(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】水性ゲル状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/87 20060101AFI20220517BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20220517BHJP
A61K 8/86 20060101ALI20220517BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220517BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220517BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
A61K8/87
A61K8/44
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/02
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2018214627
(22)【出願日】2018-11-15
【審査請求日】2021-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2018197531
(32)【優先日】2018-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴胤
(72)【発明者】
【氏名】柳 輝一
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-175871(JP,A)
【文献】特開2005-053834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルニチンと、
トリメチルグリシンと、
下記の一般式(1)で表される化合物と、
水と、
を含み、かつ、
25℃で測定したときの硬度が1g以上100g以下の範囲である、水性ゲル状化粧料。
【化1】
一般式(1)中、R
1は、それぞれ独立に、R
11-(O-R
12)x-で表される基である。R
11は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R
12は、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表す。xは、1~500の整数である。R
2は、それぞれ独立に、ウレタン結合を有してもよい炭化水素基を表す。R
3は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R
3が複数ある場合、複数のR
3は、同一であっても又は異なっていてもよい。nは、1~500の整数であり、mは、1以上の整数である。
【請求項2】
一般式(1)で表される化合物が、ポリエチレングリコール-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート コポリマー、ポリウレタン-59、及びビスステアリルポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/ポリエチレングリコール-400) コポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項3】
一般式(1)で表される化合物の含有率が、水性ゲル状化粧料の全質量に対して0.5質量%以上2.5質量%以下の範囲である、請求項1又は請求項2に記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項4】
カルニチン及びトリメチルグリシンの合計含有量が、一般式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、2.5倍以上8.5倍以下の範囲である、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項5】
カルニチンの含有量が、トリメチルグリシンの含有量に対して、質量基準で、0.01倍以上20.0倍以下の範囲である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項6】
更に、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールを含む、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の水性ゲル状化粧料。
【請求項7】
グリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールの合計含有量が、カルニチン及びトリメチルグリシンの合計含有量に対して、質量基準で、0.5倍以上2.5倍以下の範囲である、請求項6に記載の水性ゲル状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水性ゲル状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品、食品、医薬品等の分野では、製品に対して粘性又は弾性を付与するために、ゲル化剤が汎用されている。例えば、化粧品の分野では、肌に塗布したときの使用感を高めたり、垂れ落ちを防いだりする等の目的で、ゲル化剤を使用し、製品に対して独特の粘性又は弾性を付与している。
【0003】
ゲル化剤を配合した化粧料としては、例えば、アスタキサンチンと、トリメチルグリシンと、特定の構造を有する化合物であるゲル化剤と、をそれぞれ特定量含有し、かつ、Na及びKからなる群より選ばれる元素の総含有量が特定量以上である水性ゲル状化粧料が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、特許文献1に記載の水性ゲル状化粧料に含まれるトリメチルグリシンは、保湿剤として知られており、べたつきが低く、かつ、保湿力の高い製剤を開発する際に用いられることがある。このような効果を奏し得る保湿剤としては、トリメチルグリシン以外に、カルニチンが知られている。
【0005】
カルニチンを配合した化粧料としては、例えば、カルニチン又はその塩と、数平均分子量600以上のポリエチレングリコールと、を含有し、シリコーン類及びネオペンタン酸アルキルポリグルコールを含有しない可溶化型化粧料が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6284894号公報
【文献】特許第4751013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
最近のトレンドとして、みずみずしい感触が得られる化粧料が好まれる傾向にある。特に、夏場等の気温が高くなる季節は、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られる化粧料が好まれる傾向が強い。
【0008】
