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特許7074892周波数選択インピーダンス整合ネットワークを備えるRFパワー増幅器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-16
(45)【発行日】2022-05-24
(54)【発明の名称】周波数選択インピーダンス整合ネットワークを備えるRFパワー増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/02 20060101AFI20220517BHJP
   H03F 3/193 20060101ALI20220517BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H03F1/02 188
H03F3/193
H03F3/24
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020561588
(86)(22)【出願日】2019-01-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019014744
(87)【国際公開番号】W WO2019147666
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】15/879,621
(32)【優先日】2018-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】ウルフスピード インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】WOLFSPEED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヘドン
(72)【発明者】
【氏名】キャニング ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】モクティ ズルハズミ
(72)【発明者】
【氏名】トラン フランク
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン リチャード
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/203512(WO,A1)
【文献】特表2005-516515(JP,A)
【文献】特表2005-521312(JP,A)
【文献】米国特許第09571044(US,B1)
【文献】特開2008-263438(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/02
H03F 3/193
H03F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
増幅器回路(400)であって、
RF増幅器(206)であって、入力端子(208)と、出力端子(210)と、基準電位端子(212)と、を備え、基本周波数範囲にわたってRF信号を増幅するように構成される、RF増幅器(206)と、
インピーダンス整合ネットワーク(416)であって、
効率最適化回路(222)および周波数選択回路(240)を備え、
前記出力端子(210)および前記基準電位端子(212)に電気的に接続され、
前記基本周波数範囲の中心周波数において前記RF増幅器(206)の特性出力インピーダンスを整合し、
前記中心周波数での前記出力端子(210)におけるRF信号と実質的に同相である前記RF増幅器(206)の固有ノードにおけるRF信号を提供し、
前記基本周波数範囲を下回るベースバンド周波数範囲内で、RF信号の周波数に対する、ネットワークにわたって伝搬する前記RF信号の利得が線形である線形伝送特性を示す、
ように構成される、インピーダンス整合ネットワーク(416)と、
を備え、
前記効率最適化回路(222)は、前記出力端子(210)および前記基準電位端子(212)と並列に接続され、前記特性出力インピーダンスを整合するように構成され、
前記周波数選択回路(240)は、前記出力端子(210)と前記増幅器回路(400)の出力ポートとの間に直列に接続され、前記出力ポート(204)における前記RF信号と実質的に同相である前記固有ノード(217)における前記RF信号を提供して前記ベースバンド周波数範囲内で前記線形伝送特性を示すように構成される、
増幅器回路(400)。
【請求項2】
前記周波数選択回路(240)は互いに並列に電気的に接続されたキャパシタ(236)と、インダクタ(242)と、を備え、前記キャパシタ(236)および前記インダクタ(242)は前記出力端子(210)と前記出力ポート(204)との間にそれぞれ直列に電気的に接続される、請求項に記載の増幅器回路(400)。
【請求項3】
前記キャパシタ(236)および前記インダクタ(242)のパラメータ値は
前記キャパシタ(236)が前記基本周波数範囲内の前記RF信号に適した主要伝送経路を提供し、
前記インダクタ(242)が前記ベースバンド周波数範囲内の前記RF信号に適した主要伝送経路を提供する、
ようなものである、請求項に記載の増幅器回路(400)。
【請求項4】
前記インピーダンス整合ネットワーク(416)は前記出力端子(210)と前記出力ポート(204)との間に直列に接続された寄生インダクタンス(228)を含み、前記キャパシタ(236)および前記インダクタ(242)のパラメータ値は前記寄生インダクタンス(228)、前記キャパシタ(236)、および前記インダクタ(242)が前記中心周波数において前記固有ノード(217)と前記出力ポート(204)との間で前記RF信号に実質的に位相シフトゼロをまとめて提供するように選択される、請求項に記載の増幅器回路(400)。
【請求項5】
