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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】凹凸構造付き基体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/118 20150101AFI20220517BHJP
【FI】
G02B1/118
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020521210
(86)(22)【出願日】2019-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2019019792
(87)【国際公開番号】W WO2019225518
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2018098223
(32)【優先日】2018-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅澤 朋一
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 由久
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠吾
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-185188(JP,A)
【文献】特開2000-221698(JP,A)
【文献】特開2008-076726(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0320531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物からなる被加工基体の被加工面に、中間層、および、アルミナの水和物を主成分とする凹凸構造層が順に積層されてなる積層体を用意する工程と、
前記凹凸構造層をマスクとして、第1のエッチングガスを用い、前記被加工基体の前記被加工面の少なくとも一部が露出するまで、前記中間層をエッチングする第1のエッチング工程と、
前記中間層をマスクとして、前記第1のエッチングガスと異なる第2のエッチングガスを用いて前記被加工基体をエッチングして、前記被加工面に微細凹凸構造を形成する第2のエッチング工程と、
前記積層体を用意する工程の後であって前記第1のエッチング工程の前に、前記中間層の少なくとも一部の表面が露出するまで、前記凹凸構造層をエッチングする前処理工程とを含み、
前記第1のエッチングガスに対する前記被加工基体のエッチングレートが前記中間層のエッチングレートよりも小さく、
前記中間層が金属層、あるいは、シリコンもしくはシリコン化合物を主成分とする層であって、前記金属層がクロムもしくはニッケルである、
凹凸構造付き基体の製造方法。
【請求項2】
前記凹凸構造層の膜厚をdとし、前記被加工基体の前記被加工面に形成される前記微細凹凸構造の凸部高さをhとした場合に、
h/d>1
を満たす請求項1に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
【請求項3】
前記積層体を用意する工程において、前記中間層上にアルミニウムを含有する薄膜を成膜し、該薄膜を温水処理することにより、前記凹凸構造層を形成する請求項1または2に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウムを含有する薄膜が、アルミニウム、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物およびアルミニウム合金の少なくとも1種からなる膜である請求項3に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
【請求項5】
前記積層体を用意する工程において、前記中間層を、スパッタ、真空蒸着あるいは化学気相成長法によって形成する請求項1から4のいずれか1項に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
【請求項6】
前記被加工基体が、シリコン酸化物もしくはアルミニウム酸化物を主成分とする基体である請求項1から5のいずれか1項に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
【請求項7】
前記第1のエッチング工程における前記凹凸構造層のエッチングレートをRa、前記中間層のエッチングレートをRiとした場合、
Ri/Ra>1
を満たす請求項1から6のいずれか1項に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
【請求項8】
前記第2のエッチング工程における前記中間層のエッチングレートをRi、前記被加工基体のエッチングレートをRsとした場合、
Rs/Ri<1
