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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】電圧増幅回路装置及び電圧印加回路
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/42 20060101AFI20220517BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20220517BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20220517BHJP
   H03F 3/45 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H03F1/42
H01L27/04 P
H03F3/45
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018063850
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019176372
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 敬紹
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-207217(JP,A)
【文献】特開昭59-108169(JP,A)
【文献】特開2010-109233(JP,A)
【文献】特開平02-043763(JP,A)
【文献】特開2000-196370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/42
H01L 21/822
H03F 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導体及び第2導体との間に各々誘電体介在している第1抵抗及び第2抵抗を備え、入力電圧を増幅して出力する電圧増幅回路と、
前記電圧増幅回路とは別経路で前記入力電圧が入力され、前記電圧増幅回路の入力と出力との間にオペアンプと直列に接続された第3抵抗及び第4抵抗を含み、前記第1導体に前記第3抵抗の一端が接続され、前記第2導体に前記第4抵抗の一端が接続され、前記第1導体及び前記第2導体に電圧を印加する電圧印加回路と、
を備えた電圧増幅回路装置。
【請求項2】
前記電圧印加回路は、前記第1抵抗及び前記第2抵抗との電位差が減少する電圧を、前記第1導体及び前記第2導体に印加する、
請求項1に記載の電圧増幅回路装置。
【請求項3】
前記電圧増幅回路は、反転電圧増幅回路又は正転電圧増幅回路である、
請求項1又は請求項2に記載の電圧増幅回路装置。
【請求項4】
前記電圧増幅回路として2つ並列に接続された反転電圧増幅回路を備え、
前記2つ並列に接続された反転電圧増幅回路のそれぞれに対応した2つの前記電圧印加回路を備え、
前記2つの電圧印加回路のそれぞれは、対応する前記反転電圧増幅回路の前記第1導体及び前記第2導体に電圧を印加する、
請求項1又は請求項2に記載の電圧増幅回路装置。
【請求項5】
前記第3抵抗と前記第4抵抗との抵抗比は、前記第1抵抗と前記第2抵抗との抵抗比と同じである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電圧増幅回路装置。
【請求項6】
第1導体及び第2導体との間に各々誘電体介在している第1抵抗及び第2抵抗を備え、入力電圧を増幅して出力する電圧増幅回路とは別経路で前記入力電圧が入力され、前記電圧増幅回路の入力と出力との間にオペアンプと直列に接続された第3抵抗及び第4抵抗を含み、前記第1導体に前記第3抵抗の一端が接続され、前記第2導体に前記第4抵抗の一端が接続され、前記第1導体及び前記第2導体に電圧を印加する電圧印加回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧増幅回路装置及び電圧印加回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン系の半導体製造工程では安定した特性を持つ抵抗としてポリシリコン抵抗が良く使われている。図6には、ポリシリコン抵抗R1、R2を備えた電圧増幅回路の一部の断面構造が示されている。電圧増幅回路は、グランドに接続され且つ電気的に固定されたp型基板p-subに形成されている。ポリシリコン抵抗R1、R2は、p型基板p-subの上に、SiO等の絶縁膜を介在させて形成されている。ポリシリコン抵抗R1、R2の抵抗値の調整はAs、P等の不純物イオンを注入することにより行われ、不純物イオンの注入密度が低い場合に抵抗値を高く調整することができる。
