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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】光学測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20220517BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01B11/24 K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018129807
(22)【出願日】2018-07-09
(65)【公開番号】P2020008430
(43)【公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】金原 圭吾
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-286244(JP,A)
【文献】特開2014-048203(JP,A)
【文献】特開昭61-034407(JP,A)
【文献】特開平08-247722(JP,A)
【文献】特開2000-088528(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0330913(US,A1)
【文献】特表昭62-502707(JP,A)
【文献】特開平11-063622(JP,A)
【文献】特開2006-112966(JP,A)
【文献】特開2015-125760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/01,21/17-21/61,
G01N 15/06,
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物が配置される測定空間へ照射光を照射する照射部と、
前記測定空間を通過する前記照射光を検出する検出部と、
前記検出部による検出結果に基づいて前記対象物の形状を測定する測定部と、
前記対象物の形状を測定する測定フェーズで検出された前記検出結果と、非測定フェーズで検出された前記検出結果とに基づいて、前記測定フェーズにおける前記測定空間の塵埃による汚染度を判定する判定部と
を具備する光学測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光学測定装置であって、
前記検出部は、前記測定空間を通過する前記照射光を受光することで、前記照射光の画像信号を生成する受光素子を有し、
前記判定部は、前記測定フェーズ及び前記非測定フェーズの各々で生成された前記照射光の画像信号に基づいて、前記汚染度を判定する
光学測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学測定装置であって、
前記判定部は、前記受光素子により生成された前記画像信号に基づいて前記画像信号の明るさを表す受光量を算出し、前記算出された受光量に基づいて前記汚染度を判定する
光学測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光学測定装置であって、
前記判定部は、
前記測定フェーズで連続的に生成された複数の画像信号間の前記受光量の差分に基づいて受光量変動値を算出し、
前記非測定フェーズで連続的に生成された複数の画像信号間の前記受光量の差分に基づいて基準変動値を算出し、
前記基準変動値に対する前記受光量変動値の差分に基づいて前記汚染度を判定する
光学測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光学測定装置であって、
前記判定部は、前記基準変動値に対する前記受光量変動値の差分が大きくなるに従い、前記汚染度が高いと判定する
光学測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の光学測定装置であって、
前記判定部は、
前記受光量変動値が、前記基準変動値に基づいて設定された閾値以上であるか否か判定し、
前記閾値以上である場合に、第1の汚染度であると判定し、
前記閾値未満である場合に、前記第1の汚染度よりも低い第2の汚染度であると判定する
光学測定装置。
【請求項7】
請求項4から6のうちのいずれか一項に記載の光学測定装置であって、
前記判定部は、
前記非測定フェーズにおいて連続的に生成された前記複数の画像信号間の前記受光量の差分の平均値を、前記基準変動値として算出する
光学測定装置。
【請求項8】
請求項3から7のうちのいずれか一項に記載の光学測定装置であって、
前記受光素子は、二次元的に配列された複数の画素を有する二次元イメージセンサを含み、
前記受光量は、前記二次元イメージセンサの所定領域内に配列された複数の画素における受光強度の合計値として算出される
光学測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の光学測定装置であって、
前記受光素子は、前記対象物を撮像可能な受光面を有し、
前記受光面は、前記所定領域を含む
光学測定装置。
【請求項10】
請求項3から9のうちのいずれか一項に記載の光学測定装置であって、
前記受光量は、前記生成された画像信号の輝度値の情報を含む
光学測定装置。
【請求項11】
請求項1から10のうちのいずれか一項に記載の光学測定装置であって、
前記非測定フェーズでは、前記対象物が前記測定空間に配置された状態で前記検出結果が出力される
