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  • 特許-仮接着用組成物、キットおよび積層体 図1
  • 特許-仮接着用組成物、キットおよび積層体 図2
  • 特許-仮接着用組成物、キットおよび積層体 図3
  • 特許-仮接着用組成物、キットおよび積層体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】仮接着用組成物、キットおよび積層体
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20220517BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20220517BHJP
   C09J 125/04 20060101ALI20220517BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20220517BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J11/06
C09J125/04
B32B7/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020553170
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040373
(87)【国際公開番号】W WO2020080328
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2018196592
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】増田 誠也
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219511(JP,A)
【文献】特開2016-11361(JP,A)
【文献】特開2018-35279(JP,A)
【文献】国際公開第2017/82269(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/181879(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/52315(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/194917(WO,A1)
【文献】特開2018-37558(JP,A)
【文献】国際公開第2016/152598(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/150320(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
B32B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーと、有機溶剤と、界面活性剤を含み、
前記有機溶剤が、有機溶剤全体に対し50~95質量%の割合で、沸点が120℃以下である低沸点有機溶剤を含み、
前記界面活性剤が、フッ素系の界面活性剤A、および、シリコーン系の界面活性剤Bを含み、
前記界面活性剤Aおよび前記界面活性剤Bについて、式(1)を満たす、仮接着用組成物;
/W=1.5~5 式(1);
式(1)において、Wは、質量%表示で、前記界面活性剤Aの界面活性剤全体に対する含有量を表し、Wは、質量%表示で、前記界面活性剤Bの界面活性剤全体に対する含有量を表す。
【請求項2】
前記W/Wが1.5~3.0である、
請求項1に記載の仮接着用組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤Bの組成物全体に対する含有量が、0.00005~1質量%である、
請求項1または2に記載の仮接着用組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤の組成物全体に対する含有量が、0.00002~2質量%である、
請求項1~3のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤の組成物全体に対する含有量が、60~95質量%である、
請求項1~4のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項6】
前記低沸点有機溶剤の含有量が、前記有機溶剤全体に対し50質量%以上である、
請求項1~5のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項7】
前記仮接着用組成物の液体状態でのステンレスSUS304に対する接触角が50度以下である、
請求項1~6のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項8】
前記低沸点有機溶剤が脂肪族炭化水素を含む、
請求項1~7のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項9】
前記有機溶剤が芳香族炭化水素を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤が、アセチレン系の界面活性剤Cを含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項11】
前記界面活性剤Cおよび前記界面活性剤Bについて、式(2)を満たす、
請求項10に記載の仮接着用組成物;
/W=0.005~500 式(2);
式(2)において、Wは、質量%表示で、前記界面活性剤Cの界面活性剤全体に対する含有量を表す。
【請求項12】
前記界面活性剤および前記有機溶剤について、式(3)を満たす、
請求項1~11のいずれか1項に記載の仮接着用組成物;
ALL/W=0.000002~0.006 式(3);
式(3)において、WALLは、質量%表示で、界面活性剤全体の組成物全体に対する含有量を表し、Wは、質量%表示で、有機溶剤全体の組成物全体に対する含有量を表す。
【請求項13】
前記エラストマーが水添物を含む、
請求項1~12のいずれか1項に記載の仮接着用組成物。
【請求項14】
前記エラストマーが、ポリスチレン系エラストマー水添物を含む、
請求項13に記載の仮接着用組成物。
【請求項15】
前記ポリスチレン系エラストマー水添物のエラストマー全体に対する含有量が、10~100質量%である、
請求項14に記載の仮接着用組成物。
【請求項16】
矩形基板と、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物とを含むキット。
【請求項17】
矩形基板と、請求項1~15のいずれか1項に記載の組成物を用いて形成された仮接着層とを含む積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮接着用組成物に関する。また、本発明は、この仮接着用組成物を含むキット、および、この仮接着用組成物を用いて形成された仮接着層を含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IC(集積回路)チップの小型化等を目的として、半導体デバイス製造において、ウェハ等の被加工基板の厚さを200μm以下となるまで薄くすることが試みられている。
【0003】
被加工基板が上記のように薄い場合には、半導体デバイス製造のための処理を被加工基板に施したり、工程間で被加工基板を移動させたりする際に、安定的に損傷なく単独で扱うことは困難である。そこで、被加工基板のハンドリング性を向上させるために、被加工基板をキャリア基板(ガラス基板やフィルム等)に仮接着し、必要な処理を施した後、不要となったキャリア基板を被加工基板から剥離する技術が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1および2には、仮接着用組成物(仮接着剤)をキャリア基板に塗布し乾燥させて、仮接着層を形成し、この仮接着層を介して半導体ウェハをキャリア基板に仮接着することが記載されている。
【0005】
従来、仮接着用組成物をキャリア基板上に塗布する方法は、薄く均一な接着層が短時間で容易に形成できるということ等から、スピンコート法が主流である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6034796号公報
【文献】国際公開第2016/052315号(A1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、基板1枚当たりのチップ数を増やせる観点から、半導体デバイス製造用の被加工基板を矩形状にすることが検討されており、これに伴って、組成物の塗布方法も、矩形範囲への塗布を可能にする方法(以下、単に「矩形型塗布方法」ともいう。)が注目を集めている。このような矩形型塗布方法としては、例えば、スリットコート法、バーコート法およびローラーコート法などがある。
【0008】
今回、上記のような矩形型塗布方法を用いて仮接着用組成物をキャリア基板上に塗布する場合に、従来の方法では、仮接着用組成物の塗布性および仮接着層の剥離性を充分に確保することが難しい場合があるという問題が見出された。
【0009】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、矩形型塗布方法を用いても、仮接着用組成物の塗布性および仮接着層の剥離性を充分に確保できる仮接着用組成物の提供を目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記仮接着用組成物と矩形基板を含むキットの提供を目的とする。
【0011】
さらに、本発明は、上記仮接着用組成物を用いて形成された仮接着層と矩形基板を含む積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は、仮接着用組成物の界面変動に伴う内部挙動を利用して、(a)コーター部材に接するときの当該組成物の固液界面の状態、および、(b)外気に接するときの当該組成物の気液界面の状態を、塗布膜の乾燥前に動的に調整することにより、解決できた。具体的には、以下の手段<1>により、好ましくは<2>~<17>により、上記課題は解決された。
【0013】
<1>
エラストマーと、有機溶剤と、界面活性剤を含み、
有機溶剤が、有機溶剤全体に対し50~95質量%の割合で、沸点が120℃以下である低沸点有機溶剤を含み、
界面活性剤が、フッ素系の界面活性剤A、および、シリコーン系の界面活性剤Bを含み、
界面活性剤Aおよび界面活性剤Bについて、式(1)を満たす、仮接着用組成物;
/W=1.5~5 式(1);
式(1)において、Wは、質量%表示で、界面活性剤Aの界面活性剤全体に対する含有量を表し、Wは、質量%表示で、界面活性剤Bの界面活性剤全体に対する含有量を表す。
<2>
/Wが1.5~3.0である、
<1>に記載の仮接着用組成物。
<3>
界面活性剤Bの組成物全体に対する含有量が、0.00005~1質量%である、
<1>または<2>に記載の仮接着用組成物。
<4>
上記界面活性剤の組成物全体に対する含有量が、0.00002~2質量%である、
<1>~<3>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<5>
有機溶剤の組成物全体に対する含有量が、60~95質量%である、
<1>~<4>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<6>
低沸点有機溶剤の含有量が、有機溶剤全体に対し50質量%以上である、
<1>~<5>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<7>
仮接着用組成物の液体状態でのステンレスSUS304に対する接触角が50度以下である、
<1>~<6>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<8>
低沸点有機溶剤が脂肪族炭化水素を含む、
<1>~<7>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<9>
有機溶剤が芳香族炭化水素を含む、
<1>~<8>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<10>
上記界面活性剤が、アセチレン系の界面活性剤Cを含む、
<1>~<9>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<11>
界面活性剤Cおよび界面活性剤Bについて、式(2)を満たす、
<10>に記載の仮接着用組成物;
/W=0.005~500 式(2);
式(2)において、Wは、質量%表示で、界面活性剤Cの界面活性剤全体に対する含有量を表す。
<12>
上記界面活性剤および有機溶剤について、式(3)を満たす、
<1>~<11>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物;
ALL/W=0.000002~0.006 式(3);
式(3)において、WALLは、質量%表示で、界面活性剤全体の組成物全体に対する含有量を表し、Wは、質量%表示で、有機溶剤全体の組成物全体に対する含有量を表す。
<13>
エラストマーが水添物を含む、
<1>~<12>のいずれか1つに記載の仮接着用組成物。
<14>
エラストマーが、ポリスチレン系エラストマー水添物を含む、
<13>に記載の仮接着用組成物。
<15>
ポリスチレン系エラストマー水添物のエラストマー全体に対する含有量が、10~100質量%である、
<14>に記載の仮接着用組成物。
<16>
矩形基板と、<1>~<15>のいずれか1つに記載の組成物とを含むキット。
<17>
矩形基板と、<1>~<15>のいずれか1つに記載の組成物を用いて形成された仮接着層とを含む積層体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の仮接着用組成物により、仮接着層を形成する際に、矩形型塗布方法を用いても、仮接着用組成物の塗布性および仮接着層の剥離性を充分に確保できる。そして、本発明のキットにより、矩形型塗布方法を用いて、効率よく剥離性の良好な仮接着層を矩形基板上に形成できる。さらに、本発明の積層体により、半導体デバイス製造において、剥離性の良好な仮接着層を有する矩形基板を用いて、被加工基板を効率よくキャリア基板に仮接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】スリットコーターを示す概略断面図である。
図2】バーコーターを示す概略断面図である。
図3】半導体デバイスの製造方法を示す第一の実施形態の概略図である。
図4】半導体デバイスの製造方法を示す第二の実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の主要な実施形態について説明する。しかしながら、本発明は、明示した実施形態に限られるものではない。
【0017】
本明細書において「~」という記号を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0018】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、その工程の所期の作用が達成できる限りにおいて、他の工程と明確に区別できない工程も含む意味である。
【0019】
本明細書における基(原子団)の表記について、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に、置換基を有するものをも包含する意味である。例えば、単に「アルキル基」と記載した場合には、これは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)、および、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)の両方を包含する意味である。
【0020】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の両方、または、いずれかを意味し、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」および「メタクリロイル」の両方、または、いずれかを意味する。
【0021】
