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特許7075574有機性廃棄物の燃焼炉及び該燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システム
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  • 特許-有機性廃棄物の燃焼炉及び該燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】有機性廃棄物の燃焼炉及び該燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 5/30 20060101AFI20220519BHJP
   F23C 10/04 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
F23G5/30 M
F23G5/30 D ZAB
F23G5/30 J
F23C10/04
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2017105556
(22)【出願日】2017-05-29
(65)【公開番号】P2018200150
(43)【公開日】2018-12-20
【審査請求日】2020-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000165273
【氏名又は名称】月島機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100158665
【弁理士】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(72)【発明者】
【氏名】村上 高広
(72)【発明者】
【氏名】安田 肇
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】長沢 英和
(72)【発明者】
【氏名】川端 友寛
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-122305(JP,A)
【文献】特開2010-175157(JP,A)
【文献】特開平04-155105(JP,A)
【文献】特開2009-040886(JP,A)
【文献】特開2009-139043(JP,A)
【文献】特開2000-146116(JP,A)
【文献】特開2005-028251(JP,A)
【文献】国際公開第2011/016556(WO,A1)
【文献】特開2016-180528(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/30
F23C 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層とフリーボードとからなる流動層炉と、
前記フリーボードに吹き上げられた流動媒体を捕集するサイクロンと、
前記流動媒体を返送するダウンカマーと
を備えた有機性廃棄物を焼却処理するための循環型流動層燃焼炉であって、
前記流動層炉の前段に設置された、流動層と、該流動層に有機性廃棄物を投入する手段と、発生した分解ガス及び有機性廃棄物残渣分を流動媒体とともに下流側に送る手段とを有する有機性廃棄物の乾燥・熱分解ゾーンと、
前記有機性廃棄物の乾燥・熱分解ゾーンの前段に設置された熱交換器と
を備え、
前記乾燥・熱分解ゾーンの後段から前記流動層炉の上流側までを、前記乾燥・熱分解ゾーンから送られた熱分解ガス、有機性廃棄物残渣分及び流動媒体の混合物のうちの未燃焼分の一部が燃焼するとともに炉内脱硫剤により脱硫される脱硫ゾーンとし、
前記流動層炉の下流側及び流動層炉出口と前記サイクロンを連結するダクト内をN O分解ゾーンとし、
前記有機性廃棄物の乾燥・熱分解ゾーン、脱硫ゾーン、及びNO分解ゾーン各ゾーン、それぞれ、700~800℃、800~850℃、及び850~950℃の異なる温度に設定することを特徴とする循環型流動層燃焼炉。
【請求項2】
前記有機性廃棄物の乾燥・熱分解ゾーンに、炉内脱硫剤を投入する手段を備え、脱硫反応の一部を前記乾燥・熱分解ゾーンの一部で起こらせるようにすることを特著とする請求項1に記載の循環型流動層燃焼炉。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムであって、