光学測定装置。
【請求項12】
請求項1から11のうちのいずれか一項に記載の光学測定装置であって、
前記判定された汚染度の結果を出力する出力部をさらに具備する
光学測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物に光を投射して、イメージセンサでその透過光又は反射光を受けて受光量分布を測定することで、測定対象物の寸法、位置、形状等を測定する光学測定装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1のイメージセンサ及び第2のイメージセンサから検出される受光量分布に基づいて、測定空間内に配置された測定対象物のエッジ位置を検出することが可能な光学測定装置が記載されている。この光学測定装置では、第1のイメージセンサ及び第2のイメージセンサの光軸方向における焦点位置が異なることを利用して、測定対象物の位置を検出し、測定対象物のエッジ位置を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-6134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の光学測定装置では、測定空間の状況については考慮されていない。これにより、測定空間の状況によっては、同一の測定対象物を繰り返し測定した場合に十分な測定精度を得られないことがあり、測定値の信頼性を高めることが難しかった。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、測定値の信頼性を高めることが可能な光学測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る光学測定装置は、照射部と、検出部と、測定部と、判定部と、を具備する。
上記照射部は、対象物が配置される測定空間へ照射光を照射する。
上記検出部は、上記測定空間を通過する上記照射光を検出する。
上記測定部は、上記検出部による検出結果に基づいて上記対象物の形状を測定する。
上記判定部は、上記対象物の形状を測定する測定フェーズで検出された上記検出結果と、非測定フェーズで検出された上記検出結果とに基づいて、上記測定フェーズにおける上記測定空間の塵埃による汚染度を判定する。
【0008】
この光学測定装置では、測定空間へ測定光が照射され、測定空間を通過した測定光が検出される。この検出結果を使って、測定空間に配置される対象物の形状が測定される。また対象物の形状を測定する測定フェーズ、及び非測定フェーズの検出結果から、測定フェーズでの測定空間の塵埃による汚染度が判定される。これにより、測定空間の環境の変化等を検出することが可能となり、測定値の信頼性を高めることが可能となる。
【0009】
上記検出部は、上記測定空間を通過する上記照射光を受光することで、上記照射光の画像信号を生成する受光素子を有し、
上記判定部は、上記測定フェーズ及び上記非測定フェーズの各々で生成された上記照射光の画像信号に基づいて、上記汚染度を判定してもよい。
上記構成では、受光素子により生成された画像信号を用いて塵埃による汚染度を検出できる。画像信号を用いることにより、判定空間の汚染度を精度よく判定することができる。
【0010】
上記判定部は、上記受光素子により生成された上記画像信号に基づいて上記画像信号の明るさを表す受光量を算出し、上記算出された受光量に基づいて上記汚染度を判定してもよい。
上記構成では、受光素子が得た受光量の情報を用いて塵埃による汚染度を検出できる。これにより、判定部による画像処理の負担を低減することができる。
【0011】
さらに、上記判定部は、
上記測定フェーズで連続的に生成された複数の画像信号間の上記受光量の差分に基づいて受光量変動値を算出し、
上記非測定フェーズで連続的に生成された複数の画像信号間の上記受光量の差分に基づいて基準変動値を算出し、
上記基準変動値に対する上記受光量変動値の差分に基づいて上記汚染度を判定してもよい。
上記構成では、判定部が、測定フェーズにおける各画像信号間の受光量変動値と、非測定フェーズにおける基準変動値と、を比較して汚染度を判定する。受光量の変動値を用いることにより、測定空間の環境に変化が生じたことを精度よく検出することができる。
【0012】
より具体的には、上記判定部は、上記基準変動値に対する上記受光量変動値の差分が大きくなるに従い、上記汚染度が高いと判定してもよい。
上記構成により、対象物とは別に測定空間の一部が遮蔽されたことを検出できる。つまり、測定空間に塵埃が存在することを検出することができ、汚染度の判定が容易になる。
【0013】
この場合、上記判定部は、
上記受光量変動値が、上記基準変動値に基づいて設定された閾値以上であるか否か判定し、
上記閾値以上である場合に、第1の汚染度であると判定し、
上記閾値未満である場合に、上記第1の汚染度よりも低い第2の汚染度であると判定してもよい。
上記構成により、汚染度を数値化し、ユーザに対して汚染度の判定結果を明確に提示することができる。
【0014】
また、上記判定部は、
上記非測定フェーズにおいて連続的に生成された上記複数の画像信号間の上記受光量の差分の平均値を、上記基準変動値として算出してもよい。
上記構成により、適切な基準値を設定することができる。
【0015】
また、上記受光素子は、二次元的に配列された複数の画素を有する二次元イメージセンサを含み、
上記受光量は、上記二次元イメージセンサの所定領域内に配列された複数の画素における受光強度の合計値として算出されてもよい。
