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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】水処理方法及び水処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/52 20060101AFI20220517BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220517BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20220517BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20220517BHJP
   B01D 61/04 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C02F1/52 Z
B01D61/58
B01D65/06
C02F1/44 C
B01D61/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020095303
(22)【出願日】2020-06-01
(65)【公開番号】P2021186760
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2021-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100192773
【弁理士】
【氏名又は名称】土屋 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100178847
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 映美
(72)【発明者】
【氏名】多田 景二郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 宗昭
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131937(JP,A)
【文献】特開2009-248028(JP,A)
【文献】特開2018-083162(JP,A)
【文献】特開2015-134327(JP,A)
【文献】国際公開第2018/030109(WO,A1)
【文献】特開2007-130526(JP,A)
【文献】特開2007-245078(JP,A)
【文献】特開2011-016100(JP,A)
【文献】特開2016-190223(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0000895(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52 - 1/56
1/44
B01D 21/00 - 21/34
61/00 - 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が導入される凝集部と、
前記凝集部に対して異なる凝集剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の凝集剤添加装置と、
前記凝集部の後段に配置された膜ろ過処理部と、
前記膜ろ過処理部に設置された被処理水を膜ろ過処理するためのろ過膜と、
前記ろ過膜に異なるろ過膜洗浄剤を添加可能とするために予め前記膜ろ過処理部に設置されている2つ以上のろ過膜洗浄剤添加装置と、を備え、
前記凝集剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされていて、
前記ろ過膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている水処理装置を用いた水処理方法であって、
前記被処理水の水質が変動した場合に、予備用とされた前記凝集剤添加装置から、前記被処理水の水質に対応した新たな凝集剤を前記凝集部に添加する、凝集剤の添加を中止する、凝集剤の添加量を変更する、または凝集剤の種類を変更することを開始し、予備用とされた前記ろ過膜洗浄剤添加装置から、前記被処理水の水質に対応した新たなろ過膜洗浄剤を前記ろ過膜に添加する、ろ過膜洗浄剤の添加を中止する、ろ過膜洗浄剤の添加量を変更する、またはろ過膜洗浄剤の種類を変更することを開始する、水処理方法。
【請求項2】
前記水処理装置は、前記膜ろ過処理部の後段に逆浸透膜処理部を有し、
前記逆浸透膜処理部は、被処理水を逆浸透膜処理するための逆浸透膜と、
前記被処理水に対して異なる水質調整剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の水質調整剤添加装置と、を備え、
前記水質調整剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされていて、
前記被処理水の水質が変動した場合に、予備用とされた前記水質調整剤添加装置から、前記被処理水の水質に対応した新たな水質調整剤を前記被処理水に添加する、水質調整剤の添加を中止する、水質調整剤の添加量を変更する、または水質調整剤の種類を変更することを開始する、請求項に記載の水処理方法。
【請求項3】
前記水処理装置は、前記膜ろ過処理部の後段に逆浸透膜処理部を有し、
前記逆浸透膜処理部は、被処理水を逆浸透膜処理するための逆浸透膜と、
前記逆浸透膜に異なる逆浸透膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2以上の逆浸透膜洗浄剤添加装置と、を備え、
前記逆浸透膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされていて、
前記被処理水の水質が変動した場合に、予備用とされた前記逆浸透膜洗浄剤添加装置から、前記被処理水の水質に対応した新たな逆浸透膜洗浄剤を前記逆浸透膜に添加する、逆浸透膜洗浄剤の添加を中止する、浸透膜洗浄剤の添加量を変更する、または逆浸透膜洗浄剤の種類を変更することを開始する、請求項に記載の水処理方法。
【請求項4】
被処理水が導入される凝集部と、
前記凝集部に対して異なる凝集剤を添加可能とするために設置された2つ以上の凝集剤添加装置と、
前記被処理水の水質を測定する1つまたは2つ以上の水質測定装置と、
前記凝集部の後段に配置された膜ろ過処理部と、
前記膜ろ過処理部に設置された被処理水を膜ろ過処理するためのろ過膜と、
前記ろ過膜に異なるろ過膜洗浄剤を添加可能とするために予め前記膜ろ過処理部に設置されている2つ以上のろ過膜洗浄剤添加装置と
前記水質測定装置の測定結果に基づいて、対応する前記凝集剤添加装置に対して前記凝集剤の添加の要否および前記凝集剤の添加量の指令を発する制御部と、
前記水質測定装置の測定結果に基づいて、対応する前記ろ過膜洗浄剤添加装置に対して前記ろ過膜洗浄剤の添加の要否および前記ろ過膜洗浄剤の添加量の指令を発する制御部と、を備え、
前記凝集剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされ
前記ろ過膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている、水処理装置。
【請求項5】
前記凝集部は、2つ以上の前記水質測定装置のそれぞれに対応した2つ以上の凝集槽からなり、2つ以上の前記凝集槽は直列に接続されている、請求項に記載の水処理装置。
【請求項6】
前記膜ろ過処理部の後段に、前記膜ろ過処理部で前記被処理水を膜ろ過処理して得られた膜ろ過処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜処理部を備える、請求項または請求項に記載の水処理装置。
【請求項7】
前記逆浸透膜処理部が、前記膜ろ過処理水を逆浸透膜処理するための逆浸透膜と、
前記膜ろ過処理水に対して異なる水質調整剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の水質調整剤添加装置と、
前記膜ろ過処理水の水質を測定する1つまたは2つ以上の第二水質測定装置と、
前記第二水質測定装置の測定結果に基づいて、対応する前記水質調整剤添加装置に対して前記水質調整剤の添加の要否および前記水質調整剤の添加量の指令を発する制御部と、を備え、
前記水質調整剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている、請求項に記載の水処理装置。
【請求項8】
前記逆浸透膜処理部が、前記膜ろ過処理水を逆浸透膜処理するための逆浸透膜と、
前記逆浸透膜に異なる逆浸透膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2以上の逆浸透膜洗浄剤添加装置と、
前記膜ろ過処理水の水質を測定する1つまたは2つ以上の第二水質測定装置と、
前記第二水質測定装置の測定結果に基づいて、対応する前記逆浸透膜洗浄剤添加装置に対して前記逆浸透膜洗浄剤の添加の要否および前記逆浸透膜洗浄剤の添加量の指令を発する制御部と、を備え、
前記逆浸透膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている、請求項に記載の水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理方法及び水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ろ過膜を用いた膜ろ過処理は、被処理水中の無機物(濁質物質)や有機物を分離除去するための手段として広く利用されている。さらに膜ろ過処理後の膜ろ過処理水に対して、逆浸透膜を用いた逆浸透膜処理によって脱塩することは、純水製造分野や排水回収分野で行なわれている。
【0003】
ろ過膜としては、精密ろ過膜(MF膜)や限界ろ過膜(UF膜)が使用されている。MF膜としては孔径が1μm前後のものが一般に使用され、UF膜としては孔径が0.005~0.5μmのものが一般に使用されている。これらのろ過膜を用いた膜ろ過処理では、被処理水に無機物や有機物が大量に含まれていると、ろ過膜が目詰まりを起こしやすくなるという問題がある。また、膜ろ過処理後の膜ろ過処理水に無機物や有機物が混入し、脱塩処理時にスケールの析出やバイオファウリングによって、逆浸透膜(RO膜)が汚染されやすくなるなどの問題が生じるおそれがある。このような問題を回避するため、被処理水を膜ろ過処理する前に、被処理水に凝集剤を添加して、被処理水に含まれている無機物や有機物を凝集させて粗大な粒子とした後、膜ろ過処理により分離除去することが行なわれている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5407994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
凝集剤による無機物や有機物の凝集効果は、被処理水に含まれている無機物や有機物の種類や濃度など様々な要因によって異なる。このため、凝集剤の種類や添加量は、事前に被処理水を用いた机上試験を行なって決定するのが一般的である。しかしながら、机上試験によって決定された凝集剤の種類や添加量に基づいて設計された従来の水処理装置は、例えば、被処理水に含まれている無機物や有機物の種類や濃度が変わったり、被処理水の水量が増減したりするなどにより被処理水の水質が変動して、無機物や有機物の凝集のしやすさが変化すると対応しにくく、拡張性が乏しいという問題があった。
