(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-05-18
(45)【発行日】2022-05-26
(54)【発明の名称】欠陥検査装置、欠陥検査方法、円偏光板又は楕円偏光板の製造方法及び位相差板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/89 20060101AFI20220519BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220519BHJP
G01N 21/896 20060101ALI20220519BHJP
【FI】
G01N21/89 H
G02B5/30
G01N21/896
(21)【出願番号】P 2018168996
(22)【出願日】2018-09-10
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】P 2017176088
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176658
【氏名又は名称】和田 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 泰紀
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/191133(WO,A1)
【文献】特開2007-212442(JP,A)
【文献】特開2001-159582(JP,A)
【文献】特開2013-068500(JP,A)
【文献】特開2015-040835(JP,A)
【文献】国際公開第2011/007047(WO,A1)
【文献】特開2015-137927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G02B 5/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光板と前記直線偏光板に積層された位相差板とを有する円偏光板又は楕円偏光板の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
前記円偏光板又は楕円偏光板が有する前記直線偏光板側に配置されており、前記円偏光板又は楕円偏光板の撮像領域に検査光を照射する光照射部と、
前記円偏光板又は楕円偏光板からみて前記光照射部と反対側に配置されており、前記検査光が照射された前記円偏光板又は楕円偏光板から出力される光を前記円偏光板又は楕円偏光板側に反射する反射部材と、
前記円偏光板又は楕円偏光板からみて前記光照射部と同じ側に配置されており前記撮像領域を撮像する撮像部と、
を備
え、
前記反射部材は、前記位相差板に前記反射部材の反射面が接するように配置されている、
欠陥検査装置。
【請求項2】
直線偏光を円偏光又は楕円偏光に変換して出力する位相差板の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、
直線偏光板と、
前記直線偏光板を通して前記位相差板の撮像領域に検査光を照射する光照射部と、
前記位相差板からみて前記光照射部と反対側に配置されており、前記検査光が照射された前記位相差板から出力される光を前記位相差板側に反射する反射部材と、
前記位相差板からみて前記光照射部と同じ側に配置されており前記直線偏光板を通して前記撮像領域を撮像する撮像部と、
を備
え、
前記反射部材は、前記位相差板に前記反射部材の反射面が接するように配置されている、
欠陥検査装置。
【請求項3】
前記光照射部は、前記撮像部の光軸と同軸で前記検査光を前記撮像領域に照射する、
請求項1又は2に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記光照射部は、前記撮像部の光軸に対して交差する光軸で前記検査光を前記撮像領域に照射する、
請求項1又は2に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記光照射部は、前記撮像部の周囲を囲むように配置された複数の光源を有する、
請求項1,2,4の何れか一項に記載の欠陥検査装置。
【請求項6】
前記反射部材は、表面が鏡面加工されたロールである、
請求項1~5の何れか一項に記載の欠陥検査装置。
【請求項7】
直線偏光板と直線偏光板に積層された位相差板とを有する円偏光板又は楕円偏光板の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
光照射部からの検査光を、前記直線偏光板側から、前記円偏光板又は楕円偏光板の撮像領域に照射する光照射工程と、
前記検査光が照射された前記円偏光板又は楕円偏光板から出力される光を前記円偏光板又は楕円偏光板側に反射部材で反射する反射工程と、
前記円偏光板又は楕円偏光板からみて前記光照射部と同じ側に配置されている撮像部で、前記撮像領域を撮像する撮像工程と、
を備
え、
前記反射部材は、前記位相差板に前記反射部材の反射面が接するように配置されている、
欠陥検査方法。
【請求項8】
前記反射部材は、表面が鏡面加工されたロールであり、
長尺の前記円偏光板又は楕円偏光板を前記ロールで搬送しながら、前記光照射工程、前記反射工程及び前記撮像工程を実施する、
請求項7に記載の欠陥検査方法。
【請求項9】
直線偏光を円偏光又は楕円偏光に変換して出力する位相差板の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、
光照射部からの検査光を、直線偏光板を通して前記位相差板の撮像領域に照射する光照射工程と、
