(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-17
(45)【発行日】2022-05-25
(54)【発明の名称】感光性組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/038 20060101AFI20220518BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220518BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/004 505
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2020504935
(86)(22)【出願日】2019-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2019007157
(87)【国際公開番号】W WO2019172006
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2018038622
(32)【優先日】2018-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】中村 翔一
(72)【発明者】
【氏名】大河原 昂広
(72)【発明者】
【氏名】奈良 裕樹
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-181502(JP,A)
【文献】特開2011-203506(JP,A)
【文献】特開2012-194516(JP,A)
【文献】特開2018-120028(JP,A)
【文献】特表2009-537458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/038
G03F 7/004
G02B 5/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材Aと、光ラジカル重合開始剤Bと、ラジカル重合性化合物Cとを含み、
前記ラジカル重合性化合物Cの全質量中における重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物C1の含有量が70質量%以上であ
り、
前記ラジカル重合性化合物C1はエチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位とグラフト鎖を有する繰り返し単位とを含む、パルス露光用の感光性組成物。
【請求項2】
前記色材Aは顔料である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記色材Aは、2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記感光性組成物の全固形分中における前記色材Aの含有量が50質量%以上である、請求項1
~3のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記感光性組成物の全固形分中における前記光ラジカル重合開始剤Bの含有量が2~10質量%である、請求項1~
4のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記感光性組成物の全固形分中における色材Aとラジカル重合性化合物C1との合計量が80質量%以上である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
感光性組成物に含まれる重量平均分子量が3000以上の化合物であって前記色材Aおよび前記光ラジカル重合開始剤B以外の化合物の合計の質量中における前記ラジカル重合性化合物C1の含有量が60質量%以上である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記ラジカル重合性化合物C1は酸基を有する、請求項1~
7のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記ラジカル重合性化合物C1の酸価が30~150mgKOH/gである、請求項
8に記載の感光性組成物。
【請求項10】
前記ラジカル重合性化合物C1のエチレン性不飽和結合基量が0.2~3.0mmol/gである、請求項1~
9のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項11】
前記ラジカル重合性化合物C1の重量平均分子量が5000~40000である、請求項1~
10のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項12】
前記ラジカル重合性化合物C1が分散剤である、請求項1~
11のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項13】
前記ラジカル重合性化合物Cは、前記ラジカル重合性化合物C1と分子量が3000未満のラジカル重合性化合物C2とを含み、
前記ラジカル重合性化合物C1と前記ラジカル重合性化合物C2との合計量中における前記ラジカル重合性化合物C1の含有量が93~99.5質量%である、請求項1~
12のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項14】
波長300nm以下の光でのパルス露光用の感光性組成物である、請求項1~
13のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項15】
最大瞬間照度50000000W/m
2以上の条件でのパルス露光用の感光性組成物である、請求項1~
14のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項16】
固体撮像素子用の感光性組成物である、請求項1~
15のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【請求項17】
カラーフィルタ用の感光性組成物である、請求項1~
16のいずれか1項に記載の感光性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色材を含む感光性組成物に関する。更に詳しくは、固体撮像素子やカラーフィルタなどに用いられる感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラ、カメラ付き携帯電話等の普及から、電荷結合素子(CCD)イメージセンサなどの固体撮像素子の需要が大きく伸びている。ディスプレイや光学素子のキーデバイスとしてカラーフィルタが使用されている。カラーフィルタは、通常、赤、緑、及び青の3原色の画素(着色パターン)を備えており、透過光を3原色へ分解する役割を果たしている。
【0003】
カラーフィルタは色材を含む感光性組成物を用いて形成されている。例えば、特許文献1には、300nm以下の超短波長露光器を利用した固体撮像素子のカラーフィルタ製造用の感光性組成物に関する発明が記載されている。また、特許文献2には、不飽和二重結合を有する分散樹脂、顔料、光重合開始剤、溶剤を少なくとも含有し、顔料の質量が固形分の総量の50質量%より大きく95質量%以下である感光性組成物を用いてカラーフィルタを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2012-532334号公報
【文献】特開2008-165020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
色材を含む感光性組成物を用いて形成される膜について、耐溶剤性、耐湿性、耐熱拡散性に優れていることが望ましい。
【0006】
また、近年、カラーフィルタにおいては、パターンサイズの微細化が進んでいる。このため、カラーフィルタなどの形成に用いられる感光性組成物においては、フォトリソグラフィ性のさらなる向上が望まれている。
【0007】
よって、本発明の目的は、優れたフォトリソグラフィ性を有し、かつ、耐溶剤性、耐湿性および耐熱拡散性に優れた膜を形成できる感光性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が感光性組成物について鋭意検討したところ、後述する感光性組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。よって、本発明は以下を提供する。
<1> 色材Aと、光ラジカル重合開始剤Bと、ラジカル重合性化合物Cとを含み、
ラジカル重合性化合物Cの全質量中における重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物C1の含有量が70質量%以上である、
パルス露光用の感光性組成物。
<2> 色材Aは顔料である、<1>に記載の感光性組成物。
<3> 感光性組成物の全固形分中における色材Aの含有量が50質量%以上である、<1>または<2>に記載の感光性組成物。
<4> 感光性組成物の全固形分中における光ラジカル重合開始剤Bの含有量が2~10質量%である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<5> 感光性組成物の全固形分中における色材Aとラジカル重合性化合物C1との合計量が80質量%以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<6> 感光性組成物に含まれる重量平均分子量が3000以上の化合物であって色材Aおよび光ラジカル重合開始剤B以外の化合物の合計の質量中におけるラジカル重合性化合物C1の含有量が60質量%以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<7> ラジカル重合性化合物C1は酸基を有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<8> ラジカル重合性化合物C1の酸価が30~150mgKOH/gである、<7>に記載の感光性組成物。
<9> ラジカル重合性化合物C1はエチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含む、<1>~<8>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<10> ラジカル重合性化合物C1はエチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位とグラフト鎖を有する繰り返し単位とを含む、<1>~<9>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<11> ラジカル重合性化合物C1のエチレン性不飽和結合基量が0.2~3.0mmol/gである、<1>~<10>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<12> ラジカル重合性化合物C1の重量平均分子量が5000~40000である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<13> ラジカル重合性化合物C1が分散剤である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<14> ラジカル重合性化合物Cは、ラジカル重合性化合物C1と分子量が3000未満のラジカル重合性化合物C2とを含み、
ラジカル重合性化合物C1とラジカル重合性化合物C2との合計量中におけるラジカル重合性化合物C1の含有量が93~99.5質量%である、<1>~<13>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<15> 波長300nm以下の光でのパルス露光用の感光性組成物である、<1>~<14>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<16> 最大瞬間照度50000000W/m2以上の条件でのパルス露光用の感光性組成物である、<1>~<15>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<17> 固体撮像素子用の感光性組成物である、<1>~<16>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
<18> カラーフィルタ用の感光性組成物である、<1>~<17>のいずれか1つに記載の感光性組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れたフォトリソグラフィ性を有し、かつ、耐溶剤性、耐湿性および耐熱拡散性に優れた膜を形成できる感光性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換および無置換を記していない表記は、置換基を有さない基(原子団)と共に置換基を有する基(原子団)をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。
本明細書において、(メタ)アリル基は、アリルおよびメタリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよびメタクリレートの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルの双方、または、いずれかを表し、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方、または、いずれかを表す。
本明細書において、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法により測定したポリスチレン換算値である。
本明細書において、赤外線とは、波長700~2500nmの光をいう。
本明細書において、顔料とは、溶剤に対して溶解しにくい化合物を意味する。例えば、顔料は、23℃の水100gおよび23℃のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gに対する溶解度がいずれも0.1g以下であることが好ましく、0.01g以下であることがより好ましい。
本明細書において、全固形分とは、組成物の全成分から溶剤を除いた成分の総質量をいう。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0011】
<感光性組成物>
本発明の感光性組成物は、色材Aと、光ラジカル重合開始剤Bと、ラジカル重合性化合物Cとを含み、ラジカル重合性化合物Cの全質量中における重量平均分子量3000以上のラジカル重合性化合物C1の含有量が70質量%以上である、パルス露光用の感光性組成物であることを特徴とする。
【0012】
本発明の感光性組成物に対してパルス露光することで、露光部において光ラジカル重合開始剤Bなどからラジカルを瞬間的に大量に発生させることができる。露光部においてラジカルが瞬間的に大量に発生することで、酸素による失活が抑えられるなどの効果により、硬化性化合物を効率的に硬化することができるこのため、露光部のみを選択的に硬化させることができ、マスク形状に沿ったパターンを形成できる。このため、本発明の感光性組成物は、パルス露光用の感光性組成物であることにより、優れたフォトリソグラフィ性を有している。また、露光部においてラジカルが瞬間的に大量に発生することにより、ラジカル重合性化合物C同士の重合反応を効率よく行うことができ、未反応のラジカル重合性化合物の残存量を減らすことができる。なお、一般的に分子量の大きいラジカル重合性化合物は反応性が低い傾向にあるが、パルス露光によって露光部においてラジカルを瞬間的に大量に発生させることができるので、分子量の大きいラジカル重合性化合物であっても速やかに反応硬化させることができる。また、一般的に未反応のラジカル重合性化合物の分子量が小さいものほど溶剤などに溶解し易い傾向にある。このため、低分子量の未反応のラジカル重合性化合物の残存量が多くなるほど耐溶剤性などが低下し易い傾向にあるが、本発明の感光性組成物に含まれるラジカル重合性化合物Cは、分子量の大きいラジカル重合性化合物C1を70質量%以上含んでいるので、低分子量の未反応のラジカル重合性化合物の残存量を極めて少なくできる。また、感光性組成物中において、色材Aは分子量の大きいラジカル重合性化合物C1に覆われるようにして存在していると推測され、このような状態でラジカル重合性化合物C1が硬化することにより、膜中に色材Aをしっかりと保持させることができると推測される。このため、本発明の感光性組成物は、パルス露光用の感光性組成物であることにより、耐溶剤性、耐湿性、耐熱拡散性などに優れた膜を形成することができる。なお、パルス露光とは、短時間(例えば、ミリ秒レベル以下)のサイクルで光の照射と休止を繰り返して露光する方式の露光方法のことである。
【0013】
本発明の感光性組成物は、パルス露光用の感光性組成物である。露光に用いられる光は、波長300nmを超える光であってもよく、波長300nm以下の光であってもよいが、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由から波長300nm以下の光であることが好ましく、波長270nm以下の光であることがより好ましく、波長250nm以下の光であることが更に好ましい。また、前述の光は、波長180nm以上の光であることが好ましい。具体的には、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からKrF線(波長248nm)が好ましい。
【0014】
パルス露光の露光条件は次の条件であることが好ましい。パルス幅は、瞬間的にラジカルを大量に発生させやすいという理由から100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、露光熱によってラジカル重合性化合物を熱重合させてより耐溶剤性、耐湿性、耐熱拡散性などに優れた膜を形成し易いという理由から1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は、露光熱による基板などの変形を抑制し易いという理由から50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、硬化性の観点から50000000W/m2以上であることが好ましく、100000000W/m2以上であることがより好ましく、200000000W/m2以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、高照度不軌抑制の観点から1000000000W/m2以下であることが好ましく、800000000W/m2以下であることがより好ましく、500000000W/m2以下であることが更に好ましい。なお、パルス幅とは、パルス周期における光が照射されている時間の長さのことである。また、周波数とは、1秒あたりのパルス周期の回数のことである。また、最大瞬間照度とは、パルス周期における光が照射されている時間内での平均照度のことである。また、パルス周期とは、パルス露光における光の照射と休止を1サイクルとする周期のことである。
【0015】
本発明の感光性組成物は、着色画素、黒色画素、遮光膜、赤外線透過フィルタ層の画素などの形成用の組成物として好ましく用いられる。着色画素としては、赤色、青色、緑色、シアン色、マゼンタ色および黄色から選ばれる色相の画素が挙げられる。赤外線透過フィルタ層の画素としては、波長400~640nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)である分光特性を満たしているフィルタ層の画素などが挙げられる。また、赤外線透過フィルタ層の画素は、以下の(1)~(4)のいずれかの分光特性を満たしているフィルタ層の画素であることも好ましい。
(1):波長400~640nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長800~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ層の画素。
(2):波長400~750nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長900~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ層の画素。
(3):波長400~830nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1000~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ層の画素。
(4):波長400~950nmの範囲における透過率の最大値が20%以下(好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下)であり、波長1100~1300nmの範囲における透過率の最小値が70%以上(好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上)であるフィルタ層の画素。
【0016】
本発明の感光性組成物を赤外線透過フィルタ層の画素形成用の組成物として用いる場合、本発明の感光性組成物は、波長400~640nmの範囲における吸光度の最小値Aminと、波長1100~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmaxとの比であるAmin/Bmaxが5以上である分光特性を満たしていることが好ましい。Amin/Bmaxは、7.5以上であることがより好ましく、15以上であることが更に好ましく、30以上であることが特に好ましい。
【0017】
ある波長λにおける吸光度Aλは、以下の式(1)により定義される。
Aλ=-log(Tλ/100) ・・・(1)
Aλは、波長λにおける吸光度であり、Tλは、波長λにおける透過率(%)である。
本発明において、吸光度の値は、溶液の状態で測定した値であってもよく、感光性組成物を用いて製膜した膜での値であってもよい。膜の状態で吸光度を測定する場合は、ガラス基板上にスピンコート等の方法により、乾燥後の膜の厚さが所定の厚さとなるように感光性組成物を塗布し、ホットプレートを用いて100℃、120秒間乾燥して調製した膜を用いて測定することが好ましい。
【0018】
本発明の感光性組成物を赤外線透過フィルタ層の画素形成用の組成物として用いる場合、本発明の感光性組成物は、以下の(11)~(14)のいずれかの分光特性を満たしていることがより好ましい。
(11):波長400~640nmの範囲における吸光度の最小値Amin1と、波長800~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmax1との比であるAmin1/Bmax1が5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。この態様によれば、波長400~640nmの範囲の光を遮光して、波長720nm以上の光を透過可能な膜を形成することができる。
(12):波長400~750nmの範囲における吸光度の最小値Amin2と、波長900~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmax2との比であるAmin2/Bmax2が5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。この態様によれば、波長400~750nmの範囲の光を遮光して、波長850nm以上の光を透過可能な膜を形成することができる。
(13):波長400~850nmの範囲における吸光度の最小値Amin3と、波長1000~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmax3との比であるAmin3/Bmax3が5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。この態様によれば、波長400~850nmの範囲の光を遮光して、波長940nm以上の光を透過可能な膜を形成することができる。
(14):波長400~950nmの範囲における吸光度の最小値Amin4と、波長1100~1300nmの範囲における吸光度の最大値Bmax4との比であるAmin4/Bmax4が5以上であり、7.5以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、30以上であることが更に好ましい。この態様によれば、波長400~950nmの範囲の光を遮光して、波長1040nm以上の光を透過可能な膜を形成することができる。
【0019】
本発明の感光性組成物は、固体撮像素子用の感光性組成物として好ましく用いることができる。また、本発明の感光性組成物は、カラーフィルタ用の感光性組成物として好ましく用いることができる。具体的には、カラーフィルタの画素形成用の感光性組成物として好ましく用いることができ、固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの画素形成用の感光性組成物としてより好ましく用いることができる。
【0020】
以下、本発明の感光性組成物に用いられる各成分について説明する。
【0021】
<<色材A>>
本発明の感光性組成物は、色材A(以下、単に色材という)を含む。色材としては、有彩色着色剤、黒色着色剤、赤外線吸収色素などが挙げられる。本発明の感光性組成物に用いられる色材は、有彩色着色剤を少なくとも含むことが好ましい。また、本発明の感光性組成物に用いられる色材は、顔料であることが好ましい。この態様によれば、耐溶剤性、耐湿性および耐熱拡散性などに優れた膜が得られやすい。また、本発明において、色材として顔料と染料とを併用してもよい。両者を併用する場合は、色材の全質量中における顔料の含有量が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましい。
