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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】読取装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/04 20060101AFI20220519BHJP
   H04N 1/028 20060101ALI20220519BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
H04N1/04 105
H04N1/028 Z
G06T1/00 420B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018043988
(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公開番号】P2019161381
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】須貝 篤
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178624(JP,A)
【文献】特開2003-075936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04
H04N 1/028
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスが設けられた互いに異なる第一位置と第二位置との間で移動し両位置で選択的に読取動作を行うイメージセンサを備えた読取装置において、
前記イメージセンサに、前記第一位置で前記ガラスに当接する当接部を設けるとともに、前記第二位置で前記ガラスに対する位置決めを行うための前記当接部とは異なる位置決め部を設け、前記第二位置に前記位置決め部が当接する位置決め部材を設け
前記第一位置では、前記イメージセンサが直線に沿って移動しながら読取を行い、
前記第一位置から第二位置との間の移動は、前記直線とは角度を持った方向の移動であり、
前記第一位置と前記第二位置との間で移動中に、前記当接部と前記ガラスとが当接した第一当接状態と、前記位置決め部と前記位置決め部材とが当接する第二当接状態とが切り替わり、かつ、この切り替わりが、前記直線に沿った移動中に起こることを特徴とする読取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の読取装置において、
前記第二位置には原稿を載置するガラスを有し、前記第二位置で前記イメージセンサの光軸が前記ガラスの面に垂直になることを特徴とする読取装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の読取装置において、
前記当接部および前記位置決め部をそれぞれ4箇所以上設けることを特徴とする読取装置。
【請求項4】
請求項1乃至の何れか一に記載の読取装置において、
前記位置決め部材の第二位置における光軸方向の位置を装置外部から調整可能に構成したことを特徴とする読取装置。
【請求項5】
読取装置を備えた画像形成装置において、
前記読取装置として、請求項1乃至の何れか一に記載の読取装置を用いた画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスが設けられた互いに異なる第一位置と第二位置との間で移動し両位置の何れかで読取動作を行うイメージセンサを備えた読取装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、上面を原稿が通過する、流し読みのための第1ガラス及び上面に原稿が載置される、固定読みのための第2ガラスと、第一位置である第1ガラスの下方と、第二位置である第2ガラスの下方との間で移動し両位置の何れかで読取動作を行うイメージセンサとを備えた読取装置が記載されている。この読取装置は、前記第1ガラスの下方に停止して、あるいは前記第2ガラスの下方を移動して原稿を読み取る。そして、前記イメージセンサには、次のようなスペーサが設けられている。