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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】バトラーマトリクス回路
(51)【国際特許分類】
   H01P 5/16 20060101AFI20220518BHJP
   H01P 5/02 20060101ALI20220518BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
H01P5/16 D
H01P5/02 603L
H05K3/46 Z
H05K3/46 N
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018230019
(22)【出願日】2018-12-07
(65)【公開番号】P2020092377
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加保 貴奈
(72)【発明者】
【氏名】笹木 裕文
(72)【発明者】
【氏名】福本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】八木 康徳
(72)【発明者】
【氏名】李 斗煥
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-057515(JP,A)
【文献】特開2001-267863(JP,A)
【文献】特開2009-158482(JP,A)
【文献】特開平09-093008(JP,A)
【文献】特開平08-250922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00-11/00
H01Q 1/00-25/04
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層からなる多層基板を用い、2つの4×4バトラーマトリクス回路をグランド層を挟んだ両側の層に形成し、一方の4×4バトラーマトリクス回路と同一層に4個のハイブリッド回路を形成し、該4個のハイブリッド回路にそれぞれ、一方の4×4バトラーマトリクス回路の出力端と、スルーホールを介して他方の4×4バトラーマトリクス回路の出力端を接続して8×8バトラーマトリクス回路を構成し、
前記2つの4×4バトラーマトリクス回路の入力端を前記8×8バトラーマトリクス回路の入力ポートとし、前記4個のハイブリッド回路の出力端を前記8×8バトラーマトリクス回路の出力ポートとする
ことを特徴とするバトラーマトリクス回路。
【請求項2】
請求項1に記載の8×8バトラーマトリクス回路を最小単位としてグランド層を挟んだ両側の層に積層する構成であり、
2つの2n ×2n バトラーマトリクス回路(nは3以上の整数)をグランド層を挟んだ両側の層に形成し、一方の2n ×2n バトラーマトリクス回路と同一層に2n 個のハイブリッド回路を形成し、該2n 個のハイブリッド回路にそれぞれ、一方の2n ×2n バトラーマトリクス回路の出力端と、スルーホールを介して他方の2n ×2n バトラーマトリクス回路の出力端を接続して2n+1 ×2n+1 バトラーマトリクス回路を構成し、
前記2つの2n ×2n バトラーマトリクス回路の入力端を前記2n+1 ×2n+1 バトラーマトリクス回路の入力ポートとし、前記2n 個のハイブリッド回路の出力端を前記2n+1 ×2n+1 バトラーマトリクス回路の出力ポートとする
ことを特徴とするバトラーマトリクス回路。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のバトラーマトリクス回路において、
前記スルーホールに代えて、表面実装型同軸コネクタを用いる構成である
ことを特徴とするバトラーマトリクス回路。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のバトラーマトリクス回路において、
前記入力ポートから前記出力ポートまでの全ての配線経路での折り曲げ回数を同一とした構成である
ことを特徴とするバトラーマトリクス回路。
【請求項5】
請求項1に記載のバトラーマトリクス回路において、
前記2つの4×4バトラーマトリクス回路の形状を同一形状とした構成である
ことを特徴とするバトラーマトリクス回路。
【請求項6】
請求項1に記載のバトラーマトリクス回路において、
前記2つの4×4バトラーマトリクス回路の出力端が外向きに配置され、前記8×8バトラーマトリクス回路の出力ポートが外側に配置された構成である
ことを特徴とするバトラーマトリクス回路。
【請求項7】
請求項1に記載のバトラーマトリクス回路において、
前記2つの4×4バトラーマトリクス回路の出力端が内向きに配置され、前記8×8バトラーマトリクス回路の出力ポートが内側に配置された構成である
ことを特徴とするバトラーマトリクス回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチビーム形成回路として、特にマイクロ波帯またはミリ波帯の無線通信システム用アンテナに用いて好適なバトラーマトリクス回路に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の8×8バトラーマトリクス回路の構成例を示す。