【0003】
しかし、ポリシリコン抵抗R1、R2とp型基板p-subとの電位差により、ポリシリコン抵抗R1、R2で励起されるキャリア電荷の数が変動し、ポリシリコン抵抗R1、R2の抵抗値が変化する問題がある。
【0004】
また、図7に、抵抗R3、抵抗R4、及びオペアンプA1による電圧増幅回路が示されている。抵抗R3、抵抗R4は、図6と同様に、p型基板p-subの電位をグランドに接続している。V3、V4の電圧に対しV5はV5=V4+抵抗R4/抵抗R3×(V4-V3)で決まる電圧となる。V3とV5が異なる電圧関係である場合に、抵抗R3の端子とp型基板p-subとの間の電圧と、抵抗R4の端子とp型基板p-subとの間の電圧とが異なるため、抵抗R3と抵抗R4の電圧依存による抵抗値変動に差が生じ、出力電圧の大きさが、設定値から変動し、回路利得の誤差となる。
【0005】
ところで、従来、図8に示すように、ポリシリコン抵抗R3、R4の各々の端子の電位とポリシリコン抵抗R3、R4の各々の下地のp型基板p-subの電位を同等にする技術がある。この技術では、ポリシリコン抵抗R3、R4の各々の下地のp型基板p-subをポリシリコン抵抗R3、R4の各々の端子に接続している。これにより、ポリシリコン抵抗R3、R4の各々の電位とp型基板p-subの電位との間の電位差が無くなり、ポリシリコン抵抗R3、R4の電位の変動時に回路利得が変化することを防止することができる。
【0006】
図8の構成では、ポリシリコン抵抗R3、R4とp型基板p-subとの間に、双方を電極とし且つ双方の間の絶縁膜を誘電体とする寄生容量が生じ、この寄生容量と、ポリシリコン抵抗R3、R4の各々とによりフィルタが生成される。このため、回路の応答速度が低下する問題がある。
【0007】
特許文献1(特に図1)の集積回路では、ポリシリコン抵抗が基板に形成されたウェル領域に接続されている。なお、寄生ダイオードによるリーク電流対策としてウェル電位用抵抗ユニットを設けた実施例(図4)が開示されているが、この構成だと、ウェル領域と基板とのpn接合部に発生する寄生容量によりフィルタが形成されてしまい、動作遅延が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-126068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、上記した点に鑑みてなされたものであり、電圧増幅回路装置における電圧増幅回路の応答速度を従来の技術より向上させることができる、電圧増幅回路装置及び電圧印加回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様の電圧増幅回路装置は、第1導体及び第2導体との間に各々誘電体介在している第1抵抗及び第2抵抗を備え、入力電圧を増幅して出力する電圧増幅回路と、前記電圧増幅回路とは別経路で前記入力電圧が入力され、前記電圧増幅回路の入力と出力との間にオペアンプと直列に接続された第3抵抗及び第4抵抗を含み、前記第1導体に前記第3抵抗の一端が接続され、前記第2導体に前記第4抵抗の一端が接続され、前記第1導体及び前記第2導体に電圧を印加する電圧印加回路と、を備える。
【0011】
本開示の第2の態様の電圧増幅回路装置では、第1の態様において、電圧印加回路は、前記第1抵抗及び前記第2抵抗との電位差が減少する電圧を、前記第1導体及び前記第2導体に印加する。
【0012】
本開示の第3の態様の電圧増幅回路装置では、第1の態様又は第2の態様において、前記電圧増幅回路は、反転電圧増幅回路又は正転電圧増幅回路である。
【0013】
本開示の第4の態様の電圧増幅回路装置は、第1の態様又は第2の態様において、前記電圧増幅回路として2つ並列に接続された反転電圧増幅回路を備え、前記2つ並列に接続された反転電圧増幅回路のそれぞれに対応した2つの前記電圧印加回路を備え、前記2つの電圧印加回路のそれぞれは、対応する前記反転電圧増幅回路の前記第1導体及び前記第2導体に電圧を印加する。本開示の第5の態様の電圧増幅回路装置は、前記第3抵抗と前記第4抵抗との抵抗比は、前記第1抵抗と前記第2抵抗との抵抗比と同じである。
【0014】
本開示の第の態様の電圧印加回路は、第1導体及び第2導体との間に各々誘電体介在している第1抵抗及び第2抵抗を備え、入力電圧を増幅して出力する電圧増幅回路とは別経路で前記入力電圧が入力され、前記電圧増幅回路の入力と出力との間にオペアンプと直列に接続された第3抵抗及び第4抵抗を含み、前記第1導体に前記第3抵抗の一端が接続され、前記第2導体に前記第4抵抗の一端が接続され、前記第1導体及び前記第2導体に電圧を印加する。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、電圧増幅回路装置における電圧増幅回路の応答速度を従来の技術より向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Aを示す図である。