を満たす請求項1から7のいずれか1項に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微細な凹凸パターンを表面に有する凹凸構造付き基体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、プラスチックからなるレンズおよびカバーガラスなどの透明基体においては、表面反射による透過光の損失を低減するために光入射面に反射防止構造あるいは反射防止膜が設けられる場合がある。例えば、可視光に対する反射防止構造としては、可視光の波長よりも短いピッチの微細凹凸構造、いわゆるモスアイ構造が知られている。
【0003】
基板の表面にモスアイ構造を形成する方法として、例えば、特開2008-143162号公報(以下において、特許文献1)には、基板の表面にエッチング転写層を形成し、そのエッチング転写層上に島状粒子を複数形成し、この複数の島状粒子をマスクとしてエッチング転写層および基板をエッチングする方法が開示されている。
【0004】
また、モスアイ構造を形成する方法として、ナノインプリント法を用い、基板表面にレジストからなる凹凸パターンを形成し、このレジストをマスクとして、基板の表面をエッチングする手法も提案されている(特開2013-185188号公報(以下において、特許文献2)参照)。ナノインプリントは、凹凸パターンを有する型を被加工物上に塗布されたレジストに押し付け、レジストを力学的に変形または流動させて微細なパターンを精密にレジスト膜に転写する技術である。パターン転写の後、例えば、パターンが転写されたレジストをマスクとして被加工物をエッチングすることにより凹凸構造を被加工物の表面に形成することができる。
【0005】
また、特許文献2においては、レジストと基板との間に、さらにマスク層を備え、マスク層と基板をエッチングする方法が提案されている。
【0006】
特開2013-185188号公報(以下において、特許文献3)および特開2015-59977号公報(以下において、特許文献4)には、基体表面にベーマイト(アルミナの水和物)からなる微細な凹凸構造層を形成し、この凹凸構造層をマスクとして基体表面をエッチングする方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1において、マスクとして用いられる島状粒子と基板との間にエッチング転写層を備えるのは、基材に形成される凹凸の高低差を十分に大きくするためである。同様に、特許文献2において、レジストと基板との間に、マスク層を備えるのは、基材に形成される凹凸の高低差を十分に大きくするためであり、例えば深さが500nm以上の凹凸構造を形成するのに好適である旨記載されている。
【0008】
特許文献3、4に記載のようにベーマイトからなる微細な凹凸構造層をマスクとして基体をエッチングする手法を用いれば、簡単な工程で基体表面に凹凸構造を形成することができる。図6に、特許文献4の手法により凹凸構造が形成されたガラスの断面の走査型電子顕微鏡(SEM)像を示す。図6は特許文献4の図7を転載したものである。特許文献4の手法により得られた凹凸構造は、図6に示されるように、凹部の深さが不均一であり、かつ、比較的深い凹部が形成されている部分と比較的浅い凹部が形成されている部分とが、微細凹凸パターンの周期よりも長周期で生じている。このような不均一な深さの凹部を有する凹凸パターンが形成された基板において、浅すぎる凹部では十分な反射防止機能が得られず、十分に深い凹部を備えた領域と比較して光の反射が大きくなる。そのため、基板全体を視認する視認者に対して表面ざらつき感を与える恐れがある。
【0009】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものである。本発明の一実施形態は、凹凸の凹部深さのばらつきが抑制された凹凸構造付き基体を製造する製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 無機物からなる被加工基体の被加工面に、中間層、および、アルミナの水和物を主成分とする凹凸構造層が順に積層されてなる積層体を用意する工程と、上記凹凸構造層をマスクとして、第1のエッチングガスを用い、上記被加工基体の上記被加工面の少なくとも一部が露出するまで、上記中間層をエッチングする第1のエッチング工程と、上記中間層をマスクとして、上記第1のエッチングガスと異なる第2のエッチングガスを用いて上記被加工基体をエッチングして、上記被加工面に微細凹凸構造を形成する第2のエッチング工程とを含み、上記第1のエッチングガスに対する上記被加工基体のエッチングレートが上記中間層のエッチングレートよりも小さい、凹凸構造付き基体の製造方法。
<2> 上記凹凸構造層の膜厚をdとし、上記被加工基体の上記被加工面に形成される上記微細凹凸構造の凸部高さをhとした場合に、
h/d>1