前記検査光が照射された前記位相差板から出力される光を前記位相差板側に反射部材で反射する反射工程と、
前記位相差板からみて前記光照射部と同じ側に配置されている撮像部で、前記直線偏光板を通して前記撮像領域を撮像する撮像工程と、
を備
え、
前記反射部材は、前記位相差板に前記反射部材の反射面が接するように配置されている、
欠陥検査方法。
【請求項10】
前記反射部材は、表面が鏡面加工されたロールであり、
長尺の前記位相差板を前記ロールで搬送しながら、前記光照射工程、前記反射工程及び前記撮像工程を実施する、
請求項9に記載の欠陥検査方法。
【請求項11】
前記光照射工程では、前記撮像部の光軸と同軸で前記検査光を前記撮像領域に照射する、
請求項7~10の何れか一項に記載の欠陥検査方法。
【請求項12】
前記光照射工程では、前記撮像部の光軸に対して交差する光軸で前記検査光を前記撮像領域に照射する、
請求項7~10の何れか一項に記載の欠陥検査方法。
【請求項13】
前記光照射工程では、前記撮像部の周囲を囲むように配置された複数の光源からの前記検査光を前記撮像領域に照射する、
請求項7~10,12の何れか一項に記載の欠陥検査方法。
【請求項14】
請求項7又は8に記載の欠陥検査方法を含み、前記欠陥検査方法で前記円偏光板を検査する、円偏光板の製造方法。
【請求項15】
請求項7又は8に記載の欠陥検査方法を含み、前記欠陥検査方法で前記楕円偏光板を検査する、楕円偏光板の製造方法。
【請求項16】
請求項9又は10に記載の欠陥検査方法を含む、位相差板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置、欠陥検査方法、円偏光板又は楕円偏光板の製造方法及び位相差板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の従来技術として、特許文献1の技術が知られている。特許文献1には、少なくとも偏光板と光学補償層とが積層された積層フィルムの製造方法、欠陥検出装置及び欠陥検査方法が開示されている。上記光学補償層が、直線偏光から円偏光又は楕円偏光を生成する機能(位相差板に相当)を有する場合、上記積層フィルムは円偏光板又は楕円偏光板に相当する。特許文献1の技術では、検査対象である積層フィルムの偏光板側から積層フィルムに光を照射し、積層フィルムの光学補償層側に配置された撮像部で積層フィルムの透過光像を取得する。積層フィルムと撮像部との間には、積層フィルム側から順に検査用位相差フィルタ及び検査用偏光フィルタが配置されている。これらのフィルタの機能により、積層フィルムに欠陥が生じていない場合には撮像部で得られた画像が黒く表示され、積層フィルムに欠陥が生じている場合に撮像部で得られる画像において欠陥部分が明るくなる。その結果、撮像部で得られた画像で欠陥の有無が判別できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で使用されている検査用位相差フィルタは、積層フィルムが有する光学補償層による位相差を打ち消すために使用されている。よって、より正確に検査を実施するためには、検査用位相差フィルタは、光学補償層に応じて交換しなければならない。そのため、円偏光板若しくは楕円偏光板の欠陥検査又は直線偏光から円偏光若しくは楕円偏光を生成する位相差板の欠陥検査を実施する際に、特許文献1の技術を適用すると、欠陥検査装置及び欠陥検査方法の汎用性が低下する。
【0005】
したがって、本発明は、高い汎用性を実現可能な、円偏光板若しくは楕円偏光板の欠陥又は円偏光光若しくは楕円偏光光の生成に使用される位相差板の欠陥を検査するための欠陥検査装置及び欠陥検査方法、並びに、上記欠陥検査方法を用いた円偏光板又は楕円偏光板の製造方法及び位相差板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る欠陥検査装置は、直線偏光板と上記直線偏光板に積層された位相差板とを有する円偏光板又は楕円偏光板の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、上記円偏光板又は楕円偏光板が有する上記直線偏光板側に配置されており、上記円偏光板又は楕円偏光板の撮像領域に検査光を照射する光照射部と、上記円偏光板又は楕円偏光板からみて上記光照射部と反対側に配置されており、上記検査光が照射された上記円偏光板又は楕円偏光板から出力される光を上記円偏光板又は楕円偏光板側に反射する反射部材と、上記円偏光板又は楕円偏光板からみて上記光照射部と同じ側に配置されており上記撮像領域を撮像する撮像部と、を備える。
【0007】
円偏光板又は楕円偏光板に欠陥が存在しないと仮定した場合、上記欠陥検査装置では、円偏光板又は楕円偏光板から反射部材側に出力される光は円偏光光又は楕円偏光光である。以下説明の便宜のため、直線偏光板側から円偏光板又は楕円偏光板に入射され円偏光板又は楕円偏光板から出力される光の円偏光又は楕円偏光を右回りの円偏光又は楕円偏光と仮定する。この場合、反射部材で反射される円偏光板又は楕円偏光板側に戻る光の円偏光又は楕円偏光は、左回りの円偏光又は楕円偏光である。よって、反射部材で反射された光は円偏光板又は楕円偏光板を通過できないので、撮像部で得られた画像は黒く表示された黒画像である。一方、円偏光板又は楕円偏光板に欠陥が生じていると、欠陥によって偏光状態が乱されるので、反射部材から円偏光板又は楕円偏光板側に戻ってきた光に円偏光板又は楕円偏光板を通過する成分が含まれる。そのため、撮像部で得られた画像には、欠陥に対応する明部が存在する。その結果、円偏光板又は楕円偏光板の欠陥を検査し得る。
【0008】
