(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】膜濾過システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/12 20060101AFI20220517BHJP
B01D 61/04 20060101ALI20220517BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B01D61/12
B01D61/04
B01D61/58
(21)【出願番号】P 2020155440
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2021-08-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】後藤 秀樹
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/166276(WO,A1)
【文献】特開2013-066840(JP,A)
【文献】特開2000-61464(JP,A)
【文献】特開2019-130503(JP,A)
【文献】特開2008-149285(JP,A)
【文献】特開2013-66840(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を原水ポンプによって保安フィルタに通水し、
該保安フィルタを通過した原水を第1高圧ポンプによって第1RO装置に供給して第1濃縮水と第1透過水とに分離し、
第1透過水を第2高圧ポンプによって第2RO装置に供給して第2濃縮水と第2透過水とに分離する膜濾過システムの制御方法において、
第2透過水の流量が目標流量となるように、かつ
常に上流側のポンプの
制御周波数が下流側のポンプの
制御周波数以上となるように各ポンプをインバータ制御する
方法であって、
前記原水ポンプ及び第1高圧ポンプの制御周波数をそれぞれ固定し、第2高圧ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程を有することを特徴とする膜濾過システムの制御方法。
【請求項2】
前記工程では、前記原水ポンプ及び第1高圧ポンプの制御周波数をそれぞれ制御範囲内の最大値(以下、maxという。)とし、第2高圧ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御す
る請求項
1の膜濾過システムの制御方法。
【請求項3】
前記第2高圧ポンプの制御周波数が制御範囲内の最小値(以下、minという。)にまで低下しても第2透過水の流量が目標流量を上回るときに、第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、原水ポンプの制御周波数をmaxとし、第1高圧ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程に移行する、請求項
1又は
2の膜濾過システムの制御方法。
【請求項4】
前記第1高圧ポンプの制御周波数がminにまで低下しても第2透過水の流量が目標流量を上回るときに、第1及び第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、原水ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程に移行する、請求項
1~
3のいずれかの膜濾過システムの制御方法。
【請求項5】
前記原水ポンプの制御周波数をmaxとし、前記第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、第1高圧ポンプの周波数を制御している状態において、第1高圧ポンプの制御周波数がmaxにまで増加しても第2透過水の流量が目標流量を下回るときに、原水ポンプ及び第1高圧ポンプの制御周波数をmaxとし、第2高圧ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程に移行する、請求項
1~
4のいずれかの膜濾過システムの制御方法。
【請求項6】
前記第1高圧ポンプ及び第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、原水ポンプの制御周波数を制御している状態において、原水ポンプの制御周波数がmaxにまで増加しても第2透過水の流量が目標流量を下回るときに、原水ポンプの制御周波数をmaxとし、第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、第1高圧ポンプの制御周波数を前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程に移行する、請求項
1~
5のいずれかの膜濾過システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多段に設置されたRO装置を有する膜濾過システム及びその制御方法に係り、特に加圧ポンプによって水を膜濾過装置に供給する膜濾過システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
純水製造装置などの水処理装置においては、特許文献1に記載されているように、原水を給水ポンプで保安フィルタに通水してSS(懸濁物質)等を除去した後、加圧ポンプで昇圧し、RO(逆浸透)装置などの膜濾過装置に供給する。特許文献1では、RO処理水を電気脱イオン装置に通水して純水を製造している。
【0003】
特許文献2の
図5には、供給水を第1加圧ポンプで加圧して第1RO装置に供給し、その透過水を第2加圧ポンプで加圧して第2RO装置に供給して透過水を得る水処理システムが記載されている。特許文献2では、第1加圧ポンプは、第1RO装置の透過水流量が目標流量となるようにインバータ制御される。また、第2加圧ポンプは、第2RO装置の透過水流量が目標流量となるようにインバータ制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-127910号公報