【0022】
(有彩色着色剤)
有彩色着色剤としては、赤色着色剤、緑色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、オレンジ色着色剤などが挙げられる。有彩色着色剤は、顔料であってもよく、染料であってもよい。好ましくは顔料である。顔料の平均粒径(r)は、20nm≦r≦300nmであることが好ましく、25nm≦r≦250nmであることがより好ましく、30nm≦r≦200nmであることが更に好ましい。ここでいう「平均粒径」とは、顔料の一次粒子が集合した二次粒子についての平均粒径を意味する。また、使用しうる顔料の二次粒子の粒径分布(以下、単に「粒径分布」ともいう。)は、平均粒径±100nmの範囲に含まれる二次粒子が全体の70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0023】
有彩色着色剤として用いられる顔料は、有機顔料であることが好ましい。有機顔料としては以下のものが挙げられる。
カラーインデックス(C.I.)Pigment Yellow 1,2,3,4,5,6,10,11,12,13,14,15,16,17,18,20,24,31,32,34,35,35:1,36,36:1,37,37:1,40,42,43,53,55,60,61,62,63,65,73,74,77,81,83,86,93,94,95,97,98,100,101,104,106,108,109,110,113,114,115,116,117,118,119,120,123,125,126,127,128,129,137,138,139,147,148,150,151,152,153,154,155,156,161,162,164,166,167,168,169,170,171,172,173,174,175,176,177,179,180,181,182,185,187,188,193,194,199,213,214等(以上、黄色顔料)、
C.I.Pigment Orange 2,5,13,16,17:1,31,34,36,38,43,46,48,49,51,52,55,59,60,61,62,64,71,73等(以上、オレンジ色顔料)、
C.I.Pigment Red 1,2,3,4,5,6,7,9,10,14,17,22,23,31,38,41,48:1,48:2,48:3,48:4,49,49:1,49:2,52:1,52:2,53:1,57:1,60:1,63:1,66,67,81:1,81:2,81:3,83,88,90,105,112,119,122,123,144,146,149,150,155,166,168,169,170,171,172,175,176,177,178,179,184,185,187,188,190,200,202,206,207,208,209,210,216,220,224,226,242,246,254,255,264,270,272,279等(以上、赤色顔料)、
C.I.Pigment Green 7,10,36,37,58,59,62,63等(以上、緑色顔料)、
C.I.Pigment Violet 1,19,23,27,32,37,42等(以上、紫色顔料)、
C.I.Pigment Blue 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,15:6,16,22,60,64,66,79,80等(以上、青色顔料)。
これら有機顔料は、単独で若しくは種々組合せて用いることができる。
【0024】
また、黄色顔料として、下記式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、2種以上の金属イオンと、メラミン化合物とを含む金属アゾ顔料を用いることもできる。
【化1】
式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して、-OHまたは-NR
5R
6であり、R
3およびR
4はそれぞれ独立して、=Oまたは=NR
7であり、R
5~R
7はそれぞれ独立して、水素原子またはアルキル基である。R
5~R
7が表すアルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基およびアミノ基が好ましい。
【0025】
式(I)において、R1およびR2はOHであることが好ましい。また、R3およびR4は=Oであることが好ましい。
【0026】
金属アゾ顔料におけるメラミン化合物は、下記式(II)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】
式中R
11~R
13は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基である。アルキル基の炭素数は1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐および環状のいずれであってもよく、直鎖または分岐が好ましく、直鎖がより好ましい。アルキル基は置換基を有していてもよい。置換基はヒドロキシ基が好ましい。R
11~R
13の少なくとも一つは水素原子であることが好ましく、R
11~R
13の全てが水素原子であることがより好ましい。
【0027】
上記の金属アゾ顔料は、上述した式(I)で表されるアゾ化合物およびその互変異性構造のアゾ化合物から選ばれる少なくとも1種のアニオンと、Zn2+およびCu2+を少なくとも含む金属イオンと、メラミン化合物とを含む態様の金属アゾ顔料であることが好ましい。この態様においては、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、Zn2+およびCu2+を合計で95~100モル%含有することが好ましく、98~100モル%含有することがより好ましく、99.9~100モル%含有することが更に好ましく、100モル%であることが特に好ましい。また、金属アゾ顔料中のZn2+とCu2+とのモル比は、Zn2+:Cu2+=199:1~1:15であることが好ましく、19:1~1:1であることがより好ましく、9:1~2:1であることが更に好ましい。また、この態様において、金属アゾ顔料は、更にZn2+およびCu2+以外の二価もしくは三価の金属イオン(以下、金属イオンMe1ともいう)を含んでいてもよい。金属イオンMe1としては、Ni2+、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd2+、Nd3+、Sm2+、Sm3+、Eu2+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb2+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+、Y3+、Sc3+、Ti2+、Ti3+、Nb3+、Mo2+、Mo3+、V2+、V3+、Zr2+、Zr3+、Cd2+、Cr3+、Pb2+、Ba2+が挙げられ、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Eu3+、Gd3+、Tb3+、Dy3+、Ho3+、Yb3+、Er3+、Tm3+、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Mn2+およびY3+から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+、Co3+、La3+、Ce3+、Pr3+、Nd3+、Sm3+、Tb3+、Ho3+およびSr2+から選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましく、Al3+、Fe2+、Fe3+、Co2+およびCo3+から選ばれる少なくとも1種であることが特に好ましい。金属イオンMe1の含有量は、金属アゾ顔料の全金属イオンの1モルを基準として、5モル%以下であることが好ましく、2モル%以下であることがより好ましく、0.1モル%以下であることが更に好ましい。
【0028】
上記の金属アゾ顔料については、特開2017-171912号公報の段落番号0011~0062、0137~0276、特開2017-171913号公報の段落番号0010~0062、0138~0295、特開2017-171914号公報の段落番号0011~0062、0139~0190、特開2017-171915号公報の段落番号0010~0065、0142~0222の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0029】
また、赤色顔料として、芳香族環に酸素原子、硫黄原子または窒素原子が結合した基が導入された芳香族環基がジケトピロロピロール骨格に結合した構造を有する化合物を用いることもできる。このような化合物としては、式(DPP1)で表される化合物であることが好ましく、式(DPP2)で表される化合物であることがより好ましい。
【化3】
【0030】
上記式中、R11およびR13はそれぞれ独立して置換基を表し、R12およびR14はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表し、n11およびn13はそれぞれ独立して0~4の整数を表し、X12およびX14はそれぞれ独立して酸素原子、硫黄原子または窒素原子を表し、X12が酸素原子または硫黄原子の場合は、m12は1を表し、X12が窒素原子の場合は、m12は2を表し、X14が酸素原子または硫黄原子の場合は、m14は1を表し、X14が窒素原子の場合は、m14は2を表す。R11およびR13が表す置換基としては、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ニトロ基、トリフルオロメチル基、スルホキシド基、スルホ基などが好ましい具体例として挙げられる。
【0031】
また、緑色顔料として、1分子中のハロゲン原子数が平均10~14個であり、臭素原子が平均8~12個であり、塩素原子が平均2~5個であるハロゲン化亜鉛フタロシアニン顔料を用いることもできる。具体例としては、国際公開WO2015/118720号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0032】
また、青色顔料として、リン原子を有するアルミニウムフタロシアニン化合物を用いることもできる。具体例としては、特開2012-247591号公報の段落0022~0030、特開2011-157478号公報の段落0047に記載の化合物などが挙げられる。
【0033】
染料としては特に制限はなく、公知の染料が使用できる。例えば、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリアリールメタン系、アントラキノン系、アントラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサンテン系、フタロシアニン系、ベンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が挙げられる。また、これらの染料の多量体を用いてもよい。また、特開2015-028144号公報、特開2015-34966号公報に記載の染料を用いることもできる。
【0034】
(黒色着色剤)
黒色着色剤としては、カーボンブラック、金属酸窒化物(チタンブラック等)、金属窒化物(チタンナイトライド等)などの無機黒色着色剤や、ビスベンゾフラノン化合物、アゾメチン化合物、ペリレン化合物、アゾ化合物などの有機黒色着色剤が挙げられる。有機黒色着色剤は、ビスベンゾフラノン化合物、ペリレン化合物が好ましい。ビスベンゾフラノン化合物としては、特表2010-534726号公報、特表2012-515233号公報、特表2012-515234号公報などに記載の化合物が挙げられ、例えば、BASF社製の「Irgaphor Black」として入手可能である。ペリレン化合物としては、C.I.Pigment Black 31、32などが挙げられる。アゾメチン化合物としては、特開平1-170601号公報、特開平2-34664号公報などに記載のものが挙げられ、例えば、大日精化社製の「クロモファインブラックA1103」として入手できる。ビスベンゾフラノン化合物は、下記式のいずれかで表される化合物またはこれらの混合物であることが好ましい。
【化4】
式中、R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素原子又は置換基を表し、R
3およびR
4はそれぞれ独立して置換基を表し、aおよびbはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、aが2以上の場合、複数のR
3は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR
3は結合して環を形成していてもよく、bが2以上の場合、複数のR
4は、同一であってもよく、異なってもよく、複数のR
4は結合して環を形成していてもよい。
【0035】
R1~R4が表す置換基は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-OR301、-COR302、-COOR303、-OCOR304、-NR305R306、-NHCOR307、-CONR308R309、-NHCONR310R311、-NHCOOR312、-SR313、-SO2R314、-SO2OR315、-NHSO2R316または-SO2NR317R318を表し、R301~R318は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【0036】
ビスベンゾフラノン化合物の詳細については、特表2010-534726号公報の段落番号0014~0037の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0037】
(赤外線吸収色素)
赤外線吸収色素としては、波長700~1300nmの範囲、より好ましくは波長700~1000nmの範囲に極大吸収波長を有する化合物が好ましい。赤外線吸収色素は、顔料であってもよく、染料であってもよい。
【0038】
本発明において、赤外線吸収色素としては、単環または縮合環の芳香族環を含むπ共役平面を有する化合物を好ましく用いることができる。赤外線吸収色素が有するπ共役平面を構成する水素以外の原子数は、14個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましく、25個以上であることが更に好ましく、30個以上であることが特に好ましい。上限は、例えば、80個以下であることが好ましく、50個以下であることがより好ましい。赤外線吸収色素が有するπ共役平面は、単環または縮合環の芳香族環を2個以上含むことが好ましく、前述の芳香族環を3個以上含むことがより好ましく、前述の芳香族環を4個以上含むことが更に好ましく、前述の芳香族環を5個以上含むことが特に好ましい。上限は、100個以下が好ましく、50個以下がより好ましく、30個以下が更に好ましい。前述の芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ペンタレン環、インデン環、アズレン環、ヘプタレン環、インダセン環、ペリレン環、ペンタセン環、クアテリレン環、アセナフテン環、フェナントレン環、アントラセン環、ナフタセン環、クリセン環、トリフェニレン環、フルオレン環、ピリジン環、キノリン環、イソキノリン環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、トリアゾール環、ベンゾトリアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、イミダゾリン環、ピラジン環、キノキサリン環、ピリミジン環、キナゾリン環、ピリダジン環、トリアジン環、ピロール環、インドール環、イソインドール環、カルバゾール環、および、これらの環を有する縮合環が挙げられる。
【0039】
赤外線吸収色素は、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、クアテリレン化合物、メロシアニン化合物、クロコニウム化合物、オキソノール化合物、ジイモニウム化合物、ジチオール化合物、トリアリールメタン化合物、ピロメテン化合物、アゾメチン化合物、アントラキノン化合物及びジベンゾフラノン化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物、スクアリリウム化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物およびジイモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、ピロロピロール化合物、シアニン化合物およびスクアリリウム化合物から選ばれる少なくとも1種が更に好ましく、ピロロピロール化合物が特に好ましい。
【0040】
ピロロピロール化合物としては、特開2009-263614号公報の段落番号0016~0058に記載の化合物、特開2011-68731号公報の段落番号0037~0052に記載の化合物、国際公開WO2015/166873号公報の段落番号0010~0033に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0041】
スクアリリウム化合物としては、特開2011-208101号公報の段落番号0044~0049に記載の化合物、特許第6065169号公報の段落番号0060~0061に記載の化合物、国際公開WO2016/181987号公報の段落番号0040に記載の化合物、国際公開WO2013/133099号公報に記載の化合物、国際公開WO2014/088063号公報に記載の化合物、特開2014-126642号公報に記載の化合物、特開2016-146619号公報に記載の化合物、特開2015-176046号公報に記載の化合物、特開2017-25311号公報に記載の化合物、国際公開WO2016/154782号公報に記載の化合物、特許5884953号公報に記載の化合物、特許6036689号公報に記載の化合物、特許5810604号公報に記載の化合物、特開2017-068120号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0042】
シアニン化合物としては、特開2009-108267号公報の段落番号0044~0045に記載の化合物、特開2002-194040号公報の段落番号0026~0030に記載の化合物、特開2015-172004号公報に記載の化合物、特開2015-172102号公報に記載の化合物、特開2008-88426号公報に記載の化合物、特開2017-031394号公報に記載の化合物などが挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0043】
ジイモニウム化合物としては、例えば、特表2008-528706号公報に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。フタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012-77153号公報の段落番号0093に記載の化合物、特開2006-343631号公報に記載のオキシチタニウムフタロシアニン、特開2013-195480号公報の段落番号0013~0029に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。ナフタロシアニン化合物としては、例えば、特開2012-77153号公報の段落番号0093に記載の化合物が挙げられ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0044】
本発明において、赤外線吸収色素は市販品を用いることもできる。例えば、SDO-C33(有本化学工業(株)製)、イーエクスカラーIR-14、イーエクスカラーIR-10A、イーエクスカラーTX-EX-801B、イーエクスカラーTX-EX-805K((株)日本触媒製)、ShigenoxNIA-8041、ShigenoxNIA-8042、ShigenoxNIA-814、ShigenoxNIA-820、ShigenoxNIA-839(ハッコーケミカル社製)、EpoliteV-63、Epolight3801、Epolight3036(EPOLIN社製)、PRO-JET825LDI(富士フイルム(株)製)、NK-3027、NK-5060((株)林原製)、YKR-3070(三井化学(株)製)などが挙げられる。
【0045】
感光性組成物の全固形分中における色材の含有量は、薄膜で分光特性に優れた膜が得られやすいという理由から50質量%以上であることが好ましく、55質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることが更に好ましく、65質量%以上であることが特に好ましい。上限は、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましい。
【0046】
本発明の感光性組成物に用いられる色材は、有彩色着色剤および黒色着色剤から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、有彩色着色剤を含むことがより好ましい。また、色材の全質量中における有彩色着色剤および黒色着色剤の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、90質量%以下とすることもできる。
また、本発明の感光性組成物に用いられる色材は、緑色着色剤(好ましくは緑色顔料)を少なくとも含むことが好ましい。また、色材の全質量中における緑色着色剤(好ましくは緑色顔料)の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、80質量%以下とすることもできる。
【0047】
本発明の感光性組成物を着色画素形成用の組成物として用いる場合においては、感光性組成物の全固形分中における有彩色着色剤の含有量は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。また、色材の全質量中における有彩色着色剤の含有量は、25質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、75質量%以下とすることもできる。また、上記色材は、緑色着色剤を少なくとも含むことが好ましい。また、上記色材の全質量中における緑色着色剤の含有量は、35質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、80質量%以下とすることもできる。
【0048】
本発明の感光性組成物を黒色画素用または遮光膜の形成用の組成物として用いる場合においては、感光性組成物の全固形分中における黒色着色剤(好ましくは無機黒色着色剤)の含有量は40質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、55質量%以上であることが更に好ましく、60質量%以上であることが特に好ましい。また、色材の全質量中における黒色着色剤の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。上限は、100質量%とすることができ、90質量%以下とすることもできる。
【0049】
本発明の感光性組成物を赤外線透過フィルタ層の画素形成用の組成物として用いる場合、本発明で用いられる色材は、以下の(1)~(3)の少なくとも一つの要件を満たすことが好ましい。
【0050】
(1):2種類以上の有彩色着色剤を含み、2種以上の有彩色着色剤の組み合わせで黒色を形成している。赤色着色剤、青色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤および緑色着色剤から選ばれる2種類以上の着色剤の組み合わせで黒色を形成していることが好ましい。
(2):有機黒色着色剤を含む。
(3):上記(1)または(2)において、更に赤外線吸収色素を含む。
【0051】
上記(1)の態様の好ましい組み合わせとしては、例えば以下が挙げられる。
(1-1)赤色着色剤と青色着色剤とを含有する態様。
(1-2)赤色着色剤と青色着色剤と黄色着色剤とを含有する態様。
(1-3)赤色着色剤と青色着色剤と黄色着色剤と紫色着色剤とを含有する態様。
(1-4)赤色着色剤と青色着色剤と黄色着色剤と紫色着色剤と緑色着色剤とを含有する態様。
(1-5)赤色着色剤と青色着色剤と黄色着色剤と緑色着色剤とを含有する態様。
(1-6)赤色着色剤と青色着色剤と緑色着色剤とを含有する態様。
(1-7)黄色着色剤と紫色着色剤とを含有する態様。
【0052】
上記の(2)の態様においては、更に有彩色着色剤を含有することも好ましい。有機黒色着色剤と有彩色着色剤とを併用することで、優れた分光特性が得られ易い。有機黒色着色剤と組み合わせて用いる有彩色着色剤としては、例えば、赤色着色剤、青色着色剤、紫色着色剤などが挙げられ、赤色着色剤および青色着色剤が好ましい。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、有彩色着色剤と有機黒色着色剤との混合割合は、有機黒色着色剤100質量部に対して、有彩色着色剤が10~200質量部が好ましく、15~150質量部がより好ましい。
【0053】