前記熱交換器で熱媒体を加熱し、加熱した熱媒体を使用する発電装置、または温水製造装置の少なくとも一つを備えることを特徴とする下水汚泥処理システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムであって、
前記循環流動層燃焼炉を加圧下で運転し、有機性廃棄物を燃焼することで生成する高温の燃焼排ガスを活用し、燃焼炉後段に設置した過給機を駆動させ圧縮空気を製造し、製造した圧縮空気を燃焼用空気として循環流動層燃焼炉に供給することを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
【請求項5】
前記燃焼排ガスと前記過給機により製造した圧縮空気を熱交換する空気予熱器を備えることを特徴とする請求項に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項6】
前記燃焼排ガスを利用し、圧縮空気を製造する第2の過給機を備えることを特徴とする請求項又はに記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた下水汚泥の処理システムであって、
循環流動層燃焼炉を加圧下で運転し、下水汚泥を燃焼することで生成する高温の燃焼排ガスを活用し、燃焼炉後段に設置した過給機を駆動させて圧縮空気を製造し、製造した圧縮空気を下水処理場内の曝気槽等へ供給することを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
【請求項8】
前記過給機から排気された燃焼排ガスを利用し、蒸気を生成するボイラを備えることを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムであって、
燃焼排ガスを利用し、発電する発電手段を備えることを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
【請求項10】
前記過給機及び/又は前記発電手段から排気された燃焼排ガスを利用し、蒸気を生成することを特徴とする請求項のいずれか1項に記載の有機性廃棄物の処理システム。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムであって、
前記循環流動層燃焼炉から排出された燃焼排ガスと圧縮空気とを熱交換する空気予熱器と、該空気予熱器で加熱された圧縮空気を駆動源とし、熱交換器に供給する圧縮空気を生成する過給機とを備え、前記過給機から排出される加熱され低圧となった圧縮空気は、前記循環流動層燃焼炉に供給されることを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水汚泥、食品残さ、都市ごみ等の有機性廃棄物を焼却処理するための燃焼炉及び該燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムに関し、特に、外部循環型流動層燃焼炉を用いて有機性廃棄物を焼却処理する処理システムに関する。
【0002】
例えば、下水処理によって発生する下水汚泥は、下水の増加にともなって年々増加しており、その大半が焼却処理されており、焼却炉の大部分には、流動層燃焼炉が用いられている。
この流動層燃焼炉には、気泡流動層燃焼炉と循環型流動層燃焼炉とがある。
前者の気泡流動層燃焼炉は、炉底に砂等の流動媒体を充填してその下方から高圧空気の吹き込みにより流動状態にして該流動媒体中に投入した廃棄物を乾燥、燃焼させるものである。
また、後者の循環型流動層燃焼炉は、流動層とフリーボードとからなる燃焼炉と、微粒子を捕集するサイクロンなどから構成されており、廃棄物を、燃焼炉底部から導入される一次空気により流動化されている流動層に供給すると、流動層内で流動媒体と混合攪拌され、流動しつつ乾燥及び熱分解しながら燃焼され、流動層から吹き上げられる流動媒体と廃棄物中の未燃焼分などは二次空気の導入によりフリーボードへ同伴して燃焼排ガス中の未燃焼分を完全燃焼させ、燃焼排ガスからサイクロンにより流動媒体を捕集して燃焼炉に返送して循環利用するものである。
【0003】