本明細書において、組成物中の固形分の濃度は、その組成物の総質量に対する、溶剤を除く他の成分の質量百分率によって表される。また、温度は、特に述べない限り23℃を指すものとする。
【0022】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、特に述べない限り、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC測定)に従い、ポリスチレン換算値として示される。この重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えば、HLC-8220(東ソー(株)製)を用い、カラムとしてガードカラムHZ-L、TSKgel Super HZM-M、TSKgel Super HZ4000、TSKgel Super HZ3000およびTSKgel Super HZ2000(東ソー(株)製)を用いることによって求めることができる。また、特に述べない限り、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いて測定したものとする。また、特に述べない限り、GPC測定における検出には、UV線(紫外線)の波長254nm検出器を使用したものとする。
【0023】
本明細書において、積層体を構成する各層の位置関係について、「上」または「下」と記載したときには、注目している複数の層のうち基準となる層の上側または下側に他の層があればよい。すなわち、基準となる層と上記他の層の間に、さらに第3の層や要素が介在していてもよく、基準となる層と上記他の層は接している必要はない。また、特に断らない限り、基材に対し層が積み重なっていく方向を「上」と称し、または、感光層がある場合には、基材から感光層へ向かう方向を「上」と称し、その反対方向を「下」と称する。なお、このような上下方向の設定は、本明細書中における便宜のためであり、実際の態様においては、本明細書における「上」方向は、鉛直上向きと異なることもありうる。
【0024】
<仮接着用組成物>
本発明の仮接着用組成物は、エラストマーと、有機溶剤と、界面活性剤を含み、有機溶剤が、有機溶剤全体に対し50~95質量%の割合で、沸点が120℃以下である低沸点有機溶剤を含み、界面活性剤が、フッ素系の界面活性剤A、および、シリコーン系の界面活性剤Bを含み、界面活性剤Aおよび界面活性剤Bについて、式(1)を満たす。
【0025】
/W=1.5~5 式(1)
式(1)において、Wは、質量%表示で、界面活性剤Aの界面活性剤全体に対する含有量を表し、Wは、質量%表示で、界面活性剤Bの界面活性剤全体に対する含有量を表す。
【0026】
本発明の仮接着用組成物は、所定量の上記低沸点有機溶剤、ならびに、式(1)を満たす界面活性剤Aおよび界面活性剤Bを含むことにより、仮接着層を形成する際に、矩形型塗布方法を用いても、仮接着用組成物の塗布性および仮接着層の剥離性を充分に確保できる。詳細は不明であるが、これは下記のように推測される。
【0027】
例えば、図1に示されるように、スリットコート法では、スリットコーター1のステンレス製のブレード16が形成する隙間13から吐出された仮接着用組成物Lが、ブレード16に対し相対的に移動する基板S(被加工基板およびキャリア基板のどちらでもよい。)の表面に塗布される。図1では、ブレード16が基板Sに対して方向Aに移動している。これにより、ブレード16の幅と相対移動距離に応じた矩形範囲に塗布膜14が形成され、これを乾燥することで仮接着層が形成される。また、図2に示されるように、バーコート法でも、ワイヤーバー25(ステンレス鋼線が精密に巻き付けられたシャフト)やステンレス製の塗布液供給部26を備えたバーコーター2を用いて、矩形範囲に塗布膜24が形成される。このバーコーター2では、仮接着用組成物Lが、塗布液供給部26およびワイヤーバー25の隙間23から供給され、ワイヤーバー25により塗布膜が均一に平坦化され、塗布膜24が乾燥することにより、仮接着層が形成される。したがって、上記のような矩形型塗布方法を用いて仮接着用組成物を基板上に塗布する場合には、例えば、ブレードやワイヤーバーなどのコーター部材から組成物の吐出を促進したり、塗布膜の乾燥時間を短縮したりすることにより、仮接着用組成物の塗布性が向上すると考えられる。
【0028】
そこで、本発明の仮接着用組成物において、揮発しやすい低沸点有機溶剤の分量が多い溶剤を用いて上記組成物の粘性を調整した。これにより、コーター部材からの上記組成物の吐出が容易になるとともに、溶剤の乾燥時間が短縮されると考えられる。そして、本発明の仮接着用組成物は、金属材料に対する濡れ性(親和性)の高いシリコーン系の界面活性剤Bを含むことにより、コーター部材からの上記組成物の吐出がさらに促進されると考えられる。
【0029】
また、本発明の仮接着用組成物は、層状の組成物表面に偏在しやすいフッ素系の界面活性剤Aを含むため、上記組成物がコーター部材から吐出されたあと、組成物表面における界面活性剤Aの濃度が増加する。これは、上記組成物がコーター部材に接しているとき、界面活性剤Bの金属材料に対する濡れ性に起因して、上記組成物の表面では界面活性剤Bが現れやすい状態であるが、上記組成物がコーター部材から吐出されて外気に接するようになると、界面活性剤Aの偏在性に起因して、上記組成物の表面では界面活性剤Aが現れやすい状態になるためと考えられる。そして、塗布膜が乾燥して仮接着層となった場合、仮接着層の表面付近に偏在する界面活性剤Aの存在により、仮接着層の接着力が抑制され、適度な剥離性が確保される。
【0030】
このように、本発明の仮接着用組成物では、(a)コーター部材に接するときの組成物の固液界面の状態、および、(b)外気に接するときの当該組成物の気液界面の状態を、塗布膜の乾燥前に動的に調整している。特に、本発明の仮接着用組成物では、界面活性剤Aおよび界面活性剤Bの各含有量の割合が式(1)を満たすように設定されており、界面活性剤Aの偏在性および界面活性剤Bの金属材料に対する濡れ性が適度なバランスを保っていることにより、上記のような界面挙動が生じると考えられる。
【0031】
以上により、矩形型塗布方法を用いても、仮接着用組成物の塗布性および仮接着層の剥離性を充分に確保できると推定される。
【0032】
<<ステンレスに対する接触角>>
本発明の仮接着用組成物(通常、23℃で液体である。)は、ステンレス(SUS304)に対する接触角が50度以下であることが好ましく、45度以下であることがより好ましく、40度以下であることがさらに好ましく、35度以下であることが特に好ましい。これにより、矩形型塗布方法を実施する装置のコーター部材に対する濡れ性が向上し、コーター部材からの組成物の吐出が促進される。
【0033】
以下、本発明の仮接着用組成物の各成分について説明する。
【0034】
<<エラストマー>>
本発明の組成物は、エラストマーを含有する。エラストマーを含有することで、キャリア基板やデバイスウェハの微細な凹凸にも追従し、適度なアンカー効果により、優れた接着性を有するシート等の膜を形成できる。また、デバイスウェハからキャリア基板を剥離する際に、デバイスウェハなどに応力をかけることなく、キャリア基板をデバイスウェハから簡単に剥離でき、デバイスウェハ上のデバイス等の破損や剥落を防止できる。
【0035】
なお、本明細書において、エラストマーとは、弾性変形を示す高分子化合物を表す。すなわち外力を加えたときに、その外力に応じて瞬時に変形し、かつ外力を除いたときには、短時間に元の形状を回復する性質を有する高分子化合物と定義する。
【0036】
本発明において、エラストマーは、元の大きさを100%としたときに、室温(20℃)において小さな外力で200%まで変形させることができ、かつ外力を除いたときに、短時間で130%以下に戻る性質を有することが好ましい。
【0037】
本発明において、エラストマーは、25℃から、20℃/分で昇温した5%熱質量減少温度が、375℃以上であり、380℃以上が好ましく、390℃以上がさらに好ましく、400℃以上が最も好ましい。また、上限値は特に限定はないが、例えば1000℃以下が好ましく、800℃以下がより好ましい。この態様によれば、耐熱性に優れたシート等の膜を形成しやすい。質量減少温度は、熱重量測定装置(TGA)により、窒素気流下において、上記昇温条件で測定した値である。なお、本発明の組成物がエラストマーを2種以上含む場合は、2種以上のエラストマーの混合物における値を意味する。
【0038】
本発明において、エラストマーのガラス転移温度(以下、「Tg」ともいう)は、-50~300℃が好ましく、0~200℃がより好ましい。Tgが上記範囲であれば、接着時にデバイスウェハ表面への追従性がよく、ボイドのないシート等の膜を形成することができる。なお、エラストマーがTgを2点以上有する場合は、上記Tgの値は、低い方のガラス転移温度を意味する。
【0039】
本発明において、エラストマーの重量平均分子量は、2,000~200,000が好ましく、10,000~200,000がより好ましく、50,000~100,000が特に好ましい。この範囲にあることで、キャリア基板をデバイスウェハから剥離後、デバイスウェハおよび/またはキャリア基板に残存するエラストマー由来の残渣を除去する際にも、溶剤への溶解性が優れるため、デバイスウェハやキャリア基板に残渣が残らないなど利点がある。
【0040】
本発明において、エラストマーとしては、スチレン由来の繰り返し単位を含むエラストマー(ポリスチレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリアクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、ポリイミド系エラストマーなどが使用できる。ポリスチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリアクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマーおよびポリイミド系エラストマーから選ばれる1種以上が好ましく、溶解性、耐熱性等の観点からポリスチレン系エラストマーが特に好ましい。
【0041】
また、エラストマーは、水添物であることが好ましい。特に、ポリスチレン系エラストマーの水添物が好ましい。エラストマーが水添物であると、耐熱性に優れたシート等の膜を形成しやすい。さらには、剥離性および剥離後の洗浄除去性に優れたシート等の膜を形成しやすい。ポリスチレン系エラストマーの水添物を使用した場合上記効果が顕著である。なお、水添物とは、エラストマーが水添された構造の重合体を意味する。
【0042】
また、エラストマーは、下記のポリスチレン系エラストマーを10~100質量%含有することが好ましく、80~100質量%含有することがより好ましく、90~100質量%含有することがさらに好ましく、95~100質量%含有することが一層好ましく、実質的に、ポリスチレン系エラストマーのみで構成されていることが特に好ましい。さらに、その中でも、ポリスチレン系エラストマー水添物が上記割合で含まれていることがより好ましい。
【0043】
<<<ポリスチレン系エラストマー>>>
本発明において、ポリスチレン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン共重合体(SBBS)およびこれらの水添物、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-エチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体等が挙げられる。
【0044】
ポリスチレン系エラストマーにおける、スチレン由来の繰り返し単位の含有量は40質量%以上が好ましく、45質量%以上が好ましく、46質量%以上がより好ましい。上限は、例えば、90質量%以下とすることができ、85質量%以下とすることもできる。
【0045】
ポリスチレン系エラストマーは、スチレンと他のモノマーのブロック共重合体であることが好ましく、片末端または両末端がスチレンブロックであるブロック共重合体であることがより好ましく、両末端がスチレンブロックである、ブロック共重合体であることが特に好ましい。ポリスチレン系エラストマーの両端を、スチレンブロック(スチレン由来の繰り返し単位)とすると、耐熱性がより向上する。これは、耐熱性の高いスチレン由来の繰り返し単位が末端に存在することとなるためである。特に、スチレンブロックが反応性のポリスチレン系ハードブロックであることにより、耐熱性、耐薬品性により優れる傾向にあり好ましい。また、ブロック共重合体であるエラストマーを用いることにより、200℃以上においてハードブロックとソフトブロックでの相分離を行うと考えられる。その相分離の形状はデバイスウェハの基板表面の凹凸の発生の抑制に寄与すると考えられる。加えて、このようなエラストマーは、溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
【0046】
また、ポリスチレン系エラストマーは水添物であると、熱に対する安定性が向上し、分解や重合等の変質が起こりにくい。さらに、溶剤への溶解性およびレジスト溶剤への耐性の観点からもより好ましい。
【0047】
なお、本明細書において「スチレン由来の繰り返し単位」とは、スチレンまたはスチレン誘導体を重合した際に重合体に含まれるスチレン由来の構成単位であり、置換基を有していてもよい。スチレン誘導体としては、例えば、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン等が挙げられる。置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のアルコキシアルキル基、アセトキシ基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0048】
ポリスチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフプレンA、タフプレン125、タフプレン126S、アサプレンT、アサプレンT-411、アサプレンT-432、アサプレンT-437、アサプレンT-438、アサプレンT-439、タフテックH1272、タフテックP1500、タフテックP5051、タフテックH1052、タフテックH1062、タフテックM1943、タフテックM1911、タフテックH1041、タフテックMP10、タフテックM1913、タフテックH1051、タフテックH1053、タフテックP2000、タフテックH1043(以上、旭化成(株)製)、エラストマーAR-850C、エラストマーAR-815C、エラストマーAR-840C、エラストマーAR-830C、エラストマーAR-860C、エラストマーAR-875C、エラストマーAR-885C、エラストマーAR-SC-15、エラストマーAR-SC-0、エラストマーAR-SC-5、エラストマーAR-710、エラストマーAR-SC-65、エラストマーAR-SC-30、エラストマーAR-SC-75、エラストマーAR-SC-45、エラストマーAR-720、エラストマーAR-741、エラストマーAR-731、エラストマーAR-750、エラストマーAR-760、エラストマーAR-770、エラストマーAR-781、エラストマーAR-791、エラストマーAR-FL-75N、エラストマーAR-FL-85N、エラストマーAR-FL-60N、エラストマーAR-1050、エラストマーAR-1060、エラストマーAR-1040(アロン化成製)、クレイトンD1111、クレイトンD1113、クレイトンD1114、クレイトンD1117、クレイトンD1119、クレイトンD1124、クレイトンD1126、クレイトンD1161、クレイトンD1162、クレイトンD1163、クレイトンD1164、クレイトンD1165、クレイトンD1183、クレイトンD1193、クレイトンDX406、クレイトンD4141、クレイトンD4150、クレイトンD4153、クレイトンD4158、クレイトンD4270、クレイトンD 4271、クレイトンD 4433、クレイトンD 1170、クレイトンD 1171、クレイトンD 1173、カリフレックスIR0307、カリフレックスIR 0310、カリフレックスIR 0401、クレイトンD0242、クレイトンD1101、クレイトンD1102、クレイトンD1116、クレイトンD1118、クレイトンD1133、クレイトンD1152、クレイトンD1153、クレイトンD1155、クレイトンD1184、クレイトンD1186、クレイトンD1189、クレイトンD1191、クレイトンD1192、クレイトンDX405、クレイトンDX408、クレイトンDX410、クレイトンDX414、クレイトンDX415、クレイトンA1535、クレイトンA1536、クレイトンFG1901、クレイトンFG1924、クレイトンG1640、クレイトンG1641、クレイトンG1642、クレイトンG1643、クレイトンG1645、クレイトンG1633、クレイトンG1650、クレイトンG1651、クレイトンG1652、クレイトンG1654、クレイトンG1657、クレイトンG1660、クレイトンG1726、クレイトンG1701、クレイトンG1702、クレイトンG1730、クレイトンG1750、クレイトンG1765、クレイトンG4609、クレイトンG4610(Kraton製)、TR2000、TR2001、TR2003、TR2250、TR2500、TR2601、TR2630、TR2787、TR2827、TR1086、TR1600、SIS5002、SIS5200、SIS5250、SIS5405、SIS5505、ダイナロン6100P、ダイナロン4600P、ダイナロン6200P、ダイナロン4630P、ダイナロン8601P、ダイナロン8630P、ダイナロン8600P、ダイナロン8903P、ダイナロン6201B、ダイナロン1321P、ダイナロン1320P、ダイナロン2324P、ダイナロン9901P(JSR(株)製)、デンカSTRシリーズ(デンカ(株)製)、クインタック3520、クインタック3433N、クインタック3421、クインタック3620、クインタック3450、クインタック3460(日本ゼオン製)、TPE-SBシリーズ(住友化学(株)製)、ラバロンシリーズ(三菱ケミカル(株)製)、セプトンS1001、セプトンS8004、セプトンS4033、セプトンS2104、セプトンS8007、セプトンS2007、セプトンS2004、セプトンS2063、セプトンHG252、セプトンS8076、セプトンS2002、セプトンS1020、セプトンS8104、セプトンS2005、セプトンS2006、セプトンS4055、セプトンS4044、セプトンS4077、セプトンS4099、セプトンS8006、セプトンV9461、ハイブラー7311、ハイブラー7125、ハイブラー5127、ハイブラー5125(以上、クラレ製)、スミフレックス(住友ベークライト(株)製)、レオストマー、アクティマー(以上、理研ビニル工業製)などが挙げられる。