上記の(3)の態様においては、色材の全質量中における赤外線吸収色素の含有量は、5~40質量%であることが好ましい。上限は、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。下限は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。
【0054】
<<光ラジカル重合開始剤B>>
本発明の感光性組成物は光ラジカル重合開始剤Bを含む。光ラジカル重合開始剤Bは、波長300nm以下の光に反応してラジカルを発生する化合物であることが好ましい。
【0055】
光ラジカル重合開始剤Bは、二光子吸収しやすい化合物であることも好ましい。なお、二光子吸収とは二個の光子を同時に吸収する励起過程のことである。
【0056】
光ラジカル重合開始剤Bは、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィン化合物、ベンゾフェノン化合物、チオキサントン化合物、トリアジン化合物およびオキシム化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましく、オキシム化合物であることがより好ましい。
【0057】
アルキルフェノン化合物としては、ベンジルジメチルケタール化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン化合物などが挙げられる。
【0058】
ベンジルジメチルケタール化合物としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンなどが挙げられる。市販品としては、IRGACURE-651(BASF社製)などが挙げられる。
【0059】
α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒロドキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。α-ヒドロキシアルキルフェノン化合物の市販品としては、IRGACURE-184、DAROCUR-1173、IRGACURE-500、IRGACURE-2959、IRGACURE-127(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0060】
α-アミノアルキルフェノン化合物としては、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-ジメチルアミノ-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンなどが挙げられる。α-アミノアルキルフェノン化合物の市販品としては、IRGACURE-907、IRGACURE-369、および、IRGACURE-379(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0061】
アシルホスフィン化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイドなどが挙げられる。アシルホスフィン化合物の市販品としては、IRGACURE-819、IRGACURE-TPO(以上、BASF社製)などが挙げられる。
【0062】
ベンゾフェノン化合物としては、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンなどが挙げられる
【0063】
チオキサントン化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0064】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0065】
オキシム化合物としては、特開2001-233842号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.1653-1660)に記載の化合物、J.C.S.Perkin II(1979年、pp.156-162)に記載の化合物、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年、pp.202-232)に記載の化合物、特開2000-66385号公報に記載の化合物、特開2000-80068号公報に記載の化合物、特表2004-534797号公報に記載の化合物、特開2006-342166号公報に記載の化合物、特開2017-19766号公報に記載の化合物、特許第6065596号公報に記載の化合物、国際公開WO2015/152153号公報に記載の化合物、国際公開WO2017/051680号公報に記載の化合物などが挙げられる。オキシム化合物の具体例としては、例えば、3-ベンゾイルオキシイミノブタン-2-オン、3-アセトキシイミノブタン-2-オン、3-プロピオニルオキシイミノブタン-2-オン、2-アセトキシイミノペンタン-3-オン、2-アセトキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ベンゾイルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オン、3-(4-トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン-2-オン、及び2-エトキシカルボニルオキシイミノ-1-フェニルプロパン-1-オンなどが挙げられる。オキシム化合物の市販品としては、IRGACURE-OXE01、IRGACURE-OXE02、IRGACURE-OXE03、IRGACURE-OXE04(以上、BASF社製)、TR-PBG-304(常州強力電子新材料有限公司製)、アデカオプトマーN-1919((株)ADEKA製、特開2012-14052号公報に記載の光重合開始剤2)が挙げられる。また、オキシム化合物は、着色性が無い化合物や、透明性が高く、その他の成分を変色させにくい化合物を用いることも好ましい。市販品としては、アデカアークルズNCI-730、NCI-831、NCI-930(以上、(株)ADEKA製)などが挙げられる。
【0066】
本発明において、光ラジカル重合開始剤Bとして、フッ素原子を有するオキシム化合物を用いることが好ましい。フッ素原子を含むオキシム化合物は、フッ素原子を含む基を有することが好ましい。フッ素原子を含む基は、フッ素原子を有するアルキル基(以下、含フッ素アルキル基ともいう)、および、フッ素原子を有するアルキル基を含む基(以下、含フッ素基ともいう)が好ましい。含フッ素基としては、-ORF1、-SRF1、-CORF1、-COORF1、-OCORF1、-NRF1RF2、-NHCORF1、-CONRF1RF2、-NHCONRF1RF2、-NHCOORF1、-SO2RF1、-SO2ORF1および-NHSO2RF1から選ばれる少なくとも1種の基が好ましい。RF1は、含フッ素アルキル基を表し、RF2は、水素原子、アルキル基、含フッ素アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。含フッ素基は、-ORF1が好ましい。
【0067】
アルキル基および含フッ素アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~4が特に好ましい。アルキル基および含フッ素アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。含フッ素アルキル基において、フッ素原子の置換率は40~100%であることが好ましく、50~100%であることがより好ましく、60~100%であることがさらに好ましい。なお、フッ素原子の置換率とは、アルキル基が有する全水素原子の数に対してフッ素原子に置換されている数の比率(%)をいう。
【0068】
アリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。
【0069】
ヘテロ環基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。縮合数は、2~8が好ましく、2~6がより好ましく、3~5が更に好ましく、3~4が特に好ましい。ヘテロ環基を構成する炭素原子の数は3~40が好ましく、3~30がより好ましく、3~20がより好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子がより好ましい。
【0070】
フッ素原子を含む基は、式(1)または(2)で表される末端構造を有することが好ましい。式中の*は、連結手を表す。
*-CHF2 (1)
*-CF3 (2)
【0071】
フッ素原子を含むオキシム化合物中の全フッ素原子数は3以上が好ましく、4~10がより好ましい。
【0072】
フッ素原子を含むオキシム化合物は、式(OX-1)で表される化合物が好ましい。
【化5】
式(OX-1)において、Ar
1およびAr
2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表し、R
1は、フッ素原子を含む基を有するアリール基を表し、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、アルキル基またはアリール基を表す。
【0073】
Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を表す。芳香族炭化水素環は、単環でもよく、縮合環であってもよい。芳香族炭化水素環の環を構成する炭素原子数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が特に好ましい。芳香族炭化水素環は、ベンゼン環およびナフタレン環が好ましい。なかでも、Ar1およびAr2の少なくとも一方がベンゼン環であることが好ましく、Ar1がベンゼン環であることがより好ましい。Ar2は、ベンゼン環またはナフタレン環が好ましく、ナフタレン環がより好ましい。
【0074】
Ar1およびAr2が有してもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子、-ORX1、-SRX1、-CORX1、-COORX1、-OCORX1、-NRX1RX2、-NHCORX1、-CONRX1RX2、-NHCONRX1RX2、-NHCOORX1、-SO2RX1、-SO2ORX1、-NHSO2RX1などが挙げられる。RX1およびRX2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基を表す。
ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子が好ましい。置換基としてのアルキル基、ならびに、RX1およびRX2が表すアルキル基の炭素数は、1~30が好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。アルキル基は、水素原子の一部または全部がハロゲン原子(好ましくは、フッ素原子)で置換されていてもよい。また、アルキル基は、水素原子の一部または全部が、上記置換基で置換されていてもよい。置換基としてのアリール基、ならびに、RX1およびRX2が表すアリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。アリール基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。また、アリール基は、水素原子の一部または全部が、上記置換基で置換されていてもよい。置換基としてのヘテロ環基、ならびに、RX1およびRX2が表すヘテロ環基は、5員環または6員環が好ましい。ヘテロ環基は、単環であってもよく、縮合環であってもよい。ヘテロ環基を構成する炭素原子の数は3~30が好ましく、3~18がより好ましく、3~12がより好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子の数は1~3が好ましい。ヘテロ環基を構成するヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましい。また、ヘテロ環基は、水素原子の一部または全部が、上記置換基で置換されていてもよい。
【0075】
Ar1が表す芳香族炭化水素環は、無置換であることが好ましい。Ar2が表す芳香族炭化水素環は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基を有していることが好ましい。置換基としては、-CORX1が好ましい。RX1は、アルキル基、アリール基またはヘテロ環基が好ましく、アリール基がより好ましい。アリール基は置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、炭素数1~10のアルキル基などが挙げられる。
【0076】
R1は、フッ素原子を含む基を有するアリール基を表す。アリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。フッ素原子を含む基は、フッ素原子を有するアルキル基(含フッ素アルキル基)およびフッ素原子を有するアルキル基を含む基(含フッ素基)が好ましい。フッ素原子を含む基については、上述した範囲と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0077】
R2は、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基が好ましい。アルキル基およびアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したAr1およびAr2が有してもよい置換基で説明した置換基が挙げられる。アルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましく、1~4が特に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。アリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。
【0078】
R3は、アルキル基またはアリール基を表し、アルキル基が好ましい。アルキル基およびアリール基は、無置換であってもよく、置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したAr1およびAr2が有してもよい置換基で説明した置換基が挙げられる。R3が表すアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~10が更に好ましい。アルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよいが、直鎖または分岐が好ましい。R3が表すアリール基の炭素数は、6~20が好ましく、6~15がより好ましく、6~10が更に好ましい。
【0079】
フッ素原子を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2010-262028号公報に記載の化合物、特表2014-500852号公報に記載の化合物24、36~40、特開2013-164471号公報に記載の化合物(C-3)などが挙げられる。
【0080】
本発明において、光ラジカル重合開始剤Bとして、フルオレン環を有するオキシム化合物を用いることも好ましい。フルオレン環を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2014-137466号公報に記載の化合物が挙げられる。この内容は本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明において、光ラジカル重合開始剤Bとして、ニトロ基を有するオキシム化合物を用いることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物は、二量体である化合物を用いることも好ましい。ニトロ基を有するオキシム化合物の具体例としては、特開2013-114249号公報の段落番号0031~0047、特開2014-137466号公報の段落番号0008~0012、0070~0079に記載されている化合物、特許4223071号公報の段落番号0007~0025に記載されている化合物、アデカアークルズNCI-831((株)ADEKA製)が挙げられる。
【0082】
本発明において、光ラジカル重合開始剤Bとして、ベンゾフラン骨格を有するオキシム化合物を用いることも好ましい。具体例としては、国際公開WO2015/036910号公報に記載されるOE-01~OE-75が挙げられる。
【0083】
本発明において好ましく使用されるオキシム化合物の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0084】
【0085】
本発明は、光ラジカル重合開始剤Bとして、2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤を用いてもよい。そのような光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光ラジカル重合開始剤の1分子から2つ以上のラジカルが発生するため、良好な感度が得られる。また、非対称構造の化合物を用いた場合においては、結晶性が低下して溶剤などへの溶解性が向上して、経時で析出しにくくなり、感光性組成物の経時安定性を向上させることができる。2官能あるいは3官能以上の光ラジカル重合開始剤の具体例としては、特表2010-527339号公報、特表2011-524436号公報、国際公開WO2015/004565号公報、特表2016-532675号公報の段落番号0407~0412、国際公開WO2017/033680号公報の段落番号0039~0055に記載されているオキシム化合物の2量体、特表2013-522445号公報に記載されている化合物(E)および化合物(G)、国際公開WO2016/034963号公報に記載されているCmpd1~7、特表2017-523465号公報の段落番号0007に記載されているオキシムエステル類光開始剤、特開2017-167399号公報の段落番号0020~0033に記載されている光ラジカル重合開始剤、特開2017-151342号公報の段落番号0017~0026に記載されている光重合開始剤(A)などが挙げられる。
【0086】
本発明は、光ラジカル重合開始剤Bとして、ピナコール化合物を用いることもできる。ピナコール化合物としては、ベンゾピナコール、1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジエトキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジフェノキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ジメトキシ-1,1,2,2-テトラ(4-メチルフェニル)エタン、1,2-ジフェノキシ-1,1,2,2-テトラ(4-メトキシフェニル)エタン、1,2-ビス(トリメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ビス(トリエチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1,2-ビス(t-ブチルジメチルシロキシ)-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-トリメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-トリエチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタン、1-ヒドロキシ-2-t-ブチルジメチルシロキシ-1,1,2,2-テトラフェニルエタンなどが挙げられる。また、ピナコール化合物については、特表2014-521772号公報、特表2014-523939号公報、および、特表2014-521772号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0087】
本発明では、光ラジカル重合開始剤Bとして、下記の条件1を満たす光ラジカル重合開始剤b1を含むものを用いることが好ましい。
条件1:光ラジカル重合開始剤b1を0.035mmol/L含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液に対し、波長355nmの光を、最大瞬間照度375000000W/m2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件でパルス露光した後の量子収率q355が0.05以上である。
【0088】
光ラジカル重合開始剤b1の量子収率q355は、0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.25以上であることが更に好ましく、0.35以上であることがより一層好ましく、0.45以上であることが特に好ましい。
【0089】
本明細書において、光ラジカル重合開始剤b1の量子収率q
355は、上記条件1の条件でのパルス露光後の光ラジカル重合開始剤b1の分解分子数を、光ラジカル重合開始剤b1の吸収フォトン数で割ることで求めた値である。吸収フォトン数については、上記条件1の条件でのパルス露光での露光時間から照射フォトン数を求め、露光前後での355nmの吸光度の平均を透過率に換算し、照射フォトン数に(1-透過率)をかけることで吸収フォトン数を求めた。分解分子数については、露光後の光ラジカル重合開始剤b1の吸光度から光ラジカル重合開始剤b1の分解率を求め、分解率に光ラジカル重合開始剤b1の存在分子数をかけることで分解分子数を求めた。また、光ラジカル重合開始剤b1の吸光度については、光ラジカル重合開始剤b1を0.035mmol/L含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を1cm×1cm×4cmの光学セルに入れ、分光光度計を用いて測定することができる。分光光度計としては、例えば、Agilent社製のHP8453を用いることができる。上記の条件1を満たす光ラジカル重合開始剤b1としては、IRGACURE-OXE01、OXE02、OXE03(以上、BASF製)などが挙げられる。また、下記構造の化合物も上記の条件1を満たす光ラジカル重合開始剤b1として好ましく用いることができる。なかでも、密着性の観点からIRGACURE-OXE01、OXE02が好ましく用いられる。また、硬化性の観点から下記式(I3)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化8】
【0090】
また、光ラジカル重合開始剤b1は、更に、下記の条件2を満たすものであることが好ましい。
条件2:光ラジカル重合開始剤b1を5質量%、樹脂を95質量%含む厚さ1.0μmの膜に対し、波長265nmの光を、最大瞬間照度375000000W/m2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件でパルス露光した後の量子収率q265が0.05以上である。
【0091】
光ラジカル重合開始剤b1の量子収率q265は、0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましく、0.20以上であることが更に好ましい。
【0092】
本明細書において、光ラジカル重合開始剤b1の量子収率q265は、上記条件2の条件でのパルス露光後の膜の1cm2あたりの光ラジカル重合開始剤b1の分解分子数を、光ラジカル重合開始剤b1の吸収フォトン数で割ることで求めた値である。吸収フォトン数については、上記条件2の条件でのパルス露光での露光時間から照射フォトン数を求め、膜1cm2あたりの照射フォトン数に(1-透過率)をかけることで吸収フォトン数を求めた。露光後の膜の1cm2あたりの光ラジカル重合開始剤b1の分解分子数については、露光前後の膜の吸光度変化から光ラジカル重合開始剤b1の分解率を求め、光ラジカル重合開始剤b1の分解率に1cm2あたりの膜中の光ラジカル重合開始剤b1の存在分子数をかけることで求めた。1cm2あたりの膜中の光ラジカル重合開始剤b1の存在分子数は、膜密度を1.2g/cm3として膜面積1cm2あたりの膜重量を求め、「((1cm2あたりの膜重量×5質量%(光ラジカル重合開始剤b1の含有率)/光ラジカル重合開始剤b1の分子量)×6.02×1023個(アボガドロ数))」として求めた。
【0093】
また、本発明で用いられる光ラジカル重合開始剤b1は、下記の条件3を満たすものが好ましい。
条件3:光ラジカル重合開始剤b1を5質量%と樹脂とを含む膜に対して波長248~365nmの範囲のいずれかの波長の光を最大瞬間照度625000000W/m2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件で1パルスを露光した後に、膜中のラジカル濃度が膜1cm2あたり0.000000001mmol以上に達する。
【0094】
上記条件3における上記膜中のラジカル濃度は、膜1cm2あたり0.000000005mmol以上に達することが好ましく、0.00000001mmol以上に達することがより好ましく、0.00000003mmol以上に達することが更に好ましく、0.0000001mmol以上に達することが特に好ましい。
【0095】
なお、本明細書において、上述した膜中のラジカル濃度は、測定した波長の光における開始剤b1の量子収率に、(1-膜の透過率)を乗じて、入射フォトン数あたりの分解率を算出し、「1パルスあたりの光子のmol数」×「入射フォトン数あたりの開始剤b1の分解率」から、膜1cm2あたりで分解する光ラジカル重合開始剤b1の濃度を算出して求めた。なお、ラジカル濃度の算出にあたり、光照射によって分解した光ラジカル重合開始剤b1は全てラジカルとなる(途中で反応して消失しない)と仮定して算出した値である。