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られる水性ゲル状化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための具体的な手段には、以下の実施態様が含まれる。
[1] カルニチンと、
トリメチルグリシンと、
下記の一般式(1)で表される化合物と、
水と、
を含み、かつ、
25℃で測定したときの硬度が1g以上100g以下の範囲である、水性ゲル状化粧料。
【0010】
【0011】
一般式(1)中、R1は、それぞれ独立に、R11-(O-R12)x-で表される基である。R11は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R12は、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表す。xは、1~500の整数である。R2は、それぞれ独立に、ウレタン結合を有してもよい炭化水素基を表す。R3は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R3が複数ある場合、複数のR3は、同一であっても又は異なっていてもよい。nは、1~500の整数であり、mは、1以上の整数である。
【0012】
[2] 一般式(1)で表される化合物が、ポリエチレングリコール-240/デシルテトラデセス-20/ヘキサメチレンジイソシアネート コポリマー、ポリウレタン-59、及びビスステアリルポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/ポリエチレングリコール-400) コポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の水性ゲル状化粧料。
[3] 一般式(1)で表される化合物の含有率が、水性ゲル状化粧料の全質量に対して0.5質量%以上2.5質量%以下の範囲である、[1]又は[2]に記載の水性ゲル状化粧料。
[4] カルニチン及びトリメチルグリシンの合計含有量が、一般式(1)で表される化合物の含有量に対して、質量基準で、2.5倍以上8.5倍以下の範囲である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の水性ゲル状化粧料。
[5] カルニチンの含有量が、トリメチルグリシンの含有量に対して、質量基準で、0.01倍以上20.0倍以下の範囲である、[1]~[4]のいずれか1つに記載の水性ゲル状化粧料。
[6] 更に、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコールを含む、[1]~[5]のいずれか1つに記載の水性ゲル状化粧料。
[7] グリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールの合計含有量が、カルニチン及びトリメチルグリシンの合計含有量に対して、質量基準で、0.5倍以上2.5倍以下の範囲である、[6]に記載の水性ゲル状化粧料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一実施形態によれば、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られる水性ゲル状化粧料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した水性ゲル状化粧料の実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜、変更を加えて実施することができる。
【0015】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を意味する。
本開示では、段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、水性ゲル状化粧料中の各成分の量は、各成分に該当する物質が水性ゲル状化粧料中に複数存在する場合には、特に断らない限り、水性ゲル状化粧料中に存在する複数の物質の合計量を意味する。
【0016】
本開示において、「水相」とは、溶媒の種類にかかわらず「油相」に対する語として使用する。
【0017】
本開示において、「水性化粧料」とは、水を含み、水及び所望により含む水溶性の液体成分の総含有率が、化粧料の全質量に対して50質量%以上であり、かつ、25℃の水に対する溶解度が1質量%以下の液体成分の含有率が、化粧料の全質量に対して10質量%以下である化粧料をいう。ここでいう「水溶性の液体成分」とは、25℃の水に対する対象成分の溶解度が1質量%を超える液状成分をいう。
【0018】
本開示において、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0019】
[水性ゲル状化粧料]
本開示の水性ゲル状化粧料は、カルニチンと、トリメチルグリシンと、一般式(1)で表される化合物(以下、適宜「特定化合物(1)」と称する。)と、水と、を含み、かつ、25℃で測定したときの硬度が1g以上100g以下の範囲である。
本開示の水性ゲル状化粧料によれば、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られる。
本開示の水性ゲル状化粧料が、このような効果を奏し得る理由については、明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。
【0020】
本開示の水性ゲル状化粧料に含まれる特定化合物(1)は、水性化粧料のゲル化に寄与する成分であり、ゲル状皮膜を形成し得る。
また、本開示の水性ゲル状化粧料に含まれるカルニチン及びトリメチルグリシンは、保湿剤として知られており、いずれも水を抱え込む力(所謂、保水力)が比較的高いと考えられる。本発明者らの研究によれば、カルニチン及びトリメチルグリシンは、いずれも特定化合物(1)によるゲル化を阻害したり、特定化合物(1)により形成されたゲル構造を破壊したりする性質を有していることが判明している。
【0021】
本開示の水性ゲル状化粧料は、保水力の高いカルニチン及びトリメチルグリシン、ゲル状皮膜を形成する特定化合物(1)、並びに、水を含むため、肌に塗布することで、肌の表面に、水を抱え込んだカルニチン及びトリメチルグリシンと、水とを含んだゲル状皮膜が形成される。肌の表面に形成されたゲル状皮膜中では、水が肌に浸透したり、揮発したりすることで、カルニチン及びトリメチルグリシンの濃度が高まる。ゲル状皮膜中のカルニチン及びトリメチルグリシンの濃度が高まることで、カルニチン及びトリメチルグリシンによるゲル状皮膜の破壊が促進される。その結果、水を抱え込んだカルニチン及びトリメチルグリシンが、ゲル状皮膜から出てくる。このような現象により、本開示の水性ゲル状化粧料では、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られると推測される。
【0022】
本開示の水性ゲル状化粧料に対し、特許文献1(特許第6284894号公報)に記載の水性ゲル状化粧料は、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)に相当する化合物と、を含んでいるが、カルニチンを含んでいない。