【文献】特開2013-66840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1高圧ポンプ、第1RO装置、第2高圧ポンプ及び第2RO装置をこの順に配置した水処理システムを設計する場合、ある程度RO膜が閉塞することを見込んで高圧ポンプの揚程を高目に決定する。そのため、水処理システムの納入初期時や水温が高くなった時には、ポンプの揚程に余剰が生じ、処理水量が出過ぎてしまう。これを是正し処理水量を一定に制御するには、高圧ポンプ出口(RO入口)のバルブを日々手動で調整することが一般的であるが、電力低減を目的として処理水量が設定値通りとなる様にRO高圧ポンプをインバータで制御する方法もある(特許文献2)。しかし、第2高圧ポンプの揚程調整にもインバータ制御を適用する場合、インバータ制御の目的を運転時の電力低減ではなく起動時電力低減としていた。この為、大型2段RO装置への電力低減目的でのインバータ制御適用については制限があった。
【0006】
本発明は、処理水流量を目標流量に安定して維持することができる膜濾過システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は次の通りである。
【0008】
[1] 原水を原水ポンプによって保安フィルタに通水し、該保安フィルタを通過した原水を第1高圧ポンプによって第1RO装置に供給して第1濃縮水と第1透過水とに分離し、第1透過水を第2高圧ポンプによって第2RO装置に供給して第2濃縮水と第2透過水とに分離する膜濾過システムであって、第2透過水の流量検出手段と、該流量検出手段で検出された流量が目標流量となるように前記原水ポンプ、第1高圧ポンプ及び第2高圧ポンプをインバータ制御する制御器とを備えており、該制御器は、上流側のポンプの回転数が下流側のポンプの回転数以上となるように各ポンプを制御する膜濾過システム。
【0009】
[2] 原水を原水ポンプによって保安フィルタに通水し、該保安フィルタを通過した原水を第1高圧ポンプによって第1RO装置に供給して第1濃縮水と第1透過水とに分離し、第1透過水を第2高圧ポンプによって第2RO装置に供給して第2濃縮水と第2透過水とに分離する膜濾過システムの制御方法において、第2透過水の流量が目標流量となるように、かつ上流側のポンプの回転数が下流側のポンプの回転数以上となるように各ポンプをインバータ制御することを特徴とする膜濾過システムの制御方法。
【0010】
[3] 前記原水ポンプ及び第1高圧ポンプの制御周波数をそれぞれ制御範囲内の最大値(以下、maxという。)とし、第2高圧ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程を有する[2]の膜濾過システムの制御方法。
【0011】
[4] 前記第2高圧ポンプの制御周波数が制御範囲内の最小値(以下、minという。)にまで低下しても第2透過水の流量が目標流量を上回るときに、第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、原水ポンプの制御周波数をmaxとし、第1高圧ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程に移行する、[2]又は[3]の膜濾過システムの制御方法。
【0012】
[5] 前記第1高圧ポンプの制御周波数がminにまで低下しても第2透過水の流量が目標流量を上回るときに、第1及び第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、原水ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程に移行する、[2]~[4]のいずれかの膜濾過システムの制御方法。
【0013】
[6] 前記原水ポンプの制御周波数をmaxとし、前記第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、第1高圧ポンプの周波数を制御している状態において、第1高圧ポンプの制御周波数がmaxにまで増加しても第2透過水の流量が目標流量を下回るときに、原水ポンプ及び第1高圧ポンプの制御周波数をmaxとし、第2高圧ポンプの制御周波数を、前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程に移行する、[2]~[5]のいずれかの膜濾過システムの制御方法。
【0014】
[7] 前記第1高圧ポンプ及び第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、原水ポンプの制御周波数を制御している状態において、原水ポンプの制御周波数がmaxにまで増加しても第2透過水の流量が目標流量を下回るときに、原水ポンプの制御周波数をmaxとし、第2高圧ポンプの制御周波数をminとし、第1高圧ポンプの制御周波数を前記第2透過水の流量が目標流量となるように制御する工程に移行する、[2]~[6]のいずれかの膜濾過システムの制御方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の膜濾過システム及びその制御方法によると、上流側ポンプの回転数が常に下流側ポンプの回転数以上となるように各高圧ポンプがインバータ制御されるので、処理水流量を安定して目標流量に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態を示している。原水タンク1内の原水は、原水ポンプ2、配管3、保安フィルタ4、第1高圧ポンプ5、配管6を介して第1RO装置7に供給される。原水としては、工業用水、井戸水、上水或いは工場の工程排水などが例示されるが、これに限定されない。なお、これら原水は凝集処理、除濁処理或いは生物処理などの逆浸透膜処理で通常実施される前処理が適宜実施されている。