【0096】
上記条件2、3における測定で用いられる樹脂としては、光ラジカル重合開始剤b1と相溶するものであれば特に限定はない。例えば下記構造の樹脂(A)が好ましく用いられる。繰り返し単位に付記した数値はモル比であり、重量平均分子量は40000であり、分散度(Mn/Mw)は5.0である。
樹脂(A)
【化9】
【0097】
光ラジカル重合開始剤b1は、パルス露光によってラジカルを瞬間的に大量に発生させ易いという理由からアルキルフェノン化合物およびオキシム化合物が好ましく、オキシム化合物がより好ましい。また、光ラジカル重合開始剤b1は、二光子吸収しやすい化合物が好ましい。なお、二光子吸収とは二個の光子を同時に吸収する励起過程のことである。
【0098】
本発明で用いられる光ラジカル重合開始剤Bは、1種のみであってもよく、2種以上の光ラジカル重合開始剤を含むものであってもよい。光ラジカル重合開始剤Bが2種以上の光ラジカル重合開始剤を含む場合は、それぞれの光ラジカル重合開始剤が上述した条件1を満たす光ラジカル重合開始剤b1であってもよい。また、上述した条件1を満たす光ラジカル重合開始剤b1と、上述した条件1を満たさない光ラジカル重合開始剤b2とをそれぞれ1種以上含んでいてもよい。光ラジカル重合開始剤Bに含まれる2種以上の光ラジカル重合開始剤が、上述した条件1を満たす光ラジカル重合開始剤b1のみである場合は、パルス露光によって、ラジカル重合性化合物Cの硬化に必要な量のラジカルを瞬間的に発生させ易い。光ラジカル重合開始剤Bに含まれる2種以上の光ラジカル重合開始剤が、上述した条件1を満たす光ラジカル重合開始剤b1と、上述した条件1を満たさない光ラジカル重合開始剤b2とをそれぞれ1種以上含む場合は、パルス露光による経時減感を抑制させやすい。
【0099】
本発明で用いられる光ラジカル重合開始剤Bは、感度調整し易いという理由から2種以上の光ラジカル重合開始剤を含むものであることが好ましい。また、本発明で用いられる光ラジカル重合開始剤Bが2種以上の光ラジカル重合開始剤を含む場合、硬化性の観点から光ラジカル重合開始剤Bは下記の条件1aを満たすことが好ましい。
条件1a:2種以上の光ラジカル重合開始剤を感光性組成物に含まれる比率で混合した混合物を0.035mmol/L含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液に対し、波長355nmの光を、最大瞬間照度375000000W/m2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件でパルス露光した後の量子収率q355が0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、0.25以上であることがより一層好ましく、0.35以上であることがより更に一層好ましく、0.45以上であることが特に好ましい。
【0100】
また、本発明で用いられる光ラジカル重合開始剤Bが2種以上の光ラジカル重合開始剤を含む場合、硬化性の観点から光ラジカル重合開始剤Bは下記の条件2aを満たすことが好ましい。
条件2a:2種以上の光ラジカル開始剤を感光性組成物に含まれる比率で混合した混合物を5質量%、樹脂を95質量%含む厚さ1.0μmの膜に対し、波長265nmの光を、最大瞬間照度375000000W/m2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件でパルス露光した後の量子収率q265が0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましく、0.20以上であることが特に好ましい。
【0101】
また、本発明で用いられる光ラジカル重合開始剤Bが2種以上の光ラジカル重合開始剤を含む場合、硬化性の観点から光ラジカル重合開始剤Bは下記の条件3aを満たすことが好ましい。
条件3a:2種以上の光ラジカル開始剤を感光性組成物に含まれる比率で混合した混合物を5質量%と樹脂とを含む膜に対して波長248~365nmの範囲のいずれかの波長の光を最大瞬間照度625000000W/m2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件で0.1秒間パルス露光した後に、膜中のラジカル濃度が膜1cm2あたり0.000000001mmol以上に達することが好ましく、0.000000005mmol以上に達することがより好ましく、0.00000001mmol以上に達することが更に好ましく、0.00000003mmol以上に達することが特に好ましく、0.0000001mmol以上に達することが最も好ましい。
【0102】
感光性組成物の全固形分中における光ラジカル重合開始剤Bの含有量は、2~10質量%が好ましい。上限は、8質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましい。下限は、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。
また、光ラジカル重合開始剤Bの含有量は、後述するラジカル重合性化合物Cの100質量部に対して10~100質量部であることが好ましい。上限は、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。下限は、13質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましい。
また、光ラジカル重合開始剤Bの含有量は、後述するラジカル重合性化合物C1の100質量部に対して10~100質量部であることが好ましい。上限は、70質量部以下であることが好ましく、50質量部以下であることがより好ましい。下限は、13質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましい。
本発明の感光性組成物が光ラジカル重合開始剤Bを2種以上含む場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0103】
<<ラジカル重合性化合物C>>
本発明の感光性組成物は、ラジカル重合性化合物Cを含有する。ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性基を有する化合物が用いられる。本発明の感光性組成物は、ラジカル重合性化合物Cとして、重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物C1(以下、ラジカル重合性化合物C1ともいう)を含むものが用いられる。
【0104】
(ラジカル重合性化合物C1)
ラジカル重合性化合物C1の重量平均分子量は、3000以上であり、3000~50000であることが好ましく、5000~50000であることがより好ましく、5000~40000であることが更に好ましい。ラジカル重合性化合物C1の重量平均分子量が3000以上であれば、色材の近傍でラジカル重合性化合物C1が硬化し易く、耐溶剤性、耐湿性および耐熱拡散性などに優れた膜を形成し易い。本発明において、ラジカル重合性化合物C1は、分散剤として用いることもできる。
【0105】
ラジカル重合性化合物C1が有するラジカル重合性基としては、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、シンナモイル基およびマレイミド基などのエチレン性不飽和結合基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、マレイミド基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。(メタ)アクリロイル基は反応性が特に優れ、また、立体障害が小さいため、色材Aの近傍で硬化しやすく、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0106】
また、ラジカル重合性化合物C1のエチレン性不飽和結合基量(以下、C=C価ともいう)は、0.2~5.0mmol/gであることが好ましく、0.2~4.0mmol/gであることがより好ましく、フォトリソグラフィ性および感光性組成物の保存安定性の観点から0.2~3.0mmol/gであることが更に好ましい。下限は、0.3mmol/g以上であることがより好ましい。ラジカル重合性化合物C1のC=C価について、ラジカル重合性化合物C1のエチレン性不飽和結合基のモル量をラジカル重合性化合物C1の合成に用いた原料から算出できる場合については仕込みの原料から算出した値を用いる。また、ラジカル重合性化合物C1のC=C価について、ラジカル重合性化合物C1のエチレン性不飽和結合基のモル量がラジカル重合性化合物C1の合成に用いた原料から算出ができない場合については、加水分解法を用いて測定した値を用いる。具体的には、アルカリ処理によってラジカル重合性化合物C1からエチレン性不飽和結合基部位の低分子成分(a)を取り出し、その含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定し、下記式から算出することができる。また、ラジカル重合性化合物C1のC=C価について、ラジカル重合性化合物C1のエチレン性不飽和結合基のモル量をラジカル重合性化合物C1の合成に用いた原料から算出ができず、かつ、加水分解法でもC=C価を測定できない場合においては、NMR法(核磁気共鳴)にて測定した値を用いる。
ラジカル重合性化合物C1のC=C価[mmol/g]=(低分子成分(a)の含有量[ppm]/低分子成分(a)の分子量[g/mol])/(ラジカル重合性化合物C1の秤量値[g]×(ラジカル重合性化合物C1の固形分濃度[質量%]/100)×10)
【0107】
ラジカル重合性化合物C1は、酸基を含む化合物であることが好ましい。ラジカル重合性化合物C1が酸基を有することで、感光性組成物中における色材Aなどの分散性を高めることができ、感光性組成物の保存安定性を向上できる。更には、現像性をより向上させることもできる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。ラジカル重合性化合物C1の酸価は、30~150mgKOH/gであることが好ましい。上限は、100mgKOH/g以下であることがより好ましい。下限は、35mgKOH/g以上であることが好ましく、40mgKOH/g以上であることがより好ましい。ラジカル重合性化合物C1の酸価が上記範囲であれば、感光性組成物の現像性が良好である。更には、感光性組成物中における色材Aの分散性も良好であり、感光性組成物の保存安定性も良好である。
【0108】
ラジカル重合性化合物C1は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位を含むことが好ましく、下記式(A-1-1)で表される繰り返し単位を含むことがより好ましい。また、ラジカル重合性化合物C1において、エチレン性不飽和結合基を有する繰り返し単位の含有量は、ラジカル重合性化合物C1の全繰り返し単位中10モル%以上であることが好ましく、10~80モル%であることがより好ましく、20~70モル%であることが更に好ましい。
【化10】
【0109】
式(A-1-1)において、X1は繰り返し単位の主鎖を表し、L1は単結合または2価の連結基を表し、Y1はエチレン性不飽和結合基を表す。
【0110】
式(A-1-1)において、X1が表す繰り返し単位の主鎖としては、特に限定はない。公知の重合可能なモノマーから形成される連結基であれば特に制限ない。例えば、ポリ(メタ)アクリル系連結基、ポリアルキレンイミン系連結基、ポリエステル系連結基、ポリウレタン系連結基、ポリウレア系連結基、ポリアミド系連結基、ポリエーテル系連結基、ポリスチレン系連結基などが挙げられ、原料素材の入手性や製造適性の観点からポリ(メタ)アクリル系連結基、ポリアルキレンイミン系連結基が好ましく、(メタ)アクリル系連結基がより好ましい。
【0111】
式(A-1-1)において、L1が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1~12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1~12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO2-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。アルキレン基、アルキレンオキシ基におけるアルキレン基、オキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。また、アルキレン基、アルキレンオキシ基におけるアルキレン基、オキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基などが挙げられ、製造適性の観点からヒドロキシ基が好ましい。
【0112】
式(A-1-1)において、Y1が表すエチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、シンナモイル基およびマレイミド基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、マレイミド基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が更に好ましい。
【0113】
式(A-1-1)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式(A-1-1a)で表される繰り返し単位、下記式(A-1-1b)で表される繰り返し単位などが挙げられる。
【化11】
【0114】
式(A-1-1a)において、Ra1~Ra3は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、Q1aは、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-またはフェニレン基を表し、L1は、単結合または2価の連結基を表し、Y1はエチレン性不飽和結合基を表す。Ra1~Ra3が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。Q1aは、-COO-または-CONH-であることが好ましく、-COO-であることがより好ましい。
【0115】
式(A-1-1b)において、Ra10およびRa11は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、m1は1~5の整数を表し、L1は、単結合または2価の連結基を表し、Y1はエチレン性不飽和結合基を表す。Ra10およびRa11が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
【0116】
ラジカル重合性化合物C1は、グラフト鎖を有する繰り返し単位を含む化合物であることが好ましい。ラジカル重合性化合物C1がグラフト鎖を有する繰り返し単位を含むことにより、グラフト鎖による立体障害によって色材Aの凝集などをより効果的に抑制できる。グラフト鎖を有する繰り返し単位を含むラジカル重合性化合物C1は、分散剤として好ましく用いられる。
【0117】
なお、グラフト鎖とは、繰り返し単位の主鎖から枝分かれして伸びるポリマー鎖のことを意味する。グラフト鎖の長さについては特に制限されないが、グラフト鎖が長くなると立体反発効果が高くなり、色材などの分散性を高めることができる。グラフト鎖としては、水素原子を除いた原子数が40~10000であるものが好ましく、水素原子を除いた原子数が50~2000であるものがより好ましく、水素原子を除いた原子数が60~500であるものが更に好ましい。
【0118】
グラフト鎖は、ポリエステル繰り返し単位、ポリエーテル繰り返し単位、ポリ(メタ)アクリル繰り返し単位、ポリウレタン繰り返し単位、ポリウレア繰り返し単位およびポリアミド繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の構造の繰り返し単位を含むことが好ましく、ポリエステル繰り返し単位、ポリエーテル繰り返し単位およびポリ(メタ)アクリル繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の構造の繰り返し単位を含むことがより好ましく、ポリエステル繰り返し単位を含むことが更に好ましい。ポリエステル繰り返し単位としては、下記の式(G-1)、式(G-4)または式(G-5)で表される構造の繰り返し単位が挙げられる。また、ポリエーテル繰り返し単位としては、下記の式(G-2)で表される構造の繰り返し単位が挙げられる。また、ポリ(メタ)アクリル繰り返し単位としては、下記の式(G-3)で表される構造の繰り返し単位が挙げられる。
【化12】
【0119】
上記式において、RG1およびRG2は、それぞれアルキレン基を表す。RG1およびRG2で表されるアルキレン基としては特に制限されないが、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素数2~16の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がより好ましく、炭素数3~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が更に好ましい。
上記式において、RG3は、水素原子またはメチル基を表す。
上記式において、QG1は、-O-または-NH-を表し、LG1は、単結合または2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1~12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1~12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO2-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
RG4は、水素原子または置換基を表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。
【0120】
また、ポリエステル繰り返し単位は、ラクトン化合物由来の繰り返し単位を含むことが好ましく、ε-カプロラクトンおよびδ-バレロラクトンから選ばれる化合物由来の繰り返し単位を含むことが更に好ましく、ε-カプロラクトン由来の繰り返し単位を含むことが特に好ましい。ε-カプロラクトン由来の繰り返し単位としては、以下のε-CLで表される構造の繰り返し単位が挙げられる。δ-バレロラクトン由来の繰り返し単位としては、以下のδ-VLで表される構造の繰り返し単位が挙げられる。
【化13】
【0121】
グラフト鎖の末端構造としては、特に限定されない。水素原子であってもよく、置換基であってもよい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。なかでも、色材などの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5~24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。
【0122】
本発明において、グラフト鎖としては、下記式(G-1a)、式(G-2a)、式(G-3a)、式(G-4a)または式(G-5a)で表される構造であることが好ましい。
【化14】
【0123】
上記式において、RG1およびRG2は、それぞれアルキレン基を表し、RG3は、水素原子またはメチル基を表し、QG1は、-O-または-NH-を表し、LG1は、単結合または2価の連結基を表し、RG4は、水素原子または置換基を表し、W100は水素原子または置換基を表す。n1~n5は、それぞれ独立して2以上の整数を表す。RG1~RG4、QG1、LG1については、式(G-1)~(G-5)で説明したRG1~RG4、QG1、LG1と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0124】
式(G-1a)~(G-5a)において、W100は置換基であることが好ましい。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基等が挙げられる。なかでも、色材などの分散性向上の観点から、立体反発効果を有する基が好ましく、炭素数5~24のアルキル基又はアルコキシ基が好ましい。アルキル基およびアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。
【0125】
式(G-1a)~(G-5a)において、n1~n5は、それぞれ2~100の整数が好ましく、2~80の整数がより好ましく、8~60の整数が更に好ましい。
【0126】
式(G-1a)において、n1が2以上の場合における各繰り返し単位中のRG1同士は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、RG1が異なる繰り返し単位を2種以上含む場合においては、各繰り返し単位の配列は特に限定は無く、ランダム、交互、及び、ブロックのいずれであってもよい。式(G-2a)~式(G-5a)においても同様である。
【0127】
グラフト鎖を有する繰り返し単位としては、下記式(A-1-2)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化15】
【0128】
式(A-1-2)において、X2は繰り返し単位の主鎖を表し、L2は単結合または2価の連結基を表し、W1はグラフト鎖を表す。
【0129】
式(A-1-2)におけるX2が表す繰り返し単位の主鎖としては、式(A-1-1)のX1で説明した構造が挙げられ、好ましい範囲も同様である。式(A-1-2)におけるL2が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO2-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。式(A-1-2)におけるW1が表すグラフト鎖としては、上述したグラフト鎖が挙げられる。
【0130】
式(A-1-2)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式(A-1-2a)で表される繰り返し単位、下記式(A-1-2b)で表される繰り返し単位などが挙げられる。
【化16】
【0131】
式(A-1-2a)において、Rb1~Rb3は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、Qb1は、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-またはフェニレン基を表し、L2は、単結合または2価の連結基を表し、W1はグラフト鎖を表す。Rb1~Rb3が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。Qb1は、-COO-または-CONH-であることが好ましく、-COO-であることがより好ましい。
【0132】
式(A-1-2b)において、Rb10およびRb11は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、m2は1~5の整数を表し、L2は、単結合または2価の連結基を表し、W1はグラフト鎖を表す。Rb10およびRb11が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
【0133】
ラジカル重合性化合物C1において、グラフト鎖を有する繰り返し単位の重量平均分子量(Mw)は、1000以上であることが好ましく、1000~10000であることがより好ましく、1000~7500であることが更に好ましい。なお、本発明において、グラフト鎖を有する繰り返し単位の重量平均分子量は、同繰り返し単位の重合に用いた原料モノマーの重量平均分子量から算出した値である。例えば、グラフト鎖を有する繰り返し単位は、マクロモノマーを重合することで形成できる。ここで、マクロモノマーとは、ポリマー末端に重合性基が導入された高分子化合物を意味する。マクロモノマーを用いてグラフト鎖を有する繰り返し単位を形成した場合においては、マクロモノマーの重量平均分子量がグラフト鎖を有する繰り返し単位に該当する。
【0134】
ラジカル重合性化合物C1がグラフト鎖を有する繰り返し単位を含む場合、グラフト鎖を有する繰り返し単位の含有量は、ラジカル重合性化合物C1の全繰り返し単位中1.0~60モル%であることが好ましく、1.5~50モル%であることがより好ましい。
【0135】
ラジカル重合性化合物C1は、更に酸基を有する繰り返し単位を含むことも好ましい。この態様によれば、感光性組成物の現像性や色材Aなどの分散性をより向上できる。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられる。
【0136】
酸基を有する繰り返し単位としては、下記式(A-1-3)で表される繰り返し単位が挙げられる。
【化17】
【0137】
式(A-1-3)において、X3は繰り返し単位の主鎖を表し、L3は単結合または2価の連結基を表し、A1は酸基を表す。
【0138】
式(A-1-3)におけるX3が表す繰り返し単位の主鎖としては、式(A-1-1)のX1で説明した構造が挙げられ、好ましい範囲も同様である。