本発明者らの確認によれば、カルニチン又はトリメチルグリシンのいずれか一方と、特定化合物(1)と、を含む水性ゲル状化粧料では、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られないことが判明している(後述の比較例1、比較例2、比較例6等参照)。
【0023】
特許文献2(特許第4751013号公報)に記載の可溶化型化粧料は、カルニチンを含んでいるが、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)に相当する化合物と、を含んでいない。
本発明者らの確認によれば、特定化合物(1)を含まない化粧料では、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られないこと、また、そもそもゲル状とならないことが判明している(後述の比較例3参照)。
【0024】
なお、上記の推測は、本開示の水性ゲル状化粧料を限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0025】
<水性ゲル状化粧料の硬度>
本開示の水性ゲル状化粧料は、25℃で測定したときの硬度が1g以上100g以下の範囲であり、5g以上50g以下の範囲が好ましく、8g以上30g以下の範囲がより好ましい。
25℃で測定したときの硬度が1g以上100g以下の範囲であることは、ゲル状であることの指標である。
【0026】
本開示の水性ゲル状化粧料の上記硬度は、以下の方法により測定される値である。
測定対象物60gを直径47mm×高さ90mmのガラス製の容器に入れる。次いで、ガラス製の容器に入れた測定対象物に対して、脱泡処理を行う。次いで、脱泡処理を行った測定対象物を25℃に保温する。次いで、25℃に保温した測定対象物の硬度を、上記ガラス製の容器に入れた状態で、粘弾性測定装置(所謂、レオメーター)を用いて測定する。具体的には、25℃に保温した測定対象物に対して、雰囲気温度25℃の環境下、60mm/分の速度で、直径20mmのアダプターの先端を200gの荷重で20mm挿入し、挿入したときに測定される応力のピーク値を硬度の測定値(単位:g)とする。
脱泡処理としては、特に限定されず、例えば、遠心脱泡処理、真空脱泡処理、真空遠心脱泡処理等の脱泡処理が挙げられる。
レオメーターとしては、特に限定されないが、例えば、(株)レオテックのFUDOH REHOMETER(機種名)を好適に用いることができる。但し、レオメーターは、これに限定されない。
【0027】
本開示の水性ゲル状化粧料の25℃で測定したときの硬度は、例えば、特定化合物(1)の種類及び量の少なくとも一方を調整することにより、1g以上100g以下の範囲とすることができる。
【0028】
以下、本開示の水性ゲル状化粧料の各成分について、詳細に説明する。
【0029】
〔カルニチン〕
本開示の水性ゲル状化粧料は、カルニチンを含む。
本開示において、カルニチンとは、4-トリメチルアミノ-3-ヒドロキシ酪酸を意味する。カルニチンには、立体異性体としてD体とL体とが存在し、これらの混合物としてDL体が知られている。本開示のゲル状化粧料には、D体、L体、及びDL体のいずれも用いることができるが、L体又はDL体を用いることが好ましい。
【0030】
また、本開示におけるカルニチンには、塩酸塩、酢酸塩、硫酸塩等のカルニチンの塩、カルニチンアシルエステル等のカルニチンの誘導体なども包含される。
カルニチンとしては、公知の方法、例えば、化学合成法、微生物発酵法等の方法により得られるものを用いることができる。
【0031】
カルニチンは、市販品としても入手可能である。
カルニチンの市販品の例としては、ILS(株)のL-カルニチン(商品名)、金剛化学(株)の塩化レボカルニチン(商品名)等が挙げられる。
【0032】
本開示の水性ゲル状化粧料は、カルニチンを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0033】
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチンの含有率は、特に限定されない。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチンの含有率は、例えば、水性ゲル状化粧料の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、3質量%以上が特に好ましい。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチンの含有率が、水性ゲル状化粧料の全質量に対して0.1質量%以上であることは、本開示の水性ゲル状化粧料中にカルニチンを積極的に含むことを意味する。
また、本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチンの含有率は、例えば、水性ゲル状化粧料の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。
既述のとおり、発明者らの研究によれば、カルニチンは、化粧料のゲル化を阻害したり、一旦形成されたゲル構造を破壊したりする性質を有することが判明している。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチンの含有率が、水性ゲル状化粧料の全質量に対して10質量%以下であると、カルニチンに起因する、ゲル化の阻害及びゲル構造の破壊が過度になり難い傾向がある。
【0034】
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチンの含有量は、例えば、トリメチルグリシンの含有量に対して、質量基準で、0.01倍以上20.0倍以下の範囲が好ましく、0.1倍以上10.0倍以下の範囲がより好ましく、0.2倍以上3.0倍以下の範囲が更に好ましい。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチンの含有量が、トリメチルグリシンの含有量に対して、質量基準で、0.01倍以上であると、肌に塗布した後に、みずみずしい感触がより良好に得られる傾向がある。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチンの含有量が、トリメチルグリシンの含有量に対して、質量基準で、20.0倍以下であると、コストの点でより有利である。
【0035】
〔トリメチルグリシン〕
本開示の水性ゲル状化粧料は、トリメチルグリシンを含む。
トリメチルグリシンは、以下に示す構造を有する化合物である。
トリメチルグリシンは、グリシンベタイン、無水ベタイン、又は、単にベタインと称されることがある。なお、トリメチルグリシンの化粧品成分表示名称は、ベタインである。
【0036】
【0037】
トリメチルグリシンは、生体内に存在する有機化合物である。
トリメチルグリシンは、例えば、テンサイ糖蜜からの抽出及び精製により得ることができる。
【0038】
トリメチルグリシンは、市販品としても入手可能である。
トリメチルグリシンの市販品としては、旭化成ケミカルズ(株)のアミコート(商品名)、恵比須化学工業(株)のBetafinBP(商品名)等が挙げられる。