これにより、各画素に対する処理負担を削減し、処理速度を向上させることができる。
【0016】
またこの場合、上記受光素子は、上記対象物を撮像可能な受光面を有し、
上記受光面は、上記所定領域を含んでいてもよい。
これにより、上記判定部が形状測定時のデータを用いて汚染度を判定でき、処理負担をさらに軽減できる。
【0017】
上記受光量は、上記生成された画像信号の輝度値の情報を含んでいてもよい。
これにより、画像信号の受光量を容易に数値化でき、上記判定部の画像処理負担を軽減することができる。
【0018】
上記非測定フェーズでは、上記対象物が上記測定空間に配置された状態で上記検出結果が出力されてもよい。
これにより、非測定フェーズから測定フェーズへの移行が円滑になる。
【0019】
上記光学測定装置は、
上記判定された汚染度の結果を出力する出力部をさらに具備してもよい。
これにより、上記光学測定装置がユーザに対して汚染度の結果を出力することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、測定値の信頼性を高めることが可能な光学測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る光学測定装置の構成例を示す図である。
図2】上記光学測定装置の構成を示すブロック図である。
図3】上記光学測定装置の受光素子の一構成例を示す平面図である。
図4】上記光学測定装置の動作例を示すフローチャートである。
図5】画像信号が撮像された上記受光素子のイメージ図である。
図6】上記光学測定装置の判定部の動作例を示すフローチャートである。
図7】上記判定部による汚染度判定処理において算出される各値と判定結果との関係を視覚的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0023】
[光学測定装置の基本構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る光学測定装置100の構成例を示す図である。図2は、光学測定装置100の構成を示すブロック図である。
光学測定装置100は、照射部10と、検出部20と、測定部30と、判定部40と、出力部50と、入力部60と、を備える。測定部30、判定部40、出力部50及び入力部60は、本実施形態において制御装置70を構成する。
【0024】
光学測定装置100は、照射部10と検出部20との間の測定空間Sに対象物Pを配置し、対象物Pの形状を測定することが可能に構成される。ここでいう対象物Pの形状とは、対象物の外径、幅、膜厚、隙間の寸法等、対象物Pの平面形状に関する情報をいう。さらに、光学測定装置100では、後述する測定フェーズにおける測定空間Sの塵埃による汚染度も判定することができる。
【0025】
照射部10は、測定される対象物Pが配置された測定空間Sへ照射光Lを照射する。
検出部20は、測定空間Sを通過する照射光Lを検出する。測定空間Sを通過する照射光Lは、対象物Pによって一部遮られる。このため、検出部20は、対象物Pの形状に応じたパターンの照射光を検出することができる。
測定部30は、検出部20による検出結果に基づいて対象物Pの形状を測定する。
判定部40は、後述する測定フェーズにおける測定空間Sの塵埃による汚染度を判定する。
出力部50は、判定された汚染度の結果及び形状の測定結果を出力する。
入力部60は、光学測定装置100の起動及び停止、並びに測定の開始及び各種設定値の入力等の、ユーザによる入力操作を受け付ける。
【0026】
[光学測定装置の各部の構成]
(照射部)
図2に示すように、照射部10は、光源11と、拡散部12と、投光レンズ13と、を有する。照射部10の各構成は、例えば第1の筐体C1内に配置されている。
光源11は、照射光を出射可能なレーザ光源、LED(Light Emitting Diode)光源等で構成される。
拡散部12は、光源11から出射された照射光Lを等方的に拡散することが可能な拡散板等の光学部品で構成される。
投光レンズ13は、例えば拡散された照射光Lを平行光とし、測定空間Sに向かって投射する。
【0027】
(測定空間)
測定空間Sは、照射部10と検出部20との間の、対象物Pが配置される空間である。測定空間Sには、対象物Pの測定箇所が照射光Lの光軸と交差する(典型的には直交する)ように対象物Pが配置される。図1及び2に示す例において、対象物Pは、一軸方向に長手を有する棒状物であって、照射光Lの光軸と当該長手方向が直交するように測定空間S内に配置されている。
測定空間Sは、例えば開放された空間として構成される。これにより、光学測定装置100を大型化することなく、一軸方向に長い線状物や棒状物の外径の連続測定や、膜状物の厚みムラの測定等、多様な測定態様を実現することができる。測定空間Sには、対象物Pを支持するための図示しない測定台や治具等が設置されていてもよい。
【0028】
(検出部)
検出部20は、光学系21と、受光素子22と、を有する。検出部20の各構成は、例えば図1に示す第2の筐体C2内に配置されている。第2の筐体C2は、例えばベースBによって第1の筐体C1と接続されている(図1参照)。これにより、ベースB上の空間が測定空間Sとして規定される。
【0029】
光学系21は、測定空間Sを通過した照射光Lを受光素子22へと導光する。
光学系21は、例えば、第1のレンズ23と、絞り24と、第2のレンズ25と、を有する。
第1のレンズ23は、例えば集光レンズとして構成される。
絞り24は、開口を有し、第1のレンズ23によって集光された照射光Lを通過させる。