を満たす<1>に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<3> 上記積層体を用意する工程において、上記中間層上にアルミニウムを含有する薄膜を成膜し、その薄膜を温水処理することにより、上記凹凸構造層を形成する<1>または<2>に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<4> 上記アルミニウムを含有する薄膜が、アルミニウム、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物およびアルミニウム合金の少なくとも1種からなる膜である<3>に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<5> 上記積層体を用意する工程において、上記中間層を、スパッタ、真空蒸着あるいは化学気相成長法によって形成する<1>から<4>のいずれか1つに記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<6> 上記被加工基体が、シリコン酸化物もしくはアルミニウム酸化物を主成分とする基体である<1>から<5>のいずれか1つに記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<7> 上記第1のエッチング工程の前に、上記中間層の少なくとも一部の表面が露出するまで、上記凹凸構造層をエッチングする前処理工程を有する<1>から<6>のいずれか1つに記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<8> 上記第1のエッチング工程における上記凹凸構造層のエッチングレートをRa、上記中間層のエッチングレートをRiとした場合、
Ri/Ra>1
を満たす<1>から<7>のいずれか1つに記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<9> 上記中間層が金属層である<1>から<8>のいずれか1つに記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<10> 上記第2のエッチング工程における上記中間層のエッチングレートをRi、上記被加工基体のエッチングレートをRsとした場合、
Rs/Ri<1
を満たす<1>から<8>のいずれか1つに記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
<11> 上記中間層がシリコンもしくはシリコン化合物を主成分とする層である<10>に記載の凹凸構造付き基体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態の凹凸構造付き基材の製造方法によれば、凹部深さのばらつきが小さい凹凸構造を有する基材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態の凹凸構造付き基材の製造工程を示す図である。
図2】凹凸構造付き基材を作製するための積層体の準備工程を示す図である。
図3】本発明の一実施形態の凹凸構造付き基材の製造工程を示す図である。
図4】本発明の一実施形態の凹凸構造付き基材の製造工程を示す図である。
図5】本発明の一実施形態の凹凸構造付き基材の製造方法にしたがって作製した凹凸パターンが形成されたサファイアガラスの断面のSEM画像である。
図6】従来例の手法により凹凸パターンが形成されたガラスの断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、視認しやすくするため、図面中の各構成要素の縮尺等は実際のものとは適宜異ならせてある。本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
「凹凸構造付き基体の製造方法」
本発明の一実施形態の凹凸構造付き基体の製造方法を説明する。図1は凹凸構造付き基体の製造工程を模式的に示す図である。
【0015】
一実施形態の凹凸構造付き基体の製造方法においては、まず、無機物からなる被加工基体10の被加工面10aに、中間層20、および、アルミナの水和物を主成分とする凹凸構造層30が順に積層されてなる積層体1を用意する(Step1)。以下において、アルミナの水和物を主成分とする凹凸構造層30をベーマイト層30と称する場合がある。
ベーマイト層30は、表面に複数の凸部32aと複数の凹部32bからなる凹凸構造32(以下において、第1の凹凸構造32という。)を備えている。
【0016】
次に、ベーマイト層30をマスクとして、被加工基体10の被加工面10aの少なくとも一部が露出するまで、中間層20をエッチングする第1のエッチング工程を実施する(Step2)。第1のエッチング工程には、第1のエッチングガスG1を用いる。
第1のエッチング工程では、ベーマイト層30をマスクとして中間層20がエッチングされ、中間層20の表面には複数の凸部22aと複数の凹部22bとからなる凹凸構造22(以下において、第2の凹凸構造22という。)が形成される。ここでは、中間層20の複数の凹部22bのうちの少なくとも一部の凹部22bにおいて被加工面10aが露出するまでエッチングがなされる。
【0017】
第1のエッチング工程の後、第2の凹凸構造22が形成された中間層20をマスクとして、基体10をエッチングし、基体10の被加工面10aに凹凸構造を形成する第2のエッチング工程を実施する(Step3)。第2のエッチング工程では、第1のエッチングガスG1と異なる第2のエッチングガスG2を用いる。エッチングガスG2としては基体10のエッチングに適したガスを用いる。
【0018】