前記イメージセンサと共に付勢手段によって付勢されて前記第1ガラス及び第2ガラスに接触し、前記イメージセンサと前記第1ガラス及び第2ガラスとの間に隙間を生じさせた状態で、前記イメージセンサとともに前記第1ガラス及び第2ガラスの下面を移動可能なスペーサである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成では第一位置や第二位置での部品ばらつきなどに対処するためのイメージセンサの光軸方向の位置調整(焦点調整)がしづらいという課題が残されていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、ガラスが設けられた互いに異なる第一位置と第二位置との間で移動し両位置で選択的に読取動作を行うイメージセンサを備えた読取装置において、前記イメージセンサに、前記第一位置で前記ガラスに当接する当接部を設けるとともに、前記第二位置で前記ガラスに対する位置決めを行うための前記当接部とは異なる位置決め部を設け、前記第二位置に前記位置決め部が当接する位置決め部材を設け、前記第一位置では、前記イメージセンサが直線に沿って移動しながら読取を行い、前記第一位置から第二位置との間の移動は、前記直線とは角度を持った方向の移動であり、前記第一位置と前記第二位置との間で移動中に、前記当接部と前記ガラスとが当接した第一当接状態と、前記位置決め部と前記位置決め部材とが当接する第二当接状態とが切り替わり、かつ、この切り替わりが、前記直線に沿った移動中に起こることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、第一位置や第二位置での部品ばらつきなどに対処するためのイメージセンサの光軸方向の位置調整が比較的容易になるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1に係る複写機を示す斜視図である。
図2】同複写機における読取装置の構成を示す説明図である。
図3】従来技術にかかる読取装置の説明図。
図4】同複写機における読取装置の主要部の説明図。
図5】同主要部の分解斜視図。
図6】変形例にかかる読取装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
本発明の一実施形態(以下、本実施形態を「実施形態1」という。)について説明する。
図1は、本実施形態1に係る画像形成装置である複写機1を示す斜視図である。
本実施形態1の複写機1は、主に、画像形成部3と、画像読取部4と、自動原稿搬送装置(以下、単に「ADF」とも称する。)5とから構成されている。本実施形態1の読取装置6は、主に、画像読取部4とADF5とから構成されている。
【0009】
本実施形態1の画像形成部3は、例えば、潜像形成手段としての露光ユニットと、複数の潜像担持体としての感光体ドラムと、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のトナーを用いる現像装置と、中間転写部と、二次転写部と、定着部などを備えた電子写真方式の画像形成装置である。インクジェット方式などの他の方式の画像形成装置であってもよい。
【0010】
画像形成部3は、読取装置6の画像読み取りによって得られる画像データや、パソコン等の外部装置から送信される画像データに基づき、例えば、露光ユニットによって各色の感光体ドラムを露光して各感光体ドラム上に静電潜像を形成し、各色の現像装置で各感光体ドラム上の潜像にトナーを供給して現像する。また、画像形成部3は、各色の感光体ドラム上のトナー像を中間転写部の中間転写ベルトに互いが重なるように一次転写した後、二次転写部で記録材である記録紙上に二次転写し、定着部で記録紙上のトナー像を加熱及び加圧して定着させ、カラー画像を形成する。
【0011】
図2は、本実施形態1の読取装置6の構成を示す説明図である。
読取装置6は、搬送中の原稿(原稿)の画像を読み取る搬送原稿読取モード(以下、DFスキャナモードという。)と、平坦なコンタクトガラス上に載置された原稿の原稿面の画像を読み取る載置原稿読取モード(以下、フラットベッドスキャナモードという。)とで、選択的に動作可能に構成されている。
【0012】
フラットベッドスキャナモードで、画像読取部4は、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿(原稿シート、厚紙、本等)の原稿面(被読取面)に光を照射して、その原稿面からの反射光を画像信号に変換することにより原稿画像を読み取る。
【0013】