本発明の他の側面に係る欠陥検査装置は、直線偏光を円偏光又は楕円偏光に変換して出力する位相差板の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、直線偏光板と、上記直線偏光板を通して上記位相差板の撮像領域に検査光を照射する光照射部と、上記位相差板からみて上記光照射部と反対側に配置されており、上記検査光が照射された上記位相差板から出力される光を上記位相差板側に反射する反射部材と、上記位相差板からみて上記光照射部と同じ側に配置されており上記直線偏光板を通して上記撮像領域を撮像する撮像部と、を備える。
【0009】
位相差板に欠陥が存在しないと仮定した場合、上記欠陥検査装置では、直線偏光板を通して位相差板に検査光が照射されるので、位相差板から反射部材側に出力される光は、円偏光光又は楕円偏光光である。以下説明の便宜のため、直線偏光板を通して位相差板に検査光が入射された場合に位相差板から出力される光の円偏光又は楕円偏光を右回りの円偏光又は楕円偏光と仮定する。この場合、反射部材で反射され位相差板側に戻る光の円偏光又は楕円偏光は、左回りの円偏光又は楕円偏光である。上記直線偏光板を通して位相差板に照射された光が右回りの円偏光光又は楕円偏光光であることから、反射部材から左回りの円偏光光又は楕円偏光光が位相差板に入射されると、直線偏光板とクロスニコルである直線偏光光が、直線偏光板に向けて位相差板から出力される。よって、撮像部で得られた画像は黒画像である。一方、位相差板に欠陥が生じていると、欠陥によって偏光状態が乱されるので、反射部材で反射され位相差板を通過した光に、直線偏光板を通過可能な成分が含まれる。そのため、直線偏光板を通して撮像部で撮像領域を撮像することによって得られた画像に、欠陥に対応する明部が存在する。その結果、位相差板の欠陥を検査し得る。
【0010】
上記光照射部は、上記撮像部の光軸と同軸で上記検査光を上記撮像領域に照射してもよい。
【0011】
上記光照射部は、上記撮像部の光軸に対して交差する光軸で上記検査光を上記撮像領域に照射してもよい。
【0012】
上記光照射部は、上記撮像部の周囲を囲むように配置された複数の光源を有してもよい。
【0013】
上記反射部材は、表面が鏡面加工されたロールであってもよい。
【0014】
本発明の他の側面に係る欠陥検査方法(以下、「第1欠陥検査方法」と称す)は、直線偏光板と直線偏光板に積層された位相差板とを有する円偏光板又は楕円偏光板の欠陥を検査する欠陥検査方法であって、光照射部からの検査光を、上記直線偏光板側から、上記円偏光板又は楕円偏光板の撮像領域に照射する光照射工程と、上記検査光が照射された上記円偏光板又は楕円偏光板から出力される光を上記円偏光板又は楕円偏光板側に反射部材で反射する反射工程と、上記円偏光板又は楕円偏光板からみて上記光照射部と同じ側に配置されている撮像部で、上記撮像領域を撮像する撮像工程と、を備える。
【0015】
円偏光板又は楕円偏光板に欠陥が存在しないと仮定した場合、上記光照射工程で円偏光板又は楕円偏光板に検査光を照射すると、円偏光板又は楕円偏光板から反射部材側に円偏光光又は楕円偏光光が出力される。以下説明の便宜のため、直線偏光板側から円偏光板又は楕円偏光板に入射され円偏光板又は楕円偏光板から出力される光の円偏光又は楕円偏光を右回りの円偏光又は楕円偏光と仮定する。この場合、反射工程で、反射部材で反射され円偏光板又は楕円偏光板側に戻る光の円偏光又は楕円偏光は、左回りの円偏光又は楕円偏光である。よって、反射部材で反射された光は円偏光板又は楕円偏光板を通過できないので、撮像工程において撮像部で得られた画像は黒画像である。一方、円偏光板又は楕円偏光板に欠陥が生じていると、欠陥によって偏光状態が乱されるので、反射部材から円偏光板又は楕円偏光板側に戻ってきた光に円偏光板又は楕円偏光板を通過する成分が含まれる。そのため、撮像工程において撮像部で得られた画像には、欠陥に対応する明部が存在する。その結果、円偏光板又は楕円偏光板の欠陥を検査し得る。
【0016】
本発明の他の側面に係る欠陥検査方法(以下、「第2欠陥検査方法」と称す)は、直線偏光を円偏光又は楕円偏光に変換して出力する位相差板の欠陥を検査する欠陥検査装置であって、光照射部からの検査光を、直線偏光板を通して上記位相差板の撮像領域に照射する光照射工程と、上記検査光が照射された上記位相差板から出力される光を上記位相差板側に反射部材で反射する反射工程と、上記位相差板からみて上記光照射部と同じ側に配置されている撮像部で、上記直線偏光板を通して上記撮像領域を撮像する撮像工程と、を備える。
【0017】
位相差板に欠陥が存在しないと仮定した場合、上記光照射工程で、直線偏光板を通して位相差板に検査光が照射すると、位相差板から反射部材側に円偏光光又は楕円偏光光が出力される。以下説明の便宜のため、直線偏光板を通して位相差板に検査光が入射された場合に位相差板から出力される光の円偏光又は楕円偏光を右回りの円偏光又は楕円偏光と仮定する。この場合、反射工程において反射部材で反射され位相差板側に戻る光の円偏光又は楕円偏光は、左回りの円偏光又は楕円偏光である。上記直線偏光板を通して位相差板に照射された光が右回りの円偏光光又は楕円偏光光であることから、反射部材から左回りの円偏光光又は楕円偏光光が位相差板に入射されると、直線偏光板とクロスニコルである直線偏光光が、直線偏光板に向けて位相差板から出力される。よって、撮像工程において、直線偏光板を通して撮像部で撮像領域を撮像することによって得られた画像は黒画像である。一方、位相差板に欠陥が生じていると、欠陥によって偏光状態が乱されるので、反射部材で反射され位相差板を通過した光に、直線偏光板を通過可能な成分が含まれる。そのため、撮像工程において、直線偏光板を通して撮像部で撮像領域を撮像することによって得られた画像に、欠陥に対応する明部が存在する。その結果、位相差板の欠陥を検査し得る。