式(A-1-3)におけるL3が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2~12のアルケニレン基)、アルキレンオキシ基(好ましくは炭素数1~12のアルキレンオキシ基)、オキシアルキレンカルボニル基(好ましくは炭素数1~12のオキシアルキレンカルボニル基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO2-、-CO-、-O-、-COO-、OCO-、-S-およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。アルキレン基、アルキレンオキシ基におけるアルキレン基、オキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましい。また、アルキレン基、アルキレンオキシ基におけるアルキレン基、オキシアルキレンカルボニル基におけるアルキレン基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。置換基としては、ヒドロキシ基などが挙げられる。
式(A-1-3)におけるA1が表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられる。
【0139】
式(A-1-3)で表される繰り返し単位の具体例としては、下記式(A-1-3a)で表される繰り返し単位、下記式(A-1-3b)で表される繰り返し単位などが挙げられる。
【化18】
【0140】
式(A-1-3a)において、Rc1~Rc3は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、Qc1は、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-またはフェニレン基を表し、L3は、単結合または2価の連結基を表し、A1は酸基を表す。Rc1~Rc3が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。Qc1は、-COO-または-CONH-であることが好ましく、-COO-であることがより好ましい。
【0141】
式(A-1-3b)において、Rc10およびRc11は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、m3は1~5の整数を表し、L3は、単結合または2価の連結基を表し、A1は酸基を表す。Rc10およびRc11が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
【0142】
式(A-1-3a)で表される繰り返し単位としては、下記式(A-1-3a-1)で表される繰り返し単位であることがより好ましい。
【化19】
【0143】
式(A-1-3a-1)において、Rc1~Rc3は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、Qc1は、-CO-、-COO-、-OCO-、-CONH-またはフェニレン基を表し、L10は、単結合またはアルキレン基を表し、L11は、単結合、-O-、-S-、-NH-、-CO-、-OCO-または-COO-を表し、Rc4は、アルキレン基またはアリーレン基を表し、pは0~5の整数を表す。ただし、pが0の場合、L11が-COO-であるか、L10およびL11が単結合でかつQc1が-COO-である。
【0144】
式(A-1-3a-1)において、Rc1~Rc3が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましく、1が更に好ましい。Qc1は、-COO-または-CONH-であることが好ましく、-COO-であることがより好ましい。
【0145】
式(A-1-3a-1)において、L10が表すアルキレン基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~5であることがより好ましい。アルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。L10は単結合であることが好ましい。
【0146】
式(A-1-3a-1)において、L11は、単結合または-OCO-であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0147】
式(A-1-3a-1)において、Rc4は、アルキレン基であることが好ましい。アルキレン基の炭素数は、1~12であることが好ましく、1~8であることがより好ましく、2~8であることが更に好ましく、2~6であることが特に好ましい。Rc4が表すアルキレン基は、直鎖状、分岐状、及び、環状のいずれでもよく、直鎖状または分岐状が好ましく、直鎖状がより好ましい。
【0148】
式(A-1-3a-1)において、pは0~5の整数を表し、0~3の整数であることが好ましく、0~2の整数であることがより好ましい。
【0149】
ラジカル重合性化合物C1が、酸基を有する繰り返し単位を含む場合、酸基を有する繰り返し単位の含有量は、ラジカル重合性化合物C1の全繰り返し単位中80モル%以下であることが好ましく、10~80モル%がより好ましい。
【0150】
ラジカル重合性化合物C1は、更に他の繰り返し単位を含んでいてもよい。例えば、ラジカル重合性化合物C1が、グラフト鎖を有する繰り返し単位として、上述した式(A-1-2b)で表される繰り返し単位を含む場合においては、さらに下記式(A-1-4b)および/または式(A-1-5b)で表される繰り返し単位を含むことができる。
【0151】
【0152】
式(A-1-4b)において、Rd10およびRd11は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、m4は1~5の整数を表す。Rd10およびRd11が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。
【0153】
式(A-1-5b)において、Re10およびRe11は、それぞれ独立して水素原子またはアルキル基を表し、m5は1~5の整数を表し、De1はアニオン基を表し、Le1は単結合または2価の連結基を表し、We1はグラフト鎖を表す。Re10およびRe11が表すアルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~3がより好ましい。De1が表すアニオン基としては、-SO3
-、-COO-、-PO4
-、-PO4H-などが挙げられる。Le1が表す2価の連結基、We1が表すグラフト鎖としては、上述した式(A-1-2)のL2、W1で説明したものが挙げられる。
【0154】
また、ラジカル重合性化合物C1は、他の繰り返し単位として、下記式(ED1)で示される化合物および/または下記式(ED2)で表される化合物(以下、これらの化合物を「エーテルダイマー」と称することもある。)を含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含むことができる。エーテルダイマーの具体例としては、例えば、特開2013-29760号公報の段落番号0317を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0155】
【0156】
式(ED1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1~25の炭化水素基を表す。
【化22】
式(ED2)中、Rは、水素原子または炭素数1~30の有機基を表す。式(ED2)の具体例としては、特開2010-168539号公報の記載を参酌できる。
【0157】
本発明において、ラジカル重合性化合物C1として、下記式(SP-1)で表される化合物(以下、化合物(SP-1)ともいう)を用いることもできる。化合物(SP-1)は、分散剤として好ましく用いることができる。特に色材Aとして分散性の低い顔料を用いた場合において、化合物(SP-1)を分散剤として用いることで、感光性組成物中における色材Aの分散状態を良好に維持させ易い。
【化23】
式中、Z
1は、(m+n)価の連結基を表し、
Y
1およびY
2は、それぞれ独立して単結合または連結基を表し、
A
1は色材吸着部を含む基を表し、
P
1はポリマー鎖を表し、
nは1~20を表し、mは1~20を表し、m+nは3~21であり、
n個のY
1およびA
1はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、
m個のY
2およびP
1はそれぞれ同一であってもよく、異なっていてもよく、
Z
1、A
1およびP
1の少なくとも一つはエチレン性不飽和結合基を表す。
性基を含む。
【0158】
化合物(SP-1)に含まれるエチレン性不飽和結合基としては、ビニル基、ビニロキシ基、アリル基、メタリル基、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、シンナモイル基およびマレイミド基が挙げられ、(メタ)アクリロイル基、スチレン基、マレイミド基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましく、アクリロイル基が特に好ましい。
【0159】
化合物(SP-1)において、エチレン性不飽和結合基は、Z1、A1およびP1のいずれかに含まれていればよいが、P1に含まれていることが好ましい。また、P1がエチレン性不飽和結合基を含む場合、P1は、側鎖にエチレン性不飽和結合基を含む繰り返し単位を有するポリマー鎖であることが好ましい。
【0160】
式(SP-1)において、A1は色材吸着部を含む基を表す。色材吸着部としては、有機色素構造、複素環構造、酸基、塩基性窒素原子を有する基、ウレア基、ウレタン基、配位性酸素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基およびヒドロキシ基が挙げられ、複素環構造、酸基、塩基性窒素原子を有する基、炭素数4以上の炭化水素基、ヒドロキシ基が好ましく、色材の分散性の観点から酸基がより好ましい。酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基が挙げられ、カルボキシル基が好ましい。
【0161】
色材吸着部は、1つのA1中に、少なくとも1種含まれていればよく、2種以上を含んでいてもよい。A1は、色材吸着部を1~10個含むことが好ましく、1~6個含むことがより好ましい。また、A1が表す色材吸着部を含む基としては、前述の色材吸着部と、1~200個の炭素原子、0~20個の窒素原子、0~100個の酸素原子、1~400個の水素原子、および0~40個の硫黄原子から成り立つ連結基とが結合して形成された基が挙げられる。例えば、炭素数1~10の鎖状飽和炭化水素基、炭素数3~10の環状飽和炭化水素基、または、炭素数5~10の芳香族炭化水素基を介して1個以上の色材吸着部が結合して形成された基等が挙げられる。上記の鎖状飽和炭化水素基、環状飽和炭化水素基および芳香族炭化水素基はさらに置換基を有していてもよい。置換基としては炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~16のアリール基、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸アミド基、N-スルホニルアミド基、炭素数1~6のアシルオキシ基、炭素数1~20のアルコキシ基、ハロゲン原子、炭素数2~7のアルコキシカルボニル基、シアノ基、炭酸エステル基、および光硬化性基等が挙げられる。また、色材吸着部自体が1価の基を構成しうる場合には、色材吸着部そのものがA1であってもよい。
【0162】
また、A1の化学式量としては、30~2000であることが好ましい。上限は、1000以下であることが好ましく、800以下であることがより好ましい。下限は、50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。A1の化学式量が上記範囲であれば、色材に対する吸着性が良好である。なお、A1の化学式量は、構造式から計算した値である。
【0163】
式(SP-1)において、Z1は、(m+n)価の連結基を表す。(m+n)価の連結基としては、1~100個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~50個の酸素原子、1~200個の水素原子、および0~20個の硫黄原子から成り立つ基が挙げられる。(m+n)価の連結基としては、下記の構造単位または以下の構造単位が2以上組み合わさって構成される基(環構造を形成していてもよい)が挙げられる。
【0164】
【0165】
Z1の化学式量としては、20~3000であることが好ましい。上限は、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましい。下限は、50以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましい。なお、Z1の化学式量は、構造式から計算した値である。(m+n)価の連結基の具体例については、特開2014-177613号公報の段落番号0043~0055を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0166】
式(SP-1)において、Y1およびY2は、それぞれ独立して単結合または連結基を表す。連結基としては、1~100個の炭素原子、0~10個の窒素原子、0~50個の酸素原子、1~200個の水素原子、および0~20個の硫黄原子から成り立つ基が挙げられる。上述の基は、上述した置換基を更に有していてもよい。Y1およびY2が表す連結基としては、下記の構造単位または以下の構造単位が2以上組み合わさって構成される基を挙げることができる。
【0167】
【0168】
式(SP-1)において、P
1はポリマー鎖を表す。P
1が表すポリマー鎖としては、主鎖中に、ポリ(メタ)アクリル繰り返し単位、ポリエーテル繰り返し単位、ポリエステル繰り返し単位、ポリアミド繰り返し単位、ポリイミド繰り返し単位、ポリイミン繰り返し単位およびポリウレタン繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を有するポリマー鎖であることが好ましい。また、P
1が表すポリマー鎖は、下記式(P1-1)~(P1-5)で表される繰り返し単位を含むポリマー鎖であることが好ましい。
【化26】
【0169】
上記式において、RG1およびRG2は、それぞれアルキレン基を表す。RG1およびRG2で表されるアルキレン基としては、炭素数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましく、炭素数2~16の直鎖状又は分岐状のアルキレン基がより好ましく、炭素数3~12の直鎖状又は分岐状のアルキレン基が更に好ましい。アルキレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、エチレン性不飽和等が挙げられる。
上記式において、RG3は、水素原子またはメチル基を表す。
上記式において、QG1は、-O-または-NH-を表し、LG1は、単結合またはアリーレン基を表し、LG2は、単結合または2価の連結基を表す。QG1は、-O-であることが好ましい。LG1は、単結合であることが好ましい。LG2が表す2価の連結基としては、アルキレン基(好ましくは炭素数1~12のアルキレン基)、アリーレン基(好ましくは炭素数6~20のアリーレン基)、-NH-、-SO-、-SO2-、-CO-、-O-、-COO-、-OCO-、-S-、-NHCO-、-CONH-、およびこれらの2以上を組み合わせてなる基が挙げられる。
RG4は、水素原子または置換基を表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオエーテル基、アリールチオエーテル基、ヘテロアリールチオエーテル基、エチレン性不飽和結合基、酸基等が挙げられる。
【0170】
P1における、前述の繰り返し単位の繰り返し数は、3~2000であることが好ましい。上限は、1500以下であることが好ましく、1000以下であることがより好ましい。下限は、5以上であることが好ましく、7以上であることがより好ましい。また、P1は、側鎖にエチレン性不飽和結合基を含む繰り返し単位を有するポリマー鎖であることが好ましい。また、P1を構成する全繰り返し単位中における、エチレン性不飽和結合基を側鎖に含む繰り返し単位の割合は、1モル%以上であることが好ましく、2モル%以上であることがより好ましく、3モル%以上であることが更に好ましい。上限は、100モル%とすることができる。また、P1が側鎖にエチレン性不飽和結合基を含む繰り返し単位を有するポリマー鎖である場合において、P1は側鎖にエチレン性不飽和結合基を含む繰り返し単位の他に、他の繰り返し単位を含むことも好ましい。他の繰り返し単位としては、側鎖に酸基を含む繰り返し単位などが挙げられる。P1が側鎖にエチレン性不飽和結合基を含む繰り返し単位の他に、さらに側鎖に酸基を含む繰り返し単位を含むことで、フォトリソグラフィ法でパターン形成した際において、現像残渣の発生をより効果的に抑制できる。P1が側鎖に酸基を含む繰り返し単位を含む場合、P1を構成する全繰り返し単位中における、酸基を側鎖に含む繰り返し単位の割合は、50モル%以下であることが好ましく、2~48モル%であることがより好ましく、4~46モル%であることが更に好ましい。
【0171】
P1が表すポリマー鎖の重量平均分子量は、1000以上であることが好ましく、1000~10000であることがより好ましい。上限は、9000以下であることが好ましく、6000以下であることがより好ましく、3000以下であることが更に好ましい。下限は、1200以上であることが好ましく、1400以上であることがより好ましい。なお、P1の重量平均分子量は、同ポリマー鎖の導入に用いた原料の重量平均分子量から算出した値である。
【0172】
本発明で用いられるラジカル重合性化合物C1は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位とグラフト鎖を有する繰り返し単位とを含む化合物であることが好ましい。ラジカル重合性化合物C1がグラフト鎖を有する繰り返し単位を含むことにより、グラフト鎖による立体障害によって色材の凝集などをより効果的に抑制できる。このため、このラジカル重合性化合物C1は分散剤として好ましく用いることができる。また、このラジカル重合性化合物C1はフォトリソグラフィ性と、色材の分散性を高いレベルで両立させ易い。
【0173】
エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する繰り返し単位とグラフト鎖を有する繰り返し単位とを含む化合物の具体例としては以下に示す化合物および後述の実施例に記載の化合物が挙げられる。
【化27】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【化28】
【表7】
【0174】
上述した化合物(SP-1)の具体例としては、下記構造の化合物が挙げられる。
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【0175】
また、その他のラジカル重合性化合物C1の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。
【化33】
【0176】
本発明の感光性組成物において、ラジカル重合性化合物Cの全質量中におけるラジカル重合性化合物C1の含有量は70質量%以上であり、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、93質量%以上であることがより一層好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。ラジカル重合性化合物C1は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0177】
本発明において、ラジカル重合性化合物Cとしては、上述したラジカル重合性化合物C1のみを用いてもよいが、上述したラジカル重合性化合物C1と、分子量が3000未満のラジカル重合性化合物C2(以下、ラジカル重合性化合物C2ともいう)とを併用することが好ましい。ラジカル重合性化合物C1とラジカル重合性化合物C2とを併用することで、ラジカル重合性化合物C1の重合時において、ラジカル重合性化合物C1よりも低分子量の化合物であるラジカル重合性化合物C2が繋ぎの役目を果して硬化が進行すると推測され、露光された部分のラジカル重合性化合物C1をより効率よく硬化させやすく、より優れたフォトリソグラフィ性が得られやすい。更には、得られる膜の耐溶剤性、耐湿性、耐熱拡散性などをより向上させ易い。
【0178】
(ラジカル重合性化合物C2)
次に、ラジカル重合性化合物C2について説明する。ラジカル重合性化合物C2の分子量は、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましい。下限は、100以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましい。ラジカル重合性化合物C2は、エチレン性不飽和結合基を2個以上有する化合物(2官能以上の化合物)であることが好ましく、エチレン性不飽和結合基を2~15個有する化合物(2~15官能の化合物)であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合基を2~10個有する化合物(2~10官能の化合物)であることが更に好ましく、エチレン性不飽和結合基を2~6個有する化合物(2~6官能の化合物)であることが特に好ましい。具体的には、ラジカル重合性化合物C2エチレン性不飽和結合基は、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物であることが好ましく、2~15官能の(メタ)アクリレート化合物であることがより好ましく、2~10官能の(メタ)アクリレート化合物であることが更に好ましく、2~6官能の(メタ)アクリレート化合物であることが特に好ましい。ラジカル重合性化合物C2のC=C価は、2mmol/g以上であることが好ましく、6mmol/g以上であることがより好ましく、10mol/g以上であることが更に好ましい。上限30mmol/g以下であることが好ましい。ラジカル重合性化合物C2のC=C価は、ラジカル重合性化合物C2の1分子中に含まれるエチレン性不飽和結合基の数をラジカル重合性化合物C2の分子量で割ることで算出した値である。
【0179】
ラジカル重合性化合物C2については、特開2013-253224号公報の段落番号0033~0034、特開2009-288705号公報の段落番号0095~0108、特開2013-29760号公報の段落番号0227、特開2008-292970号公報の段落番号0254~0257の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。また、ラジカル重合性化合物C2としては、エチレンオキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、NKエステルATM-35E;新中村化学工業(株)製)、ジペンタエリスリトールトリアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-330;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート(市販品としては、KAYARAD D-320;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート(市販品としてはKAYARAD D-310;日本化薬(株)製)、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート(市販品としては、KAYARAD DPHA;日本化薬(株)製、A-DPH-12E;新中村化学工業(株)製)、およびこれらの(メタ)アクリロイル基が、エチレングリコール残基および/またはプロピレングリコール残基を介して結合している構造の化合物、特開2012-208494号公報の段落番号0477(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0585)に記載の重合性モノマー等が挙げられる。また、ジグリセリンEO(エチレンオキシド)変性(メタ)アクリレート(市販品としてはM-460;東亞合成(株)製)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(新中村化学工業(株)製、A-TMMT)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(日本化薬(株)製、KAYARAD HDDA)、RP-1040(日本化薬(株)製)、アロニックスTO-2349(東亞合成(株)製)なども用いることもできる。
【0180】
ラジカル重合性化合物C2としては、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等の酸基を有する化合物を用いることもできる。市販品としては、アロニックスM-305、M-510、M-520(以上、東亞合成(株)製)などが挙げられる。ラジカル重合性化合物C2としては、カプロラクトン構造を有するラジカル重合性化合物を用いることもできる。
【0181】
ラジカル重合性化合物C2としては、フルオレン骨格を有するラジカル重合性化合物を用いることもできる。フルオレン骨格を有するラジカル重合性化合物は、式(Fr)で表される部分構造を有するラジカル重合性化合物であることが好ましい。また、フルオレン骨格を有するラジカル重合性化合物は、エチレン性不飽和結合基を2個以上有する化合物であることが好ましく、エチレン性不飽和結合基を2~15個有する化合物であることがより好ましく、エチレン性不飽和結合基を2~10個有する化合物であることが更に好ましく、エチレン性不飽和結合基を2~6個有する化合物であることが特に好ましい。フルオレン骨格を有するラジカル重合性化合物の具体例としては下記構造の化合物が挙げられる。また、フルオレン骨格を有するラジカル重合性化合物の市販品としては、オグソールEA-0200、EA-0300(大阪ガスケミカル(株)製、フルオレン骨格を有する(メタ)アクリレートモノマー)などが挙げられる。