以上の工程により表面に第3の凹凸構造12を備えた凹凸構造付き基体11を得ることができる(Step4)。
【0019】
以下に、上記工程の詳細を順に説明する。まず、図2を参照して積層体1を用意する工程について説明する。図2は、積層体1を用意する工程の詳細を示す図である。積層体1は、以下のようにして得ることができる。
【0020】
まず、被加工面10aを有する被加工基体10を用意する(Step11)。被加工基体10の被加工面10aに中間層20を形成し(Step12)、さらにアルミニウムを含有する薄膜30aを形成する(Step13)。
その後、アルミニウムを含有する薄膜30aを温水処理する(Step14)。例えば、容器7に収容された純水6中に基体10、中間層20および薄膜30aからなる積層体毎浸漬させて温水処理する。この温水処理によりアルミナの水和物を主成分とする凹凸構造層(ベーマイト層)30を形成する(Step15)。
以上の工程により、被加工基体10の被加工面10aに、中間層20、および、アルミナの水和物を主成分とする凹凸構造層30が順に積層されてなる積層体1を作製することができる。
【0021】
被加工基体10は、特に制限はないが、反射防止構造としての凹凸構造を表面に設ける必要のある基体であり、ガラスあるいはサファイアガラスなどの光学部材である。特には、シリコン酸化物もしくはアルミニウム酸化物を主成分とする基体が好適である。ここで、主成分とは、全ての構成元素に対する成分比が50モル%以上である成分をいう。
【0022】
中間層20としては、第1のエッチングガスに対する被加工基体10のエッチングレートよりも大きいエッチングレートを有する材料を用いる。すなわち、第1のエッチング工程においては、被加工基体10のエッチングレートRsに対する中間層20のエッチングレートRiの比(エッチング選択比)Ri/Rsが1より大きい条件でエッチングを行う。なお、エッチング選択比Ri/Rsは3より大きいことがより好ましい。中間層20としては、具体的にはクロムあるいはニッケルなどの金属層、もしくはシリコンあるいはシリコン化合物を主成分とする層が好ましい。中間層20の形成方法は特に制限ないが、スパッタ、真空蒸着あるいは化学気相成長法によって形成することが好ましい。
【0023】
アルミニウムを含有する薄膜を温水処理すると、その表面にアルミナの水和物(Al・HO)、すなわちベーマイトを主成分とする微細凹凸構造が形成されることが知られている。ここで、アルミナ水和物を主成分とする、とは、凹凸構造層に占めるアルミナの水和物の含有率が50質量%以上であることをいう。
【0024】
アルミニウムを含有する薄膜30aは、アルミニウム、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物、あるいはアルミニウム酸窒化物のいずれかからなるものであることが好ましい。さらに、薄膜30aはアルミニウム合金からなるものであってもよい。「アルミニウム合金」とは、アルミニウムを主成分とし、かつ、ケイ素(Si)、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、クロム(Cr)、チタン(Ti)およびニッケル(Ni)等の元素の少なくとも1種を含む化合物又は固溶体を意味する。薄膜30aは、凹凸構造を形成する観点、すなわちベーマイト化の観点から、すべての金属元素に対するアルミニウムの成分比が80モル%以上であることが好ましい。このようなアルミニウムを主成分とする薄膜は温水処理によりベーマイトなどのアルミナの水和物へと変質し、その表面にランダムな形状および配置で形成された複数の凸部32aおよび複数の凹部32bからなる第1の凹凸構造32が形成される。
【0025】
温水処理後に形成されるベーマイト層30は透明であり、表面に形成される第1の凹凸構造32とその下層に構成される平坦な緻密層とからなる。第1の凹凸構造32は、凸部32aの大きさ(頂角の大きさ)や向きはさまざまであるが概ね鋸歯状の断面を有しており、可視光の波長よりも小さい平均凸部間距離を有する。凸部間の距離とは凹部を隔てた最隣接凸部の頂点同士の距離をいい、平均凸部間距離は、SEM(走査型電子顕微鏡)で凹凸構造の表面画像を撮影し、画像処理をして2値化し、統計的処理によって求めることができる。凸部間の平均距離は、数10nm~数100nmオーダーである。凸部間の平均距離は150nm以下であることが好ましく、100nm以下がより好ましい。例えば、厚さ10nmのアルミニウムを含有する薄膜を100℃の温水中で3分間煮沸すると、凸部同士の間隔が50~300nm、凸部の高さが50~100nmのランダムな配置の凹凸構造が得られる。
【0026】
温水処理後に形成されるベーマイト層30の厚みは、中間層20の表面から凸部32aのピークまでの高さと規定する。ベーマイト層(凹凸構造層)30の厚みは、10nm以上であれば、マスクとして適用することが可能であるが、50nm以上400nm以下であることが好ましく、100nm以上200nm以下であることがより好ましい。
【0027】