こうした流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の焼却処理においては、燃焼炉から排出された燃焼排ガス中に含まれる、ダイオキシンやCO、NO等の未燃分、中でも、特に温室効果ガスであるとともにオゾン層破壊物質であるNOを低減化することが強く求められており、そのための対策がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のシステムは、気泡流動層燃焼炉を加圧で運転することで、汚泥を燃焼させた高温の燃焼排ガスを活用して該加圧気泡流動層燃焼炉の後段に設置した過給機を駆動し、燃焼用圧縮空気を生成させるものであり、該システムによれば、システム中のファンを省略して大幅に電力を削減することができるばかりでなく、流動層内に生成される高温域により、NOの大幅な低減が達成できる。
【0005】
また、特許文献2、3に記載の方法では、循環型流動層燃焼炉で下水汚泥等の廃棄物を燃焼させて燃焼排ガスを排出させた後、該燃焼炉から排出された燃焼排ガス中の未燃分を、後段に設置した二次燃焼炉で完全燃焼させることにより、NO排出量の大幅な低減を図っている。
【0006】
また、これらの特許文献では言及されていないものの、下水汚泥等の有機性廃棄物を焼却処理する際のもう1つの課題として、下水汚泥等の有機性廃棄物中には硫黄化合物が多く含まれているため、SOx等の硫黄酸化物が発生する場合があるという問題があり、硫黄酸化物を含む燃焼排ガスは大気汚染、酸性雨の原因となることから、硫黄酸化物を除去(脱硫)する必要がある。
従来の有機性廃棄物の焼却システムにおいて、多くは焼却炉後段に排煙処理塔を設置することで脱硫を行っている(例えば図参照)が、焼却システムのランニングコスト削減に向けて、燃焼炉内でおこなうことが検討されている。
【0007】
燃焼炉内での脱硫法の1つに、燃焼炉内に脱硫剤を投入して流動媒体とともに循環させる方法がある。
例えば、特許文献4には、循環型流動層燃焼炉を用いて下水汚泥を焼却処理する際に、炉内温度が850~950℃に維持された炉内で、脱硫剤である石灰石(CaCO)を用いて脱硫することが提案されており、該方法によれば、高温の砂が燃焼炉内全域に分散しているため、焼却炉全域において約850~950℃の均一な高温度が形成されており、NOも低減化できるとしている。
【0008】
また、特許文献5には、燃焼炉内に脱硫剤として投入されたCaCOは、高温(例えば850℃)下において酸化されてCaOを生成し、生成されたCaOは、本来の役割である脱硫反応を起こしてSOxをCaSOにするばかりでなく、NH、HCN、NO等の窒素化合物の酸化反応の触媒作用を果たし、NOxを生成させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第3783024号公報
【文献】特開2009-139043号公報
【文献】特開2013-155954号公報
【文献】特開2002-130641号公報
【文献】特開2009-229056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上のとおり、従来の循環型流動層炉を用いた下水汚泥等の有機性廃棄物の焼却処理において、燃焼炉内で、脱硫剤を投入して脱硫する工程と、有機性廃棄物に含まれる窒素化合物から発生するNOを分解して低減させる工程とを行うことが検討されている。
しかしながら、例えば、脱硫工程に必要なCaSOへの反応は800~850℃程度の高温で行われるのに対して、NOの分解には850℃以上、好ましくは900~950℃が好ましく、さらに、有機性廃棄物の乾燥・熱分解は、それほどの高温を必要とせず、750℃程度で充分であるなど、有機性廃棄物の乾燥・熱分解、脱硫、及びNOの分解の各々の工程の最適な条件は異なっており、それぞれの工程を、それぞれ適した条件で行うための検討が十分にはなされていない。
【0011】
例えば、特許文献4記載の燃焼炉では、約850~950℃の均一な高温度を形成することによりNOの分解を行うものであって、高温の砂が燃焼炉内全域に分散しているために焼却炉全域において約850~950℃の均一な高温度が形成されており、有機性廃棄物の乾燥・熱分解、脱硫、及びNOの分解の各々の工程を最適な条件で行うことが困難である。