【0049】
<<<ポリエステル系エラストマー>>>
ポリエステル系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ジカルボン酸又はその誘導体と、ジオール化合物又はその誘導体とを重縮合して得られるものが挙げられる。
【0050】
ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびこれらの芳香環の水素原子がメチル基、エチル基、フェニル基等で置換された芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の炭素数2~20の脂肪族ジカルボン酸、およびシクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0051】
ジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、脂環式ジオール、下記構造式で表される2価のフェノールなどが挙げられる。
【化1】
【0052】
上記式中、YDOは、炭素原子数2~10のアルキレン基、炭素原子数4~8のシクロアルキレン基、-O-、-S-、および-SO-のいずれかを表すか、ベンゼン環同士の直接結合(単結合)を表す。RDO1およびRDO2は各々独立に、ハロゲン原子又は炭素原子数1~12のアルキル基を表す。pdo1およびpdo2は各々独立に、0~4の整数を表し、ndo1は、0又は1を表す。
【0053】
ポリエステル系エラストマーの具体例としては、ビスフェノールA、ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、レゾルシンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上併用して用いてもよい。
【0054】
また、ポリエステル系エラストマーとして、芳香族ポリエステル(例えば、ポリブチレンテレフタレート)部分をハードセグメント成分に、脂肪族ポリエステル(例えば、ポリテトラメチレングリコール)部分をソフトセグメント成分にしたマルチブロック共重合体を用いることもできる。マルチブロック共重合体としては、ハードセグメントとソフトセグメントとの種類、比率、および分子量の違いによりさまざまなグレードのものが挙げられる。具体例としては、ハイトレル(東レデュポン(株)製)、ペルプレン(東洋紡績(株)製)、プリマロイ(三菱ケミカル(株)製)、ヌーベラン(帝人化成製)、エスペル1612、1620(日立化成工業(株)製)、プリマロイCP300(三菱ケミカル(株)製)などが挙げられる。
【0055】
<<<ポリオレフィン系エラストマー>>>
ポリオレフィン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン等の炭素数2~20のα-オレフィンの共重合体などが挙げられる。例えば、エチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)等が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ブタジエン、イソプレンなどの炭素数4~20の非共役ジエンとα-オレフィンの共重合体などが挙げられる。また、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体にメタクリル酸を共重合したカルボキシ変性ニトリルゴムが挙げられる。具体的には、エチレン・α-オレフィンの共重合体ゴム、エチレン・α-オレフィン・非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン・α-オレフィンの共重合体ゴム、ブテン・α-オレフィンの共重合体ゴムなどが挙げられる。
【0056】
市販品として、ミラストマー(三井化学(株)製)、サーモラン(三菱ケミカル(株)製)、EXACT(エクソン化学製)、ENGAGE(ダウ・ケミカル製)、エスポレックス(住友化学製)、Sarlink(東洋紡製)、ニューコン(日本ポリプロ製)、EXCELINK(JSR製)などが挙げられる。
【0057】
<<<ポリウレタン系エラストマー>>>
ポリウレタン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、低分子のグリコールおよびジイソシアネートからなるハードセグメントと、高分子(長鎖)ジオールおよびジイソシアネートからなるソフトセグメントとの構造単位を含むエラストマーなどが挙げられる。
【0058】
高分子(長鎖)ジオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリ(1,4-ブチレンアジペート)、ポリ(エチレン・1,4-ブチレンアジペート)、ポリカプロラクトン、ポリ(1,6-ヘキシレンカーボネート)、ポリ(1,6-ヘキシレン・ネオペンチレンアジペート)などが挙げられる。高分子(長鎖)ジオールの数平均分子量は、500~10,000が好ましい。
【0059】
低分子のグリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ビスフェノールA等の短鎖ジオールを用いることができる。短鎖ジオールの数平均分子量は、48~500が好ましい。
ポリウレタン系エラストマーの市販品としては、PANDEX T-2185、T-2983N(DIC(株)製)、ミラクトラン(日本ミラクトラン製)、エラストラン(BASF製)、レザミン(大日精化工業製)、ペレセン(ダウ・ケミカル製)、アイアンラバー(NOK社製)、モビロン(日清紡ケミカル製)などが挙げられる。
【0060】
<<<ポリアミド系エラストマー>>>
ポリアミド系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリアミド-6、11、12などのポリアミドをハードセグメントに用い、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルおよび/またはポリエステルをソフトセグメントに用いたエラストマーなどが挙げられる。このエラストマーは、ポリエーテルブロックアミド型、ポリエーテルエステルブロックアミド型の2種類に大別される。
【0061】
市販品として、UBEポリアミドエラストマ、UBESTA XPA(宇部興産(株)製)、ダイアミド(ダイセルヒュルス(株)製)、PEBAX(東レ(株)製)、グリロンELY(エムスジャパン(株)製)、ノバミッド(三菱ケミカル(株)製)、グリラックス(DIC(株)製)、ポリエーテルエステルアミドPA-200、PA-201、TPAE-12、TPAE-32、ポリエステルアミドTPAE-617、TPAE-617C((株)T&K TOKA製)などが挙げられる。
【0062】
<<<ポリイミド系エラストマー>>>
ポリイミド系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、芳香族ポリイミド等のエンジニアリングプラスチックと、ソフトセグメントである分子量が数百~千のポリエーテルやポリエステルやポリオレフィン等のゴム成分とからなり、ハードセグメントとソフトセグメントが交互に重縮合したブロックポリマーが好ましく使用できる。市販品の具体例としては、例えば、UBESTA XPA9040F1(宇部興産(株)製)などが挙げられる。
【0063】
<<<ポリアクリル系エラストマー>>>
ポリアクリル系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、エトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステルを主成分としたものや、
アクリル酸エステルと、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。さらに、アクリロニトリルやエチレンなどの架橋点モノマーとを共重合してなるものなどが挙げられる。具体的には、アクリロニトリル-ブチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-エチルアクリレート共重合体、アクリロニトリル-ブチルアクリレート-グリシジルメタクリレート共重合体などが挙げられる。
【0064】
<<<シリコーン系エラストマー>>>
シリコーン系エラストマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、オルガノポリシロキサンを主成分としたもので、ポリジメチルシロキサン系、ポリメチルフェニルシロキサン系、ポリジフェニルシロキサンなどが挙げられる。市販品の具体例としては、KEシリーズ(信越化学工業(株)製)、SEシリーズ、CYシリーズ、SHシリーズ(以上、東レダウコーニングシリコーン(株)製)などが挙げられる。
【0065】
<<<その他エラストマー>>>
本発明では、エラストマーとして、ゴム変性したエポキシ樹脂(エポキシ系エラストマー)を用いることができる。エポキシ系エラストマーは、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、サリチルアルデヒド型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂あるいはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂の一部又は全部のエポキシ基を、両末端カルボン酸変性型ブタジエン-アクリロニトリルゴム、末端アミノ変性シリコーンゴム等で変性することによって得られる。
【0066】
本発明の組成物は、エラストマーを、組成物中に25質量%以上の割合で含有することが好ましく、28質量%以上がより好ましく、30質量%以上が一層好ましい。本発明の組成物は、エラストマーの溶解性が良好であるので、エラストマー濃度を高めることができる。組成物のエラストマー濃度を高めることにより、厚みのあるシート等の膜を形成することができる。
【0067】
また、本発明の組成物の全固形分の80質量%以上がエラストマーであることが好ましく、85質量%以上がより好ましい。
【0068】
エラストマーは上記に挙げた種類を複数含んでいてもよい。
【0069】
<<有機溶剤>>
本発明の仮接着用組成物は、有機溶剤を含有する。そして、有機溶剤は、有機溶剤全体に対し50~95質量%の割合で、沸点が120℃以下である低沸点有機溶剤含む。有機溶剤の含有量は、組成物全体に対して60~95質量%であることが好ましい。上限は、より好ましくは90質量%以下であり、さらに好ましくは85質量%以下である。また、下限は、より好ましくは65質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0070】
<<<沸点が120℃以下である低沸点有機溶剤>>>
この低沸点有機溶剤の沸点(1気圧)は、120℃以下であり、110℃以下が好ましく、105℃以下が一層好ましい。下限は、60℃以上が好ましく、65℃以上がより好ましく、70℃以上が更に好ましい。この範囲であれば、組成物の乾燥性が良好であり、組成物の乾燥時間を短縮しやすい。さらには、乾燥ムラや厚みムラが抑制された、面状の良好な膜を形成しやすい。
【0071】
低沸点有機溶剤のSP値は、19(MPa)1/2以下であることが好ましく、18.5(MPa)1/2以下であることが好ましい。下限は、例えば、16.5(MPa)1/2以上が好ましい。溶剤(C)のSP値が19(MPa)1/2以下であれば、エラストマーの溶解性をより高めることができる。
【0072】
低沸点有機溶剤は、脂肪族炭化水素、ケトン、エステル、アルコール、芳香族炭化水素および環状エーテルから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、低沸点有機溶剤は、脂肪族炭化水素および芳香族炭化水素の少なくとも1種を含有することが好ましく、特に、脂環式炭化水素および芳香族炭化水素の少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0073】
脂環式炭化水素としては、シクロヘキサン(沸点81℃)、メチルシクロヘキサン(沸点101℃)などが挙げられる。
【0074】
脂環式炭化水素以外の脂肪族炭化水素としては、ヘキサン(沸点69℃)、ヘプタン(沸点98℃)、2-メチルペンタン(沸点60℃)などが挙げられる。
【0075】
ケトンとしては、メチルエチルケトン(沸点80℃)、メチルイソブチルケトン(沸点116℃)などが挙げられる。
【0076】
エステルとしては、酢酸メチル(沸点58℃)などが挙げられる。
【0077】
アルコールとしては、イソプロピルアルコール(沸点83℃)、エタノール(沸点78℃)、メタノール(沸点65℃)などが挙げられる。
【0078】
芳香族炭化水素としては、トルエン(沸点111℃)、ベンゼン(沸点80℃)などが挙げられる。
【0079】
環状エーテルとしては、テトラヒドロフラン(沸点66℃)などが挙げられる。
【0080】
低沸点有機溶剤の含有量は、有機溶剤全体に対し55質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上がさらに好ましい。また、低沸点有機溶剤の含有量は、有機溶剤全体に対し90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、75質量%以下が特に好ましい。低沸点有機溶剤の含有量が上記範囲であることにより、エラストマーの溶解性、および、乾燥性が良好となる。低沸点有機溶剤は、上記に例示したものの1種または2種以上を含むことができ、2種以上含む場合には、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0081】
本発明の組成物は、低沸点有機溶剤を、組成物中に5~65質量%の割合で含有することが好ましく、5~60質量%がより好ましく、10~60質量%が一層好ましい。低沸点有機溶剤の含有量が上記範囲であれば、エラストマーの溶解性、および、乾燥性が良好である。
【0082】