【0039】
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるトリメチルグリシンの含有率は、特に限定されない。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるトリメチルグリシンの含有率は、例えば、水性ゲル状化粧料の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、2質量%以上が特に好ましい。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるトリメチルグリシンの含有率が、水性ゲル状化粧料の全質量に対して0.1質量%以上であることは、本開示の水性ゲル状化粧料中にトリメチルグリシンを積極的に含むことを意味する。
また、本開示の水性ゲル状化粧料中におけるトリメチルグリシンの含有率は、例えば、水性ゲル状化粧料の全質量に対して、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。
既述のとおり、発明者らの研究によれば、トリメチルグリシンは、化粧料のゲル化を阻害したり、一旦形成されたゲル構造を破壊したりする性質を有することが判明している。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるトリメチルグリシンの含有率が、水性ゲル状化粧料の全質量に対して10質量%以下であると、トリメチルグリシンに起因する、ゲル化の阻害及びゲル構造の破壊が過度になり難い傾向がある。
【0040】
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチン及びトリメチルグリシンの合計含有量は、例えば、一般式(1)で表される化合物〔即ち、特定化合物(1)〕の含有量に対して、質量基準で、2.5倍以上8.5倍以下の範囲が好ましく、3.5倍以上7.5倍以下の範囲がより好ましく、3.5倍以上6.5倍以下の範囲が更に好ましく、4.5倍以上6.5倍以下の範囲が特に好ましく、5.0倍以上6.5倍以下の範囲が最も好ましい。
本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチン及びトリメチルグリシンの合計含有量が、特定化合物(1)の含有量に対して、質量基準で、2.5倍以上8.5倍以下の範囲であると、肌に塗布した後に得られるみずみずしい感触がより高まる傾向がある。
また、本開示の水性ゲル状化粧料中におけるカルニチン及びトリメチルグリシンの合計含有量が、特定化合物(1)の含有量に対して、質量基準で、8.5倍以下であると、カルニチン及びトリメチルグリシンに起因する、ゲル化の阻害及びゲル構造の破壊が過度になり難い傾向がある。
【0041】
〔一般式(1)で表される化合物〕
本開示の水性ゲル状化粧料は、下記の一般式(1)で表される化合物〔即ち、特定化合物(1)〕を含む。
【0042】
【0043】
一般式(1)中、R1は、それぞれ独立に、R11-(O-R12)x-で表される基である。R11は、それぞれ独立に、炭化水素基を表し、R12は、それぞれ独立に、炭素数2~4のアルキレン基を表す。xは、1~500の整数である。R2は、それぞれ独立に、ウレタン結合を有してもよい炭化水素基を表す。R3は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、R3が複数ある場合、複数のR3は、同一であっても又は異なっていてもよい。nは、1~500の整数であり、mは、1以上の整数である。
【0044】
特定化合物(1)は、一般式(1)から明らかなように、主鎖にウレタン結合及び親水性のアルキレンオキシ基を有し、かつ、末端に疎水性の炭化水素基を有する、疎水性に変性されたウレタン系コポリマーである。
【0045】
一般式(1)において、R1は、R11-(O-R12)x-で表される基である。2つあるR1は、同一であっても又は異なっていてもよい。
R11は、炭化水素基を表す。
R11で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状であってもよく、好ましくは分岐を有する脂肪族炭化水素基である。
R11で表される炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の脂肪族炭化水素基が好ましい。
【0046】
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ターシャリブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ターシャリペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2-エチルヘキシル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、イソトリデシル、ミリスチル、パルミチル、ステアリル、イソステアリル、イコシル、ドコシル、テトラコシル、トリアコンチル、2-オクチルドデシル、2-ドデシルヘキサデシル、2-テトラデシルオクタデシル、モノメチル分岐-イソステアリル、デシルテトラデセス等の基が挙げられる。
【0047】
アルケニル基としては、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、オレイル等の基が挙げられる。
【0048】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等の基が挙げられる。
シクロアルケニル基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル等の基が挙げられる。
【0049】
R11で表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは8~36であり、より好ましくは12~30である。
R12は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、炭素数2のアルキレン基(即ち、エチレン基)が好ましい。
xは、1~500の整数であり、好ましくは1~300の整数であり、より好ましくは1~100の整数であり、更に好ましくは5~50の整数であり、特に好ましくは10~40の整数である。
【0050】
一般式(1)において、R2は、それぞれ独立に、ウレタン結合を有してもよい炭化水素基を表す。
R2で表される炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、及びこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよく、環状であってもよく、好ましくは直鎖状の脂肪族炭化水素基である。
R2で表される炭化水素基としては、例えば、R11で表される炭化水素基として既述した、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基等の脂肪族炭化水素基から水素原子を1つ除いて得られる2価の基が挙げられる。
【0051】