また、特許文献5記載の燃焼炉では、850℃の高温下で生成したCaOの触媒作用により、排ガス中のNOを酸化してNOxとするものであるが、850℃ではNOの分解に長い滞留時間が必要と考えられる。
【0012】
一方、特許文献2、3には、排ガス中に発生したNOを850~950℃の高温下で分解することが提案されているが、いずれも、脱硫工程については検討されていない。
【0013】
さらに、従来の循環型流動層炉を用いた有機性廃棄物の焼却処理においては、加圧下で運転を行うことで、特許文献1に記載されたシステムのように、システム内のファンを省略することについては何ら検討されていない。
【0014】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、下水汚泥等の有機性廃棄物を焼却処理するための循環型流動層燃焼炉において、有機性廃棄物の乾燥・熱分解、脱硫、及びNOの分解のそれぞれの工程を、各々に適した最適な条件で行うことができる燃焼炉を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記目的を達成すべく検討を重ねた結果、下水汚泥等の有機性廃棄物の「乾燥・熱分解」、「脱硫」、「NO分解」それぞれを燃焼炉内で最適な条件で行わせるために、各工程を、温度の異なるゾーンに分けることが有効であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
また、本発明においては、「NO分解」工程に必要な850~950℃の高温にされた流動媒体を、有機性廃棄物の「乾燥・熱分解」工程に返送する前に、熱交換器に循環させることにより、熱を最大限利用できることが判明した。
さらに、本発明に係る循環型流動層燃焼炉を加圧下で運転し、生成した高温の燃焼排ガスを活用して該加圧気泡流動層燃焼炉の後段に設置した過給機を駆動し、燃焼用圧縮空気を生成させるシステムを提供できることも判明した。
【0016】
本発明はこれらの知見に基づいて完成に至ったものであり、本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]流動層とフリーボードとからなる流動層炉と、
前記フリーボードに吹き上げられた流動媒体を捕集するサイクロンと、
前記流動媒体を返送するダウンカマーと
を備えた有機性廃棄物を焼却処理するための循環型流動層燃焼炉において、
前記流動層炉の前段に設置された、流動層と、該流動層に有機性廃棄物を投入する手段と、発生した分解ガス及び有機性廃棄物残渣分を流動媒体とともに下流側に送る手段とを有する有機性廃棄物の乾燥・熱分解ゾーンと、
前記有機性廃棄物の乾燥・熱分解ゾーンの前段に設置された熱交換器と
を備え、
前記乾燥・熱分解ゾーンの後段から前記流動層炉の上流側までを、前記乾燥・熱分解ゾーンから送られた熱分解ガス、有機性廃棄物残渣分及び流動媒体の混合物のうちの未燃焼分の一部が燃焼するとともに炉内脱硫剤により脱硫される脱硫ゾーンとし、
前記流動層炉の下流側及び流動層炉出口と前記サイクロンを連結するダクト内をN O分解ゾーンとし、
前記有機性廃棄物の乾燥・熱分解ゾーン、脱硫ゾーン、及びNO分解ゾーン各ゾーンの温度、それぞれ、700~800℃、800~850℃、及び850~950℃に設定することを特徴とする循環型流動層燃焼炉。
[2]前記有機性廃棄物の乾燥・熱分解ゾーンに、炉内脱硫剤を投入する手段を備え、脱硫反応の一部を前記乾燥・熱分解ゾーンの一部で起こらせるようにすることを特徴とする[1]に記載の循環型流動層燃焼炉。
][1]又は]に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムであって、
前記熱交換器で熱媒体を加熱し、加熱した熱媒体を使用する発電装置、または温水製造装置の少なくとも一つを備えることを特徴とする下水汚泥処理システム。
][1]又は]に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムであって、
前記循環流動層燃焼炉を加圧下で運転し、有機性廃棄物を燃焼することで生成する高温の燃焼排ガスを活用し、燃焼炉後段に設置した過給機を駆動させ圧縮空気を製造し、製造した圧縮空気を燃焼用空気として循環流動層燃焼炉に供給することを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