また、本発明の仮接着用組成物は、低沸点有機溶剤として、あるいは、低沸点有機溶剤以外の有機溶剤として、芳香族化合物を含むことがさらに好ましい。
【0083】
上記芳香族化合物は、例えば、アルキル基を有する芳香族炭化水素であることが好ましく、ベンゼン環と、炭素数1~10のアルキル基を1~3つ有する化合物であることがより好ましい。
【0084】
本発明で用いる、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤を構成するアルキル基としては、直鎖、分岐または環状のアルキル基であり、直鎖または分岐のアルキル基が好ましい。アルキル基を構成する炭素数は、1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましく、1~4であることがさらに好ましい。
【0085】
本発明で用いる、アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、ベンゼン環と、炭素数1~10のアルキル基を1~3つ有する溶剤であることが好ましく、下記式(X)で表される溶剤であることがより好ましい。
式(X)
【化2】
【0086】
上記式(X)において、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、nは1~3の整数である。
【0087】
Rは、直鎖または分岐の炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、tert-ブチル基がより好ましい。また、Rを構成する炭素数の合計が2~5の整数であることが好ましく、3または4がより好ましい。
【0088】
本発明で用いるアルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の沸点としては、50~250℃が好ましく、80~200℃がより好ましく、120~170℃がさらに好ましい。沸点が120℃以下である化合物は、本発明の低沸点有機溶剤としても使用できる。
【0089】
本発明で用いるアルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤の具体例としては、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン(好ましくは、1,3,5-トリメチルベンゼン(メシチレン)、1,2,4-トリメチルベンゼン(プソイドクメン))、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1-メチルエチルベンゼン、ブチルベンゼン(好ましくは、n-ブチルベンゼン、sec-ブチルベンゼン、イソブチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、より好ましくは、tert-ブチルベンゼン)、アミルベンゼン、イソアミルベンゼン、(2,2-ジメチルプロピル)ベンゼン、1-フェニルへキサン、1-フェニルヘプタン、1-フェニルオクタン、1-フェニルノナン、1-フェニルデカン、シクロプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、2-エチルトルエン、1,2-ジエチルベンゼン、o-シメン(2-イソプロピルトルエン)、3-エチルトルエン、m-シメン、1,3-ジイソプロピルベンゼン、4-エチルトルエン、1,4-ジエチルベンゼン、p-シメン、1,4-ジイソプロピルベンゼン、4-tert-ブチルトルエン、1,4-ジ-tert-ブチルベンゼン、1,3-ジエチルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、4-tert-ブチル-o-キシレン、1,2,4-トリエチルベンゼン、1,3,5-トリエチルベンゼン、1,3,5-トリイソプロピルベンゼン、5-tert-ブチル-m-キシレン、3,5-ジ-tert-ブチルトルエン、1,2,3,5-テトラメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、ペンタメチルベンゼン等が挙げられる。
【0090】
アルキル基を有する芳香族炭化水素系溶剤は、好ましくは、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン(好ましくは、メシチレン)、ブチルベンゼン(好ましくは、tert-ブチルベンゼン)およびジエチルベンゼンの少なくとも1種であり、より好ましくは、キシレン、ならびに、トリメチルベンゼンおよびブチルベンゼンの少なくとも1種である。
【0091】
芳香族炭化水素系溶剤の含有量は、有機溶剤全体に対して、5~100質量%であることが好ましく、10~90質量%がより好ましく、20~80質量%が一層好ましい。芳香族炭化水素系溶剤の含有量が上記範囲であれば、エラストマーの溶解性、タック性、および、乾燥性がより改善する。
【0092】
特に、芳香族炭化水素系溶剤は、上記のうち、沸点が160℃以上である溶剤が好ましい。沸点が160℃以上である芳香族炭化水素系溶剤は、例えば、メシチレン(沸点165℃)、p-ジイソプロピルベンゼン(沸点210℃)、p-ジエチルベンゼン(沸点181℃)、m-ジエチルベンゼン(沸点182℃)、1,3,5-トリエチルベンゼン(沸点218℃)などである。
【0093】
沸点が160℃以上である芳香族炭化水素系溶剤の含有量は、有機溶剤全体に対して、10~100質量%であることが好ましく、20~90質量%がより好ましく、40~70質量%が一層好ましい。これにより、乾燥性の調整が容易となる。また、溶剤全体として乾燥性の態様が広がり、仮接着用組成物の調製の幅も広がる。
【0094】
芳香族炭化水素系溶剤は、上記に例示したものの1種または2種以上を含むことができ、2種以上含む場合には、それらの合計量が上記範囲内であることが好ましい。
【0095】
<<界面活性剤>>
本発明の仮接着用組成物は、フッ素系の界面活性剤A、および、シリコーン系の界面活性剤Bを含む。そして、本発明の組成物は、界面活性剤Aおよび界面活性剤Bについて、式(1)を満たす。
【0096】
/W=1.5~5 式(1);
式(1)において、Wは、質量%表示で、界面活性剤Aの界面活性剤全体に対する含有量を表し、Wは、質量%表示で、界面活性剤Bの界面活性剤全体に対する含有量を表す。そして、W/Wの数値範囲について、上限は、好ましくは4.5以下であり、より好ましくは4.3以下であり、さらに好ましくは4.0以下であり、一層好ましくは3.5以下であり、特に好ましくは3.0以下である。また、下限は、好ましくは1.6以上であり、より好ましくは1.7以上であり、さらに好ましくは1.8以上であり、一層好ましくは1.9以上であり、特に好ましくは2.0以上である。
【0097】
本発明において、組成物が、界面活性剤Aおよび界面活性剤Bの両方を所定の比率で含有することで、コーター部材を用いて、組成物を塗布する際の塗布性(特に、コーター部材内での流動性、および、コーター部材から吐出した後の流動性など)が向上する。これによって、塗布膜および乾燥後の膜の均一性や、省液性がより改善する。
【0098】
また、本発明の仮接着用組成物は、界面活性剤および有機溶剤について、式(3)を満たすことがより好ましい。
【0099】
ALL/W=0.000002~0.006 式(3);
式(3)において、WALLは、質量%表示で、界面活性剤全体の組成物全体に対する含有量を表し、Wは、質量%表示で、有機溶剤全体の組成物全体に対する含有量を表す。そして、WALL/Wの数値範囲について、上限は、好ましくは0.005以下であり、より好ましくは0.002以下であり、さらに好ましくは0.001以下であり、一層好ましくは0.0005以下であり、特に好ましくは0.0002以下である。また、下限は、好ましくは0.000005以上であり、より好ましくは0.000007以上であり、さらに好ましくは0.00001以上であり、一層好ましくは0.00002以上であり、特に好ましくは0.00005以上である。
【0100】
界面活性剤の組成物全体に対する含有量(つまりWALL)は、0.00002~2質量%であることが好ましい。上限は、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、特に好ましくは0.03質量%以下である。また、下限は、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.005質量%以上であり、特に好ましくは0.007質量%以上である。
【0101】
<<<フッ素系界面活性剤A>>>
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適である。ここで、フッ素含有率とは、分子量に対する全フッ素原子の質量の割合である。フッ素含有率について、上限は、より好ましくは30質量%以下であり、特に好ましくは25質量%以下である。また、下限は、より好ましくは5質量%以上であり、特に好ましくは7質量%以上である。フッ素含有率がこの範囲内である界面活性剤Aは、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、仮接着層の剥離性も良好である。
【0102】
フッ素系界面活性剤Aは、特に限定されないが、パーフルオロオクタン酸(PFOA)やパーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)を含まないフッ素系界面活性剤が好ましい。本発明に用いることができるフッ素系界面活性剤Aとしては、例えば、市販品である、メガファックF142D、同F172、同F173、同F176、同F177、同F183、同F479、同F482、同F554、同F780、同F781、同F781-F、同R30、同R08、同F-472SF、同BL20、同R-61、同R-90(DIC(株)製)、フロラードFC-135、同FC-170C、同FC-430、同FC-431、Novec FC-4430(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG7105、同AG7000、同AG950、同AG7600、サーフロンS-112、同S-113、同S-131、同S-141、同S-145、同S-381、同S-382、同SC-101、同SC-102、同SC-103、同SC-104、同SC-105、同SC-106(旭硝子(株)製)、エフトップEF301、同EF303、同EF351、同EF352、同EF801、同EF802(三菱マテリアル電子化成(株)製)、フタージェント250(ネオス(株)製)が挙げられる。また、上記以外にも、KP(信越化学工業(株)製)、ポリフロー(共栄社化学(株)製)、PolyFox(OMNOVA社製)等の各シリーズを挙げることができる。
【0103】
本発明で用いる仮接着用組成物におけるフッ素系界面活性剤の含有量は、組成物全体に対して、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.003質量%以上であり、特に好ましくは0.004質量%以上である。また、この含有量の上限は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、特に好ましくは0.008質量%以下である。また、フッ素系界面活性剤の含有量は、仮接着用組成物の全固形分に対して0.001~1.0質量%であることが好ましい。この含有量の下限は、0.004質量%以上がより好ましく、0.006質量%以上がさらに好ましく、0.008質量%以上が一層好ましく、0.009質量%以上がより一層好ましい。この含有量の上限は、0.8質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましく、0.15質量%以下がより一層好ましく、0.09質量%以下がさらに一層好ましい。また、フッ素系界面活性剤の含有量は、界面活性剤全体に対して、0.01~99.99質量%であることが好ましい。そして、この含有量の下限は、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上が特に好ましい。この含有量の上限は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下が特に好ましい。
【0104】
2種以上を併用する場合には、合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0105】
<<<シリコーン系界面活性剤B>>>
本発明で用いる仮接着用組成物は、シリコーン系界面活性剤を含む。シリコーン系界面活性剤は、離型剤として働き、仮接着層を被加工基板から容易に除去することが可能になる。
【0106】
シリコーン系界面活性剤としては、Si-O結合を含む化合物であり、シリコーンオイル、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、環状シロキサンなどが例示され、シリコーンオイルが好ましい。
【0107】
また、シリコーン系界面活性剤は、重合性基などの反応性基を含まないことが好ましい。
【0108】
シリコーン系界面活性剤は、ポリエーテル変性シリコーンであることが好ましい。
【0109】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンは、式(A)で表される比率が80%以上である。
【0110】
式(A) {(MO+EO)/AO}×100
上記式(A)中、MOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるメチレンオキシドのモル%であり、EOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるエチレンオキシドのモル%であり、AOは、ポリエーテル変性シリコーン中のポリエーテル構造に含まれるアルキレンオキシドのモル%をいう。
【0111】
上記式(A)で表される比率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが一層好ましく、100%がより一層好ましい。
【0112】
ポリエーテル変性シリコーンの重量平均分子量は、500~100000が好ましく、1000~50000がより好ましく、2000~40000がさらに好ましい。
【0113】
本発明において、ポリエーテル変性シリコーンは、ポリエーテル変性シリコーンを窒素気流60mL/分のもと、20℃から280℃まで20℃/分の昇温速度で昇温し、280℃の温度で30分間保持したときの質量減少率が50質量%以下であることが好ましい。このような化合物を用いることにより、加熱を伴う基板の加工後の面性状がより向上する。上記ポリエーテル変性シリコーンの質量減少率は、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましく、30質量%以下が一層好ましい。上記ポリエーテル変性シリコーンの質量減少率の下限値は0質量%であってもよいが、15質量%以上、さらには20質量%以上でも十分に実用レベルである。
【0114】
本発明において、ポリエーテル変性シリコーンの光の屈折率は、1.440以下であることが好ましい。下限値については、特に定めるものではないが、1.400以上であっても十分実用レベルである。
【0115】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンは、下記式(101)~式(104)のいずれかで表されるポリエーテル変性シリコーンが好ましい。
【0116】
式(101)
【化3】
【0117】
上記式(101)中、R11およびR16は、それぞれ独立に、置換基であり、R12およびR14は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、R13およびR15は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、m11、m12、n1およびp1は、それぞれ独立に0~20の数であり、x1およびy1は、それぞれ独立に2~100の数である。
式(102)
【0118】
【化4】
【0119】
上記式(102)中、R21、R25およびR26は、それぞれ独立に、置換基であり、R22は、2価の連結基であり、R23は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、m2およびn2は、それぞれ独立に0~20の数であり、x2は、2~100の数である。
【0120】