ベーマイト層30をエッチングによって後退させて中間層20を露出させることから緻密層の厚さは出来るだけ薄い方が好ましい。また、緻密層の厚さは、ベーマイト層30の厚さに依存するが、例えばベーマイト層の厚さが150nmとした場合には、100nm以下であることが好ましい。また、被加工基体10に反射防止性能の高い凹凸構造を形成するという観点からは、第1の凹凸構造32の高低差は100nm以上であることが好ましい。緻密層の厚さは、例えば薄膜30aの温水処理前における厚さ、その組成およびその緻密さ(密度)等に依存する。上記要件を満たす層構造が得られる薄膜30aの温水処理前の厚さはおよそ0.5~60nmであり、その厚さは2~40nmであるこが好ましく、5~20nmであることがより好ましい。
【0028】
アルミニウムを含有する薄膜30aを中間層20上に形成する方法は、特に限定されない。例えば、蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、化学気相成長法をはじめとする気相法、あるいは、アルミニウム前駆体溶液をスピンコート法、ディップコート法、インクジェット法をはじめとする液相法により塗布した後に焼結して形成するゾルゲル法を用いることができる。
【0029】
本明細書において「温水処理」とは、温水を、アルミニウムを含有する薄膜に作用させる処理を意味する。温水処理は、例えば、アルミニウムを含有する薄膜30aが形成された積層体を室温の水(特には純水が好ましい。)に浸漬した後に水を煮沸する方法、高温に維持された温水に上記積層体を浸漬する方法、あるいは高温水蒸気に曝す方法等である。例えば本実施形態では、ホットプレート8を用いて容器7中の純水6を加熱し煮沸させた中に積層体毎浸漬させている。煮沸や浸漬する時間および温水の温度は、所望の凹凸構造に応じて適宜設定される。目安としての時間は1分以上であり、特には3分以上、15分以下が適する。温水の温度はベーマイト化の観点から、60℃以上が好ましく、特には、90℃より高温であることが望ましい。温度が高いほど処理の時間が短くて済む傾向にある。
【0030】
アルミニウムを含有する薄膜30aの厚みや、薄膜30aを温水処理して得られるベーマイト層30の厚みはそれぞれの工程において、断面SEM像を撮影すれば求めることができる。しかしながら、実際の製造時には、断面出しを行うことができないため、薄膜30aの膜厚と成膜時間との関係、薄膜30aの膜厚とベーマイト層30の厚みとの関係などを予め求めておき、予め求められた関係に従って、製造すればよい。ベーマイト層30すなわちアルミナの水和物を主成分とする凹凸構造層の膜厚は、断面SEM像において、画像処理により求めることができる。なお、ベーマイト層30を部分的にエッチング除去したうえで、中間層20の表面から、例えば無作為に抽出した10個の凸部32aのピークまでの高さを原子間力顕微鏡(AFM)により計測して、その平均値を膜厚として求めることもできる。
【0031】
次に第1および第2のエッチング工程の詳細について説明する。
【0032】
第1のエッチング工程および第2のエッチング工程は、サイドエッチングによる形状劣化を抑制するために、微細凹凸構造の表面側からエネルギービームを照射する異方性エッチングによって実施されることが好ましい。このようなエッチングとしては、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチングなどが挙げられる。
【0033】
第1のエッチング工程では、ベーマイト層30をマスクとして中間層20をエッチングする。アルミナの水和物からなるベーマイト層30をその凹凸構造32(以下において第1の凹凸構造32という。)に沿ってエッチングすることによりその表面形状を後退させて、中間層20にベーマイト層30の凹凸構造32を反映した形状の第2の凹凸構造22を形成する。なお、アルミニウムを含有する薄膜の凹凸構造が「反映された」とは、その凹凸構造の凸部または凹部それぞれに一対一に対応する位置に凸部または凹部を有する(いわゆる転写)程の位置精度は必要ではなく、何らかの起伏に類似性を有する程度の状態を意味する。
【0034】
第1のエッチング工程において、中間層20に、複数の凸部22aおよび複数の凹部22bを含む第2の凹凸構造22が形成される。
【0035】
第1のエッチング工程は、ベーマイト層30のエッチングレートをRa、中間層20のエッチングレートをRiとした場合に、エッチング選択比Ri/Raは、Ri/Ra>1
を満たすエッチング条件で実施することが好ましい。
なお、エッチング選択比Ri/Raは20以下であることが好ましい。
【0036】
エッチングガスG1としては、中間層20のエッチングに適したガスが選択される。ベーマイト層30の凹部から中間層20が露出した状態である場合に、上記エッチング条件でエッチングすれば、ベーマイト層30よりも中間層20のエッチングが早く進むので、ベーマイト層30の凹凸の高低差よりも大きい凹凸の高低差を有する第2の凹凸構造22を形成することができる。エッチングガスG1としては、被加工基体10をエッチングしにくいガスを選択することが好ましい。エッチングガスG1に対する被加工基体10のエッチングレートが中間層20のエッチングレートよりも小さいので、被加工基体10がエッチングストップ層として機能して、第2の凹凸構造22の凹部の深さ位置を被加工面10a近傍に揃えることができる。
【0037】
