合物を単独で用いてもよく、2つ以上を混合して用いてもよい。
【0073】
上記重合性二重結合を有する化合物100重量%中、重合性二重結合を1分子あたり3個以上有する化合物を50重量%以上含むことが耐傷性の観点から、好ましい。
【0074】
上記重合性二重結合を有する化合物の中でも、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及びカルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートを用いることが、平坦性及び耐傷性の観点から好ましい。
【0075】
上記重合性二重結合を有する化合物は、下記のような市販品を用いることができる。イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートの具体例は、アロニックス M-215(商品名;東亞合成株式会社)であり;イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレート及びイソシアヌル酸エチレンオキシド変性トリアクリレートの混合物の具体例は、アロニックス M-313(30~40重量%)及びM-315(3~13重量%、以下「M-315」と略記)(いずれも商品名;東亞合成株式会社、カッコ内の含有率は混合物中のイソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジアクリレートの含有率のカタログ掲載値)であり;トリメチロールプロパントリアクリレートの具体例は、アロニックス M-309(商品名;東亞合成株式会社)であり;ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物の具体例は、アロニックス M-306(65~70重量%)、M-305(55~63重量%)、M-303(30~60重量%)、M-452(25~40重量%)、及びM-450(10重量%未満)(いずれも商品名;東亞合成株式会社、カッコ内の含有率は混合物中のペンタエリスリトールトリアクリレートの含有率のカタログ掲載値)であり;ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物の具体例は、アロニックス M-403(50~60重量%)、M-400(40~50重量%)、M-402(30~40重量%、以下「M-402」と略記)、M-404(30~40重量%)、M-406(25~35重量%)、及びM-405(10~20重量%)(いずれも商品名;東亞合成株式会社、カッコ内の含有率は混合物中のジペンタエリスリトールペンタアクリレートの含有率のカタログ掲載値)であり;カルボキシル基含有多官能(メタ)アクリレートの具体例は、アロニックス M-510及びM-520(以下「M-520」と略記)(いずれも商品名;東亞合成株式会社)である。
【0076】
1-5-4.ポリエステルアミド酸(A)に対する重合性二重結合を有する化合物の割合
本発明の熱硬化性組成物におけるポリエステルアミド酸(A)100重量部に対する重合性二重結合を有する化合物の総量の割合は、0~100重量部である。重合性二重結合を有する化合物の総量の割合がこの範囲であると、平坦性、耐熱性、耐傷性及びバリア性のバランスが良好である。よりバリア性を重視する場合には重合性二重結合を有する化合物の総量は0~50重量部の範囲であることが好ましい。
【0077】
1-5-5.溶剤(D)
本発明の熱硬化性組成物には、溶剤(D)を用いてもよい。本発明の熱硬化性組成物に任意に添加される溶剤(D)は、ポリエステルアミド酸(A)、環状エーテル化合物の重合体(B)、硬化剤(C)等が溶解できる溶剤が好ましい。当該溶剤(D)の具体例は、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、アセトン、2-ブタノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、ヒドロキシ酢酸メチル、ヒドロキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-オキシプロピオン酸メチル、3-ヒドロキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸メチル、2-オキソブタン酸エチル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジオキサン、トルエン、キシレン、γ-ブチロラクトン、又はN,N-ジメチルアセトアミド、及びシクロヘキサノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、重量平均分子量1,000以下のポリプロピレングリコールである。溶剤は、これらの1つであってもよいし、これらの2つ以上の混合物であってもよい。
【0078】