式(103)
【化5】
【0121】
上記式(103)中、R31およびR36は、それぞれ独立に、置換基であり、R32およびR34は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、R33およびR35は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、m31、m32、n3およびp3は、それぞれ独立に0~20の数であり、x3は、2~100の数である。
【0122】
式(104)
【化6】
【0123】
上記式(104)中、R41、R42、R43、R44、R45およびR46は、それぞれ独立に、置換基であり、R47は、2価の連結基であり、R48は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、m4およびn4は、それぞれ独立に0~20の数であり、x4およびy4は、それぞれ独立に2~100の数である。
【0124】
上記式(101)中、R11およびR16は、それぞれ独立に、置換基であり、炭素数1~5のアルキル基、またはフェニル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0125】
上記式(101)中、R12およびR14は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、カルボニル基、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数6~16のシクロアルキレン基、炭素数2~8のアルケニレン基、炭素数2~5のアルキニレン基、および炭素数6~10のアリーレン基が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0126】
式(101)中、R13およびR15は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、水素原子または炭素数1~4のアルキル基が好ましく、水素原子または炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
【0127】
上記式(102)中、R21、R25およびR26は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR11およびR16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0128】
上記式(102)中、R22は、2価の連結基であり、式(101)におけるR12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0129】
上記式(102)中、R23は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、式(101)におけるR13およびR15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0130】
上記式(103)中、R31およびR36は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR11およびR16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0131】
上記式(103)中、R32およびR34は、それぞれ独立に、2価の連結基であり、式(101)におけるR12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0132】
上記式(103)中、R33およびR35は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、式(101)におけるR13およびR15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0133】
上記式(104)中、R41、R42、R43、R44、R45およびR46は、それぞれ独立に、置換基であり、式(101)におけるR11およびR16と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0134】
上記式(104)中、R47は、2価の連結基であり、式(101)におけるR12と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0135】
上記式(104)中、R48は、水素原子または炭素数1~5のアルキル基であり、式(101)におけるR13およびR15と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0136】
式(101)~式(104)中、式(103)または式(104)が好ましく、式(104)がより好ましい。
【0137】
本発明で用いるポリエーテル変性シリコーンにおける、ポリオキシアルキレン基の分子中での含有量は特に限定されないが、ポリオキシアルキレン基の含有量が全分子量中1質量%を超えるものが望ましい。
【0138】
ポリオキシアルキレン基の含有率は、「{(1分子中のポリオキシアルキレン基の式量)/1分子の分子量}×100」で定義される。
【0139】
シランカップリング剤の例としては、フッ素原子含有シランカップリング剤が挙げられ、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-ノナフルオロヘキシル)シランが好ましい。
【0140】
さらに、シランカップリング剤の例としては、特開昭62-036663号公報、特開昭61-226746号公報、特開昭61-226745号公報、特開昭62-170950号公報、特開昭63-034540号公報、特開平07-230165号公報、特開平08-062834号公報、特開平09-054432号公報、特開平09-005988号公報、特開2001-330953号公報のそれぞれに記載の界面活性剤も挙げられ、これらの記載は本明細書に組み込まれる。
【0141】
本発明で用いるシリコーン系界面活性剤は、市販品を用いることもできる。
【0142】
例えば、「ADVALON FA33」、「FLUID L03」、「FLUID L033」、「FLUID L051」、「FLUID L053」、「FLUID L060」、「FLUID L066」、「IM22」、「WACKER-Belsil DMC 6038」(以上、旭化成ワッカーシリコーン(株)製)、「KF-352A」、「KF-353」、「KF-615A」、「KP-112」、「KP-341」、「X-22-4515」、「KF-354L」、「KF-355A」、「KF-6004」、「KF-6011」、「KF-6011P」、「KF-6012」、「KF-6013」、「KF-6015」、「KF-6016」、「KF-6017」、「KF-6017P」、「KF-6020」、「KF-6028」、「KF-6028P」、「KF-6038」、「KF-6043」、「KF-6048」、「KF-6123」、「KF-6204」、「KF-640」、「KF-642」、「KF-643」、「KF-644」、「KF-945」、「KP-110」、「KP-355」、「KP-369」、「KS-604」、「Polon SR-Conc」、「X-22-4272」、「X-22-4952」(以上、信越化学工業(株)製)、「8526 ADDITIVE」、「FZ-2203」、「FZ-5609」、「L-7001」、「SF 8410」、「2501 COSMETIC WAX」、「5200 FORMULATION AID」、「57 ADDITIVE」、「8019 ADDITIVE」、「8029 ADDITIVE」、「8054 ADDITIVE」、「BY16-036」、「BY16-201」、「ES-5612 FORMULATION AID」、「FZ-2104」、「FZ-2108」、「FZ-2123」、「FZ-2162」、「FZ-2164」、「FZ-2191」、「FZ-2207」、「FZ-2208」、「FZ-2222」、「FZ-7001」、「FZ-77」、「L-7002」、「L-7604」、「SF8427」、「SF8428」、「SH 28 PAINR ADDITIVE」、「SH3749」、「SH3773M」、「SH8400」、「SH8700」(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、「BYK-378」、「BYK-302」、「BYK-307」、「BYK-331」、「BYK-345」、「BYK-B」、「BYK-347」、「BYK-348」、「BYK-349」、「BYK-377」(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、「Silwet L-7001」、「Silwet L-7002」、「Silwet L-720」、「Silwet L-7200」、「Silwet L-7210」、「Silwet L-7220」、「Silwet L-7230」、「Silwet L-7605」、「TSF4445」、「TSF4446」、「TSF4452」、「Silwet Hydrostable 68」、「Silwet L-722」、「Silwet L-7280」、「Silwet L-7500」、「Silwet L-7550」、「Silwet L-7600」、「Silwet L-7602」、「Silwet L-7604」、「Silwet L-7607」、「Silwet L-7608」、「Silwet L-7622」、「Silwet L-7650」、「Silwet L-7657」、「Silwet L-77」、「Silwet L-8500」、「Silwet L-8610」、「TSF4440」、「TSF4441」、「TSF4450」、「TSF4460」(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)が例示される。
【0143】
また、シリコーン系界面活性剤としては、商品名「BYK-300」、「BYK-306」、「BYK-310」、「BYK-315」、「BYK-313」、「BYK-320」、「BYK-322」、「BYK-323」、「BYK-325」、「BYK-330」、「BYK-333」、「BYK-337」、「BYK-341」、「BYK-344」、「BYK-370」、「BYK-375」、「BYK-UV3500」、「BYK-UV3510」、「BYK-UV3570」、「BYK-3550」、「BYK-SILCLEAN3700」、「BYK-SILCLEAN3720」(以上、ビックケミー・ジャパン(株)製)、商品名「AC FS 180」、「AC FS 360」、「AC S 20」(以上、Algin Chemie製)、商品名「ポリフローKL-400X」、「ポリフローKL-400HF」、「ポリフローKL-401」、「ポリフローKL-402」、「ポリフローKL-403」、「ポリフローKL-404」、「ポリフローKL-700」(以上、共栄社化学(株)製)、商品名「KP-301」、「KP-306」、「KP-109」、「KP-310」、「KP-310B」、「KP-323」、「KP-326」、「KP-341」、「KP-104」、「KP-110」、「KP-112」、「KP-360A」、「KP-361」、「KP-354」、「KP-357」、「KP-358」、「KP-359」、「KP-362」、「KP-365」、「KP-366」、「KP-368」、「KP-330」、「KP-650」、「KP-651」、「KP-390」、「KP-391」、「KP-392」(以上、信越化学工業(株)製)、商品名「LP-7001」、「LP-7002」、「8032 ADDITIVE」、「FZ-2110」、「FZ-2105」、「67 ADDITIVE」、「8618 ADDITIVE」、「3 ADDITIVE」、「56 ADDITIVE」(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、「TEGO WET 270」(エボニック・デグサ・ジャパン(株)製)、「NBX-15」((株)ネオス製)なども使用することができる。
【0144】
本発明で用いる仮接着用組成物におけるシリコーン系界面活性剤の含有量は、組成物全体に対して、好ましくは0.00005質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、さらに好ましくは0.0005質量%以上であり、特に好ましくは0.001質量%以上である。また、この含有量の上限は、1質量%以下、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、特に好ましくは0.005質量%以下である。また、シリコーン系界面活性剤の含有量は、仮接着用組成物の全固形分に対して0.001~1.0質量%であることが好ましい。この含有量の下限は、0.004質量%以上がより好ましく、0.006質量%以上がさらに好ましく、0.008質量%以上が一層好ましく、0.009質量%以上がより一層好ましい。この含有量の上限は、0.8質量%以下が好ましく、0.6質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましく、0.15質量%以下がより一層好ましく、0.09質量%以下がさらに一層好ましい。また、シリコーン系界面活性剤の含有量は、界面活性剤全体に対して0.01~99.99質量%であることが好ましい。そして、この含有量の下限は、0.015質量%以上がより好ましく、0.02質量%以上がさらに好ましく、0.5質量%以上が特に好ましい。この含有量の上限は、90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、50質量%以下が特に好ましく、40質量%以下が最も好ましい。
【0145】
本発明で用いる仮接着用組成物は、シリコーン系界面活性剤を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、それらの合計量が上記範囲にあることが好ましい。
【0146】
<<<アセチレン系界面活性剤C>>>
本発明の仮接着用組成物は、アセチレン系界面活性剤C(アセチレン基を含む界面活性剤)を含有してもよい。仮接着用組成物がアセチレン系界面活性剤を含むことにより、破泡、抑泡および消泡という効果がある。これは、疎水性であるアセチレン系界面活性剤が泡の表面に広がり泡を不安定化することによるものと考えられる。
【0147】
アセチレン系界面活性剤は分子内にアセチレン基を含んでいればよい。アセチレン基の分子内の数は特に制限されないが、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましく、1~2が一層好ましい。アセチレン系界面活性剤の分子量は比較的小さいことが好ましく、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。下限値は特にないが、200以上であることが実際的である。
【0148】
アセチレン系界面活性剤は下記式(9)で表される化合物であることが好ましい。
【化7】
【0149】
式中、R91およびR92は、それぞれ独立に、炭素数3~15のアルキル基、炭素数6~15の芳香族炭化水素基、または、炭素数4~15の芳香族複素環基である。芳香族複素環基の炭素数は、1~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がさらに好ましい。芳香族複素環は5員環または6員環が好ましい。芳香族複素環が含むヘテロ原子は窒素原子、酸素原子、または硫黄原子が好ましい。
【0150】
91およびR92は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよく、置換基としては上記置換基Tの例が挙げられる。
【0151】
式(9)の化合物は下記式(91)で表されることが好ましい。
【化8】
【0152】