また、DFスキャナモードで、ADF5は、セット部である原稿トレイ51上に積載された原稿シート束から原稿シートを1枚ずつ分離して原稿搬送通路内に搬入し、この原稿搬送通路に沿って搬送する。この原稿搬送通路は、ピックアップローラ52a、分離ローラ52b、プルアップローラ対52c、読取入口ローラ対52d、読取出口ローラ対52e、排紙ローラ対52fなどで構成されている。そして、その搬送中、原稿シートの原稿面(原稿トレイ51上で上側の面が片面原稿の場合の原稿面)が、その搬送方向の上流側部分から順次部分的に画像読取部4におけるDFコンタクトガラス42A,42Bに対面する。読取装置6は、この対面してくる原稿シート上の画像を画像読取部4のDFコンタクトガラス42A,42B上で順次読み取る。読取り後の原稿シートSは、搬送ローラ対52e,52fにより排紙トレイ53に排出する。
【0014】
ADF5は、装置本体1Mの後部(背面側の部分)にヒンジ等の開閉機構を介して取り付けられている。そして、ADF5は、装置本体1Mに対してフラットベッドコンタクトガラス41上を開放する開位置と、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿を押し付け可能な閉位置とを採り得るようになっている。
【0015】
また、ADF5は、少なくともその上方を開閉可能としたカバー55によって覆われている。カバー55は、原稿シートSの先端がそのカバー内に入るように原稿トレイ51の給紙側の端部付近の上方に給紙口55aを形成している。また、カバー55は、給紙口55aよりも内部に原稿トレイ51の先端部分が収納されるように、原稿トレイ51の先端部分の上方を覆っている。また、ADF5は、給紙口55aから排出口56までの原稿搬送通路52を形成する主要なガイド部分を、カバー55等に形成されたリブ等によって形成している。
【0016】
フラットベッドコンタクトガラス41は、読取装置6がフラットベッドスキャナとして動作する場合であって原稿シートが載置されるとき、その原稿シートの下面(被読取面)に対面するようになっている。また、第一DFコンタクトガラス42Aは、読取装置6がDFスキャナとして動作する場合には、原稿搬送通路52の所定の読取位置を通過する原稿シートの下面(被読取面)に対面するようになっている。さらに、第一DFコンタクトガラス42Aは、フラットベッドコンタクトガラス41に対して予め設定された傾斜角をなすよう傾斜している。また、第二DFコンタクトガラス42Bは、読取装置6がDFスキャナとして動作する場合には、原稿搬送通路52の所定の読取位置を通過する原稿シートの上面(被読取面)に対面するようになっている。
【0017】
画像読取部4の内部には、読取手段としての第一読取ユニット45と、図2中の左右方向に延びるガイドロッド46とが設けられている。第一読取ユニット45は、一体型光学走査ユニット47と、一体型光学走査ユニット47を保持するブラケット48と、一体型光学走査ユニット47とブラケット48との間に圧縮状態で組み込まれた複数の圧縮コイルばね49(弾性部材)とで構成されている。
【0018】
一体型光学走査ユニット47は、例えばモールドフレームに、等倍結像素子、ルーフミラーレンズアレイ、光路分離ミラー、等倍イメージセンサ、照明光源等を保持させた密着イメージセンサとして構成されている(密着等倍光学系)。この一体型光学走査ユニット47は、画像を主走査方向に高解像でライン走査することができ、ブック原稿等の画像読取りにも対応可能な大きな焦点深度を有するように構成されている。なお、一体型光学走査ユニット47は、DFスキャナとフラットベッドスキャナに対応できる構成であれば、特定の方式に限定されるものではない。主走査方向は、フラットベッドコンタクトガラス41の上面及び第一DFコンタクトガラス42Aの上面の双方に対して平行な方向(図2中の紙面垂直方向)である。
【0019】
一体型光学走査ユニット47は、また、ブラケット48の下方側に配置されたガイドロッド46によって副走査方向に移動自在に案内される。そして、その副走査方向の位置に応じて、一体型光学走査ユニット47は、その上部でフラットベッドコンタクトガラス41にスライド可能に当接する。これにより、第一読取ユニット45は、フラットベッドコンタクトガラス41に対向しているとき、ガイドロッド46に沿って移動自在であるものの、ガイドロッド46の軸回りの傾きを規制されてフラットベッドコンタクトガラス41と平行な姿勢をとる。これとともに、フラットベッドコンタクトガラス41に対する光軸方向の位置が決まる。このための具体的な構成及び第一DFコンタクトガラス42Aと対向しているときの、同様の傾き規制や位置決めのための具体的な構成については後に詳述する。
【0020】