第2のレンズ25は、絞り24を通過した照射光Lを平行光にし、受光素子22へ向かって照射光Lを出射する。
光学系21は、例えば両側テレセントリック光学系として構成される。これにより、対象物Pの光軸方向の位置がばらついた場合でも、受光素子22における像の寸法変動を回避することができる。なお、光学系21の構成は上記に限定されない。
【0030】
図3は、受光素子22の一構成例を示す平面図である。
受光素子22は、測定空間Sを通過する照射光Lを受光することで、照射光Lの画像信号を生成する。すなわち受光素子22は、受光した照射光Lに基づく画像信号を撮像する。
図3に示す例では、受光素子22は、二次元的に配列された複数の画素27を有する二次元イメージセンサを含んでいる。二次元イメージセンサとしては、二次元CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサ、二次元CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等が挙げられる。
【0031】
受光素子22は、X軸方向及びY軸方向に画素27が配列された受光面26を有し、受光面26において各画素27が受光した照射光Lの情報を、電気的な画像信号として出力する。
ここでいう画素27とは、受光した光に基づいて電気的な信号を出力可能な単位素子をいい、本実施形態では、複数の画素27の集合体を受光素子22と定義する。
受光面26は、受光素子22の撮像可能な領域である。受光面26は、汚染度判定の処理に供される信号を出力する画素27の範囲として、判定領域Rを含む。
画像信号は、例えば各画素27における受光強度に応じて出力される電気的な信号である。「1回の撮像で出力された画像信号」は、判定領域R内の全画素27から、1ショット又は1スキャンで出力された電気的な信号のセットと定義する。
【0032】
(制御装置)
制御装置70は、測定部30と、判定部40と、出力部50と、入力部60と、を有する。制御装置70の各構成は、例えば第3の筐体C3内に配置されている。制御装置70は、図1に示すように、照射部10及び検出部20とケーブルによって接続されていてもよいし、無線によって接続されていてもよい。あるいは、制御装置70は、照射部10及び検出部20と一体に構成され、同一のベース上又は筐体内に配置されていてもよい。
【0033】
測定部30及び判定部40は、本実施形態において、CPU71(Central Processing Unit)によって実現される。
CPU71は、制御装置70内のメモリ72と協働し、測定部30及び判定部40の各処理を実行する。CPU71は、演算結果をメモリ72に記憶するとともに、必要な情報をメモリ72から読み出す。
メモリ72は、光学測定装置100の記憶部として構成され、画像信号、測定結果及び判定結果等を記憶する。メモリ72は、さらに、測定部30及び判定部40の各処理を実行するためのプログラムを記憶していてもよい。
さらに、制御装置70は、画像信号をデジタル信号に変換してCPU71に出力するA/D変換器73を有していてもよい。
【0034】
出力部50は、例えば、ディスプレイ51と、外部出力端子52と、を有する。
ディスプレイ51は、例えば液晶ディスプレイ等として構成され、光学測定装置100における各種の設定内容、データ、測定の進捗状況、測定結果やユーザの操作に供する情報を表示することができる。
外部出力端子52は、各種のデータや測定結果などを光学測定装置100の外部に出力するための構成であり、USB(Universal Serial Bus)ポートなどの各種の構成を採り得る。
出力部50の構成は上記に限定されず、例えば測定結果及び判定結果を印刷するプリンタ等を含んでいてもよい。
【0035】
入力部60は、光学測定装置100に各種のデータやコマンドを与えるための装置として構成され、入力ボタン、フットスイッチ、ジョイスティック、キーボード、マウス、USBポートなどの各種の構成を採り得る。
【0036】
[光学測定装置の動作]
図4は、光学測定装置100(CPU71)の動作例を示すフローチャートである。
ここでは、図1に示すように、棒状の対象物Pを光学測定装置100の測定空間Sに配置し、対象物Pの外径を測定する例を示す。
CPU71は、一定時間の非測定フェーズを有し、その後、測定フェーズに移行して対象物Pの形状の測定を行う。非測定フェーズについては後述し、まず、測定フェーズにおけるCPU71(測定部30)の動作例を説明する。
【0037】
(測定部の動作例)
測定部30(CPU71)は、検出部20の検出結果として、受光素子22によって生成された画像信号を取得する(S11)。
【0038】
続いて測定部30は、上記画像信号に基づいて、測定空間Sに配置された対象物Pの形状を測定する(S12)。測定部30は、例えば、各画素27の受光強度の面内分布に基づいて、測定空間Sに配置された対象物Pの形状を測定する。
受光強度は、輝度値として数値化することができ、例えば64階調、256階調等の値を採り得る。これにより、各画素27から出力された信号に基づいて受光強度を容易に数値化することができる。
【0039】
図5は、画像信号が撮像された受光素子22のイメージ図である。図中のX軸方向及びY軸方向は、図3に示すX軸方向及びY軸方向に対応する。なお、図5では、判定領域Rの四隅の画素27a,27b,27c,27d以外の画素27の図示を省略している。
【0040】
測定部30の測定原理について説明する。