前記周波数選択回路(240)のパラメータ値は前記インピーダンス整合ネットワーク(416)の非線形伝送特性領域を前記ベースバンド周波数範囲と前記基本周波数範囲との間の周波数範囲にシフトするように選択される、請求項に記載の増幅器回路(400)。
【請求項6】
前記基本周波数範囲は1.8-2.7GHzの範囲の周波数を含み、前記ベースバンド周波数範囲は0-900MHzの範囲の周波数を含む、請求項に記載の増幅器回路(400)。
【請求項7】
増幅器回路(400)であって、
RF増幅器(202)であって、入力端子(208)と、出力端子(210)と、基準電位端子(212)と、を備え、基本周波数範囲にわたってRF信号を増幅するように構成された、RF増幅器(202)と、
インピーダンス整合ネットワーク(416)であって、
効率最適化回路(222)および周波数選択回路(240)を備え、
前記出力端子(210)および前記基準電位端子(212)に電気的に接続され、
前記基本周波数範囲の中心周波数において前記RF増幅器(202)の特性出力インピーダンスを有する並列共振回路を形成し、
前記中心周波数において前記RF増幅器(202)の固有ノードと前記増幅器回路の出力ポート(204)との間で実質的に位相シフトゼロである第一の伝送経路を形成し、
前記出力端子(210)と前記出力ポート(204)との間をDC信号を通過させるために前記出力端子(210)と前記出力ポート(204)との間に低インピーダンスDC接続を備える第二の伝送経路を形成する、
ように構成され、
独立したDC給電ネットワークを欠く、
インピーダンス整合ネットワーク(416)と、
を備える、増幅器回路(400)。
【請求項8】
前記インピーダンス整合ネットワーク(416)は
前記出力端子(210)と前記基準電位端子(212)との間に接続され、前記並列共振回路を形成する並列分岐(220)と、
前記出力端子(210)と前記増幅器回路(400)の前記出力ポート(204)との間に直列に接続され、前記第一の伝送経路および前記第二の伝送経路を備える、直列分岐(218)と、
を備える、請求項に記載の増幅器回路(400)。
【請求項9】
前記直列分岐(218)はインダクタ(242)と並列に接続されたキャパシタ(236)を備え、前記第一の伝送経路は前記キャパシタ(236)を備え、前記第二の伝送経路は前記インダクタ(242)を備える、請求項に記載の増幅器回路(400)。
【請求項10】
前記インピーダンス整合ネットワーク(416)は前記出力端子(210)と前記出力ポート(204)との間に直列に接続された寄生インダクタンス(228)を含み、前記キャパシタ(236)および前記インダクタ(242)は前記寄生インダクタンス(228)、前記キャパシタ(236)、および前記インダクタ(242)が前記中心周波数において前記固有ノード(217)と前記出力ポート(204)との間で前記RF信号に実質的に位相シフトゼロをまとめて提供するように構成される、請求項に記載の増幅器回路(400)。
【請求項11】
Doherty増幅器回路(100)であって、
基本周波数範囲にわたってメイン入力端子(112)とメイン出力端子(114)との間でRF信号を増幅するように構成されたメイン増幅器(108)と、
前記基本周波数範囲にわたってピーキング入力端子(116)とピーキング出力端子(118)との間で前記RF信号を増幅するように構成されたピーキング増幅器(110)と、
前記メイン出力端子(114)とコンバイナノード(124)との間に接続されたインピーダンス変換器(122)と、
インピーダンス整合ネットワーク(416)であって、
効率最適化回路(222)および周波数選択回路(240)を備え、
前記ピーキング出力端子(118)と前記コンバイナノード(124)との間に接続され、
前記基本周波数範囲の中心周波数において前記ピーキング増幅器(110)の特性出力インピーダンスを有する並列共振回路を形成し、
前記中心周波数での前記コンバイナノード(124)におけるRF信号と実質的に同相である前記ピーキング増幅器(110)の固有ノードにおけるRF信号を提供し、
前記基本周波数範囲を下回るベースバンド周波数範囲内で、RF信号の周波数に対する、ネットワークにわたって伝搬する前記RF信号の利得が線形である実質的に線形伝送特性を示す、
ように構成された、インピーダンス整合ネットワーク(416)と、
を備え、
前記効率最適化回路(222)は、前記基本周波数範囲の前記中心周波数において前記ピーキング増幅器(110)の前記特性出力インピーダンスを有する前記並列共振回路を形成するように構成され、
前記周波数選択回路(240)は、前記中心周波数での前記コンバイナノード(124)における前記RF信号と実質的に同相である前記ピーキング増幅器(110)の前記固有ノード(217)における前記RF信号を提供し、前記ベースバンド周波数範囲内で実質的に線形伝送特性を示すように構成される、
Doherty増幅器回路(100)。
【請求項12】
前記周波数選択回路(240)は互いに並列に電気的に接続されたキャパシタ(236)と、インダクタ(242)と、を備え、前記キャパシタ(236)および前記インダクタ(242)は前記ピーキング出力端子(118)と前記コンバイナノード(124)との間にそれぞれ直列に電気的に接続される、請求項11に記載のDoherty増幅器回路(100)。
【請求項13】
前記キャパシタ(236)および前記インダクタ(242)のパラメータ値は
前記キャパシタ(236)が前記基本周波数範囲内で前記RF信号に適した主要伝送経路を提供し、
前記インダクタ(242)が前記ベースバンド周波数範囲内で前記RF信号に適した主要伝送経路を提供する、
ように選択される、請求項12に記載のDoherty増幅器回路(100)。
【請求項14】