溶剤(D)の含有量は、熱硬化性組成物全量に対して、65~95重量%であることが好ましい。より好ましくは70~90重量%である。
【0079】
1-5-6. 界面活性剤
本発明の熱硬化性組成物には、塗布均一性を向上させるために界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤の具体例は、ポリフローNo.45、ポリフローKL-245、ポリフローNo.75、ポリフローNo.90、ポリフローNo.95(以上いずれも商品名;共栄社化学株式会社)、ディスパーベイク(Disperbyk)161、ディスパーベイク162、ディスパーベイク163、ディスパーベイク164、ディスパーベイク166、ディスパーベイク170、ディスパーベイク180、ディスパーベイク181、ディスパーベイク182、BYK300、BYK306、BYK310、BYK320、BYK330、BYK342、BYK346、BYK361N、BYK-UV3500、BYK-UV3570(以上いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン株式会社)、KP-341、KP-358、KP-368、KF-96-50CS、KF-50-100CS(以上いずれも商品名;信越化学工業株式会社)、サーフロンSC-101、サーフロンKH-40、サーフロンS611(以上いずれも商品名;AGCセイミケミカル株式会社)、フタージェント222F、フタージェント208G、フタージェント251、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント601AD、フタージェント602A、フタージェント650A、FTX-218(以上いずれも商品名;株式会社ネオス)、EFTOP EF-351、EFTOP EF-352、EFTOP EF-601、EFTOP EF-801、EFTOP EF-802(以上いずれも商品名;三菱マテリアル株式会社)、メガファックF-171、メガファックF-177、メガファックF-410、メガファックF-430、メガファックF-444、メガファックF-472SF、メガファックF-475、メガファックF-477、メガファックF-552、メガファックF-553、メガファックF-554、メガファックF-555、メガファックF-556、メガファックF-558、メガファックF-559、メガファックR-30、メガファックR-94、メガファックRS-75、メガファックRS-72-K、メガファックRS-76-NS、メガファックDS-21(以上いずれも商品名;DIC株式会社)、TEGO Twin 4000、TEGO Twin 4100、TEGO Flow 370、TEGO Glide 420、TEGO Glide 440、TEGO Glide 450、TEGO Rad 2200N(以上いずれも商品名;エボニックジャパン株式会社)、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルアンモニウムヨージド、フルオロアルキルベタイン、フルオロアルキルスルホン酸塩、ジグリセリンテトラキス(フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル)、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、フルオロアルキルアミノスルホン酸塩、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンオレエート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ソルビタンラウレート、ソルビタンパルミテート、ソルビタンステアレート、ソルビタンオレエート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンオレエート、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、及びアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩である。これらから選ばれる少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0080】
これらの界面活性剤の中でも、BYK306、BYK342、BYK346、KP-341、KP-358、KP-368、サーフロンS611、フタージェント710FL、フタージェント710FM、フタージェント710FS、フタージェント650A、メガファックF-477、メガファックF-556、メガファックRS-72-K、メガファックDS-21、TEGO Twin 4000、フルオロアルキルベンゼンスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルポリオキシエチレンエーテル、フルオロアルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、及びフルオロアルキルアミノスルホン酸塩の中から選ばれる少なくとも1つであると、熱硬化性組成物の塗布均一性が高くなるので好ましい。