【0006】
また、膜ろ過処理では、ろ過膜によって分離除去された粗大な粒子によるろ過効率の低下を回避するために、洗浄剤を用いてろ過膜を洗浄することが行なわれている。ろ過膜によって分離除去される粗大な粒子は、被処理水に含まれている無機物や有機物の種類や量など様々な要因によって異なる。このため、ろ過膜洗浄剤の種類や添加量は、事前に被処理水を用いた机上試験を行なって決定するのが一般的である。しかしながら、机上試験によって決定されたろ過膜洗浄剤の種類や添加量に基づいて設計された従来の膜ろ過処理部を有する水処理装置は、例えば、被処理水の水質が変動して、無機物や有機物の凝集によって生成する粗大な粒子の種類や生成量が変化すると、その変化に対応しにくく、拡張性が乏しいという問題があった。
【0007】
さらに、逆浸透膜処理では、逆浸透膜の表面に付着した付着物による脱塩効率の低下を回避するために、被処理水に水質調整剤を添加して付着物の発生を抑えたり、洗浄剤を用いて逆浸透膜を洗浄したりすることが行なわれている。逆浸透膜に付着する付着物は、被処理水に含まれている無機物や有機物の種類や濃度など様々な要因によって異なる。このため、水質調整剤や逆浸透膜洗浄剤の種類や添加量は、事前に被処理水を用いた机上試験を行なって決定するのが一般的である。しかしながら、机上試験によって決定された水質調整剤や逆浸透膜洗浄剤の種類や添加量に基づいて設計された従来の逆浸透膜処理部を有する水処理装置は、例えば、被処理水の水質が変動して、付着物の発生しやすさや付着物の種類や付着量が変化すると、その変化に対応しにくく、拡張性が乏しいという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、被処理水の水質が変動した場合でも安定して、被処理水を処理することができ、拡張性が高い水処理方法及び水処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1]被処理水が導入される凝集部と、
前記凝集部に対して異なる凝集剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の凝集剤添加装置と、
前記凝集部の後段に配置された膜ろ過処理部と、
前記膜ろ過処理部に設置された被処理水を膜ろ過処理するためのろ過膜と、
前記ろ過膜に異なるろ過膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上のろ過膜洗浄剤添加装置と、を備え、
前記凝集剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされていて、
前記ろ過膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている水処理装置を用いた水処理方法であって、
前記被処理水の水質が変動した場合に、予備用とされた前記凝集剤添加装置から、前記被処理水の水質に対応した新たな凝集剤を前記凝集部に添加する、凝集剤の添加を中止する、凝集剤の添加量を変更する、または凝集剤の種類を変更することを開始し、予備用とされた前記ろ過膜洗浄剤添加装置から、前記被処理水の水質に対応した新たなろ過膜洗浄剤を前記ろ過膜に添加する、ろ過膜洗浄剤の添加を中止する、ろ過膜洗浄剤の添加量を変更する、またはろ過膜洗浄剤の種類を変更することを開始する、水処理方法。
【0011】
]前記水処理装置は、前記膜ろ過処理部の後段に逆浸透膜処理部を有し、
前記逆浸透膜処理部は、被処理水を逆浸透膜処理するための逆浸透膜と、
前記被処理水に対して異なる水質調整剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の水質調整剤添加装置と、を備え、
前記水質調整剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされていて、
前記被処理水の水質が変動した場合に、予備用とされた前記水質調整剤添加装置から、前記被処理水の水質に対応した新たな水質調整剤を前記被処理水に添加する、水質調整剤の添加を中止する、水質調整剤の添加量を変更する、または水質調整剤の種類を変更することを開始する、[]に記載の水処理方法。
【0012】
]前記水処理装置は、前記膜ろ過処理部の後段に逆浸透膜処理部を有し、
前記逆浸透膜処理部は、被処理水を逆浸透膜処理するための逆浸透膜と、
前記逆浸透膜に異なる逆浸透膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2以上の逆浸透膜洗浄剤添加装置と、を備え、
前記逆浸透膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされていて、
前記被処理水の水質が変動した場合に、予備用とされた前記逆浸透膜洗浄剤添加装置から、前記被処理水の水質に対応した新たな逆浸透膜洗浄剤を前記逆浸透膜に添加する、逆浸透膜洗浄剤の添加を中止する、浸透膜洗浄剤の添加量を変更する、または逆浸透膜洗浄剤の種類を変更することを開始する、[]に記載の水処理方法。
【0013】
]被処理水が導入される凝集部と、
前記凝集部に対して異なる凝集剤を添加可能とするために設置された2つ以上の凝集剤添加装置と、
前記被処理水の水質を測定する1つまたは2つ以上の水質測定装置と、
前記凝集部の後段に配置された膜ろ過処理部と、
前記膜ろ過処理部に設置された被処理水を膜ろ過処理するためのろ過膜と、
前記ろ過膜に異なるろ過膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上のろ過膜洗浄剤添加装置と
前記水質測定装置の測定結果に基づいて、対応する前記凝集剤添加装置に対して前記凝集剤の添加の要否および前記凝集剤の添加量の指令を発する制御部と、
前記水質測定装置の測定結果に基づいて、対応する前記ろ過膜洗浄剤添加装置に対して前記ろ過膜洗浄剤の添加の要否および前記ろ過膜洗浄剤の添加量の指令を発する制御部と、を備え、
前記凝集剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされ
前記ろ過膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている、水処理装置。
【0014】
]前記凝集部は、2つ以上の前記水質測定装置のそれぞれに対応した2つ以上の凝集槽からなり、2つ以上の前記凝集槽は直列に接続されている、[]に記載の水処理装置。
【0015】
]前記膜ろ過処理部の後段に、前記膜ろ過処理部で前記被処理水を膜ろ過処理して得られた膜ろ過処理水を逆浸透膜処理する逆浸透膜処理部を備える、[]または[]に記載の水処理装置。
【0017】
]前記逆浸透膜処理部が、前記膜ろ過処理水を逆浸透膜処理するための逆浸透膜と、
前記膜ろ過処理水に対して異なる水質調整剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の水質調整剤添加装置と、
前記膜ろ過処理水の水質を測定する1つまたは2つ以上の第二水質測定装置と、
前記第二水質測定装置の測定結果に基づいて、対応する前記水質調整剤添加装置に対して前記水質調整剤の添加の要否および前記水質調整剤の添加量の指令を発する制御部と、を備え、
前記水質調整剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている、[]に記載の水処理装置。
【0018】
]前記逆浸透膜処理部が、前記膜ろ過処理水を逆浸透膜処理するための逆浸透膜と、
前記逆浸透膜に異なる逆浸透膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2以上の逆浸透膜洗浄剤添加装置と、
前記膜ろ過処理水の水質を測定する1つまたは2つ以上の第二水質測定装置と、
前記第二水質測定装置の測定結果に基づいて、対応する前記逆浸透膜洗浄剤添加装置に対して前記逆浸透膜洗浄剤の添加の要否および前記逆浸透膜洗浄剤の添加量の指令を発する制御部と、を備え、
前記逆浸透膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている、[]に記載の水処理装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明の水処理方法において用いる水処理装置は、凝集部に対して異なる凝集剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の凝集剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている。このため、本発明の水処理方法によれば、被処理水の水質が変動して、被処理水中の無機物や有機物の凝集のしやすさが変化した場合には、予備用とされた凝集剤添加装置から、被処理水の水質に対応した新たな凝集剤を凝集部に添加する、凝集剤の添加を中止する、凝集剤の添加量を変更する、または凝集剤の種類を変更するなどの対応をとることができる。そして、これらの対応をとることによって、被処理水の水質が変動した場合でも、被処理水中の無機物や有機物をより確実に凝集させて粗大な粒子とすることが可能となる。従って、本発明の水処理方法は拡張性が高い。
【0020】
また、本発明の水処理方法によれば、水処理装置が凝集部の後段に膜ろ過処理部を有し、ろ過膜に異なるろ過膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上のろ過膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている場合は、被処理水の水質が変動したときに、予備用とされたろ過膜洗浄剤添加装置から、被処理水の水質に対応した新たなろ過膜洗浄剤をろ過膜に添加する、ろ過膜洗浄剤の添加を中止する、ろ過膜洗浄剤の添加量を変更する、またはろ過膜洗浄剤の種類を変更するなどの対応をとることができる。そして、これらの対応をとることによって、被処理水の水質の変動により、無機物や有機物の凝集によって生成する粗大な粒子の種類や生成量が変化した場合でも、ろ過膜で分離除去された粗大な粒子をより確実に除去することが可能となる。従って、水処理方法の拡張性がより高くなる。
【0021】
さらに、本発明の水処理方法によれば、水処理装置が膜ろ過処理部の後段に逆浸透膜処理部を有し、被処理水に対して異なる水質調整剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の水質調整剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている場合は、被処理水の水質が変動したときに、予備用とされた水質調整剤添加装置から、被処理水の水質に対応した新たな水質調整剤を逆浸透膜に添加する、水質調整剤の添加を中止する、水質調整剤の添加量を変更する、または水質調整剤の種類を変更するなどの対応をとることができる。そして、これらの対応をとることによって、被処理水の水質の変動により、逆浸透膜への付着物の発生しやすさが変化した場合でも、逆浸透膜への付着物の発生をより確実に抑えることが可能となる。従って、水処理方法の拡張性がより高くなる。