この第一読取ユニット45は、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿シートの被読取面を主走査方向にライン走査するとともに副走査方向に移動することで、原稿シートの画像を読み取ることができる。また、第一読取ユニット45は、第一DFコンタクトガラス42A上を通過する原稿シートの画像を主走査方向にライン走査することで、原稿シートの画像を読み取ることができる。
【0021】
画像読取部4の内部には、無端のループ状でその周方向の一箇所に第一読取ユニット45のブラケット48が固定されたタイミングベルトが設けられている。また、画像読取部4の内部には、タイミングベルトが弛みなく掛け渡された複数のタイミングプーリと、いずれか1つのタイミングプーリを回転駆動するモータ等が設けられている。
【0022】
フラットベッドスキャナモードの読取動作を行う場合、第一読取ユニット45は、ホームポジションから副走査方向一方側に移動しながら、例えば図2に実線で示す停止位置付近のホームポジションから同図中の右側に移動する。そして、その微小移動距離毎に一体型光学走査ユニット47によるライン走査を実行して、フラットベッドコンタクトガラス41上の原稿シートの被読取面(下面)の画像を読み取る。また、その読取動作が終了すると、第一読取ユニット45は、再度ホームポジションに戻る。このフラットベッドスキャナモードにおける読取のために副操作方向に移動する範囲が第一位置に相当する。
【0023】
DFスキャナモードの読取動作を行う場合、第一読取ユニット45は、図2に実線で示すホームポジション(第一DFコンタクトガラス42Aの下方)で、第一DFコンタクトガラス42A上を通過する原稿シートの被読取面(下面)の画像を読み取る。このDFスキャナモードおける停止位置が第二位置に相当する。
【0024】
図示の複写機では、第一DFコンタクトガラス42Aの搬送方向上流側に位置する読取入口ローラ対52dのニップ位置から排出口56に至るまでの搬送通路部分が、DFコンタクトガラス42A,42Bに沿って略直線状に延びるストレート搬送通路を構成している。ストレート搬送通路は、原稿トレイ51から複数の搬送ローラ対52c,52dによって搬送されてきた原稿シートを、第一DFコンタクトガラス42Aの上面(第一読取位置)及び第二DFコンタクトガラス42Bの下面(第二読取位置)に沿って搬送する。
【0025】
また、このストレート搬送通路61は、手差しトレイ5aから搬入される原稿シートを、第一DFコンタクトガラス42Aの上面(第一読取位置)及び第二DFコンタクトガラス42Bの下面(第二読取位置)に沿って搬送する場合にも用いられる。さらに、図2中に仮想線で示すように開いた状態の手差しトレイ5a上にセットされる手差しの原稿シートや、閉じた状態の手差しトレイ5aに形成されているカード挿入用の挿入口5bにセットされる手差しの原稿シートを、略直線状に、第一DFコンタクトガラス42Aの上面(第一読取位置)及び第二DFコンタクトガラス42Bの下面(第二読取位置)に沿って搬送する場合にも用いられる。
【0026】
上記挿入口5bから原稿としてのカードを挿入できる。カードは、通常の原稿シートSよりも高い曲げ剛性を有するハードシート、特に小サイズのハードシートであり、上記ストレート搬送通路に沿って搬送される。ここにいう小サイズのハードシートとは、樹脂あるいは厚紙等で形成された標準定型サイズのカード類、例えば運転免許証、IDカード(身分証明書カード)、銀行等のキャッシュカード、クレジットカード、交通系等の電子マネーカードなどが上げられる。このようなカードを搬送するのにストレート搬送通路は好適である。
【0027】
図3は、一体型光学走査ユニット47を、フラットベッドコンタクトガラス41や第一DFコンタクトガラス42Aに対し、平行な姿勢を取らせ、かつ、光軸方向の位置決めを行うための従来構成を示すものである。一体型光学走査ユニット47の図中上面には例えば四隅に両ガラス41,42Aの下面に当接するとともに、摺動するための突起状の摺動部100が形成されている。この摺動部100の数は長手方向両側合計で最低3箇所、望ましくは、長手方向両側それぞれ2箇所以上の合計4箇所以上である。図3(a)がフラットベッドコンタクトガラス41に下面に当接している状態を示し、図3(b)が第一DFコンタクトガラス42Aの下面に当接した状態を示す。このように、従来は、フラットベッドコンタクトガラス41と第一DFコンタクトガラス42Aのそれぞれの下面に、共通の摺動部100を当接させるという構成を採用していた。
【0028】