]前記燃焼排ガスと前記過給機により製造した圧縮空気を熱交換する空気予熱器を備えることを特徴とする[]に記載の有機性廃棄物の処理システム。
]前記燃焼排ガスを利用し、圧縮空気を製造する第2の過給機を備えることを特徴とする[]又は[]に記載の有機性廃棄物の処理システム。
][1]又は]に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた下水汚泥の処理システムであって、
循環流動層燃焼炉を加圧下で運転し、下水汚泥を燃焼することで生成する高温の燃焼排ガスを活用し、燃焼炉後段に設置した過給機を駆動させて圧縮空気を製造し、製造した圧縮空気を下水処理場内の曝気槽等へ供給することを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
]前記過給機から排気された燃焼排ガスを利用し、蒸気を生成するボイラを備えることを特徴とする[]~[]のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理システム。
][1]又は]に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムであって、
燃焼排ガスを利用し、発電する発電手段を備えることを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
10]前記過給機及び/又は前記発電手段から排気された燃焼排ガスを利用し、蒸気を生成することを特徴とする[]~[]のいずれかに記載の有機性廃棄物の処理システム。
11][1]又は]に記載の循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムであって、
前記循環流動層燃焼炉から排出された燃焼排ガスと圧縮空気とを熱交換する空気予熱器と、該空気予熱器で加熱された圧縮空気を駆動源とし、熱交換器に供給する圧縮空気を生成する過給機とを備え、前記過給機から排出される加熱され低圧となった圧縮空気は、前記循環流動層燃焼炉に供給されることを特徴とする有機性廃棄物の処理システム。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、循環型流動層燃焼炉を用いた下水汚泥等の有機性廃棄物の焼却処理において、有機性廃棄物の「乾燥・熱分解」、「脱硫」及び「NO分解」のそれぞれの工程を最適な条件で行うことができる。また、「NO分解」工程を経て得られた高温の燃焼排ガスを利用して、燃焼炉に供給する圧縮空気を生成及び送風する「過給機」を、本発明に係る循環型流動層燃焼炉の後段に設置することにより、該過給機により生成した圧縮空気を燃焼用空気に活用することで、システム中のファンを省くことができる。さらに、本発明の循環型流動層燃焼炉内の乾燥・熱分解ゾーンの前段に熱交換器を設置することにより、該熱交換器における熱交換によって生成させた蒸気を有効利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る循環型流動層燃焼炉の第1の実施形態を示すための模式図
図2】本発明に係る循環型流動層燃焼炉の第2の実施形態を示すための模式図
図3】循環型流動層燃焼炉の参考例を示すための模式図
図4】本発明に係る循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムの概要を示すブロック図
図5】従来の流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムの概要を示すブロック図
図6】本発明に係る循環流動層燃焼炉の後段に過給機を設置した有機性廃棄物の処理システムの他の事例について概要を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0019】
[循環型流動層燃焼炉]
以下、図面を参照して、本発明に係る循環型流動層燃焼炉について実施形態を用いて説明するが、本発明に係る循環型流動層燃焼炉は、これらの実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る循環型流動層燃焼炉の第1の実施形態を示す模式図である。