【0018】
上記第1又は第2欠陥検査方法において、反射部材は、表面が鏡面加工されたロールであり、長尺の上記円偏光板若しくは楕円偏光板又は上記位相差板を上記ロールで搬送しながら、上記光照射工程、上記反射工程及び上記撮像工程を実施してもよい。
【0019】
上記第1又は第2欠陥検査方法の上記光照射工程では、上記撮像部の光軸と同軸で上記検査光を上記撮像領域に照射してもよい。
【0020】
上記第1又は第2欠陥検査方法の上記光照射工程では、上記撮像部の光軸に対して交差する光軸で上記検査光を上記撮像領域に照射してもよい。
【0021】
上記第1又は第2欠陥検査方法の上記光照射工程では、上記撮像部の周囲を囲むように配置された複数の光源からの上記検査光を上記撮像領域に照射してもよい。
【0022】
本発明は、上記第1欠陥検査方法を含み、上記第1欠陥検査方法で上記円偏光板を検査する、円偏光板の製造方法にも係る。本発明は、上記第1欠陥検査方法を含み、上記第1欠陥検査方法で上記楕円偏光板を検査する、楕円偏光板の製造方法にも係る。
【0023】
本発明は、上記第2欠陥検査方法を含む、位相差板の製造方法にも係る。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高い汎用性を実現可能な、円偏光板若しくは楕円偏光板の欠陥又は円偏光光若しくは楕円偏光光の生成に使用される位相差板の欠陥を検査するための欠陥検査装置及び欠陥検査方法、並びに、上記欠陥検査方法を用いた円偏光板又は楕円偏光板の製造方法及び位相差板の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、円偏光板の欠陥を検査する欠陥検査装置の一例の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した検査対象である円偏光板のII―II線に沿った断面図である。
【
図3】
図3は、欠陥の検出原理を説明するための図面である。
【
図4】
図4は、比較対象の欠陥検査装置の概略構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、変形例1に係る欠陥検査装置の概略構成を示す模式図である。
【
図6】
図6は、変形例2に係る欠陥検査装置の概略構成を示す模式図である。
【
図7】
図7は、円偏光板の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、直線偏光光から円偏光光を生成する位相差板の欠陥を検査する欠陥検査装置の一例の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。同一の要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0027】
(第1実施形態)
図1は、一実施形態に係る欠陥検査装置の構成を示す模式図である。欠陥検査装置10は、円偏光板12の欠陥を検査する装置であり、光照射部14と、反射部材16と、撮像部18とを備える。
【0028】
検査対象である円偏光板12は、
図1及び
図2に示したように、直線偏光板20と、位相差板22とを備える。
【0029】
直線偏光板20は、直線偏光特性を有する偏光フィルム24の一方の面に保護フィルム26Aが貼合されるとともに、偏光フィルム24の他方の面に保護フィルム26Bが貼合されて構成されている。偏光フィルム24の材料としては、例えばPVA(Polyvinyl Alcohol)が挙げられる。保護フィルム26Aの材料としては、例えばTAC(Triacetyl cellulose)、COP(Cyclo OlefinPolymer)、PET(Polyethylene Terephthalate)などが挙げられる。保護フィルム26Bの材料としては、保護フィルム26Aの材料として挙げられたものを用いることができる。直線偏光板20の構成は、
図2に示した構成に限定されない。例えば、直線偏光板20は、保護フィルム26A及び保護フィルム26Bの一方を有していればよい。
【0030】
位相差板22は、直線偏光板20に積層されており、直線偏光板20を通過した直線偏光光を円偏光光に変換する。すなわち、位相差板22はλ/4板として機能する。位相差板22は、例えば接着剤層(不図示)を介して直線偏光板20に貼合され得る。位相差板22は、単層構造であってもよいし、位相差板22全体としてλ/4板として機能するように構成されていれば多層構造を有してもよい。例えば、位相差板22は、λ/2板とλ/4板とが積層された構造を有し得る。
【0031】
図1に示したように、光照射部14は、円偏光板12が有する直線偏光板20側に配置されており、円偏光板12の撮像領域Aに検査光28を照射する。光照射部14は、検査光28を出力する光源30を備える。光源30としては、例えば、蛍光灯(特に高周波蛍光灯)、メタルハライドランプ、ハロゲン伝送ライト、発光ダイオード(LED)などが挙げられる。本実施形態の光照射部14は、ハーフミラー32を更に備え、ハーフミラー32によって、光源30から出力された検査光28を撮像部18の光軸34と同軸で検査光28を撮像領域Aに照射する。
図1では、図示及び説明の都合上、検査光28の進行方向と、光軸34とを若干ずらして示している。
【0032】