【0081】
本発明の熱硬化性組成物における界面活性剤の含有量は、熱硬化性組成物全量に対して0.01~10重量%であることが好ましい。
【0082】
1-5-7. 密着性向上剤
本発明の熱硬化性組成物は、形成される硬化膜と基板との密着性を更に向上させる観点から、密着性向上剤を更に含有してもよい。このような密着性向上剤の例は、シラン系、アルミニウム系又はチタネート系のカップリング剤を用いることができる。具体的には、3-グリシジルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(例えば、サイラエースS510;商品名;JNC株式会社)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(例えば、サイラエースS530;商品名;JNC株式会社)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(例えば、サイラエースS810;商品名;JNC株式会社)等のシラン系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤、及びテトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤である。
【0083】
これらの中でも、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが、密着性を向上させる効果が大きいため好ましい。
【0084】
密着性向上剤の含有量は、熱硬化性組成物全量に対して、0.01重量%以上10重量%以下であることが好ましい。
【0085】
1-5-8. 酸化防止剤
本発明の熱硬化性組成物は、透明性の向上、硬化膜が高温にさらされた場合の黄変を防止する観点から、酸化防止剤を更に含有してよい。
【0086】
本発明の熱硬化性組成物には、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、リン系、イオウ系化合物等の酸化防止剤を添加してもよい。この中でもヒンダードフェノール系が耐光性の観点から好ましい。具体例は、Irganox1010、Irganox1010FF、Irganox1035、Irganox1035FF、Irganox1076、Irganox1076FD、Irganox1076DWJ、Irganox1098、Irganox1135、Irganox1330、Irganox1726、Irganox1425WL、Irganox1520L、Irganox245、Irganox245FF、Irganox245DWJ、Irganox259、Irganox3114、Irganox565、Irganox565DD、Irganox295(いずれも商品名;BASFジャパン株式会社)、ADK STAB AO-20、ADK STAB AO-30、ADK STAB AO-50、ADK STAB AO-60、ADK STAB AO-70、ADK STAB AO-80(いずれも商品名;株式会社ADEKA)である。この中でもIrganox1010、ADK STAB AO-60がより好ましい。
【0087】
酸化防止剤は熱硬化性組成物全量に対して、0.1~5重量部添加して用いられる。
【0088】
1-5-9.分子量調整剤
本発明の熱硬化性組成物は、重合により分子量が高くなることを抑制し、優れた保存安定性を発現するために、分子量調整剤をさらに含有してもよい。分子量調整剤としては、メルカプタン類、キサントゲン類、キノン類、ヒドロキノン類及び2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0089】
分子量調整剤の具体例としては、1,4-ナフトキノン、1,2-ベンゾキノン、1,4-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、アントラキノン、ヒドロキノン、メチルヒドロキノン、t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-ブチルヒドロキノン、2,5-ジ-t-アミルヒドロキノン、1,4-ジヒドロキシナフタレン、3,6-ジヒドロキシベンゾノルボルナン、4-メトキシフェノール、2,2’,6,6’-テトラ-t-ブチル-4,4’-ジヒドロキシビフェニル、3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸ステアリル、2,2’-メチレンビス(6-t-ブチル-4-エチルフェノール)、2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