【0019】
保安フィルタ4としては、砂濾過器、活性炭濾過器などの各種濾過器のほか、ストレーナ、MF装置、UF装置などが例示される。この実施の形態では、MF膜が用いられている。
【0020】
第1RO装置7の濃縮水は排出ライン8を介して系外に排出される。第1RO装置7の透過水は、第2高圧ポンプ9及び配管10を介して第2RO装置11に送水される。第2RO装置11の濃縮水は、配管12を介して原水槽1に返送される。第2RO装置11の透過水は、配管13を介して処理水として取り出され、純水槽(図示略)へ送水される。
【0021】
配管13に処理水の流量を測定するための流量計14が設置されている。流量計14の検出信号は制御器15に入力される。制御器15は、流量計14の検出流量に基づいて各ポンプ2,5,9の回転数をインバータ制御する。各ポンプ2,5,9には許容される最小回転数及び最大回転数がある。この最小回転数に対応する最小周波数を以下min周波数といい、最大回転数に対応する最大周波数を以下max周波数ということがある。
【0022】
制御器15による制御方法の一例を、
図2を参照して次に説明する。
【0023】
膜濾過システムを設置した直後は、MF膜及びRO膜のフラックスが多いので、まず原水ポンプ2及び第1高圧ポンプ5のインバータ制御周波数をmax周波数に固定し、第2高圧ポンプで第2RO装置10の透過水量制御を行う(ステップS1,S2)。すなわち、流量計14の検出流量が目標流量となるように、第2高圧ポンプ9の制御周波数を制御する。
【0024】
MF膜やRO膜のフラックスが非常に多いために第2高圧ポンプ9の制御周波数がmin周波数に達したときには、ステップS2からステップS3に移り、原水ポンプの制御周波数はmaxのままとし、第2高圧ポンプ9の制御周波数をminに設定し、第1高圧ポンプ5の周波数を制御する。すなわち、流量計14の検出流量が目標流量となるように第1高圧ポンプ5の周波数を制御する(ステップS4)。
【0025】
第1高圧ポンプ5の周波数をmin周波数まで低下させても処理水量(流量計14の検出流量)が余剰の場合、ステップS4からステップS5に進み、第1高圧ポンプ5及び第2高圧ポンプ9の制御周波数をそれぞれmin周波数とし、原水ポンプ2の周波数を、流量計14の検出流量(以下、処理水量又は検出流量ということがある。)が目標流量となるように制御する。
【0026】
このように、処理水量(検出流量)が目標流量を上回るときには、まず最も下流側の第2高圧ポンプ9の回転数をminまで低下させ、それでも処理水量が余剰のときは第2高圧ポンプ9の回転数をminとしたまま第1高圧ポンプ5の制御周波数を、検出流量が目標流量となるように制御し、それでも処理水量が余剰のときには第1及び第2高圧ポンプ5,9の制御周波数をminとしたまま、原水ポンプ2の制御周波数を、検出流量が目標流量となるように制御する。
【0027】
逆に、原水ポンプ2又は第1高圧ポンプ5の制御周波数をmaxまで増大させても、検出流量が目標流量を下回るときには、当該ポンプの制御周波数をmaxとしたまま、一段だけ下流側(後段側)のポンプの周波数を、検出流量が目標流量となるように制御する。
【0028】
例えばステップS5において原水ポンプ2の制御周波数がmaxにまで増加したときには、
図3のように原水ポンプ2の制御周波数をmax、第2高圧ポンプ9の制御周波数をminとし、第1高圧ポンプ5の制御周波数を、検出流量が目標流量となるように制御する(ステップS6→S3)。
【0029】
また、ステップS3において第1高圧ポンプ5の制御周波数がmaxにまで増加したときには、
図4のように、原水ポンプ2及び第1高圧ポンプ5の制御周波数をmaxとし、第2高圧ポンプ9の制御周波数を、検出流量が目標流量となるように制御する(ステップS7→S1)。
【0030】
このように、この実施の形態では、常に、上流側ポンプの制御周波数が下流側のポンプの制御周波数以上となる様に各ポンプのインバータ制御を行う。これは、一般的に上流側の第1RO装置の方が下流側の第2RO装置よりも閉塞しやすく、より大きな膜透過差圧をかける必要があるからである。仮に前述の周波数制御の順を逆にして、第2高圧ポンプ9の揚程が余剰であるとき先に第1高圧ポンプ5の周波数を下げるように制御してしまうと、第2高圧ポンプ9の入口圧が規定圧よりも低下してしまい、第2高圧ポンプ9が停止し、その為処理水流量が極端に低下し、純水槽の水位レベル低下により純水供給ラインが非常停止する事態が起こり得る。
【0031】
このリスクを無くし、安定して効率的に電力費低減を図るには、上記実施の形態の手順により各ポンプの周波数を制御する。
【0032】
なお、本発明において、検出流量が不足することに応じて下流側ポンプの周波数を上げるように制御対象ポンプを切り替える場合、処理水量確保のために、この切り替えは即座に行うことが好ましい。逆に、処理水量余剰で上流側ポンプを周波数制御するように制御対象ポンプを切り替える場合には、処理水余剰が数日から1週間程度継続した後に行うのが好ましい。
【0033】
これにより昼夜や季節の変わり目での水温変化が激しい場合でも、インバータ制御の切り替えをポンプ間で短時間で繰り返すことなく、円滑な制御を維持して目標処理水量を安定して得ることができる。
【0034】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。例えば、
図1では、原水槽1内の原水を原水ポンプ2によって保安フィルタに通水しているが、原水をまず原水ポンプによって保安フィルタに通水してから原水槽に導入し、原水槽内の水を第1高圧ポンプ5で第1RO装置7に供給するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 原水槽
2 原水ポンプ
4 保安フィルタ
5 第1高圧ポンプ
7 第1RO装置
9 第2高圧ポンプ
11 第2RO装置
14 流量計
15 制御器