反射部材16は、円偏光板12からみて光照射部14と反対側に配置されている。換言すれば、反射部材16は、円偏光板12の位相差板22側に配置されている。反射部材16は、検査光28が照射された円偏光板12から出力される光を円偏光板12側に反射する。反射部材16としては、例えば反射板(ミラー)が挙げられる。円偏光板12が、一方向に延在している場合、円偏光板12を長手方向に搬送するためのロールを反射部材16として使用できる。この場合、反射部材16としてのロールのロール表面が鏡面加工されていればよい。
【0033】
撮像部18は、円偏光板12からみて光照射部14と同じ側に配置されており、撮像領域Aを撮像する。撮像領域Aは、撮像部18の視野領域に相当する。撮像部18の例はカメラである。カメラは、エリアセンサカメラ(2次元センサカメラ)でもよいし、ラインセンサカメラでもよい。エリアセンサカメラの例は、CCDカメラである。撮像部18は、カメラとは別にカメラに光を集光する集光光学系を更に有してもよい。
【0034】
欠陥検査装置10は、
図1に示したように、解析装置36を備えてもよい。解析装置36は、例えばコンピュータ(演算部)を有し、画像に対応する画像データに対して円偏光板12に存在する欠陥の検査処理を行う。具体的には、解析装置36は、撮像部18から入力される画像データ(撮像データ)を解析して欠陥部分を検出する。解析装置36は、欠陥部分を強調表示するような画像処理を実施する機能、円偏光板12の画像に対して欠陥位置を示す欠陥マップを作成する機能などを有してもよい。解析装置36は、欠陥の検査処理及びそのための画像処理を実行できる装置であれば限定されない。例えば、解析装置36として、検査処理用に製造された装置でもよいし、検査処理用のソフトウエアがインストールされたパーソナルコンピュータでもよい。解析装置36は、撮像部18の撮像タイミングを制御する機能を有してもよい。
【0035】
次に、欠陥検査装置10を用いた欠陥検査方法を説明する。円偏光板12の欠陥を検査するために、光照射部14からの検査光28を、直線偏光板20側から円偏光板12の撮像領域Aに照射する(光照射工程)。撮像領域Aに照射された検査光28は、円偏光板12を透過して反射部材16側に出力される。検査光28が照射された円偏光板12から出力された光は、反射部材16によって円偏光板12側に反射される(反射工程)。光照射部14から検査光28を出力した状態で、撮像部18が撮像領域Aを撮像する(撮像工程)。よって、撮像工程では、反射部材16で反射された光で照明された状態の撮像領域Aが撮像される。撮像工程で得られた撮像領域Aの画像に基づいて円偏光板12の欠陥の有無が判断され得る。この点を、
図3を利用して説明する。
【0036】
図3は、円偏光板12に欠陥が存在しないと仮定した場合の検査光28の偏光状態を示している。
図3では、説明のために、円偏光板12を直線偏光板20と位相差板22とに分解して図示している。検査光28の進行状態を破線の矢印で示している。
【0037】
図3に示したように、第1偏光方向p1の成分と第2偏光方向p2の成分とを含む無偏光状態の検査光28が直線偏光板20側から円偏光板12に入射する。この場合、直線偏光板20の偏光軸20aと平行ニコルである第1偏光方向p1の直線偏光光が直線偏光板20から出力される。直線偏光板20から出力された直線偏光光が位相差板22に入射すると、位相差板22から、第1回転方向r1の円偏光光が反射部材16に向けて出力され、反射部材16で円偏光板12側に反射される。位相差板22から出力された円偏光光が反射部材16で反射すると、第1回転方向r1と逆方向である第2回転方向r2の円偏光光(逆円偏光光)が位相差板22に再度入射する。例えば、第1回転方向r1が右回りである場合、反射部材16から位相差板22に戻る光は、左回りの円偏光光である。第2回転方向r2の円偏光光が位相差板22に入射すると、第1偏光方向p1に直交する第2偏光方向p2を有する直線偏光光が直線偏光板20に向けて出力される。この第2偏光方向p2の直線偏光光は、直線偏光板20に対してクロスニコルであることから、直線偏光板20でカットされる。そのため、反射部材16で反射された光は、円偏光板12を通過できない。よって、撮像部18で得られた画像は黒く表示された黒画像である。
【0038】
一方、円偏光板12に欠陥が存在していると、上述した直線偏光板20及び位相差板22から出力された光の偏光状態が欠陥によって乱される。その結果、反射部材16から円偏光板12に戻された光のうちの一部が円偏光板12を通過する。円偏光板12を通過した光は、撮像部18に入射して検出される。その結果、円偏光板12に欠陥が存在していると、撮像部18で得られた画像において、欠陥部分が明部として現れる。
【0039】
上記のように、円偏光板12に欠陥が存在しない場合、撮像部18で黒画像が得られるのに対して、円偏光板12に欠陥が存在していると、撮像部18で得られる画像に欠陥部分が明部として現れる。よって、撮像部18で得られた画像に基づいて、円偏光板12の欠陥の有無を判断できる。換言すれば、欠陥検査装置10で、円偏光板12の欠陥検査が可能である。
【0040】
例えば反射部材16を使用せずに円偏光板12の欠陥を検査する装置構成としては、
図4に示した欠陥検査装置38が考えられる。欠陥検査装置38は、光照射部14が光源30自体であって、光源30が円偏光板12に対して撮像部18と反対側(円偏光板12の位相差板22側)に配置されている点、及び、円偏光板12と光源30との間に、円偏光板40が配置されている点で、欠陥検査装置10の構成と相違する。円偏光板40は、検査用の円偏光フィルタであり、円偏光板12で生成される円偏光光に対する逆円偏光光を生成する。欠陥検査装置38では、円偏光板12に欠陥がなければ、円偏光板40で生成された円偏光光は円偏光板12を通過できないので、撮像部18で得られた画像は黒画像である。一方、円偏光板12に欠陥が含まれていると、欠陥部分で光の偏光状態が乱されるので、円偏光板40で生成された円偏光光の一部が円偏光板12を通過する。その結果、撮像部18で得られた画像において欠陥部分が明部として現れる。