【0022】
またさらに、本発明の水処理方法によれば、水処理装置が膜ろ過処理部の後段に逆浸透膜処理部を有し、逆浸透膜に異なる逆浸透膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2以上の逆浸透膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされている場合は、被処理水の水質が変動したときに、予備用とされた逆浸透膜洗浄剤添加装置から、被処理水の水質に対応した新たな逆浸透膜洗浄剤を逆浸透膜に添加する、逆浸透膜洗浄剤の添加を中止する、逆浸透膜洗浄剤の添加量を変更する、または逆浸透膜洗浄剤の種類を変更するなどの対応をとることができる。そして、これらの対応をとることによって、被処理水の水質の変動により、逆浸透膜に付着した付着物の種類や量が変化した場合でも、逆浸透膜に付着した付着物をより確実に除去することが可能となる。従って、本発明の水処理装置は拡張性がより高くなる。
【0023】
本発明の水処理装置によれば、凝集部に対して異なる凝集剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の凝集剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、被処理水の水質が変動して、被処理水中の無機物や有機物の凝集のしやすさが変化した場合には、予備用とされた凝集剤添加装置から、被処理水の水質に対応した新たな凝集剤を凝集部に添加する、凝集剤の添加を中止する、凝集剤の添加量を変更する、または凝集剤の種類を変更するなどの対応をとることができる。また、本発明の水処理装置によれば、水質測定装置の測定結果に基づいて、凝集剤の添加の要否および凝集剤の添加量を制御することができるので、被処理水の水質の変動に応じて迅速に対応することが可能となる。
【0024】
また、本発明の水処理装置によれば、凝集部を、2つ以上の凝集剤添加装置のそれぞれに対応した2つ以上の凝集槽からなる構成とし、その2つ以上の凝集槽を直列に接続することにより、異なる凝集剤を段階的に添加することができる。これによって、異なる凝集剤が互いに干渉し合って凝集効果を損なうことを抑制することができ、凝集剤の添加効果をより確実に発揮させることが可能となる。従って、被処理水に含まれている無機物や有機物をより確実に凝集させて粗大な粒子とすることが可能となる。
【0025】
さらに、本発明の水処理装置によれば、凝集部の後段に膜ろ過処理部と逆浸透膜処理部とを備えることにより、膜ろ過処理部にて被処理水に含まれている粗大な粒子を分離除去し、逆浸透膜処理部にて被処理水を脱塩することができるので、被処理水を高純度な処理水とすることが可能となる。
【0026】
さらに、本発明の水処理装置によれば、膜ろ過処理部に備えられている、ろ過膜に異なるろ過膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上のろ過膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、被処理水の水質が変動して、無機物や有機物の凝集によって生成する粗大な粒子の種類や生成量が変化した場合には、予備用とされたろ過膜洗浄剤添加装置から、被処理水の水質に対応した新たなろ過膜洗浄剤をろ過膜に添加する、ろ過膜洗浄剤の添加を中止する、ろ過膜洗浄剤の添加量を変更する、またはろ過膜洗浄剤の種類を変更するなどの対応をとることができる。また、本発明の水処理装置によれば、水質測定装置の測定結果に基づいて、ろ過膜洗浄剤の添加の要否およびろ過膜洗浄剤の添加量を制御することができるので、被処理水の水質の変動に応じて迅速に対応することが可能となる。従って、水処理装置の拡張性がより高くなる。
【0027】
さらに、本発明の水処理装置によれば、逆浸透膜処理部に備えられている、被処理水に対して異なる水質調整剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の水質調整剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、被処理水の水質が変動して、逆浸透膜への付着物の発生しやすさが変化した場合には、予備用とされた水質調整剤添加装置から、被処理水の水質に対応した新たな水質調整剤を逆浸透膜に添加する、水質調整剤の添加を中止する、水質調整剤の添加量を変更する、または水質調整剤の種類を変更するなどの対応をとることができる。また、本発明の水処理装置によれば、水質測定装置の測定結果に基づいて、水質調整剤の添加の要否および水質調整剤の添加量を制御することができるので、被処理水の水質の変動に応じて迅速に対応することが可能となる。従って、水処理装置の拡張性がより高くなる。
【0028】
さらに、本発明の水処理装置によれば、逆浸透膜処理部に備えられている、逆浸透膜に異なる逆浸透膜洗浄剤を添加可能とするために予め設置されている2以上の逆浸透膜洗浄剤添加装置のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、被処理水の水質が変動して、逆浸透膜に付着した付着物の種類や量が変化した場合には、予備用とされた逆浸透膜洗浄剤添加装置から、被処理水の水質に対応した新たな逆浸透膜洗浄剤を逆浸透膜に添加する、逆浸透膜洗浄剤の添加を中止する、逆浸透膜洗浄剤の添加量を変更する、または逆浸透膜洗浄剤の種類を変更するなどの対応をとることができる。また、本発明の水処理装置によれば、水質測定装置の測定結果に基づいて、逆浸透膜洗浄剤の添加の要否および逆浸透膜洗浄剤の添加量を制御することができるので、被処理水の水質の変動に応じて迅速に対応することが可能となる。従って、水処理装置の拡張性がより高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、本発明の実施形態である水処理装置と、これを用いた水処理方法の一例を説明する模式図。
図2図2は、本発明の実施形態である水処理装置と、これを用いた水処理方法の別の一例を説明する模式図。
図3図3は、本発明の実施形態である水処理装置と、これを用いた水処理方法のさらに別の一例を説明する模式図。
図4図4は、本発明の実施形態である水処理装置の凝集部の別の一例を示す部分模式図。
図5図5は、本発明の実施形態である水処理装置の凝集部のさらに別の一例を示す部分模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態の水処理装置及び水処理方法について説明する。
図1は、本発明の実施形態である水処理装置と、これを用いた水処理方法の一例を説明する模式図である。なお、図1に示す水処理装置1は、処理対象の被処理水W1が、無機物を含み(炭酸塩濃度が炭酸量として25mg/L以下)、有機物をほとんど含まない(分子量1万以上の有機物濃度が炭素量として300μm/L以下)場合を想定した構成とされている。ただし、処理対象の被処理水の水質はこれに限定されるものではない。水処理装置1の構成は、処理対象の被処理水の水質に応じて変更することができる。
図1に示すように、本実施形態の水処理装置1は、第一水質測定装置10と、第一制御部11と、第一滞留槽20と、凝集部30と、凝集剤添加装置31と、第二滞留槽40と、膜ろ過処理部50と、第三滞留槽60と、逆浸透膜処理部70と、を備える。
【0031】
第一水質測定装置10は、被処理水W1の水質を測定するための装置である。測定する被処理水W1の水質は、例えば、濁度、電気伝導率、pH、無機物(無機炭酸)濃度、有機物濃度などである。濁度は濁度計を、電気伝導率は電気伝導度計を、pHはpH計を用いて測定することができる。無機物(無機炭酸)濃度は、非分散型赤外線吸収法(NDIR法)もしくはガス透過膜伝導率測定法を用いて測定することができる。有機物濃度は、TOC計もしくは吸光光度計を用いて測定することができる。有機物の中で特にバイオファウリングの要因となる中性多糖類(分子量1万以上の有機物)の濃度は、有機炭素検出型サイズ排除クロマトグラフ法(LC-OCD法)を用いて測定することができる。なお、第一水質測定装置10は、被処理水W1の水質が変動した場合には、被処理水W1の変化に対応した別の水質測定装置を新たに設置するようにしてもよい。第一水質測定装置10は、第一制御部11に接続されている。
【0032】
第一制御部11は、第一水質測定装置10の測定結果に基づいて、凝集剤添加装置31からの凝集剤の添加の要否及び凝集剤の添加量の指令を発する。また、第一制御部11は、膜ろ過処理部50で用いるろ過膜洗浄剤の添加の要否及びろ過膜洗浄剤の添加量の指令を発する。
【0033】
第一滞留槽20は、被処理水W1を一時的に滞留させるための槽である。第一滞留槽20は、酸化剤添加装置21を備える。酸化剤添加装置21は、酸化剤を第一滞留槽20に添加するための装置である。酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウムを用いることができる。次亜塩素酸ナトリウムを用いることによって、バイオファウリングの要因となる有機物を酸化分解することができる。酸化剤は、ポンプ22を介して第一滞留槽20に添加される。
【0034】
凝集部30は、ポンプ23を介して、第一滞留槽20の後段に備えられている。凝集部30は、被処理水W1と凝集剤とを混合することによって、被処理水W1に含まれている無機物や有機物を凝集させて粗大な粒子を生成させる。凝集部30は、第一凝集槽30a、第二凝集槽30bおよび第三凝集槽30cの3つの凝集槽を含む。3つの凝集槽は直列に接続されていて、第一凝集槽30aに第二凝集槽30bが接続され、第二凝集槽30bはさらに第三凝集槽30cが接続されている。
【0035】
凝集剤添加装置31は、第一凝集剤添加装置31a、第二凝集剤添加装置31bおよび第三凝集槽31cの3つの装置を含む。第一凝集剤添加装置31a、第二凝集剤添加装置31bおよび第三凝集剤添加装置31cは、凝集部30に対して異なる凝集剤を添加可能とするために、凝集部30に対して予め設置されている。すなわち、第一凝集槽30aには第一凝集剤添加装置31aが、第二凝集槽30bには第二凝集剤添加装置31bが、第三凝集槽30cには第三凝集剤添加装置31cがそれぞれ予め設置されている。
【0036】
第一凝集剤添加装置31aは、第一制御部11と接続しており、第一制御部11から発せられた指令に従って、ポンプ32aを介して、第一凝集槽30aに第一凝集剤を添加する。第二凝集剤添加装置31bは、第一制御部11と接続しており、第一制御部11から発せられた指令に従って、ポンプ32bを介して、第二凝集槽30bに第二凝集剤を添加する。第三凝集剤添加装置31cは、第一制御部11と接続しており、第一制御部11から発せられた指令に従って、ポンプ32cを介して、第三凝集槽30c第三凝集剤をに添加する。第一凝集槽30a、第二凝集槽30bおよび第三凝集槽30cは、それぞれ撹拌装置(不図示)を備えており、添加された凝集剤と被処理水W1とを撹拌混合できるようにされていることが好ましい。
【0037】
図1に示す水処理装置1では、第二凝集剤添加装置31bを使用する。よって、第二凝集剤添加装置31bは第二凝集剤が充填されている。一方、第一凝集剤添加装置31a及び第三凝集剤添加装置31cは予備用である。このため、第一凝集剤添加装置31a及び第三凝集剤添加装置31cは凝集剤が充填されていない。