前記インピーダンス整合ネットワーク(416)は前記ピーキング出力端子(118)と前記コンバイナノード(124)との間に直列に接続された寄生インダクタンス(228)を含み、前記寄生インダクタンス(228)、前記キャパシタ(236)、および前記インダクタ(242)は前記中心周波数において前記固有ノード(217)と前記コンバイナノード(124)との間で前記RF信号に実質的に位相シフトゼロをまとめて提供するようなものである、請求項12に記載のDoherty増幅器回路(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願はRFパワー増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
RFパワー増幅器は無線通信システムの基地局等のような様々な用途において使用されている。RFパワー増幅器は歪みのない線形動作を提供するように設計される。RFパワー増幅器により増幅される信号はしばしば、400メガヘルツ(MHz)から4ギガヘルツ(GHz)の範囲の周波数を有する高周波変調搬送波を有する信号を含む。搬送波を変調するベースバンド信号は典型的に比較的低い周波数であり、用途に応じて、1GHz以下とすることができる。
【0003】
現在用いられている一つの人気のあるパワー増幅器アーキテクチャはドハティ増幅器である。ドハティ増幅器は、1936年にWilliam H. Dohertyにより最初に提案され、1936年9月のProc. IRE, vol. 24, pp.1163-1182「A new high efficiency power amplifier for modulated waves」において説明されており、その内容の全体が参照により組み入れられる。ドハティ増幅器は全てのパワーレベルで増幅を提供するメイン増幅器(a main amplifier)、およびハイパワーレベルの閾値を超えるとオンになるピーキング増幅器(a peaking amplifier)を用いている。ピーキング増幅器からのメイン増幅器の負荷変調を通じて効率が高められる。
【0004】
現代のRFパワー増幅器の設計者らは狭帯域周波数制限に対して相当な注意を払っている。例えば、(例えば、パワー結合のための)位相シフトおよびインピーダンス整合を提供するために、ドハティ増幅器を含むRFパワー増幅器回路トポロジにおいて用いられるキャパシタ、インダクタ、伝送線路等のようなリアクタンス性コンポーネントは周波数制限の一つの原因を表す。これらのリアクタンス性コンポーネントにより回路内の周波数依存がもたらされ、それにより最適な効率が特定の周波数値においてのみ達成され、高効率が狭帯域範囲内でのみ達成される。そのため、設計者らはパワー効率を犠牲にすることなくRFパワー増幅器回路トポロジの広帯域インピーダンス応答を改善するための方法を求めている。
【発明の概要】
【0005】
増幅器回路が開示される。一実施形態によると、増幅器回路は入力ポート、出力ポート、および基準電位ポートを含む。増幅器回路は加えて入力ポートに電気的に結合された入力端子、出力ポートに電気的に結合された出力端子、および基準電位ポートに電気的に結合された基準電位端子を有するRF増幅器デバイスを含む。RF増幅器デバイスは基本周波数範囲にわたって入力端子と出力端子との間でRF信号を増幅するように構成される。増幅器回路は加えて出力端子、基準電位ポート、および出力ポートに電気的に接続されたインピーダンス整合ネットワークを含む。インピーダンス整合ネットワークは出力端子および基準電位端子と並列に接続されたリアクタンス性効率最適化回路、ならびに出力端子と出力ポートとの間に直列に接続されたリアクタンス性周波数選択回路を含む。リアクタンス性効率最適化回路は基本周波数範囲の中心周波数においてRF増幅器デバイスの特徴的な出力インピーダンスを備える並列共振回路を形成するリアクタンス性コンポーネントを含む。リアクタンス性周波数選択回路はRF増幅器デバイスの固有出力ノードにおけるRF信号が中心周波数でのコンバイナノードにおけるRF信号と実質的に同相であるように、かつインピーダンス整合ネットワークはベースバンド周波数範囲内で線形伝送特性を示し、ベースバンド周波数範囲は基本周波数範囲を下回るように選択されるパラメータ値を有するリアクタンス性コンポーネントを含む。
【0006】
別の実施形態によると、増幅器回路は入力ポート、出力ポート、および基準電位ポートを含む。増幅器回路は加えて入力ポートに電気的に結合された入力端子、出力ポートに電気的に結合された出力端子、および基準電位ポートに電気的に結合された基準電位端子を有するRF増幅器デバイスを含む。RF増幅器デバイスは基本周波数範囲にわたって入力端子と出力端子との間でRF信号を増幅するように構成される。増幅器回路は加えて出力端子、基準電位ポート、および出力ポートに電気的に接続されたインピーダンス整合ネットワークを含む。インピーダンス整合ネットワークは出力端子および基準電位端子に並列な並列分岐、ならびに出力端子と出力ポートとの間に直列に接続された直列分岐を含む。直列分岐は第一の伝送経路および第二の伝送経路を含む。並列分岐は基本周波数範囲の中心周波数においてピーキング増幅器の特徴的な出力インピーダンスを有する並列共振回路を形成するリアクタンス性コンポーネントを含む。第一の伝送経路は中心周波数においてRF増幅器デバイスの固有ノードと出力ポートとの間で実質的に位相シフトゼロを提供する。第二の伝送経路は固有ノードと出力ポートとの間の低インピーダンスDC接続を提供する。
【0007】
ドハティ増幅器が開示される。一実施形態によると、ドハティ増幅器は基本周波数範囲にわたってメイン入力端子とメイン出力端子との間でRF信号を増幅するように構成されたメイン増幅器、および基本周波数範囲にわたってピーキング入力端子とピーキング出力端子との間でRF信号を増幅するように構成されたピーキング増幅器を含む。ドハティ増幅器はメイン出力端子とコンバイナノードとの間に接続されたインピーダンス変換器、およびピーキング出力端子とコンバイナノードとの間に接続されたインピーダンス整合ネットワークをさらに含む。インピーダンス整合ネットワークはリアクタンス性効率最適化回路およびリアクタンス性周波数選択回路を含む。リアクタンス性効率最適化回路は基本周波数範囲の中心周波数においてピーキング増幅器の特徴的な出力インピーダンスを有する並列共振回路を形成するリアクタンス性コンポーネントを含む。リアクタンス性周波数選択回路素子のパラメータ値は、ドハティ増幅器の固有ノードにおけるRF信号が中心周波数でのコンバイナノードにおけるRF信号と実質的に同相であるように、かつインピーダンス整合ネットワークの伝送特性が基本周波数範囲を下回るベースバンド周波数領域において実質的に線形であるように、選択される。