【0041】
図4に示した欠陥検査装置38でも上記のように円偏光板12の欠陥を検査できる。しかしながら、検査対象である円偏光板12を交換する毎に、検査対象に応じた円偏光板40を準備する必要がある。更に、検査用の円偏光板40を光源30の近くに配置することから、円偏光板40が劣化し、円偏光板40の交換回数が増えるおそれがある。
【0042】
これに対して、欠陥検査装置10では、円偏光板12に対して、光照射部14及び撮像部18と反対側に反射部材16を配置し、反射部材16で円偏光板12から反射部材16側に出力された光を反射している。これによって、円偏光板12で生成された円偏光光に対する逆円偏光光で円偏光板12を照明できる。よって、
図4に示した欠陥検査装置38のように、検査用の円偏光板40が不要である。更に、反射部材16で円偏光板12から出力された光を反射することで、円偏光板12で生成される円偏光光に対する逆円偏光光を円偏光板12に入射できるので、一つの欠陥検査装置10で、異なる円偏光特性を有する円偏光板12の欠陥をより正確に検査可能である。すなわち、欠陥検査装置10は、高い汎用性を有する。
図4に示したように、検査用の円偏光板40が不要であることから、欠陥検査装置10では、円偏光板40の劣化という問題も存在しない。円偏光板12が例えば液晶パネルに適用される場合、
図1に示した形態は実際に円偏光板12が使用形態に近い状態である。したがって、
図1に示した欠陥検査装置10では、円偏光板12の使用形態に近い状態で円偏光板12の欠陥を検査できる。その結果、欠陥検査装置10では、円偏光板12の使用形態で排除すべき欠陥を効率的に検出できる。
【0043】
次に、欠陥検査装置10の変形例を説明する。
【0044】
(変形例1)
図5は、第1実施形態の変形例1に係る欠陥検査装置10Aの模式図である。欠陥検査装置10Aは、光照射部14が、撮像部18の光軸34に対して交差する光軸(光照射部の光軸)42で検査光28を撮像領域Aに照射するように配置されている点で、欠陥検査装置10と主に相違する。変形例1の光照射部14は、光源30自体であり得る。欠陥検査装置10Aでは、反射部材16は、
図5に示したように、円偏光板12の位相差板22に反射部材16の反射面が接するように配置されていることが好ましい。これにより、光照射部14から円偏光板12に照射された検査光28と、反射部材16で反射された光とが、円偏光板12においてほぼ同じ領域を通過できるからである。光照射部14から円偏光板12に照射された検査光28と、反射部材16で反射された光とが、円偏光板12においてほぼ同じ領域を通過可能であれば、反射部材16は、円偏光板12の位相差板22から離れていてもよい。反射部材16は、反射板(ミラー)でもよいし、ロール表面が鏡面加工されたロールでもよい。このロールは、例えば、円偏光板12の搬送に使用され得る。欠陥検査装置10Aは、光照射部14と撮像部18の配置関係以外は、欠陥検査装置10の構成と同じである。よって、欠陥検査装置10A及び欠陥検査装置10Aを用いた欠陥検査方法は、欠陥検査装置10及び欠陥検査装置10を用いた欠陥検査方法と少なくとも同じ作用効果を有する。
【0045】
(変形例2)
図6は、第1実施形態の変形例2に係る欠陥検査装置10Bの模式図である。欠陥検査装置10Bは、光照射部14が、撮像部18の周囲を取り囲む複数の光源30を有する点で、欠陥検査装置10と主に相違する。
図6では、図示の都合上、2つの光源30を示しているが、複数の光源30は、撮像部18の光軸34周りに撮像部18を環状に取り囲むように配置されている。これにより、撮像領域Aを均一に照射し易い。光源30の数は、撮像領域Aを均一に照射可能な数であればよい。
【0046】
欠陥検査装置10Bでは、変形例1の場合と同様の理由により、反射部材16は、
図6に示されたように、円偏光板12の位相差板22に反射部材16の反射面が接するように配置されていることが好ましい。光照射部14から円偏光板12に照射された検査光28と、反射部材16で反射された光とが、円偏光板12においてほぼ同じ領域を通過可能であれば、反射部材16は、円偏光板12の位相差板22から離れていてもよい。反射部材16の例も変形例1の場合と同様である。欠陥検査装置10Bは、光照射部14と撮像部18の配置関係以外は、欠陥検査装置10の構成と同じである。よって、欠陥検査装置10B及び欠陥検査装置10Bを用いた欠陥検査方法は、欠陥検査装置10及び欠陥検査装置10を用いた欠陥検査方法と少なくとも同じ作用効果を有する。
【0047】
(第2実施形態)
第2実施形態として、第1実施形態の検査対象である円偏光板12の製造方法を説明する。
図7は、第1実施形態の検査対象である円偏光板の製造方法のフローチャートである。円偏光板12を製造する場合、直線偏光板20と位相差板22とを貼合する貼合工程S01と、円偏光板12の欠陥を検査する欠陥検査工程S02と、を備える。以下、断らない限り、長尺の直線偏光板20と、長尺の位相差板22とを用いて円偏光板12を製造する方法を説明する。
【0048】
[貼合工程]
貼合工程S01では、長尺の直線偏光板20と、長尺の位相差板22とをそれぞれ長手方向に搬送しながら、直線偏光板20と位相差板22とを対向させて例えば接着剤層を介してそれらを貼合する。接着剤層は、直線偏光板20と位相差板22とを貼合する際にそれらの間に接着剤を塗布することで形成してもよいし、例えば、直線偏光板20と位相差板22の少なくとも一方に予め接着剤層を形成しておいてもよい。