【0038】
第二凝集剤としては、例えば、無機凝集剤を用いる。無機凝集剤としては、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド、水酸化アルミニウム又は酸化アルミニウムを塩酸又は硫酸で溶解したものなどのアルミニウム塩、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、硫酸第一鉄などを用いることができる。ただし、第二凝集剤は無機凝集剤に限定されるものではない。第二凝集剤は、被処理水W1に含まれている無機物や有機物を凝集させて、粗大な粒子を生成させることができるものであれば、特に制限はない。
【0039】
第二凝集槽30bは、さらにpH計33とpH調整剤添加装置34を備える。pH調整剤添加装置34は、pH計33で測定された被処理水W1のpHに基づいてpH調整剤を第二凝集槽30bに供給するための装置である。pH調整剤として、例えば、硫酸や塩酸などの酸剤、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムなどのアルカリ剤を用いることができる。pH調整剤は、ポンプ35を介してpH調整剤添加装置34から第二凝集槽30bに添加される。被処理水W1のpHは、第二凝集剤(無機凝集剤)に適したpHに調整される。
【0040】
図1に示す水処理装置1では、上記のとおり、第二凝集剤添加装置31bを使用し、第一凝集剤添加装置31aおよび第三凝集剤添加装置31cを予備用とする。ただし、被処理水W1の変化によって、被処理水W1に含まれる無機物や有機物の凝集のしやすさが変化することがある。この無機物や有機物の凝集のしやすさの変化によって、第二凝集剤のみでは、無機物や有機物を凝集させて、粗大な粒子を生成させることが困難となる場合がある。この場合には、第一凝集剤添加装置31aおよび/または第三凝集剤添加装置31cを使用して、第二凝集剤に変えて、あるいは第二凝集剤に加えて、第一凝集剤および/または第三凝集剤を被処理水W1に添加する。さらに、凝集剤の添加を中止する、凝集剤の添加量を変更する、または凝集剤の種類を変更するなどの対応をとることもできる。
【0041】
第一凝集剤としては、例えば、被処理水W1中の有機物(特に、無機凝集剤との親和性が低い有機物)を凝集させる効果が高い凝集剤を用いることができる。このような凝集剤としては、フェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いることができる。フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、特開2015-157265号公報に記載されているものを用いることができる。フェノール性水酸基を有する高分子化合物は、ノボラック型フェノール樹脂であることが好ましい。第一凝集剤としては、栗田工業株式会社から販売されているクリバーター(登録商標)BP201を用いることができる。また、第一凝集剤としては、特開2017-131871号公報に記載されているメラミン・ホルムアルデヒド樹脂酸コロイド溶液を用いてもよい。
【0042】
第三凝集剤としては、例えば、第一凝集剤もしくは第二凝集剤によって生成した凝集物をさらに肥大化させる作用を有する凝集剤を用いることができる。このような凝集剤としては、カチオン性高分子凝集剤を用いることができる。カチオン性高分子凝集剤は、電荷により凝集物に吸着して、凝集物を肥大化させる作用を有する。カチオン性高分子凝集剤としては、特開2017-131871号公報に記載されているものを用いることができる。第三凝集剤としては、栗田工業株式会社から販売されているゼータエース(登録商標)P702を用いることができる。
【0043】
第二滞留槽40は、第三凝集槽30cの後段に備えられている。第二滞留槽40は、凝集剤が添加された被処理水W1を一時的に貯留して、後段の膜ろ過処理部50に供給するための槽である。
【0044】
膜ろ過処理部50は、第二滞留槽40の後段に備えられている。膜ろ過処理部50は、被処理水W1を膜ろ過処理するためのろ過膜51と、ろ過膜洗浄剤添加装置52と、第一水質測定装置10と、第一制御部11と、を備える。
【0045】
膜ろ過処理部50は、ろ過膜51を用いて、被処理水W1をろ過処理して、被処理水W1に含まれている粗大な粒子を分離除去する。ろ過膜51としては、精密ろ過膜(MF膜)、限界ろ過膜(UF膜)を用いることができる。
【0046】
ろ過膜洗浄剤添加装置52は、第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aと第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bの2つの装置を含む。第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aおよび第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bは、ろ過膜51に異なるろ過膜洗浄剤を添加可能とするために、膜ろ過処理部50を構成する装置として予め設置されている。ろ過膜洗浄剤としては、ろ過膜51を洗浄して、ろ過膜51によって分離除去された粗大な粒子を除去することにより、粗大な粒子によって低下したろ過膜51のろ過性能を回復させる機能を有する薬剤を用いることができる。なお、ろ過膜洗浄剤添加装置52は、2つに限定されるものではない。ろ過膜洗浄剤添加装置52は、1つであってもよいが、2つ以上であることが好ましく、2つ以上5つ以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0047】
第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aは、第一制御部11と接続しており、第一制御部11から発せられた指令に従って、ポンプ53aを介して、ろ過膜51に第一ろ過膜洗浄剤を添加する。第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bは、第一制御部11と接続しており、第一制御部11から発せられた指令に従って、ポンプ53bを介して、ろ過膜51に第二ろ過膜洗浄剤を添加する。
【0048】
図1に示す水処理装置1では、第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bを使用する。よって、第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bには第二ろ過膜洗浄剤が充填されている。一方、第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aは予備用である。このため、第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aは洗浄剤が充填されていない。
【0049】
第二ろ過膜洗浄剤としては、例えば、無機物除去用洗浄剤を用いる。無機物除去用洗浄剤は、無機物の粗大な粒子を除去する能力が高い薬剤である。無機物除去用洗浄剤としては、例えば、塩酸や硫酸、シュウ酸といった酸系の薬品を単独で、または混合によりpHを3.0以下にする酸性薬品や、酸化した無機物を除去しやすくするために還元剤を組み合わせて用いることができる。
【0050】
図1に示す水処理装置1では、上記のとおり、第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bを使用し、第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aを予備用とする。ただし、被処理水W1の変化によって、被処理水W1に含まれる無機物や有機物の凝集によって生成する粗大な粒子の種類や生成量が変化することがある。この粗大な粒子の種類や生成量の変化によって、第二過膜洗浄剤のみでは、粗大な粒子を除去するのが困難となる場合がある。この場合には、第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aを使用して、第二ろ過膜洗浄剤に変えて、あるいは第二ろ過膜洗浄剤に加えて、第一ろ過膜洗浄剤をろ過膜51に添加する。さらに、ろ過膜洗浄剤の添加を中止する、ろ過膜洗浄剤の添加量を変更する、またはろ過膜洗浄剤の種類を変更するなどの対応を取ることもできる。
【0051】
ろ過膜洗浄剤は無機物除去用洗浄剤に限定されるものではない。ろ過膜洗浄剤は、ろ過膜51に付着した付着物の種類や付着量によって適宜選択して使用する。無機物除去用洗浄剤以外の逆浸透膜洗浄剤の例としては、有機物除去用洗浄剤を挙げることができる。有機物除去用洗浄剤は、有機物の粗大な粒子を除去する能力が高い薬剤である。有機物除去用洗浄剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤や水酸化ナトリウム等を使用してpHを12以上にするアルカリ性薬品を単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
第三滞留槽60は、膜ろ過処理部50の後段に備えられている。第三滞留槽60は、膜ろ過処理部50で膜ろ過処理された膜ろ過処理水W2を一時的に貯留して、後段の逆浸透膜処理部70に供給するための槽である。
【0053】
逆浸透膜処理部70は、第三滞留槽60の後段に備えられている。
逆浸透膜処理部70は、膜ろ過処理水W2(逆浸透膜処理部70で処理される被処理水)を逆浸透膜処理するための逆浸透膜71と、水質調整剤添加装置72と、逆浸透膜洗浄剤添加装置74と、第二水質測定装置80と、第二制御部81と、を備える。
【0054】
逆浸透膜処理部70は、逆浸透膜71を用いて、逆浸透膜処理により膜ろ過処理水W2を脱塩する。この逆浸透膜処理によって、高純度処理水W3が生成する。逆浸透膜71としては、特に制限はなく、逆浸透膜処理に用いられる公知の逆浸透膜を用いることができる。
【0055】
第二水質測定装置80は、膜ろ過処理水W2の水質を測定するための装置である。測定する膜ろ過処理水W2の水質は、例えば、濁度、電気伝導率、pH、無機炭酸濃度、有機物濃度などである。水質の測定方法は、第一水質測定装置10と同じである。第二水質測定装置80は、第三滞留槽60に設置されている。
【0056】
第二水質測定装置80は、第二制御部81に接続されている。第二制御部81は、水質調整剤添加装置72および逆浸透膜洗浄剤添加装置74と接続して、水質調整剤および逆浸透膜洗浄剤の添加の要否および添加量の指令を発する。水質調整剤および逆浸透膜洗浄剤の添加量は、例えば、膜ろ過処理水W2を用いた机上試験によって決定することができる。
【0057】
水質調整剤添加装置72は、第一水質調整剤添加装置72a、第二水質調整剤添加装置72bおよび第三水質調整剤添加装置72cの3つの装置を含む。第一水質調整剤添加装置72a、第二水質調整剤添加装置72bおよび第三水質調整剤添加装置72cは、膜ろ過処理水W2に対して異なる水質調整剤を添加可能とするために、逆浸透膜処理部70を構成する装置として予め設置されている。水質調整剤としては、逆浸透膜71の変質を抑制するための薬剤および逆浸透膜71に付着する付着物の発生を抑制するための薬剤などを用いることができる。なお、水質調整剤添加装置72は、3つに限定されるものではない。水質調整剤添加装置72は、1つであってもよいが、2つ以上であることが好ましく、2つ以上5つ以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0058】