図2】第2の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Bを示す図である。
図3】第3の実施の形態の差動増幅回路装置10Cを示す図である。
図4】第4の実施の形態の正転電圧増幅回路装置10Dを示す図である。
図5】第5の実施の形態の正転電圧増幅回路装置10Eを示す図である。
図6】従来のポリシリコン抵抗R1、R2を備えた電圧増幅回路の一部の断面図である。
図7】従来の抵抗R3、抵抗R4及びオペアンプA1による電圧増幅回路を示す図である。
図8】従来のポリシリコン抵抗R3、R4の各々の電位とポリシリコン抵抗R3、R4の各々の下地のウェル電位とを一定にする電圧増幅回路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、開示の技術の実施形態の一例を図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は適宜省略する。
【0018】
[第1の実施の形態]
図1には、第1の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Aが示されている。反転電圧増幅回路装置10Aは、2つの抵抗R3、R4を備え、入力電圧V3を増幅して出力電圧V5として出力する反転電圧増幅回路を備えている。抵抗R3、R4は、ここではポリシリコン抵抗である。抵抗R3、R4は、図示しないウェル領域の上に、SiO等の絶縁膜を形成し、当該絶縁膜の上に形成されている。抵抗R3、R4では、ポリシリコンに不純物が注入され、抵抗値が調整されている。なお、反転電圧増幅回路を構築する抵抗の個数は2個に限定されない。例えば、1個でも、3個、4個でもよい。他の実施の形態でも同様である。
【0019】
また、第1の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Aは、この反転電圧増幅回路装置10Aとは別経路で入力電圧V3が入力され、抵抗R3、R4の各々の下地となるウェル領域に電圧を印加する電圧印加回路12Aを備えている。電圧印加回路12Aは、抵抗R3とその下地のウェル領域との電位差、抵抗R4とその下地となるウェル領域との電位差がそれぞれなくなる電圧を、下地となるウェル領域にそれぞれ印加する。ここで、抵抗R3の下地となるウェル領域とは、抵抗R3に対向する導体としてのn型ウェル領域であり、p型基板の主面部に形成され、この基板に対してpn接合分離されている。
【0020】
反転電圧増幅回路装置10Aの反転電圧増幅回路は、直列に接続された2つの抵抗R3、R4を備えている。抵抗R3の一方の端子は、入力電圧V3の電圧端子に接続され、抵抗R3の他方の端子は、抵抗R4の一方の端子に接続され、抵抗R4の他方の端子は、出力電圧V5の電圧端子に接続されている。また、反転電圧増幅回路は、抵抗R3の他方の端子と抵抗R4の一方の端子との間が反転入力端子(-)に接続され且つ電圧V4の電圧端子が非反転入力端子(+)に接続されたオペアンプA1を備えている。オペアンプA1の出力端子は、出力電圧V5の電圧端子に接続されている。
【0021】
電圧印加回路12Aは、入力電圧V3の電圧端子が非反転入力端子(+)に接続されたオペアンプA2を備えている。オペアンプA2の出力端子は、オペアンプA2の反転入力端子(-)に接続さている。また、電圧印加回路12Aは、直列に接続された2つの抵抗R3′、R4′を備えている。抵抗R3′の一方の端子は、オペアンプA2の出力端子に接続され、抵抗R3′の他方の端子は、抵抗R4′の一方の端子に接続され、抵抗R4′の他方の端子は、抵抗R4の他方の端子と出力電圧V5の電圧端子との間に接続されている。抵抗R3′、R4′は、ポリシリコン抵抗であり、抵抗R3、R4と同様に形成される。抵抗R3′、R4′の抵抗比と、抵抗R3、R4の抵抗比とは同じである。例えば、R3′=(R3)/2、R4′=(R4)/2である。なお、上記抵抗比はこれに限定されず、例えば、R3′=(R3)/3、R4′=(R4)/3R3′=(R3)/4、R4′=(R4)/4等でもよい。
【0022】
反転電圧増幅回路の抵抗R3、R4及び電圧印加回路12Aの抵抗R3′、R4′の各々は、上記のように図示しない誘電体を介して図示しないウェル領域の上に形成されている。抵抗R3の下地となるウェル領域は、オペアンプA2に接続されている。抵抗R3′の下地となるウェル領域は、オペアンプA2に接続されている。同様に、抵抗R4の下地となるウェル領域は、オペアンプA2に接続されている。抵抗R4′の下地となるウェル領域は、オペアンプA2に接続されている。