)メシチレン、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]、4-t-ブチルピロカテコール、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸、ジメチルキサントゲンスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4’-ブチリデンビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン、フェノチアジン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン等が挙げられる。
【0090】
分子量調整剤は単独で用いてもよく、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。分子量調整剤の中でも、ナフトキノン系分子量調整剤であると、優れた保存安定性を発現するという点から好ましい。
【0091】
分子量調整剤の中でも、フェノール性水酸基を有する2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノンであると、保存安定性の観点からより好ましい。
【0092】
1-5-10.紫外線吸収剤
本発明の熱硬化性組成物は、形成した透明膜の劣化防止能をさらに向上させる観点から紫外線吸収剤を含んでもよい。
【0093】
紫外線吸収剤の具体例は、TINUVIN P、TINUVIN 120、TINUVIN 144、TINUVIN 213、TINUVIN 234、TINUVIN 326、TINUVIN 571、TINUVIN 765(いずれも商品名;BASFジャパン株式会社)である。
【0094】
紫外線吸収剤は熱硬化性組成物全量に対して、0.01~10重量部添加して用いられる。
【0095】
1-5-11.凝集防止剤
本発明の熱硬化性組成物は、重合性二重結合を有するポリエステルアミド酸(A)やエポキシ化合物(B)を溶剤となじませ、凝集を防止させる観点から凝集防止剤を含んでもよい。
【0096】
凝集防止剤の具体例は、ディスパーベイク(Disperbyk)-145、ディスパーベイク-161、ディスパーベイク-162、ディスパーベイク-163、ディスパーベイク-164、ディスパーベイク-182、ディスパーベイク-184、ディスパーベイク-185、ディスパーベイク-2163、ディスパーベイク-2164、BYK-220S、ディスパーベイク-191、ディスパーベイク-199、ディスパーベイク-2015(いずれも商品名;ビックケミー・ジャパン株式会社)、FTX-218、フタージェント710FM、フタージェント710FS(いずれも商品名;株式会社ネオス)、フローレンG-600、フローレンG-700(いずれも商品名;共栄社化学株式会社)である。
【0097】
凝集防止剤は熱硬化性組成物全量に対して、0.01~10重量部添加して用いられる。
【0098】
1-5-12.熱架橋剤
本発明の熱硬化性組成物は、耐熱性、耐薬品性、膜面内均一性、可撓性、柔軟性、弾性をさらに向上させる観点から熱架橋剤を含んでもよい。
【0099】
熱架橋剤の具体例は、ニカラックMW-30HM、ニカラックMW-100LM、ニカラックMX-270、ニカラックMX-280、ニカラックMX-290、ニカラックMW-390、ニカラックMW-750LM(いずれも商品名;株式会社三和ケミカル)である。
【0100】
熱架橋剤は熱硬化性組成物全量に対して、0.1~10重量部添加して用いられる。
【0101】
1-6.熱硬化性組成物の保存
本発明の熱硬化性組成物は、-30℃~25℃の範囲で保存すると、組成物の経時安定性が良好となり好ましい。保存温度が-20℃~10℃であれば、析出物もなくより好ましい。
【0102】
2.熱硬化性組成物から得られる硬化膜
本発明の熱硬化性組成物は、ポリエステルアミド酸(A)、環状エーテル化合物の重合体(B)、硬化剤(C)、溶剤(D)、更に、オキシラニル基を有する化合物(b2)以外のエポキシ化合物、重合性二重結合を有する化合物、界面活性剤、密着性向上剤、酸化防止剤、及びその他の添加剤を必要により選択して添加し、それらを均一に混合溶解することにより得ることができる。
【0103】
上記のようにして調製された、熱硬化性組成物(溶剤がない固形状態の場合には溶剤に溶解させた後)を、基体表面に塗布し、例えば加熱等により溶剤を除去すると、塗膜を形成することができる。基体表面への熱硬化性組成物の塗布は、スピンコート法、ロールコート法、ディッピング法、及びスリットコート法等従来から公知の方法により塗膜を形成することができる。次いでこの塗膜はホットプレート、又はオーブン等で仮焼成される。仮焼成条件は各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常70~150℃で、オーブンなら5~15分間、ホットプレートなら1~5分間である。その後、塗膜を硬化させるために本焼成される。本焼成条件は、各成分の種類及び配合割合によって異なるが、通常180~250℃、好ましくは200~250℃で、オーブンなら30~90分間、ホットプレートなら5~30分間であり、加熱処理することによって硬化膜を得ることができる。