【0008】
当業者においては以下の詳細な説明を読み、添付図面を見れば、さらなる特徴および利点を認識されるであろう。
【0009】
図面の要素は互いに対して必ずしも正しい縮尺で描かれていない。同様の参照番号は対応する同様の部分を指す。様々な例示される実施形態の特徴はそれらが互いに排除しない限り組み合わせることができる。実施形態は図面に描写されており、以下の説明において詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態による、ドハティ増幅器回路を描写する。
図2】一実施形態による、ピーキング増幅器およびインピーダンス整合ネットワークを含む増幅器回路を描写する。
図3】一実施形態による、ピーキング増幅器および基本周波数位相補償素子を備えるインピーダンス整合ネットワークを含む増幅器回路を描写する。
図4】一実施形態による、ピーキング増幅器ならびに基本周波数位相補償素子およびベースバンド周波数領域バイパスインダクタを備えるインピーダンス整合ネットワークを含む増幅器回路を描写する。
図5】別の実施形態による、ピーキング増幅器ならびに基本周波数位相補償素子およびベースバンド周波数領域バイパスインダクタを備えるインピーダンス整合ネットワークを含む増幅器回路を描写する。
図6図6A図6Bおよび図6Cを含み、様々な増幅器回路トポロジの比較を例示する。図6Aは一実施形態による、位相補償素子およびベースバンド周波数領域バイパスインダクタを備えないドハティ増幅器回路のモデルを例示する。図6Bは一実施形態による、位相補償素子を備え、ベースバンド周波数領域バイパスインダクタ備えないドハティ増幅器回路のモデルを例示する。図6Cは一実施形態による、位相補償素子およびベースバンド周波数領域バイパスインダクタを備える、ドハティ増幅器回路のモデルを例示する。
図7図6A図6Bおよび図6Cのドハティ増幅器回路の伝送特性を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で開示される実施形態によると、ドハティ増幅器回路は二つの伝送経路を備えるインピーダンス整合ネットワークを含む。第一の伝送経路は、例えば1.8から2.7GHz(ギガヘルツ)の間の基本周波数領域内の位相シフトを提供するように設計される。より具体的には、第一の伝送経路はピーキング増幅器の固有ノードとコンバイナノードとの間で、中心動作周波数、例えば2.2GHzにおいて位相シフトゼロを提供するように調整することができる。これにより正確に同相であるドハティ増幅器のコンバイナノードにおけるRF信号が提供され、パワー結合に対して理想的である。第二の伝送経路は基本周波数領域、例えば0から400MHz(メガヘルツ)の間よりも実質的に低いベースバンド周波数領域においてピーキング増幅器とコンバイナノードとの間で低インピーダンス経路を提供するように設計される。これはベースバンド周波数領域外のインピーダンス整合回路の位相シフト素子によりもたらされる望まないインピーダンスの変動をシフトする効果を有する。その結果、増幅器回路は広帯域周波数範囲にわたって高効率動作を提供する。一実施形態では、第一および第二の伝送経路は並列接続されたキャパシタおよびインダクタにより提供され、キャパシタは基本周波数領域内の必要な位相シフトを提供し、インダクタはベースバンド周波数領域内の必要な低インピーダンス信号伝送を提供する。
【0012】
図1を参照すると、ドハティ増幅器100が特定の増幅器回路の実施形態により描写されている。ドハティ増幅器100はRF信号、例えば、振幅変調(AM)信号または周波数変調(FM)信号を増幅するように構成される。RF信号はメイン入力ポート102およびピーキング入力ポート104で受信され、出力ポート106で出力される。
【0013】
増幅は二つの増幅器デバイス、すなわちメイン増幅器108およびピーキング増幅器110のうち少なくとも一つを使用して提供される。メイン増幅器108は基本周波数範囲にわたってメイン入力端子112とメイン出力端子114との間でRF信号を増幅するように構成される。ピーキング増幅器110は基本周波数範囲にわたってピーキング入力端子116とピーキング出力端子118との間でRF信号を増幅するように構成される。
【0014】
ドハティ増幅器100は二つの異なるモードで動作する。低パワーモードでは、メイン増幅器108のみがアクティブであり、ピーキング増幅器110はオフにされる。高パワーモードでは、ピーキング増幅器110がオンにされ、メイン増幅器108の増幅を補う。メインおよびピーキング増幅器108、110により生成されたRF信号の出力パワーはパワーコンバイナ120により結合される。低パワーモードから高パワーモードへの遷移はRF信号の入力振幅に基づき得る。例えば、入力RF信号が最大信号振幅の50%に到達すると、ドハティ増幅器100は高パワーモードに遷移することができる。
【0015】
パワーコンバイナ120はメイン出力端子114、ピーキング出力端子118、および出力ポート106の間に接続される。パワーコンバイナ120ネットワークはメイン出力端子114とコンバイナノード124との間に接続されたインピーダンス変換器122(例えば、四分の一波長伝送線路)を含む。インピーダンス変換器122はパワーバックオフ領域にわたってドハティ増幅器100のデバイスに負荷変調を提供するように調整される。
【0016】