なお、図3で、符号43aは画像読取部4の下フレーム、符号43bは上フレームをそれぞれ示す。フラットベッドコンタクトガラス41や第一DFコンタクトガラス42Aは、上フレーム43bに形成された窓部に嵌め込まれている。符号48cは、一体型光学走査ユニット47を保持するブラケット48の下面に固設されている軸受48cを示す。この軸受48cは一体型光学走査ユニット47の長手方向(紙面に垂直な方向)のほぼ中央に設けられ、これをガイドロッド46が貫通している。図示の例では、ブラケット48上で一体型光学走査ユニット47をガラスに向けて付勢する圧縮コイルばね49は長手方向の両端それぞれに2本づつ設けられている。ブラケット48の長手方向両端それぞれには保持腕部48aが設けられ、これに形成されてている長孔48bに一体型光学走査ユニット47の長手方向の両測面に外側へ突出するように設けられた支持軸47aが挿通されている。
【0029】
この従来の構成では、部品ばらつきなどに対処するための一体型光学走査ユニット47の光軸方向の位置調整がしづらいなどの課題が残されていた。この位置調整が必要になる場面は、次の三つに大別される。第一は、部品精度や組み付け精度のばらつきによって製造過程の最終段階で位置調整が必要になる場面である。第二は、例えば、第一DFコンタクトガラス42Aに対して原稿を、密着させて搬送しながら読み取る(接触搬送読取)か、空隙を開けて読み取る(非接触搬送読取)かを客先で変更する場合などのように、客先で一体型光学走査ユニット47のに位置調整が必要になる場面である。第三に、例えば、上記接触搬送読取の機種と、上記非接触搬送読取の機種とで主たる部品を共通化し、それぞれの機種の製造段階で機種に適した光軸方向の位置に組み付ける場面である。
【0030】
従来の構成では、第一の場面で、例えば、ガラスの厚みがばらついたり、摺動部の突出量がばらついたりすると、摺動部のガラス下面に対する突き当てで、そのばらつきが反映されたまま位置が決まってしまうので、そのままでは調整のしようがない。このため、ガラスを交換したり、摺動部を構成する部品を交換したりという手間が生じる。第二の場面では、第一DFコンタクトガラスを、厚みの異なるガラスに変更して、原稿通過位置とガラス下面位置の距離を焦点距離にするといった、ガラス部品という比較的高額な部品の交換を伴う客先での位置調整になってしまう。第三の場面でも、第二の場面と同様に、それぞれの機種用の第一DFコンタクトガラスを用意する必要があり、部品の共通化がその分できない。
【0031】
また、従来の構成では、次の異音や振動の課題も残されている。すなわち、フラットベッドコンタクトガラス41の下方と第一DFコンタクトガラス42Aの下方との間で、一体型光学走査ユニット47を移動する経路上で摺動部100が突き当たる箇所に段差があると、その段差を追加するときに、異音や振動を発生させてしまうという課題である。
【0032】
図3(c)は、段差部の一例を示す説明図である。上フレーム43bの下面とフラットベッドコンタクトガラス41の下流端の下面との間の段差Xや、上フレーム43bの下面と第一DFコンタクトガラス42Aの上流端の下面との間の段差Yが、どうしても生じてしまう。この段差を通過するとに、次のような衝突によって異音や振動を発生させる虞がある。段差部で高い方から低い方に移行するとき(図3(c)で左側に移動するとき)に、摺動部100が低い方の表面に衝突する。逆に段差部が低い方から高い方に移行するとき(図3(c)で右に移動するとき)に、摺動部100が高い方の端面と衝突する。
【0033】
また、自動原稿搬送装置でカードなど硬いものを読取る際には、読取対象をまっすぐに搬送させる構成をとる必要があり、図3(c)に示すように、フラットベッドでスキャンするときのコンタクトガラス面に対してDFスキャン時のコンタクトガラス面がある角度を持って配置される。この角度部分を一体型光学走査ユニット47が通過するときも、急な進行方向の変更で異音や振動が発生する虞がある。
【0034】
そこで、本実施形態では、第一DFコンタクトガラス42Aでの光軸方向の位置決めのために、摺動部100とは別に位置決め用の位置決め部を設けるとともに、第一DFコンタクトガラス42Aの箇所でこの位置決め部が当接する位置決め部材を設けた。
図4はその説明図、図5は分解斜視図である。本実施形態では、一体型光学走査ユニット47の長手方向の両側面それぞれに2本づつ円柱状の被ガイドピン110が長手方向外側に突出するように設けられている。この被ガイドピン110が上記位置決め部として機能する。
【0035】