R2で表される炭化水素基の炭素数は、好ましくは1~10であり、より好ましくは2~8であり、更に好ましくは4~8であり、特に好ましくは6である。
【0052】
一般式(1)において、R3は、炭素数2~4のアルキレン基を表し、炭素数2のアルキレン基(即ち、エチレン基)が好ましい。
一般式(1)において、R3が複数ある場合、複数のR3は、同一であっても又は異なっていてもよい。
【0053】
一般式(1)において、nは、1~500の整数であり、好ましくは1~400の整数であり、より好ましくは10~400の整数であり、更に好ましくは100~300の整数である。
一般式(1)において、mは、1以上の整数であり、好ましくは1~20であり、より好ましくは1~10であり、更に好ましくは1~5である。
【0054】
特定化合物(1)は、例えば、下記の一般式(2)で表される化合物と、下記の一般式(3)で表される化合物と、下記の一般式(4)で表される化合物と、を80℃~90℃で1時間~3時間加熱し、反応させることにより得ることができる。
上記の反応に際しては、原料である、一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、及び一般式(4)で表される化合物を、それぞれの化合物につき、1種用いてもよく、2種以上用いてもよい。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
一般式(2)におけるR1は、一般式(1)におけるR1に対応する。
一般式(3)におけるR2は、一般式(1)におけるR2に対応する。
一般式(4)におけるR3及びnは、一般式(1)におけるR3及びnに対応する。
【0059】
一般式(2)で表される化合物、一般式(3)で表される化合物、及び一般式(4)で表される化合物の仕込み比は、特に限定されず、例えば、目的とする特定化合物(1)に応じて、適宜設定することができる。
【0060】
<一般式(1-1)で表される化合物>
一般式(1)で表される化合物としては、下記の一般式(1-1)で表される化合物〔以下、適宜「特定化合物(1-1)」と称する。〕が好ましい。
【0061】
【0062】
一般式(1-1)中、n1は、1~500の整数であり、m1は、1以上の整数であり、x1は、1~500の整数である。
【0063】
一般式(1-1)において、n1は、1~500の整数であり、好ましくは1~400の整数であり、より好ましくは10~400の整数であり、更に好ましくは100~300の整数であり、特に好ましくは240である。
一般式(1-1)において、m1は、1以上の整数であり、好ましくは1~20の整数であり、より好ましくは1~10の整数であり、更に好ましくは1~5の整数であり、特に好ましくは1~3の整数である。
一般式(1-1)において、x1は、1~500の整数であり、好ましくは1~300の整数であり、より好ましくは1~100の整数であり、更に好ましくは5~50の整数であり、特に好ましくは10~40の整数であり、最も好ましくは20である。
【0064】
特定化合物(1-1)としては、特開平9-71766号公報、国際公開第2014/084174号等に記載の化合物が好ましい例として挙げられる。
特定化合物(1-1)としては、特に、PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI コポリマー及びポリウレタン-59からなる群より選ばれる少なくとも1種が好適である。
PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI コポリマーは、商品名「アデカノールGT-700」として、(株)ADEKAから市販されている。
ポリウレタン-59は、商品名「アデカノールGT-930」として、(株)ADEKAから市販されている。
なお、「PEG」は、ポリエチレングリコールの略称であり、「HDI」は、ヘキサメチレンジイソシアネートの略称である。
【0065】
なお、特定化合物(1)に包含され、かつ、特定化合物(1-1)に包含されない化合物としては、ビスステアリルPEG/PPG-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/PEG-400) コポリマーが挙げられる。
ビスステアリルPEG/PPG-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/PEG-400) コポリマーは、商品名「AQUPEC(登録商標)HU C2002」として、住友精化(株)から市販されている。
なお、「PPG」は、ポリプロピレングリコールの略称である。
【0066】
特定化合物(1)としては、PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI コポリマー、ポリウレタン-59、及びビスステアリルPEG/PPG-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/PEG-400) コポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI コポリマー及びポリウレタン-59からなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましく、PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI コポリマーが更に好ましい。
【0067】
本開示の水性ゲル状化粧料は、特定化合物(1)〔好ましくは、特定化合物(1-1);以下、同じ。〕を、1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0068】
本開示の水性ゲル状化粧料中における特定化合物(1)の含有率は、特に限定されないが、例えば、水性ゲル状化粧料の全質量に対して、0.5質量%以上2.5質量%以下の範囲が好ましく、1.0質量%以上2.5質量%以下の範囲がより好ましく、1.5質量%以上2.0質量%以下の範囲が更に好ましい。
本開示の水性ゲル状化粧料中における特定化合物(1)の含有率が、水性ゲル状化粧料の全質量に対して0.5質量%以上2.5質量%以下の範囲であると、本開示の水性ゲル状化粧料の25℃で測定したときの硬度を、1g以上100g以下の範囲に、より調整しやすくなる傾向がある。
【0069】
〔水〕
本開示の水性ゲル状化粧料は、水を含む。
水としては、特に制限はなく、天然水、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、超純水(Milli-Q水等)などを使用することができる。なお、Milli-Q水とは、メルク(株)メルクミリポアのMilli-Q水製造装置により得られる超純水である。
水性ゲル状化粧料に含まれる水としては、不純物が少ないという観点から、精製水、蒸留水、イオン交換水、純水、又は超純水が好ましい。
【0070】
本開示の水性ゲル状化粧料中における水の含有率は、特に制限されず、水性ゲル状化粧料の全質量に対して、50質量%以上95質量%以下の範囲が好ましく、60質量%以上90質量%以下の範囲がより好ましく、70質量%以上88質量%以下の範囲が更に好ましい。
【0071】