【化34】
【0182】
式中波線は、結合手を表し、R
f1およびR
f2はそれぞれ独立して置換基を表し、mおよびnはそれぞれ独立して0~5の整数を表す。mが2以上の場合、m個のR
f1は同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよく、m個のR
f1のうち2個のR
f1同士が結合して環を形成していてもよい。nが2以上の場合、n個のR
f2は同一であってもよく、それぞれ異なっていてもよく、n個のR
f2のうち2個のR
f2同士が結合して環を形成していてもよい。R
f1およびR
f2が表す置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、-OR
f11、-COR
f12、-COOR
f13、-OCOR
f14、-NR
f15R
f16、-NHCOR
f17、-CONR
f18R
f19、-NHCONR
f20R
f21、-NHCOOR
f22、-SR
f23、-SO
2R
f24、-SO
2OR
f25、-NHSO
2R
f26または-SO
2NR
f27R
f28が挙げられる。R
f11~R
f28は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはヘテロアリール基を表す。
【化35】
【0183】
ラジカル重合性化合物C2としては、下記式(MO-1)~(MO-6)で表される化合物を用いることもできる。なお、式中、Tがオキシアルキレン基の場合には、炭素原子側の末端がRに結合する。
【0184】
【0185】
上記の式において、nは0~14であり、mは1~8である。一分子内に複数存在するR、T、は、各々同一であっても、異なっていてもよい。
上記式(MO-1)~(MO-6)で表される化合物の各々において、複数のRの内の少なくとも1つは、-OC(=O)CH=CH2、-OC(=O)C(CH3)=CH2、-NHC(=O)CH=CH2または-NHC(=O)C(CH3)=CH2を表す。上記式(MO-1)~(MO-6)で表される化合物の具体例としては、特開2007-269779号公報の段落0248~0251に記載されている化合物が挙げられる。
【0186】
ラジカル重合性化合物C2としては、カプロラクトン構造を有する化合物を用いることもできる。カプロラクトン構造を有する化合物は、下記式(Z-1)で表される化合物が好ましい。
【0187】
【0188】
式(Z-1)中、6個のRは全てが式(Z-2)で表される基であるか、又は6個のRのうち1~5個が式(Z-2)で表される基であり、残余が式(Z-3)で表される基、酸基またはヒドロキシ基である。
【0189】
【化38】
式(Z-2)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、mは1又は2の数を示し、「*」は結合手であることを示す。
【0190】
【化39】
式(Z-3)中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、「*」は結合手であることを示す。
【0191】
ラジカル重合性化合物C2としては、式(Z-4)又は(Z-5)で表される化合物を用いることもできる。
【0192】
【0193】
式(Z-4)及び(Z-5)中、Eは、各々独立に、-((CH2)yCH2O)-、又は-((CH2)yCH(CH3)O)-を表し、yは、各々独立に0~10の整数を表し、Xは、各々独立に、(メタ)アクリロイル基、水素原子、又はカルボキシル基を表す。式(Z-4)中、(メタ)アクリロイル基の合計は3個又は4個であり、mは各々独立に0~10の整数を表し、各mの合計は0~40の整数である。式(Z-5)中、(メタ)アクリロイル基の合計は5個又は6個であり、nは各々独立に0~10の整数を表し、各nの合計は0~60の整数である。
【0194】
式(Z-4)中、mは、0~6の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましい。また、各mの合計は、2~40の整数が好ましく、2~16の整数がより好ましく、4~8の整数が特に好ましい。式(Z-5)中、nは、0~6の整数が好ましく、0~4の整数がより好ましい。また、各nの合計は、3~60の整数が好ましく、3~24の整数がより好ましく、6~12の整数が特に好ましい。また、式(Z-4)又は式(Z-5)中の-((CH2)yCH2O)-又は-((CH2)yCH(CH3)O)-は、酸素原子側の末端がXに結合する形態が好ましい。
【0195】
重合性モノマーは、特開2017-48367号公報、特許第6057891号公報、特許第6031807号公報に記載されている化合物、特開2017-194662号公報に記載されている化合物、8UH-1006、8UH-1012(以上、大成ファインケミカル(株)製)、ライトアクリレートPOB-A0(共栄社化学(株)製)などを用いることも好ましい。
【0196】
感光性組成物の全固形分中におけるラジカル重合性化合物Cの含有量は、5~60質量%であることが好ましい。下限は10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上であることがより好ましい。上限は、50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましい。
【0197】
感光性組成物の全固形分中におけるラジカル重合性化合物C1の含有量は、4~50質量%であることが好ましい。下限は8質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましい。上限は、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。
【0198】
また、ラジカル重合性化合物C1の含有量は、色材Aの100質量部に対して10~60質量部であることが好ましい。上限は、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましい。下限は20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることが更に好ましい。色材Aとラジカル重合性化合物C1との量比が上記範囲であれば、耐溶剤性、耐湿性および耐熱拡散性に優れた膜が得られやすい。更には、感光性組成物中における色材Aの分散性が良好であり保存安定性に優れた感光性組成物とすることができる。
【0199】
感光性組成物の全固形分中における色材Aとラジカル重合性化合物C1との合計の含有量は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。上限は、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましい。
【0200】
本発明で用いられるラジカル重合性化合物Cが上述したラジカル重合性化合物C1と上述したラジカル重合性化合物C2とを含む場合、ラジカル重合性化合物C1とラジカル重合性化合物C2との合計量中におけるラジカル重合性化合物C1の含有量は、70~99.5質量%であることが好ましく、80~99.5質量%であることがより好ましく、85~99.5質量%であることが更に好ましく、90~99.5質量%であることがより一層好ましく、95~99.5質量%であることが更に一層好ましく、得られる膜の耐溶剤性、耐湿性、耐熱拡散性などをより向上させ易いという理由から97~99.5質量%であることが特に好ましい。
【0201】
本発明の感光性組成物において、感光性組成物に含まれる重量平均分子量が3000以上の化合物であって上述した色材Aおよび光ラジカル重合開始剤B以外の化合物の合計の質量中におけるラジカル重合性化合物C1の含有量は60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。この態様によれば膜の硬化が良好となり、耐溶剤性、耐湿性および耐熱拡散性に優れた膜が得られやすい。ラジカル重合性化合物C1以外の重量平均分子量が3000以上の化合物としては、後述する樹脂等が挙げられる。
【0202】
<<樹脂>>
本発明の感光性組成物は、上述した色材A、光ラジカル重合開始剤Bおよびラジカル重合性化合物C以外の成分として、樹脂を含有することができる。樹脂は、例えば、顔料などの粒子を組成物中で分散させる用途やバインダーの用途で配合される。なお、主に顔料などの粒子を分散させるために用いられる樹脂を分散剤ともいう。ただし、樹脂のこのような用途は一例であって、このような用途以外の目的で樹脂を使用することもできる。
【0203】
他の樹脂の重量平均分子量(Mw)は、3000~2000000が好ましい。上限は、1000000以下が好ましく、500000以下がより好ましい。下限は、4000以上が好ましく、5000以上がより好ましい。
【0204】
他の樹脂としては、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エン・チオール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリアリーレンエーテルホスフィンオキシド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂から1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0205】
他の樹脂は酸基を有していてもよい。酸基としては、例えば、カルボキシル基、リン酸基、スルホ基、フェノール性ヒドロキシ基などが挙げられ、カルボキシル基が好ましい。これら酸基は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。他の樹脂は酸基を有する樹脂であることが好ましい。酸基を有する樹脂はアルカリ可溶性樹脂として用いることもできる。
【0206】
酸基を有する樹脂は、側鎖にカルボキシル基を有する樹脂であることが好ましい。酸基を有する樹脂は、上述したラジカル重合性化合物C1で説明したエーテルダイマーを含むモノマー成分に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。また、酸基を有する樹脂は、下記式(X)で示される化合物に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。
【化41】
式(X)において、R
1は、水素原子またはメチル基を表し、R
2は炭素数2~10のアルキレン基を表し、R
3は、水素原子またはベンゼン環を含んでもよい炭素数1~20のアルキル基を表す。nは1~15の整数を表す。
【0207】
酸基を有する樹脂については、特開2012-208494号公報の段落番号0558~0571(対応する米国特許出願公開第2012/0235099号明細書の段落番号0685~0700)の記載、特開2012-198408号公報の段落番号0076~0099の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0208】
酸基を有する樹脂の酸価は、30~200mgKOH/gが好ましい。下限は、50mgKOH/g以上が好ましく、70mgKOH/g以上がより好ましい。上限は、150mgKOH/g以下が好ましく、120mgKOH/g以下がより好ましい。
【0209】
酸基を有する樹脂としては、例えば下記構造の樹脂などが挙げられる。以下の構造式中、Meはメチル基を表す。
【化42】
【0210】
本発明の感光性組成物は、分散剤としての樹脂を含むこともできる。分散剤は、酸性分散剤(酸性樹脂)、塩基性分散剤(塩基性樹脂)が挙げられる。ここで、酸性分散剤(酸性樹脂)とは、酸基の量が塩基性基の量よりも多い樹脂を表す。酸性分散剤(酸性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、酸基の量が70モル%以上を占める樹脂が好ましく、実質的に酸基のみからなる樹脂がより好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)が有する酸基は、カルボキシル基が好ましい。酸性分散剤(酸性樹脂)の酸価は、40~105mgKOH/gが好ましく、50~105mgKOH/gがより好ましく、60~105mgKOH/gがさらに好ましい。また、塩基性分散剤(塩基性樹脂)とは、塩基性基の量が酸基の量よりも多い樹脂を表す。塩基性分散剤(塩基性樹脂)は、酸基の量と塩基性基の量の合計量を100モル%としたときに、塩基性基の量が50モル%を超える樹脂が好ましい。塩基性分散剤が有する塩基性基は、アミノ基であることが好ましい。
【0211】
分散剤として用いられる樹脂は、グラフト共重合体であることも好ましい。グラフト共重合体の詳細は、特開2012-255128号公報の段落番号0025~0094の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明において、分散剤として用いられる樹脂は、主鎖及び側鎖の少なくとも一方に窒素原子を含むオリゴイミン系共重合体であることも好ましい。オリゴイミン系共重合体については、特開2012-255128号公報の段落番号0102~0174の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、Disperbyk-111(BYKChemie社製)、ソルスパース76500(日本ルーブリゾール(株)製)などが挙げられる。また、特開2014-130338号公報の段落番号0041~0130に記載された顔料分散剤を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、上述した酸基を有する樹脂などを分散剤として用いることもできる。
【0212】
感光性組成物の全固形分中における樹脂の含有量は50質量%以下であることが好ましく、35質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることが更に好ましく、10質量%以下であることがより一層好ましい。また、本発明の感光性組成物は樹脂を実質的に含まないことも好ましい。本発明の感光性組成物が他の樹脂を実質的に含まない場合とは、本発明の感光性組成物の全固形分に対する樹脂の含有量が0.5質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0213】
<<環状エーテル基を有する化合物>>
本発明の感光性組成物は、更に環状エーテル基を有する化合物を含有することができる。環状エーテル基としては、エポキシ基、オキセタニル基などが挙げられる。環状エーテル基を有する化合物は、エポキシ基を有する化合物であることが好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、1分子内にエポキシ基を1つ以上有する化合物が挙げられ、エポキシ基を2つ以上有する化合物が好ましい。エポキシ基は、1分子内に1~100個有することが好ましい。エポキシ基の上限は、例えば、10個以下とすることもでき、5個以下とすることもできる。エポキシ基の下限は、2個以上が好ましい。エポキシ基を有する化合物としては、特開2013-011869号公報の段落番号0034~0036、特開2014-043556号公報の段落番号0147~0156、特開2014-089408号公報の段落番号0085~0092に記載された化合物、特開2017-179172号公報に記載された化合物を用いることもできる。これらの内容は、本明細書に組み込まれる。
【0214】
エポキシ基を有する化合物は、低分子化合物(例えば、分子量2000未満、さらには、分子量1000未満)でもよいし、高分子化合物(macromolecule)(例えば、分子量1000以上、ポリマーの場合は、重量平均分子量が1000以上)のいずれでもよい。エポキシ基を有する化合物の重量平均分子量は、200~100000が好ましく、500~50000がより好ましい。重量平均分子量の上限は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
【0215】
環状エーテル基を有する化合物の市販品としては、例えば、EHPE3150((株)ダイセル製)、EPICLON N-695(DIC(株)製)、マープルーフG-0150M、G-0105SA、G-0130SP、G-0250SP、G-1005S、G-1005SA、G-1010S、G-2050M、G-01100、G-01758(以上、日油(株)製、エポキシ基含有ポリマー)等が挙げられる。
【0216】
本発明の感光性組成物が環状エーテル基を有する化合物を含有する場合、感光性組成物の全固形分中における環状エーテル基を有する化合物の含有量は、0.1~20質量%が好ましい。下限は、例えば0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。上限は、例えば、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましい。環状エーテル基を有する化合物は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0217】
<<シランカップリング剤>>
本発明の感光性組成物は、シランカップリング剤を含有することができる。この態様によれば、得られる膜の支持体との密着性を向上させることができる。本発明において、シランカップリング剤は、加水分解性基とそれ以外の官能基とを有するシラン化合物を意味する。また、加水分解性基とは、ケイ素原子に直結し、加水分解反応及び縮合反応の少なくともいずれかによってシロキサン結合を生じ得る置換基をいう。加水分解性基としては、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基などが挙げられ、アルコキシ基が好ましい。すなわち、シランカップリング剤は、アルコキシシリル基を有する化合物が好ましい。また、加水分解性基以外の官能基としては、例えば、ビニル基、(メタ)アリル基、(メタ)アクリロイル基、メルカプト基、エポキシ基、オキセタニル基、アミノ基、ウレイド基、スルフィド基、イソシアネート基、フェニル基などが挙げられ、アミノ基、(メタ)アクリロイル基およびエポキシ基が好ましい。シランカップリング剤の具体例としては、特開2009-288703号公報の段落番号0018~0036に記載の化合物、特開2009-242604号公報の段落番号0056~0066に記載の化合物が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0218】
感光性組成物の全固形分中におけるシランカップリング剤の含有量は、0.1~5質量%が好ましい。上限は、3質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましい。下限は、0.5質量%以上が好ましく、1質量%以上がより好ましい。シランカップリング剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0219】
<<顔料誘導体>>
本発明の感光性組成物は、更に顔料誘導体を含有することができる。顔料誘導体としては、顔料の一部を、酸基、塩基性基、塩構造を有する基又はフタルイミドメチル基で置換した構造を有する化合物が挙げられる。顔料誘導体としては、式(B1)で表される化合物が好ましい。
【0220】
【化43】
式(B1)中、Pは色素構造を表し、Lは単結合または連結基を表し、Xは酸基、塩基性基、塩構造を有する基またはフタルイミドメチル基を表し、mは1以上の整数を表し、nは1以上の整数を表し、mが2以上の場合は複数のLおよびXは互いに異なっていてもよく、nが2以上の場合は複数のXは互いに異なっていてもよい。
【0221】
Pが表す色素構造としては、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造、アントラキノン色素構造、ジアントラキノン色素構造、ベンゾイソインドール色素構造、チアジンインジゴ色素構造、アゾ色素構造、キノフタロン色素構造、フタロシアニン色素構造、ナフタロシアニン色素構造、ジオキサジン色素構造、ペリレン色素構造、ペリノン色素構造、ベンゾイミダゾロン色素構造、ベンゾチアゾール色素構造、ベンゾイミダゾール色素構造およびベンゾオキサゾール色素構造から選ばれる少なくとも1種が好ましく、ピロロピロール色素構造、ジケトピロロピロール色素構造、キナクリドン色素構造およびベンゾイミダゾロン色素構造から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0222】
Lが表す連結基としては、炭化水素基、複素環基、-NR-、-SO2-、-S-、-O-、-CO-もしくはこれらの組み合わせからなる基が挙げられる。Rは水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。
【0223】
Xが表す酸基としては、カルボキシル基、スルホ基、カルボン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド酸基等が挙げられる。カルボン酸アミド基としては、-NHCORX1で表される基が好ましい。スルホン酸アミド基としては、-NHSO2RX2で表される基が好ましい。イミド酸基としては、-SO2NHSO2RX3、-CONHSO2RX4、-CONHCORX5または-SO2NHCORX6で表される基が好ましい。RX1~RX6は、それぞれ独立に、炭化水素基または複素環基を表す。RX1~RX6が表す、炭化水素基および複素環基は、さらに置換基を有してもよい。さらなる置換基としては、ハロゲン原子であることが好ましく、フッ素原子であることがより好ましい。Xが表す塩基性基としてはアミノ基が挙げられる。Xが表す塩構造としては、上述した酸基または塩基性基の塩が挙げられる。
【0224】
顔料誘導体としては、下記構造の化合物が挙げられる。また、特開昭56-118462号公報、特開昭63-264674号公報、特開平1-217077号公報、特開平3-9961号公報、特開平3-26767号公報、特開平3-153780号公報、特開平3-45662号公報、特開平4-285669号公報、特開平6-145546号公報、特開平6-212088号公報、特開平6-240158号公報、特開平10-30063号公報、特開平10-195326号公報、国際公開WO2011/024896号公報の段落番号0086~0098、国際公開WO2012/102399号公報の段落番号0063~0094、国際公開WO2017/038252号公報の段落番号0082等に記載の化合物を用いることもでき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【化44】
【0225】
顔料誘導体の含有量は、顔料100質量部に対し、1~50質量部が好ましい。下限値は、3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。上限値は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。顔料誘導体の含有量が上記範囲であれば、顔料の分散性を高めて、顔料の凝集を効率よく抑制できる。顔料誘導体は1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0226】
<<溶剤>>
本発明の感光性組成物は、溶剤を含有することができる。溶剤としては、有機溶剤が挙げられる。溶剤は、各成分の溶解性や組成物の塗布性を満足すれば基本的には特に制限はない。有機溶剤の例としては、例えば、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらの詳細については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0223を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。また、環状アルキル基が置換したエステル系溶剤、環状アルキル基が置換したケトン系溶剤を好ましく用いることもできる。有機溶剤の具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジクロロメタン、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、酢酸シクロヘキシル、シクロペンタノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。本発明において有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミドも溶解性向上の観点から好ましい。ただし溶剤としての芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等)は、環境面等の理由により低減したほうがよい場合がある(例えば、有機溶剤全量に対して、50質量ppm(parts per million)以下とすることもでき、10質量ppm以下とすることもでき、1質量ppm以下とすることもできる)。
【0227】
本発明においては、金属含有量の少ない溶剤を用いることが好ましく、溶剤の金属含有量は、例えば10質量ppb(parts per billion)以下であることが好ましい。必要に応じて質量ppt(parts per trillion)レベルの溶剤を用いてもよく、そのような高純度溶剤は例えば東洋合成社が提供している(化学工業日報、2015年11月13日)。
【0228】