【0104】
このようにして得られた硬化膜は、加熱時において、1)ポリエステルアミド酸のポリアミド酸部分が脱水環化しイミド結合を形成、2)ポリエステルアミド酸のカルボン酸がエポキシ化合物と反応して高分子量化、及び、3)エポキシ化合物が硬化し高分子量化しているため、非常に強靭であり、透明性、耐熱性、耐薬品性、平坦性、密着性に優れている。又、耐光性、耐スパッタ性、耐傷性、塗布性に関しても、同様の理由から、優れることが期待される。したがって、本発明の硬化膜は、カラーフィルタ用の保護膜として用いると効果的であり、このカラーフィルタを用いて、液晶表示素子や固体撮像素子を製造することができる。又、本発明の硬化膜は、カラーフィルタ用の保護膜以外にも、TFTと透明電極間に形成される透明絶縁膜や透明電極と配向膜間に形成される透明絶縁膜として用いると効果的である。更に、本発明の硬化膜は、LED発光体の保護膜として用いても効果的である。
【実施例
【0105】
次に本発明を合成例、実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0106】
合成例、実施例、及び比較例に使用した化合物の略号は、以下の原料を示す。
【0107】
[テトラカルボン酸無水物]
ODPA:3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物
BT-100:1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物
【0108】
[ジアミン]
DDS:3,3’-ジアミノジフェニルスルホン
【0109】
[多価ヒドロキシ化合物]
Bis-A-2EOH:4,4’-イソプロピリデンビス(2-フェノキシエタノール)
70PA:エポキシエステル 70PA(商品名;共栄社化学株式会社)
【0110】
[スチレン-無水マレイン酸共重合体]
SMA1000P(商品名;川原油化株式会社)
【0111】
[環状エーテル化合物]
OXE-30:(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート
OXE-10:(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルアクリレート
GMA:グリシジルメタクリレート
E6:TECHMORE VG3101L(商品名;株式会社プリンテック)
【0112】
[環状エーテル化合物以外のラジカル重合性化合物]
MMA:メチルメタクリレート
NPM:N-フェニルマレイミド
【0113】
[熱重合開始剤]
V-601:ジメチル 2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)
【0114】
[硬化剤(C)]
TMA:トリメリット酸無水物
UC-3000:ARUFON UC-3000(商品名;東亞合成株式会社)
【0115】
S510:サイラエースS510(商品名;JNC株式会社)
AO-60:ADK STAB AO-60(商品名;株式会社ADEKA)
F-556:メガファックF-556(商品名;DIC株式会社)
【0116】
[溶剤]
MMP:3-メトキシプロピオン酸メチル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0117】
先ず、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、モノヒドロキシ化合物、多価ヒドロキシ化合物等の反応生成物であるポリエステルアミド酸溶液を以下に示すように合成した(合成例1~7)。
【0118】
[合成例1]ポリエステルアミド酸(A1)溶液の合成
攪拌機付き四つ口フラスコに、脱水精製した3-メトキシプロピオン酸メチル(以下、「MMP」と略記)、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物(以下、「ODPA」と略記)、1,4-ブタンジオール、ベンジルアルコールを下記の重量で仕込み、乾燥窒素気流下125℃で2時間攪拌した(合成1段階目)。
MMP 49.00g
ODPA 20.36g
1,4-ブタンジオール 3.55g
ベンジルアルコール 2.84g
【0119】
その後、反応液を25℃まで冷却し、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(以下、「DDS」と略記)、MMPを下記の重量で投入し、20~30℃で2時間攪拌した後、125℃で1時間攪拌した(合成2段階目)。