【0049】
[欠陥検査工程]
欠陥検査工程S02では、貼合工程S01で得られた直線偏光板20と位相差板22との積層体である円偏光板12を、長手方向に搬送しながら、搬送経路上に配置された欠陥検査装置10で円偏光板12の欠陥検査を実施する。欠陥検査装置10を利用した欠陥検査方法は、第1実施形態で説明したとおりである。円偏光板12を搬送しながら欠陥検査装置10で、円偏光板12を検査する形態では、円偏光板12の搬送機構の一つを構成する複数のロールの一つを、欠陥検査装置10が有する反射部材16として使用できる。この際、反射部材16としてのロールは、ロール表面が鏡面加工されたロールであることが好ましい。
【0050】
円偏光板12の製造方法は、欠陥検査工程S02で取得した欠陥情報を、円偏光板12にマーキングするマーキング工程を備えてもよい。マーキング工程では、撮像部18で得られた画像に基づいて、ペンなどのマーキング手段を有するマーキング装置で欠陥情報を示すマークを円偏光板12に付せばよい。欠陥検査装置10が
図1に示したように解析装置36を有する形態では、例えば、解析装置36が、撮像部18で得られた画像に基づいて、画像内における欠陥位置を示す欠陥マップを作成し、上記マーキング装置が欠陥マップに基づいて欠陥位置にマークを付してもよいし、例えば、円偏光板12の縁部などに欠陥情報を書き込んでもよい。このように、欠陥位置を示すマークを円偏光板12に書き込んでおけば、長尺の円偏光板12から、枚葉の円偏光板12を切り出す際に、欠陥を有さない枚葉の円偏光板12を切り出せる、或いは、切り出された複数の枚葉の円偏光板12から欠陥を含む円偏光板12を効率的に除去できる。或いは、欠陥検査工程S02の結果に応じて、貼合工程で貼合する直線偏光板20及び位相差板22の少なくとも一方を取り替えてもよい。
【0051】
円偏光板12の製造方法では、第1実施形態で示した欠陥検査装置10を用いた欠陥検査方法で、円偏光板12を検査する。そのため、例えば、貼合工程S01で、例えば位相差板22を取り替えたとしても、欠陥検査装置10を変更せずに同じ製造ラインで円偏光板12を製造可能である。更に、
図4に示した欠陥検査装置38を用いる場合と比較して、円偏光板40が不要であることから、円偏光板40の劣化に伴う円偏光板40の取り替え作業も不要である。その結果、欠陥検査工程S02を効率的に実施可能である。更にまた、例えば液晶パネルに適用される円偏光板12を製造する場合、欠陥検査工程S02では、円偏光板12の使用形態に近い状態で円偏光板12の欠陥検査を実施できる。そのため、円偏光板12の使用形態で排除すべき欠陥を確実に検出できるので、円偏光板12の製造歩留まりが向上する。
【0052】
円偏光板12の製造方法は、例えば貼合工程S01の前に、直線偏光板20及び位相差板22の少なくとも一方を形成する工程を備えてもよい。
【0053】
第2実施形態では、
図1に示した欠陥検査装置10を利用した円偏光板12の製造方法を説明した。しかしながら、欠陥検査装置10に代えて、
図5に示した欠陥検査装置10A及び
図6に示した欠陥検査装置10Bを用いてもよい。
【0054】
(第3実施形態)
第3実施形態として、検査対象が、円偏光を生成する位相差板である形態を説明する。
図8は、第3実施形態に係る欠陥検査装置10Cの模式図である。欠陥検査装置10Cは、直線偏光が入射されることによって、円偏光を生成する位相差板44の欠陥を検査する装置である。欠陥検査装置10Cの検査対象としての位相差板44は、第1実施形態の検査対象である円偏光板12に用いられる位相差板22であり得る。
【0055】
欠陥検査装置10Cは、検査対象である位相差板44と、光照射部14及び撮像部18との間に直線偏光板46を備える点で、
図6に示した変形例2に係る欠陥検査装置10Bの構成と主に相違する。この点を中心にして欠陥検査装置10Cを説明する。
【0056】
直線偏光板46は、直線偏光特性を有しており、位相差板22を検査するための検査用の直線偏光フィルタである。欠陥検査装置10Cが備える光照射部14は、直線偏光板46を通して、検査光28を撮像領域Aに照射する。光照射部14は、撮像部18を取り囲む複数の光源30を有する。光照射部14は、光源30の個数及び配置状態は、欠陥検査装置10Bの場合と同様である。欠陥検査装置10Cが備える撮像部18は、直線偏光板46を通して、位相差板44の撮像領域Aを撮像する。
【0057】
欠陥検査装置10Cを利用した位相差板44の欠陥検査方法を説明する。まず、光照射部14から直線偏光板46を通して位相差板44の撮像領域Aに検査光28を照射する(光照射工程)。撮像領域Aに照射された検査光28は、位相差板44を透過して反射部材16側に出力される。位相差板44から出力された光は、反射部材16によって、位相差板22側に反射される(反射工程)。光照射部14から検査光28を出力した状態で、撮像部18が直線偏光板46を通して撮像領域Aを撮像する(撮像工程)。よって、撮像工程では、反射部材16で反射された光で照明された状態の撮像領域Aを撮像する。
【0058】
光照射工程では、直線偏光板46を通して検査光28を位相差板22の撮像領域Aに照射するので、直線偏光板46に対して平行ニコルである直線偏光光が位相差板44に入射する。
【0059】