溶剤から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、蒸留(分子蒸留や薄膜蒸留等)やフィルタを用いたろ過を挙げることができる。ろ過に用いるフィルタのフィルタ孔径としては、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましい。フィルタの材質は、ポリテトラフロロエチレン、ポリエチレンまたはナイロンが好ましい。
【0229】
溶剤は、異性体(原子数が同じであるが構造が異なる化合物)が含まれていてもよい。また、異性体は、1種のみが含まれていてもよいし、複数種含まれていてもよい。
【0230】
本発明において、有機溶剤は、過酸化物の含有率が0.8mmol/L以下であることが好ましく、過酸化物を実質的に含まないことがより好ましい。
【0231】
感光性組成物中における溶剤の含有量は、10~95質量%であることが好ましく、20~90質量%であることがより好ましく、30~90質量%であることが更に好ましい。
【0232】
また、本発明の感光性組成物は、環境規制の観点から環境規制物質を実質的に含有しないことが好ましい。なお、本発明において、環境規制物質を実質的に含有しないとは、感光性組成物中における環境規制物質の含有量が50質量ppm以下であることを意味し、30質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以下であることが更に好ましく、1質量ppm以下であることが特に好ましい。環境規制物質は、例えばベンゼン;トルエン、キシレン等のアルキルベンゼン類;クロロベンゼン等のハロゲン化ベンゼン類等が挙げられる。これらは、REACH(Registration Evaluation Authorization and Restriction of CHemicals)規則、PRTR(Pollutant Release and Transfer Register)法、VOC(Volatile Organic Compounds)規制等のもとに環境規制物質として登録されており、使用量や取り扱い方法が厳しく規制されている。これらの化合物は、本発明の感光性組成物に用いられる各成分などを製造する際に溶媒として用いられることがあり、残留溶媒として感光性組成物中に混入することがある。人への安全性、環境への配慮の観点よりこれらの物質は可能な限り低減することが好ましい。環境規制物質を低減する方法としては、系中を加熱や減圧して環境規制物質の沸点以上にして系中から環境規制物質を留去して低減する方法が挙げられる。また、少量の環境規制物質を留去する場合においては、効率を上げる為に該当溶媒と同等の沸点を有する溶媒と共沸させることも有用である。また、ラジカル重合性を有する化合物を含有する場合、減圧留去中にラジカル重合反応が進行して分子間で架橋してしまうことを抑制するために重合禁止剤等を添加して減圧留去してもよい。これらの留去方法は、原料の段階、原料を反応させた生成物(例えば重合した後の樹脂溶液や多官能モノマー溶液)の段階、またはこれらの化合物を混ぜて作製した組成物の段階いずれの段階でも可能である。
【0233】
<<重合禁止剤>>
本発明の感光性組成物は、重合禁止剤を含有することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’-チオビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミン塩(アンモニウム塩、第一セリウム塩等)が挙げられる。中でも、p-メトキシフェノールが好ましい。感光性組成物の全固形分中における重合禁止剤の含有量は、0.001~5質量%が好ましい。
【0234】
<<界面活性剤>>
本発明の感光性組成物は、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用することができる。界面活性剤については、国際公開WO2015/166779号公報の段落番号0238~0245を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0235】
本発明において、界面活性剤はフッ素系界面活性剤であることが好ましい。感光性組成物にフッ素系界面活性剤を含有させることで液特性(特に、流動性)がより向上し、省液性をより改善することができる。また、厚みムラの小さい膜を形成することもできる。
【0236】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3~40質量%が好適であり、より好ましくは5~30質量%であり、特に好ましくは7~25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、組成物中における溶解性も良好である。
【0237】
フッ素系界面活性剤としては、特開2014-41318号公報の段落番号0060~0064(対応する国際公開2014/17669号公報の段落番号0060~0064)等に記載の界面活性剤、特開2011-132503号公報の段落番号0117~0132に記載の界面活性剤が挙げられ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。フッ素系界面活性剤の市販品としては、例えば、メガファックF171、F172、F173、F176、F177、F141、F142、F143、F144、R30、F437、F475、F479、F482、F554、F780、EXP、MFS-330(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、FC431、FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS-382、SC-101、SC-103、SC-104、SC-105、SC-1068、SC-381、SC-383、S-393、KH-40(以上、旭硝子(株)製)、PolyFox PF636、PF656、PF6320、PF6520、PF7002(以上、OMNOVA社製)等が挙げられる。
【0238】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を含有する官能基を持つ分子構造を有し、熱を加えるとフッ素原子を含有する官能基の部分が切断されてフッ素原子が揮発するアクリル系化合物も好適に使用できる。このようなフッ素系界面活性剤としては、DIC(株)製のメガファックDSシリーズ(化学工業日報、2016年2月22日)(日経産業新聞、2016年2月23日)、例えばメガファックDS-21が挙げられる。
【0239】
また、フッ素系界面活性剤は、フッ素化アルキル基またはフッ素化アルキレンエーテル基を有するフッ素原子含有ビニルエーテル化合物と、親水性のビニルエーテル化合物との重合体を用いることも好ましい。このようなフッ素系界面活性剤は、特開2016-216602号公報の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0240】
フッ素系界面活性剤は、ブロックポリマーを用いることもできる。例えば特開2011-89090号公報に記載された化合物が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、フッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、アルキレンオキシ基(好ましくはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基)を2以上(好ましくは5以上)有する(メタ)アクリレート化合物に由来する繰り返し単位と、を含む含フッ素高分子化合物も好ましく用いることができる。下記化合物も本発明で用いられるフッ素系界面活性剤として例示される。
【化45】
上記の化合物の重量平均分子量は、好ましくは3,000~50,000であり、例えば、14,000である。上記の化合物中、繰り返し単位の割合を示す%はモル%である。
【0241】
また、フッ素系界面活性剤は、エチレン性不飽和結合基を側鎖に有する含フッ素重合体を用いることもできる。具体例としては、特開2010-164965号公報の段落番号0050~0090および段落番号0289~0295に記載された化合物、例えばDIC(株)製のメガファックRS-101、RS-102、RS-718K、RS-72-K等が挙げられる。フッ素系界面活性剤は、特開2015-117327号公報の段落番号0015~0158に記載の化合物を用いることもできる。
【0242】
ノニオン系界面活性剤としては、グリセロール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン並びにそれらのエトキシレート及びプロポキシレート(例えば、グリセロールプロポキシレート、グリセロールエトキシレート等)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、プルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2(BASF社製)、テトロニック304、701、704、901、904、150R1(BASF社製)、ソルスパース20000(日本ルーブリゾール(株)製)、NCW-101、NCW-1001、NCW-1002(和光純薬工業(株)製)、パイオニンD-6112、D-6112-W、D-6315(竹本油脂(株)製)、オルフィンE1010、サーフィノール104、400、440(日信化学工業(株)製)などが挙げられる。
【0243】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーンDC3PA、トーレシリコーンSH7PA、トーレシリコーンDC11PA、トーレシリコーンSH21PA、トーレシリコーンSH28PA、トーレシリコーンSH29PA、トーレシリコーンSH30PA、トーレシリコーンSH8400(以上、東レ・ダウコーニング(株)製)、TSF-4440、TSF-4300、TSF-4445、TSF-4460、TSF-4452(以上、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)、KP-341、KF-6001、KF-6002(以上、信越シリコーン株式会社製)、BYK307、BYK323、BYK330(以上、ビックケミー社製)等が挙げられる。また、シリコン系界面活性剤は、下記構造の化合物を用いることもできる。
【化46】
【0244】
感光性組成物の全固形分中における界面活性剤の含有量は、0.001質量%~5.0質量%が好ましく、0.005~3.0質量%がより好ましい。界面活性剤は、1種のみでもよく、2種以上でもよい。2種以上の場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0245】
<<紫外線吸収剤>>
本発明の感光性組成物は、紫外線吸収剤を含有することができる。紫外線吸収剤は、共役ジエン化合物、アミノジエン化合物、サリシレート化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンゾトリアゾール化合物、アクリロニトリル化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン化合物、インドール化合物、トリアジン化合物などを用いることができる。これらの詳細については、特開2012-208374号公報の段落番号0052~0072、特開2013-68814号公報の段落番号0317~0334、特開2016-162946号公報の段落番号0061~0080の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。紫外線吸収剤の具体例としては、下記構造の化合物などが挙げられる。紫外線吸収剤の市販品としては、例えば、UV-503(大東化学(株)製)などが挙げられる。また、ベンゾトリアゾール化合物としては、ミヨシ油脂製のMYUAシリーズ(化学工業日報、2016年2月1日)が挙げられる。
【化47】
【0246】
感光性組成物の全固形分中における紫外線吸収剤の含有量は、0.01~10質量%が好ましく、0.01~5質量%がより好ましい。本発明において、紫外線吸収剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0247】
<<酸化防止剤>>
本発明の感光性組成物は、酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤としては、フェノール化合物、亜リン酸エステル化合物、チオエーテル化合物などが挙げられる。フェノール化合物としては、フェノール系酸化防止剤として知られる任意のフェノール化合物を使用することができる。好ましいフェノール化合物としては、ヒンダードフェノール化合物が挙げられる。フェノール性ヒドロキシ基に隣接する部位(オルト位)に置換基を有する化合物が好ましい。前述の置換基としては炭素数1~22の置換又は無置換のアルキル基が好ましい。また、酸化防止剤は、同一分子内にフェノール基と亜リン酸エステル基を有する化合物も好ましい。また、酸化防止剤は、リン系酸化防止剤も好適に使用することができる。リン系酸化防止剤としてはトリス[2-[[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、トリス[2-[(4,6,9,11-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン-2-イル)オキシ]エチル]アミン、亜リン酸エチルビス(2,4-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)などが挙げられる。酸化防止剤の市販品としては、例えば、アデカスタブ AO-20、アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-50F、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-60G、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-330(以上、(株)ADEKA)などが挙げられる。また、酸化防止剤として、国際公開WO2017/006600号公報に記載された多官能ヒンダードアミン酸化防止剤、国際公開WO2017/164024号公報に記載された酸化防止剤を用いることもできる。
【0248】
感光性組成物の全固形分中における酸化防止剤の含有量は、0.01~20質量%であることが好ましく、0.3~15質量%であることがより好ましい。酸化防止剤は1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0249】
<<その他成分>>
本発明の感光性組成物は、必要に応じて、増感剤、硬化促進剤、フィラー、熱硬化促進剤、可塑剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を含有してもよい。これらの成分を適宜含有させることにより、膜物性などの性質を調整することができる。これらの成分は、例えば、特開2012-003225号公報の段落番号0183以降(対応する米国特許出願公開第2013/0034812号明細書の段落番号0237)の記載、特開2008-250074号公報の段落番号0101~0104、0107~0109等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。また、本発明の感光性組成物は、必要に応じて、潜在酸化防止剤を含有してもよい。潜在酸化防止剤としては、酸化防止剤として機能する部位が保護基で保護された化合物であって、100~250℃で加熱するか、又は酸/塩基触媒存在下で80~200℃で加熱することにより保護基が脱離して酸化防止剤として機能する化合物が挙げられる。潜在酸化防止剤としては、国際公開WO2014/021023号公報、国際公開WO2017/030005号公報、特開2017-008219号公報に記載された化合物が挙げられる。市販品としては、アデカアークルズGPA-5001((株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0250】
本発明の感光性組成物の粘度(23℃)は、例えば、塗布により膜を形成する場合、1~100mPa・sであることが好ましい。下限は、2mPa・s以上がより好ましく、3mPa・s以上が更に好ましい。上限は、50mPa・s以下がより好ましく、30mPa・s以下が更に好ましく、15mPa・s以下が特に好ましい。
【0251】
<収容容器>
本発明の感光性組成物の収容容器としては、特に限定はなく、公知の収容容器を用いることができる。また、収容容器として、原材料や組成物中への不純物混入を抑制することを目的に、容器内壁を6種6層の樹脂で構成する多層ボトルや6種の樹脂を7層構造にしたボトルを使用することも好ましい。このような容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0252】
<感光性組成物の調製方法>
本発明の感光性組成物は、前述の成分を混合して調製できる。感光性組成物の調製に際しては、全成分を同時に溶剤に溶解または分散して感光性組成物を調製してもよいし、必要に応じては、各成分を適宜配合した2つ以上の溶液または分散液をあらかじめ調製し、使用時(塗布時)にこれらを混合して感光性組成物として調製してもよい。
【0253】
また、本発明の感光性組成物が顔料などの粒子を含む場合は、粒子を分散させるプロセスを含むことが好ましい。粒子を分散させるプロセスにおいて、粒子の分散に用いる機械力としては、圧縮、圧搾、衝撃、剪断、キャビテーションなどが挙げられる。これらプロセスの具体例としては、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、マイクロフルイダイザー、高速インペラー、サンドグラインダー、フロージェットミキサー、高圧湿式微粒化、超音波分散などが挙げられる。またサンドミル(ビーズミル)における粒子の粉砕においては、径の小さいビーズを使用する、ビーズの充填率を大きくする事等により粉砕効率を高めた条件で処理することが好ましい。また、粉砕処理後にろ過、遠心分離などで粗粒子を除去することが好ましい。また、粒子を分散させるプロセスおよび分散機は、「分散技術大全、株式会社情報機構発行、2005年7月15日」や「サスペンション(固/液分散系)を中心とした分散技術と工業的応用の実際 総合資料集、経営開発センター出版部発行、1978年10月10日」、特開2015-157893号公報の段落番号0022に記載のプロセス及び分散機を好適に使用出来る。また粒子を分散させるプロセスにおいては、ソルトミリング工程にて粒子の微細化処理を行ってもよい。ソルトミリング工程に用いられる素材、機器、処理条件等は、例えば特開2015-194521号公報、特開2012-046629号公報の記載を参酌できる。
【0254】
本発明の感光性組成物の調製にあたり、異物の除去や欠陥の低減などの目的で感光性組成物をフィルタでろ過することが好ましい。フィルタとしては、従来からろ過用途等に用いられているフィルタであれば特に限定されることなく用いることができる。例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ナイロン(例えばナイロン-6、ナイロン-6,6)等のポリアミド系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量のポリオレフィン樹脂を含む)等の素材を用いたフィルタが挙げられる。これら素材の中でもポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)およびナイロンが好ましい。フィルタの孔径は、0.01~7.0μm程度が適しており、好ましくは0.01~3.0μm程度であり、更に好ましくは0.05~0.5μm程度である。フィルタの孔径が上記範囲であれば、微細な異物を確実に除去できる。また、ファイバ状のろ材を用いることも好ましい。ファイバ状のろ材としては、例えばポリプロピレンファイバ、ナイロンファイバ、グラスファイバ等が挙げられる。具体的には、ロキテクノ社製のSBPタイプシリーズ(SBP008など)、TPRタイプシリーズ(TPR002、TPR005など)、SHPXタイプシリーズ(SHPX003など)のフィルタカートリッジが挙げられる。フィルタを使用する際、異なるフィルタ(例えば、第1のフィルタと第2のフィルタなど)を組み合わせてもよい。その際、各フィルタでのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。また、上述した範囲内で異なる孔径のフィルタを組み合わせてもよい。また、第1のフィルタでのろ過は、分散液のみに対して行い、他の成分を混合した後で、第2のフィルタでろ過を行ってもよい。
【0255】
<光学フィルタの製造方法>
次に、本発明の感光性組成物を用いた光学フィルタの製造方法について説明する。光学フィルタの種類としては、カラーフィルタ、赤外線透過フィルタなどが挙げられる。
本発明における光学フィルタの製造方法は、上述した本発明の感光性組成物を支持体上に適用して感光性組成物層を形成する工程(感光性組成物層形成工程)と、感光性組成物層に対して光をパルス的に照射してパターン状に露光(パルス露光)する工程(露光工程)と、未露光部の感光性組成物層を現像除去して画素を形成する工程(現像工程)と、を含むことが好ましい。以下、各工程について説明する。
【0256】
(感光性組成物層形成工程)
感光性組成物層形成工程では、上述した本発明の感光性組成物を支持体上に適用して感光性組成物層を形成する。支持体としては、例えば、シリコン、無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラスなどの材質で構成された基板が挙げられる。また、InGaAs基板などを用いることも好ましい。また、支持体には、電荷結合素子(CCD)、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)、透明導電膜などが形成されていてもよい。また、支持体には、各画素を隔離するブラックマトリクスが形成されている場合もある。また、支持体には、必要により、上部の層との密着性改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層が設けられていてもよい。
【0257】
支持体への感光性組成物の適用方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、滴下法(ドロップキャスト);スリットコート法;スプレー法;ロールコート法;回転塗布法(スピンコーティング);流延塗布法;スリットアンドスピン法;プリウェット法(たとえば、特開2009-145395号公報に記載されている方法);インクジェット(例えばオンデマンド方式、ピエゾ方式、サーマル方式)、ノズルジェット等の吐出系印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、反転オフセット印刷、メタルマスク印刷法などの各種印刷法;金型等を用いた転写法;ナノインプリント法などが挙げられる。インクジェットでの適用方法としては、特に限定されず、例えば「広がる・使えるインクジェット-特許に見る無限の可能性-、2005年2月発行、住ベテクノリサーチ」に示された方法(特に115~133ページ)や、特開2003-262716号公報、特開2003-185831号公報、特開2003-261827号公報、特開2012-126830号公報、特開2006-169325号公報などに記載の方法が挙げられる。また、感光性組成物の適用方法については、国際公開WO2017/030174号公報、国際公開WO2017/018419号公報の記載された方法を用いることもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0258】
支持体に感光性組成物を適用した後、更に乾燥(プリベーク)を行ってもよい。プリベークを行う場合、プリベーク温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。下限は、例えば、50℃以上とすることができ、80℃以上とすることもできる。プリベーク時間は、10~3000秒が好ましく、40~2500秒がより好ましく、80~2200秒が更に好ましい。乾燥は、ホットプレート、オーブン等で行うことができる。
【0259】
(露光工程)
次に、上述のようにして形成した支持体上の感光性組成物層に対して、光をパルス的に照射してパターン状に露光(パルス露光)する。感光性組成物層に対し、所定のマスクパターンを有するマスクを介してパルス露光することで、感光性組成物層をパターン状にパルス露光することができる。これにより、感光性組成物層の露光部分を硬化することができる。
【0260】
パルス露光に際して用いる光は、波長300nmを超える光であってもよく、波長300nm以下の光であってもよいが、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由から波長300nm以下の光であることが好ましく、波長270nm以下の光であることがより好ましく、波長250nm以下の光であることが更に好ましい。また、前述の光は、波長180nm以上の光であることが好ましい。具体的には、KrF線(波長248nm)、ArF線(波長193nm)などが挙げられ、本発明の効果がより顕著に得られやすいという理由からKrF線(波長248nm)が好ましい。
【0261】