DDS 3.26g
MMP 21.00g

〔Z/Y=3.0、(Y+Z)/X=0.8〕
【0120】
溶液を室温まで冷却し、淡黄色透明なポリエステルアミド酸(A1)の30重量%溶液を得た。溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、得られたポリエステルアミド酸(A1)の重量平均分子量は4,200であった。
【0121】
[合成例2]ポリエステルアミド酸(A2)溶液の合成
攪拌機付き四つ口フラスコに、脱水精製したプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物(BT-100)、SMA1000P(商品名;スチレン・無水マレイン酸共重合体、川原油化株式会社)、1,4-ブタンジオール、ベンジルアルコールの順に下記の重量で仕込み、乾燥窒素気流下125℃で2時間攪拌した(合成1段階目)。
PGMEA 53.49g
BT-100 3.83g
SMA1000P 18.23g
1,4-ブタンジオール 1.16g
ベンジルアルコール 5.57g
【0122】
その後、反応液を25℃まで冷却し、DDS、PGMEAを下記の重量で投入し、20~30℃で2時間攪拌した後、125℃で1時間攪拌した(合成2段階目)。
DDS 1.20g
PGMEA 16.51g

〔Z/Y=2.7、(Y+Z)/X=0.9〕
【0123】
溶液を室温まで冷却し、淡黄色透明なポリエステルアミド酸(A2)の30重量%溶液を得た。溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、得られたポリエステルアミド酸(A2)の重量平均分子量は10,000であった。
【0124】
[合成例3~7]ポリエステルアミド酸(A3)~(A7)溶液の合成
合成例1及び2の方法に準じて、表1-1に記載の温度、時間、及び割合(単位:g)で各成分を反応させ、ポリエステルアミド酸(A3)~(A7)溶液を得た。
【0125】
【表1】
【0126】
次に、環状エーテル化合物の重合体(B)の溶液を以下に示すように合成した(合成例8)。
【0127】
[合成例8]環状エーテル化合物の重合体(B1)溶液の合成
攪拌器付四つ口フラスコに、重合溶剤として脱水精製したPGMEA、オキセタニル基を有する化合物(b1)としてOXE-30を下記の重量で仕込み、さらに重合開始剤としてV-601を下記の重量で仕込み、乾燥窒素気流下110℃で2時間攪拌した。
PGMEA 31.50g
OXE-30 13.50g
V-601 1.35g
【0128】
溶液を室温まで冷却し、環状エーテル化合物の重合体(B1)の30重量%溶液を得た。溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、得られた環状エーテル化合物の重合体(B1)の重量平均分子量は7,200であった。
【0129】
[合成例9]環状エーテル化合物の重合体(B2)溶液の合成
攪拌器付四つ口フラスコに、重合溶剤として脱水精製したPGMEA、オキセタニル基を有する化合物(b1)としてOXE-30、オキシラニル基を有する化合物(b2)としてGMAを下記の重量で仕込み、さらに重合開始剤としてV-601を下記の重量で仕込み、乾燥窒素気流下110℃で2時間攪拌した。
PGMEA 31.500g
OXE-30 10.125g
GMA 3.375g
V-601 1.350g
【0130】
溶液を室温まで冷却し、環状エーテル化合物の重合体(B2)の30重量%溶液を得た。溶液の一部をサンプリングし、GPC分析(ポリスチレン標準)により重量平均分子量を測定した。その結果、得られた環状エーテル化合物の重合体(B2)の重量平均分子量は7,300であった。
【0131】
[合成例10~13]環状エーテル化合物の重合体(B3)~(B6)溶液の合成
合成例8、及び9の方法に準じて、表1-2に記載の温度、時間、及び割合(単位:g)で各成分を反応させ、環状エーテル化合物の重合体(B3)~(B6)溶液を得た。
【0132】
【表2】
【0133】
[比較合成例1~5](B)以外の環状エーテル化合物(E1)~(E5)溶液の合成
合成例8、及び9の方法に準じて、表1-3に記載の温度、時間、及び割合(単位:g)で各成分を反応させ、(B)以外の環状エーテル化合物(E1)~(E5)溶液を得た。
【0134】
【表3】
【0135】
[実施例1]
撹拌羽根の付いた500mlのセパラブルフラスコを窒素置換し、そのフラスコに、ポリエステルアミド酸(A)として合成例1で得られたポリエステルアミド酸(A1)溶液を100.0g、環状エーテル化合物の重合体(B1)を100.0g、硬化剤としてTMAを6.0g、密着性向上剤としてS510を3.3g、酸化防止剤としてAO-60を0.3g、溶剤(D)として脱水精製したMMPを41.7g、及びPGMEAを97.6g仕込み、室温で3時間撹拌し、均一に溶解させた。