なお、本明細書において、凹凸構造の凹凸の高低差とは、凹凸の凸部の頂点と凹部の底点との距離をいい、「凹凸の高低差」、「凹部の深さ」および「凸部の高さ」は同等の意味で用いている。また、1つの凹凸構造における凹凸の高低差は、その凹凸構造における平均の凹凸の高低差を意味する。
【0038】
第2のエッチング工程では、第1のエッチング工程において形成された第2の凹凸構造22が形成された中間層20をマスクとして、第1のエッチングガスG1とは異なる第2のエッチングガスG2を用いて被加工基体10をエッチングして、被加工面10aに微細な凹凸構造12(以下において、第3の凹凸構造12という。)を形成する。
【0039】
第2のエッチング工程は、中間層20のエッチングレートをRi、被加工基体10のエッチングレートをRsとした場合に、
Rs/Ri<1
を満たすエッチング条件で実施してもよい。
【0040】
エッチングガスG2としては、被加工基体10を効率よくエッチングできるガスを選択すればよい。例えば、被加工基体がサファイアガラスであれば、アルゴン(Ar)と三塩化ホウ素(BCl)を含むガスが好ましい。また、例えば、被加工基体が酸化シリコン(SiO)を主成分とするガラスであれば、四フッ化炭素(CF)を含むガスが好ましい。
【0041】
第2のエッチング工程は、中間層20が除去されるまで、あるいは被加工基材10に所望の深さの凹部が形成されるまで行う。反射防止構造として用いる場合には100nm以上の深さの凹部を有する凹凸構造を有することが好ましい。凹部の深さは200nm以上であることがより好ましい。一方、反射防止構造の機械的強度の関係からは、凹部の深さは500nm以下であることが好ましく、400nm以下であることがより好ましい。
【0042】
第2のエッチング工程において中間層20が残留した場合には、後工程で中間層20を除去すればよい。また、第1および第2のエッチング工程において、構造上に膜付着(デポ)を生じる事がある。この場合も、後工程でデポを除去すれば良く、例えば適切な洗浄液で洗浄し、デポを除去する事が好ましい。
【0043】
以上の工程により、凹凸構造付き基体を作製することができる。第1のエッチング工程において中間層20に設けられる第2の凹凸構造22の凹部の底の深さ方向位置のばらつきが少ない。従って、第2のエッチング工程において被加工面の凹部形成のエッチング時間を均一にすることができ、結果として被加工基体に形成される凹部深さを均一にすることができる。
【0044】
なお、基体の表面に形成される凹凸構造の凹部深さ(凸部高さ)hは、上記のアルミナの水和物を主成分とする凹凸構造層の膜厚と同様に、断面SEM画像から求めることができる。また、AFMにより、凹凸構造の高さ計測を行い、凹部底点および凸部頂点をそれぞれ10個無作為に抽出する。その抽出した凹部底点の平均の深さ位置と凸部頂点の平均の高さ位置とを求め、両者間の距離を凹凸構造の深さとして求めてもよい。
【0045】
アルミナの水和物からなる凹凸構造層の膜厚をdとし、最終的に基体の表面に形成される凹凸構造の凹部深さ(凸部高さ)hとした場合、dとhとはd≦hの関係にあることが好ましい。h/d>1であることがより好ましい。h、dは同等の測定方法により測定した値の比とする。
【0046】
なお、第1のエッチング工程の前に、中間層20の少なくとも一部の表面が露出するまで、凹凸構造層30をエッチングする前処理工程を有することも好ましい。
【0047】
図3は、本発明の一実施形態において、中間層20Aが金属層であり、被加工基体10がサファイア基板である場合の製造工程を示す。
金属層としては、クロム(Cr)あるいはニッケル(Ni)が好適である。
被加工基体10であるサファイア基板上に中間層20Aとして金属層を備え、金属層の表面にアルミナの水和物からなる凹凸構造層30(ベーマイト層30)を備えた積層体は、上記図2を参照して説明した手順で作製することができる。
なお、金属層からなる中間層20Aの膜厚は、被加工基体10の表面に形成したい凹凸構造の高低差hの0.1~0.5倍程度とすることが好ましく、例えば、20~50nm程度とすることが好ましい。
【0048】
ここでは、まず、第1のエッチング工程の前に、前処理工程として、ベーマイト層30のブレークスルー処理を行う(Step21)。ブレークスルー処理とは、ベーマイト層30をエッチングし、ベーマイト層30の凹部の少なくとも一部において、中間層20Aの表面を露出させる処理である。ベーマイト層30の凹凸構造32の下層に形成されている平坦な緻密層に凹部が形成され、その凹部から中間層20Aの表面が露出して、ベーマイト層30が略凹凸構造のみとなるまで、エッチングすることが好ましい。ブレークスルー処理においては、ベーマイト層30を効率よくエッチングするために、すなわちアルミナ水和物に対するエッチング効率がよいエッチングガスG20を用いる。例えば、アルゴン(Ar)およびトリフルオロメタン(CHF)を含むガスをエッチングガスG20として用いる。
【0049】
なお、ブレークスルー処理の際のエッチングガスに対する中間層20AのエッチングレートRiがベーマイト層30のエッチングレートRaよりも小さいことが好ましい。中間層20Aのエッチングレートが小さければ、中間層20Aがブレークスルー処理の際のエッチングストップとして機能して、ベーマイト層30の凹部深さ位置が中間層20Aの表面近傍で揃う。したがって、その後に実施される第1のエッチング処理および第2のエッチング処理における凹部深さの均一化をさらに高めることができる。