パルス露光条件は次の条件であることが好ましい。パルス幅は、瞬間的にラジカル等の活性種を大量に発生させ易いという理由から100ナノ秒(ns)以下であることが好ましく、50ナノ秒以下であることがより好ましく、30ナノ秒以下であることが更に好ましい。パルス幅の下限は、特に限定はないが、1フェムト秒(fs)以上とすることができ、10フェムト秒以上とすることもできる。周波数は、露光熱によってラジカル重合性化合物を熱重合させてより耐溶剤性、耐湿性、耐熱拡散性などに優れた膜を形成し易いという理由から1kHz以上であることが好ましく、2kHz以上であることがより好ましく、4kHz以上であることが更に好ましい。周波数の上限は、露光熱による基板などの変形を抑制させ易いという理由から50kHz以下であることが好ましく、20kHz以下であることがより好ましく、10kHz以下であることが更に好ましい。最大瞬間照度は、硬化性の観点から50000000W/m2以上であることが好ましく、100000000W/m2以上であることがより好ましく、200000000W/m2以上であることが更に好ましい。また、最大瞬間照度の上限は、高照度不軌抑制の観点から1000000000W/m2以下であることが好ましく、800000000W/m2以下であることがより好ましく、500000000W/m2以下であることが更に好ましい。露光量は、1~1000mJ/cm2が好ましい。上限は500mJ/cm2以下が好ましく、200mJ/cm2以下がより好ましい。下限は、10mJ/cm2以上が好ましく、20mJ/cm2以上がより好ましく、30mJ/cm2以上が更に好ましい。
【0262】
露光時における酸素濃度については適宜選択することができ、大気下で行う他に、例えば酸素濃度が19体積%以下の低酸素雰囲気下(例えば、15体積%、5体積%、実質的に無酸素)で露光してもよく、酸素濃度が21体積%を超える高酸素雰囲気下(例えば、22体積%、30体積%、50体積%)で露光してもよい。
【0263】
(現像工程)
次に、露光工程後の感光性組成物層における未露光部の感光性組成物層を現像除去して画素(パターン)を形成する。未露光部の感光性組成物層の現像除去は、現像液を用いて行うことができる。これにより、未露光部の感光性組成物層が現像液に溶出し、上記の露光工程で光硬化した部分だけが支持体上に残る。現像液の温度は、例えば、20~30℃が好ましい。現像時間は、20~180秒が好ましい。また、残渣除去性を向上するため、現像液を60秒ごとに振り切り、更に新たに現像液を供給する工程を数回繰り返してもよい。
【0264】
現像液は、アルカリ剤を純水で希釈したアルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ剤としては、例えば、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ジグリコールアミン、ジエタノールアミン、ヒドロキシアミン、エチレンジアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、エチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ジメチルビス(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウムなどの無機アルカリ性化合物が挙げられる。アルカリ剤は、分子量が大きい化合物の方が環境面および安全面で好ましい。アルカリ性水溶液のアルカリ剤の濃度は、0.001~10質量%が好ましく、0.01~1質量%がより好ましい。また、現像液は、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、上述した界面活性剤が挙げられ、ノニオン系界面活性剤が好ましい。現像液は、移送や保管の便宜などの観点より、一旦濃縮液として製造し、使用時に必要な濃度に希釈してもよい。希釈倍率は特に限定されないが、例えば1.5~100倍の範囲に設定することができる。なお、アルカリ性水溶液を現像液として使用した場合には、現像後純水で洗浄(リンス)することが好ましい。
【0265】
現像後、乾燥を施した後に追加露光処理や加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。追加露光処理や、ポストベークは、膜の硬化を完全なものとするための現像後の処理である。追加露光処理を行う場合、露光に用いられる光は、波長400nm以下の光であることが好ましい。
【0266】
形成される画素(パターン)の膜厚としては、画素の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、2.0μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましく、0.3~1.0μmが更に好ましい。上限は、0.8μm以下が好ましく、0.6μm以下がより好ましい。下限値は、0.4μm以上が好ましい。
【0267】
また、形成される画素(パターン)のサイズ(線幅)としては、用途や、画素の種類に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、2.0μm以下が好ましい。上限は、1.0μm以下が好ましく、0.9μm以下がより好ましい。下限値は、0.4μm以上が好ましい。
【0268】
複数種類の画素を有する光学フィルタを製造する場合、少なくとも1種類の画素を上述した工程を経て形成すればよく、最初に形成する画素(1種類目の画素)を上述した工程を経て形成することが好ましい。2番目以降に形成する画素(2種類目以降の画素)については、上記と同様の工程を経て形成してもよく、露光を連続光で行って画素を形成してもよい。
【実施例】
【0269】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0270】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
測定サンプルの重量平均分子量(Mw)は、以下の条件に従って、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によって測定した。
カラムの種類:TOSOH TSKgel Super HZM-Hと、TOSOH TSKgel Super HZ4000と、TOSOH TSKgel Super HZ2000とを連結したカラム
展開溶媒:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
流量(サンプル注入量):1.0μL(サンプル濃度0.1質量%)
装置名:東ソー(株)製 HLC-8220GPC
検出器:RI(屈折率)検出器
検量線ベース樹脂:ポリスチレン樹脂
【0271】
<酸価の測定方法>
測定サンプルをテトラヒドロフラン/水=9/1(質量比)混合溶媒に溶解し、電位差滴定装置(商品名:AT-510、京都電子工業製)を用いて、得られた溶液を、25℃にて、0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定した。滴定pH曲線の変曲点を滴定終点として、次式により酸価を算出した。
A=56.11×Vs×0.5×f/w
A:酸価(mgKOH/g)
Vs:滴定に要した0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液の力価
w:測定サンプル質量(g)(固形分換算)
【0272】
<分散液の調製>
下記の表に記載の原料を混合して混合液を得た。得られた混合液を、循環型分散装置(ビーズミル)として寿工業株式会社製のウルトラアペックスミル(商品名)を用いて分散処理を行い、分散液を得た。得られた分散液の固形分は20.0質量%であった。
【0273】
【0274】
上記表に記載の原料は以下の通りである。
【0275】
(顔料)
PG36: C.I.Pigment Green36
PG58: C.I.Pigment Green58
PY139: C.I.Pigment Yellow139
PY150: C.I.Pigment Yellow150
PY185: C.I.Pigment Yellow185
PB15:6: C.I.Pigment Blue15:6
PV23: C.I.Pigment Violet23
PR254: C.I.Pigment Red254
【0276】
(分散剤)
分散剤1:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:0.7mmol/g、酸価:72mgKOH/g)
【化48】
分散剤2:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:0.7mmol/g、酸価:50mgKOH/g)
【化49】
分散剤3:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:0.8mmol/g、酸価:98mgKOH/g)
【化50】
分散剤4:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:0.8mmol/g、酸価:75mgKOH/g)
【化51】
分散剤5:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:0.4mmol/g、酸価:90mgKOH/g)
【化52】
分散剤6:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:5000、C=C価:0.7mmol/g、酸価:72mgKOH/g)
【化53】
分散剤7:下記構造の化合物(主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、酸価:50mgKOH/g)
【化54】
分散剤8:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:0.7mmol/g、酸価:20mgKOH/g)
【化55】
分散剤9:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:0.7mmol/g、酸価:158mgKOH/g)
【化56】
分散剤10:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:0.15mmol/g、酸価:69mgKOH/g)
【化57】
分散剤11:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:20000、C=C価:3.1mmol/g、酸価:41mgKOH/g)
【化58】
分散剤12:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:4000、C=C価:0.7mmol/g、酸価:72mgKOH/g)
【化59】
分散剤13:下記構造の化合物(重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物。主鎖に付記した数値はモル比であり、側鎖に付記した数値は繰り返し単位の数である。Mw:50000、C=C価:0.7mmol/g、酸価:72mgKOH/g)
【化60】
【0277】
溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0278】
<感光性組成物の調製>
(緑色組成物)
下記表に記載の原料を混合して感光性組成物(緑色組成物1~30、R1)を調製した。
【0279】
【0280】
上記表に記載の原料は以下の通りである。
【0281】
アルカリ可溶性樹脂1:下記構造の樹脂(主鎖に付記した数値はモル比である。Mw:14000、酸価:40mgKOH/g)
【化61】
【0282】
ラジカル重合性モノマー1:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(分子量:352、C=C価:11.4mmol/g)
ラジカル重合性モノマー2:KAYARAD DPHA(日本化薬(株)製、分子量3000未満)
ラジカル重合性モノマー3: アロニックスM-350(東亞合成(株)製、分子量3000未満)
ラジカル重合性モノマー4:下記構造の化合物(分子量:899)
【化62】
【0283】
ラジカル重合性モノマー5:フェノキシエチルアクリレート(分子量:192)
【0284】
光ラジカル重合開始剤1:下記構造の化合物(量子収率(溶液:355nmパルス露光):0.41、量子収率(膜:265nmパルス露光):0.19、ラジカル発生量(膜:265nmパルス露光):0.0000001mmol/cm
2)
【化63】
【0285】
なお、光ラジカル重合開始剤の量子収率(溶液:355nmパルス露光)は以下の方法で算出した。光ラジカル重合開始剤をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて、光ラジカル重合開始剤を0.035mmol/L含むプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を調製した。この溶液を、1cm×1cm×4cmの光学セルに入れ、分光光度計(Agilent社製、HP8453)を用いて波長355nmの吸光度を測定した。次に、この溶液に対し、波長355nmの光を、最大瞬間照度375000000W/m2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件でパルス露光したのち、パルス露光後の溶液の波長355nmの吸光度を測定した。光ラジカル重合開始剤の量子収率(溶液:355nmパルス露光)は、上記条件でのパルス露光後の光ラジカル重合開始剤の分解分子数を、光ラジカル重合開始剤の吸収フォトン数で割ることで求めた。吸収フォトン数については、上記条件でのパルス露光での露光時間から照射フォトン数を求め、露光前後での355nmの吸光度の平均を透過率に換算し、照射フォトン数に(1-透過率)をかけることで吸収フォトン数を求めた。分解分子数については、露光後の光ラジカル重合開始剤の吸光度から光ラジカル重合開始剤の分解率を求め、分解率に光開始剤の存在分子数をかけることで分解分子数を求めた。
【0286】
また、光ラジカル重合開始剤の量子収率(膜:265nmパルス露光)は以下の方法で算出した。すなわち、光ラジカル重合開始剤の5質量部と、下記構造の樹脂(A)の95質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて固形分20質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を調製し、この溶液をスピンコート法にて石英基板上に塗布し、100℃で120秒間乾燥して厚さ1.0μmの膜を形成した。分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、得られた膜の波長265nmの透過率を測定した(レファレンス:石英基板)。次に、この膜に対して、波長265nmの光を、最大瞬間照度375000000W/m
2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件でパルス露光した後、パルス露光後の膜の透過率を測定した。光ラジカル重合開始剤の量子収率(膜:265nmパルス露光)は、上記条件でのパルス露光後の膜の1cm
2あたりの光ラジカル重合開始剤の分解分子数を、光ラジカル重合開始剤の吸収フォトン数で割ることで求めた。吸収フォトン数については、上記条件でのパルス露光での露光時間から照射フォトン数を求め、膜1cm
2あたりの照射フォトン数に(1-透過率)をかけることで吸収フォトン数を求めた。露光後の膜の1cm
2あたりの光ラジカル重合開始剤の分解分子数については、露光前後の膜の吸光度変化から光ラジカル重合開始剤の分解率を求め、光ラジカル重合開始剤の分解率に1cm
2あたりの膜中の光ラジカル重合開始剤の存在分子数をかけることで求めた。1cm
2あたりの膜中の光ラジカル重合開始剤の存在分子数は、膜密度を1.2g/cm
3として膜面積1cm
2あたりの膜重量を求め、「((1cm
2あたりの膜重量×5質量%(光ラジカル重合開始剤の含有率)/光ラジカル重合開始剤の分子量)×6.02×10
23個(アボガドロ数))」として求めた。
樹脂(A):下記構造の樹脂。繰り返し単位に付記した数値はモル比であり、重量平均分子量は40000であり、分散度(Mn/Mw)は5.0である。
【化64】
【0287】
また、光ラジカル重合開始剤のラジカル発生量(膜:265nmパルス露光)は、以下の方法で算出した値である。すなわち、光ラジカル重合開始剤の5質量部と、上記構造の樹脂(A)の95質量部とをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに溶解させて固形分20質量%のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液を調製し、この溶液をスピンコート法にて石英基板上に塗布し、100℃で120秒間乾燥して厚さ1.0μmの膜を形成した。分光光度計(U-4100、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、得られた膜の波長265nmの透過率を測定した(レファレンス:石英基板)。次に、この膜に対して、波長265nmの光を、最大瞬間照度625000000W/m2、パルス幅8ナノ秒、周波数10Hzの条件で1パルスを露光した後に、パルス露光後の膜の透過率を測定した。波長265nmにおける光ラジカル重合開始剤の量子収率に、(1-膜の透過率)を乗じて、入射フォトン数あたりの分解率を算出し、「1パルスあたりの光子のmol数」×「入射フォトン数あたりの光ラジカル重合開始剤の分解率」から、膜1cm2あたりで分解する光ラジカル重合開始剤の濃度を算出して、光ラジカル重合開始剤のラジカル発生量(膜:265nmパルス露光)を算出した。なお、ラジカル発生量の算出にあたり、光照射によって分解した光ラジカル重合開始剤は全てラジカルとなる(途中で反応して消失しない)と仮定して算出した。
【0288】
界面活性剤1:下記構造の化合物(Mw:14000、繰り返し単位の割合を示す%の数値はモル%である)
【化65】
【0289】
重合禁止剤1:p-メトキシフェノール
【0290】
溶剤1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
【0291】
(青色組成物)
緑色組成物1において、分散液G1のかわりに分散液B1を用いた以外は緑色組成物1と同様にして青色組成物1を調製した。
【0292】
(赤色組成物)
緑色組成物1において、分散液G1のかわりに分散液R1を用いた以外は緑色組成物1と同様にして赤色組成物1を調製した。
【0293】
<フォトリソグラフィ性の評価試験>
上記で得られた各緑色組成物を、塗布後の膜厚が0.5μmになるように、下塗り層付き8インチ(203.2mm)のシリコンウェハ上に東京エレクトロン製Act8を用いてスピンコート法で塗布し、その後ホットプレートを用いて100℃で2分間加熱して組成物層を形成した。次いで、得られた組成物層に対し、KrFスキャナ露光機を用い、1.0μm四方のパターンを有するマスクを介して光を照射して以下の条件でパルス露光を行った。次いで、露光後の組成物層に対し、現像液として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)0.3質量%水溶液を用いて、23℃で60秒間シャワー現像を行った。その後、純水を用いてスピンシャワーにてリンスを行い、パターン(緑色画素)を形成した。
得られたパターンについて、走査型電子顕微鏡(S-4800H、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、倍率20000倍で観察した。観察された画像に基づき、以下の基準にしたがってフォトリソグラフィ性を評価した。フォトリソグラフィ性の評価試験は、各試料につき3回ずつ行い、その結果を総合して判定した。パルス露光条件は以下の通りである。
露光光:KrF線(波長248nm)
露光量:100mJ/cm2
最大瞬間照度:250000000W/m2(平均照度:30000W/m2)
パルス幅:30ナノ秒
周波数:4kHz
(評価基準)
5:パターン四辺の直線性が良く、パターン間に残渣が無い。
4:パターン四辺の直線性が良く、パターン間に残渣が少ない。
3:パターン四辺が僅かに丸く、パターン間に残渣は少ない。
2:パターン四辺が丸く、パターン間の残渣が多い。
1:パターンができない。
【0294】
<耐溶剤性評価>
ソーダガラス(75mm×75mm正方、厚さ1.1mm)上に、上記で得られた各緑色組成物をスピンコーター(H-360S、ミカサ(株)製)で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間プリベークして塗布膜を得た。得られた塗布膜について、KrFスキャナ露光機を用い、上述した条件でパルス露光を行った。続いて、露光後の塗布膜を、空気雰囲気下のホットプレート上で、200℃で5分加熱して、膜厚0.5μmの膜を得た。得られた膜について、大塚電子(株)製のMCPD-3000を用い、400~700nmの範囲の光透過率(透過率)を測定した。
次に、上記で作製した膜をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに5分間漬け、その後純水で洗った(耐溶剤性試験)。耐溶剤性試験を行った後の膜の透過率を測定し、透過率の変化量の最大値を求め、以下の基準にて耐溶剤性を評価した。
透過率の測定は各試料につき5回行い、最大値と最小値を除いた3回の結果の平均値を採用した。また、透過率の変化量の最大値とは、耐溶剤性試験前後の膜の、波長400~700nmの範囲における透過率の変化量が最も大きい波長における変化量を意味する。
(評価基準)
5:透過率の変化量の最大値が3%以下である。
4:透過率の変化量の最大値が3%を超えて、5%以下である。
3:透過率の変化量の最大値が5%を超えて、7%以下である。
2:透過率の変化量の最大値が7%を超えて、10%以下である。
1:透過率の変化量の最大値が10%を超えている。
【0295】
<耐湿性評価>
ソーダガラス(75mm×75mm正方、厚さ1.1mm)上に、上記で得られた各緑色組成物をスピンコーター(H-360S、ミカサ(株)製)で塗布した。次いで、ホットプレートを用いて、100℃で2分間プリベークして塗布膜を得た。得られた塗布膜について、KrFスキャナ露光機を用い、上述した条件でパルス露光を行った。続いて、露光後の塗布膜を、空気雰囲気下のホットプレート上で、200℃で5分加熱して、膜厚0.5μmの膜を得た。得られた膜について、大塚電子(株)製のMCPD-3000を用い、400~700nmの範囲の光透過率(透過率)を測定した。
次に、上記で作製した膜を85℃85%の高温高湿下で1000時間静置した。耐湿性試験を行った後の膜の透過率を測定し、透過率の変化量の最大値を求め、以下の基準にて耐溶剤性を評価した。
透過率の測定は各試料につき5回行い、最大値と最小値を除いた3回の結果の平均値を採用した。また、透過率の変化量の最大値とは、耐湿性試験前後の膜の、波長400~700nmの範囲における透過率の変化量が最も大きい波長における変化量を意味する。
(評価基準)
5:透過率の変化量の最大値が3%以下である。
4:透過率の変化量の最大値が3%を超えて、5%以下である。
3:透過率の変化量の最大値が5%を超えて、7%以下である。
2:透過率の変化量の最大値が7%を超えて、10%以下である。
1:透過率の変化量の最大値が10%を超えている。
【0296】
<耐熱拡散性の評価試験>
下塗り層付き8インチ(203.2mm)のガラスウェハ上に、上記で得られた各緑色組成物を用いて、5.0μm四方のパターンを有するマスクを介して露光する以外はフォトリソグラフィ性の評価試験と同様にして、5μm四方のパターン(緑色画素)を形成した。
次に、緑色画素が形成されたガラスウェハ上に、青色組成物1と赤色組成物1を用い、フォトリソグラフィ性の評価試験と同様の方法で、シリコンウェハ上の緑色画素の抜け部に、青色のパターン(青色画素)および赤色のパターン(赤色画素)をそれぞれ形成した。この赤色画素、青色画素について、顕微システム(LVmicro V、ラムダビジョン(株)製)を用いて波長400~700nmの範囲の透過率(分光1)を測定した。
その後、緑色画素、青色画素および赤色画素が形成されたガラスウェハを空気雰囲気下のホットプレートを用いて260℃で5分加熱した後、青色画素および赤色画素について顕微システム(LVmicro V、ラムダビジョン(株)製)を用いて波長400~700nmの範囲の透過率(分光2)を測定した。
青色画素および赤色画素の分光1と分光2とを用いて透過率の変化量の最大値を求め、以下の基準で混色を評価した。
なお、透過率の測定は、各試料につき5回行い、最大値と最小値を除いた3回の結果の平均値を採用した。また、透過率の変化量の最大値とは、加熱前後の赤色画素または青色画素の、波長400~700nmの範囲における透過率の変化量が最も大きい波長における変化量を意味する。
5:透過率の変化量の最大値が2%未満である。
4:透過率の変化量の最大値が2%以上3%未満である。
3:透過率の変化量の最大値が3%以上4%未満である。
2:透過率の変化量の最大値が4%以上5%未満である。
1:透過率の変化量の最大値が5%以上である。
【0297】
【0298】
上記表に示す通り、色材と、光ラジカル重合開始剤と、ラジカル重合性化合物とを含み、ラジカル重合性化合物の全質量中における重量平均分子量が3000以上のラジカル重合性化合物の含有量が70質量%以上である感光性組成物(緑色組成物1~20)を用いてパルス露光して膜を製造した試験例1~30はフォトリソグラフィ性、耐溶剤性、耐湿性および耐熱拡散性に優れていた。
【0299】
青色組成物1および赤色組成物1について、上述した条件でパルス露光を行ってフォトリソグラフィ性、耐溶剤性、耐湿性および耐熱拡散性を評価したところ、良好な結果が得られた。