位相差板44に欠陥が含まれていなければ、位相差板44からは円偏光光が反射部材16に出力される。説明の便宜のため、第1実施形態の場合と同様に、位相差板44からの出力される光を第1回転方向r1の円偏光光と称す。位相差板44から出力された光が反射部材16で反射されると、位相差板44から出力された光に対する逆円偏光光である第2回転方向r2の円偏光光が位相差板44に入射する。これにより、位相差板44から直線偏光板46側に、直線偏光板46に対してクロスニコルである直線偏光光が出力される。その結果、撮像部18で直線偏光板46を通して撮像領域Aを撮像して得られた画像は黒画像である。
【0060】
一方、位相差板44に欠陥が生じていると、位相差板44を光が通過する際に欠陥部分で偏光状態に乱れが生じる。そのため、反射部材16で反射された光が位相差板44に再度入射した後、位相差板44から直線偏光板46側に出力される光には、直線偏光板46に対して平行ニコルの成分を有する。その結果、撮像部18で得られる画像において、位相差板44の欠陥部分が明部として現れるので、撮像部18で得られた画像によって、欠陥の有無を判断可能である。換言すれば、欠陥検査装置10Cで、位相差板44の欠陥検査が可能である。
【0061】
欠陥検査装置10Cでは、位相差板44に対して、光照射部14及び撮像部18と反対側に反射部材16を配置し、反射部材16で位相差板44から反射部材16側に出力された光を反射している。そのため、位相差板44で生成される円偏光光に対する逆円偏光光で位相差板44を照明できる。よって、
図4に示した欠陥検査装置38が有する検査用の円偏光板40に相当する検査用の位相差板を準備する必要がない。更に、反射部材16で位相差板44から出力された光を反射することで、位相差板44で生成される円偏光光に対する逆円偏光光を位相差板44に入射できるので、一つの欠陥検査装置10Cで、位相差特性の異なる位相差板44の欠陥をより正確に検査可能である。すなわち、欠陥検査装置10Cは、高い汎用性を有する。
【0062】
欠陥検査装置10Cを用いた欠陥検査方法及び欠陥検査装置10Cは、位相差板44の製造方法に適用可能である。この製造方法では、まず、長尺の位相差板44を形成する(位相差板形成工程)。位相差板44は、例えば樹脂フィルムを2軸延伸することで形成され得る。位相差板44が多層構造を有する場合、複数の位相差板を貼合することで、位相差板44が形成される。
【0063】
位相差板44を形成した後、位相差板44をその長手方向に搬送しながら、搬送経路上に配置された欠陥検査装置10Cを用いて、前述したように、位相差板44の欠陥検査を実施する(欠陥検査工程)。欠陥検査工程で、位相差板44の欠陥の有無がわかるので、欠陥を含まない位相差板44を製造可能である。
【0064】
位相差板44の製造方法では、欠陥検査装置10Cを用いた欠陥検査方法で、位相差板44を検査する。そのため、例えば、位相差板形成工程で、異なる位相差特性を有する位相差板44を形成しても、欠陥検査装置10Cを変更せずに同じ製造ラインで位相差板44を製造可能である。
【0065】
位相差板44を搬送しながら欠陥検査装置10Cで、位相差板44を検査する形態では、位相差板44の搬送機構の一つを構成する複数のロールの一つを、欠陥検査装置10Cが有する反射部材16として使用できる。この際、反射部材16としてのロールは、ロール表面が鏡面加工されたロールであることが好ましい。
【0066】
位相差板44の製造方法は、欠陥検査工程で取得した欠陥情報を、位相差板44にマーキングするマーキング工程を備えてもよい。マーキング工程は、第2実施形態で説明したマーキング工程と同様であり得る。欠陥位置を示すマークを位相差板44に書き込んでおけば、長尺の位相差板44から、枚葉の位相差板44を切り出す際に、欠陥を有さない枚葉の位相差板44を切り出せる、又は、切り出された複数の枚葉の位相差板44から欠陥を含む位相差板44を効率的に除去できる。更に、欠陥検査工程の結果に応じて、位相差板形成工程の条件を変更してもよい。
【0067】
位相差板44の製造方法は、例えば、第2実施形態の円偏光板12の製造方法の一部に組み込まれてもよい。すなわち、円偏光板12の製造方法の貼合工程S01で貼合される位相差板22を、上記位相差板の製造方法で製造してよい。
【0068】
欠陥検査装置10Cの光照射部14として、第1実施形態の第2変形例の形態を例示した。しかしながら、光照射部14は、
図1に示した光照射部14のように、撮像部18の光軸34と同軸で、検査光28を位相差板22に照射する構成を有してもよい。或いは、第1変形例のように、光照射部14は、撮像部18の光軸34に対して交差する光軸で検査光28を撮像領域Aに照射してもよい。
【0069】
本発明は、例示した種々の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。例えば、
図1に示した光照射部は、撮像部の光軸と同軸で検査光を撮像領域に照射できれば、ハーフミラーを備えた形態に限定されない。上記種々の実施形態では、円偏光の場合を説明した。しかしながら、本発明は、円偏光以外の楕円偏光に対しても適用され得る。したがって、上記種々の実施形態で説明した欠陥検査装置及び欠陥検査方法は、円偏光板の代わりに楕円偏光板の欠陥を検査する装置及び方法であってもよい。同様に、上記種々の実施形態で説明した欠陥検査装置及び方法は、直線偏光を、円偏光の代わりに楕円偏光に変換して出力する位相差板の欠陥を検査する装置及び方法であってもよい。同様に、本発明は、楕円偏光板の欠陥を検査する欠陥検査方法を含む楕円偏光板の製造方法にも係る。
【符号の説明】
【0070】
10,10A,10B,10C…欠陥検査装置、12…円偏光板、14…光照射部、16…反射部材、18…撮像部、20…直線偏光板、22…位相差板、28…検査光、30…光源、34…光軸(撮像部の光軸)、42…光軸(光照射部の光軸)、44…位相差板、46…直線偏光板、A…撮像領域。