まず、図1に示すように、測定空間Sに対象物Pが配置されると、平行光として照射された照射光Lの一部が対象物Pによって遮られる。これにより、対象物Pの配置される領域に対応する画素27と、配置されない領域に対応する画素27とで、受光強度に大きな差異が生じる。つまり、図5に示すように、対象物Pの形状に対応する像Pgが受光強度の低い領域(陰影)として検出される。
測定部30は、画像信号Gに対してエッジ検出処理等を行うことで像Pgの輪郭を検出し、検出されたエッジ位置に基づいて、対象物Pの寸法を算出することが可能となる。
【0041】
算出された対象物Pの測定結果は、出力部50に出力され(S13)、例えばディスプレイ51に表示される。また、測定結果は、外部出力端子52を介してPC(Personal Computer)等の外部機器に記憶され、表示されてもよい。なお、出力部50への測定結果の出力は、入力部60に対する入力操作に応じて行われてもよいし、自動的に行われてもよい。
【0042】
S11~S13の測定処理は、同一の対象物Pに対して例えば複数回行われる。これにより、対象物を繰り返し測定した場合の測定精度(以下、繰り返し精度と称する)等を算出し、測定値の信頼性を確保することができる。
【0043】
一方で、従来、測定処理において所望の繰り返し精度を得られないことがあった。この要因として、測定空間S内の環境の変動が考えられる。例えば、測定空間Sに塵埃が分布した場合、乱反射や光路の遮断によって受光強度に影響が生じる。特に、測定空間Sが開放空間の場合、多様な測定物を測定できる一方で、測定空間Sが外部からの塵埃の影響を受けるリスクが高まる。
【0044】
そこで、本実施形態では、判定部40が測定空間Sの塵埃による汚染度を判定することで、測定時における測定空間Sの環境変動を的確に把握し、測定値の信頼性を向上させることができる。以下、判定部40の基本的な動作例について説明する。
【0045】
(判定部の基本的な動作例)
判定部40は、測定フェーズ及び非測定フェーズの各々で生成された照射光Lの画像信号に基づいて、汚染度を判定する。具体的には、後述する画像信号の受光量を用いて、測定空間Sの汚染度の判定処理が実行される。
判定部40(CPU71)は、測定フェーズの前の非測定フェーズにおいて、検出部20の検出結果としての画像信号を取得する(S21)。非測定フェーズでは、判定部40により汚染度の判定のためのリファレンスデータが算出される。このため、非測定フェーズでは、リファレンスデータの取得に適した特性(繰り返し精度等)が得られるように、測定空間Sを清浄に維持することが好ましい。なお、ここで取得された画像信号は、測定部30における、例えば繰り返し精度の算出等の処理に用いられてもよいが、ここでは説明を省略する。
【0046】
続いて判定部40は、受光素子22により生成された画像信号に基づいて画像信号の明るさを表す受光量を算出する(S22)。
受光量は、本実施形態において、判定領域R内の画素27各々で検出された受光強度の総和として算出される。算出された受光量は、主に照射光Lの判定領域Rへの入射量に基づく値であるが、測定空間Sが開放空間の場合には、例えば外光の入射量を含んでいてもよい。
【0047】
判定部40は、この受光量に基づいて、汚染度を判定するために用いられるリファレンスデータを生成する(S23)。リファレンスデータは、本実施形態において、所定回数繰り返し生成された画像信号から検出された受光量の平均値として算出される。
受光量の算出(S22)及びリファレンスデータの生成(S23)の詳細な処理については後述する。
【0048】
続いて、測定フェーズに移行し、判定部40は、測定部30と同様に画像信号を取得し、検出結果を取得する(S11)。この画像信号は、本実施形態において、測定部30の処理に供される画像信号と同一である。
【0049】
判定部40は、測定フェーズにおいても、非測定フェーズと同様に、画像信号に基づいて当該画像信号の受光量を算出する(S24)。
【0050】
そして、判定部40は、測定フェーズ及び非測定フェーズの各々で生成された画像信号の明るさを表す受光量に基づいて汚染度を判定する(S25)。非測定フェーズで算出された受光量のデータとしては、S23で算出されたリファレンスデータが用いられる。
【0051】
判定された汚染度は、出力部50に出力され(S26)、例えばディスプレイ51に表示される。また、汚染度は、外部出力端子52を介してPC等の外部機器に記憶され、当該外部機器にディスプレイ等に表示されてもよい。
【0052】
このように、本実施形態では、非測定フェーズと測定フェーズとにおける検出部20の検出結果を比較することで、測定フェーズにおける測定空間の塵埃による汚染度を判定することができる。
【0053】
ここでいう汚染度は、塵埃による測定空間Sの汚染度であり、測定空間S内における塵埃の分布量を示す指標である。測定空間Sにおける塵埃の分布は、測定空間S周囲の空気の流れや作業状況によって時間的に変化し得る。測定空間Sに多くの塵埃が流入した場合、これらの塵埃によって照射光Lの乱反射や遮断が発生し、検出部20の検出結果に影響が生じる。
【0054】
そこで、測定空間Sが清浄とみなされる非測定フェーズと、対象物Pの形状測定を行う測定フェーズと検出部20の検出結果の差異を利用することで、形状測定中の測定空間Sへの塵埃の流入を的確に把握することができる。したがって、測定空間の状況や測定データの見直しを効率的に行うことができ、測定データの信頼性を高めることができる。
【0055】