第一水質調整剤添加装置72aは、第二制御部81と接続しており、第二制御部81から発せられた指令に従って、ポンプ73aを介して、膜ろ処理水w2に第一水質調整剤を添加する。第二水質調整剤添加装置72bは、第二制御部81と接続しており、第二制御部81から発せられた指令に従って、ポンプ73bを介して、膜ろ処理水w2に第二水質調整剤を添加する。第三水質調整剤添加装置72cは、第二制御部81と接続しており、第二制御部81から発せられた指令に従って、ポンプ73cを介して、膜ろ処理水w2に第三水質調整剤を添加する。
【0059】
図1に示す水処理装置1では、第一水質調整剤添加装置72aおよび第二水質調整剤添加装置72bを使用する。よって、第一水質調整剤添加装置72aには第一水質調整剤が充填され、第二水質調整剤添加装置72bには第二水質調整剤が充填されている。第三水質調整剤添加装置72cは、予備用である。このため、第三水質調整剤添加装置72cには水質調整剤が充填されていない。
【0060】
第一水質調整剤としては、例えば、還元剤を用いる。還元剤は、前段の酸化剤添加装置21によって被処理水W1に添加された酸化剤を分解除去する。酸化剤は、逆浸透膜71を変質させやすい物質である。よって、還元剤を用いることによって、逆浸透膜71の変質を抑制することができる。還元剤としては、亜硫酸水素ナトリウムを用いることができる。
【0061】
第二水質調整剤としては、例えば、バイオファウリング防止剤を用いる。バイオファウリング防止剤は、逆浸透膜71にバイオフィルムが付着して逆浸透膜71を目詰まりさせる現象(バイオファウリング)の発生を抑制する。第一水質調整剤として、還元剤を膜ろ過処理水W2に添加して酸化剤を中和すると、バイオファウリングが発生しやすくなるおそれがある。このため、第二水質調整剤として、バイオファウリング防止剤を膜ろ過処理水W2に添加する。バイオファウリング防止剤としては、例えば、特開2016-221500号公報、特開2014-211327号公報に記載のものを用いることができる。特に、特開2016-221500号公報に記載されているDBNPA、Cl-MITとMITの混合物(商品名「ケーソン」)、アンモニアクロラミン、クロロスルファミン酸、安定化次亜臭素酸系スライムコントロール剤(オルガノ(株)製、商品名「オルパージョンE266シリーズ」、Nalco社製、商品名「スタブレックス」)を好適に用いることができる。
【0062】
図1に示す水処理装置1では、上記のとおり、第一水質調整剤添加装置72aおよび第二水質調整剤添加装置72bを使用し、第三水質調整剤添加装置72cを予備用とする。ただし、被処理水W1の変化によって、膜ろ過処理水W2に含まれる物質の種類や濃度が変化することがある。この膜ろ過処理水W2の変化によって、第一水質調整剤および第二水質調整剤のみでは、逆浸透膜71の変質を抑制したり、逆浸透膜71に付着する付着物の発生を抑制したりすることが困難となる場合がある。この場合には、第三水質調整剤添加装置72cを使用して、第一水質調整剤および第二水質調整剤に変えて、あるいは第一水質調整剤および第二水質調整剤に加えて、第三水質調整剤を逆浸透膜71に添加する。さらに、水質調整剤の添加を中止する、水質調整剤の添加量を変更する、または水質調整剤の種類を変更するなどの対応をとることもできる。
【0063】
水質調整剤は、還元剤およびバイオファウリング防止剤に限定されるものではない。水質調整剤は、膜ろ過処理水W2の水質によって適宜選択して使用する。還元剤およびバイオファウリング防止剤以外の水質調整剤の例としては、スケール防止剤を挙げることができる。スケール防止剤は、逆浸透膜71にスケールが付着することを抑制する薬剤である。スケール防止剤としては、高分子系スケール防止剤、ホスホン酸などの低分子系スケール防止剤を用いることができる。
【0064】
逆浸透膜洗浄剤添加装置74は、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aおよび第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bの2つの装置を含む。第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aおよび第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bは、逆浸透膜71に異なる逆浸透膜洗浄剤を添加可能とするために、逆浸透膜処理部70を構成する装置として予め設置されている。逆浸透膜洗浄剤は、逆浸透膜71を洗浄して、逆浸透膜71に付着している付着物を除去することによって、付着物によって低下した逆浸透膜71の脱塩性能を回復させるための薬剤である。なお、逆浸透膜洗浄剤添加装置74は、2つに限定されるものではない。逆浸透膜洗浄剤添加装置74は、1つであってもよいが、2つ以上であることが好ましく、2つ以上5つ以下の範囲内にあることが特に好ましい。
【0065】
第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aは、第二制御部81と接続しており、第二制御部81から発せられた指令に従って、ポンプ75aを介して、逆浸透膜71に第一水質調整剤を添加する。第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bは、第二制御部81と接続しており、第二制御部81から発せられた指令に従って、ポンプ75bを介して、逆浸透膜71に第二水質調整剤を添加する。
【0066】
図1に示す水処理装置1では、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aを使用する。よって、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aには第一逆浸透膜洗浄剤が充填されている。一方、第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bは予備用である。このため、第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bには逆浸透膜洗浄剤が充填されていない。
【0067】
第一逆浸透膜洗浄剤としては、例えば、バイオフィルム除去用洗浄剤を用いる。バイオフィルム除去用洗浄剤は、逆浸透膜71に付着したバイオフィルムを除去する能力が高い薬剤である。バイオフィルム除去用洗浄剤としては、水酸化ナトリウム等を使用してpHを12以上にするアルカリ性薬品を用いることができる。
【0068】
図1に示す水処理装置1では、上記のとおり、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aを使用し、第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bを予備用とする。ただし、被処理水W1の変化によって、膜ろ過処理水W2が変化して、逆浸透膜71に付着する付着物の種類や付着量が変化することがある。この付着物の種類や付着量の変化によって、第一逆浸透膜洗浄剤のみでは、付着物を除去するのが困難となる場合がある。この場合には、第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bを使用して、第一逆浸透膜洗浄剤に変えて、あるいは第一逆浸透膜洗浄剤に加えて、第二逆浸透膜洗浄剤を逆浸透膜71に添加する。さらに、逆浸透膜洗浄剤の添加を中止する、逆浸透膜洗浄剤の添加量を変更する、または逆浸透膜洗浄剤の種類を変更するなどの対応をとることもできる。
【0069】
逆浸透膜洗浄剤はバイオフィルム除去用洗浄剤に限定されるものではない。逆浸透膜洗浄剤は、逆浸透膜71に付着した付着物の種類や付着量によって適宜選択して使用する。バイオフィルム除去用洗浄剤以外の逆浸透膜洗浄剤の例としては、スケール除去用洗浄剤を挙げることができる。スケール除去用洗浄剤は、逆浸透膜71に付着したスケールを除去する能力が高い薬剤である。スケール除去用洗浄剤としては、塩酸や硫酸、シュウ酸といった酸系の薬品を単独で、または混合によりpHを1.5~4.0以下にする酸性薬品を用いることができる。
【0070】
次に、図1を参照しつつ、本実施形態の水処理方法について説明する。本実施形態の水処理方法は、第一水質測定工程と、第一制御工程と、第一滞留工程と、凝集工程と、第二滞留工程と、膜ろ過処理工程と、第三滞留工程と、第二水質測定工程と、第二制御工程と、逆浸透膜処理工程と、を行なう。また、必要に応じて、ろ過膜洗浄工程と、逆浸透膜洗浄工程と、を行なう。以下、各工程について説明する。
【0071】
第一水質測定工程では、第一水質測定装置10を用いて、被処理水W1の水質を測定する。被処理水W1の水質の測定は、一定の時間間隔で定期的に行ってもよいし、降雨や温度などの環境の変化に応じて不定期に行ってもよい。
【0072】
第一制御工程では、第一制御部11を用いて、第一水質測定工程で得られた被処理水W1の水質に基づいて、第二凝集剤添加装置31bに対して第二凝集剤(無機凝集剤)の添加の要否および添加量の指令を発する。また、第一制御工程では、第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bに対して第二ろ過膜洗浄剤(無機物除去用洗浄剤)の添加の要否および添加量の指令を発する。第二凝集剤および第二ろ過膜洗浄剤の添加量は、事前に被処理水W1を用いた机上試験を行なって決定することが好ましい。
【0073】
第一滞留工程では、第一滞留槽20に被処理水W1を滞留させる。次いで、酸化剤添加装置21を用いて、酸化剤を第一滞留槽20に供給する。被処理水W1への酸化剤の添加量は、酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合、塩素量(Cl)として0.2~0.5mg/Lの範囲内となる量であることが好ましい。酸化剤の添加によって、被処理水W1中の有機物が酸化分解され、バイオファウリングの発生が抑制される。酸化剤を添加した被処理水W1はポンプ23を介して第一凝集槽30aに送られる。
【0074】
凝集工程では、第二凝集剤添加装置31bを用いて、被処理水W1に第二凝集剤を添加する。すなわち、第一凝集槽30aに導入された被処理水W1はそのまま、第二凝集槽30bに送られる。第二凝集槽30bにて、被処理水W1と第二凝集剤(無機凝集剤)とを撹拌混合して、被処理水W1に第二凝集剤を均一に添加する。これによって、被処理水W1中の炭酸塩などの無機物を凝集させて無機物の粗大な粒子を生成させる。無機物の粗大な粒子を含む被処理水W1は、第三凝集槽30cに送られ、そのまま、第二滞留槽40に送られる。
【0075】
第二滞留工程では、第二滞留槽40にて、被処理水W1を一時的に滞留させる。第二滞留槽40にて一時的に滞留された被処理水W1は、膜ろ過処理部50に送られる。
【0076】
膜ろ過処理工程では、ろ過膜51を用いて、無機物の粗大な粒子を含む被処理水W1を膜ろ過処理して、無機物の粗大な粒子を分離除去する。無機物の粗大な粒子が除去された膜ろ過処理水W2は、第三滞留槽60に送られる。