【0023】
電圧端子に電圧V3が入力され、入力電圧V3の変動時、オペアンプA2は、電圧V3をバッファ(増幅)し、抵抗R3’及び抵抗R4’により抵抗R3、抵抗R4と同じ電圧を作成し、抵抗R3、抵抗R4の各々の下地となるウェル領域に電圧を印加する。即ち、オペアンプA2は、電圧印加回路12Aとは別経路により、抵抗R3、抵抗R4の各々の下地となるウェル領域に電圧を印加する。このように、オペアンプA2が、抵抗R3’及び抵抗R4’により抵抗R3、抵抗R4と同じ電圧を作成し、抵抗R3、抵抗R4の各々の下地となるウェル領域に電圧を印加すると、抵抗R3とその下地のウェル領域との電位差、抵抗R4とその下地のウェル領域との間の電位差が各々0になる。つまり、抵抗R3と誘電体とウェル領域とにより形成される寄生容量、及び抵抗R4と誘電体とウェル領域とにより形成される寄生容量の生成が抑制又は防止される。
【0024】
このように、抵抗R3と誘電体と抵抗R3の下地のウェル領域とにより形成される寄生容量、及び抵抗R4と誘電体と抵抗R4の下地のウェル領域とにより形成される寄生容量の生成が抑制又は防止されるので、反転電圧増幅回路において抵抗R3及び抵抗R4と寄生容量とによるフィルタが構成されなくなる。このため、反転電圧増幅回路の応答速度は図8の回路と同程度に速くすることができる。
【0025】
また、上記のように、抵抗R3、抵抗R4の各々と、抵抗R3、抵抗R4の各々の下地となるウェル領域との間の電位差が0になるので、抵抗R3、抵抗R4で励起されるキャリア電荷の数の変動を抑制又は防止して、抵抗R3、抵抗R4の抵抗値の変動を抑制又は防止することができる。更に、このように、抵抗R3、抵抗R4の抵抗値の変動が抑制又は防止されるので、回路利得の誤差を小さくすることができる。
【0026】
以上のように第1の実施の形態は、図6の回路に対し精度と応答速度とを向上することができる。
【0027】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態を説明する。図2には、第2の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Bが示されている。第2の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Bは、図1に示した第1の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Aと略同様の構成であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる部分について説明する。
【0028】
図2に示すように、反転電圧増幅回路装置10Bは、2つの抵抗R3、R4を備えた反転電圧増幅回路と、抵抗R3、R4の各々の下地となるウェル領域に電圧を印加する電圧印加回路12Bとを備えている。なお、第1の実施の形態と第2の実施の形態との反転電圧増幅回路は同様の構成であり、第1の実施の形態と第2の実施の形態との電圧印加回路12A、12Bは同様の構成である。
【0029】
図1に示した第1の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Aでは、抵抗R4′の他方の端子は、抵抗R4の他方の端子と出力電圧V5の電圧端子との間に接続されている。これに対し、第2の実施の形態では、電圧印加回路12Bの抵抗R4′の他方の端子と、出力電圧V5の電圧端子及び抵抗R4の他方の端子との間に、オペアンプA3が更に設けられている点で相違している。より詳細には、電圧印加回路12Bの抵抗R4′の他方の端子には、オペアンプA3の出力端子が接続され、オペアンプA3の出力端子は、オペアンプA3の反転入力端子(-)に接続されている。オペアンプA3の非反転入力端子(+)は、抵抗R4の他方の端子と出力電圧V5の電圧端子との間に接続されている。オペアンプA3は、抵抗R4’の他方の端子の端子電圧を出力電圧V5の電圧と同電位に保持する。第2の実施の形態では、オペアンプA3により、電圧印加回路12Bと、抵抗R4の他方の端子及び出力電圧V5の電圧端子との間とを切断し、電流が抵抗R4から抵抗R4′に流入することが防止されている。よって、電流が抵抗R4から抵抗R4′に流入しないようにして、反転電圧増幅回路の応答速度を、第1の実施の形態より、向上させることができる。