〔グリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコール〕
本開示の水性ゲル状化粧料は、更に、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の多価アルコール(以下、適宜「特定多価アルコール」と称する。)を含むことが好ましい。
本開示の水性ゲル状化粧料において、特定多価アルコールは、保湿感の向上に寄与し得る。
特定多価アルコールとしては、例えば、保湿感をより向上し得るという観点から、グリセリン及び1,3-ブチレングリコールからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0072】
本開示の水性ゲル状化粧料は、特定多価アルコールを含む場合、特定多価アルコールを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0073】
本開示の水性ゲル状化粧料が特定多価アルコールを含む場合、水性ゲル状化粧料中における特定多価アルコールの含有量は、例えば、保湿感をより向上し得るという観点から、カルニチン及びトリメチルグリシンの合計含有量に対して、質量基準で、0.5倍以上2.5倍以下の範囲が好ましく、0.5倍以上2.0倍以下の範囲がより好ましく、0.5倍以上1.7倍以下の範囲が更に好ましい。
ここでいう「特定多価アルコールの含有量」は、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、及びジプロピレングリコールの合計含有量を指す。
【0074】
〔その他の成分〕
本開示の水性ゲル状化粧料は、本開示の効果を損なわない範囲において、カルニチン、トリメチルグリシン、特定化合物(1)、及び水、並びに、任意成分である特定多価アルコール以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。
その他の成分としては、化粧料において通常用いられる添加成分が挙げられる。
添加成分としては、例えば、化粧料に使用した際に有用な美容効果(保湿効果、美白効果、整肌効果等)を示す機能性成分が挙げられる。このような機能性成分としては、β-カロテン、アスタキサンチン、ゼアキサンチン、リコピン、ルテイン等のカロテノイド;トコフェロール、トコトリエノール等のビタミンE;コエンザイムQ10等のユビキノン;ヒアルロン酸、エリスリトール、キシリトール、グルコース、ソルビトール、トレハロース等の多糖類;グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミド等のスフィンゴ糖脂質;加水分解コラーゲン、水溶性コラーゲン等のコラーゲン;アセチルヒドロキシプロリン等のアミノ酸;加水分解シロバナルーピンタンパク;ニコチン酸アミド;ポリエチレングリコール;アセンヤクエキス;ヒオウギエキス;グリチルリチン酸ジカリウムなどが挙げられる。
その他、添加成分としては、抗酸化剤、界面活性剤、乳化剤、緩衝剤(クエン酸、リン酸等)、pH調整剤(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、塩酸等)、防腐剤(フェノキシエタノール、エチルへキシルグリセリン等)、紫外線吸収剤、抗炎症剤、着色剤、香料などが挙げられる。
これらの添加成分は、1つの成分が2つ以上の機能を担うものであってもよい。
【0075】
[水性ゲル状化粧料の製造方法]
本開示の水性ゲル状化粧料の製造方法は、特に限定されない。
本開示の水性ゲル状化粧料は、カルニチンと、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)と、水と、必要に応じて、特定多価アルコール、既述のその他の成分等とを用いて、公知の水性ゲル状化粧料の製造方法に従って、得ることができる。
本開示の水性ゲル状化粧料の25℃で測定したときの硬度は、既述のとおり、例えば、特定化合物(1)の種類及び量の少なくとも一方を調整することにより、1g以上100g以下の範囲にすることができる。
【0076】
本開示の水性ゲル状化粧料の好適な製造方法の一つとしては、カルニチンと、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)と、水とを混合すること(以下、適宜「混合工程」と称する。)を含む製造方法が挙げられる。
以下、本開示の水性ゲル状化粧料の好適な製造方法の一例について説明するが、既述の水性ゲル状化粧料と共通する事項、例えば、水性ゲル状化粧料の成分及びその量については、説明を省略する。
【0077】
〔混合工程〕
混合工程では、カルニチンと、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)と、水とを混合する。
カルニチンと、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)と、水とを混合する方法は、特に限定されない。
例えば、カルニチンと、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)と、水とを一括して混合してもよく、水を撹拌しながら、その水中に、カルニチンと、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)とを添加し、混合してもよい。
本開示の水性ゲル状化粧料が、特定多価アルコールを含む場合には、カルニチンと、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)と、水と、特定多価アルコールとを一括して混合してもよく、水と特定多価アルコールとの混合液を撹拌しながら、その混合液中に、カルニチンと、トリメチルグリシンと、特定化合物(1)とを添加し、混合してもよい。
【0078】
混合手段としては、特に限定されず、市販のいずれの混合手段を用いてもよい。
混合手段としては、スターラー、パドルミキサー、インペラーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミキサー、ウルトラミキサー、高圧ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。これらの中でも、混合手段としては、ホモミキサー及びディスパーミキサーからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0079】
各成分を混合する際の温度は、特に限定されず、適宜設定することができ、通常、4℃~80℃に設定することが好ましく、60℃~80℃に設定することがより好ましい。
各成分を混合する際の撹拌条件は、各成分を十分に混合することができれば、特に限定されず、混合手段に応じて、適宜設定することができる。例えば、混合手段として、ホモミキサーを用いる場合には、通常、500rpm(revolutions per minute;以下、同じ。)~8000rpmで5分間~60分間、各成分を撹拌することができる。
【0080】
本開示の水性ゲル状化粧料の製造方法は、必要に応じて、混合工程以外の工程(所謂、他の工程)を含んでもよい。