図7において、8×8バトラーマトリクス回路は、第1の4×4バトラーマトリクス回路を構成するハイブリッド回路H1~H4および-67.5°,-22.5°の移相器と、第2の4×4バトラーマトリクス回路を構成するハイブリッド回路H5~H8および-67.5°,-22.5°の移相器と、各4×4バトラーマトリクス回路の出力端に接続されるハイブリッド回路H9~H12および-45°の移相器から構成される。このような固定型の移相器は、伝送線路の長さを調整することで容易に実現できる。
【0003】
各回路間の実線は、導体による伝送線路配線であり、各回路の入出力間の全経路は、移相器の部分を除き、図7内の長さによらず等長である。白丸の部分は、クロスオーバーの部分となり、エアブリッジなどにより双方の配線を立体的に交差させるように設計する必要がある。ただし、ハイブリッド回路H9~H12と出力端側は、出力ポートOutput1~8の配列によってエアブリッジは必ずしも必要ではないが、8×8バトラーマトリクス回路を構成するためには、複数のエアブリッジを設ける必要がある。しかし、エアブリッジによる不連続な構造は、回路の高周波特性、特に通過特性の位相・振幅特性の劣化を招くため、好ましくない。
【0004】
また、8×8を超えるバトラーマトリクス回路についても、例えば16×16および32×32バトラーマトリクス回路が検討されている(例えば、非特許文献1)。
【0005】
図8は、非特許文献1の16×16バトラーマトリクス回路の構成例を示す。なお、移相器およびクロスオーバーの表記は省略している。
【0006】
図8において、16×16バトラーマトリクス回路は、第1の8×8バトラーマトリクス回路を構成するハイブリッド回路H1~H12と、第2の8×8バトラーマトリクス回路を構成するハイブリッド回路H13~H24と、ハイブリッド回路H9~H12とH21~H24の同じ位置の出力ポートを、8個のハイブリッド回路H25~H32で接続して構成される。一般に2n+1 ×2n+1 バトラーマトリクス回路は、2つの2n ×2n バトラーマトリクス回路の同じ位置の出力ポートを、ハイブリッド回路で接続することにより構成される。しかしながら、図7の8×8バトラーマトリクス回路と同様にクロスオーバーが存在するため、実現のためにはエアブリッジなどが必要となり、上述のとおり性能面の劣化が避けられない。
【0007】
特許文献1には、クロスオーバーとなる部分をなくし、エアブリッジを不要としたバトラーマトリクス回路が示されている。ただし、特許文献1では、4×4バトラーマトリクス回路の構成までが示されているが、出力ポートの位置が4×4バトラーマトリクス回路の内側に等間隔に配置される構成であり、8×8バトラーマトリクス回路もしくはそれ以上に拡張することは想定されていない。すなわち、8×8バトラーマトリクス回路以上の構成におけるクロスオーバーの回避が可能か否かは明確になっていない。
【0008】
非特許文献2には、クロスオーバー部分に90度ハイブリッド回路を2段用いたバランス回路(Fig.4 )を用いた報告もあるが、回路面積が大きくなり通過損失が増加するという課題がある。
【0009】
非特許文献3には、クロスオーバーとなる部分をなくし、エアブリッジやVIAホールを不要としたバトラーマトリクス回路が示されている。ここでは、平面二層構造を用いて、基板中心部をグラウンドとし、グラウンドにスロット(空隙)を設けてスロット結合型のハイブリッド回路を用いている。しかし、ブランチライン型とスロット結合型の2種類のハイブリッド回路を用いるため、設計する要素回路が増えること、スロット結合型は電磁界設計と実測値のずれが大きいことも多く、設計製造に時間を要する課題がある。
【0010】
非特許文献4には、クロスオーバーとなる部分を低減した8×8バトラーマトリクス回路が示されている。非特許文献1の構成に比べてクロスオーバーを減らせてはいるが、一部にクロスオーバーを用いている。また、入力端子と出力端子がそれぞれ平面基板上の1つの辺に集中する回路構成となっており、実装が近い端子間はアイソレーションが低下している。端子間アイソレーションは、ビームを切替えて使うタイプの従来のフェーズドアレーアンテナへの適用ではあまり問題とならないが、MIMOによる空間多重においては複数のビームを同時に使い、かつ同一の周波数帯の信号を利用するため、アイソレーションの確保が重要になる。また、実用上のアンテナは直線状のアレーアンテナではなく、平面アレーアンテナを用いることが多い。基板上の1辺へ入力端子および出力端子が集中する構成は、平面アレーアンテナへ接続する場合は別途複雑な引き回しが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平9-93008号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】T .M .MACNAMARA ,“Positions and Magnitudes of Fixed Phase Shifters In Butler Matrices Incorporating 90°Hybrids ,”IEE Proceedings, H-Microwaves, Antennas and Propagation Vol. 135,No.5,pp359-360 ,October 1988.