そして、長手方向の両側面それぞれ2本の被ガイドピン110を第一DFコンタクトガラス42Aに対して位置決めする部材として、長い方向両側それぞれにガイド板120が設けられている。このガイド板120は第一DFコンタクトガラス42Aに対応する直線部120aと、この直線部120aにおけるフラットベッドコンタクトガラス41側の端部に連なり、この直線部120aに対し角度を持って傾斜してフラットベッドコンタクトガラス41に向けて直線的に延びる傾斜部120bとを備えている(図5参照)。上記直線部120aが上フレーム43bの下面における第一DFコンタクトガラス42Aが嵌め込まれた窓部の周縁部に例えば接着などで固定されている。上記傾斜部120bのフラットベッドコンタクトガラス41の端部は図示の例ではフラットベッドコンタクトガラス41の図中左側の端部よりも図中右側に位置する。そして、この傾斜部120bがフラットベッドコンタクトガラス41と第一DFコンタクトガラス42Aとの間の角度部分をまたぐような姿勢で、その図中右側の端部が上フレームに例えば接着などにより固定されている。なお、図5中、符号47bは走査領域を示す。
【0036】
図4(a)及び図4(c)に示すようにフラットベッドコンタクトガラス41から第一DFコンタクトガラス42Aに向けて移動する(図中左側に移動する)とき、移動方向先端側の摺動部100がフラットベッドコンタクトガラス41下面を摺動している範囲(第一当接状態の範囲)で被ガイドピン110がガイド板120の傾斜部120bに下面に接触(第二当接状態)を開始(切り替わり)してガイドされはじめる。
【0037】
図示の例では、図4(c)で左側の摺動部材100と左側の被ガイドピン110とが移動方向でほぼ同じ位置で、右側についても同様である。このため、上述のガイドのされ方になるよう、上記傾斜部120bのフラットベッドコンタクトガラス41の端部がフラットベッドコンタクトガラス41の図中左側の端部よりも図中右側に位置させている。摺動部材100と被ガイドピン110との移動方向における位置関係によって、上記傾斜部120bのフラットベッドコンタクトガラス41の端部の位置が決まる。
【0038】
そして、この先端側の摺動部100は傾斜部120bでガイドされつづけ、その後、直線部120aにガイドされてDFスキャナモードにおける停止位置に到達してその停止位置に停止する。この移動の間、移動方向後端側の摺動部100も同様にして傾斜部120b及び直線部120aにガイドされていく。
【0039】
停止位置では、長手方向の両端部それぞれ2箇所、合計4箇所の被ガイドピン110とガイド板120の直線部120aとの当接により、一体型光学走査ユニット47の光軸方向の位置が決まるとともに第一DFコンタクトガラス42Aに対する傾きが規定される。具体的にはガイド板120の直線部120aの下面が第一DFコンタクトガラス42Aに平行であれば、一体型光学走査ユニット47が同ガラス42Aに平行になる。
【0040】
本実施形態によれば、種々の場面で一体型光学走査ユニット47の光軸方向の位置調整が可能である。製造過程の最終段階で、例えば、第一DFコンタクトガラス42Aの厚みがばらついたり、被ガイドピン11の径がばらついたりした結果、焦点が合わない場合は次のとおりである。ガイド板120の上フレーム43bへの取り付けにあたって、例えば接着にあたってスペーサを介在させたり、互いに光軸方向の位置が異なる取り付け箇所をフレームに用意しておいて、取り付け箇所を変更したりして光軸方向の位置を調整することに可能である。互いに光軸方向の厚みが異なるガイド板120を用意しておいて使用するガイド板を選択することによって調整することも可能である。
【0041】
また、客先で、接触搬送読取か、非接触搬送読取かを変更する場合、上記製造過程の最終段階の場合と同様にして位置調整が可能である。光軸方向の厚みが異なるガイド板120に交換する場合にも、第一DFコンタクトガラス42Aを交換することなる従来の場合よりも低コスト化が可能である。接触搬送読取の機種と、非接触搬送読取の機種とで主たる部品を共通化し、それぞれの機種の製造段階で機種に適した光軸方向の位置に組み付ける場合も、上記製造過程の最終段階の場合と同様にして位置調整が可能であり、少なくもと、それぞれの機種用の第一DFコンタクトガラスを用意する必要はない。
【0042】