図2を参照すると、一実施形態による、増幅器回路200が描写されている。増幅器回路200は、図1に関連して説明されるドハティ増幅器100のピーキング増幅器110側に対応することができ、増幅器回路200の入力ポート202はピーキング入力ポート104に接続され、増幅器回路200の出力ポート204はコンバイナノード124に接続される。
【0017】
増幅器回路200は、入力ポート202に電気的に結合された入力端子208を有するRF増幅器デバイス206、出力ポート204に電気的に結合された出力端子210、および基準電位ポート214に電気的に結合された基準電位端子212を含む。一般的に言えば、RF増幅器デバイス206はRF信号の増幅を実行することのできる任意のデバイスとすることができる。描写されている実施形態では、RF増幅器デバイス206はトランジスタデバイスの制御端子またはゲート端子に対応する入力端子208、トランジスタデバイスの第一の負荷端子(例えば、ドレイン端子)に対応する出力端子210、およびトランジスタデバイスの第二の負荷端子(例えば、ソース端子)に対応する基準電位端子212を有するトランジスタデバイスである。RF増幅器デバイス206に好適なトランジスタの例には、MOSFET(metal‐oxide semiconductor field-effect transistors)、DMOS(double-diffused metal-oxide semiconductor)デバイス、GaN HEMT(gallium nitride high electron mobility transistors)、GAN MESFET(gallium nitride metal‐semiconductor field-effect transistors)、LDMOS(laterally diffused metal‐oxide semiconductor)デバイス等、およびより一般的には任意のタイプのRFトランジスタデバイスを含む。
【0018】
RF増幅器デバイス206は中心周波数を含む基本周波数範囲にわたって入力端子208と出力端子210との間でRF周波数範囲にわたってRF信号を増幅するように構成される。以下の議論において、基本周波数範囲は1.8GHz(ギガヘルツ)から2.7GHzの間であり、中心周波数は2.2GHzである。加えて、以下の議論において、RF信号は900MHz(メガヘルツ)の搬送波信号により変調された周波数変調信号である。したがって、ベースバンド周波数範囲は0-900MHzの間である。
【0019】
当該技術分野において既知であるように、描写されているRF増幅器デバイス206等のMOSFETデバイスは固有のドレイン-ソースキャパシタンスを有する。RF増幅器デバイス206の固有出力キャパシタンスは固有キャパシタ215により表される。RF増幅器デバイス206の固有ノード217は伝送経路内の固有キャパシタ215の前である内部ノードに対応する。
【0020】
増幅器回路200は出力端子210、基準電位ポート214、および出力ポート204に電気的に結合されたインピーダンス整合ネットワーク216をさらに含む。インピーダンス整合ネットワーク216は出力端子210と出力ポート204との間に直列に接続された直列分岐218ならびに出力端子210および基準電位端子212に並列の並列分岐220を含む。
【0021】
インピーダンス整合ネットワーク216はリアクタンス性コンポーネント、すなわちインダクタおよびキャパシタを含む。以下でより詳細に議論されるように、これらのインダクタおよびキャパシタのパラメータ(すなわち、インダクタンスおよびキャパシタンス)は所与の周波数範囲内で所望の周波数応答を提供するように明確に調整される。より一般的には、インピーダンス整合ネットワーク216のリアクタンス性コンポーネントは様々なコンポーネント(例えば、ラジアルスタブ、伝送線路等)のいずれかにより提供することができ、これらのコンポーネントのパラメータ(例えば、半径、長さ等)は所望の周波数応答を提供するために調整される。
【0022】
インピーダンス整合ネットワーク216の並列分岐220はリアクタンス性効率最適化回路222を含む。描写されている実施形態では、リアクタンス性効率最適化回路222は第一のキャパシタ224および第一のインダクタ226を含む。第一のキャパシタ224および第一のインダクタ226は並列分岐220に沿って互いに直列に接続される。インダクタ226のインダクタンスはRF増幅器デバイス206、明確には固有キャパシタ215の特性出力インピーダンスに関してインピーダンス整合を提供するように調整される。当該技術分野において一般に知られるように、並列LC回路はRFの観点から共振周波数、すなわち無効分岐電流が等しく、かつ反対になる点で最大インピーダンスを提供する。一実施形態によると、第一のインダクタ226のインダクタンスは2.2GHzの中心周波数において共振する固有キャパシタ215を備える並列共振器を形成するために調整される。第一のキャパシタ224は非常に低い周波数(例えば、10MHz未満の周波数)およびDC信号を遮断するDC遮断キャパシタとして構成される。したがって、DC遮断キャパシタは非常に大きなキャパシタンス値を有する。それにより、基本周波数範囲を含む非常に高い周波数値では、第一のキャパシタ224はRFショートとして現れる。このようにして、並列LC共振器上の第一のキャパシタ224の影響は並列LC共振器の調整の際には無視することができる。
【0023】