【0077】
第三滞留工程では、第三滞留槽60にて、膜ろ過処理水W2を一時的に滞留させる。第三滞留槽60にて一時的に滞留された膜ろ過処理水W2は、逆浸透膜処理部70に送られる。
【0078】
第二水質測定工程では、第二水質測定装置80を用いて、膜ろ過処理水W2の物性を測定する。水質の測定は、一定の時間間隔で定期的に行ってもよいし、不定期に行ってもよい。
【0079】
第二制御工程では、第二制御部81を用いて、第二水質測定工程で得られた膜ろ過処理水W2の水質に基づいて、第一水質調整剤添加装置72aに対して第一水質調整剤(還元剤)の添加の要否及び添加量の指令と、第二水質調整剤添加装置72bに対して第二水質調整剤(バイオファウリング防止剤)の添加の要否及び添加量の指令を発する。また、第二制御工程では、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aに対して第一逆浸透膜洗浄剤(バイオフィルム除去用洗浄剤)の添加量の指令を発する。第一水質調整剤、第二水質調整剤および第一逆浸透膜洗浄剤の添加量は、事前に膜ろ過処理水W2を用いた机上試験を行なって決定することが好ましい。
【0080】
逆浸透膜処理工程では、第一水質調整剤添加装置72aと第二水質調整剤添加装置72bを用いて、膜ろ過処理水W2に第一水質調整剤と第二水質調整剤とを添加し、次いで逆浸透膜71を用いて、膜ろ過処理水W2を逆浸透膜処理する。この逆浸透膜処理によって、高純度処理水W3が生成する。第一水質調整剤(還元剤)を膜ろ過処理水W2に添加することによって、前段の酸化剤添加装置21によって添加された酸化剤が中和されるので、酸化剤による逆浸透膜71の変質を抑制することができる。また、第二水質調整剤(バイオファウリング防止剤)を膜ろ過処理水W2に添加することによって、バイオファウリングの発生を抑制することができる。
【0081】
次に、ろ過膜洗浄工程と、逆浸透膜洗浄工程とについて説明する。
ろ過膜洗浄工程では、第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bを用いて、第二ろ過膜洗浄剤をろ過膜51に添加して、ろ過膜51を洗浄する。洗浄は、例えば、ろ過膜51を、第二ろ過膜洗浄剤(無機物除去用洗浄剤)に浸漬することによって行なう。第二ろ過膜洗浄剤を用いて、ろ過膜51を洗浄して、ろ過膜51によって分離除去された無機物の粗大な粒子を除去することによって、ろ過膜51のろ過効率が回復するので、ろ過膜51による膜ろ過処理を安定して行なうことができる。なお、ろ過膜洗浄工程を行なっている間は、被処理水W1を第二滞留槽40に滞留させて、膜ろ過処理工程を停止する。
【0082】
逆浸透膜洗浄工程では、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aを用いて、第一逆浸透膜洗浄剤を逆浸透膜71に添加して、逆浸透膜71を洗浄する。洗浄は、例えば、逆浸透膜71を第一逆浸透膜洗浄剤(バイオフィルム除去用洗浄剤)に浸漬することによって行なう。第一逆浸透膜洗浄剤を用いて、逆浸透膜71を洗浄して、逆浸透膜71に付着したバイオフィルムを除去することによって、逆浸透膜71の脱塩効率が回復するので、逆浸透膜71による逆浸透膜処理を安定して行なうことができる。なお、逆浸透膜洗浄工程を行っている間は、膜ろ過処理水W2を第三滞留槽60に滞留させて、逆浸透膜処理工程を停止する。
【0083】
以上のように、図1に示す水処理装置1を用いた水処理方法によれば、無機物を含み、有機物をほとんど含まない被処理水W1を、効率よく高純度処理水W3とすることができる。
【0084】
次に、被処理水W1の水質が変動した場合の対応方法について、説明する。
被処理水W1の水質が変動した場合とは、例えば、無機物や有機物の種類や濃度が変わること、あるいは被処理水の水量が増減することなどによって、水処理装置1による被処理水W1の処理効率が低下することを意味する。被処理水W1の水質が変動する要因としては、例えば、屋外に設置された水処理装置では雨水などの混入がある。また、工場排水用の水処理装置では工場の製造ラインの増減、製造目的物や製造原料の変更などがある。ただし、被処理水W1の水質が変動する要因はこれらに限定されるものではない。
【0085】
図2は、本発明の実施形態である水処理装置と、これを用いた水処理方法の別の一例を説明する模式図である。図2に示す水処理装置では、被処理水W1が、無機物を多量に含み(炭酸塩濃度が炭酸量として25mg/Lを超える)、有機物をほとんど含まない(分子量1万以上の有機物濃度が炭素量として300μm/L以下)場合に対応した構成とされている。被処理水W1が無機物を多量に含む場合、一種類の凝集剤を用いるだけでは、無機物を凝集させて、粗大な粒子を生成させることが困難となることがある。また、膜ろ過処理後の被処理水(膜ろ過処理水W2)に無機物が残留して、逆浸透膜に無機物が析出して、スケールが生成することがある。このため、図1に示す水処理装置1を用いた水処理方法では、被処理水W1の処理効率が低下するおそれがある。なお、図2に示す水処理装置1は、図1に示す水処理装置1と構成要素は同一であるので、図1と同一の符号を付して、その説明を省略もしくは簡素化する。
【0086】
図2に示す水処理装置1は、凝集剤添加装置31と、水質調整剤添加装置72と、逆浸透膜洗浄剤添加装置74の使用形態が、図1に示す水処理装置1と相違する。すなわち、凝集剤添加装置31では、第二凝集剤添加装置31bに加えて、第三凝集剤添加装置31cを使用し、第一凝集剤添加装置31aを予備用としている。第二凝集剤としては、例えば、無機凝集剤を用いる。第三凝集剤としては、例えば、カチオン性高分子凝集剤を用いる。また、水質調整剤添加装置72は、第一水質調整剤添加装置72aと第二水質調整剤添加装置72bに加えて、第三水質調整剤添加装置72cを使用する。第一水質調整剤としては、例えば、還元剤を用いる。第二水質調整剤としては、例えば、バイオファウリング防止剤を用いる。第三水質調整剤としては、例えば、スケール防止剤を用いる。逆浸透膜洗浄剤添加装置74では、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aに加えて、第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bを使用する。第一逆浸透膜洗浄剤としては、例えば、バイオフィルム除去用洗浄剤を用いる。第二逆浸透膜洗浄剤としては、例えば、スケール除去用洗浄剤を用いる。
【0087】
次に、図2に示す水処理装置1を用いた水処理方法を、図1に示す水処理装置1を用いた水処理方法との相違点を中心に説明する。
第一制御工程では、第一制御部11を用いて、第一水質測定工程で得られた被処理水W1の物性に基づいて、第二凝集剤添加装置31bに対して第二凝集剤(無機凝集剤)の添加の要否および添加量の指令と、第三凝集剤添加装置31cに対して第三凝集剤(カチオン性高分子凝集剤)の添加の要否および添加量の指令を発する。第二凝集剤および第三凝集剤の添加量は、事前に被処理水W1を用いた机上試験を行なって決定することが好ましい。
【0088】
凝集工程では、第二凝集剤添加装置31bと共に第三凝集剤添加装置31cを用いて、被処理水W1に第二凝集剤に加えて第三凝集剤を添加する。すなわち、第一凝集槽30aに導入された被処理水W1はそのまま、第二凝集槽30bに送られる。第二凝集槽30bにて、被処理水W1と第二凝集剤(無機凝集剤)とを撹拌混合して、第二凝集剤に被処理水W1を均一に添加する。これによって、被処理水W1中の無機物を凝集させる。次に、被処理水W1は、第三凝集槽30cに送られる。第三凝集槽30cにて、被処理水W1と第三凝集剤(カチオン性高分子凝集剤)とを撹拌混合して、第凝集剤に被処理水W1を均一に添加する。これによって、無機物の凝集物を肥大化させる。このように、被処理水W1に第二凝集剤に加えて第三凝集剤を添加することによって、被処理水W1が無機物を多量に含む場合でも、無機物を十分に凝集させることができ、粗大な粒子を生成させることが可能となる。
【0089】
第二制御工程では、第二制御部81を用いて、第二水質測定工程で得られた膜ろ過処理水W2の水質に基づいて、第一水質調整剤添加装置72aに対して第一水質調整剤(還元剤)の添加の要否および添加量の指令と、第二水質調整剤添加装置72bに対して第二水質調整剤(バイオファウリング防止剤)の添加の要否および添加量の指令と、第三水質調整剤添加装置72cに対して第三水質調整剤(スケール防止剤)の添加量の指令を発する。また、第二制御工程では、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aに対して第一逆浸透膜洗浄剤(バイオフィルム除去用洗浄剤)の添加の要否および添加量の指令と、第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bに対して第二逆浸透膜洗浄剤(スケール除去用洗浄剤)の添加の要否および添加量の指令を発する。第一水質調整剤、第二水質調整剤、第三水質調整剤、第一逆浸透膜洗浄剤および第二逆浸透膜洗浄剤の添加量は、事前に膜ろ過処理水W2を用いた机上試験を行なって決定することが好ましい。
【0090】
逆浸透膜処理工程では、第一水質調整剤添加装置72aおよび第二水質調整剤添加装置72bと共に第三水質調整剤添加装置72cを用いて、膜ろ過処理水W2に第一水質調整剤および第二水質調整剤に加えて第三水質調整剤を添加する。膜ろ過処理水W2に、第一水質調整剤および第二水質調整剤を添加する効果は、図1に示す水処理装置1を用いた水処理方法の場合と同様である。すなわち、第一水質調整剤(還元剤)を添加することによって、酸化剤による逆浸透膜71の変質を抑制することができる。また、第二水質調整剤(バイオファウリング防止剤)を添加することによって、バイオファウリングの発生を抑制することができる。さらに、第三水質調整剤(スケール防止剤)を添加することによって、膜ろ過処理水W2に含まれている無機物が逆浸透膜71の表面に析出して、スケールが発生することを抑制することができる。このように、ろ過処理水W2に第一水質調整剤および第二水質調整剤に加えて第三水質調整剤を添加することによって、膜ろ過処理水W2に無機物が残留した場合でも、逆浸透膜71にスケールが付着することを抑制することができる。




【0091】
逆浸透膜洗浄工程では、第一逆浸透膜洗浄剤添加装置74aと共に第二逆浸透膜洗浄剤添加装置74bを用いて、第一逆浸透膜洗浄剤に加えて第二逆浸透膜洗浄剤を逆浸透膜71に添加して、逆浸透膜71を洗浄する。第一逆浸透膜洗浄剤(バイオフィルム除去用洗浄剤)を用いて、逆浸透膜71を洗浄することにより、図1に示す水処理装置1を用いた水処理方法の場合と同様に、逆浸透膜71に付着したバイオフィルムを除去することができる。さらに、第二逆浸透膜洗浄剤(スケール除去用洗浄剤)を用いて、逆浸透膜71を洗浄することによって、逆浸透膜71に付着したスケールを除去することができる。このように、逆浸透膜71に第一逆浸透膜洗浄剤に加えて第二逆浸透膜洗浄剤を添加することによって、逆浸透膜71に付着しているバイオフィルムとスケールを除去することができる。
【0092】
以上のように、図2に示す水処理装置1を用いた水処理方法によれば、被処理水W1が無機物を多量に含み、有機物をほとんど含まない場合でも、被処理水W1を効率よく高純度処理水W3とすることができる。