他の工程としては、例えば、脱泡工程、加熱殺菌工程、冷却工程、取り出し工程等が挙げられる。脱泡工程、加熱殺菌工程、冷却工程、取り出し工程等は、当業界で公知の方法を適用すればよい。
【実施例】
【0081】
以下、本開示の水性ゲル状化粧料を実施例により更に具体的に説明する。但し、本開示の水性ゲル状化粧料は、その主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0082】
[水性化粧料の調製]
〔実施例1〕
カルニチン〔商品名:L-カルニチン、ILS(株)〕1gと、トリメチルグリシン〔商品名:アミノコート(登録商標)、旭化成ファインケム(株)〕6gと、特定化合物(1)として、PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI コポリマー(商品名:アデカノール GT-700、ADEKA社)1.7gと、特定多価アルコールとして、グリセリン6g及び1,3-ブチレングリコール0.7gと、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na〔商品名:アプレシエ(登録商標)、略称:APPS、昭和電工(株)〕0.5gと、エチルヘキシルグリセリン0.2gと、フェノキシエタノール0.5gと、純水35gと、を混合した。得られた混合物を60℃に加温し、ホモミキサー〔機種名:ホモミキサーHM-310、アズワン(株)〕を用いて、2000rpmで5分間撹拌した後、40℃に冷却した。
次いで、冷却した混合物に、下記の方法により予め調製したアスタキサンチン含有乳化組成物0.22gと、下記の方法により予め調製したセラミド含有分散組成物6gと、水溶性コラーゲン0.1gと、加水分解コラーゲン0.1gと、アセチルヒドロキシプロリン0.1gと、加水分解シロバナルーピンタンパク0.1gと、香料0.1gと、を添加し、全量が100gとなるように純水を更に添加した後、ホモミキサー〔機種名:ホモミキサーHM-310、アズワン(株)〕を用いて、2000rpmで20分間撹拌した。次いで、撹拌した混合物に対し、真空脱泡を行い、実施例1の水性化粧料を得た。
【0083】
<アスタキサンチン含有乳化組成物の調製>
下記の成分を、70℃で1時間加熱し、溶解させることにより、水相組成物を得た。
-水相組成物の組成-
・ショ糖ステアリン酸エステル(HLB=16) 33.0g
・モノオレイン酸デカグリセリル(HLB=12) 67.0g
・グリセリン 450.0g
・純水 300.0g
【0084】
下記の成分を、70℃で1時間加熱し、溶解させることにより、油相組成物を得た。
-油相組成物の組成-
・アスタキサンチン含有油 15.0g
〔商品名:ASTOTS-S(ヘマトコッカス藻由来、アスタキサンチン:20質量%含有)、富士フイルム(株)〕
・ミックストコフェロール 32.0g
〔商品名:理研Eオイル800、理研ビタミン(株)〕
・中鎖脂肪酸トリグリセライド 93.0g
〔商品名:ココナード(登録商標)MT、花王(株)〕
・レシチン 10.0g
〔商品名:レシオン(登録商標)P、大豆由来、理研ビタミン(株)〕
【0085】
得られた水相組成物を、70℃に保ったまま、超音波ホモジナイザー〔型式:HP93、(株)エスエムテー〕を用いて10000rpmで撹拌し、撹拌している水相組成物の中に、油相組成物を添加して、粗乳化物を得た。
次いで、得られた粗乳化物を約40℃まで冷却し、超高圧乳化装置〔機種名:アルティマイザーHJP-25005、(株)スギノマシン〕を用いて、200MPaの圧力で高圧乳化を行った。その後、平均孔径1μmのミクロフィルターを用いてろ過を行い、アスタキサンチン含有乳化組成物(アスタキサンチン含有率:0.3質量%)を得た。
【0086】
得られたアスタキサンチン含有乳化組成物を、1質量%の濃度となるようにミリQ水を用いて希釈し、粒径アナライザー〔型式:FPAR-1000、大塚電子(株)〕を用いて、分散粒子の粒径を測定したところ、58nm〔メジアン径(d50)〕であった。
【0087】
<セラミド含有分散組成物の調製>
下記の成分を、室温(25℃)にて1時間撹拌して、油相組成物を得た。
-油相組成物の組成-
・セラミド3 4.8g
・セラミド6 5.9g
・オレイン酸 1.1g
・エタノール 412.0g
【0088】
下記の成分を、室温(25℃)にて1時間撹拌して、水相組成物を得た。
-水相組成物の組成-
・ミリスチン酸ポリグリセリル-10 10.7g
・グリセリン 53.4g
・1,3-ブチレングリコール 53.4g
・水酸化ナトリウム 3.2g
・純水 865.3g
【0089】
得られた油相組成物(油相)と水相組成物(水相)とを、1:7の比率(質量比)で、衝突型であるKM型マイクロミキサー100/100を用いてミクロ混合することにより、分散物を得た。なお、マイクロミキサーの使用条件は、下記の通りである。
【0090】
《マイクロミキサーの使用条件》
-マイクロチャンネル-
・油相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/70μm/100μm/10mm
・水相側マイクロチャンネル
断面形状/幅/深さ/長さ = 矩形/490μm/100μm/10mm
-流量-
外環に水相を21.0mL/分の流量で導入し、かつ、内環に油相を3.0mL/分の流量で導入して、ミクロ混合する。
【0091】
得られた分散物を、遠心式薄膜真空蒸発装置〔機種名:エバポール CEP-lab、(株)大川原製作所〕を使用し、エタノール濃度が0.1質量%以下になるまで、脱溶媒し、総セラミド濃度が1.0質量%になるように濃縮、調整し、セラミド含有分散組成物を得た。
【0092】
〔実施例2~実施例10〕
実施例1の水性化粧料の調製において、水性化粧料の組成を下記の表1に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2~実施例10の各水性化粧料を得た。
【0093】
〔実施例11~実施例15〕
実施例1の水性化粧料の調製において、水性化粧料の組成を下記の表2に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例11~実施例15の各水性化粧料を得た。
【0094】
〔実施例16及び実施例17〕
実施例1の水性化粧料の調製において、水性化粧料の組成を下記の表3に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例16及び実施例17の各水性化粧料を得た。
【0095】
〔比較例1~比較例8〕
実施例1の水性化粧料の調製において、水性化粧料の組成を下記の表4に示す組成に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1~比較例8の各水性化粧料を得た。
【0096】
[測定及び評価]
実施例1~実施例17及び比較例1~比較例8の各水性化粧料を用いて、以下の測定及び評価を行った。結果を表1~表4に示す。
【0097】
1.水性化粧料の硬度