例えば、対象物Pの寸法測定の結果が不良と判定されても、測定時の汚染度が高かった場合には、再度清浄な環境で測定を行うことができる。この結果、当初の判定が覆り良品と判定されることもあり得るため、歩留まりを向上させることができる。
【0056】
さらに、検出部20の検出結果として、画像信号の明るさを表す受光量を用いて汚染度を判定することができる。
例えば、測定空間Sへの塵埃の流入に伴い、判定領域Rの受光量がある一定時間の間増加し続ける、又は減少し続けるといった現象が起こり得る。このような受光量の変動を検出することで、塵埃によって生じた照射光Lの乱反射や遮断の影響を捉え、的確な汚染度の判定を行うことができる。
【0057】
また、複雑な画像処理を必要としないため、判定部40の処理負担を抑えることができる。さらに、汚染度の判定のための追加のハードウェアを必要とせず、装置構成の複雑化を防止できる。したがって、汚染度の判定処理に伴う製造コストの上昇を抑えることができる。
【0058】
[判定部の詳細な動作例]
図6は、判定部40の詳細な動作例を示すフローチャートである。
ここでは、判定部40によって繰り返し画像信号が取得される例を示し、より具体的な判定部40の処理について説明する。
【0059】
まず非測定フェーズにおいて、判定部40が画像信号を取得する(S21-1)。このとき、測定空間Sには、測定フェーズにおいて測定予定の対象物Pが配置された状態でもよい。CPU71は、カウンタによって、非測定フェーズにおける画像信号の生成回数kのカウントを開始する(後述する図7の最上段参照)。
【0060】
そして、判定部40は、画像信号に含まれる各画素27の受光強度の情報に基づいて、画像信号の受光量を算出する(S22-1)。
【0061】
図5を参照し、受光量の算出方法について説明する。
受光面26における判定領域Rは、上述のように、判定処理に供される画像信号を出力する画素27を含む領域である。判定領域Rは、対象物Pの像pgが検出される領域を含んでいればよく、例えば受光面26の中央部を占める。
判定領域Rにおいて、各画素27の位置座標(n,m)を定義する。nはX軸方向の位置を表す自然数であり、0以上Nmax以下の値を採り得る。mはY軸方向の位置を表す自然数であり、0以上Ymax以下の値を採り得る。つまり、判定領域Rには、X軸方向に(Nmax+1)個、Y軸方向に(Mmax+1)個の画素27が並んでいる(Nmax,Mmaxは自然数)。
例えば、4隅の画素27a,27b,27c,27dの位置座標は、画素27aが(0,0),画素27bが(Nmax,0),画素27cが(0,Mmax),画素27dが(Nmax,Mmax)と表される。
【0062】
各画素27は、上述のように、受光強度に応じた電圧値の信号を出力する。判定部40は、この電圧値を所定の階調の輝度値に変換する。各フェーズでの画像信号の生成開始からk番目(kは自然数)に生成(撮像)された画像信号の、画素(n,m)における輝度値をLum(k,n,m)と定義する。例えば、k番目に生成した画像信号における、画素27aの輝度値はLum(k,0,0)、画素27bの輝度値はLum(k,Nmax,0)、画素27cの輝度値はLum(k,0,Mmax)、画素27dの輝度値はLum(k,Nmax,Mmax)と定義される。
【0063】
S22(S22-1,S22-2)において、受光量は、判定領域R内に配列された複数の画素27における受光強度(輝度値)の合計値LumTotal(k)として算出される。つまり、LumTotal(k)は、以下の式(1)で表される。
【数1】
【0064】
受光量の算出後(S22-1)、判定部40は、連続的に画像信号を生成する(S21-2)。連続して画像信号を生成するタイミングは限定されず、例えば数千分の1~数分の1秒程度に設定される。
そして、判定部40は、S22-1と同様に画像信号の受光量を算出する(S22-2)。
【0065】
続いて、判定部40は、連続的に生成された複数の画像信号間の受光量の差分に基づいて、受光量変動値ΔLumTotal(k)を算出する(S23-1)。
受光量変動値ΔLumTotal(k)は、k回目に生成された画像信号の受光量LumTotal(k)及び(k-1)回目に生成された画像信号の受光量LumTotal(k-1)の差分であり、以下の式(2)で表される。
【数2】
なお、受光量変動値ΔLumTotal(k)は、受光量LumTotal(k)及びLumTotal(k-1)の差分の絶対値であってもよい。
【0066】
判定部40は、カウンタの情報を参照し、画像信号がkinitialmax回生成されたか否か判定し(S23-2)、生成回数がkinitialmax回に到達していない場合(S23-2でN)、連続して画像信号を生成する(S21-2)。本実施形態では、非測定フェーズにおいて画像信号がkinitialmax回生成され、S21-2からS23-1の処理が(kinitialmax-1)回繰り返される。但し、kinitialmaxは2以上の自然数とし、本実施形態では予め設定された値とする。
【0067】
S23-2において、生成回数がkinitialmax回に達したと判定された場合(S23-2でY)、非測定フェーズにおいて連続的に検出された複数の画像信号間の受光量の差分ΔLumTotal(k)を合計する(S23-3)。
【0068】
そして、判定部40は、ΔLumTotal(k)の合計値を、差分の算出回数である(kinitialmax-1)回で除し、受光量の差分ΔLumTotal(k)の平均値を算出する(S23-4)。この平均値は、基準変動値LumInitialAverageと定義され、以下の式(3)で表される。
【数3】
【0069】