【0050】
上記ブレークスルー処理の後、第1のエッチング工程を行う(Step22)。ここでは、ベーマイト層30をマスクとして金属層からなる中間層20Aをエッチングするので、金属層に対するエッチング効率のよい第1のエッチングガスG21を用いる。例えば、Arおよび塩素(Cl)を含むガスを第1のエッチングガスG21として用いる。ベーマイト層30のエッチングレートをRa、中間層20AのエッチングレートをRiとした場合に、エッチング選択比Ri/Raが1より大きくなるエッチング条件とすることが好ましい。
【0051】
上記第1のエッチングガスG21を用いたエッチングは、中間層20Aに形成される複数の凹部のうちの少なくとも一部の凹部に被加工基体10の被加工面10aが露出されるまで実施される。被加工基体10であるサファイアガラスは、上記ArおよびClを含むエッチングガスG21に対するエッチングレートRsが中間層20AのエッチングレートRiよりも小さい(Ri>Rs)。したがって、被加工面10aが露出された箇所においてはエッチングの進みが遅くなる。被加工面10aもいくらかエッチングされるが、中間層20Aにおけるエッチングレートが大きいので、中間層20Aの、被加工面10aに到達していない凹部のエッチングがより速く進行する。従って、第1のエッチング工程において中間層20Aに形成される第2の凹凸構造22の凹部22bの底の深さ方向位置を被加工基体10の被加工面10aの近傍に揃えることができる。
【0052】
引き続き、第2のエッチング工程を行う(Step23)。ここでは、第2の凹凸構造22を備えた中間層20Aをマスクとして、被加工基体10をエッチングするので、サファイアガラスを効率的にエッチングする第2のエッチングガスG22を用いる。例えば、Arと三塩化ホウ素(BCl)を含むガスを第2のエッチングガスG22として用いる。
【0053】
以上の工程により表面に、高低差の均一な第3の凹凸構造12を備えた凹凸構造付き基体11を得ることができる(Step24)。
【0054】
中間層20Aとして金属層を用いた場合、第2のエッチング工程において、第2のエッチングガスとして、被加工基体10と中間層20Aのエッチング選択比が大きいものを選択することができる。したがって、中間層20Aは薄く、第2の凹凸構造22の凹凸の高低差は、被加工面に形成したい凹凸の高低差hの0.1~0.5倍程度でよい。
【0055】
エッチングマスクとして用いられる第2の凹凸構造22の凹部22bの底の深さ方向位置が略均一であるため、被加工面10aへの凹部形成のためのエッチングの時間を揃えることができる。従って、被加工基体10に設けられる凹部のエッチング深さのばらつきを抑制することができる。すなわち、中間層20Aを用いることなく、被加工面に直接ベーマイトマスクを設けてエッチングを行う場合と比較して均一に揃えることができる。
【0056】
図4は、本発明の一実施形態において、中間層20Bがシリコン層もしくはシリコン化合物層であり、被加工基体10がサファイア基板である場合の製造工程を示す。シリコン化合物層としてはシリコン酸化物が好ましい。ここでは、中間層としてシリコン層を用いる場合について説明する。
【0057】
被加工基体10であるサファイア基板上に中間層20Bとしてシリコン層を備え、シリコン層の表面にアルミナの水和物からなる凹凸構造層30(ベーマイト層30)を備えた積層体は、上記図2を参照して説明した手順で作製することができる。
なお、シリコン層からなる中間層20Bの膜厚は、被加工基体10の表面に形成したい凹凸構造の高低差hの1.5~2.5倍程度とすることが好ましく、例えば、200~500nm程度とすることが好ましい。
【0058】
図3を参照して説明した製造方法と同様に、まず第1のエッチング工程の前に、前処理工程として、ベーマイト層30のブレークスルー処理を行う(Step31)。本例においても、ブレークスルー処理においては、ベーマイト層30を効率よくエッチングするために、例えば、アルゴン(Ar)およびトリフルオロメタン(CHF)を含むガスをエッチングガスG30として用いる。
【0059】
上記ブレークスルー処理の後、第1のエッチング工程を行う(Step32)。ここでは、ベーマイト層30をマスクとしてシリコン層からなる中間層20Bをエッチングするので、シリコンに対するエッチング効率のよい第1のエッチングガスG31を用いる。例えば、CFHおよび六フッ化硫黄(SF)を含むガスを第1のエッチングガスG31として用いる。ベーマイト層30のエッチングレートをRa、中間層20BのエッチングレートをRiとした場合に、エッチング選択比Ri/Raが1より大きくなるエッチング条件とすることが好ましい。
【0060】