インピーダンス整合ネットワーク216の直列分岐218は第二のインダクタ228および第一の伝送線路230を含む。第二のインダクタ228および第一の伝送線路230は実際に実装されると増幅器回路200の寄生コンポーネントを表す。例えば、一つの実際の実施形態では、増幅器回路200は導電性ダイパッド、ダイパッドを取り囲む電気的に絶縁したウィンドウフレーム、およびウィンドウフレーム上に形成され、パッケージから離れて延在する導電性リードを備える金属フランジ上にパッケージングされる。このRFパッケージ構成の例はArigongによる米国特許出願第15/823,155号に開示されており、この内容はその全体が参照により組み入れられる。このような構成では、RF増幅器デバイス206はダイパッド上に実装されるトランジスタダイにより提供される。導電性ボンディングワイヤはトランジスタダイの出力端子(例えば、ドレイン)とパッケージリードとの間の電気的な接続を提供する。これらのワイヤ接続は固有インダクタンスを有し、これは第二のインダクタ228により概略的に表される。導電性リードはまたトランジスタダイの出力端子とプリント回路基板との間にインピーダンスがもたらされ、これは第一の伝送線路230として概略的に表される。
【0024】
図3を参照すると、別の実施形態による、増幅器回路300が描写されている。増幅器回路300は、図3の増幅器回路300がリアクタンス性位相補償素子232およびDC給電ネットワーク234をさらに含む修正されたインピーダンス整合ネットワーク316を含むことを除き、図2の増幅器回路200と同一である。
【0025】
リアクタンス性位相補償素子232は出力端子210と出力ポート204との間でのRF信号の伝搬において位相遅延がもたらされるインピーダンス整合ネットワーク316の寄生コンポーネントを補償するように構成され、第一の伝送線路230および第二のインダクタ228を含む。すなわち、リアクタンス性位相補償素子232は直列分岐218が所与の周波数においてRFショートの役割を果たすように第二のインダクタ228および第一の伝送線路230のリアクタンスを弱める逆のリアクタンスを示すように構成される。例えば、一実施形態によると、リアクタンス性位相補償素子232のインピーダンスは固有ノード217におけるRF信号が中心周波数での(ドハティ増幅器100構成におけるコンバイナノード124に対応することのできる)出力ポート204におけるRF信号と実質的に同相であるように選択される。
【0026】
描写されている実施形態では、リアクタンス性位相補償素子232は第二のキャパシタ236により提供される。知られているように、直列接続されたLC回路には、インダクタンス性素子のインダクタンスの振幅が等しく、キャパシタンス性素子のキャパシタンスと符号が反対の共振周波数が存在する。この原理を適用すると、第二のキャパシタ236のキャパシタンスは、例えば中心周波数において位相補償を提供するために第二のインダクタ228および第一の伝送線路230のインダクタに対して調整することができる。直列分岐218に沿ったリアクタンス性位相補償素子232の位置は描写されている実施形態とは異なる可能性がある。例えば、リアクタンス性位相補償素子232は固有ノード217と第二のインダクタ228との間に配置することができる。
【0027】
第二のキャパシタ236は上記で説明された方法で位相シフト補償を提供するために有益に使用することができるが、図3に示される回路トポロジの一つの潜在的な欠点は、第二のキャパシタ236が直列分岐218においてDC(直流)遮断コンポーネントがもたらされることである。すなわち、固有ノード217で現れる任意のDC電圧は出力ポート204から切断される。この問題に対する一つの解決策はインピーダンス整合ネットワーク316においてDC給電ネットワーク234を提供することである。図3はDC給電ネットワーク234の一つの潜在的な位置を表している。より一般的には、DC給電ネットワーク234はインピーダンス整合ネットワーク316内の様々な位置に配置することができる。DC給電ネットワーク234は出力ポート204において独立したDCバイアスを提供するために使用される。様々な実施形態では、DC給電ネットワーク234はより高い周波数の信号を除去するためのRFチョーク238を含むことができる。
【0028】
図4を参照すると、一実施形態による、増幅器回路400が描写されている。増幅器回路400は、図4の増幅器回路400が図3に関連して説明されたリアクタンス性位相補償素子232の代わりにリアクタンス性周波数選択回路240を含む調整されたインピーダンス整合ネットワーク416を含むことを除き、図3の増幅器回路300と同一である。リアクタンス性周波数選択回路240は二つの基準に適合するように設計される。第一に、リアクタンス性周波数選択回路240は固有ノード217におけるRF信号が中心周波数での出力ポート204におけるRF信号と実質的に同相であるように構成される。すなわち、リアクタンス性周波数選択回路240は図3に関連して説明されたリアクタンス性位相補償素子232と同様の方法で位相シフト補償を提供するように構成される。第二に、リアクタンス性周波数選択回路240は固有ノード217と出力ポート204との間にDCおよび低周波伝送経路を提供するように構成される。すなわち、リアクタンス性周波数選択回路240は、上記で論じられたように、第二のキャパシタ236により生み出されるDC遮断の問題を回避するように構成される。
【0029】
描写されている実施形態では、リアクタンス性周波数選択回路240は第二のキャパシタ236および第三のインダクタ242を含む。第三のインダクタ242は直列分岐218に沿って第二のキャパシタ236と並列に接続される。その結果、直列分岐218はRF信号のための二つの伝送経路を含む。第一の伝送経路は第二のインダクタ228、第二のキャパシタ236、および第一の伝送経路230を含む。第二の伝送経路は第二のインダクタ228、第三のインダクタ242、および第一の伝送線路230を含む。
【0030】
第三のインダクタ242および第二のキャパシタ236のパラメータ値は、第二のキャパシタ236が基本周波数範囲においてRF信号のための主要伝送経路を提供するように、かつ第三のインダクタ242がベースバンド周波数範囲においてRF信号のための主要伝送経路を提供するように、選択される。すなわち、第二のキャパシタ236のキャパシタンスは、RF信号が主に第一の伝送経路に沿って伝搬し、第三のインダクタ242がRFオープンとして現れるように、基本周波数範囲において優位である。一方、第三のインダクタ242のインダクタンスはベースバンド信号が主に第二の伝送経路に沿って伝搬し、第二のキャパシタ236がDCまたは低周波数オープンとして現れるように、ベースバンド周波数範囲において優位である。