【文献】Hamza Nachouane, Abdellah Najid, Abdelwahed Tribak, Fatima Riouch,“Broadband 4x4 Butler Matrix Using Wideband 90 hybrid Couplers and Crossovers for Beamforming Networks, ” 2014 International Conference on Multimedia Computing and Systems (ICMCS), September 2014.
【文献】関智弘、上原一浩、鹿児島憲一、「平面二層構造バトラーマトリクス回路の一構成法」電子情報通信学会総合大会講演論文集 B-64, 1995.
【文献】Kejia Ding , Fei He, Xiaojun Ying, Jian Guan, “A compact 8 ×8 Butler matrix based on double-layer structure,” 2013 5th IEEE International Symposium on Microwave, Antenna, Propagation and EMC Technologies for Wireless Communications, October 2013. DOI: 10.1109/MAPE.2013.6689925
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
8×8バトラーマトリクス回路の構成では、通常クロスオーバーを作成しなければならないが、その影響で出力側の位相・振幅特性が劣化するので、クロスオーバーとなる部分をなくし、エアブリッジ等の不連続点による電気特性劣化を除去する構成が必要になる。
【0014】
また、非特許文献2に記載のようなクロスオーバー用の2段ハイブリッド回路を用いず、回路面積や通過損失が増大することを避ける必要がある。さらに、配線などにおける複雑さを解消し、製造コストならびに設計調整コストを低減し、加えて製造歩留まりを改善する必要がある。
【0015】
また、非特許文献3に記載のようなブランチライン型とスロット結合型の2種類のハイブリッド回路を用いず、同一種類のブランチライン型ハイブリッドを使うことにより、設計を容易する必要がある。
【0016】
また、非特許文献4に記載のような入力端子または出力端子が平面基板上の特定の辺に集中せず、実装時にも端子間のアイソレーションが確保しやすく、MIMOなどの空間多重伝送において同一周波数の複数のビームを同時送信する用途に適応させる必要がある。
【0017】
本発明は、クロスオーバーのない小型で、電気特性の向上およびコスト低減を可能にするバトラーマトリクス回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の発明のバトラーマトリクス回路は、少なくとも3層からなる多層基板を用い、2つの4×4バトラーマトリクス回路をグランド層を挟んだ両側の層に形成し、一方の4×4バトラーマトリクス回路と同一層に4個のハイブリッド回路を形成し、該4個のハイブリッド回路にそれぞれ、一方の4×4バトラーマトリクス回路の出力端と、スルーホールを介して他方の4×4バトラーマトリクス回路の出力端を接続して8×8バトラーマトリクス回路を構成し、2つの4×4バトラーマトリクス回路の入力端を8×8バトラーマトリクス回路の入力ポートとし、4個のハイブリッド回路の出力端を8×8バトラーマトリクス回路の出力ポートとする。
【0019】
第2の発明のバトラーマトリクス回路は、第1の発明の8×8バトラーマトリクス回路を最小単位としてグランド層を挟んだ両側の層に積層する構成であり、2つの2n ×2n バトラーマトリクス回路(nは3以上の整数)をグランド層を挟んだ両側の層に形成し、一方の2n ×2n バトラーマトリクス回路と同一層に2n 個のハイブリッド回路を形成し、該2n 個のハイブリッド回路にそれぞれ、一方の2n ×2n バトラーマトリクス回路の出力端と、スルーホールを介して他方の2n ×2n バトラーマトリクス回路の出力端を接続して2n+1 ×2n+1 バトラーマトリクス回路を構成し、2つの2n ×2n バトラーマトリクス回路の入力端を2n+1 ×2n+1 バトラーマトリクス回路の入力ポートとし、2n 個のハイブリッド回路の出力端を2n+1 ×2n+1 バトラーマトリクス回路の出力ポートとする。
【0020】
本発明のバトラーマトリクス回路において、スルーホールに代えて、表面実装型同軸コネクタを用いる構成である。
【0021】