上記第1のエッチングガスG31を用いたエッチングは、中間層20Bに形成される複数の凹部のうちの少なくとも一部の凹部に被加工基体10の被加工面10aが露出されるまで実施される。被加工基体10であるサファイアガラスは、上記CFHおよびSFを含むガスG31に対するエッチングレートRsが中間層20BのエッチングレートRiよりも小さい。したがって、被加工面10aが露出された箇所においてはエッチングの進みが遅くなる。被加工面10aもいくらかエッチングされるが、中間層20Bにおけるエッチングレートが大きいので、中間層20Bの、被加工面10aに到達していない凹部のエッチングがより速く進行する。従って、第1のエッチング工程において中間層20Bに形成される第2の凹凸構造22の凹部22bの底の深さ方向位置を被加工基体10の被加工面10aの近傍に揃えることができる。
【0061】
引き続き、第2のエッチング工程を行う(Step33)。ここでは、第2の凹凸構造22を備えた中間層20Bをマスクとして、被加工基体10をエッチングするので、サファイアガラスを効率的にエッチングする第2のエッチングガスG32を用いる。例えば、Arと三塩化ホウ素(BCl)を含むガスを第2のエッチングガスG32として用いる。
【0062】
以上の工程により表面に凹凸構造12を備えた凹凸構造付き基体11を得ることができる(Step34)。
【0063】
一般に、サファイアガラスを効率よくエッチングするエッチングガスに対し、シリコン系の材料のエッチングレートは高い。そのため、第2のエッチングガスG32に対して、中間層20BのエッチングレートRi、被加工基体10のエッチングレートをRsとした場合、Rs/Ri<1となることが多い。
したがって、サファイアガラスのエッチングマスクとしてシリコン系の材料を用いることは一般的ではない。
【0064】
しかしながら、シリコン系材料はエッチング適性に優れ、制御が容易であるため、第1のエッチング工程において、第2の凹凸構造を精度よく形成することができる。また、シリコン系材料のエッチングの際には、サファイアガラスをエッチングストップ層として効果的に機能させることができるため、凹部の深さ位置が均一な凹凸構造を容易に作製することができ、好ましい。
【0065】
中間層20Bを十分厚く形成し、第2の凹凸構造22の凹凸の高低差を、サファイアガラスに形成したい凹凸の高低差の1.5~2.5倍程度にしておくことで、シリコン系の材料をサファイアガラスのエッチングマスクとして用いることができる。
【0066】
第2のエッチング工程は、シリコンからなる中間層20Bが除去されるまで、あるいはサファイアガラスからなる被加工基板に所望の深さの凹部が形成されるまで実施する。エッチングマスクとして用いられる第2の凹凸構造22の凹部22bの底の深さ方向位置が略均一であるため、被加工面10aへの凹部形成のためのエッチングの時間を揃えることができる。従って、被加工基体10に設けられる凹部のエッチング深さのばらつきを抑制し、高低差の均一な第3の凹凸構造12を基体10の被加工面10aに形成することができる。
【0067】
上記各実施形態の凹凸構造付き基体の製造方法によれば、凹凸高低差のばらつきが抑制された凹凸構造を備えた基体を効率的に得ることができる。
【実施例
【0068】
本発明の実施例の凹凸構造付き基体の製造方法を以下に説明する。
【0069】
ここでは、図4を用いて説明した製造方法に従って凹凸構造付き基体を作製した。
被加工基体としてサファイア基板を用い、サファイア基板上に中間層としてシリコン層を400nm厚みで形成した。
さらにシリコン層の表面にスパッタリング法によりアルミニウムを含有する薄膜としてアルミニウム膜を10nm成膜した。次いで、アルミニウム膜が形成された積層体を100℃の温水に3分間浸漬させて温水処理することにより、アルミナの水和物からなる凹凸構造層、すなわちベーマイト層を得た。ベーマイト層の厚みは150nmであった。
【0070】
次に、ベーマイト層の第1の凹凸構造の凹部に中間層を露出させるブレークスルー処理を行った。ブレークスルー処理には、ArおよびCHFを含むガスをエッチングガスとして用いた。
【0071】
その後、ベーマイト層をマスクとして、CFHおよびSFを含むガスを第1のエッチングガスとして、第1のエッチング工程を実施し、シリコン層をエッチングした。エッチングはシリコン層に第2の凹凸構造が形成され、凹部の一部にサファイアガラスが露出するまで行った。第2の凹凸構造の凹凸高低差は400nm程度であった。
【0072】
引き続き、第1のエッチング処理により、第2の凹凸構造を有するシリコン層をマスクとして、第2のエッチング工程を実施した。ArとBClを含むガスを第2のエッチングガスとして用いた。エッチングはシリコン層が全面に亘ってほぼ除去されるまで行い、サファイアガラスの表面に第2の凹凸構造に対応する第3の凹凸構造を形成した。
【0073】
以上の工程により、第3の凹凸構造を表面に備えたサファイアガラスからなる凹凸構造付き基体を得た。
【0074】
図5は、上記製造方法により製造したパターン原盤の断面を撮像したSEM画像である。図5から、表面に複数の凸部が形成されており、凸部高さが揃った凹凸構造が設けられていることが確認でき、本発明の効果が実証された。本例においては、凸部高さ、すなわち凹部深さが約330nm程度の凹凸構造が得られた。
【0075】
2018年5月22日に出願された日本出願特願2018-098223号の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6