93~R96は、それぞれ独立に、炭素数1~24の炭化水素基であり、n9は1~6の整数であり、m9はn9の2倍の整数であり、n10は1~6の整数であり、m10はn10の2倍の整数であり、l9およびl10は、それぞれ独立に、0以上12以下の数である。R93~R96は炭化水素基であるが、なかでもアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アルキニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)であることが好ましい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。R93~R96は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。また、R93~R96は互いに結合して、または連結基Lを介して環を形成していてもよい。置換基Tは、複数あるときは互いに結合して、あるいは連結基Lを介してまたは介さずに式中の炭化水素基と結合して環を形成していてもよい。
【0153】
93、R94はアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)であることが好ましい。なかでもメチル基が好ましい。
【0154】
95、R96はアルキル基(炭素数1~12が好ましく、2~6がより好ましく、3~6がさらに好ましい)であることが好ましい。なかでも、-(Cn1198 m11)-R97が好ましい。ここで、R97およびR98は、それぞれ独立に、水素原子またはアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)であることが好ましい。n11は1~6の整数であり、1~3の整数が好ましい。m11はn11の2倍の数である。
【0155】
95、R96はとくにイソブチル基であることが好ましい。
【0156】
n9は1~6の整数であり、1~3の整数が好ましい。m9はn9の2倍の整数である。
【0157】
n10は1~6の整数であり、1~3の整数が好ましい。m10はn10の2倍の整数である。
【0158】
l9およびl10は、それぞれ独立に、0~12の数である。ただし、l9+l10は0~12の数であることが好ましく、0~8の数であることがより好ましく、0~6の数がさらに好ましく、0超6未満の数が一層好ましく、0超3以下の数がより一層好ましい。なお、l9、l10については、式(91)の化合物がその数において異なる化合物の混合物となる場合があり、そのときはl9およびl10の数、あるいはl9+l10が、小数点以下が含まれた数であってもよい。
【0159】
式(91)で表される界面活性剤は下記式(92)で表される界面活性剤が好ましい。
【化9】
【0160】
93、R94、R97~R100は、それぞれ独立に、炭素数1~24の炭化水素基であり、l11およびl12は、それぞれ独立に、0以上12以下の数である。R93、R94、R97~R100はなかでもアルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アルキニル基(炭素数2~12が好ましく、2~6がより好ましく、2~3がさらに好ましい)、アリール基(炭素数6~22が好ましく、6~18がより好ましく、6~10がさらに好ましい)、アリールアルキル基(炭素数7~23が好ましく、7~19がより好ましく、7~11がさらに好ましい)であることが好ましい。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は鎖状でも環状でもよく、直鎖でも分岐でもよい。R93、R94、R97~R100は本発明の効果を奏する範囲で置換基Tを有していてもよい。また、R93、R94、R97~R100は互いに結合して、または連結基Lを介して環を形成していてもよい。置換基Tは、複数あるときは互いに結合して、あるいは連結基Lを介してまたは介さずに式中の炭化水素基と結合して環を形成していてもよい。
【0161】
93、R94、R97~R100は、それぞれ独立に、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~3がさらに好ましい)であることが好ましい。なかでもメチル基が好ましい。
【0162】
l11+l12は0~12の数であることが好ましく、0~8の数であることがより好ましく、0~6の数がさらに好ましく、0超6未満の数が一層好ましく、0超5以下の数がより一層好ましく、0超4以下の数がさらに一層好ましく、0超3以下の数であってもよく、0超1以下の数であってもよい。なお、l11、l12は、式(92)の化合物がその数において異なる化合物の混合物となる場合があり、そのときはl11およびl12の数、あるいはl11+l12が、小数点以下が含まれた数であってもよい。
【0163】
アセチレン系界面活性剤としては、下記のサーフィノール(Surfynol)104シリーズ(商品名、日信化学工業株式会社)、下記のアセチレノール(Acetyrenol)E00、同E40、同E13T、同60(いずれも商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられ、中でも、サーフィノール104シリーズ、アセチレノールE00、同E40、同E13Tが好ましく、アセチレノールE40、同E13Tがより好ましい。なお、サーフィノール104シリーズとアセチレノールE00とは同一構造の界面活性剤である。
【0164】
仮接着用組成物において、アセチレン基を含む界面活性剤の含有量は、組成物全体に対して、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0005質量%以上、さらに好ましくは0.001質量%以上であり、特に好ましくは0.002質量%以上である。また、この含有量の上限は、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、特に好ましくは0.005質量%以下である。アセチレン基を含む界面活性剤の含有量は、仮接着用組成物の全固形分に対して、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.007質量%以上、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、この含有量の上限は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。また、アセチレン系界面活性剤の含有量は、界面活性剤全体に対して、好ましくは3質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、この含有量の上限は、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。アセチレン系界面活性剤は、1種を用いても複数のものを用いてもよい。複数のものを用いる場合には、それらの合計量が上記の範囲内になることが好ましい。
【0165】
2種以上を併用する場合には、合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0166】
また、仮接着用組成物は、アセチレン系界面活性剤Cおよびシリコーン系界面活性剤Bについて、式(2)を満たすことが好ましい。
【0167】
/W=0.005~500 式(2)
式(2)において、Wは、質量%表示で、アセチレン系界面活性剤Cの界面活性剤全体に対する含有量を表す。そして、W/Wの数値範囲について、上限は、好ましくは100以下であり、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは10以下、特に好ましくは5以下である。また、下限は、好ましくは0.006以上であり、より好ましくは0.01以上であり、さらに好ましくは0.05以上である。
【0168】
仮接着用組成物が上記式(2)を満たすことにより、塗布時発生の泡に起因する塗布欠陥が低減するという効果がある。
【0169】
<<<その他の界面活性剤>>>
本発明の仮接着用組成物は、界面活性剤として、界面活性剤A~C以外の界面活性剤をさらに含んでいてもよい。このような界面活性剤は、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤などの各種界面活性剤がある。
【0170】
また、本発明の仮接着用組成物は、界面活性剤A~C以外の界面活性剤を実質的に含まない構成でもよい。ここで、「実質的に含まない」とは、界面活性剤A~C以外の界面活性剤の含有量が、界面活性剤全体に対して、1質量%以下であることを意味する。
【0171】
<<その他の添加剤>>
更に、本発明の仮接着用組成物は、仮接着層の物性を改良するために、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、密着促進剤、紫外線吸収剤、分散剤などの公知の添加剤を含有してもよい。
【0172】
<<<酸化防止剤>>>
本発明の仮接着用組成物は、酸化防止剤を含有してもよい。酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、キノン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが使用できる。
【0173】
フェノール系酸化防止剤としては例えば、p-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール、Irganox1010、Irganox1330、Irganox3114、Irganox1035(以上、BASFジャパン(株)製)、Sumilizer MDP-S、Sumilizer GA-80(以上、住友化学(株)製)などが挙げられる。
【0174】
イオウ系酸化防止剤としては例えば、3,3’-チオジプロピオネートジステアリル、Sumilizer TPL-R、Sumilizer TPM、Sumilizer TPS、Sumilizer MB、Sumilizer TP-D(以上、住友化学(株)製)などが挙げられる。
【0175】
リン系酸化防止剤としては例えば、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、2-エチルヘキシルジフェニルホスファイト、トリフェニルホスファイト、Irgafos168、Irgafos38(以上、BASFジャパン(株)製)、Sumilizer GP(住友化学(株)製)などが挙げられる。
【0176】
キノン系酸化防止剤としては例えば、p-ベンゾキノン、2-tert-ブチル-1,4-ベンゾキノンなどが挙げられる。
【0177】
アミン系酸化防止剤としては例えば、ジメチルアニリンやフェノチアジンなどが挙げられる。
【0178】
酸化防止剤は、Irganox1010、Irganox1330、3,3’-チオジプロピオネートジステアリル、Sumilizer TP-Dが好ましく、Irganox1010、Irganox1330がより好ましく、Irganox1010が特に好ましい。
【0179】
また、上記酸化防止剤のうち、フェノール系酸化防止剤と、イオウ系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤とを併用することが好ましく、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤とを併用することが最も好ましい。特に、エラストマーとして、ポリスチレン系エラストマーを使用した場合において、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤とを併用することが好ましい。このような組み合わせにすることにより、酸化反応による仮接着用組成物の劣化を、効率よく抑制できる効果が期待できる。フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤とを併用する場合、フェノール系酸化防止剤とイオウ系酸化防止剤との質量比は、フェノール系酸化防止剤:イオウ系酸化防止剤=95:5~5:95が好ましく、25:75~75:25がより好ましい。
【0180】
酸化防止剤の組み合わせとしては、Irganox1010とSumilizer TP-D、Irganox1330とSumilizer TP-D、および、Sumilizer GA-80とSumilizer TP-Dが好ましく、Irganox1010とSumilizer TP-D、Irganox1330とSumilizer TP-Dがより好ましく、Irganox1010とSumilizer TP-Dが特に好ましい。
【0181】
酸化防止剤の分子量は加熱中の昇華防止の観点から、400以上が好ましく、600以上がさらに好ましく、750以上が特に好ましい。
【0182】
仮接着用組成物が酸化防止剤を含有する場合、酸化防止剤の含有量は、仮接着用組成物の全固形分に対して、0.001~20.0質量%の割合で含むことが好ましく、0.005~10.0質量%の割合で含むことがより好ましい。
【0183】
酸化防止剤は1種のみでもよいし、2種以上であってもよい。酸化防止剤が2種以上の場合は、その合計が上記範囲であることが好ましい。
【0184】
<<<可塑剤>>>
本発明で用いる仮接着用組成物は、必要に応じて可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤を配合することにより、上記諸性能を満たす仮接着層とすることができる。
【0185】
可塑剤としては、フタル酸エステル、脂肪酸エステル、芳香族多価カルボン酸エステル、ポリエステルなどが使用できる。
【0186】
フタル酸エステルとしては例えば、DMP、DEP、DBP、#10、BBP、DOP、DINP、DIDP(以上、大八化学工業(株)製)、PL-200、DOIP(以上、シージーエスター(株)製)、サンソサイザーDUP(新日本理化(株)製)などが挙げられる。
【0187】
脂肪酸エステルとしては例えば、ブチルステアレート、ユニスターM-9676、ユニスターM-2222SL、ユニスターH-476、ユニスターH-476D、パナセート800B、パナセート875、パナセート810(以上、日油(株)製)、DBA、DIBA、DBS、DOA、DINA、DIDA、DOS、BXA、DOZ、DESU(以上、大八化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0188】
芳香族多価カルボン酸エステルとしては、TOTM(大八化学工業(株)製)、モノサイザーW-705(大八化学工業(株)製)、UL-80、UL-100((株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0189】
ポリエステルとしては、ポリサイザーTD-1720、ポリサイザーS-2002、ポリサイザーS-2010(以上、DIC(株)製)、BAA-15(大八化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0190】
上記可塑剤の中では、DIDP、DIDA、TOTM、ユニスターM-2222SL、ポリサイザーTD-1720が好ましく、DIDA、TOTMがより好ましく、TOTMが特に好ましい。
【0191】
可塑剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0192】
可塑剤は、加熱中の昇華防止の観点から、窒素気流下、20℃/分の一定速度の昇温条件のもとで重量変化を測定したとき、その重量が1質量%減少する温度が、250℃以上であることが好ましく、270℃以上であることがより好ましく、300℃以上であることが特に好ましい。上限は特に定めるものではないが、例えば、500℃以下とすることができる。
【0193】
可塑剤の添加量は、仮接着用組成物の全固形分に対して、0.01質量%~5.0質量%の割合で含むことが好ましく、より好ましくは0.1質量%~2.0質量%である。
【0194】
<組成物の調製>
本発明の仮接着用組成物は、上述の各成分を混合して調製することができる。各成分の混合は、通常、0℃~100℃の範囲で行われる。また、各成分を混合した後、例えば、フィルタでろ過することが好ましい。ろ過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、ろ過した液を再ろ過することもできる。
【0195】
フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているものであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン6、ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂等によるフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレンおよびナイロンが好ましい。
【0196】