該図に示すように、本実施形態においては、一般的な循環型流動層燃焼炉が備えている、流動層とフリーボードとからなる流動層炉と、フリーボードに吹き上げられた流動砂を捕集するサイクロンと、流動砂を返送するダウンカマーとに加え、前記流動層炉の前段に設置された、有機性廃棄物を乾燥・熱分解する「乾燥・熱分解ゾーン」と、該「乾燥・熱分解ゾーン」の前段に設置された「熱交換器」とを有しており、さらに、前記流動層炉内の流側に、炉内脱硫である石灰石(CaCO)による脱硫を行なう「脱硫ゾーン」を設け、前記流動層炉内の流側及び流動層炉出口と前記サイクロンを連結するダクト内を、高温域でNOを分解する「NO分解ゾーン」としたものである。
【0021】
「乾燥・熱分解ゾーン」には、流動層が設けられており、炉の底部から導入される空気により流動化されている流動層に有機性廃棄物を投入すると、有機性廃棄物は流動層内で流動媒体(一般には硅砂)とともに混合攪拌されて微細化されるとともに、乾燥・熱分解する。
「乾燥・熱分解ゾーン」に導入される空気の空気比は、1.0未満であり、好ましくは、0.7~0.8程度である。
また、「乾燥・熱分解ゾーン」の温度は、有機性廃棄物の乾燥・熱分解に必要な温度であればよく、好ましくは、700~800℃で充分であるが、必要に応じて、補助燃料を用いることもできる。なお、補助燃料としては、重油、灯油あるいは都市ガスや石炭等の可燃物質が挙げられる。
乾燥・熱分解により発生した熱分解ガス及び有機性廃棄物残渣分は流動媒体とともに、次の「脱硫ゾーン」に送られる。
【0022】
「脱硫ゾーン」では、前記「乾燥・熱分解ゾーン」から送られてきた、熱分解ガス、有機性廃棄物残渣分及び流動媒体の混合物に、炉内脱硫剤である石灰石が投入混合された後、炉の底部から導入される一次空気により流動化されている流動層上に投入される。
ここで、未燃焼分の一部が燃焼するとともに、投入された石灰石により、炉内脱硫される。
また、「脱硫ゾーン」の温度は、脱硫に必要な800~850℃に設定されるが、必要に応じて補助燃料を用いることもできる。
脱硫された熱分解ガスを含む排ガスは、流動媒体と共に、あるいは、更に二次空気と共に、上流の「NO分解ゾーン」に送られる。このとき用いられる一次空気と二次空気をあわせた空気比は、1.2~1.3程度である。
【0023】
「NO分解ゾーン」では、脱硫ゾーンから送られてくる熱分解ガスを含む排ガスを、必要に応じて補助燃料を用い、850℃より高温で加熱して、排ガス中に含まれるNOを分解させる。
Oが分解された燃焼排ガスは、最後にサイクロンにより固気分離されて、炉の上部より取り出される。
取り出された燃焼排ガスは、各種用途に有効利用される。具体的には、例えば燃焼排ガスを利用して該循環型流動層燃焼炉の後段に設置した過給機を駆動し、燃焼用圧縮空気を生成させること等が挙げられる。
【0024】
一方、サイクロンで捕集された高温の流動媒体は、ダウンカマーを経て、再び「乾燥・熱分解ゾーン」に還流される。
サイクロンで捕集された流動媒体は高温であるため、「乾燥・熱分解ゾーン」の前段に設置された熱交換器に通過させてから「乾燥・熱分解ゾーン」に還流することで、熱を最大限利用することができる。
具体的には、例えば、熱交換器で高温蒸気又は高温空気を発生させ、その高温蒸気又は高温空気を蒸気タービン又は高温空気タービンに利用して発電する、あるいはその高温蒸気又は高温空気で温水を製造すること等が挙げられる。
【0025】
(第2実施形態)
図2は、本発明に係る循環型流動層燃焼炉の第2の実施形態を示す模式図である。
該図に示すように、本実施形態では、前述の第1の実施形態において、石灰石を脱硫ゾーンに投入する形態に代えて、有機性廃棄物と石灰石を同時に「乾燥・分解ゾーン」に投入するように変更した以外は、前述の第1の実施形態と同じである。
脱硫反応の一部は700~800℃程度でも起こるため、本実施形態によれば、有機性廃棄物と脱硫剤の同時投入により、「乾燥・熱分解ゾーン」でも脱硫の一部が起こり、その結果、実質的に脱硫工程を長くすることが可能となる。
【0026】
参考例
図3、循環型流動層燃焼炉の参考例を示す模式図であって、燃焼炉の後段に二次燃焼炉を設置し、そこをNO分解ゾーンとするものである。