調製直後の各水性化粧料60gを、それぞれ直径47mm×高さ90mmのガラス製の容器に入れた。次いで、ガラス製の容器に入れた各水性化粧料に対して、2000rpm及び100hPa(ヘクトパスカル)の条件で4分間真空遠心脱泡処理を行い、調製中に混入した気泡を除いた。次いで、脱泡処理を行った各水性化粧料を25℃に保温した。次いで、25℃に保温した各水性化粧料の硬度を、レオメーター〔機種名:FUDOH REHOMETER、(株)レオテック〕を用いて測定した。具体的には、25℃に保温した各水性化粧料に対して、雰囲気温度25℃の環境下、60mm/分の速度で、直径20mmのアダプターの先端を200gの荷重で20mm挿入し、挿入したときに測定される応力のピーク値を硬度の測定値(単位:g)とした。そして、硬度の測定値が1g以上100g以下の範囲であれば、本開示でいう「ゲル状」であると判断した。測定条件の詳細を下記に示す。
【0098】
《測定条件》
アダプター:No.3(直径:20mm)
荷重:2kg
速度:60mm/分
測定温度:25℃
無荷重基底:0.1%
サンプリング間隔:0.02秒
X軸テーブル移動距離:20mm(強制終了:20mm)
【0099】
2.みずみずしさ
各水性化粧料について、みずみずしさを評価した。
ここでいう「みずみずしさ」とは、水性化粧料を肌に塗布した後に、水性化粧料中の成分が分離し、水が滲み出してくる変化を感じることを意味する。
調製直後の各水性化粧料6gを、それぞれ10mL容量のPET(ポリエチレンテレフタレート)製の容器に入れた。次いで、容器に入れた各水性化粧料に対して、4000rpmで5分間遠心脱泡処理を行い、調製中に混入した気泡を除いた。次いで、脱泡処理を行った各水性化粧料を25℃に保温した。
25℃に保温した各水性化粧料を、化粧料評価の専門パネラー10人に使用してもらった。具体的には、各水性化粧料0.1gを、前腕の内側に対し、25cm2程度に塗り広げてもらった。そして、肌に塗り広げた後に感じるみずみずしさの程度を下記の採点基準に沿って、採点してもらった。
各専門パネラーの採点結果を算術平均し、得られた数値の小数点以下1桁目を四捨五入した値を、みずみずしさの評価結果とした。
評価結果が、「5」、「4」、又は「3」であれば、肌に塗布した後にみずみずしい感触が得られる水性化粧料であると判断した。
【0100】
~基準~
5点:みずみずしさが強く感じられた。
4点:みずみずしさがやや強く感じられた。
3点:みずみずしさが適度に感じられた。
2点:みずみずしさが少し感じられた。
1点:みずみずしさがほとんど感じられなかった。
【0101】
3.保湿感
各水性化粧料について、保湿感を評価した。
調製直後の各水性化粧料6gを、それぞれ10mL容量のPET(ポリエチレンテレフタレート)製の容器に入れた。次いで、容器に入れた各水性化粧料に対して、4000rpmで5分間遠心脱泡処理を行い、調製中に混入した気泡を除いた。次いで、脱泡処理を行った各水性化粧料を25℃に保温した。
25℃に保温した各水性化粧料を、化粧料評価の専門パネラー10人に使用してもらった。具体的には、各水性化粧料0.1gを、前腕の内側に対し、25cm2程度に塗り広げてもらった。そして、塗り広げてから1分間後に、肌の表面に残るしっとりとした感触の程度を下記の採点基準に沿って、採点してもらった。
各専門パネラーの採点結果を算術平均し、得られた数値の小数点以下1桁目を四捨五入した値を、保湿感の評価結果とした。
評価結果の数値が大きい程、水性化粧料の保湿感が優れることを示す。
【0102】
~基準~
5点:肌の表面に残るしっとりとした感触が、比較例6よりもかなり強い。
4点:肌の表面に残るしっとりとした感触が、比較例6よりもやや強い。
3点:肌の表面に残るしっとりとした感触が、比較例6と同等である。
2点:肌の表面に残るしっとりとした感触が、比較例6よりもやや弱い。
1点:肌の表面に残るしっとりとした感触が、比較例6よりもかなり弱い。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
表1~表4では、カルニチンを「(A)」と、トリメチルグリシンを「(B)」と、特定化合物(1)を「(C)」と、水を「(D)」と、また、特定多価アルコールを「(E)」と表記する。
表2~表4中、組成の欄に記載の「-」は、該当する成分を配合していないことを意味する。また、表2及び表4中、組成の欄以外の欄に記載の「-」は、該当する項目がないことを意味する。
表2及び表3に記載の実施例5は、対比のために記載したものであり、表1に記載の実施例5と同じものである。
表2において、実施例11の1,3-ブチレングリコールの欄に記載の量(単位:質量%;以下、同じ。)は、特定化合物(1)であるポリウレタン-59の配合のために使用した、ADEKA社のアデカノール(登録商標) GT-930に由来の1,3-ブチレングリコールの量を含む。
【0108】
表1~表4に記載の各成分の詳細は、以下のとおりである。
<(A):カルニチン>
・カルニチン〔商品名:L-カルニチン、ILS(株)〕
<(B):トリメチルグリシン>
・トリメチルグリシン〔商品名:アミノコート(登録商標)、旭化成ファインケム(株)〕
<(C):特定化合物(1)>
・PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI コポリマー〔商品名:アデカノール(登録商標) GT-700、ADEKA社〕
・ポリウレタン-59〔アデカノール(登録商標) GT-930(商品名、ポリウレタン-59の含有率:30質量%、ADEKA社)により配合〕
・ビスステアリルPEG/PPG-8/6(メチレンジフェニルジイソシアネート/PEG-400) コポリマー〔商品名:AQUPEC(登録商標) HU C2002、住友精化(株)〕
<その他の成分>
・カルボマー〔増粘剤、成分名:カルボキシビニルポリマー、商品名:Carbopol(登録商標) 981 polymer、Lubrizol Advanced Materials社〕
・キサンタンガム〔増粘剤、商品名:サンエースC、三栄源エフ・エフ・アイ(株)〕
・APPS〔商品名:アプレシエ(登録商標)、パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na(化粧品成分表示名称)、昭和電工(株)〕
・アセンヤクエキス〔商品名:アセンヤク抽出液、丸善製薬(株)〕
・ヒオウギエキス〔商品名:ファルコレックスヒオウギ、一丸ファルコス(株)〕
・GK2〔グリチルリチン酸ジカリウム〕
【0109】
表1~表3に示すように、実施例1~実施例17の水性化粧料は、いずれも硬度の測定値が1g以上100g以下の範囲であり、本開示でいう「ゲル状」であることが確認された。一方、表4に示すように、特定化合物(1)を含まない比較例3の水性化粧料は、ゲル状とならないため、硬度を測定することができなかった。
【0110】
実施例1~実施例17の水性化粧料は、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られることが確認された。
また、特定多価アルコールであるグリセリン及び1,3-ブチレングリコールを含む実施例1~実施例12、実施例14、及び実施例15~実施例17の水性化粧料は、保湿感に優れることが確認された。
【0111】
一方、表4に示すように、カルニチン、トリメチルグリシン、及び特定化合物(1)のうち、少なくとも1つを含まない比較例1~比較例8の水性化粧料は、肌に塗布した後に、みずみずしい感触が得られないことが確認された。