フィルタの孔径は、例えば、0.003~5.0μm程度が適している。この範囲とすることにより、ろ過詰まりを抑えつつ、組成物に含まれる不純物や凝集物など、微細な異物を確実に除去することが可能となる。
【0197】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第一のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合は、1回目のフィルタリングの孔径に対し、2回目以降の孔径が同じ、もしくは小さい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第一のフィルタを複数組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照することができる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール(株)、アドバンテック東洋(株)、日本インテグリス(株)または(株)キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択することができる。
【0198】
<仮接着層の形成>
仮接着層は、例えば、スリットコート法やバーコート法などの矩形型塗布方法によって、仮接着用組成物を矩形基板上に塗布する方法により好適に形成される。特に、本発明の仮接着用組成物は、ステンレスに対する濡れ性および組成物のタック性に優れているため、無駄な液垂れを生じることなく、効率的に矩形範囲への塗布が可能である。
【0199】
<積層体およびキット>
そして、本発明の積層体は、矩形基板と、本発明の仮接着用組成物を用いて形成された仮接着層とを含む積層体である。また、本発明のキットは、矩形基板と、本発明の仮接着用組成物を含むキットである。本発明において、矩形基板は、一般的に矩形として取り扱える範囲の基板であれば、特に制限されない。矩形基板は、例えば、各内角が90度±10度の範囲内である四角形状の基板であり、角は丸みを帯びていてもよい。
【0200】
矩形基板の大きさは、例えば、一辺が100~4000mmであることが好ましく、厚さは、例えば、0.7~7mmであることが好ましい。矩形基板の材料は、例えば、シリコンやガラス、SiC、GaN、GaAsなどの化合物半導体、モールド樹脂などである。また、矩形基板は、その表面と内部とに構造体が形成されたデバイスウェハなどの被加工基板でもよいし、被加工基板を支持するためのキャリア基板でもよい。上記のとおり、本発明の仮接着用組成物は、矩形型塗布方法に適した組成物であるから、矩形状の基板に容易に仮接着層を形成することができる。
【0201】
なお、本発明の仮接着用組成物を、スピンコート法や浸漬法など、矩形型塗布方法以外の方法に使用してもよい。
【0202】
仮接着層は、上述のとおり、被加工基板およびキャリア基板の少なくとも一方の表面に形成される。つまり、これらの一方のみに仮接着層を形成して他方と貼り合わせてもよいし、これらの両方に仮接着層を設けて両者を貼り合わせてもよい。
【0203】
次いで、仮接着用組成物は通常、溶剤を含むため、加熱を行って溶剤を揮発させる。この加熱温度としては、溶剤の沸点よりも高い温度であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、130℃~200℃がさらに好ましく、160℃~190℃が特に好ましい。
【0204】
<積層体および半導体デバイスの製造方法>
本発明の仮接着用組成物(「仮接着剤」ともいう。)を用いた半導体デバイスの製造方法は、本発明の仮接着剤を、洗浄剤(例えば、酸または塩基と、有機溶剤とを含む。)を用いて除去する工程を含む。このような構成とすることにより、仮接着層を効果的に除去できる。
【0205】
仮接着層を除去する工程は、残差を効果的に除去するために、下記の洗浄剤Aで洗浄した後、下記の洗浄剤Bで洗浄することが好ましい。洗浄剤Aは、酸基が硫黄原子またはリン原子を含む有機酸の少なくとも1種と、有機溶剤とを含む。このような構成とすることにより、ケイ素含有化合物由来の残渣を効果的に除去し、その後に積層する層の剥がれを効果的に抑制することができる。洗浄剤Bは、有機カルボン酸化合物と、水および水溶性溶剤からなる溶剤の少なくとも1種とを含む。このような構成とすることにより、洗浄剤A中の有機酸由来の残渣を効果的に除去できる。
【0206】
仮接着剤を除去する態様としては、デバイスウェハなどの被加工基板上の仮接着層を除去すること、被加工基板とキャリア基板とを仮接着する工程中における余剰な仮接着剤を除去すること、および、キャリア基板の再利用のため、キャリア基板上に残存する仮接着剤を除去することなどが例示される。
【0207】
<<第一の実施形態>>
以下、半導体デバイスの製造方法の一実施形態について、図3をあわせて参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0208】
図3(A)~(E)は、それぞれ、矩形状のキャリア基板とデバイスウェハとの仮接着を説明する概略断面図(図3(A)、(B))、キャリア基板に仮接着されたデバイスウェハが薄型化された状態(図3(C))、キャリア基板とデバイスウェハを剥離した状態(図3(D))、デバイスウェハから仮接着層を除去した後の状態(図3(E))を示す概略断面図である。
【0209】
この実施形態では、図3(A)に示すように、先ず、キャリア基板12に仮接着層11が設けられてなる接着性キャリア基板100が準備される。
【0210】
仮接着層11は、本発明の仮接着剤を用いて形成されたものである。デバイスウェハ60は、シリコン基板61の表面61aに複数のデバイスチップ62が設けられてなる。
【0211】
シリコン基板61の厚さは、例えば、200~1200μmが好ましい。デバイスチップ62は例えば金属構造体であることが好ましく、高さは10~100μmが好ましい。
【0212】
仮接着層11を形成する過程で、キャリア基板12およびデバイスウェハ60の裏面や端面を洗浄剤A、洗浄剤B、剥離液または有機溶剤(以下、「洗浄剤等」ともいう。)を用いて洗浄する工程を設けてもよい。具体的には、キャリア基板やデバイスウェハの端面または裏面に付着した仮接着層の残渣を、洗浄剤等を用いて除去することで、装置の汚染を防ぐことができ、薄型化デバイスウェハのTTV(Total Thickness Variation)を低下させることができる。ここで、剥離液は、仮接着層を除去するための組成物であって、例えば、水または有機溶剤に酸、塩基および界面活性剤などが添加された比較的酸性の弱いものをいう。
【0213】
次いで、図3(B)に示す通り、接着性キャリア基板100とデバイスウェハ60とを圧着させ、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着させる。
【0214】
仮接着層11は、デバイスチップ62を完全に覆っていることが好ましい。また、デバイスチップの高さがXμm、仮接着層の厚みがYμmの場合、「X+100≧Y>X」の関係を満たすことが好ましい。
【0215】
仮接着層11がデバイスチップ62を完全に被覆していることは、薄型化デバイスウェハのTTVをより低下したい場合(すなわち、薄型化デバイスウェハの平坦性をより向上させたい場合)に有効である。
【0216】
すなわち、デバイスウェハを薄型化する際において、複数のデバイスチップ62を仮接着層11によって保護することにより、キャリア基板12との接触面において、凹凸形状をほとんど無くすことが可能である。よって、このように支持した状態で薄型化しても、複数のデバイスチップ62に由来する形状が、薄型化デバイスウェハの裏面61b1に転写されるおそれは低減され、その結果、最終的に得られる薄型化デバイスウェハのTTVをより低下することができる。
【0217】
次いで、図3(C)に示すように、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的または化学的な処理(特に限定されないが、例えば、グラインディングや化学機械研磨(CMP)等の薄膜化処理、化学気相成長(CVD)や物理気相成長(PVD)などの高温および真空下での処理、有機溶剤、酸性処理液や塩基性処理液などの薬品を用いた処理、めっき処理、活性光線の照射、加熱処理ならびに冷却処理など)を施す。図3(C)では、シリコン基板61の厚さを薄くし(例えば、上述の厚さとなるように薄型化し)、薄型化デバイスウェハ60aを得ている。
【0218】
デバイスウェハを薄型化した後、高温および真空下での処理を行う前の段階で、デバイスウェハの基板面の面積よりも外側にはみ出した仮接着層を洗浄剤等で洗浄する工程を設けてもよい。具体的には、デバイスウェハを薄型化した後、はみ出した仮接着層を、洗浄剤等を用いて除去することで、高温および真空下での処理が仮接着層に直接施されることによる仮接着層の変形、変質を防ぐことができる。
【0219】
本発明では、仮接着層の膜面の面積は、キャリア基板の基板面の面積よりも小さいことが好ましい。また、本発明では、キャリア基板の基板面の幅をCμm、デバイスウェハの基板面の幅をDμm、仮接着層の膜面の幅をTμmとしたとき、(C-200)≧T≧Dを満たすことがより好ましい。さらに、キャリア基板の基板面の幅をCμm、デバイスウェハの基板面の幅をDμm、仮接着層のキャリア基板と接している側の膜面の幅をTμm、仮接着層のデバイスウェハと接している側の膜面の幅をTμmとしたとき、(C-200)≧T>T≧Dを満たすことが好ましい。このような構成とすることにより、高温および真空下での処理が仮接着層に直接施されることによる仮接着層の変形、変質をより抑制することができる。
【0220】
なお、仮接着層の膜面の面積とは、キャリア基板に対し垂直な方向から見たときの面積をいい、膜面の凹凸は考えないものとする。デバイスウェハの基板面についても同様である。すなわち、ここでいう、デバイスウェハの基板面とは、例えば、図3の61a面に対応する面であり、デバイスチップが設けられている側の面である。仮接着層の膜面等の幅についても、同様に考える。
【0221】
また、仮接着層の膜面の幅Tとは、仮接着層のキャリア基板と接している側の膜面の幅をTμm、仮接着層のデバイスウェハと接している側の膜面の幅をTμmとしたとき、T=(T+T)/2とする。キャリア基板の基板面の幅およびデバイスウェハの基板面の幅は、仮接着層と接している側の表面の幅をいう。また、上記不等式では、張り合わせる際に対応する幅同士を比較している。
【0222】
また、機械的または化学的な処理として、薄膜化処理の後に、薄型化デバイスウェハ60aの裏面61b1からシリコン基板を貫通する貫通孔(図示せず)を形成し、この貫通孔内にシリコン貫通電極(図示せず)を形成する処理を行ってもよい。
【0223】
また、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着した後、剥離するまでの間に加熱処理を行ってもよい。加熱処理の一例として、機械的または化学的な処理を行う際に、加熱を行うことが挙げられる。
【0224】
加熱処理における最高到達温度は80~400℃が好ましく、130℃~400℃がより好ましく、180℃~350℃がさらに好ましい。加熱処理における最高到達温度は仮接着層の分解温度よりも低い温度とすることが好ましい。加熱処理は、最高到達温度での30秒~30分間の加熱であることが好ましく、最高到達温度での1分~10分の加熱であることがより好ましい。
【0225】
次いで、図3(D)に示すように、キャリア基板12を、薄型化デバイスウェハ60a(機械的または化学的な処理を施したデバイスウェハ)から剥離させる。剥離の際の温度は、40℃以下であることが好ましく、30℃以下とすることもできる。剥離の際の温度の下限値としては、例えば、0℃以上であり、好ましくは、10℃以上である。
【0226】
剥離の方法は特に限定されるものではないが、薄型化デバイスウェハ60aを固定し、キャリア基板12を、端部から薄型化デバイスウェハ60aに対して垂直方向に引き上げて剥離することが好ましい。このとき、剥離界面は、キャリア基板12と仮接着層11の界面で剥離されることが好ましい。剥離の際の引き上げ速度は、30~100mm/分の速さであることが好ましく、40~80mm/分の速さであることがより好ましい。この場合、キャリア基板12と仮接着層11の界面の密着強度A、デバイスウェハ表面61aと仮接着層11の密着強度Bは、以下の式を満たすことが好ましい。
【0227】
A<B ・・・・式(A1)
また、剥離の際の端部を引き上げる際の力は、0.33N/mm以下であることが好ましく、0.2N/mm以下とすることもできる。下限値としては、好ましくは0.07N/mm以上である。この際の力は、フォースゲージを用いて測定することができる。
【0228】
また、後述するように、デバイスウェハとキャリア基板の剥離は、レーザ剥離により実施してもよい。
【0229】
そして、図3(E)に示すように、薄型化デバイスウェハ60aから仮接着層11を除去することにより、薄型化デバイスウェハを得ることができる。
【0230】
仮接着層11の除去方法は、例えば、洗浄剤を用いて除去する方法(仮接着層を洗浄剤で膨潤させた後に剥離除去する方法、仮接着層に洗浄剤を噴射して破壊除去する方法、仮接着層を洗浄剤に溶解させて溶解除去する方法等)、仮接着層を活性光線、放射線または熱の照射により分解、気化して除去する方法などが挙げられる。
【0231】
溶剤の使用量削減の観点からは、仮接着層11をフィルム状の状態のままデバイスウェハ60aから剥離除去(ピールオフ)することが好ましい。仮接着層をフィルム状の状態のまま剥離除去する方法とは、洗浄剤等を用いる等の化学的処理を行うことなく、仮接着層をフィルム状のまま剥離除去(ピールオフ)する方法をいう。仮接着層をフィルム状の状態のままで剥離除去する場合、手での剥離または機械剥離が好ましい。仮接着層をフィルム状の状態のまま剥離除去するためには、デバイスウェハ表面61aと仮接着層11の密着強度Bが以下の式(B1)を満たすことが好ましい。
【0232】
B≦4N/cm ・・・・式(B1)
【0233】
キャリア基板12を薄型化デバイスウェハ60aから剥離した後、薄型化デバイスウェハ60aに対して、種々の公知の処理を施し、薄型化デバイスウェハ60aを有する半導体デバイスを製造する。
【0234】
<<第二の実施形態>>
半導体の製造方法の第二の実施形態について、図4をあわせて参照しながら説明する。上述した第一の実施形態と同一箇所は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0235】
図4(A)~(E)は、それぞれ、キャリア基板とデバイスウェハとの仮接着を説明する概略断面図(図4(A)、(B))、キャリア基板に仮接着されたデバイスウェハが薄型化された状態(図4(C))、キャリア基板とデバイスウェハを剥離した状態(図4(D))、デバイスウェハから仮接着層を除去した後の状態(図4(E))を示す概略断面図である。
【0236】
この実施形態では、図4(A)に示すように、デバイスウェハの表面61a上に仮接着層を形成する点が上記第一の実施形態と相違する。
【0237】
デバイスウェハ60の表面61a上に、仮接着層11aを設ける場合は、デバイスウェハ60の表面61aの表面に仮接着剤を適用(好ましくは塗布)し、次いで、乾燥(ベーク)することにより形成することができる。乾燥は、例えば、60~150℃で、10秒~2分行うことができる。
【0238】
次いで、図4(B)に示す通り、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを圧着させ、キャリア基板12とデバイスウェハ60とを仮接着させる。次いで、図4(C)に示すように、シリコン基板61の裏面61bに対して、機械的または化学的な処理を施して、図4(C)に示すように、シリコン基板61の厚さを薄くし、薄型化デバイスウェハ60aを得る。次いで、図4(D)に示すように、キャリア基板12を、薄型化デバイスウェハ60aから剥離させる。そして、図4(E)に示すように、薄型化デバイスウェハ60aから仮接着層11aを除去する。
【0239】
本発明の半導体デバイスの製造方法は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、適宜な変形、改良等が可能である。
【0240】
また、上述した実施形態においては、デバイスウェハとして、シリコン基板を挙げたが、これに限定されるものではなく、半導体デバイスの製造方法において、機械的または化学的な処理に供され得るいずれの被処理部材であってもよい。