【0031】
加えて、第二のキャパシタ236および第三のインダクタ242のパラメータ値は、第二のインダクタ228、リアクタンス性周波数選択回路240、および第一の伝送線路230を含む伝送経路が2.2GHzの中心周波数においてRF信号に位相シフトゼロをまとめて提供するように選択される。これは、直列分岐218が図3に関連して説明された方法で中心周波数においてRFショートとして現れるように、直列分岐218において示されるインダクタンスを弱める逆のリアクタンスを提供するために第二のキャパシタ236のキャパシタンスを調整することにより成される。この例では、第二のキャパシタ236のキャパシタンスの調整において第三のインダクタ242のインダクタンスが考慮される。
【0032】
有利には、DCの視点から、第二の伝送経路は固有ノード217と出力ポート204との間に完全な低インピーダンス接続を提供する。したがって、図3の増幅器回路300におけるDC給電ネットワーク234はもはや必要ではなく、したがって省略することができる。
【0033】
図5を参照すると、一実施形態による、増幅器回路500が描写されている。増幅器回路500は、図5の増幅器回路500が調整されたインピーダンス整合ネットワーク516を含むことを除き図4の増幅器回路400と同一であり、リアクタンス性効率最適化回路222は再構成される。図2-4の実施形態において説明された並列LC共振器を形成するために第一のインダクタ226を提供する代わりに、図5の実施形態は固有ノード217に並列に接続された第二の伝送線路244および基準電位端子212を含む。第二の伝送線路244のパラメータは第一のインダクタ226に関連して先に説明されたのと同様の方法で固有キャパシタ215を備える並列LC共振器を形成するために選択される。第二の伝送線路244は図2に関連して説明された第一のキャパシタ224に関連して先に説明されたのと同様の方法で非常に低い周波数(例えば、10MHz未満の周波数)およびDC信号を遮断するDC遮断キャパシタである第三のキャパシタ246に接続され得る。図2-4のリアクタンス性効率最適化回路222構成は例えばディスクリートチップキャパシタおよびボンディングワイヤを使用してパケージレベルで容易に実施され得るが、図5のリアクタンス性効率最適化回路222構成は例えば適切に調整されたRF伝送線路およびプリント回路基板上のディスクリートキャパシタを使用してシステムレベルで容易に実施され得る。
【0034】
図6を参照すると、ドハティ増幅器100回路のピーキング増幅器110に対して示される出力インピーダンスをシミュレーションするための様々なモデルが描写されている。モデルはメイン増幅器108の固有ノード107とドハティ増幅器100の出力ポート106との間のインピーダンスを概略的に表している。
【0035】
図6Aを参照すると、位相補償素子およびDCバイパスを備えないドハティ増幅器回路のモデルが描写されている。このモデルは図2に関連して説明されたインピーダンス整合ネットワーク216を含む。ピーキング増幅器110の出力キャパシタンスは第四のキャパシタ248により表される。加えて、このモデルはメイン増幅器108とピーキング増幅器110との間にインピーダンス変換器122を含み、これは例えば図1に関連して説明されたように、メイン増幅器108により見られるインピーダンスを変換するために使用される。加えて、メイン増幅器108の出力キャパシタンスは第五のキャパシタ250により表される。加えて、このモデルはリアクタンス性効率最適化回路222に関連して先に説明されたのと同様の方法でメイン増幅器108の出力キャパシタンスを備える並列共振回路を形成するように構成された第四のLC分岐252を含む。
【0036】
図6Bを参照すると、位相補償素子を備え、DCバイパスを備えないドハティ増幅器100回路のモデルが描写されている。このモデルは、図3に関連して説明されたインピーダンス整合ネットワーク316がインピーダンス整合ネットワーク216に置き換えられることを除き、図6Aに関連して説明されたモデルと同一である。
【0037】
図6Cを参照すると、位相補償素子およびDCバイパスを備えるドハティ増幅器100回路のモデルが描写されている。このモデルは、図4に関連して説明されたインピーダンス整合ネットワーク416がインピーダンス整合ネットワーク216に置き換えられることを除き、図6Aに関連して説明されたモデルと同一である。
【0038】
図7を参照すると、図6A図6B、および図6Cに表された様々なドハティ増幅器100出力ネットワークの伝送特性が描写されている。伝送特性は、X軸上にギガヘルツ(GHz)を単位として表されるRF信号の周波数に対する、Y軸上にデシベル(dB)を単位として表されるネットワークにわたって伝搬するRF信号の利得を測定したものである。曲線(a)は図6Aに関連して説明されたモデルの伝送特性に対応する。曲線(b)は図6Bに関連して説明されたモデルの伝送特性に対応する。曲線(c)は図6Cに関連して説明されたモデルの伝送特性に対応する。
【0039】
回路モデルの各々について、RF信号は1.8GHz-2.7GHzの基本周波数領域内で効果的に、完全に(すなわち、利得がゼロまたはゼロに非常に近い状態で)伝送される。
【0040】