本発明のバトラーマトリクス回路において、入力ポートから出力ポートまでの全ての配線経路での折り曲げ回数を同一とした構成である。
【0022】
本発明のバトラーマトリクス回路において、2つの4×4バトラーマトリクス回路の形状を同一形状とした構成である。
【0023】
本発明のバトラーマトリクス回路において、2つの4×4バトラーマトリクス回路の出力端が外向きに配置され、8×8バトラーマトリクス回路の出力ポートが外側に配置された構成である。
【0024】
本発明のバトラーマトリクス回路において、2つの4×4バトラーマトリクス回路の出力端が内向きに配置され、8×8バトラーマトリクス回路の出力ポートが内側に配置された構成である。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、多層基板とスルーホールまたは表面実装型同軸コネクタを利用することで、8×8バトラーマトリクス回路においても、クロスオーバーとなる部分をなくすことができるため、従来技術におけるエアブリッジなどによる電気特性の劣化を回避することができる。
【0026】
また、クロスオーバーをなくすことで、入力ポートから出力ポートまでの全経路を同一回数の折り曲げで実現することが可能となるため、各径路での不要放射の発生や、挿入損失のバラつきなどの特性劣化、さらには周波数帯域幅の狭域化などの性能劣化を回避することができる。
【0027】
また、多層基板による実装が可能であるため、製造コストの低減や、歩留まりの向上など、大量生産において好適な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明における8×8バトラーマトリクス回路の実施例1の分解構成を示す図である。
図2】本発明における8×8バトラーマトリクス回路の実施例1の断面構成を示す図である。
図3】本発明における8×8バトラーマトリクス回路の実施例2の分解構成を示す図である。
図4】本発明における16×16バトラーマトリクス回路の実施例の分解構成を示す図である。
図5】本発明における16×16バトラーマトリクス回路の実施例の断面構成を示す図である。
図6】実施例における入力ポート間アイソレーションの周波数特性を示す図である。
図7】従来の8×8バトラーマトリクス回路の構成例を示す図である。
図8】従来の16×16バトラーマトリクス回路の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明における8×8バトラーマトリクス回路の実施例1の分解構成を示す。 図2は、本発明における8×8バトラーマトリクス回路の実施例1の断面構成を示す。 図1および図2において、多層基板を用い、第N層(Nは自然数)に第1の4×4バトラーマトリクス回路を形成し、グランド層となる第(N+1)層を挟んで、第(N+2)層に第1の4×4バトラーマトリクス回路と同等形状の第2の4×4バトラーマトリクス回路を形成する。ここでは、図7の8×8バトラーマトリクス回路の各ハイブリッド回路H1~H12、入力ポート Input1~8、出力ポートOutput1~8に対応させて表記する。
【0030】
すなわち、第N層の4個のハイブリッド回路H1~H4と移相器により第1の4×4バトラーマトリクス回路を形成し、ハイブリッド回路H1に入力ポート Input1,2を接続し、ハイブリッド回路H2に入力ポート Input3,4を接続する。第(N+2)層の4個のハイブリッド回路H5~H8および移相器により第2の4×4バトラーマトリクス回路を形成し、ハイブリッド回路H5に入力ポート Input5,6を接続し、ハイブリッド回路H6に入力ポート Input7,8を接続し、ハイブリッド回路H7,H8の出力端をスルーホールを用いて第N層に導通させる。なお、図2に示すスルーホールは一部である。また、第(N+1)層は導体によるグランド層を形成しているが、スルーホールとグランドが非接触となるように、導体なしの部分が設けられている。
【0031】
これにより、第N層の第1の4×4バトラーマトリクス回路のハイブリッド回路H3,H4の出力端と、第(N+2)層の第2の4×4バトラーマトリクス回路のハイブリッド回路H7,H8の出力端は同一層に配置されることになり、各出力端は移相器を介して第N層に形成されたハイブリッド回路H9~H12に接続され、さらにハイブリッド回路H9~H12に出力ポートOutput1~8が接続される。
【0032】
ここで、第1および第2の4×4バトラーマトリクス回路を同一形状とし、入力ポート Input1~8から出力ポートOutput1~8までの全ての配線経路での折り曲げ回数を同一としている。