【0030】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態を説明する。図3には、第3の実施の形態の差動増幅回路装置10Cが示されている。第3の実施の形態の差動増幅回路装置10Cは、図2に示した第2の実施の形態の反転電圧増幅回路装置10Aと同様の構成を有するので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる部分について説明する。
【0031】
図3に示すように、差動増幅回路装置10Cは、2つの抵抗R9、R10を備えた反転電圧増幅回路、及び、オペアンプA8、抵抗R9′、及びR10′を備え、抵抗R9、R10の下地となるウェル領域に電圧を印加する電圧印加回路12C1を備えている。差動増幅回路装置10Cは、2つの抵抗R11、R12を備えた反転電圧増幅回路、及び、オペアンプA10、抵抗R11′、及びR12′を備え、抵抗R11、R12のウェル領域に電圧を印加する電圧印加回路12C2を備えている。
【0032】
抵抗R9~R12、抵抗R9′~R12′は、ポリシリコン抵抗であり、図示しないウェル領域の上に絶縁膜を介在させて形成されている。抵抗R9′~R12′では、ポリシリコンに不純物が注入され、抵抗値が調整されている。抵抗R9′、R10′の抵抗比と、抵抗R9、R10の抵抗比とは同じである。抵抗R11′、R12′の抵抗比と、抵抗R11、R12の抵抗比とは同じである。
【0033】
なお、第2の実施の形態と第3の実施の形態との反転電圧増幅回路は略同様の構成である。第3の実施の形態では、入力電圧V10、V11用に2つの電圧端子があり、一方の端子に一方の反転電圧増幅回路が接続され、他方の端子に他方の反転電圧増幅回路が接続されている。また、第3の実施の形態では、出力電圧V13、V12用に2つの電圧端子があり、一方の端子に一方の反転電圧増幅回路が接続され、他方の端子に他方の反転電圧増幅回路が接続されている。入力電圧Vinは、V10-V11であり、出力電圧Voutは、V12-V13である。
【0034】
また第3の実施の形態では、2つの反転電圧増幅回路は、出力電圧V13、V12用の2つの電圧端子に、出力端子が接続された1つのオペアンプA7を、共有している。
【0035】
一方の反転電圧増幅回路及び電圧印加回路12C1と、他方の反転電圧増幅回路及び電圧印加回路12C2との各々は、第2の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0036】
[第2の実施の形態及び第3の実施の形態の変形例]
第2の実施の形態(図2参照)ではオペアンプA3を備え、第3の実施の形態(図3参照)ではオペアンプA9、A11を備えているが、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、オペアンプA3、A9、A11の代わりに、コイルを設けてもよい。第2の実施の形態及び第3の実施の形態と同様の作用効果を有する。
【0037】
但し、コイルは大面積を必要とするため、オペアンプに置き換えた第2の実施の形態及び第3の実施の形態の方が、レイアウト面積を縮小しコストを低減することができる。
【0038】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態を説明する。図4には、第4の実施の形態の正転電圧増幅回路装置10Dが示されている。第4の実施の形態の正転電圧増幅回路装置10Dは、2つの抵抗R5、R6を備えた正転電圧増幅回路と、オペアンプA4、抵抗R5′、R6′を備え、抵抗R5、R6の各々の下地となるウェル領域に電圧を印加する電圧印加回路12Dとを備えている。
【0039】
正転電圧増幅回路装置10Dの正転電圧増幅回路は、直列に接続された2つの抵抗R5、R6を備えている。抵抗R5の一方の端子は、入力電圧V6の電圧端子に接続され、抵抗R5の他方の端子は、抵抗R6の一方の端子に接続され、抵抗R4の他方の端子は、グランドに接続されている。抵抗R5の他方の端子と抵抗R6の一方の端子との間は、出力電圧V7の電圧端子が接続されている。よって、第4の実施の形態の正転電圧増幅回路装置10Dの正転電圧増幅回路は、分圧回路であり、回路利得(電圧増幅)の割合は1より小さい。
【0040】
電圧印加回路12Dは、第1の実施の形態の電圧印加回路12Aと略同様の構成であるので、異なる部分のみを説明する。電圧印加回路12Dの抵抗R6′の他方の端子はグランドに接続されている。
【0041】
抵抗R5、R6、抵抗R5′、R6′は、ポリシリコン抵抗であり、図示しないウェル領域の上に、絶縁膜を介在させて形成されている。これらの抵抗R5等では、ポリシリコンに不純物が注入され、抵抗値が調整されている。
【0042】