【0241】
また、上述した実施形態においては、デバイスウェハ(シリコン基板)に対する機械的または化学的な処理として、デバイスウェハの薄膜化処理、および、シリコン貫通電極の形成処理を挙げたが、これらに限定されるものではなく、半導体デバイスの製造方法において必要ないずれの処理も挙げられる。
【0242】
その他、上述した実施形態において例示した、デバイスウェハにおけるデバイスチップの形状、寸法、数、配置箇所等は任意であり、限定されない。
【0243】
<<第三の実施形態>>
本発明の仮接着用組成物は、単独で仮接着層として使用してもよいが、レーザ剥離層と積層してもよい。レーザ剥離層は、光の吸収によって変質することにより、光の照射を受ける前の強度又は接着性を失う材料から構成される。したがって、レーザ剥離層を使用することで、わずかな外力を加える(例えば、キャリア基板を持ち上げるなど)ことによって、積層体が破壊されて、キャリア基板とデバイスウェハとを容易に分離することができる。このようなレーザ剥離層は、ポリイミド樹脂、芳香族重合体、カーボンブラックおよび熱分解性化合物の少なくとも1種を含むことが好ましい。「熱分解性化合物」とは、5%熱質量減少温度が300℃以下の化合物をいう。熱分解性化合物の5%熱質量減少温度は、好ましくは250℃~150℃である。5%熱質量減少温度は、熱重量分析法(TGA)により、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分にて測定することができる。熱分解性化合物は、例えば、シクロオレフィン樹脂、フルオロカーボン化合物、アクリル樹脂、テルペン樹脂、石油樹脂、ノボラック樹脂およびエラストマーである。これらの中でも、熱分解性化合物は、シクロオレフィン樹脂、フルオロカーボン化合物、テルペン樹脂、石油樹脂およびエラストマーが好ましく、シクロオレフィン樹脂およびフルオロカーボン化合物が特に好ましい。
【0244】
使用するレーザ光は、レーザ剥離層が吸収可能な波長に応じて、例えば、YAGレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザ、YVOレーザ、LDレーザ、ファイバーレーザ等の固体レーザ、色素レーザ等の液体レーザ、COレーザ、エキシマレーザ、Arレーザ、He-Neレーザ等の気体レーザ、半導体レーザ、自由電子レーザ等のレーザ光、又は、非レーザ光を適宜用いればよい。
【実施例
【0245】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。「部」、「%」は特に述べない限り、質量基準である。
【0246】
<仮接着用組成物の調製>
下記表1~表4に示すとおり、仮接着用組成物の各成分を混合して均一な溶液とし、その後、0.2μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いて、ろ過することにより、仮接着用組成物を調製した。各表中の成分割合は質量%表示である。また、表中、「エラストマー全体」、「有機溶剤全体」、「界面活性剤全体」および「酸化防止剤全体」の欄に記載の数値は、組成物全体に対する割合を表す。一方、各成分の個々の欄に記載の数値は、その成分が属する各化合物群(エラストマー、有機溶剤、界面活性剤および酸化防止剤のいずれか1つ)全体に対する割合を表す。
【0247】
【表1】
【0248】
【表2】
【0249】
【表3】
【0250】
【表4】
【0251】
使用した化合物の詳細は、下記のとおりである。
【0252】
<<エラストマー>>
PS-1:セプトン4033((株)クラレ製、ポリスチレン系エラストマー)
PS-2:セプトン2104((株)クラレ製、ポリスチレン系エラストマー)
P-1:ユピゼータFPC2136(三菱ガス化学(株)製、特殊ポリカーボネート)
P-2:ユピゼータFPC0330(三菱ガス化学(株)製、特殊ポリカーボネート)
【0253】
<<有機溶剤>>
LS-1:シクロヘキサン(沸点80.8℃、低沸点有機溶剤に相当する。)
LS-2:トルエン(沸点110.6℃、低沸点有機溶剤に相当する。)
S-1:メシチレン(1,3,5-トリメチルベンゼン、沸点164.7℃、東洋合成工業(株)製)
【0254】
<<界面活性剤>>
SA-A:FC-540(フッ素系、DIC製)
SA-B:TSF4445(ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
SA-C:アセチレノールE40(アセチレン系、川研ファインケミカル社製
SA-D:Pluronic PE10500(プロピレングリコール、エチレングリコール共重合体、BASF製)
【0255】
<<酸化防止剤>>
OX-1:Irganox1010(BASFジャパン(株)製)
OX-2:Sumilizer TP-D(住友化学(株)製)
【0256】
<仮接着用積層体の製造>
引張り剥離用の積層体(実施例1~20および比較例1~6)について説明する。下記塗布条件の下、スリットコーターを用いて、上記表記載の各仮接着用組成物をそれぞれ100mmx100mmガラス基板上に塗布して、塗布膜を形成した。減圧チャンバー内にて、到達真空度0.4Torr(1Torr=133.322Pa)の条件下で、この塗布膜を真空乾燥し、積層体を減圧チャンバーから取り出した後、ホットプレートを用いて3分間190℃で加熱乾燥することにより、厚さ20μmの仮接着層を形成した。これが、仮接着層およびガラス基板を含む仮接着用積層体となる。
【0257】
次に、レーザ剥離用の積層体(実施例21~25)について説明する。まず、下記に示す製造方法により、100mmx100mmガラス基板上にレーザ剥離層をそれぞれ形成した。その後、各レーザ剥離層上に、実施例1と同様の条件で、仮接着層を形成した。これが、仮接着層、レーザ剥離層およびガラス基板を含む仮接着用積層体となる。
【0258】
<<仮接着用組成物の塗布条件>>
・基板温度:室温(23℃)
・塗布ギャップ:300mm
・単位時間あたり塗布量:0.5ml/s
・移動速度:5mm/sec
【0259】
<<レーザ剥離層の形成方法>>
<<<LP-1>>>
レーザ剥離層LP-1は、ポリイミド樹脂を含む剥離層である。レーザ剥離層LP-1は、次のとおり形成した。まず、27.7質量%のポリイミド(製品名ユピア‐AT1001、宇部興産社製)と、72.3質量%のN-メチルピロリドンを混合した。次いで、0.2μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いて、この混合物をろ過することで、剥離層用組成物を得た。その後、スピンコーター(EVグループ社製、EVG101)を用いて、上記ガラス基板の表面に上記剥離層用組成物を塗布し、80℃で3分間、次いで190℃で3分間乾燥して、厚さ1μmの剥離層を形成した。
【0260】
<<<LP-2>>>
レーザ剥離層LP-2は、シクロオレフィン樹脂を含む剥離層である。レーザ剥離層LP-2は、次のとおり形成した。まず、80部のシクロオレフィン系重合体(商品名「ARTON RX4500」、JSR(株)製)と、20部の水添テルペン樹脂(商品名「CLEARON P150」、ヤスハラケミカル(株)製)と、20部の液状スチレンブタジエンゴム(商品名「L-SBR-820」、クラレ(株)製)と、3部のヒンダードフェノール系酸化防止剤(商品名「IRGANOX1010」、BASF社製)と、125部のカーボンブラック分散液(商品名「MHIブラック#209」、御国色素(株)製、固形分35質量%)と、367部のメシチレンとを混合した。次いで、0.2μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いて、この混合物をろ過することで、剥離層用組成物を得た。その後、スピンコーター(EVグループ社製、EVG101)を用いて、上記ガラス基板の表面に上記剥離層用組成物を塗布し、80℃で3分間、次いで190℃で3分間乾燥して、厚さ1μmの剥離層を形成した。
【0261】
<<<LP-3>>>
レーザ剥離層LP-3は、フルオロカーボン化合物を含む剥離層である。レーザ剥離層LP-3は、次のとおり形成した。流量400sccm、圧力700mTorr、高周波電力2500W、および成膜温度240℃の条件下において、反応ガスとしてCを使用したCVD法により、上記接着層付ベアシリコンウェハの接着層上に、フルオロカーボン膜からなる厚さ1μmの剥離層を形成した。
【0262】
<<<LP-4>>>
レーザ剥離層LP-4は、芳香族重合体を含む剥離層である。レーザ剥離層LP-4は、次のとおり形成した。まず、下記方法で合成した100部の重合体(A1)と、10部の4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンと、315部のシクロヘキサノンと、210部のメトキシプロピルアセテートとを混合した。次いで、0.2μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いて、この混合物をろ過することで、剥離層用組成物を得た。その後、スピンコーターを用いて、上記ガラス基板の表面に上記剥離層用組成物を塗布し、80℃で3分間、次いで190℃で3分間乾燥して、厚さ1μmの剥離層を形成した。
【0263】
重合体(A1)の合成方法:
コンデンサー、温度計および撹拌装置を備えた反応装置に、2,6-ジヒドロキシナフタレン100部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部、およびパラホルムアルデヒド50部(ホルムアルデヒド換算)を仕込み、シュウ酸2部を添加し、脱水しながら120℃で5時間加熱した。その後、反応溶液に水を加え撹拌を行った。沈殿物を回収した後、水にて洗浄し、50℃にて17時間乾燥して、2,6-ジヒドロキシナフタレン/ホルムアルデヒド縮合物(重合体(A1))を得た。重合体(A1)のMwは1550であった。
【0264】
<<<LP-5>>>
レーザ剥離層LP-5は、カーボンブラックを含む剥離層である。レーザ剥離層LP-5は、次のとおり形成した。まず、2.5質量%のカーボンブラック(製品名#950、三菱化学社製)と、3.25質量%のシリカ(製品名AEROSIL 200、日本アエロジル社製)と、0.75質量%の分散剤(製品名Disperbyk 168、ビックケミー・ジャパン社製)と、3.5質量%のアクリルレジン(製品名Joncryl 690、BASFジャパン社製)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート90質量%を混合した。次いで、0.2μmの孔径を有するポリテトラフルオロエチレン製フィルタを用いて、この混合物をろ過することで、剥離層用組成物を得た。その後、スピンコーターを用いて、上記ガラス基板の表面に上記剥離層用組成物を塗布し、80℃で3分間、次いで190℃で3分間乾燥して、厚さ1μmの剥離層を形成した。
【0265】
<評価>
本発明について、下記に示す方法により、接触角を測定した。また、本発明について、下記に示す方法により、仮接着用組成物の塗布性、仮接着層の剥離性、接着時のボイド欠陥、および、その組成物のタック性(液垂れのしにくさ)をそれぞれ評価した。そして、評価結果を上記表1~表4に示した。
【0266】
<<接触角の測定>>
シリンジでステンレス(SUS304)の平滑な表面に、各組成物からなる液滴サイズ10μLの液滴を滴下し、静止接触角計(協和界面科学社製)を用いて、液滴のなす角度を測定した。そして、各組成物について測定を3回行い、その算術平均値を接触角として採用した。その他の条件はJISR3257:1999に準拠するものとした。
【0267】
<<仮接着用組成物の塗布性>>
仮接着用組成物の塗布性は、仮接着用組成物が膜になった仮接着層の面内均一性の評価値に基づいて評価した。この評価値は、FILMETRIX社製F-50膜厚計を用いて、面内の115箇所で膜厚を計測し、これらの膜厚の算術平均値をM、標準偏差をσとし、次式で算出した。
面内均一性の評価値=3σ÷M×100[%]
そして、この評価値に基づいて、下記の基準で評価した。
A:評価値が5%未満
B:評価値が5%以上10%未満
C:評価値が10%以上
【0268】
<<仮接着層の剥離性>>
仮接着層の剥離性は、キャリア基板から仮接着層の膜を剥離する際に必要な剥離力の大きさに基づいて評価した。剥離力の大きさは、次のようにして測定した。
キャリア基板として100mmx100mmガラス基板を用い、その表面に、上記表記載の各仮接着用組成物をスリットコーターにより塗布して、塗布膜を形成した。減圧チャンバー内にて、到達真空度0.4Torrの条件下で、この塗布膜を真空乾燥し、積層体を減圧チャンバーから取り出した後、ホットプレートを用いて3分間190℃で加熱乾燥することで、ガラス基板の表面に仮接着膜を形成した。この時の仮接着膜の膜厚は20μmであった。上記で得た仮接着膜に、膜を30mm幅に切る切れ目を入れ、気温25℃、引き上げ速度300mm/分の条件下で、30mm幅の膜の端部をガラス基板表面に対し垂直な方向に引き上げ、フォースゲージ((株)イマダ製、DS2-20N)を用いて引き上げる際にかかる力(剥離力、単位:N/m)を測定した。
そして、この剥離力の大きさに基づいて、下記の基準で評価した。
A:剥離力が30N/m以上40N/m以下
B:剥離力が20N/m以上30N/m未満、または、40N/m超50N/m以下
C:剥離力が20N/m未満、または、50N/m超
【0269】
<<接着時のボイド欠陥>>
仮接着層を介して半導体基板にキャリア基板を接着した場合におけるボイド数を次のようにして計測した。
スリットコーターを用いて上記表記載の各仮接着用組成物を100mmx100mmガラス基板上に塗布して、塗布膜を形成した。減圧チャンバー内にて、到達真空度0.4Torrの条件下で、この塗布膜を真空乾燥し、積層体を減圧チャンバーから取り出した後、ホットプレートを用いて3分間190℃で加熱乾燥することで、ガラス基板の表面に膜厚20μmの仮接着膜を形成した。この仮接着膜が形成されたガラス基板表面に、ガラスウェハを100mm四方にカットして形成した擬似デバイスウェハのデバイス面を貼り合わせ、真空雰囲気、基板温度200℃および圧力0.11MPaの条件で、これらを3分間圧着して試験片を作製した。そして、ガラス基板側から光学顕微鏡を用いて10μm以上のボイドをカウントした。
【0270】
<<仮接着用組成物のタック性>>
仮接着用組成物のタック性は、仮接着用組成物の塗布後初期における液垂れの度合に基づいて評価した。この液垂れの度合は、各組成物からなる試料をガラス基板に塗布し、140℃で1分加熱後に、基板を垂直に傾けたときの観測結果である。
【0271】
そして、この液垂れの度合に基づいて、下記の基準で評価した。
A:液垂れが起きなかった
B:一部で液垂れが発生した。
C:全面に液垂れが発生した。
【0272】
表1~表4に示すとおり、本発明の実施例では、ステンレスに対する接触角が低減されたことおよび低沸点有機溶剤の作用により仮接着用組成物の塗布性に優れ、かつ、界面活性剤の動的な作用により剥離性に優れる仮接着層が得られた。また、本発明の実施例の仮接着用組成物をスピンコート法により塗布しても、充分な塗布性および剥離性を有する仮接着層を形成することができた。つまり、本発明により、矩形型塗布方法を用いても、仮接着用組成物の塗布性および仮接着層の剥離性を充分に確保できる仮接着用組成物が得られた。
【0273】
特に、接触角が50度以下である場合には、コーター部材に対する濡れ性が向上したことから、組成物の塗布性がより改善することが分かった。また、本発明によれば、仮接着層の接着時に生じやすいボイドの発生を抑制できることも分かった。さらに、本発明の仮接着用組成物はタック性にも優れており、塗布方向に垂直な方向への無駄な組成物の広がりを抑制できるため、矩形型塗布方法において、効率的な塗布が可能となる。
【0274】
また、本発明の仮接着用組成物は、単層の仮接着層に使用できる他に、レーザ剥離層と積層して用いても、充分な接着性を確保できることも分かった。
【符号の説明】
【0275】
1 スリットコーター
2 バーコーター
11、11a 仮接着層
12 キャリア基板
13、23 隙間
14、24 塗布膜
16 ブレード
25 ワイヤーバー
26 塗布液供給部
60 被加工基板(デバイスウェハ)
60a 薄型化デバイスウェハ
61 シリコン基板
61a 表面
61b、61b1:裏面
62 デバイスチップ
100 接着性キャリア基板
L 仮接着用組成物
S 基板
図1
図2
図3
図4