【0093】
図3は、本発明の実施形態である水処理装置と、これを用いた水処理方法の別の一例を説明する模式図である。図3に示す水処理装置では、被処理水W1が、無機物を含み(ただし、炭酸塩濃度が炭酸量として25mg/L以下)、有機物を含む(分子量1万以上の有機物濃度が炭素量として300μm/Lを超える)場合に対応した構成とされている。被処理水W1が有機物を含む場合、一種類の凝集剤を用いるだけでは、無機物と有機物の両者を十分に凝集させることが難しく、粗大な粒子を生成させることが困難となることがある。また、膜ろ過処理後の被処理水(膜ろ過処理水W2)に無機物および/または有機物が残留して、逆浸透膜にバイオフィルムやスケールが付着することがある。このため、図1に示す水処理装置1を用いた水処理方法では、被処理水W1の処理効率が低下するおそれがある。なお、図3に示す水処理装置1は、図1に示す水処理装置1と構成要素は同一であるので、図1と同一の符号を付して、その説明を省略もしくは簡素化する。
【0094】
図3に示す水処理装置1は、凝集剤添加装置31と、ろ過膜洗浄剤添加装置52の使用形態が、図1に示す水処理装置1と相違する。すなわち、凝集剤添加装置31では、第二凝集剤添加装置31bに加えて、第一凝集剤添加装置31aを使用し、第三凝集剤添加装置31cを予備用としている。第一凝集剤としては、例えば、フェノール性水酸基を有する高分子化合物を用いる。第二凝集剤としては、例えば、無機凝集剤を用いる。また、ろ過膜洗浄剤添加装置52では、第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bに加えて、第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aを使用する。第一ろ過膜洗浄剤としては、例えば、有機物除去用洗浄剤を用いる。第二ろ過膜洗浄剤としては、例えば、無機物除去用洗浄剤を用いる。
【0095】
次に、図3に示す水処理装置1を用いた水処理方法を、図1に示す水処理装置1を用いた水処理方法との相違点を中心に説明する。
第一制御工程では、第一制御部11を用いて、第一水質測定工程で得られた被処理水W1の物性に基づいて、第一凝集剤添加装置31aに対して第一凝集剤(フェノール性水酸基を有する高分子化合物)の添加の要否および添加量の指令と、第二凝集剤添加装置31bに対して第二凝集剤(無機凝集剤)の添加の要否および添加量の指令を発する。また、第一制御工程では、第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aに対して第一ろ過膜洗浄剤(有機物除去用洗浄剤)の添加の要否および添加量の指令と、第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bに対して第二ろ過膜洗浄剤(無機物除去用洗浄剤)の添加の要否および添加量の指令を発する。
【0096】
凝集工程では、第二凝集剤添加装置31bと共に第一凝集剤添加装置31aを用いて、被処理水W1に第二凝集剤に加えて第一凝集剤を添加する。すなわち、第一凝集槽30aにて、被処理水W1と第一凝集剤(フェノール性水酸基を有する高分子化合物)とを撹拌混合して、第一凝集剤に被処理水W1を均一に混合する。これによって、被処理水W1中の有機物を凝集させて、有機物の粗大な粒子を生成させる。次に、被処理水W1は、第二凝集槽30bに送られる。第二凝集槽30bにて、被処理水W1と第二凝集剤(無機凝集剤)とを撹拌混合して、第二凝集剤に被処理水W1を均一に添加する。これによって、被処理水W1中の無機物を凝集させて、無機物の粗大な粒子を生成させる。このように、被処理水W1に第二凝集剤に加えて第一凝集剤を添加することによって、被処理水W1が無機物と有機物とを含む場合でも、両者を十分に凝集させることができ、無機物の粗大な粒子と有機物の粗大な粒子を生成させることが可能となる。
【0097】
ろ過膜洗浄工程では、第二ろ過膜洗浄剤添加装置52bと共に第一ろ過膜洗浄剤添加装置52aを用いて、第二ろ過膜洗浄剤に加えて第一ろ過膜洗浄剤を、ろ過膜51に添加して、ろ過膜51を洗浄する。第二ろ過膜洗浄剤(無機物除去用洗浄剤)を用いて、ろ過膜51を洗浄することにより、図1に示す水処理装置1を用いた水処理方法の場合と同様に、ろ過膜51によって分離除去された無機物の粗大な粒子を除去することができる。さらに、第一ろ過膜洗浄剤(有機物除去用洗浄剤)を用いて、ろ過膜51を洗浄することによって、ろ過膜51によって分離除去された有機物の粗大な粒子を除去することができる。このように、ろ過膜51に第二ろ過膜洗浄剤に加えて第一ろ過膜洗浄剤を添加することによって、ろ過膜51によって分離除去された無機物の粗大な粒子と有機物の粗大な粒子を除去することが可能となる。
【0098】
以上のように、図3に示す水処理装置1を用いた水処理方法によれば、被処理水W1が無機物と有機物とを含む場合でも、被処理水W1を効率よく高純度処理水W3とすることができる。
【0099】
以上説明したように、本実施形態の水処理方法において用いる水処理装置1は、凝集部30に対して異なる凝集剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の凝集剤添加装置31のうちの少なくとも1つが予備用とされている。このため、本実施形態の水処理方法によれば、被処理水W1の水質が変動して、被処理水W1中の無機物や有機物の凝集のしやすさが変化した場合には、予備用とされた凝集剤添加装置31から、被処理水W1の水質に対応した新たな凝集剤を凝集部30に添加するなどの対応をとることができる。そして、これらの対応をとることによって、被処理水W1中の無機物や有機物をより確実に凝集させて粗大な粒子とすることが可能となる。従って、本実施形態の水処理方法は拡張性が高い。
【0100】
また、本実施形態の水処理方法によれば、水処理装置1に予め設置されている2つ以上のろ過膜洗浄剤添加装置52のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、被処理水W1の水質が変動したときに、予備用とされたろ過膜洗浄剤添加装置52から、被処理水W1の水質に対応した新たなろ過膜洗浄剤をろ過膜51に添加するなどの対応をとることができる。そして、その対応をとることによって、被処理水W1の水質の変動により、無機物や有機物の凝集によって生成する粗大な粒子の種類や生成量が変化した場合でも、ろ過膜51で分離除去された粗大な粒子をより確実に除去することが可能となる。従って、水処理方法の拡張性がより高くなる。
【0101】
さらに、本実施形態の水処理方法によれば、水処理装置1に予め設置されている2つ以上の水質調整剤添加装置72のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、膜ろ過処理水W2の水質が変動したときに、予備用とされた水質調整剤添加装置72から、被処理水の水質に対応した新たな水質調整剤を膜ろ過処理水W2に添加するなどの対応をとることができる。そして、その対応をとることによって、膜ろ過処理水W2の水質の変動により、逆浸透膜71への付着物の発生しやすさが変化した場合でも、逆浸透膜71への付着物の発生を抑えることが可能となる。従って、水処理方法の拡張性がより高くなる。
【0102】
またさらに、本実施形態の水処理方法によれば、水処理装置1に予め設置されている2以上の逆浸透膜洗浄剤添加装置74のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、膜ろ過処理水W2の水質が変動したときに、予備用とされた逆浸透膜洗浄剤添加装置74から、膜ろ過処理水W2の水質に対応した新たな逆浸透膜洗浄剤を逆浸透膜71に添加するなどの対応をとることができる。そして、その対応をとることによって、膜ろ過処理水W2の水質の変動により、逆浸透膜71に付着した付着物の種類や量が変化した場合でも、逆浸透膜に付着した付着物を除去することが可能となる。従って、本実施形態の水処理装置1は拡張性がより高くなる。
【0103】
本実施形態の水処理装置1によれば、凝集部30に対して異なる凝集剤を添加可能とするために予め設置されている2つ以上の凝集剤添加装置31のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、被処理水W1の水質が変動して、被処理水中の無機物や有機物の凝集のしやすさが変化した場合には、予備用とされた凝集剤添加装置31から、被処理水W1の水質に対応した新たな凝集剤を凝集部に添加するなどの対応をとることができる。また、本実施形態の水処理装置1によれば、第一水質測定装置10の測定結果に基づいて、凝集剤の添加の要否および凝集剤の添加量を制御することができるので、被処理水W1の水質の変動に応じて迅速に対応することが可能となる。
【0104】
また、本実施形態の水処理装置1によれば、凝集部30が、3つの凝集剤添加装置(第一凝集剤添加装置31a、第二凝集剤添加装置31b、第三凝集剤添加装置31c)のそれぞれに対応した3つの凝集槽(第一凝集槽30a、第二凝集槽30b、第三凝集槽30c)からなる構成とされ、その3つの凝集槽が直列に接続されているので、異なる凝集剤を段階的に添加することができる。これによって、異なる凝集剤が互いに干渉し合って凝集効果を損なうことを抑制することができ、凝集剤の添加効果をより確実に発揮させることが可能となる。従って、被処理水に含まれている無機物や有機物をより確実に凝集させて粗大な粒子とすることが可能となる。
【0105】
さらに、本実施形態の水処理装置1によれば、凝集部30の後段に膜ろ過処理部50と逆浸透膜処理部70とを備えるので、膜ろ過処理部にて被処理水に含まれている粗大な粒子を分離除去し、逆浸透膜処理部にて被処理水を脱塩することができるので、被処理水を高純度な処理水とすることが可能となる。
【0106】
さらに、本実施形態の水処理装置1によれば、2つ以上のろ過膜洗浄剤添加装置52のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、被処理水W1の水質が変動して、無機物や有機物の凝集によって生成する粗大な粒子の種類や生成量が変化した場合には、予備用とされたろ過膜洗浄剤添加装置52から、被処理水の水質に対応した新たなろ過膜洗浄剤をろ過膜に添加するなどの対応をとることができる。また、本実施形態の水処理装置1によれば、第一水質測定装置10の測定結果に基づいて、ろ過膜洗浄剤の添加の要否およびろ過膜洗浄剤の添加量を制御することができるので、被処理水W1の水質の変動に応じて迅速に対応することが可能となる。従って、水処理装置1の拡張性がより高くなる。
【0107】
さらに、本実施形態の水処理装置1によれば、2つ以上の水質調整剤添加装置72のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、膜ろ過処理水W2の水質が変動して、逆浸透膜71への付着物の発生しやすさが変化した場合には、予備用とされた水質調整剤添加装置72から、膜ろ過処理水W2の水質に対応した新たな水質調整剤を逆浸透膜に添加するなどの対応をとることができる。また、本実施形態の水処理装置1によれば、第二水質測定装置80の測定結果に基づいて、水質調整剤の添加の要否および水質調整剤の添加量を制御することができるので、膜ろ過処理水W2の水質の変動に応じて迅速に対応することが可能となる。従って、水処理装置1の拡張性がより高くなる。