一方、回路モデルの各々は0-900MHzのベースバンド周波数範囲内では異なる特性を示す。曲線(a)はベースバンド周波数範囲内で線形伝送特性を示す。ベースバンド周波数範囲内の線形伝送特性は、先に説明された理由のためにDC電流の伝送にとって望ましい。しかしながら、曲線(a)の伝送特性はインピーダンス整合の視点から望ましいものの、図6Aにおいてモデリングされたドハティ増幅器100回路の一つの欠点は伝送経路内の寄生コンポーネントの存在に起因する先に論じられたような好ましくない位相シフトである。したがって、RF信号は不利なことに位相がずれている。先に説明されたように、位相シフト補償素子として第二のキャパシタ236を含むことによりこのずれが除かれる。しかしながら、曲線(b)において示されるように、位相補償素子を含むことでベースバンド周波数領域内の伝送特性において急激な変化254がもたらされる。具体的には、400-500MHzの間の領域において、回路の利得はおよそ-20dBからおよそ-8dBまで急激に上昇し、続いておよそ-24dBまで急激に低下する。したがって、回路の利得は線形伝送応答から逸脱し、それにより回路の利得は周波数の上昇に比例して上昇する。この急激な遷移254は位相補償素子としての第二のキャパシタ236だけでなくDC給電回路内のRFチョーク238を含むことに原因がある。この急激な遷移254は望ましくない。具体的には、急激な遷移254は線形化をより困難なものにし、メモリ効果がもたらされる。
【0041】
曲線(c)を参照すると、急激な遷移256は、好ましくはベースバンド周波数領域外からベースバンド周波数領域と基本周波数範囲との間(すなわち、900MHzと1.8GHzとの間)の周波数領域にシフトする。この好ましいシフトはリアクタンス性周波数選択回路240を含むことに原因があり、これは第二のインダクタ228を含む。第二のインダクタ228のパラメータはベースバンド周波数領域外の急激な遷移254のこのシフトをもたらすように決定される。
【0042】
上記の例では、ドハティ増幅器はリアクタンス性周波数選択回路を含むインピーダンス整合回路の有益な側面を例示するための増幅器回路の一つの例として使用される。その上、上記の例では、インピーダンス整合回路はピーキング増幅器のための出力インピーダンスネットワークの役割を果たす。しかしながら、対応する設計原理は他の回路位置に適用することができる。例えば、本明細書で説明された実施形態のいずれかと同様または一致するトポロジを有するインピーダンス整合回路はメイン増幅器のための出力インピーダンスネットワークとして提供することができる。その上、対応する原理はピーキングおよび/またはメイン増幅器の入力側インピーダンス整合ネットワークに適用することができる。より一般的には、インピーダンス整合回路はドハティ増幅器回路トポロジに限定されず、より一般的には、二つの増幅された信号のRFパワーを結合される任意のマルチパス増幅器回路に適用され得る。
【0043】
本明細書で使用されるように、「実質的に同相(substantially in phase)」は10度以下の位相の変動を指す。
【0044】
本明細書で使用されるように、「主要伝送経路(a dominant transmission path)」は電流の少なくとも90パーセントが主要伝送経路を通って二つのノード間を流れる伝送経路を指す。
【0045】
本明細書で使用されるように、「線形伝送特性(a linear transmission characteristic)」は回路の利得が周波数および利得の変動の上昇、すなわち、2dBを超えない線形領域に沿った線形比例関係からの逸脱に比例して増加する伝送特性を指す。
【0046】
本明細書で使用される「同じ(same)」、「一致(match, matches)」等の用語は、同一、ほぼ同一またはおおよそを意味することを意図しており、そのため変動のいくつかの合理的な量は本発明の精神から逸脱することなく検討される。「一定の(constant)」という用語は、変更もしくは変化しないこと、または再びわずかに変更もしくは変化することを意味し、そのため変動のいくつかの合理的な量は本発明の精神から逸脱することなく検討される。さらに、「第一(first)」、「第二(second)」等のような用語は、様々な素子、領域、セクション等を説明するために使用され、また限定することを意図していない。本明細書を通して、同様の用語は同様の要素を指す。
【0047】
「直接電気的に接続された(directly electrically connected)」または「電気的に接続された(electrically connected)」という用語は、電気的に接続された素子間の永続的な低インピーダンス接続、例えば、接続された素子間のワイヤ接続を表す。対照的に、「電気的に結合された(electrically coupled)」という用語は、電気信号に影響を与えるように構成された一または二以上の介在する素子が何らかの方法で電気的に結合された素子間に設けられることを意味する。これらの介在する素子はトランジスタのような能動素子だけでなくインダクタ、キャパシタ、ダイオード、抵抗器等のような受動素子を含む。
【0048】
「下(under)」、「下に(below)」、「下側(lower)」、「上に(over)」、「上側(upper)」等のような空間的かつ相対的な用語は、第二の要素に対する一つの要素のポジショニングを説明するために説明を容易にするために使用される。これらの用語は図において描写されたものとは異なる方向に加え、デバイスの異なる方向を包含することを意図している。
【0049】
本明細書で使用されるように、「有する(having)」、「包含する(containing)」、「含む(including)」、「備える(comprising)」等の用語は、言及された要素または特徴の存在を示すものの追加の素子または特徴を排除しないオープンエンドの用語である。冠詞「a」、「an」、および「the」は、文脈が明確に示さない限り、単数だけでなく複数を含むことを意図している。
【0050】
上記の範囲の変動および応用形態を念頭に、本発明は上述の説明により限定されるものではなく、また添付図面により限定されるものでもないことを理解されるべきである。代わりに、本発明は以下の特許請求の範囲およびそれらの法的な等価物によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7