このように、本実施形態の非測定フェーズでは、受光量に関するリファレンスデータとして、画像信号間の受光量の差分の平均値である基準変動値LumInitialAverageを算出する。算出された基準変動値LumInitialAverageは、例えばメモリ72に記憶される。
【0070】
図7は、汚染度判定処理において算出される各値と判定結果との関係を視覚的に説明するための図である。図7の最上段は、各フェーズの開始からの各画像信号の生成回数kを示し、2段目以降は、各画像信号に対応する処理値や判定結果を示す。図7の各グラフにおいて、横軸は時間軸を示し、縦軸は輝度値を示す。
【0071】
図7の2段目は、各画像信号に対応する受光量LumTotal(k)を示す棒グラフである。同グラフを参照し、S23-1では、k番目の受光量LumTotal(k)とこれに隣接する(連続する)(k-1)番目の受光量LumTotal(k-1)との差分を算出する。この差分が、3段目のグラフに示す受光量変動値ΔLumTotal(k)に相当する。
また、3段目の受光量変動値ΔLumTotal(k)の、1番目からkinitialmax番目までの平均値が、実線で示す基準変動値LumInitialAverageに相当する。
【0072】
このように、測定空間Sが清浄な状態における受光量変動値ΔLumTotal(k)の平均値をリファレンスデータとすることで、続く測定フェーズにおける汚染度判定処理において、各画像信号間における受光量の変動を容易に検出することができる。したがって、受光量の変動値から汚染度を精度よく判定することができる。
【0073】
また、本実施形態では、非測定フェーズにおいて、対象物Pが測定空間Sに配置された状態でリファレンスデータを算出することができる。このため、非測定フェーズから測定フェーズへ円滑に移行することができ、例えば、ユーザの入力操作を省略することができる。
【0074】
測定フェーズでは、図6に示すように、まず判定部40(CPU71)が画像信号を取得する(S11-1)。CPU71は、カウンタをリセットし、測定フェーズの開始とともに再度生成回数kのカウントを開始してもよい。
【0075】
そして、判定部40は、画像信号に含まれる各画素27の受光強度の情報に基づいて、画像信号の受光量を算出する(S24-1)。受光量の算出方法は、S22と同様の方法を用いることができる。
【0076】
測定フェーズでも非測定フェーズと同様に、判定部40が連続して画像信号を生成する(S11-2)。連続して画像信号を生成するタイミングは、非測定フェーズと同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0077】
そしてS22と同様に、判定部40が画像信号の受光量LumTotal(k)を算出し(S24-2)、連続的に生成された複数の画像信号間の受光量の差分に基づいて受光量変動値ΔLumTotal(k)を算出する(S25-1)。図7には、非測定フェーズと同様に、2段目に受光量LumTotal(k)を、3段目に受光量変動値ΔLumTotal(k)を、それぞれ示す。
【0078】
続いて、判定部40は、基準変動値LumInitialAverageに対する受光量変動値ΔLumTotal(k)の差分ΔLumDiff(k)を算出する。ΔLumDiff(k)は、以下の式(4)で表される。
【数4】
【0079】
続いて、受光量変動値ΔLumTotal(k)の差分ΔLumDiff(k)が、基準変動値に基づいて設定された第1の閾値未満であるか否か判定する(S25-3)。
【0080】
第1の閾値は、本実施形態において、測定空間が非常に清浄であり十分高い繰り返し精度が得られる場合の上記差分値の値として設定される。一例として、第1の閾値は、所定の検査規格をクリアした繰り返し精度の60%以下の繰り返し精度が得られる場合における、輝度変化量LumTotal(k)と基準変動値LumInitialAverageの差分値と設定することができる。あるいは、第1の閾値は、基準変動値に対して所定の倍率を乗じた値であってもよい。
【0081】
受光量変動値ΔLumTotal(k)が第1の閾値未満であった場合(S25-3でY)、判定部40は、第1のフラグを付して判定結果を出力する(S27-1)。第1のフラグは、測定空間の汚染度が低く、清浄であることを示すフラグであり、例えば「green」フラグと表される。判定結果は、例えば、画像信号の撮像時間に関する情報に第1のフラグを付したものでもよく、対応する測定結果とともに出力されてもよい。
【0082】
一方で、受光量変動値ΔLumTotal(k)が第1の閾値以上であった場合(S25-3でY)、第1の閾値よりも大きい第2の閾値未満か否か判定する(S25-4)。
【0083】
第2の閾値は、例えば、判定空間がほぼ清浄であり検査規格をクリアできる繰り返し精度が得られる場合の上記差分値の値として設定される。一例として、第2の閾値は、所定の検査規格をクリアした繰り返し精度の100%未満の繰り返し精度が得られる場合における、輝度変化量LumTotal(k)と基準変動値LumInitialAverageの差分値と設定することができる。あるいは、第2の閾値は、基準変動値LumInitialAverageに対して所定の倍率を乗じた値であってもよい。
【0084】
第2の閾値未満であった場合(S25-4でY)、判定部40は、第2のフラグを付して判定結果を出力する(S26-2)。第2のフラグは、汚染度が高くはないものの注意を要するレベルであることを示す