すなわち、該図に示すように、本参考例では、流動層とフリーボードとからなる流動層炉内の流側に「乾燥・熱分解ゾーン」を設け、前記流動層炉内の流側及び流動層炉出口とサイクロンを連結するダクト内を「脱硫ゾーン」とするとともに、該流動層炉の後段に、二次燃焼炉を設置して、前記二次燃焼炉を「NO分解ゾーン」とするように変更した以外は、前述の第1の実施形態と同じである。

【0027】
「乾燥・熱分解ゾーン」では、流動層炉の底部から導入される一次空気により流動化されている流動層に、有機性廃棄物及び炉内脱硫剤である石灰石が投入され、有機性廃棄物は流動層内で流動媒体とともに混合攪拌されて微細化されるとともに、乾燥・熱分解する。
「乾燥・熱分解ゾーン」に導入される一次空気の空気比は、1.0未満であり、好ましくは、0.7~0.8程度である。
また、「乾燥・熱分解ゾーン」の温度は、有機性廃棄物の乾燥・熱分解に必要な温度であればよく、好ましくは、700~800℃で充分であるが、必要に応じて、補助燃料を用いることもできる。なお、補助燃料としては、重油、灯油あるいは都市ガスや石炭等の可燃物質が挙げられる。
乾燥・熱分解により発生した熱分解ガス及び有機性廃棄物残渣分及び石灰石は、流動媒体とともに、或いは更に導入された二次空気と共に、次の、流動層炉上流側に設けられた「脱硫ゾーン」に送られる。
【0028】
流動層炉上流側及び炉の出口とサイクロンを繋ぐダクト内に設けられた「脱硫ゾーン」では、未燃焼分の一部が燃焼するとともに、石灰石により、炉内脱硫される。
また、「脱硫ゾーン」の温度は、脱硫に必要な800~850℃に設定されるが、必要に応じて補助燃料を用いることもできる。
脱硫された熱分解ガスを含む排ガスは、サイクロンにより固気分離されて、炉の上部より取り出され、「NO分解ゾーン」である二次燃焼炉に送られる。一方、サイクロンで捕集された流動媒体は、ダウンカマー及び熱交換器を経て、「乾燥・熱分解ゾーン」に還流される。
【0029】
「NO分解ゾーン」では、脱硫ゾーンから送られてくる熱分解ガスを含む排ガスを、必要に応じて空気、補助燃料を用い、850℃より高温で加熱して、排ガス中に含まれるNOを分解させる。
【0034】
[循環型流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システム]
有機性廃棄物を燃焼させる処理システムとして、過給式流動燃焼システムが知られている(特許文献1)。この過給式流動燃焼システムは、たとえば下水汚泥を加圧流動床炉に供給して燃焼させ、燃焼炉から排出される燃焼排ガスによって過給機を回転駆動することで圧縮空気を生成し、この圧縮空気を燃焼炉に供給して燃焼を促進させるシステムである。
本発明に係る循環型流動層燃焼炉を用いて有機性廃棄物の焼却処理する際においても、この特許文献1に記載したシステムの場合と同様に、過給機を用いたシステムとすることが望ましい。
【0035】
以下に、本発明に係る循環型流動層燃焼炉の後段に過給機を設置した有機性廃棄物の処理システムについて説明する。
は、本発明に係る循環型流動層燃焼炉を加圧下で運転して、有機性廃棄物を焼却する処理システムの一例の概要を示すブロック図である。
に示すシステムでは、加圧下で運転される本発明に係る循環型流動層燃焼炉の後段に、空気予熱器、セラミックフィルタ、過給機、白煙防止予熱器、及び煙突が設けられている。
【0036】
空気予熱器は、循環型流動層燃焼炉によって生成された燃焼排ガスと、過給機から生成された圧縮空気とを間接的に熱交換することによって、圧縮空気を所定温度まで加温するものである。
この高温に加温された圧縮空気を、循環型流動層燃焼炉の下部から燃焼用空気として、給することにより、燃焼効率を向上させることができる。
【0037】
セラミックフィルタは、循環型流動層燃焼炉によって生成された燃焼排ガス中に含まれるダストを除去するのに用いられる高温フィルタの一例であり、該フィルタによって捕集されたダストは、循環型流動層燃焼炉に供給して再度燃焼させることもできる。
上記空気予熱器とセラミックフィルタとの配置は逆でも良く、まず、セラミックフィルタにおいて燃焼排ガス中に含有するダストを除去した後に、空気予熱器において燃焼排ガスの熱エネルギによって圧縮空気を加温しても良い。
【0038】
過給機は、上記燃焼排ガスよって回転駆動されるタービン(図示せず)及び当該タービンの回転動力を伝達されることによって前記圧縮空気を生成して送風するコンプレッサ(図示せず)から構成されている。