抵抗R5の下地となるウェル領域は、抵抗R5′の一方の端子に接続されている。抵抗R5′の下地となるウェル領域は、抵抗R5′の一方の端子に接続されている。抵抗R6の下地となるウェル領域は、抵抗R6′の一方の端子に接続されている。そして、抵抗R6′の下地となるウェル領域は、抵抗R6′の一方の端子に接続されている。
【0043】
抵抗R5′、R6′の抵抗比と、抵抗R5、R6の抵抗比とは同じである。
【0044】
第4の実施の形態でも、分圧される点を除くと、第1の実施の形態と同様の作用、効果を有する。即ち、第4の実施の形態でも、入力電圧V6の変動時、応答の遅れによる電圧誤差はV6の変動幅に比べ小さいため、抵抗R5、抵抗R6抵抗値の電圧依存誤差は早期に縮小する。また抵抗R5、抵抗R6の経路の応答速度は下地応答より速く収束する。
【0045】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態を説明する。図5には、第5の実施の形態の正転電圧増幅回路装置10Eが示されている。第5の実施の形態の正転電圧増幅回路装置10Eは、入力電圧V8の電圧端子に非反転入力端子(+)が接続されたオペアンプA5、2つの抵抗R7、R8を備えた正転電圧増幅回路、及び抵抗R7、R8の各々の下地となるウェル領域に電圧を印加する電圧印加回路12Eを備えている。
【0046】
オペアンプA5の出力端子は、出力電圧V9の電圧端子と、抵抗R7の一方の端子とに接続されている。抵抗R7の他方の端子は、抵抗R8の一方の端子に接続され、抵抗R8の他方の端子がグラウンドに接続されている。抵抗R7の他方の端子と抵抗R8の一方の端子との間は、オペアンプA5の反転入力端子(-)に接続されている。オペアンプA5の出力端子は、電圧印加回路12EのオペアンプA6の非反転入力端子(+)に接続されている。
【0047】
正転電圧増幅回路装置10Eの正転電圧増幅回路の利得は1より大きい。
【0048】
電圧印加回路12Eは、第4の実施の形態の電圧印加回路12Dと同様である。電圧印加回路12EのオペアンプA6、抵抗R7′、抵抗8′は、第4の実施の形態の電圧印加回路12DのオペアンプA4、抵抗R5′、抵抗6′に対応する。
【0049】
第5の実施の形態でも、抵抗7、抵抗8の各々の下地となるウェル領域への電圧印加については、第4の実施の形態と同様の作用、効果を有する。即ち、第5の実施の形態でも、入力電圧V8の変動時、応答の遅れによる電圧誤差はV8の変動幅に比べ小さいため、抵抗R7、抵抗R8抵抗値の電圧依存誤差は早期に縮小する。また抵抗R7、抵抗R8の経路の応答速度は下地応答より速く収束する。
【0050】
[その他の変形例]
以上説明した各例では、抵抗は、ポリシリコン抵抗として形成され、1つの共通の基板
に形成されたウェル領域の上に誘電体を介在させて形成されている。
本開示の技術は、これに限定されない。例えば、基板にn型基板を使用することができる。この場合、ウェル領域はp型とされ、基板とウェル領域とは逆バイアスとなる調整がなされる。
また、1つの共通の基板が複数の抵抗毎にアイソレーション構造により相互に電気的に分離され、この分離された領域毎に誘電体を介在させて抵抗が設けられてもよい。アイソレーション構造には、トレンチ及びトレンチ内に絶縁体が埋め込まれたトレンチ分離構造を実用的に使用することができる。
また、抵抗は、ポリシリコン抵抗に限定されるものではなく、他の材料、具体的には、高融点金属とシリコンとの化合物であるシリサイド、高融点金属を抵抗材料として使用してもよい。抵抗は、単層構造に限られるものではなく、例えばシリコン膜上にシリサイド膜を積層した複合層構造であってもよい。
また、誘電体は、シリコン酸化膜に限らず、シリコン窒化膜であっても、更にシリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを積層した複合膜であってもよい。
勿論、基板は、シリコン基板に限定されない。例えば、シリコン基板上に絶縁体を介在させてシリコン層が形成されたSOI基板が使用されてもよい。加えて、III-V族化合物半導体基板であってもよい。
さらに、抵抗は、シリコン基板に形成された半導体領域(拡散層)を用いて形成されてもよい。この場合、半導体領域上に誘電体を介在させて導体が設けられ、この導体に電圧印加回路から電圧が印加される構成とされる。導体として、上記のポリシリコン、シリサイド等を実用的に使用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10A、10B 反転電圧増幅回路装置
10C 差動増幅回路装置
10D、10E 正転電圧増幅回路装置
12A、12B、12C1、12C2、12D、12E 電圧印加回路
図1
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図8