第2の閾値以上であった場合(S25-4でN)、判定部40は、第3のフラグを付して判定結果を出力する(S26-2)。第3のフラグは、汚染度が高いことを示すフラグである。
【0085】
図7を用いて、S25-1~S26-3の処理をより具体的に説明する。
図7の4段目に、受光量変動値ΔLumTotal(k)と基準変動値LumInitialAverageとの差分ΔLumDiff(k)のグラフを示す。各差分ΔLumDiff(k)は、3段目のグラフを参照し、基準変動値LumInitialAverageから受光量変動値ΔLumTotal(k)が上回った分に相当する。
このΔLumDiff(k)のグラフには、第1の閾値GreenThrを破線で、第2の閾値YellowThrを一点鎖線で示している。
さらに、図7の5段目に、フラグが付された判定結果を例示する。
【0086】
図7において、測定フェーズのk=1,5の画像信号では、4段目のグラフの差分ΔLumDiff(k)が第1の閾値GreenThrを下回っている。これにより、k=1,5の画像信号の判定結果は、図7の5段目に示すように、第1のフラグが付された「Green」となる。
【0087】
図7の差分ΔLumDiff(k)のグラフに示すように、測定フェーズのk=2,3,4の画像信号では、差分ΔLumDiff(k)が第1の閾値GreenThr以上である。このうち、k=2,4の画像信号では、差分ΔLumDiff(k)が第2の閾値YellowThrより下回っている。これにより、k=2,4の画像信号の判定結果は、第2のフラグが付された「Yellow」となる。
測定フェーズのk=3の画像信号では、差分ΔLumDiff(k)が、さらに第2の閾値YellowThr以上である。これにより、k=3の画像信号の判定結果は、第3のフラグが付された「Red」となる。
【0088】
判定結果の出力方法は、例えば、測定結果が表示されたディスプレイ51に各フラグに対応する文字、図形を表示すること、及びディスプレイ51に各フラグに対応する色の文字、図形を表示すること等が挙げられる。また、測定結果とは別に、画像信号の撮像時間とそれに対応する判定結果をディスプレイ51に表示してもよい。あるいは、外部出力端子52を介してPC等の外部装置のディスプレイ51等に判定結果を出力してもよい。また、全ての画像信号に対する判定結果を表示する態様に限られず、例えば第3のフラグが付された場合のみ、判定結果を出力するように構成されてもよい。
【0089】
以上のように、本実施形態では、判定部40が、基準変動値に対する受光量変動値の差分に基づいて汚染度を判定する。これにより、清浄とみなされる測定空間の変動値から、測定時の測定空間がどの程度変動しているか判定することができる。したがって、塵埃の流入による測定空間の環境変動を検出でき、塵埃による汚染度を的確に判定することができる。
【0090】
さらに、判定部40は、受光量変動値から基準変動値を減じた値が大きくなるに従い、汚染度が高いと判定する。これにより、汚染度を必要に応じて多段階で判定することができ、ユーザに的確な情報を出力することができる。
また、判定結果に対してフラグを付すことにより、ユーザに対して明確に判定結果を提示することができる。
【0091】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0092】
例えば、以上の実施形態では受光量変動値に基づいて汚染度を判定したが、受光量自体に基づいて汚染度を判定することもできる。この場合、例えば非測定フェーズにおけるリファレンスデータとして複数回撮像した場合における受光量の平均値を算出し、これと測定時における受光量とを比較して、汚染度を判定してもよい。これによっても、塵埃の分布に基づく乱反射や遮光等の影響を検出することができる。
【0093】
また、図4では、測定フェーズにおいてCPU71が取得した同一の画像信号を用いて、測定部30と判定部40とがそれぞれ処理を行う例を示したが、これに限定されない。例えば、測定部30と判定部40とがそれぞれ異なる画像信号に基づいて処理を行ってもよい。この場合、例えば、CPU71が取得して画像信号を測定部30と判定部40とが交互に処理してもよい。
【0094】
また、汚染度は、3段階で判定する例に限定されず、2段階で判定してもよいし、4段階以上で判定してもよい。
【0095】
受光強度としては、64階調又は256階調等の輝度値に限定されず、例えば所定の画素の受光強度を基準とした相対値等であってもよい。
【0096】
また、受光素子は2次元イメージセンセに限定されず、一方向にのみ画素がならぶラインセンサでもよい。また、複数のラインセンサを用いてもよい。
【0097】
非測定フェーズから測定フェーズへの移行は、入力部60からの移行を指示する入力操作に基づいて移行してもよい。この場合、所定回数生成したか判定する処理(S23-2)に替えて、当該入力操作があったか否か判定してもよい。また、所定回数生成していない場合(S23-2でN)でも、移行を指示する入力操作があった場合は、測定フェーズへ移行するように構成してもよい。
【0098】
光学測定装置100は、出力部50及び入力部60の少なくとも一方を有していなくてもよい。この場合、例えば光学測定装置100が図示しない出力装置、入力装置及び情報処理装置等と接続され、これらの装置によって入力処理や結果の出力処理が行われてもよい。
【符号の説明】
【0099】
100…光学測定装置
10…照射部
20…検出部
30…測定部
40…判定部
50…出力部
60…入力部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7