【0039】
上記過給機の後段には、白煙が外部に排気されることを防止するための白煙防止予熱器が設けられており、白煙防止予熱器を通過した燃焼排ガスは、煙突から排出される。
【0040】
該システムにおいては、加圧循環型流動層燃焼炉から取り出された高温の燃焼排ガスは、燃焼炉後段に設置した過給機により、圧縮空気の生成に利用される一方、加圧循環型流動層燃焼炉内の高温の流動媒体は、熱交換器で熱交換されて熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体は蒸気タービン等の発電装置や、ボイラ等の温水製造設備に供給され有効活用される。熱媒体として、水、空気などに加え、代替フロン、熱媒油、溶融塩が採用できる。水を熱媒体とした場合は、熱交換器で蒸気を生成し、蒸気タービンや、ボイラ等に供給することになる。空気を熱媒体とした場合には、熱交換器で高温ガスが生成されることになり、その高温ガスを発電装置や温水製造設備に供給することができる。
また、炉内脱硫することで、燃焼炉後段の排煙処理塔を省くことができ、大幅な電力削減効果が期待できる。
さらに、過給機により生成した圧縮空気は、燃焼用空気へ活用でき、図に示すような従来の流動層燃焼炉を用いた有機性廃棄物の処理システムと比較すると、システム中のファン(流動ブロワおよび誘引ファン)を省くことができる。また、過給機により生成した圧縮空気は、その量に応じて下水処理場内の曝気槽への有効活用も可能であり、また、過給機は複数設置しても良いし、過給機と蒸気タービンの組合せもあり得る。
【0041】
本発明に係る循環型流動層燃焼炉の後段に過給機を設置した有機性廃棄物の処理システムの他の事例について説明する。
は、本発明に係る循環型流動層燃焼炉を炉内圧が大気圧下から負圧となる条件で運転して、有機性廃棄物を焼却する処理システムの他の一例の概要を示すブロック図である。
に示すシステムでは、本発明に係る循環型流動層燃焼炉、燃焼用空気を供給する過給機、空気予熱器、白煙防止予熱器、バグフィルタ及び煙突が設けられている。この事例で使用する過給機は、空気予熱器で加熱された流動空気をタービンに供給することで駆動するものである。
【0042】
空気予熱器は、循環型流動層燃焼炉によって生成された燃焼排ガスと、過給機から生成された圧縮空気とを間接的に熱交換することによって、圧縮空気を所定温度まで加温するものである。
この高温に加温された圧縮空気を、過給機のタービンに供給することで過給機を駆動させるとともに、タービンから排出される圧力が下がった圧縮空気を循環型流動層燃焼炉の下部から燃焼用空気として、供給する。
【0043】
空気予熱器の後段には、白煙が外部に排気されることを防止するための白煙防止予熱器が設けられている。
【0044】
バグフィルタは、循環型流動層燃焼炉によって生成された燃焼排ガス中に含まれるダストを除去するのに用いられる高温フィルタの一例であり、該フィルタによって捕集されたダストは、循環型流動層燃焼炉に供給して再度燃焼させることもできる。バグフィルタを通過した燃焼排ガスは、煙突から排出される。なお、バグフィルタを通過した燃焼排ガスは、排煙処理塔や誘引ファン(いずれも図示せず)を経由して煙突から排出しても良い。
【0045】
過給機は、前記空気予熱器で加熱された圧縮空気によって回転駆動されるタービン(図示せず)及び当該タービンの回転動力を伝達されることによって前記圧縮空気を生成して送風するコンプレッサ(図示せず)から構成されている。
【0046】
該システムにおいては、循環型流動層燃焼炉から取り出された高温の燃焼排ガスは、空気予熱器を介して圧縮空気を加熱することで過給機での圧縮空気の生成に利用される一方、循環型流動層燃焼炉内の高温の流動媒体は、熱交換器で熱交換されて熱媒体を加熱し、加熱された熱媒体は蒸気タービン等の発電装置や、ボイラ等の温水製造設備に供給され有効活用される。熱媒体として、水、空気などに加え、代替フロン、熱媒油、溶融塩が採用できる。水を熱媒体とした場合は、熱交換器で蒸気を生成し、蒸気タービンや、ボイラ等に供給することになる。空気を熱媒体とした場合には、熱交換器で高温ガスが生成されることになり、その高温ガスを発電装置や温水製造設備に供給することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6