【0108】
さらに、本実施形態の水処理装置1によれば、2以上の逆浸透膜洗浄剤添加装置74のうちの少なくとも1つが予備用とされているので、膜ろ過処理水W2の水質が変動して、逆浸透膜71に付着した付着物の種類や量が変化した場合には、予備用とされた逆浸透膜洗浄剤添加装置74から、膜ろ過処理水W2の水質に対応した新たな逆浸透膜洗浄剤を逆浸透膜に添加するなどの対応をとることができる。また、本実施形態の水処理装置1によれば、第二水質測定装置80の測定結果に基づいて、逆浸透膜洗浄剤の添加の要否および逆浸透膜洗浄剤の添加量を制御することができるので、膜ろ過処理水W2の水質の変動に応じて迅速に対応することが可能となる。従って、水処理装置1の拡張性がより高くなる。
【0109】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記の実施形態では、凝集部30が、第一凝集槽30a、第二凝集槽30bおよび第三凝集槽30cの3つの凝集槽を含み、その凝集槽のそれぞれに一つの凝集剤添加装置31が設置されている場合について説明したが、凝集部30を構成する凝集槽の個数および凝集剤添加装置31の個数や設置方法はこれに限定されるものではない。凝集槽の個数は1つであってもよいが、2つ以上であることが好ましく、2つ以上5つ以下の範囲内にあることが特に好ましい。凝集剤添加装置31は、2つ以上であればよく、3つ以上であることが好ましく、3つ以上5つ以下の範囲内にあることが特に好ましい。また、凝集剤添加装置31は、1つの凝集槽に対して2つ以上設置してもよい。1つの凝集槽に対して、2つの凝集剤添加装置31を設置した水処理装置の構成の例を図4図5に示す。
【0110】
図4において、凝集部30は、第一凝集槽30a、第二凝集槽30bの2つの凝集槽を含む。第二凝集槽30bは、第2滞留槽(不図示)に接続している。第一凝集剤添加装置31aは第一凝集槽30aに、第二凝集剤添加装置31bと第三凝集剤添加装置31cは第二凝集槽30bに設置されている。
【0111】
図5において、凝集部30は、第一凝集槽30a、第二凝集槽30bの2つの凝集槽を含む。第二凝集槽30bは、第2滞留槽(不図示)に接続している。第一凝集剤添加装置31aは第一凝集槽30aに、第二凝集剤添加装置31bは、第一凝集槽30aと第二凝集槽30bに、第三凝集剤添加装置31cは第二凝集槽30bに設置されている。
【0112】
また、本実施形態は、凝集剤の添加の要否および凝集剤の添加量の調整と、ろ過膜洗浄剤の添加の要否およびろ過膜洗浄剤の添加量の調整を、第一制御部11を用いて行っているが、手動で行ってもよい。また、水質調整剤の添加の要否および水質調整剤の添加量の調整と、逆浸透膜洗浄剤の添加の要否および逆浸透膜洗浄剤の添加量の調整を、第二制御部81を用いて行っているが、手動で行ってもよい。
【実施例
【0113】
[実施例1]
図1に示す水処理装置1と、被処理水W1として、3種の被処理水A~Cを用意した。下記の表1に被処理水A~Cの物性と、机上試験に基づいて決定した被処理水A~Cの処理条件(凝集剤の添加量)を示す。なお、第一凝集剤はフェノール性水酸基を有する高分子化合物(BP201、栗田工業株式会社製)を用い、第二凝集剤は塩化第二鉄を用い、第三凝集剤はカチオン性高分子凝集剤(ゼータエースP702、栗田工業株式会社製)を用いた。
【0114】
【表1】
【0115】
被処理水A~Cを、被処理水A、被処理水B、被処理水Cの順で12時間毎に切り替えるパターンで、水処理装置1に供給した。このパターンで2週間、被処理水A~Cを水処理装置1に供給し、下記のようにして水処理を行なった。
【0116】
第一滞留槽20では、酸化剤添加装置21を用いて、次亜塩素酸ナトリウムを塩素量(Cl)として0.2~0.5mg/Lとなるように、被処理水W1に添加した。
【0117】
凝集部30では、被処理水W1を、第一凝集槽30a、第二凝集槽30b、第三凝集槽30cの順に送り、被処理水W1の種類が切り替わる毎に、手動により、第一凝集剤、第二凝集剤、第三凝集剤の添加量を変更した。第二凝集槽30bでは、pH計33とpH調整剤添加装置34を用いて、被処理水W1のpHを6.0に調整した。pH調整剤は、硫酸と水酸化ナトリウムを用いた。
【0118】
膜ろ過処理部50では、ろ過膜51として、ポリフッ化ビニルデン製の限界ろ過膜(UF膜:約3.3m)を用いた。
逆浸透膜処理部70では、逆浸透膜71として、ポリアミド膜を用いた。また、逆浸透膜処理部70では、第一水質調整剤添加装置72a、第二水質調整剤添加装置72bおよび第三水質調整剤添加装置72cを用いて、被処理水に、第一水質調整剤(還元剤)、第二水質調整剤(バイオファウリング防止剤)、第三水質調整剤(スケール防止剤)を添加した。還元剤は重亜硫酸ナトリウムを用い、バイオファウリング防止剤はクリバーターIK110(栗田工業株式会社製)を用い、スケール防止剤はクリバーターN500(栗田工業株式会社製)を用いた。また、逆浸透膜処理部70は、回収率を75%に設定して運転した。
【0119】
[実施例2]
膜ろ過処理部50のろ過膜51を、水処理開始から5日に一回の頻度で洗浄したこと以外は、実施例1と同様にして水処理を行なった。ろ過膜洗浄剤としては、硫酸を0.1%含み、次亜塩素酸ナトリウムを塩素量(Cl)として500mg/L含み、水酸化ナトリウムを0.1%含む水溶液を用いた。ろ過膜51の洗浄は、ろ過膜51にろ過膜洗浄剤を添加して、ろ過膜51をろ過膜洗浄剤に30分間浸漬させることによって行なった。
【0120】
[実施例3]
第一水質測定装置10にて、被処理水W1の水質(濁度、pH)を測定した。濁度の測定は濁度計(株式会社堀場製作所製)を用い、pHの測定はpH計(株式会社堀場製作所製)を用いた。第一制御部11にて、濁度とpHの測定結果から、被処理水W1の種類を下記のように判断し、その判定結果と表1の処理条件に従って、第一凝集剤添加装置31a、第二凝集剤添加装置31bおよび第三凝集剤添加装置31cのそれぞれに凝集剤の添加の要否および添加量の指令を発した。以上の点以外は、実施例1と同様にして水処理を行なった。
pHが7.0以下で、濁度が10NTU以下の場合:被処理水A
pHが7.0以下で、濁度が10NTU以上の場合:被処理水B
pHが7.0以上の場合:被処理水C
【0121】
[実施例4]
第一制御部11が、被処理水を被処理水Bに相当すると判定したとき、被処理水の濁度に合わせて第二凝集剤(塩化第二鉄)の添加量を下記のように設定したこと以外は、実施例1と同様にした。
濁度が100NTU未満場合:200mg/L
濁度が100NTU以上150NTU未満:250mg/L
濁度が150NTU以上200NTU未満:300mg/L
濁度が200NTU以上:350mg/L
【0122】
[実施例5]
逆浸透膜処理部70の逆浸透膜71を、水処理開始から5日に一回の頻度で洗浄したこと以外は、実施例1と同様にして水処理を行なった。逆浸透膜洗浄剤には、シュウ酸を0.1%含むシュウ酸水溶液を用いた。逆浸透膜71の洗浄は、逆浸透膜71に逆浸透膜洗浄剤を添加して、逆浸透膜71を逆浸透膜洗浄剤に30分間浸漬させることによって行なった。
【0123】
[実施例6]
第三滞留槽60に滞留されている膜ろ過処理水の電気伝導率を、第二水質測定装置80を用いて測定し、第二制御部81にて、膜ろ過処理水の電気伝導率が25mS/m以下の場合は、還元剤とバイオファウリング防止剤を膜ろ過処理水に添加し、膜ろ過処理水の電気伝導率が25mS/mを超えた場合は、還元剤とスケール防止剤とバイオファウリング防止剤を膜ろ過処理水に添加するように、第一水質調整剤添加装置72a、第二水質調整剤添加装置72b、第三水質調整剤添加装置72cに対して指令を発したこと以外は、実施例3と同様にして水処理を行なった。
【0124】
[比較例1]
被処理水W1の種類に関わらず、凝集剤として第二凝集剤(塩化第二鉄)のみを250mg/Lの添加量で添加したこと以外は、実施例1と同様にして水処理を行なった。
【0125】
[比較例2]
被処理水W1の種類に関わらず、凝集剤として、第一凝集剤(BP201、栗田工業株式会社製)を1mg/L、第二凝集剤(塩化第二鉄)を250mg/L、第三凝集剤(ゼータエースP702、栗田工業株式会社製)を1mg/Lの添加量で添加したこと以外は、実施例1と同様にして水処理を行なった。
【0126】
[評価]
水処理装置1を用いて、被処理水W1を約2か月間水処理した後、水処理装置1を停止した。次いで、水処理装置1に純水を2m/時間の条件で通水して、ろ過膜51の純水通水時の差圧と逆浸透膜71の膜ろ過流束を測定した。その結果を、下記の表2に示す。
【0127】
【表2】
【0128】
被処理水W1の変化に合わせて凝集剤の添加の要否および添加量を調整した実施例1~5は、比較例1~2と比較して、ろ過膜(UF膜)の純水通水時の差圧が小さくなり、逆浸透膜の膜ろ過流束は大きくなった。実施例1~5では凝集剤を調整したことによって、粗大な粒子の生成量が適正化されたことにより、ろ過膜によって分離除去された粗大な粒子の量が減少し、また、膜処理後の膜ろ過処理水W2に残留する無機物や有機物の量が低減することにより、逆浸透膜に付着する付着物が減少したためである。また、ろ過膜51を洗浄した実施例2は、実施例1と比較してろ過膜の純水通水時の差圧が小さくなった。実施例2では、ろ過膜51で分離除去された粗大な粒子が除去されたためである。さらに、被処理水Bの濁度に合わせて第二凝集剤(塩化第二鉄)の添加量を変えた実施例4では、実施例1と比較してろ過膜の純水通水時の差圧が小さくなった。実施例4では、凝集剤をさらに最適化したことによって、粗大な粒子の生成量が適正化されたことにより、ろ過膜によって分離除去された粗大な粒子の量が減少したためである。さらにまた、逆浸透膜を洗浄した実施例5は、実施例1と比較して膜ろ過流束が大きくなった。実施例5は、逆浸透膜71に付着した付着物が除去されたためである。またさらに、膜ろ過処理水W2の物性に合わせて水質調整剤を調整した実施例6では、薬品濃度を水質によって変動させることで添加量を低減しながらも逆浸透膜の透水性に大きな影響はなかった。
【符号の説明】
【0129】
1…水処理装置、10…第一水質測定装置、11…第一制御部、20…第一滞留槽、21…酸化剤添加装置、22…ポンプ、23…ポンプ、30…凝集部、30a…第一凝集槽、30b…第二凝集槽、30c…第三凝集槽、31…凝集剤添加装置、31a…第一凝集剤添加装置、31b…第二凝集剤添加装置、31c…第三凝集剤添加装置、32a、32b、32c…ポンプ、33…pH計、34…pH調整剤添加装置、35…ポンプ、40…第二滞留槽、50…膜ろ過処理部、51…ろ過膜、52…ろ過膜洗浄剤添加装置、52a…第一ろ過膜洗浄剤添加装置、52b…第二ろ過膜洗浄剤添加装置、53a、53b…ポンプ、60…第三滞留槽、70…逆浸透膜処理部、71…逆浸透膜、72…水質調整剤添加装置、72a…第一水質調整剤添加装置、72b…第二水質調整剤添加装置、72c…第三水質調整剤添加装置、73a、73b、73c…ポンプ、74…逆浸透膜洗浄剤添加装置、74a…第一逆浸透膜洗浄剤添加装置、74b…第二逆浸透膜洗浄剤添加装置、75a、75b…ポンプ、80…第二水質測定装置、81…第二制御部、W1…被処理水、W2…膜ろ過処理水、W3…高純度処理水
図1
図2
図3
図4
図5