【0136】
次いで、界面活性剤としてメガファックF-556(商品名;DIC株式会社)0.2gを投入し、室温で1時間撹拌し、メンブランフィルター(孔径0.2μm)で濾過して熱硬化性組成物を調製した。
【0137】
[バリア性の評価方法]
紫外可視近赤外分光光度計(商品名;V-670、日本分光株式会社)で測定した際に、560nm付近に吸収を持つR、G、Bを含む画素を有する硬化膜無しカラーフィルタの基板上に、熱硬化性組成物を300rpmで10秒間スピンコートし、90℃のホットプレート上で2分間プリベークした。続いてオーブン中230℃で30分間ポストベークし、保護膜の平均膜厚が2.0μmである硬化膜付きカラーフィルタ基板を得た。
【0138】
次に、10cm四方に切り出した硬化膜付きカラーフィルタ基板上に1-メチル-2-ピロリドンを0.5mL滴下し、9cm四方に切り出したガラス(以下、カバーガラスという)を硬化膜付きカラーフィルタ基板上に静置し、ホットプレートを用いて180℃で5分間加熱した。加熱終了後、カバーガラスを取り除き、カバーガラス及び硬化膜付きカラーフィルタ基板を5mLの1-メチル-2-ピロリドンで洗浄し、洗浄液を10mLのメスフラスコに移した。洗浄液の入ったメスフラスコに1-メチル-2-ピロリドンを加えて10mLまでメスアップし、混合した溶液を硬化膜付きカラーフィルタ基板の溶出液とした。その後、前記の紫外可視近赤外分光光度計にて、1-メチル-2-ピロリドンを参照サンプルとし、溶出液の透過率を測定した。測定した結果から、560nmの透過率が90%以上の場合を○、90%未満の場合を×とした。
【0139】
[平坦性の評価方法]
予め微細形状測定装置(商品名;P-17、KLA TENCOR株式会社)を用いて表面段差を測定したR、G、Bを含む画素を有する硬化膜無しカラーフィルタ基板上に、熱硬化性組成物を300rpmで10秒間スピンコートし、90℃のホットプレート上で2分間プリベークした。続いてオーブン中230℃で30分間ポストベークし、保護膜の平均膜厚が2.0μmである硬化膜付きカラーフィルタ基板を得た。その後、得られた硬化膜付きカラーフィルタ基板に対して、表面段差を測定した。
【0140】
硬化膜無しカラーフィルタ基板及び硬化膜付きカラーフィルタ基板の表面段差の最大値(以下、「最大段差」と略記)から、下記計算式を用いて平坦化率を算出した。平坦化率が75%以上の場合を平坦性○、75%未満の場合を平坦性×と評価した。尚、硬化膜無しカラーフィルタ基板は、最大段差が1.5μmのものを用いた。

平坦化率=[(硬化膜無しカラーフィルタ基板の最大段差-硬化膜付きカラーフィルタ基板の最大段差)/(硬化膜無しカラーフィルタ基板の最大段差)]×100%
【0141】
[耐熱性の評価方法]
次に、ガラス基板上に熱硬化性組成物を800rpmで10秒間スピンコートし、90℃のホットプレート上で2分間プリベークした。続いて、オーブン中230℃で30分間ポストベークし、保護膜の膜厚が1.0μmである硬化膜付きガラス基板を得た。得られた硬化膜付きガラス基板を230℃で1時間再加熱した後、加熱前の膜厚及び加熱後の膜厚を測定し、下記計算式により残膜率を算出した。膜厚の測定には、前記の微細形状測定装置(商品名;P-17、KLA TENCOR株式会社)を用いた。加熱後の残膜率が95%以上の場合を○、加熱後の残膜率が95%未満の場合を×とした。
【0142】
[実施例2~13]
実施例1の方法に準じて、表2-1~表2-2に記載の割合(単位:g)で各成分を混合溶解し、熱硬化性組成物を得た。
【0143】
【表4】
【0144】
【表5】
【0145】
[比較例1~6]
実施例1の方法に準じて、表3の割合(単位:g)で各成分を混合溶解し、熱硬化性組成物を得た。
【0146】
【表6】
【0147】
表2-1~表2-2に示した結果から明らかなように、実施例1~13の環状エーテル化合物の重合体(B)を使用した硬化膜は、バリア性に優れており、平坦性及び耐熱性においてバランスが取れていることが分かる。
【0148】
表3の比較例1~6の(B)以外の環状エーテル化合物(E)のみを使用した硬化膜は、耐熱性には優れていることが分かる。一方、比較例1に関してはバリア性に関しても良好ではあったが、平坦性が悪い結果となった。比較例2~3に関しては、バリア性に加え、平坦性についても悪い結果となった。比較例4~6については平坦性が良好であったが、バリア性については良好な結果は得られなかった。
【0149】
以上のように、環状エーテル化合物の重合体(B)を必須の成分として用いた場合のみ、全ての特性を満足することが出来た。
【産業上の利用可能性】
【0150】
本発明の熱硬化性組成物より得られた硬化膜は、バリア性が高く、平坦性が高い点から、カラーフィルタ、LED発光素子及び受光素子等の各種光学材料等の保護膜、並びに、TFTと透明電極間及び透明電極と配向膜間に形成される絶縁膜として利用できる。