また、フラットベッドコンタクトガラス41は、操作者が原稿を載せて上から力を加えることがあるため、ある程度の強度が必要でそれに応じて厚いガラスを使用する必要がある。これに比べ、第一DFコンタクトガラス42Aは加わる外力が格段に小さいので、比較的薄いガラスを使用可能である。しかし、従来の構成では、共通の摺動部をそれぞれのガラスの下面に当接させて光軸方向の位置決めをしていたため、例えば、共にガラス上面に原稿を密着させて読み取る場合には同じ厚みのガラスを使用せざるを得なかった。これに対し、本実施形態では、第一DFコンタクトガラス42Aでの光軸方向の位置決めは、摺動部100とは別の位置決め部及びガイド部で行うので、摺動部100を共通して用いることに伴うガラスの厚みに関する制約がなくなるという利点もある。
【0043】
そして、図3(c)に示すような段差X、Yや角度部には、摺動部100が接触しないように被ガイドピン110がガイド板120でガイドされる。よって、段差などへの衝突による異音や振動を防止できる。なお、ガイド板120の直線部120aと傾斜部120bとの間は角度をもっているため、このような角度をもたない場合よりは被ガイドピン110の案内にあって多少の振動を及ぼし得るが、この角度は、従来構造におけるフラットベッドコンタクトガラス41と第一DFコンタクトガラス42Aとの間の角度よりも小さく設定して、比較的小さな振動に抑えることが可能である。
【0044】
図6は変形例の説明図である。この変形例の装置では、ガイド板120の光軸方向の位置を、装置外部であるフレーム外から調整可能にしている。一体型光学走査ユニット47の長手方向(紙面に垂直な方向)の両側それぞれのガイド板120をリンク121、121により少なくとも光軸方向に移動可能に上フレーム43bに取り付けている。そして、ガイド板120のフラットベッドコンタクトガラス41とは反対側(図中左側)の端部に、頭部122aが上フレーム43bの外に位置し、軸部122bが上フレーム43bに形成した上下に長い断面長孔状の貫通孔160を通る位置調整ピン122の先端を螺合により取り付けている。この位置調整ピン122を正逆回転させて回転位置を変更するとともに貫通孔160内での上下位置を変更することによってガイド板120を進退させるとともに光軸方向に変位させて光軸方向の位置を調整できる。なお、図中、符号130は第一DFコンタクトガラス42A上に例えば貼付などで取り付けて非接触搬送に切り替えるための非接触搬送用シートである。読取用の開口130aが形成されている。原稿はこのシート130の表面を擦りながら搬送される結果、第一DFコンタクトガラス42Aの表面に原稿が接触することを防止できる。客先で接触搬送だったものを非接触搬送に切り替える場合に、このシートを取り付ける。このようなシートを用いるのに代え、第一DFコンタクトガラス42Aに対向する原稿を経路を規定する搬送ガイド機構を調整することによって接触搬送と非接触搬送とを切り替えてもよい。
【0045】
以上、本実施形態では、ガラスへのと当接と位置決め部材への当接とを、前者をフラットベッドコンタクトガラス41に対して行い、後者を第一DFコンタクトガラス42Aに対して行ったが、この逆の関係で光軸上の位置決めをおこなってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 :複写機
1M :装置本体
3 :画像形成部
4 :画像読取部
5 :ADF
5a :手差しトレイ
5b :挿入口
6 :読取装置
11 :被ガイドピン
41 :フラットベッドコンタクトガラス
42A :第一DFコンタクトガラス
42B :第二DFコンタクトガラス
43a :下フレーム
43b :上フレーム
45 :第一読取ユニット
46 :ガイドロッド
47 :一体型光学走査ユニット
47a :支持軸
48 :ブラケット
48a :保持腕部
48b :長孔
48c :軸受
49 :圧縮コイルばね
51 :原稿トレイ
52 :原稿搬送通路
52a :ピックアップローラ
52b :分離ローラ
52c :プルアップローラ対
52d :読取入口ローラ対
52e :読取出口ローラ対
52f :排紙ローラ対
53 :排紙トレイ
55 :カバー
55a :給紙口
56 :排出口
61 :ストレート搬送通路
100 :摺動部
110 :被ガイドピン
120 :ガイド板
120a :直線部
120b :傾斜部
121 :リンク
122 :位置調整ピン
122a :頭部
122b :軸部
130 :シート
130a :開口
160 :貫通孔
DF :第一
S :原稿シート
X :段差
Y :段差
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【文献】特開2006-115031号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6