【0033】
このように、実施例1の特徴は、第1および第2の4×4バトラーマトリクス回路をそれぞれグランド層を挟んだ両側の層に形成するとともに、第(N+2)層の第2の4×4バトラーマトリクス回路の出力端をスルーホールを用いて第N層に導通させ、同一面にパターニングされた第1,第2のバトラーマトリクス回路の出力端をハイブリッド回路H9~H12に接続することで、クロスオーバーを不要とする8×8バトラーマトリクス回路を実現するところにある。
【0034】
ただし、入力ポート Input1,2,5,6と出力ポートOutput1,2,5,6が一方の辺に形成され、入力ポート Input3,4,7,8と出力ポートOutput3,4,7,8が他方の辺に形成される。
【0035】
図3は、本発明における8×8バトラーマトリクス回路の実施例2の分解構成を示す。 図1に示す8×8バトラーマトリクス回路の実施例1は、第1および第2の4×4バトラーマトリクス回路を構成するハイブリッド回路H3,H4,H7,H8の出力端が外向きになっており、ハイブリッド回路H9~H12もその外側に配置される。一方、図3に示す8×8バトラーマトリクス回路の実施例2は、第1および第2の4×4バトラーマトリクス回路を構成するハイブリッド回路H3,H4,H7,H8の出力端が内向きになり、ハイブリッド回路H9~H12および出力ポートOutput1~8もその内側に配置される。
【0036】
本構成においても、第1および第2の4×4バトラーマトリクス回路を同一形状とし、入力ポート Input1~8から出力ポートOutput1~8までの全ての配線経路での折り曲げ回数を同一としている。
【0037】
図4は、本発明における16×16バトラーマトリクス回路の実施例の分解構成を示す。
図5は、本発明における16×16バトラーマトリクス回路の実施例の断面構成を示す。
図4および図5において、16×16バトラーマトリクス回路は、図1の8×8バトラーマトリクス回路を2セット用意して多層化する。すなわち、N=1として、第1層に形成されるハイブリッド回路H1~H4,H9~H12と、第3層に形成されるハイブリッド回路H5~H8(図示せず)により第1の8×8バトラーマトリクス回路が形成される。グランド層となる第4層を挟んで、第5層に形成されるハイブリッド回路H13~H16,H21~H24と、第7層に形成されるハイブリッド回路H17~H20(図示せず)により、第1の8×8バトラーマトリクス回路と同等形状の第2の8×8バトラーマトリクス回路が形成される。
【0038】
さらに、第2の8×8バトラーマトリクス回路の第5層から、第1の8×8バトラーマトリクス回路のある第1層へ、スルーホールで配線し、ハイブリッド回路H25~H32と移相器を接続することで、クロスオーバーがない16×16バトラーマトリクス回路を構成する。なお、図5に示すスルーホールは一部である。
【0039】
本構成においても、第1および第2の8×8バトラーマトリクス回路を同一形状とし、入力ポート Input1~16から出力ポートOutput1~16までの全ての配線経路での折り曲げ回数を同一としている。
【0040】
なお、図1のように、基本となる4×4バトラーマトリクス回路の出力端を外側にすることによって、容易に図4のような配線が可能となる。また、32×32バトラーマトリクス回路など、2n+1 ×2n+1 バトラーマトリクス回路についても同様に、2n ×2n バトラーマトリクス回路を2セット用意し、ある1つの面にスルーホールを用いて配線し、必要なハイブリッド回路と移相器を接続することで、実現することが可能である。
【0041】
図6は、実施例における入力ポート間アイソレーションの周波数特性を示す。
ここでは、図1に示す8×8バトラーマトリクス回路の例を示す。Sパラメータの添字は、図1の入力ポートInput の番号に対応している。図示した周波数範囲において、いずれのアイソレーションも-20dBを十分に下回る良好な特性が得られており、非特許文献4のFig.13で示されるアイソレーションと比較して改善していることが確認できる。
【0042】
なお、以上説明した実施例においては、異なる層への配線はスルーホールにて行う例を示したが、表面実装型同軸コネクタなどを用いた接続でも、クロスオーバーのない、2n ×2n バトラーマトリクス回路を実現することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
H1~H32 ハイブリッド回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8